平成15年7月29日
金融庁検査局
「金融持株会社に係る検査マニュアル」通達の発出について
パブリックコメントを踏まえて、本日、別添のとおり、「金融持株会社に係る検査マニュアル」通達を発出しました。
問い合わせ先
金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
検査局総務課 多賀、今田、小林、武田(内線2527)
「金融持株会社に係る検査マニュアル」の概要
1.本マニュアルの構成
第1 基本的考え方
- 金融持株会社に対する検査の目的及び位置づけ
- 金融持株会社グループに係る着眼点
- 検査マニュアルの位置づけ等
- 検査実施上の留意点等
第2 チェックリスト
- 銀行持株会社に係るチェックリスト
- 法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト
- リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト
- 保険持株会社に係るチェックリスト
- 法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト
- リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト
- 証券持株会社に係るチェックリスト
- 法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト
- リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト
2.概要
(1)本マニュアルは、金融持株会社(注1)に対する検査に際し、金融持株会社グループ(注2)において構築されている法令等遵守態勢及びリスク管理態勢が、金融持株会社の子会社である金融機関(注3)の健全性等の確保の観点から、適切なものとなっているかを検証するための着眼点を整理した、検査官の手引書である。
(注1) 本マニュアルにおける「金融持株会社」とは、銀行法第2条第13項に定める「銀行持株会社」、長期信用銀行法第16条の4に定める「長期信用銀行持株会社」、保険業法第2条第16項に定める「保険持株会社」又は証券取引法第59条第1項に定める証券会社を子会社とする持株会社(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第9条第5項第1号に規定する持株会社)のいずれか、又はこれらの複数に該当する持株会社をいう。なお、「長期信用銀行持株会社」に係る本マニュアルの適用については、特段の定めがない限り、「銀行持株会社」に係るものを準用する。 (注2) 本マニュアルにおける「金融持株会社グループ」とは、○金融持株会社、○その子会社である金融機関及び○当該金融機関の健全性等の確保に重要な影響を及ぼす可能性のある会社をいう。 (注3) 本マニュアルにおける「金融機関」とは、銀行、保険会社、証券会社をいう。 (2)持株会社の機能や役割に着目し、主に以下のような点について適切な管理態勢が構築されているか等を検証するためのチェックポイントを設けた。
○持株会社による適切な資本政策について
- グループとしての適切な資本の維持に努めているか。
- グループ内の各子会社への適切な資源配分が行われているか。
- 持株会社が調達した資本が真の資本の充実につながるものとなっているか。
- 増資に関するコンプライアンス態勢が適切なものであるか。
○グループ内取引等について
- グループ内取引等は、グループ内でのリスク移転を伴う側面があり、銀行等の業務の健全性等に重大な影響を及ぼす可能性があることにかんがみ、適切なリスク管理態勢を整備しているか。
- グループ内において取引の公正性が歪められたり、銀行等の業務の適切性が損なわれるような取引等が行われないよう、法令等遵守態勢が整備されているか。
- 持株会社が受け取る経営管理料や配当が銀行等の健全性を著しく損なうようなものとなっていないか。
○顧客情報管理について
- グループ内における顧客情報の共有について、法令等に抵触した取扱いが行われないような態勢が整備されているか。
○グループとしての危機管理体制の構築について
- 持株会社形態であることにより、グループ内の会社において顕在化したリスクが風評やグループ内取引等を通じ、グループ内の銀行等に波及し、当該銀行等の健全性が損なわれる可能性がある。
- こうしたリスクに的確に対応できる態勢が整備されているかどうか。
○子会社である金融機関の健全性の把握について
- 金融持株会社が子会社である銀行等の健全性(自己資本比率、ソルベンシーマージン比率、自己資本規制比率などの指標等)を的確に把握しているか。
○グループとしての適切なリスク管理態勢の構築
- グループとして適切なリスク管理が行われる態勢となっているか。例えば、子会社である銀行等からグループ内の他の会社に問題債権が移管された場合においても、リスク管理が適切に行われているか、など。
3.本マニュアルの適用に当たっての留意事項
金融持株会社グループは、例えば複数の業態の金融機関を子会社として有する場合もあるなど、その態様の違いによりグループが抱えるリスクの特性やリスクの波及過程も異なる。また、現実に存在する金融持株会社グループの形態は、グループによって区区であり、その結果、グループにおける管理態勢や金融持株会社が担う役割も、異なる特色を有している。
本マニュアルは、こうした金融持株会社グループの実態を十分に踏まえ、様々なケースに対応できるように作成したものであり、本チェックリストの内容の全てを各々の金融持株会社及びグループ内会社に一律に求めているものではない。
したがって、本チェックリストの適用に当たっては、チェック項目に記述されている字義通りの対応が行われていない場合であっても、グループとしての対応が子会社である金融機関の業務の健全性や適切性の確保の観点から問題のない限り、不適切とするものではないことに留意し、機械的・画一的な運用に陥らないように配慮する必要がある。なお、チェック項目に係る機能が形式的に具備されていたとしても、子会社である金融機関の業務の健全性や適切性の確保の観点からは必ずしも十分とは言えない場合もあることに留意する必要がある。
検査官は、まず、金融持株会社グループの実態を十分に把握したうえで、本チェックリストを活用しながら、金融持株会社グループの管理態勢が適切に構築されているかどうかを検証する必要があり、立入検査に際しては、金融持株会社と十分な意見交換を行う必要がある。
4.適用時期
平成15検査事務年度(平成15年7月)より実施する検査から適用する。