平成15年7月11日
 
証券会社に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)に対するパブリックコメントの結果について
 
 金融庁では、証券会社に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)について、平成15年5月9日(金)から6月10日(火)にかけて公表し、広く意見の募集を行いました。ご意見をご提出いただいた皆様には、改正案の検討にご協力いただきありがとうございました。

 本件に関してお寄せいただいた主なコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方は以下のとおりです。

 

【内容についての照会先】
金 融 庁 電話:03−3506−6000(代)
  総務企画局 市場課 証券業係(内線3621)
  監 督 局 証券課 法 務 係(内線3722)

コメントの概要とコメントに対する金融庁の考え方


1 事務ガイドライン案3−4−5マル1について
コメントの概要 コメントに対する考え方

 債券の流通利回りは、信用リスク以外に金利水準等の様々な要因の影響を受けており、取扱い証券会社によっても異なっていることから、どのような場合に新発債の利回りが既発債の利回りと比較して、「顧客にとって著しく不利な状況」に該当するのか一定の目安を示して頂きたい。

 「顧客にとって著しく不利な状況」に該当するか否かは、その時々の金利水準その他の事情を勘案して判断する必要がありますが、当該ガイドラインは信用リスクに係る重要な情報を個人投資家に適切に説明することを目的とするものであることを踏まえると、例えば、以下の値(α)が一定の値を上回る場合には、「顧客にとって著しく不利な状況」にあたるおそれがあると考えます。

 事務ガイドラインにおいて、上記の点について明確化することとします。

 なお、現在の金利水準の下においては、比較する債券との償還日の差異により生じる利回りの乖離、証券業協会が公表する個人向け社債等の店頭気配情報が仲値であることや複数の気配を平均することなどにより生じる利回りの乖離等を考慮すると、以下の値(α)が50bp(0.5%)以上となると、「顧客にとって著しく不利な状況」にあたるおそれがあると考えます。


α=


X(「既発債(注)」のクレジット・スプレッド相当分)−Y(新発債のクレジット・スプレッド相当分)


X=


(既発債に係る「個人向け社債等の店頭気配情報発表制度」上の報告値の平均値)−(既発債と償還期日が最も近い国債の公社債売買参考統計値の平均値単利)

Y=

(新発債の応募者利回り(単利))−(新発債と償還期日が最も近い国債の公 社債売買参考統計値の平均値単利)

(注

)「既発債」とは、新発債と同一発行体が発行した既発の個人向け社債等であって、当該新発債の償還日に6ヶ月を加えた期間内に償還日が到来するもの(例えば、新発債の償還日が2008年6月30日の場合には、2008年12月31日までに償還日が到来するもの)のうち、新発債の償還日に最も償還日の近い銘柄をいう。

 信用リスクに係る情報について個人投資家に伝える方法としては、証券業協会のホームページにおいて「個人向け社債等の店頭気配情報」が公表されている事実を周知する方法が適当ではないか。

 個人投資家に対して左記の事実を周知することは重要ですが、上記のように新発債の発行条件が投資家にとって著しく不利な場合には、個人投資家に対して類似する既発債の利回りの状況を直接説明する必要があると考えます。

 既発債の利回りの説明及びその理由説明等は、目論見書と異なる内容の表示を禁止している証券取引法第13条第5項の規定に抵触しないのか。

 勧誘に際して提供される表示が証券取引法第13条第5項における「異なる内容」に該当するか否かは、その表示に矛盾、虚偽、欠缺があるか等の観点から、当該表示の全体を総合的に評価し、投資者保護に欠けるものであるか否かにより判断する必要があります。
 したがって、既発債の利回りを説明することや、新発債の利回りとの乖離を説明する際にその背景となる格付の引下げや株価の下落などの事象について説明することは、その説明内容に矛盾、虚偽、欠缺がなければ、当該規定に抵触しないと考えます。

 類似の債券の利回りについて、証券業協会が公表する参考気配値のほかに、各社において合理的な方法で算出された時価(社内時価)に基づく利回りを使用することを認めて頂きたい。

 一般に公表されている指標を用いて判断し、個人投資家に対して説明することが適切であると考えます。


 
2 事務ガイドライン案3−4−5マル2について
コメントの概要 コメントに対する考え方

 EB等の販売については、対象銘柄の株価等の水準の説明よりも、そもそもの商品性やリスクについての説明の方が重要ではないか。

 EB等を販売する際の説明事項については、当該ガイドラインのほかに、証券業協会の定める規則に基づき、その商品性やリスクなど顧客へ説明すべき事項を明確化することとなっています。

 EB等に関し、投資判断に影響を及ぼす重要な事象が発生しているか否か(顧客にとって不利な状況となっているか否か)は、当該EB等の商品内容(行使価格等)と比較して判断すべきであり、発行条件等の設定の際に基準となった指標の状況ではなく、償還条件の基準となる指標の状況と比較することが適当でなないか。

 EB等の場合、対象銘柄の株価の下落が発行条件に与える影響は、商品設計により異なっており、対象銘柄の株価が若干下落したことをもって直ちに投資家にとって経済的に不利な状況とは言えない場合もあることから、これらを一律に扱うことは不適切ではないか。

 EB等はオプションを内包している商品であり、発行(売出)条件設定時と比べて対象銘柄の株価等が下落すれば、発行(売出)条件の設定が顧客にとって不利になることから、発行(売出)条件設定の際に基準となった株価等の状況との比較が必要であると考えます。

 EB等については、対象銘柄の株価等の水準が発行(売出)条件に与える影響の程度は商品設計によって異なること等を踏まえて、当該ガイドラインにおける「発行(売出)条件が顧客にとって不利な状況となっている場合」については、各社において、一定の値幅を定め、EB等を取得させようとする時点の当該EB等の理論価格が募集(売出)価格からの値幅を超えて下落している場合に、顧客にとって不利な状況となっている旨説明することが適切であると考えます。

 その際、値幅は募集・売出期間後の販売に係る社内ルールにおいて定められた水準(仕切値幅制限)を踏まえたものであること、その他の適切な社内管理体制の整備が必要であると考えます。

 なお、EB等の株式市場の相場により償還条件が決まるものについては、上記の方法に代えて、EB等を取得させようとする時点の対象銘柄の株価等が当初価格(発行条件設定時の基礎となった株価等をいう)と比較して、7%以上下回る場合に、顧客にとって不利な状況になっている旨説明することも認められるものと考えます。

 事務ガイドラインにおいて、上記の点について明確化することとします。

 当該ガイドラインの対象から「私募の取扱い」を除外して頂きたい。

 私募については、証券取引法の開示制度における取扱い等を踏まえて、当該ガイドラインの対象とならない旨明確化することとします。