平成12年7月28日
金融庁
「平成12検査事務年度検査基本方針及び基本計画」の公表について
公正で透明な金融行政が求められる中で、金融検査の重要性はますます高まってきている。こうした状況を踏まえ、金融検査にかかる事務運営の透明性の向上を図る観点から、平成12検査事務年度検査基本方針及び基本計画を公表するものである。
本件についての問い合わせ先
金融庁
検査部総務課
黒澤(03-3506-6060)
橋本(03-3506-6061)
加藤(03-3506-6065)
平成12年7月28日
金融庁
平成12検査事務年度検査基本方針及び基本計画
I . 検査基本方針
金融庁は、安定的で活力ある金融システムの構築と、金融市場の効率性・公正性の確保をその業務の主要課題と位置付け、もって国民の利益の向上や国民経済の発展に資することを目的として、去る7月1日に発足した。
金融庁においても、引き続き、市場規律と自己責任原則を基軸とした、明確なルールに基づく公正かつ透明な金融行政を推し進めることにより、預金者等の利便性の向上や保護、信用秩序の維持等を図っていく必要がある。特に、金融検査に対しては、早期是正措置や金融検査マニュアルの導入などを背景に、これまで以上にその質的水準の向上や手続きの透明性が求められており、公正で透明性の高い検査を実施する必要がある。
また、平成14年4月に予定されている、いわゆるペイオフの解禁を控え、より安定的な金融システムを構築するため、効率的な検査を実施する必要がある。同時に、金融技術や情報通信技術の発達、金融商品における時価評価の導入など、金融環境の急速な変化に的確に対応した実効性の高い検査を実施する必要がある。
こうした課題を踏まえ、平成12検査事務年度(平成12年7月~平成13年6月)においては、以下の点に重点を置きつつ、検査の的確な実施に努めるものとする。
1. 公正で透明性の高い検査の実施
(1)検査マニュアルの整備・充実
金融検査マニュアル及び保険検査マニュアルの整備に続き、証券検査マニュアルの策定を含め、金融機関等を巡る環境変化に対応したマニュアルの整備・充実を図り、検査の透明性の向上に努める。
(2)意見申出制度の本格的実施
立入検査において、検査官と金融機関等との間で十分に議論を尽くすとともに、これを促すため、検査官と金融機関等との間に意見相違が生じた場合に、金融機関等から意見の申し出ができる制度を本格的に実施し、検査の公正性の向上に努める。
(3)検査指導官の活用
検査官の指導訓練及び検査実施状況の把握等を専門に行う検査指導官を配置し、指導の強化を図ることにより、検査マニュアルの的確な適用を含め、検査の質的向上に努める。
(4)人材育成の充実・強化
検査経験の少ない検査官に対して実地研修を実施するなど、研修の充実・強化を図るほか、金融技術や情報通信技術の発達、金融のグローバル化等に迅速かつ的確に対応するため、民間の専門家の登用や海外当局との人材交流等に努める。
2. 効率的で実効性の高い検査の実施
(1)濃淡ある検査の実施
オフサイト・モニタリングを通じて得られた情報や検査結果等を踏まえ、検査頻度や検査内容について濃淡をつけた効率的・機動的な検査の実施に努める。
(2)金融グループ・コングロマリットの一体的な実態把握
連結ベースでの資産内容やグループ内の取引関係等を的確に把握するため、各業態を横断的に所管している当庁の特色を活かし、親金融機関等と金融機関等子会社、海外拠点の一体的な実態把握に努める。
(3)部門制の充実・強化
検査官の増員、部門の増設による検査体制の拡充に加え、部門毎の業務の継続性を高めることにより、各業態の特色に対応したより専門性の高い検査を実施する。
また、市場関連リスク、システムリスクといった、専門性の高い分野に係るリスク管理態勢の確認にあたっては、必要に応じて専門班を編成し、深度ある検査の実施に努める。
(4)内部監査・外部監査の活用
金融機関等の内部監査の有効性を的確に評価し、実効性ある内部監査の実施を促すとともに、内部監査・外部監査を活用した効率的な実態把握に努める。
(5)実効性の高い検査の実施
制度の企画立案から検査・監督・監視までを一貫して担当することとなる金融庁の特色を踏まえ、検査において、経営の問題点を金融機関等に対して的確に指摘するとともに、それが適時適切な問題点の是正につながるよう、監督上の措置をとる監督部局や、証券取引等監視委員会等と緊密な連携を維持する。
3. 業態別の検査重点事項
(1)信用組合集中検査
本年4月に都道府県から検査監督事務の移管を受けた信用組合については、資産内容等の実態把握を速やかに行うため、平成13年3月末までに立入検査を一巡することを目途として、財務局において集中検査を実施する。
また、財務局の検査の進捗状況等に応じて、本庁検査部に新設された検査応援部門を活用するなど、円滑な検査の実施に努める。
(2)金融機関検査
金融機関検査については、金融検査マニュアルに基づき、法令等遵守態勢、リスク管理態勢について、的確な実態把握に努める。
特に、主要行、地方銀行、第二地方銀行については、金融監督庁発足後、二巡目の検査になることを踏まえ、前回検査における指摘事項の改善状況について、重点的に確認する。
また、信用金庫については、資産内容等の実態把握のための検査を概ね一巡しているが、残りの信用金庫についても、平成13年3月末を目途として立入検査を一巡する。
さらに、外国金融機関については、担当検査部門の充実を踏まえ、検査頻度や深度の向上に努める。
(3)保険会社検査
保険会社については、平成11年4月から早期是正措置制度が導入されたことを踏まえ、前事務年度において、生命保険会社を中心に資産内容等の実態把握のための検査を集中的に実施したところである。
本事務年度においては、新たに整備された保険検査マニュアルに基づき、保険募集管理などの法令等遵守態勢、リスク管理態勢について、的確な実態把握に努める。
(4)証券会社等検査
証券会社については、前事務年度に引き続き、資産内容の健全性、早期是正措置制度の基盤となる自己資本規制比率の正確性、顧客資産の分別管理の適切性について、重点的に確認する。その際、必要に応じ、証券取引の公正の確保に関して検査を実施している証券取引等監視委員会と連携を図り、同時検査を行うなど、効率的で実効性の高い検査の実施に努める。
II . 検査基本計画
1 | . 金融機関検査の実施予定数 | ||||
(参考:前検査事務年度実績) | |||||
銀 行 | 50 | 行 | 59 | ||
信用金庫 | 75 | 金庫 | 244 | ||
信用組合 | 255 | 組合 | 7 | ||
計 | 380 | 行(金庫・組合) | 310 | ||
2 | . 保険会社検査の実施予定数 | ||||
保険会社 | 10 | 社 | 23 | ||
3 | . 証券会社等検査の実施予定数 | ||||
証券会社 | 45 | 社 | 84 | ||
証券投資信託委託会社 | 5 | 社 | 4 | ||
投資顧問業者 | 20 | 社 | 32 | ||
計 | 70 | 社 | 120 |
(注) 上記検査実施予定数は、当初計画として設定しているものであり、金融機関等を取り巻く現下の厳しい経営環境下において適時の実態把握に的確に対応するため、弾力的な運用を行うこととしていることから、実施予定数は変動することがあり得る。