英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

平成16年7月28日
金融庁

「平成16検査事務年度検査基本方針及び検査基本計画」の公表について

本日、標記について各財務(支)局長、沖縄総合事務局長宛て通知しましたので公表します。

問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
金融庁検査局総務課 高橋(内線2514)、松島(内線2515)


平成16年7月28日
金融庁

平成16検査事務年度検査基本方針及び検査基本計画

I  検査基本方針

金融庁においては、平成16年度末までに「金融再生プログラム」を着実に推進し、主要行の不良債権問題を終結させるとともに、リレーションシップバンキング(間柄重視の地域密着型金融)の機能強化等により中小企業の再生と地域経済の活性化を図り、強固な金融システムの構築を目指している。平成17年4月には、金融システム全体の効率化のために重要なペイオフ解禁拡大が予定されている。また、近時、株価、金利等の市場動向に変化がみられる。このように金融機関を取り巻く環境は新たな局面を迎えている。

平成16検査事務年度においては、金融機関の利用者や国民の視点に立って、市場規律と自己責任原則を機軸とした、明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政を遂行するとの基本的考え方の下、前検査事務年度に実施された各種施策を踏まえつつ、不良債権問題、中小企業の再生と地域経済の活性化、ペイオフ解禁拡大、市場動向の変化及び利用者保護の重視といった現下の金融機関を取り巻く環境に的確に対応するため、以下の基本方針に基づき、引き続き厳正で実効性ある検査の実施に努めることとする。

なお、「経済財政基本運営と構造改革に関する基本方針2004」において、平成16年末を目途に「金融重点強化プログラム」(仮称)を策定することとされているが、これに対応した施策については、本プログラムの策定後、機動的に実施する。

1 検査重点事項

  • (1)強固で活力ある金融システムの構築に向けた対応

    平成15検査事務年度においては、「金融再生プログラム」を踏まえ、債務者企業の再建計画を検証するなど、主要行に対する深度ある検査等を推進した。その結果、主要行の債務者には事業再生に向けた取組みが進捗しているものと、問題の先送り等により企業実態の悪化が進んでいるものとの二極分化の進行が認められた。これも踏まえ、大口与信管理態勢検査を実施したところである。

    平成16検査事務年度においては、「金融再生プログラム」における主要行の不良債権問題の総仕上げの年にあたることを踏まえ、主要行に対する深度ある検査を一層推進する。また、平成17年4月に予定されているペイオフ解禁拡大への対応状況を重点的に検証する。さらに、近時の市場動向の変化等を踏まえ、市場関連リスク等の管理態勢を重点的に検証するとともに、システムリスク管理態勢についても引き続き検証する。

    • (1)主要行グループに対する深度ある検査の一層の推進

      主要行グループについては、「金融再生プログラム」の集中調整期間の終了に向けて、通年・専担検査体制の下、検査局における指導態勢を充実させる等により、資産査定の厳格化の徹底等を図り、深度ある検査を一層推進する。

      このため、自己査定と検査結果の集計ベースでの格差公表、大口債務者に対する主要行間の債務者区分の統一、繰延税金資産の厳正な検証等を継続して実施する。

      これらに加え、平成16年9月期については、前期のフォローアップに留めず特別検査を実施する。その際には、先般の大口与信管理態勢検査の結果等も踏まえるとともに、直近のデータに基づき新規対象先も拾い上げ、債務者区分の検証を実施する。これに併せ、再建計画を有する債務者については再建計画の検証を十分に行うとともに、必要に応じ、大口与信管理態勢検査を実施することとする。

      また、DES(デットエクイティスワップ)類似の取引や債権流動化等の高度かつ複雑な取引について重点的に検証する。

      さらに、これらに係る経営管理(ガバナンス)についても重点的に検証する。

      このほか、情勢の変化等に適時・適切に対応して所要の施策を講じる。

    • (2)ペイオフ解禁拡大への対応状況の検証

      ペイオフ解禁拡大を控え、地域金融機関に対する金融検査マニュアル2巡目検査を平成17年3月末までに実施する。

      また、引き続き、預金保険機構と連携を図りつつ、金融機関の名寄せデータの整備状況を検証する。

      さらに、決済用預金の導入のためのシステム変更にあたって、プロジェクト管理、外部委託管理等のシステムリスク管理態勢等を検証する。

  • (2)中小企業再生や地域活性化への貢献に係る対応

    中小企業再生や地域経済の活性化を推進するため、地域金融機関における中小企業再生に向けた支援の取組み状況の検証を行うとともに、中小企業の経営実態等に即した検査を推進する。

    • (1)地域金融機関における中小企業再生に向けた支援の取組み状況の検証

      地域金融機関については、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」及び本年2月に改訂された金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編](以下、「マニュアル別冊」という。)を踏まえ、中小企業再生の支援に向けた取組み状況を重点的に検証する。

    • (2)中小企業の経営実態等に即した検査の推進

      中小企業向け融資については、マニュアル別冊に基づき、企業の経営実態等に即した的確な検査を推進するとともに、本別冊の浸透のため、以下の施策を講じる。

      • 検査モニターによるマニュアル別冊の運用状況の確認

        検査モニターにおいて、被検査金融機関からマニュアル別冊の運用状況について確認し、本別冊の運用の適切性を確保する。

      • 研修の実施による周知徹底や広報

        マニュアル別冊について検査官に対する研修の実施等を通じて引き続き周知徹底を図るとともに、金融機関や債務者側に対する広報に努める。

  • (3)金融機関の利用者保護の確保、利用者利便の向上に向けた対応

    金融機関の利用者保護の確保、利用者利便の向上を促す観点から、顧客情報管理態勢、説明責任の履行状況、忠実義務等の法令等遵守状況、苦情等処理態勢の検証を行う。また、これらの検証をより一層深度あるものとするための施策を実施する。

    • (1)顧客情報管理態勢の検証

      金融機関の営業部店において顧客情報の漏洩・流出が頻発していることに鑑み、顧客情報の漏洩・流出等を防止するための管理態勢(顧客情報への不正アクセス防止等システム上の安全措置の実施状況を含む)を重点的に検証する。また、顧客情報の保護の観点から、グループ内で顧客情報を共有する場合の情報管理の適切性等について検証を行う。これらの検証に当たっては、平成17年4月から全面施行される「個人情報の保護に関する法律」を十分に踏まえることとする。

    • (2)説明責任の履行状況等の検証

      • 預金者・保険契約者・投資家に対する説明責任

        金融商品の多様化等を踏まえ、金融商品の内容や当該金融商品の包含するリスクについて、説明内容、説明方法、顧客の承諾の確認方法や、そのための態勢整備の適切性について検証を行う。

      • 債務者等に対する説明責任

        契約時点における取引等の内容や取引等の包含するリスク等についての説明内容、説明方法、顧客の承諾の確認方法や、そのための態勢整備の適切性について検証を行う。その際、取引関係の見直し等を行う場合に、各預金等受入金融機関の営業上の判断に即した説明を適切に行っているか(金融検査や金融検査マニュアル等を口実とするなど不適切な説明が行われていないかを含む)について重点的に検証を行う。

    • (3)苦情等処理態勢の検証

      金融機関において顧客からの苦情等がみられるにもかかわらず、その発生原因の分析・検討がなされず、適切な再発防止策が講じられないまま、類似の苦情等が発生している状況に鑑み、苦情等に対処する体制の整備状況について検証を行うほか、苦情等への対応が適切に行われているか、経営上重要な苦情等について経営陣に的確に報告されているか等について検証を行う。

    • (4)検査情報受付窓口の設置

      金融機関の利用者保護の確保、利用者利便の向上に関して、より一層深度ある検証を行う観点から、検査中の被検査金融機関名を金融庁及び財務局のホームページ上に公表し、一般の利用者から広く当該金融機関についての情報を受け付ける体制を整備する。

  • (4)検査態勢の充実等

    金融機関を取り巻く環境に的確に対応する等の観点から、検査手続に係る指針の策定、重点的かつ機動的な検査の実施、双方向の議論の充実による深度ある検査の実施、指導態勢の充実等の組織的な取組み等、検査態勢の充実等を図る。

    • (1)検査手続に係る指針の策定

      明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政を遂行する等の基本的考え方の下に、検査の実施手続をより一層明確化するために、現行の基本事項通達等を見直して、検査手続に関する指針を策定・公表する。

    • (2)重点的かつ機動的な検査の実施

      検査マニュアルの下での検査の定着、金融機関を取り巻く環境への的確な対応等を考慮し、各金融機関のリスク特性等に応じてメリハリをつけた検査や特定のリスクに焦点を当てた検査など、より重点的かつ機動的な検査を実施する。

    • (3)双方向の議論の充実による深度ある検査の実施

      経営管理(ガバナンス)の重要性に鑑み、検査班と金融機関の経営陣等との双方向の議論をより一層充実させることによって深度ある検査を実施する。

    • (4)指導態勢の充実等の組織的な取組み

      • 指導態勢の充実等

        検査情報の共有、目線の統一、検査の質の向上等を図る観点から、検査局における指導部門の充実や財務局における検査指導官の設置などによって指導態勢の充実を図る。また、ITを活用した部内研修などによって研修の充実を図る。

      • 検査・監督の連携体制の強化

        実効性の高い金融検査・監督を行うため、それぞれの独立性を確保しつつ、「検査・監督連携会議」や随時の情報交換等を通じ、検査局・監督局間の十分な意思疎通を確保するほか、検査結果通知後の銀行法第24条等に基づく報告に関するヒアリングに検査局が参加し、検査結果の的確なフィードバックを行うなど、検査・監督の連携体制の強化を図る。

      • 財務局との連携強化

        検査局において財務局との連絡調整体制を整備するとともに、検査監理官等会議を積極的に活用し、検査局及び財務局の連携強化に努める。

      • 証券取引等監視委員会との同時検査等

        証券取引等監視委員会との同時検査等を引き続き推進するほか、検査体制の一元化の準備を進める。

    • (5)バーゼル II への対応

      バーゼル銀行監督委員会で検討されてきたバーゼル II (いわゆる新BIS基準)が平成18年末から導入される予定であることを踏まえ、これに対応した検査手法及び検査マニュアルの検討を行う。

2 業態別重点事項

金融検査においては、上記1の検査重点事項に加え、以下のとおり、業態別の重点事項を踏まえて、的確な実施に努める。

  • (1)預金等受入金融機関

    預金等受入金融機関については、近時の市場動向の変化等に的確に対応したリスク管理態勢、本人確認法等に沿った預金口座等の適切な管理を含めた法令等遵守態勢、高度かつ複雑な取引、これらに係る内部監査を含めた経営管理(ガバナンス)の状況について重点的に検証を行う。

  • (2)信託銀行

    信託銀行については、信託業務の特性を踏まえ、銀行勘定・信託勘定間の取引の適切性や忠実義務・善管注意義務等の履行状況について重点的に検証を行う。

  • (3)保険会社

    保険会社については、コーポレートガバナンスの状況、保険募集の適切性、保険引受リスク管理態勢(損害保険会社の再保険リスク管理態勢を含む)のほか、資産運用リスク管理態勢や責任準備金等の積立ての適切性等の資産・負債の特性を踏まえた財務の健全性について重点的に検証を行う。

  • (4)証券会社

    証券会社については、顧客資産の分別管理状況、自己資本規制比率の正確性、法令等遵守態勢について重点的に検証を行う。また、インターネットを経由した株式取引に係るリスク管理態勢及び法令等遵守態勢について重点的に検証を行う。

  • (5)投資信託委託業者・投資顧問業者

    投資信託委託業者及び投資顧問業者については、受託者責任の観点から、運用の適正性確保のための態勢、運用リスク管理態勢、忠実義務の履行状況について重点的に検証を行うとともに、書面交付義務等の法令等遵守状況について重点的に検証を行う。

  • (6)外資系金融機関

    外資系金融機関(銀行、証券会社等)については、複数業態にまたがるグループの一体的な実態把握に努めつつ、上記の業態別の事項を踏まえ、法令等遵守態勢及びリスク管理態勢について検証を行う。法令等遵守状況に関しては、特にマネーロンダリングについて重点的に検証を行う。また、高度かつ複雑な取引について重点的に検証を行う。

  • (7)その他金融機関

    貸金業者については、貸金業の規制等に関する法律を踏まえ、金利規制及び取立て行為規制等の法令等遵守状況について重点的に検証を行う。

    また、前払式証票発行者については、発行保証金の供託状況等について重点的に検証を行う。

  • (8)政策金融機関・郵政公社

    政策金融機関・郵政公社については、各機関の特性も踏まえ、民間金融機関に適用している「金融検査マニュアル」、「保険検査マニュアル」等を用いて検査を実施する。


II .検査基本計画

 II .検査基本計画

 II .検査基本計画

  • (注1) 上記検査実施予定数は変動することがあり得る。

  • (注2) 主要行及び主要行グループの持株会社については、通年・専担検査の枠組みの下、同一社に対し通常検査、特別検査等複数回の立ち入りを行っているが、あわせて1件とカウントしている。

  • (注3) 銀行持株会社は銀行に、保険持株会社は保険会社に、証券持株会社は証券会社に含めている。

  • (注4) 15検査事務年度は、上記のほかに証券取引所検査を1件実施している。

サイトマップ

ページの先頭に戻る