平成14年6月21日
金融庁検査局
「投資信託委託業者・投資法人・投資顧問業者に係る検査マニュアル」通達の発出
金融庁検査局では、検査官が投資信託委託業者・投資法人・投資顧問業者を検査する際の手引書(マニュアル)を整備するため、昨年9月、「投信・投資顧問検査マニュアルワーキンググループ」を設置し、検討を重ねてきました。
本年4月、その成果を「投資信託委託業者・投資顧問業者に係る検査マニュアル(案)」として公表した後、パブリックコメントとして頂戴したご意見等をも踏まえて再度検討を行った上で、本日、「投資信託委託業者・投資法人・投資顧問業者に係る検査マニュアル」通達として検査官宛に発出することとなりました。
なお、本通達は本年10月1日以降に実施する検査について適用します。
内容についての照会先
金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
検査局 高桑(内線2526)、篠田(内線2562)
「投資信託委託業者・投資法人・投資顧問業者に係る検査マニュアル」通達の概要
金融庁検査局では、検査官が投資信託委託業者・投資法人・投資顧問業者を検査する際の手引書(マニュアル)を整備するため、先般、「投信・投資顧問検査マニュアルワーキンググループ」におけるとりまとめ案をパブリックコメントに付したところであり、今般、寄せられたご意見を基に再度検討を行い、最終的な「投資信託委託業者・投資法人・投資顧問業者に係る検査マニュアル」を策定したことから、通達として各検査官及び各財務(支)局に発出するとともに公表することとした。
概要
1.目的
投信・投資顧問検査マニュアルを整備・公表することにより、金融庁の検査・監督機能の一層の向上を図るとともに、投信・投資顧問業者の自己責任に基づく経営を促し、透明な金融行政の確立、投資信託制度・投資法人制度及び投資顧問業の発展に資する。
2.基本的考え方
投信業者・投資顧問業者は、受託者としての責任があり、特に、投信業者・投資一任業者は、投資者の資産の運用指図を自ら行うことから、これらに対する検査は、公益及び投資者保護の観点から、
(1) 法令遵守状況及び法令等遵守態勢を把握するとともに、
(2) これにとどまらず、リスク管理態勢、特に運用リスクの管理態勢の確認検査にも重点をおくこととしている。
なお、投資法人については、その資産の運用管理は投信業者によって行われること、また、投資助言業者については、投資者の資産運用に助言を行うことから、法令遵守状況及び法令等遵守態勢の把握に重点をおいている。
3.対象範囲
本検査マニュアル案は、国内に営業拠点を置く投資信託委託業者・投資法人及び投資顧問業者に対する検査において用いることを予定している。
4.各チェックリスト案のポイント
本検査マニュアル案では、(1)投信業者・投資一任業者編、(2)投資法人編、(3)投資助言業者編の3部構成として、各々チェックリスト等により、検査を行う際のチェック・ポイントを示している。
第1編 投信・投資一任業者
I .法令等遵守
(1)法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト
本チェックリストでは、取締役や監査役に求められている役割を明らかにしているほか、コンプライアンスを実現するための施策等を明記し、取締役等のコンプライアンスに対する自覚を求め、コンプライアンス重視の企業風土が醸成されることにより、投信・投資一任業者が証券市場のアクセスの担い手としての社会的責任が発揮されることを促している。
具体的には、法令等遵守態勢強化のため、コンプライアンス・マニュアルの策定状況、その実施状況及び問題が生じた場合の処理状況を確認するなどのチェック項目を設けた。
特に、投信・投資一任業者によるディスクロージャーが投資家の投資判断を決定する基礎となることから、適正なディスクロージャーの確保が図られているかについて確認するため、又、投信業者による適切な直接募集業務(インターネット取引によるものも含む)の確保が図られているかについて確認するためのチェックリストをそれぞれ設けた。
- 「ディスクロージャーに関する法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト」
- 「直接募集に関する法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト」
- 「電子証券取引に関する法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト」
(2)運用の適正性確保のための態勢の確認検査用チェックリスト
適切な運用管理態勢が構築され、信託財産等の適正な運用を確保するための施策が整備されているかを確認するためのチェック項目を設けた。具体的には、発注先の選定に当って利益相反の防止が図られているか、運用の再委託先等の選定・管理が適切に行われているか、取引執行コストが適切に管理されているか、株主議決権は適切に行使されているか、等について確認することとした。
また、不動産運用の特殊性に鑑み「不動産等の運用管理態勢の確認検査用チェックリスト」を別途設けた。
II.リスク管理態勢
(1)リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト(共通編)
投信・投資一任業者が、各種リスクの特性を理解した上で適切なリスク管理体制を整備しているかを確認するためのチェック項目を設けた。
(2)運用リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト
受託者としての責任の観点から信託財産等の運用に当たり、適切なリスク管理が確保されているかを確認するためのチェック項目を設けた。具体的には、信託財産等の運用に係るリスクとして、市場リスク、信用リスク、取引先リスク、流動性リスク、不動産投資リスクを定め、それぞれのリスク管理の状況について確認することとした。
特に、不動産投資リスクについては、不動産運用の特殊性に鑑み「不動産投資リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト」を別途設けた。
(3)事務リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト
基準価額を算出するための適切な管理態勢が確保されているかなどを確認するためのチェック項目を設けた。また、投信・投資一任業者の事務の多くが外部委託されている現状に鑑み、外部に委託している業務が適切に管理されているかを確認することとした。
(4)システムリスク管理態勢の確認検査用チェックリスト
自社システムの開発・運用体制の整備状況や災害等に備えたコンティンジェンシープランの策定状況、外部委託先に関する管理態勢が整備されているかなどを確認するためのチェック項目を設けた。なお、インターネット取引による直接募集に対応するため「電子証券取引に関するリスク管理態勢の確認検査用チェックリスト」を別途設けた。
第2編 投資法人
法令等遵守態勢の確認検査用チェックリストのポイント
投資法人における役員会及び執行役員・監督役員に求められる役割、コンプライアンスを実現するための施策等を記載し、コンプライアンスの遵守態勢の整備状況・機能発揮状況を確認するためのチェック項目を設けた。
第3編 投資助言業者
法令等遵守態勢の確認検査用チェックリストのポイント
投資助言業者におけるコンプライアンスを実現するための施策等を記載し、コンプライアンスの遵守態勢の整備状況・機能発揮状況を確認するためのチェック項目を設けた。
なお、投資一任業者が投資助言業務を行う場合についても本チェックリストが適用される。