平成12年10月26日
金   融   庁
 

私設取引システム(PTS)開設等に係る指針の公表について

       

 標記については、別添の私設取引システム(PTS)開設等に係る指針を策定するとともに、指針に基づき総理府令の改正を行うことを検討しています。

 これについて御意見がありましたら、平成12年11月8日(水)までに、氏名又は名称、住所、所属及び理由を付記の上、FAX、郵便又はインターネットにより下記にお寄せください。ただし、お電話による御意見は御遠慮願います。

 なお、いただいた御意見等につきましては、氏名又は名称も含めて公表させていただく場合があるほか、個別に回答はいたしませんので、予めご了承ください。
 

御意見の送付先

金融庁総務企画部市場課、監督部証券課
 
郵便 :〒100-0013 東京都千代田区霞ヶ関3‐1‐1 中央合同庁舎4号館
FAX 03−3506−6251
ホームページ・アドレス :http://www.fsa.go.jp/

 

内容についての照会先

金融庁 TEL 03−3506−6000(代)
  総務企画部市場課  並木  (内線 3604)
  監督部証券課  吉野  (内線 3352)


ご意見の募集は終了しました。ご協力ありがとうございました。


平成12年10月26日
金   融   庁
 

私設取引システム(PTS)開設等に係る指針について

. 基本的考え方
 

 最近、証券会社等による私設取引システム(PTS)の開設といった、新たな形態の証券業の展開が見受けられる。こうした電子取引市場開設の動きは、市場間競争を通じて有価証券市場全体の効率性を向上させるとともに、流動性の低い有価証券の流通市場を整備すること等により、投資者の利便性の向上にも寄与するものである。
 他方、こうした新たな形態の証券業については、公正な取引の確保、投資者保護の観点から、従来の伝統的な証券業においては想定していなかった様々な問題が予想される。
 従って、金融庁としては、以上のような考え方の下、投資者保護等の観点も踏まえ、有価証券取引の電子化に資する環境整備を進めるため、私設取引システムの開設に係る一定の指針(ルール)を策定することとした。
 なお、12月1日の改正証券取引法施行と同時に、本指針に基づくPTS業務の認可を開始することとする。


. PTS業務における売買価格の決定方法の拡充
 

 PTS業務における売買価格の決定方法として、従来の「市場価格売買方式」、「顧客間交渉方式」に加え、更に、以下の二つの方法を認めることとする(総理府令)。

(1)

 顧客注文対当方式
 PTS業務における売買価格の決定方法として、「顧客注文対当方式(顧客同士の注文を対当させることにより取引を成立させる方法)」を認めることとする。
 なお、この方法は、顧客の指値を付け合わせる点において一定の価格形成機能を有するものの、成行注文や板寄せという手法が行われないという点において、取引所有価証券市場ほどには高度な価格形成機能を有しないものと整理される。

(2)

 売買気配提示方式
 PTS業務における売買価格の決定方法として、「売買気配提示方式(証券会社が売り気配及び買い気配を提示し、当該気配に基づき自己の計算で顧客との間で売買を行う方法)」を認めることとする。
 なお、この方法は、マーケットメイカーが自らの提示気配に基づき売買を行う点において一定の価格形成機能を有するものの、店頭売買有価証券市場ほどには高度な価格形成機能を有しないものと整理される。


. 公正な取引の確保のためのルールの整備
 
 証券会社は自主規制機能を有しないことから、PTS業務において、新たに売買価格の決定方法を追加すること等により一定の価格形成機能が生ずることとなれば、公正な取引の確保や投資者保護の面で問題を生じる惧れがある。
 このため、不公正取引を防止する等の観点から、取扱有価証券の性質も含め、その取引が行われる場の性質に応じたルールを課すことが必要である(事務ガイドライン)。

(1)

 価格情報等の外部公表
 PTS業務を含めた取引所外取引において公正な取引を確保する上では、その価格形成が公正かつ透明に行われる必要があり、そのためには、価格情報の報告・集中・公表が不可欠な要素となる。
 従って、株券等を取り扱うPTS業務について、当該システムの最良気配・取引価格等を、他の証券会社によるPTS業務と比較可能な形で即時に外部公表することを義務付け、これを認可の条件とする。

(2)

 取引高シェアに基づく数量基準の導入
 証券会社は自主規制機能を有しないことから、PTS業務において一定の価格形成機能を認めた結果、取引参加者が増加し、その規模(取引高シェア)が一定以上に拡大した場合には、公正な取引の確保の面で問題が生じる惧れが大きくなるとともに、主たる市場である取引所等の流動性を低下させ、公正な価格形成を阻害する惧れが生ずる。
 従って、上場株券等及び店頭登録株券等を取り扱うPTS業務について、取引高シェアが一定の水準を超える場合には、それに基づいて一定の措置を講ずることを義務付け、これを認可の条件とする。


. PTS規制(認可基準、定期報告)の見直し
 今回PTS業務の範囲を拡充することにより、従来の伝統的な証券業においては予想されなかった、新たな形態の証券業の展開が予想される。
 従って、投資者保護等の観点から、こうした新たな形態のPTS業務に対する認可の審査及び監督上の対応として、以下に掲げる認可基準や定期報告等について、所要の見直しを行うこととする(総理府令、事務ガイドライン)。

(1)

 取引量等についての月次報告

(2)

 内部管理体制の充実

(3)

 売買価格の決定方法を含めた取引ルールの顧客への十分な説明義務

(4)

 システム容量等の安全性・確実性の確保

(5)

 取引情報の機密保持のための予防措置

(別紙1)

証券取引法第二条に規定する定義に関する
総理府令の一部を改正する総理府令等の概要


 以下の事項を内容とする総理府令等の改正を行うこととする。

.証券取引法第二条に規定する定義に関する総理府令の改正
 証券取引法第二条第八項第七号ニに規定する総理府令で定める方法を、以下のとおり規定する。

(1)

 顧客の提示した指値が、取引の相手方となる他の顧客の提示した指値と一致する場合に、当該顧客の提示した指値を用いる方法

(2)

 証券会社(外国証券会社を含む。)が、同一の銘柄に対し自己又は他の証券会社若しくは登録金融機関(以下「証券会社等」。)の複数の売付け及び買付けの気配を提示し、当該複数の売付け及び買付けの気配に基づく価格を用いる方法(複数の証券会社等が恒常的に売付け及び買付けの気配を提示し、かつ当該売付け及び買付けの気配に基づき売買を行う義務を負うものを除く。)


.証券会社に関する総理府令及び事務ガイドラインの改正
 定期報告の見直し、認可基準等について所要の規定の整備を行うこととする。


.本改正事項については、平成12年12月1日から施行する。


(参考)証券取引法

二条マル8


 有価証券の売買又はその媒介、取次ぎ若しくは代理であつて、電子情報処理組織を使用して、同時に多数の者を一方の当事者又は各当事者として次に掲げる売買価格の決定方法又はこれに類似する方法により行うもの


 証券取引所に上場されている有価証券について、当該証券取引所が開設する取引所有価証券市場における当該有価証券の売買価格を用いる方法


 第七十五条第一項の規定により登録を受けた有価証券について、当該登録を行う証券業協会が公表する当該有価証券の売買価格を用いる方法


 顧客の間の交渉に基づく価格を用いる方法


 イからハまでに掲げるもののほか、総理府令で定める方法

(別紙2)

売買価格の決定方法及び認可の条件

 

価格情報等の外部公表

取引高シェアに基づく数量基準

株  券  等

その他債券等

上場株券等及び
店頭登録株券等

その他債券等

1.  顧客注文対当方式

当該システムの最良気配・取引価格等を他のPTSと比較可能な形で、リアルタイムで外部に公表する形態となっていること。

  

但し、他のPTSと比較可能な形での公表形態が整うまでの間、外部から自由にアクセスすることが可能な方法により公表することで足りることとする。

過去6ヵ月における一日平均売買代金の東証、大証及び名証並びに店頭登録市場の売買代金の合計額に対する比率

 個別銘柄のいずれかについて10%以上、かつ、全体について5%以上
 売買管理・審査体制の拡充・整備
 違約損失準備金制度等の整備
 システム容量等の定期的なチェック

 
 個別銘柄のいずれかについて20%以上、かつ、全体について10%以上
 有価証券市場開設の免許取得

取引量の拡大等に対応して、公益又は投資者保護の観点から、その限度において、新たな基準を設けることがある。

 

2. 売買気配提示方式
3.  顧客間交渉方式
4.  市場価格売買方式

(注1

)株券等は証券取引法第37条に規定する株券、転換社債券その他の有価証券で総理府令で定めるものをいう。

(注2

)上場株券等は上場株券及び上場転換社債券を、店頭登録株券等は店頭登録株券及び店頭登録転換社債券をいう。


(参考)

事務ガイドライン「証券会社、証券投資信託委託業者及び証券投資法人等並びに証券投資顧問業者等の監督等にあたっての留意事項について」(案)


(第1部)証券会社等の監督関係

3−1−3 私設取引システム(PTS)運営業務に係る留意事項

(1)  PTSに該当するか否かを判断する際には、以下に掲げる事項に留意するものとする。


 取引所有価証券市場又は店頭売買有価証券市場における売買の取次ぎをし、又は他の単一の証券会社に有価証券の売買の取次ぎを行うシステムについては、PTSに該当しないものとする。


 顧客との間で有価証券の売買を行う自己対当売買のシステムであっても、多数の注文による有価証券の需給を集約した提示気配に基づき売買を成立させていくものについては、PTS又は取引所有価証券市場等に該当する場合がある。

(2)

 当該業務の認可にあたっては、次の点に留意するものとする。


 内部管理
 
 当該業務に係る内部管理の体制について、次の事項が整備されていること。


 当該業務を管理する責任者が証券業務の経験を原則として5年以上有する者であり、当該業務を行う部署が業務の遂行に必要な組織及び人員配置となっていること。


 当該業務において顧客の本人確認を行う方法が確立していること。


 当該業務においてインサイダー取引等の取引の公正を害する売買等を排除する方法及び体制が確立していること。


 当該業務に関し、証券取引法等の法令及び諸規則に則った社内規則が整備されていること。


 顧客への説明義務等
 
 当該業務に係る顧客への説明に当たり、次に掲げる事項について、事前に十分な説明を行うことのできる体制が整備されていること。


 売買価格の決定方法


 注文から約定及び決済に至るまでの取引ルール


 決済不履行の場合の取扱い


 提示された価格による約定可能性


 システム容量等の安全性・確実性の確保
 
 当該業務に係るシステムの容量等の安全性・確実性の確保について、次の事項が整備されていること。


 将来の発注、約定等の件数を合理的に見込み、それに見合ったシステム容量を確保すること。


 上記見込みに基づいて、十分なテストを実施すること。


 システムの容量の超過や障害等について、その発生を防止し、かつ、早期に発見するための監視手法及びその体制が確立されていること。


 システムの異常発生時における対処方法(顧客への説明・連絡方法等)及びその体制が確立されていること。


 システムが二重化(バック・アップ)されていること。


 上記事項について、第三者(外部機関)の評価を受けていること。


 取引情報の機密保持のための予防措置
 
 当該業務に係る顧客の取引情報の機密の保持について、次の項目を含む十分な方策が講じられていること。


 当該業務部門とその他の部門で、業務に従事する者を明確に区別すること。


 当該業務に従事する者がその他の業務に関する情報を利用して当該業務を行い、又はその他の業務に従事する者が当該業務に関する情報を利用してその他 の業務を行うことが禁止されていること。


 取引参加者の取引に関する情報について外部に漏洩しない措置が的確に講じられていること。


 上記方策が、社内規則等において定められていること。

(3)

 当該業務の認可に際しては、次に掲げる条件を付すものとする。


 価格情報等の外部公表
 
 当該業務において株券等(法第37条に規定する株券、転換社債券その他の有価証券で総理府令で定めるものをいう。)を対象とする場合は当該システムの最良気配・取引価格等を他のPTSと比較可能な形で、リアルタイムで外部に公表する形態となっていること。
 但し、他のPTSと比較可能な形での公表形態が整うまでの間は、外部から自由にアクセスすることが可能な方法により公表することで足りることとする。


 取引量に係る数量基準

(イ)

 過去6カ月において、上場株券及び上場転換社債券(以下「上場株券等」という。)並びに店頭登録株券及び店頭登録転換社債券(以下「店頭登録株券等」という。)の一日平均売買代金の東京証券取引所、大阪証券取引所及び名古屋証券取引所並びに店頭登録市場における売買代金の合計額に対する比率が、個別銘柄いずれかについて10%以上、かつ、上場株券等及び店頭登録株券等全体について5%以上のPTSについては、


 取引の公正性を確保するため、売買管理及び審査を行う体制(組織及び人員)を拡充・整備すること。


 決済履行の確実性を確保するため、証券取引所における違約損失準備金制度と同様の制度を整備すること。


 システム容量等の安全性・確実性を確保するため、十分なチェックを定期的に行うこと。

(ロ)

 過去6カ月において、上場株券等及び店頭登録株券等の一日平均売買代金の東京証券取引所、大阪証券取引所及び名古屋証券取引所並びに店頭登録市場における売買代金の合計額に対する比率が、個別銘柄いずれかについて20%以上、かつ、上場株券等及び店頭登録株券等全体について10%以上となったPTSについては、有価証券市場開設の免許の取得を行うこと。

(ハ)

 この他、取引量の拡大等に対応して、公益又は投資者保護のため必要があるときは、その限度において、新たな基準を設けることがある。


 公益又は投資者保護のため必要があるときは、その限度において、新たな条件を付すことがある。

(4)

 当該業務の認可の後、監督上の対応においては、以下の点に留意するものとする。


 認可条件が充足されているかどうかについては、証券会社に関する総理府令に従い、取引高等について定期的に資料の提出を求めることにより、確認する。


 認可の際に審査した諸方策についての履行状況について、必要に応じ、検査ないし報告徴求等により確認する。


 認可後、売買価格の決定方法、受渡しその他の決済方法を始めとする業務の方法等を変更しようとする場合には、証券取引法に従い、速やかに当局に対し認可等の手続を申請するよう求めることとする。