平成14年7月30日
金融庁
「平成14検査事務年度検査基本方針及び基本計画」の公表について
市場規律と自己責任原則を基軸とした、明確なルールに基づく透明で公正な金融行政が求められる中で、金融検査にかかる事務運営の透明性の向上を図る観点から、平成14検査事務年度検査基本方針及び基本計画を公表するものである。
本件についての問い合わせ先
金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
検査局総務課 水口(03-3506-6460)、池田(03-3506-6061)、井(03-3506-6065)
平成14年7月30日
金融庁
平成14検査事務年度検査基本方針及び基本計画
I . 検査基本方針
金融庁は、発足以来、我が国の金融システムの安定、預金者・投資家等の保護及び金融の円滑を図るため、市場規律と自己責任原則を基軸とした、明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政の遂行に努めてきた。
前検査事務年度においては、改革先行プログラム等に基づき、主要行に対し、通常の検査の抜本的強化に加え、市場の評価に著しい変化が生じている等の債務者に着目した特別検査を実施するなど、厳正かつ的確な検査の実施に努めてきた。
平成14検査事務年度においては、金融を取り巻く現下の情勢を踏まえ、特に、以下の三つの課題に重点的に取り組むこととする。
第一に、より強靱な金融システムの構築に向けた対応である。金融システムのより一層の安定を確保するために、主要銀行グループに対して、より実効性・効率性の高い検査を実施する必要がある。
第二に、経営実態に応じた検査の運用確保のための対応である。中小・零細企業等の経営実態の把握向上により、検査の適切な運用を確保する必要がある。
第三に、今日的課題への的確な対応である。金融機関の経営統合の進展によるシステム統合リスクの拡大や本年4月のペイオフ解禁などの環境の変化に伴う課題に的確に対応していく必要がある。
なお、これらの課題に取り組むに際し、検査マニュアルの整備や人材育成など、検査態勢の充実・強化を図っていくとともに、業態ごとの特性に応じた効率的・効果的な検査を実施することとする。
本検査事務年度においては、このような基本的考え方を踏まえ、具体的には以下の施策について、着実な実施に努めるものとする。
1. より強靱な金融システムの構築に向けた対応
(1)主要銀行グループ通年・専担検査の導入
主要銀行グループ別に検査部門を再編成し、各部門が1年を通じて同一グループ内の金融機関を継続的かつ専担的に検査する実質常駐検査体制とすることにより、検査の実効性・効率性を高める。その際、内部監査を含めた経営管理の状況について厳正に検証する。
(2)リスク・カテゴリー専門班の編成
システムリスク、市場関連リスク等の専門性の高い分野については、通年・専担検査班とは別途、民間出身の専門家を登用した専門班を編成し、各主要銀行グループを横断的に検査する。
(3)債務者区分等の適時の検証
企業業績や市場のシグナルをタイムリーに反映した適正な債務者区分等を確保することが引き続き有用であると考えられるため、主要行の通年・専担検査において、リアルタイムの債務者区分等の検証を実施する。
2. 経営実態に応じた検査の運用確保のための対応
(1)経営実態に応じた検査の運用確保
新たに整備された金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕を踏まえた検査を実施することにより、中小・零細企業等の経営実態に応じた適切な債務者区分等の確保に努める。
(2)検査官教育の充実・強化
金融検査マニュアルの機械的・画一的な運用を防止するため、検査経験の浅い検査官等に対して模擬査定研修を実施するなど、研修の充実・強化を図る。
(3)検査モニターの充実等
適正な検査を確保するとの観点から、立入中に被検査機関の経営陣から直接意見を聴く「オンサイト検査モニター」のほか、新たに、電子メール等により意見を受け付ける「オフサイト検査モニター」を実施する。また、検査官との間に意見相違が生じた場合に、被検査機関が意見を申し出ることができる「意見申出制度」についても、その周知徹底を図り、検査の公正性の向上に努める。
3. 今日的課題への的確な対応
(1)システムリスクの厳正な検証
金融機関の経営におけるシステムの重要性にかんがみ、システムリスク管理態勢を引き続き厳正に検証する。
あわせて、金融機関の経営統合の進展によるシステム統合リスクの拡大などに、より的確に対応するための検査マニュアル別冊を作成する。
(2)本年4月のペイオフ解禁を踏まえた実効性ある検査の継続
本年4月のペイオフ解禁を踏まえ、金融システムの安定に万全を期すため、金融機関のリスク管理態勢について、引き続き厳正な検証に努めるとともに、金融機関の経営状況等を踏まえ、効率的・効果的な検査を実施する。
また、預金保険機構と連携し、預金口座名寄せのためのデータ整備状況等について引き続き検証する。
(3)郵政公社・政策金融機関に対する検査に向けた対応
郵政公社・政策金融機関に対する検査権限の金融庁への一部委任規定が法律上(15年4月施行)設けられたことを踏まえ、実効性ある検査の実施に向けて、検査体制の整備等に努める。
4. 検査態勢の充実
(1)金融持株会社検査マニュアルの策定
持株会社方式による経営統合の進展や主要銀行グループ通年・専担検査の導入を踏まえ、金融持株会社に係る検査マニュアルを策定する。今後とも、金融環境の変化に的確に対応したマニュアルの整備・充実に努める。
(2)検査の専門性の維持・向上
金融技術や情報通信技術の発達等、金融環境の変化に的確に対応するため、先端・専門的知識を有する民間出身の人材の登用に努めるほか、研修を通じて専門性の向上を図る。
(3)財務局との共同検査の導入
当庁と財務局の検査官が共同で実施する金融庁・財務局共同検査を新たに導入することにより、検査現場での情報交換を促進し、相互に検査能力等の向上を図る。
(4)日本銀行との連携
金融機関の経営状況等を踏まえた効率的・効果的な検査を、当庁の限られた検査体制の中で実施するため、検査・考査の時期及び着眼事項の調整等、引き続き、日本銀行との連携を図る。
5. 業態別重点事項
(1)預金等受入金融機関
預金等受入金融機関については、上記の施策を着実に実施し、効率的・効果的な検査に努める。その際、内部監査を含めた経営管理の状況について厳正に検証する。
(2)保険会社
保険会社については、その業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者等の保護を図るため、経営陣自らによる深度ある経営管理の遂行状況及び実効性ある内部監査態勢の構築状況について重点的に検証する。また、保険募集管理態勢について検証するとともに、ソルベンシー・マージン比率等、財務の健全性についても併せて厳正に検証する。
(3)証券会社等
証券会社については、顧客資産の分別管理の適切性及び自己資本規制比率の正確性について重点的に検証する。その際、証券取引の公正の確保に関して検査を実施している証券取引等監視委員会と連携し、合同検査を原則とするなど、効果的な検査の実施に努める。
また、投資信託委託業者及び投資顧問業者については、新たに整備された「投信・投資顧問検査マニュアル」に基づき、顧客への忠実義務や説明義務の遵守状況等について重点的に検証する。
(4)外国金融機関
外国金融機関(銀行、証券会社等)については、上記(1)~(3)の施策によりつつ、ルール遵守状況及びリスク管理状況の検証に重点を置いた効果的な検査を実施するとともに、グループの一体的な実態把握に努める。その際、外国当局との緊密な連携等を図る。
(5)その他の金融機関
貸金業者については金利規制及び取立行為規制等のルール遵守状況について、前払式証票発行者については発行保証金の供託状況等について重点的に検証する。
II . 検査基本計画
(注1) | 上記検査実施予定数は変動することがあり得る。 |
(注2) | 13検査事務年度は、上記のほかにフォローアップ検査・特別検査をあわせて25件、証券取引所検査を2件実施している。 |
(注3) | 銀行持株会社は銀行に、保険持株会社は保険会社に含めている。 |