平成14年9月13日
金融庁

有価証券の空売りに関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)の概要に対するパブリックコメントの結果について

金融庁では、標記内閣府令案の概要について、平成14年8月28日(水)から9月9日(月)にかけて公表し、広く意見の募集を行いました。ご意見をいただいた方には、内閣府令案の検討にご協力いただきありがとうございました。

本件に関してお寄せいただいた主なコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方は下記のとおりです。

【内容についての照会先】

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課 課長補佐 佐藤(内線3609)、係長佐藤(内線3613)


主なコメントの概要とコメントに対する金融庁の考え方

コメントの概要 コメントに対する考え方
 信用取引への価格ルールの適用は、市場の流動性を損なうものであり、実施すべきではない。  空売りに係る価格ルールは、市場における公正な取引を確保するために必要なルールで、米国においても実施されているものです。我が国では、これまで、機関投資家等から株を借りて行う空売りについて価格ルールを定める一方、信用取引については一律空売りの価格ルールの適用除外としてきたため、信用取引に価格ルールが適用されないことのみを理由に、これを利用するといった、本来信用取引として行われることを想定していない取引が行われております。経済的に見れば、機関投資家等からの借株による空売りと区別する取扱いに合理性はなく、こうした状況を是正するため、信用取引についても価格ルールを導入する必要があるものと考えます。
 なお、今回の改正において、従来から適用除外とされているものとの関係や米国における取扱い等を踏まえ、一定の類型の取引については、価格ルールの適用除外を措置することとしております。
 信用取引の規制は、証券取引所等による増担保規制等の信用取引制度の中の手段で行われるべきであり、価格ルールは導入すべきではない。  信用取引の売りも空売りであることに何ら変わりはなく、他の空売りと同様に価格ルールを適用すべきであるものと考えます。上記に述べたとおり、従来、信用取引については、空売りの価格ルールの適用除外としてきたところですが、信用取引に価格ルールが適用されないことを理由に利用するといった、本来信用取引として行われることを想定していない取引が行われております。このような状況を是正して、公正な取引を確保する観点から、今回のルール改正を行うこととしております。
 株価対策として空売り規制の強化を行ったとしても、効果はないと考えられるため、実施すべきではない。  今般の信用取引への価格ルールの適用は、証券市場の改革促進プログラム(本年8月6日公表)に基づき、市場における公正な取引を確保するために行うものであり、株価対策として行うものではありません。
 信用取引の価格ルールについて、システム対応が間に合わないことから、直近公表価格での売付けを認めていただきたい。  今般の信用取引への価格ルールの適用は、現行の内閣府令による価格ルールの適用除外項目の見直しを行うものであり、価格ルール自体を変更するものではないことから、実務的な対応は可能ではないかと考えています。
 個人投資家等の行う信用取引のみを価格ルールの適用除外とするのは不公平であり、適格機関投資家を含むすべての投資家について、50単位以内の信用売りは価格ルールの適用除外としていただきたい。  本来、信用取引は主として個人投資家による利用を想定しております。また、信用取引は通常の個人投資家にとっては唯一とも言えるヘッジ手段であることや、適格機関投資家とそれ以外の投資家では情報格差もあることなどから、適格機関投資家とそれ以外の投資家とで異なる取扱いとすることには合理性があるものと考えます。
 個人投資家の行う信用取引については、売付けの数量にかかわらず、空売り規制の価格ルールは課すべきではない。  個人投資家の中には、市場に影響を与えるような大規模な投資を行っている方も存在するため、売付け1回あたりの数量の上限を設ける必要があると考えます。
 個人投資家等の行う信用取引の価格ルールの適用除外とする範囲について、数量よりも金額で規制するほうが適切ではないか。  空売り規制は、空売りを行う者が、その注文を行う時点において、その取引がルールに適合したものかどうかを認識できる必要があります。金額を基準とした場合には、銘柄ごとに売付け注文時に売付けの株数を計算しなければならず、投資家及び証券会社にとり煩雑となることから、数量基準を採用するものです。
 VWAPギャランティー及びターゲット取引については、終日、前場及び後場VWAPのみ価格ルールの適用除外にすることにしているが、顧客が場中に発注する時間VWAPも価格ルールの適用除外としていただきたい。  証券取引所により客観的な株価の指標として公表されている価格は、終日、前場及び後場VWAPのみであり、時間VWAPはそのような取扱いを受けていないことから、価格ルールの適用除外とすることはできないものと考えます。
 VWAPギャランティー及びターゲット取引の事前ヘッジ取引について、顧客の実需を背景としたものに限定せず、借り入れた有価証券の売付けであっても、顧客の売り注文に基づくものであればすべて価格ルールの適用除外としていただきたい。  顧客の実需を背景としたものに関し適用除外を認めているのは、そのような取引が顧客の実売りと同等であると考えられることによるためであり、顧客が空売りとして行う場合には、価格ルールの適用除外とすることはできないものと考えます。
 VWAPギャランティー及びターゲット取引の事前ヘッジ取引について、「一定の算式等による取引手法が定められていること」が条件とされているが、その内容を明確化していただきたい。  「一定の算式等による取引手法が定められていること」とは、発注者の恣意性を排除するため、あらかじめ設定されたプログラムに従って売付けの注文が行われることですが、市場の動向に応じて、発注者が補正を行うなどの一定の裁量は認められるものと考えます。
 顧客と合意するVWAP価格には、証券会社の受け取る手数料相当額を含めることを明確化していただきたい。  顧客に対して手数料を別途請求しない場合には、有価証券の売買価格(VWAP価格)に事前に定めた手数料相当額を上乗せすることは問題ありません。
 VWAPギャランティー及びターゲット取引の事前ヘッジ取引について、「特別の勘定により管理されていること」が条件とされているが、その内容を明確化していただきたい。  「特別の勘定により管理されていること」とは、必ずしも証券会社の法定帳簿として特別なものを用意していただくという趣旨ではなく、他の取引と区別して収益管理又はリスク管理を行っており、事後に検証が可能な状態であることをいいます。
 VWAPギャランティー及びターゲット取引の事前ヘッジ取引の価格ルールの適用除外は空売り府令第3条の改正とされていることから、取引所有価証券市場上場銘柄のみ対象になるものと考えるが、店頭売買有価証券も対象としていただきたい。  店頭売買有価証券については、証券業協会によりVWAPが公表されていないことから、適用除外とすることはできないものと考えます。
 VWAPターゲット取引以外のいわゆる「一本値返し」の事前ヘッジ取引についても価格ルールの適用除外としていただきたい。  VWAPは、市場における客観的な株価の指標であり、その価格を目標とするVWAPターゲット取引のヘッジ取引は、売付けを行う者の恣意性が基本的には排除されるものと考えられますが、これに対し、価格について特段の条件のない、いわゆる「一本値返し」の事前ヘッジ取引については、売付けを行う者の恣意性を排除することは困難であり、価格ルールの適用除外とすることはできないものと考えます。
 VWAPギャランティー及びターゲット取引の事前ヘッジ取引について、「買い付けた有価証券であってその決済が結了していないもの」及び「貸し付けている有価証券でその決済前に返還を受けることが明らかなもの」は、すでに明示・確認義務及び価格ルールの適用除外となっていることから、「顧客の所有する株券」の範囲に含めていただきたい。  顧客の所有する株券のVWAPギャランティー及びターゲット取引の事前ヘッジ取引を価格ルールの適用除外とすることは、顧客の実需を背景とした売付けについて対象とする趣旨ですので、顧客が借り入れている株券を受け渡す場合や売付け後遅滞なく株券を提供できることが明らかでない場合を除き、「買い付けた有価証券であってその決済が結了していないもの」及び「貸し付けている有価証券でその決済前に返還を受けることが明らかなもの」の場合の事前ヘッジは、価格ルールの適用除外になるものと考えております。
 ヘッジ取引について、現に株券を所有している者が、当該株券を引き続き所有しつつ、当該株券と同一の銘柄の株券の空売りを行う取引を価格ルールの適用除外としていただきたい。  現に株券を所有している場合についても、借株等により受渡しを行う売付けは空売りであることから、価格ルールが適用されますが、信用取引を利用する場合であっても同じであり、価格ルールの適用除外とすることはできないものと考えます。
 ヘッジ取引は経済合理性のある取引であり、空売り府令において個別列挙された取引は価格ルールの適用を受けず、列挙されていない取引は価格ルールの適用を受けるということは、規制としての整合性が取れていないのではないか。  現在の空売り府令においては、原則として価格ルール等の適用を認めつつ、個別に適用除外取引を列挙する方式をとっていますが、ヘッジ取引についてもヘッジと称した売り崩しを行うことも考えられることから、売り崩しとなる蓋然性が低いものについて個別に列挙しているところです。
 裁定・ヘッジ取引について、交換社債券と同様にEBと対象株券との間で行うものも価格ルールの適用除外としていただきたい。  交換社債券については、その所有者が対象株券と交換する権利を有していることから、裁定・ヘッジ取引が適用除外取引として認められますが、EBの所有者は対象株券と交換請求する権利を有していません。したがって、裁定・ヘッジ取引については適用除外として認めることはできませんが、対象株券での償還が決定された場合にはその所有者に対象株券が提供されることとなるため、この間のつなぎ売りを価格ルールの適用除外とすることとしています。
 裁定取引について、合併比率に基づくものが価格ルールの適用除外とされるが、株式交換、株式移転が行われる場合の、交換比率、移転比率を用いた裁定取引についても同様に適用除外としていただきたい。  交換比率、移転比率に基づく裁定取引も合併比率に基づくものと同様と考えられることから、価格ルールの適用除外となります。
 裁定取引について、合併期日及び合併比率が確定・公表されているとは、発行会社により発表された情報が各種メディアにおいて報道された場合と考えてよいか。  確定・公表されている場合としたのは、推定値を用いて行う場合は対象としないという趣旨であり、単にメディアが推測に基づいて報道している場合は価格ルールの適用除外とはなりませんが、合併の当事者である会社が合併を機関決定し、これを公表した場合は価格ルールの適用除外となります。
 証券会社が自己売買で行っている中抜きという売買手法は、空売り規制の脱法行為であり、禁止すべきである。
〔中抜きの例〕
 信用新規売り・・・・・・・・・・・・・・a
 aと同一銘柄・同数量の買い・・b
 bと同一銘柄・同数量の売り・・c
 cと同一銘柄・同数量の買い・・d
※1. bの買付代金はcの売付代金と相殺する。
※2. cは実売りとして行う。
※3. dによりaの品渡しを行う。
 ご指摘の例では、信用取引の新規売りから始まっているため、まずショートポジションが作られます。したがって、bの買付けを行った時点では有価証券のポジションはニュートラルであり、ロングポジションを有してはいないことから、cの売りは空売りとなり、明示・確認義務及び価格ルールが課せられます。
 すなわち、ご指摘の例のように証券会社の自己の取引において信用新規売りで始まる一連の取引においては、cは空売り規制の対象であり、空売りであることを明示し、かつ、価格ルールを遵守して行わなければならないこととなります。
 信用取引の期日到来に伴う乗り換えのためのクロス取引を、価格ルールの適用除外としていただきたい。  制度信用取引の期限は、証券取引所等の規則で最長6か月と定められているものであり、その期限を実質的に延長するような取引を適用除外とすることはできないものと考えます。
 ETFの空売りについては、ヘッジ取引に利用できるように、価格ルールの適用除外としていただきたい。  ETFであることのみをもって、適用除外とすることはできませんが、現物株のバスケット(ETFと同一の株価指数に基づき選定されたもの)又は株価指数先物取引(ETFと同一の株価指数に基づくもの)の買いをヘッジするためのETFの空売りは、現行の空売り府令において、価格ルールの適用除外とされております。(第3条第9号)
 証券会社の行う引値ギャランティー及びターゲット取引の事前ヘッジ取引についても価格ルールの適用除外としていただきたい。  引値ギャランティー及びターゲット取引の事前ヘッジ取引については、引けにかけて相場操縦的な行為が行われる可能性があるため、価格ルールの適用除外とすることはできないものと考えられます。
 有価証券店頭デリバティブ取引のヘッジ取引についても、価格ルールの適用除外としていただきたい。  デリバティブ取引のヘッジ取引については、証券取引所に上場されている定型的な取引はその取引内容が一般に明らかにされていることから、価格ルールの適用除外とされているところですが、これに対し、有価証券店頭デリバティブ取引は(1)顧客と証券会社との間でその具体的な内容が決せられるオーダーメイドのものであるため、どのような内容の取引とすることも可能であり、しかも、(2)その取引の内容が一般に明らかにされていないことから、価格ルールの適用除外とすることはできないものと考えます。
 割高と判断される銘柄の株券を売り、割安と判断される銘柄の株券を買うといった裁定取引についても価格ルールの適用除外としていただきたい。  銘柄の間に理論的な関係がなく、また、具体的にどの取引がこれに該当するか、客観的に判断することもできないことから、価格ルールの適用除外とすることはできないものと考えます。
 注文執行による過誤により、結果的に空売りとなり、価格ルールに抵触したものについては、価格ルールの適用除外としていただきたい。  注文執行に係る過誤によって結果的に空売りとなり価格ルールに抵触した売付けについては、適用除外とすることはできませんが、一般的には可罰的違法性は乏しいものと考えられます。ただし、この場合の注文執行に係る過誤による売付けと認められるには、過誤であることが十分立証され得るものであって、適正な方法によりその訂正処理が行われたものであることが前提となります。
 なお、当然のことながら、注文執行に係る過誤がおこらないよう、十分な未然防止体制の整備が必要です。
 改正空売り府令の施行は、社員・顧客への説明、システム対応のため、十分な準備期間が必要である。  証券市場の改革促進プログラム(本年8月6日公表)においては、証券市場の構造改革を一層促進するとの観点からスピード感をもって実施していくため、本件についても9月中に実施することとされています。

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