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平成16年4月23日
金融庁

日興シティ信託銀行株式会社に対する行政処分について

  • 1.  日興シティ信託銀行株式会社(以下、「当行」という。)からの不祥事件等届出、当行に対する当庁の検査(平成16年3月通知)、並びに、銀行法第24条第1項及び金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第4条において準用する信託業法第17条の規定に基づく当行からの報告によると、以下のとおり、信託業務の運営・管理にかかる重大な法令違反等が確認され、法令等遵守(コンプライアンス)に関する経営姿勢及び内部管理態勢等に根本的な問題が認められた。

    • (1)平成9年から平成15年の間、信託財産に帰属する運用収益等の資金の一部を銀行固有の簿外口座を使って収受し、速やかに信託委託者の勘定に記帳できずに、他の目的への支弁や他の信託委託者の勘定に移転させる取引や行為等を繰り返し、当該簿外口座から銀行勘定に記帳することも行われており、信託法第22条に違反して信託財産を固有財産化していた業務運営の実態が認められたこと。

      また、当該期間において、信託財産別にその計算を明らかにしていなかった状況は、同法第28条(いわゆる分別管理義務)にも違反していること。

    • (2)上記(1)以外にも、信託財産の未照合や信託勘定の不突合の放置が不明金や信託勘定への記帳の遅延を発生させ、或いは、変額保険の運用実績(特定包括信託の基準価額)の算出誤りを招くなど、信託法第20条(いわゆる善管注意義務)に違反する取引や行為等が長期間にわたり多数認められたこと。

    • (3)上記(1)及び(2)の法令違反は、いずれも、信託契約等の委託者等の信任に反し、委託者等に実際の損失の発生や影響等を及ぼすものとなっていること。

    • (4)以上のような法令違反が発生した背景には、経営の方針として信託財産の管理に重点を置いた営業が拡大される一方、信託業務の運営にかかる事務管理・システム管理体制を含む内部管理態勢等が、業務実態に応じて適切に構築・整備されていないこと、及び、役職員の当該業務に対する理解と経験も不十分であることが認められたこと。

      また、法務・コンプライアンス部門が十分に機能していないなど、信託業務の運営にかかる法令等遵守(コンプライアンス)態勢が整備されていないこと、及び、役職員の法令・諸規則に対する理解と遵守の徹底も不十分であること。

    • (5)また、行内の内部牽制と内部監査機能が発揮されておらず、信託財産の管理・決済における管理失当や不適正な事務処理が経年放置され、不祥事を早期に発見すること等が困難な体制となっていること。

    • (6)さらに、不祥事件の発覚後の対応についても、経営として迅速な対応や原因の究明が行われず、当庁の指示を受けるまで、頻発する管理失当や不祥事の発生の背景となっている事務管理・内部管理体制上の問題点の見直しや改善のために必要な措置等が講じられていなかったこと。

    • (7)信託契約等に基づく信託業務上の管理失当や法令違反以外にも、銀行勘定と信託勘定との間の経理処理の誤りなどによって、銀行自体の財務諸表及びディスクロージャー等の公正性・妥当性が著しく歪められる事態が発生していること。

      事態発生の背景には、これらの誤りなどを事前に発見し是正し得る事務管理・内部管理態勢の不存在と内部監査が有効に機能しなかったことが認められたこと。

  • 2.  以上を理由として、当庁は、本日、当行に対して、銀行法第26条第1項、第27条、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第8条及び同法第4条において準用する信託業法第18条の規定に基づき、下記の行政処分を行った。

    • (1)銀行法第27条及び金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第8条に基づく命令

      信託財産の管理・決済業務の新規受託業務(既存顧客との業務及び債権等流動化にかかる信託受託業務を除く業務)を平成16年4月30日から停止すること。

      ただし、平成16年11月1日以降、当行より上記業務の再開について申し出がある場合には、以下の命令に対する業務の改善計画の進捗・実施状況等を踏まえ、上記の命令を見直すことがある。

    • (2)銀行法第26条第1項及び金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第4条において準用する信託業法第18条に基づく命令

      • イ.  信託銀行として、社会的信用を確保し、公正かつ適切な業務運営を実現するため、以下の観点から、法令等遵守態勢(人的構成と体制の構築を含む。)を確立すること。

        • 経営陣が誠実かつ率先垂範して法令等遵守(コンプライアンス)に取り組む経営姿勢及び経営責任の明確化

        • 法務・コンプライアンス部門の機能強化

        • 役職員の法令・諸規則に対する理解と遵守の徹底

        • 不祥事件等発生時の迅速かつ適切な対応と報告・連絡体制の確立

      • ロ.  信託委託者の信任に対して、信託財産の管理・決済業務及び関連する代理事務の適正な業務運営・事務管理を確保するため、以下の観点から、内部管理態勢(人的構成と体制の構築を含む。)を確立すること。

        • システムの整備状況及び人的構成等を踏まえた経営戦略の抜本的な見直し

        • 上記の見直しに対応した業務運営・事務管理態勢の抜本的な再構築と責任の所在の明確化

        • 役職員の業務に対する習熟度の向上

        • 内部牽制機能の整備・強化

        • 内部監査体制の構築・整備、及び、内部監査のフォローアップの実施とフォローアップ体制の強化

    • (3)上記(2)にかかる業務の改善計画を平成16年5月24日までに提出し、直ちに実行すること。

    • (4)以後、当該業務の改善計画の実施完了までの間、計画等の進捗・実施状況を3ヶ月ごとに報告すること。

本件に関する問い合わせ先

金融庁 TEL 03-3506-6000(代表)
監督局銀行第一課(内線3751、3752)

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