平成18年1月20日
金融庁

17年11月に実施した「中小企業金融モニタリング」の取りまとめ結果の公表について

「中小企業金融モニタリング」は、中小企業金融の円滑化に向けた取組みの一環として、財務局・財務事務所職員が、商工会議所等の協力を得て、各地域における中小企業から見た中小企業金融の実情等について的確に把握するために四半期毎に実施しているものです。

今般、17年11月に実施した中小企業金融モニタリングの結果を以下のとおり取りまとめましたので公表いたします。

  • 1.  モニタリング聴取先について(別紙1

  • 2.  ヒアリング結果概要

    • (1)中小企業金融に関する最近3ヶ月間の貸出動向について(別紙2)

    • (2)中小企業から見た地域における中小企業金融の実情等について(別紙3

    • (3)中小企業金融の円滑化策の浸透を示す事例について(別紙4

  • 3.  「中小企業金融モニタリング」の活用状況について(別紙5

問い合わせ先

金融庁 TEL 03-3506-6000
総務企画局政策課(内線3167、3168)


別紙1)

1.モニタリング聴取先について

全国47都道府県の商工会議所、商工会連合会、商工会、中小企業団体中央会、商工会議所連合会、中小企業家同友会等の経営相談に携わる者438人(173団体)からヒアリングを行いました。

モニタリング聴取先について

(注)当モニタリングは毎回同じ訪問先に調査を行うといった定点観測ではないため、ヒアリング対象数、対象先が調査実施毎に異なる場合があります。


別紙2)

2.ヒアリング結果概要

(1)  「中小企業金融に関する最近3ヶ月間の貸出動向について」のヒアリング結果概要

各地域毎にばらつきは見られるものの、関東・東海・四国・九州・沖縄において、積極的になった、やや積極的になったとの回答が過半数を超えています。また、全地域において、消極的になった、やや消極的になったとの回答が10%を下回っており、この数字を見る限りにおいては中小企業金融の円滑化が進んでいると言えます。

「中小企業金融に関する最近3ヶ月間の貸出動向について」のヒアリング結果概要

【業態毎】

最近3ヶ月の動向 主要行 地方銀行
第二地方銀行
信用金庫
信用組合
政府系金融機関 全体
1 積極的になった 21 9.5% 43 10.8% 65 16.9% 95 23.0% 224 15.8%
2 やや積極的になった 44 19.9% 143 36.0% 129 33.5% 152 36.8% 468 33.1%
3 変わらない 144 65.2% 180 45.3% 173 44.9% 145 35.1% 642 45.3%
4 やや消極的になった 10 4.5% 26 6.5% 14 3.6% 20 4.8% 70 4.9%
5 消極的になった 2 0.9% 5 1.3% 4 1.0% 1 0.2% 12 0.8%
合計 221 100.0% 397 100.0% 385 100.0% 413 100.0% 1416 100.0%

(注1)当モニタリングは毎回同じ訪問先に調査を行うといった定点観測ではありません。

(注2)上記表は、有効回答の内訳を表したものです。無回答及び不明は含まれておりません。このため、聴取人数と意見の合計数は一致しません。

・上記表の「4 やや消極的になった」・「5 消極的になった」を選択したものの理由

上記4・5の内容 主要行 地方銀行
第二地方銀行
信用金庫
信用組合
政府系金融機関 全体
新規融資拒否関連 6 30.0% 12 30.0% 5 18.5% 12 48.0% 35 31.3%
担保・保証関連 2 10.0% 15 37.5% 11 40.7% 3 12.0% 31 27.7%
金利関連 1 5.0% 0 0.0% 1 3.7% 0 0.0% 2 1.8%
融資条件関連 5 25.0% 4 10.0% 4 14.8% 3 12.0% 16 14.3%
審査手続関連 4 20.0% 5 12.5% 4 14.8% 5 20.0% 18 16.1%
その他 2 10.0% 4 10.0% 2 7.4% 2 8.0% 10 8.9%
合計 20 100.0% 40 100.0% 27 100.0% 25 100.0% 112 100.0%

(注)一つのヒアリング先から複数の意見が寄せられることもあるため、上記4・5の合計回答件数(82件)と上記表の全体の合計回答件数(112件)は一致しません。


別紙3)

(2)  「中小企業から見た地域における中小企業金融の実情等について」のヒアリング結果概要

 中小企業から見た地域における中小企業金融の実情等について以下の8項目を聴取しました。

【聴取項目の内容】

  • ア.融資姿勢に関するもの
  • イ.担保・保証に関するもの
  • ウ.経営指導・創業再生支援に関するもの
  • エ.融資の際の説明態勢に関するもの
  • オ.金融機関の資質・能力に関するもの
  • カ.融資の際の審査期間に関するもの
  • キ.金利に関するもの
  • ク.その他

 各項目に寄せられた主な意見は以下のとおりです。

ア.融資姿勢の実情について

  • 融資姿勢は積極的である。(北海道・東北・関東・東海・北陸・近畿・中国・四国・九州・福岡・沖縄)
  • これまで来なかった金融機関や本部担当者が出向くなど、積極的に融資を開拓しようとする姿勢が感じられる。(関東・北陸)
  • 貸し渋りや貸し剥がしの声はほとんど聞かれない。 (北海道・東北・東海・北陸・近畿・四国・九州)
  • 金融機関が企業を選別化する傾向があり貸出姿勢が二極化している。(北海道・東北・中国・四国・福岡)
  • 無担保・無保証・スピード審査を「売り」にする商品が増加する一方で、金利上乗せによるリスク分散やスコアリング方式による審査等、貸し手が優位に立ち、借り手の満足度が十分反映されているとはいい難い。(近畿)

イ.担保・保証の実情について

  • 無担保・無保証等の商品が増え、選択の幅が広がっている。(北海道・東北・東海・近畿・中国・四国・九州・福岡・沖縄)
  • 担保重視の姿勢が弱まってきている。(北陸・近畿)
  • 担保重視からキャッシュフロー重視へ転換している。(福岡)
  • 知的財産に関し特許出願中の段階で融資実行した案件や企業の技術力を加味した案件なども見られるようになり、金融機関の対応も変化しつつある。(北海道)
  • 保証協会の保証付融資を優先している。(北陸・近畿・中国)
  • 依然として担保・保証に依存した融資姿勢が見られる。(北海道・東北・東海・北陸・近畿・中国・四国・九州・福岡・沖縄)
  • 無担保・無保証の商品は拡充されているが、審査が厳しいなど担保・保証重視の姿勢は変わらない。(北海道・東北・近畿)

ウ.経営指導・創業再生支援の実情について

  • 経営相談担当部署を設置するなど、経営指導に積極的に取組むようになっている。(北海道・東北・東海・近畿)
  • 金融機関が、事業者を対象に異業種交流会、視察を行うなどビジネスマッチングの場を提供していることは評価できる。(東北・関東・北陸・九州・福岡・沖縄)
  • 創業支援のための組織作りや税理士会・商工会議所・商工会と連携するなど、サポート体制を整備する必要がある。(北海道・九州)
  • 場当たり的かつ金融機関の収益重視で借入を勧めるだけであり、企業育成という観点からの指導は行われていない。(東北・北陸・中国・四国・九州・福岡)
  • 創業時の融資制度は充実されてきているが、創業後3~5年を経て資金需要が更に必要とされる時の融資制度を整備する必要がある。(近畿)

エ.融資の際の説明態勢について

  • 説明態勢は整備され、融資拒絶等でも十分に丁寧な説明がなされており、苦情処理対応も良くなっている。(北海道・東北・近畿・中国・四国・九州・福岡・沖縄)
  • 最近では丁寧で詳細な説明があるとの声も多くなっており、リレーションシップバンキングへの取組み効果が出ている。(東海・北陸・中国)
  • 担当者により説明内容が異なる場合や、審査期間が長くなる場合における途中経過の説明がないなど対応が十分でない場合がある。(東海・近畿北陸・福岡)
  • 融資制度等についての説明能力は依然不足しており、もっとよく研修等をすべきである。(四国)
  • 融資申込みに際し、承諾しておきながら、急に話が覆り、資金繰りに窮した事例がある。(中国)

オ.金融機関の資質・能力の実情について

  • 企業の売上げのみで審査することなく、企業の将来性を見ることの出来る担当者が増えてきた。(東北・北陸)
  • 専門性を備えた人材が増加してきており、金融機関の目利き能力の向上が見られる。(北海道・東北・東海・北陸・近畿・九州・沖縄)
  • 支店長・担当者の資質・能力等に差があり融資が左右されるケースがある。(東北・関東・近畿・北陸・東海・中国・九州)
  • スコアリングシステムの導入が進んでいる反面、定性面での評価は遅れている。(関東・福岡)

カ.融資の際の審査期間について

  • 全般的に審査期間は短縮しており、迅速な対応がとられるようになった。(北海道・東北・東海・北陸・近畿・中国・四国・九州・福岡・沖縄)
  • 無担保・無保証商品が開発されたためか、審査期間は短縮傾向にある。(中国)
  • 本部案件が増加してきており時間がかかっている。(東北・九州)

キ.金利の実情について

  • 企業の経営状態に応じた適切な金利設定が行われており、不当に金利設定されたとの話はない。(北海道・近畿・九州・沖縄)
  • 金融機関の競争が厳しいこともあってか金利は低下傾向にある。(東北・東海・九州)
  • 企業の財務内容による信用格付けにより、金利に企業間格差が見られる。(北海道・東北・関東・北陸・近畿・中国・四国・福岡)

ク.その他の寄せられた意見

  • 企業は取引先の開拓を望んでいる。金融機関も中小企業のビジネスマッチングに取り組んでいるが、もっと小さな企業も紹介して欲しい。(福岡)
  • 金融機関は、どこを直せばランクアップするのか債務者区分を借り手に情報開示して欲しい。これにより、企業の経営改善が進展するのではないか。(東北)
  • 過去の貸し渋り問題等を踏まえ、複数の金融機関と取引する企業が増えている。(北陸)

別紙4)

(3)  「中小企業金融の円滑化策の浸透を示す事例について」のヒアリング結果概要

  • 中小企業金融モニタリングでは、中小企業金融の円滑化策の浸透を示す事例として、毎回、検査・監督に関する特定のテーマを設定し調査を行っています。
  • 今回の質問調査事項は、前回と同様以下のとおりです。

金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編](改訂版)の中小企業への浸透状況について

【寄せられた主な意見】

  • マニュアル別冊自体は認知しているが、詳細までは関心が少ない。
  • 中長期の資金繰りや経営計画を意識している中小企業の中には、マニュアル別冊の内容を把握しているところも出てきたが、未だ多くの中小企業には浸透していない。
  • リーフレットの店頭設置、個別経営指導、相談会等を通じ、徐々にではあるが浸透している。
  • 講習会の開催や新聞へ広報記事を掲載して周知したほうがよい。

別紙5)

3.「中小企業金融モニタリング」の活用状況について

(1)  ヒアリングの実施

中小企業金融モニタリングで得られた個別金融機関に関する情報を活用し、当該金融機関の対応方針、態勢面等についてヒアリングを行いました。

(2)  意見交換会における要請(金融庁での活用)

金融庁幹部と業界団体代表者の意見交換会(毎月開催)等において、中小企業金融モニタリングで得られた事例について紹介しています。具体的には、事業からのキャッシュフローを重視し、過度に担保・保証に依存しない融資を含む健全な中小企業に対する資金供給の一層の円滑化や、これまでの取引関係や顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえた、顧客の理解と納得を得るような十分な説明の実施、金融検査マニュアル別冊の周知等について要請を行っています。

(3)  地域金融円滑化会議の活用等(財務局等での活用)

都道府県毎に設置し、半期毎に開催している「地域金融円滑化会議」(金融当局、中小・地域金融機関及び関係業界団体から構成)や、財務局幹部等と金融機関代表者との面談など諸々の機会を通じて、顧客への説明態勢の整備や相談・苦情処理機能の強化について注意喚起を行うとともに、中小企業金融の円滑化に向けた取組みの要請を行っています。

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