平成12年11月13日
金融庁

「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の一部を改正する法律」の施行に伴う政令案に対するパブリック・コメントの結果について

金融庁では、標記政令案について、10月18日(水)から10月31日(火)にかけて公表し、広く意見の募集を行いました。多数の御意見を御提出いただいた皆様には、政令案の検討に御協力いただきありがとうございました。

寄せられた意見のうち主なものとそれに対する金融庁の考え方は、次のとおりであります。

○資産の流動化に関する法律施行令

○投資信託及び投資法人に関する法律施行令


<資産の流動化に関する法律施行令案について>

(1) 第3章について

第3章(特定目的信託制度)の諸条項について、投資家に対する多様な商品の提供を可能とし、委託者の円滑な資金調達に資するという観点から、施行後の委託者、投資家等のニーズの動向等も踏まえ、随時必要な見直しを行って欲しいとのご意見をいただきました。

本政令の施行後も、実務上の必要性、投資家のニーズ、社会経済情勢の変化等を踏まえ必要な見直しを適切に行って参ります。

(2) 第30条について

資産の流動化に関する法律施行令(以下、「施行令」といいます)案第30条第1号に規定する「あらかじめ定められた金額の分配を受ける種類の受益権」(以下、「社債的受益権」といいます。)が、他の受益権より優先的に金銭の分配を受けることができる種類の受益権(以下、「優先受益権」といいます。)のことを指すとすると、施行令案第30条に規定されている条件は厳し過ぎるものであり、特定目的信託における商品設計の自由度を確保するために、より緩やかなものとするべきではないかとのご指摘がありました。

社債的受益権はあくまで「あらかじめ定められた金額」の分配を受ける受益権であり、信託財産からの実績配当を前提として「あらかじめ定められた金額」を上限として金銭の分配を受ける種類の受益権とは異なるものです。

特定目的信託における商品設計において、社債的受益権は「あらかじめ定められた金額」の分配を、他の受益権に対して優先的に、受けることが想定されます。この意味で社債的受益権は、優先受益権の一形態と考えることができます。ただし、社債的受益権に限らず、その他にも様々な優先受益権の形態があり得ると考えられます。(例えば前述のような、分配を受けることができる金額に上限がある代わりに他の受益権より優先的に金銭の分配を受けることができる受益権が考えることができます。)どのような受益権を設計するかについては、資産の流動化に関する法律(以下、「法」といいます。)においては、原則として自由です。社債的受益権に該当するもの以外の実績配当を前提とする優先受益権については、もとより法169条第4号及び施行令案第30条の対象とはなりません。

社債的受益権に係る契約は、原則として損失補填又は利益補足を行う契約を締結することを禁じた信託業法第9条との関係に注意が必要となります。そこで、損失補填又は利益補足になることがないような社債的受益権に係る信託契約を示そうというのが、資産の流動化に関する法律施行令案第30条の趣旨です。

あらかじめ定められた金額の分配時期及び各分配時期ごとの分配額については、多種多様なものを想定することができますが、これらについて網羅的に信託業法第9条に違反しないための条件を定めることは非常に困難です。そこで当面、固定金利型の社債を想定した受益権を定めることとしたものです。

(3) 第44条について

本条は、利益を特定資産とする場合には、当該利益に課される公租公課の負担を行った上で行われるべきことを定めたものと考えられるが、反対にこの場合における公租公課の負担を免除する趣旨ともとれるとのご指摘がありました。

本条の趣旨は、あくまで利益を特定資産とすることについて、当該利益に対して課される公租公課の負担を行った上で行われるべきことを規定するものです。

<投資信託及び投資法人に関する法律施行令案について>

(1) 第3条について(特定資産の範囲)

投資信託及び投資法人に関する法律施行令(以下「投信法施行令」といいます)案第3条に規定する特定資産について、多様な資産への投資を可能にするため範囲を拡大するべきではないかとのご意見がありました。

特定資産の範囲については、多様な金融用品の組成を促すという観点からはなるべく幅広いことが望ましいと考えられますが、他方、投資信託制度は投資信託委託業者等が投資者の資金を預かって運用するものであることから投資者保護の観点が重要となります。そこで、投資信託委託業者の適格性の確保及び投資者のニーズ、その資産が取引される市場におけるニーズ等を勘案して特定資産の範囲を規定しました。

今後、それらのニーズ等を勘案し特定資産として必要と認められる資産があれば、政令に新たに追加することになります。

(2) 第8条について(金銭信託以外の投資信託の禁止の適用除外)

投信法施行令案第8条の金銭信託以外の投資信託の禁止の適用除外に関して、米国市場で近年、活発に取引されている株価指数連動型上場投資信託をわが国でも実現できるよう施行令に規定すべきであるとのご意見をいただきました。

ご指摘の上場投資信託のような商品につきましては、日本の市場において需要があり、かつ、それが市場において取引されることで投資者の利便性が図られ、市場の活性化に貢献するものであれば、わが国においてもその導入を検討する価値はあるものと考えます。いずれにしても、まずは日本市場における需要や商品の有用性、導入に伴う制度面における問題点等について調査したうえで検討して参ります。

また、既存の証券投資信託の統合が可能となるような規定振りとすべきではないかとのご意見もありました。

投資信託は、投資者の資金を主として有価証券等に対する投資として集合して運用し、その成果を投資者に分配することを目的とするものであり、金銭信託であることが基本です。このような投信法の趣旨に鑑みれば、信託財産を一体化することについて政令で措置することは困難と考えられます。

(3) 第17条及び第18条について(投資信託委託業に係る行為準則における適用除外)

「一部解約に伴う解約金の支払に応ずるために行うものである場合」等だけでなく、「収益分配金の支払を行うために行うものである場合」等についても投資信託財産相互間の取引禁止の例外とすべきではないかとのご意見がありました。

投資信託財産間等の取引は利益相反のおそれが高く原則禁止しています。この例外とできるのは、投資者保護に欠けるおそれが少ないと認められる取引であって、予想外の解約に対応して解約金を確保するときなど投資信託財産間等で取引することもやむを得ない場合に限られます。投資者保護上、ご指摘のようなケースを例外とすることは適当ではないと考えます。

(4) 第20条について(投資信託委託業者の利害関係人等の範囲)

投信法施行令案第20条第4号は、投資信託委託業者が投資法人債の募集の取扱い等を行う場合についても当該投資法人と密接な関係を有するものとしているが、投資法人債はエクイティ性を有する受益証券や投資口と異なることから、本号の対象から投資法人債を除くべきではないかとのご指摘がありました。

たしかに投資法人債と投資口の性格は異なりますが、投資信託委託業者が投資法人債の一定の割合以上の募集の取扱い等を行う場合には、その投資信託委託業者と投資法人との間には極めて密接な関係があるといえます。

(5) 第22条及び第34条について(特定資産の価格を調査する者)

投信法施行令案第22条第3号及び第34条第3号に規定する不動産鑑定士が行う価格調査の対象と法第16条の2第2項の規定による価格調査の対象が異ならないのであれば、二重に鑑定評価をすることになるのではないかとのご指摘がありましたが、複数の不動産鑑定士が別々に鑑定評価することでより望ましい調査結果を期待できるものと考えます。

(6) 第27条について(投資信託約款の内容を記載した書面の交付をしないことができる場合)

投信法施行令案第27条第1号について、適格機関投資家私募、一般投資家私募の区別なく書面交付を省略することを認めるべきではないかとのご指摘がありました。

適格機関投資家は投資に関する専門的な知識を有していますが、一般投資家私募の場合は必ずしもそうではないことから、投資者保護上、適格機関投資家私募の範囲に限定したものです。

(7) 第30条について(利益相反のおそれがある場合の受益者等への書面の交付)

投信法施行令案第30条第1項に規定する「同種の資産」の範囲については、取得しようとする投資対象に競合関係が発生するか否かで判断されるべきであり、この旨を事務ガイドライン等において明確化すべきではないかとのご指摘がありました。

また、施行令案第30条第4項について、営業所等として所有・賃借している不動産については、警備・保守等の物的管理を外部の専門業者に委託するのが通常であり、このような委託行為の場合には受益者等へ書面交付する必要はないのではないかとのご意見がありました。

これらの点につきましては、可能な限り解釈を明確化したいと考えています。

(8) 第33条及び第96条について(投資法人資産運用業に係る行為準則)

投資法人相互間において「個別の取引ごとに双方の投資法人のすべての投資主の書面による同意を得て行う取引」を取引禁止の例外としているが、投資法人はガバナンス機能を有していることから投資主総会における過半数の決議等で可能とすべきではないかとのご指摘がありました。

投資法人相互間における取引は利益相反を防止する観点から原則禁止とし、投資主の保護に欠けるおそれが少ないと認められる行為のみを例外とするものであることに鑑み、投資主総会での決議ではなく、すべての投資主の同意が必要であるとしたものです。

また、施行令案第33条第1号(4)の「投資法人相互間で取引を成立させる意図をもって行うものではないこと」とはいかなる場合を想定しているか不分明であるとのご指摘がありましたが、この点につきましては、例えば証券取引所において取引が成立した場合等が考えられます。

(9) 第39条について(認可兼業業務の範囲)

投信法施行令案第39条第1号で「投資信託委託業者がその運用の指図を行う投資信託財産又は資産の運用を行う投資法人の資産に属する不動産」以外の管理業務については金融再生委員会の認可を必要としているが、投資信託財産と第三者との共有物件について全体の管理を受託する場合についても認可が必要になるのかとのご質問がありました。また、不動産の管理業務については証券業や宅地建物取引業と異なり利益相反のおそれは少ないことから、認可の必要はないのではないかとのご指摘がありました。

投信法第34条の10第1項第2号の規定により、投資信託委託業者がその運用の指図を行う投資信託財産等の資産に属する不動産に係る管理業務については、金融再生委員会に届け出ることにより営むことができ、当該不動産が投資信託財産と第三者との共有物件である場合も同様です。

投資信託委託業者の兼業業務の範囲については、運用対象資産に関連する業務であるか、かつ投資者保護に欠けるおそれのない業務であるかどうか等を勘案して定めましたが、「投資信託財産等の資産に属する不動産以外」以外の不動産の管理業務を行う場合は独立した業務になることから、認可を得た上で兼業できることとしたものです。


金融庁としては、皆様からいただいた御意見等も踏まえ、本年11月30日(予定)からの本改正法等の施行に向けて、引き続き、適切に対応することにしています。

御協力ありがとうございました。

内容についての照会先

金融庁総務企画部企画課
電話:03-3506-6000(代表)(内線3515、3518、3520)

サイトマップ

ページの先頭に戻る