平成18年6月21日
金融庁

三井住友海上火災保険株式会社に対する行政処分について

  • I . 三井住友海上火災保険株式会社(以下「当社」という。)については、当庁検査の結果(平成18年4月6日通知)及び保険業法第128条第1項に基づく当社からの報告により、以下のような事実が確認された。

    • 1.  第三分野商品に係る保険金の不適切な不払い

      平成14年度から17年度の過去4年間にわたり、以下のような多数の第三分野商品に係る保険金の不適切な不払い(927件、166百万円)が認められた。このうち、終身医療保険に関しては、不適切な不払いが顕著であった(305件、61百万円)。

      • (1)保険責任開始以前の発病(以下「始期前発病」という。)について、約款上は医師の診断により始期前発病が認定された場合に免責が適用されることとなっているが、当社社員が医師の診断に基づかずに自ら判定を行う等、免責が不適切に適用された事例(618件)

      • (2)被保険者等の故意又は重過失責任に該当しないにもかかわらず告知義務違反による契約解除を行う等、告知義務違反の認定が不適切に行われた事例(16件)

      • (3)告知事項とは因果関係のない保険事故にもかかわらず告知義務違反が適用された事例(91件)

      • (4)代理店が被保険者本人からの告知を受けずに契約を行う等会社側に法令違反等があるにもかかわらず、告知義務違反が適用された事例(35件)

      • (5)告知義務違反について、会社側からの契約解除ができる期間である除斥期間が経過した後に解除権を行使している事例等(167件)

      これらは、保険業法第4条第2項第2号に掲げる事業方法書、同項第3号に掲げる普通保険約款に定めた事項のうち特に重要なものに違反するものと認められた。

      その原因として、以下に掲げるように、第三分野商品について、商品開発から支払査定、事後検証に至る保険金支払管理態勢に極めて重大な欠陥があることが認められる。

      • (1)当社は、従前から、始期前発病の取扱いに関し、医師の診断に基づかず社員自らが判定を行う等誤った運用が行われているが、何ら見直しが図られていない。

      • (2)終身医療保険の開発・販売に際して、告知義務違反による契約解除の適用に関する認定基準・手続き、査定体制等の態勢の十分な検討・準備を行っていない。

      • (3)販売した終身医療保険に関して、不払いと判断した案件については支払担当部門が再審査を行うこととしていたにもかかわらず、そのような運営を行っていない。

      • (4)支払担当部門からの情報や生命保険会社における保険金不払い報道を受けて行った実態把握のための調査は、着眼点等の検討が不十分であるため、上記のような不払いの実態を見落としている。

    • 2.  付随的な保険金の支払漏れ

      平成17年9月30日付で当局より報告を求めた、付随的な保険金の支払漏れに係る調査結果(27,173件、1,941.4百万円)について、その内容を再度検証したところ、当該調査において当社が支払不要又は調査の対象外としていた案件の中に、支払漏れが極めて多数(17,296件、719.1百万円)認められた。

      その原因として、以下に掲げるように、保険金の支払漏れに係る調査態勢及び保険金支払管理態勢に極めて重大な欠陥があることが認められる。

      • (1)当社の経営陣は、全ての顧客に対し保険金を公平かつ適切に支払う観点から、経営資源の積極投入等正確な調査を行う体制を構築していない。

      • (2)保険金支払担当部門は、調査対象となる保険金の正確な洗い出しについて商品部門等との協議を行っていない。

      • (3)支払漏れの調査対象となった事案について、支払漏れの保険金を受け取ると更改契約の保険料が高くなるといった誤った説明を顧客に対して行う等によって保険金の受取りを辞退させ、請求放棄として処理している事例が多数発生(2,406件)している。

      • (4)過去においても、保険料への影響等の説明が不適切であったことから、顧客が保険金の受取りを辞退し請求放棄となっている事案が多数発生(9,360件)しており、そのような実態について把握することなく調査対象外としていた。

    • 3.  不適切な代理店管理

      当社の代理店においては、以下のような法令違反が認められた。

      • (1)保険料の立替えを行った事例(保険業法第300条第1項第5号違反:120件)

      • (2)契約者に重要事項の説明を行っていない事例(保険業法第300条第1項第1号違反:6件)

      • (3)顧客の名前の印鑑の不正使用を行う等により契約者の意思を確認しないまま無断で継続契約を行っていた事例(保険業法第307条第1項第3号該当:36件)

      その原因として、代理店及び代理店を管理する課支社等における法令等遵守の意識が乏しく、また、当社の代理店に対する管理態勢が極めて不適切であることが認められる。

    • 4.  苦情処理態勢・不祥事件処理態勢

      保険金支払担当部門において、苦情の定義を実質的に変更し、限定する内容の社内通知を行っている。このため、保険金不払いに関する苦情が多数寄せられているにもかかわらず、適切な対応がなされていない事例が認められる。

      さらに、不祥事件のおそれのある苦情について調査・確認する等の対応が適切になされず、コンプライアンス部門においても実態を把握していない。

      このように、苦情処理態勢及び不祥事件処理態勢は極めて不十分と認められる。

    • 5.  海外拠点管理態勢

      海外子会社(英国)において、当該子会社の代表取締役(現在も就任)が、(1)契約書を取り付けていないまま支出を行っている、(2)支払理由を偽った支出を行っている、(3)必要とされる取締役会の承認を得ない支出を行っている、等の事案が認められた。

      本社海外担当部門は、これらが横領、背任等の不祥事件のおそれがある事案であるにもかかわらず、徹底した調査を行っていない。また、当該者に対して経理手続きが不適切なことを口頭にて注意するに留まり、特段の処分を行っていない。

      このように、本社海外担当部門の海外拠点に対する管理・監督機能は、極めて不十分であり、経営陣による内部統制は機能していないものと認められる。

    • 6.  経営管理態勢

      経営陣は、保険金の不適切な不払いについて、問題の存在を把握していなかった。また、保険金の支払漏れについても、担当部門に実態の調査や対応策の検討、実施を任せていた。このように、経営管理(ガバナンス)機能は極めて重大な欠陥があるものと認められた。

      また、内部監査態勢については、以下のような問題が認められ、独立性が確保されておらず十分に機能していないなど、極めて不十分なものとなっている。

      • (1)事務不備や収益目標等の達成状況の調査を中心とする内部監査を行っており、保険金の不払いについては、監査項目にも取り上げず実態把握も不十分であった。

      • (2)保険金の支払漏れについては、平成14年に指摘を行っているものの、その後、改善策の定着状況や有効性の検証を行わず問題無しと判断している。

  • II . このため、本日、当社に対し、保険業法第132条第1項及び第133条の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。

    • 1.  保険業法第133条の規定に基づく命令

      • (1)保険契約の締結及び保険募集の業務(保険業法第3条第5項の免許に係るもの)並びに保証証券の業務(同条第6項)について停止すること(損害保険代理店又は他の保険会社に委託しているもの及び他の保険会社から受託しているものを含む。ただし、自動継続による契約の更新及び自動車損害賠償責任保険に係るものを除く。)。

        • 期間 : 平成18年7月10日(月)から7月23日(日)まで(2週間)

      • (2)第三分野商品(医療保険特約付健康長期保険、傷害疾病保険、疾病特約付普通傷害保険、所得補償保険、医療費用保険及び介護費用保険をいう。)に係る保険契約の締結及び保険募集の業務について停止すること(ただし、自動継続による契約の更新に係るものを除く。)。

        • 期間 : 平成18年7月10日(月)から第三分野商品に係る経営管理態勢、保険金支払管理態勢及び商品開発管理態勢の抜本的な改善が、下記により提出される業務改善計画の実施状況により確認されるまでの間

      • (3)新規の保険商品の認可の申請、既存の保険商品の改訂の届出、他の保険会社等金融機関の代理・代行業務の認可の申請等に関する業務について停止すること。

        • 期間 : 平成18年6月22日(木)から平成19年6月21日(木)まで(1年間。ただし、平成18年12月22日(金)以降、経営管理態勢、保険金支払管理態勢及び商品開発管理態勢の抜本的な改善が、下記により提出される業務改善計画の実施状況により確認される場合には、それまでの間。)

      • (4)外国における子会社の設置認可の申請並びに外国における支店・事務所・駐在員事務所の設置及び外国における合弁会社の設立の届出に関する業務について停止すること。

        • 期間 : 平成18年6月22日(木)から9月21日(木)まで(3ヶ月間)

    • 2.  保険業法第132条第1項の規定に基づく命令

      • (1)ガバナンスの改善・強化

        • 業務運営に係る報告態勢、意思決定プロセスやガバナンスの抜本的な改革を実現するための経営体制を構築すること。

        • 内部監査態勢の抜本的な改善・強化を図ること(監査要員及び監査方法の充実・強化を含む。)。

        • 本部による海外拠点の管理・監督機能を強化すること。

      • (2)保険金支払管理態勢の改善・強化等

        • 公正かつ的確な審査体制・手続きの確立、システムの整備を含め、保険金支払管理態勢の抜本的な見直し・改善を図ること。

        • 保険募集業務、保険金支払業務等を含め、顧客対応に係る全ての業務について検証を行った上で、商品開発管理態勢の抜本的な見直し・改善を図ること。

        • 判明した保険金の不適切な不払い及び支払漏れについて、迅速かつ適切な顧客対応を図るための態勢を整備すること。

      • (3)契約者保護、契約者利便の改善・強化

        • 適切な保険募集や顧客説明を行うための社員及び代理店に係る管理態勢を確立すること。

        • 苦情対応・処理に関する権限、不祥事件の調査・処理機能を各々一元化するなど、苦情対応・処理態勢及び不祥事件処理態勢の抜本的な見直し・改善を図ること。

      • (4)法令等遵守態勢の改善・強化

        • 法令等遵守態勢の抜本的な見直し・改善を図ること。

        • 法令等諸規則に抵触するおそれのある事案について徹底的な調査及び原因分析を行い、再発防止のための抜本的な改善策の策定を行うこと。

      • (5)上記の業務停止命令、業務改善命令に至るようになった問題等の原因となった役職員の責任を明確化すること。

      • (6)上記(1)から(5)等に係る事項に関して、平成18年7月21日(金)までに、具体策及び実施時期を明記した業務改善計画を提出すること。

      • (7)業務改善計画の実施完了までの間、計画の進捗・実施及び改善状況をとりまとめ、改善計画提出後1年間が経過するまでについては1ヶ月毎に、それ以降については3ヶ月毎に報告すること。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
監督局保険課(内線3375、3342)