平成13年6月14日
金融庁検査局
証券取引等監視委員会

証券会社に係る検査マニュアル(案)に対するご意見等の公表について

平成13年4月25日付でパブリック・コメントに付した標記の件につきましては、5月25日をもってコメントを締め切らせていただき、お寄せ頂いたコメントをも踏まえ本日最終的な「証券会社に係る検査マニュアル」を通達として各検査官及び各財務(支)局に発出し、併せて公表いたしました。ご協力ありがとうございました。

お寄せ頂いたコメントの概要及びそれに対する考え方等は別紙のとおりです。

内容についての照会先

金融庁検査局(TEL 03-3506-6196) 樋口 (内線6214)
証券監視委員会事務局 (TEL 03-3506-6000)  外崎 (トノサキ) (内線3044)


別紙)

[全般]

コメントの概要 コメントに対する考え方
○ 「取締役会」「取締役会等」について、証券検査マニュアル(案)の【注】に記載されているとおり、事後検証及び内部牽制の体制は必要である認識しているが、両者を書き分けている基準が必ずしも明確とはいえず、また、会社の規模等に応じて実態として機関決定が適切に行われているかが判断されるべきである。
 よって、取締役会において事後検証及び内部牽制の体制が構築されていれば、決定事項を除き、取締役会自身ではなく取締役会の委任による委員会等(取締役会等)で業務執行を決定することを原則とすべきではないか。
(野村證券)
○ 原案のとおりとする。
 本検査マニュアルにおいては、法令等遵守、リスク管理に関し経営方針の策定、経営方針に沿った戦略目標の策定、リスク管理方針の策定、組織体制の整備については取締役会によって行なわれているか、また、特に重要な事項については取締役会へ報告されているかをチェック項目としている。
 これらは、法令等遵守、リスク管理に関し証券会社の業務運営において基本となるものであることから、通常の場合、商法上の権限と責任を有する意思決定機関である取締役会自身により決定等される事柄と考える。
○ 「本検査マニュアルの適用にあたっては、証券会社の規模、特性及び業務内容を十分踏まえ、機械的・画一的な運用に陥らないよう配慮する必要がある。」の解釈について、登録金融機関で行う証券業務の規模が小さく、相対的なリスクが限定的である場合等において、例えばマニュアルに「取締役会」「取締役会等」「代表取締役」と記載されている部分は、業務の重要性に応じ、日本証券業協会公正慣習規則に定める「内部管理統括責任者」とすることも合理的である等、柔軟に運営すべきではないか。
(生命保険協会)
○ 証取法65条の2などにおいて、登録金融機関には財務規制が適用されないこと、また、登録金融機関については金融検査マニュアル等によりリスク管理態勢の確認検査を行うことから、財務規制(リスク管理)に係る部分と電子証券取引に関するリスク管理態勢確認検査用チェックリストについては、登録金融機関には本検査マニュアルの適用はないことを明確にする。
 なお、法令等遵守態勢については、登録金融機関は、既に金融・保険検査マニュアルにおいて、証券会社と同様の態勢整備が図られているものと考える。

[証券検査マニュアルの構成及び目次関係]

コメントの概要 コメントに対する考え方
○ 財務規制を含む「法令等遵守」が法令等に基づくものであり、「リスク管理」は法令等には基づかないが、証券会社が自己責任に基づいて行うものと位置づけられているとの認識である。このことに鑑み「証券検査マニュアルの構成」においても両者を明確に区分して記述すべきではないか。
 すなわち、自己資本規制比率及び純財産額は「法令等遵守」に該当し、リスク管理態勢(共通編)からシステムリスクまでの各リスクカテゴリーが「リスク管理」に該当すると認識しており、このように修正することが適切であり、「金融検査マニュアルの構成」とも平仄が合う。
 なお、「目次」も同様の趣旨で修正すべきではないか。
(野村證券)
○ 原案のとおりとする。
 本検査マニュアルにおいては、「基本的考え方等」に述べられているとおり、法令等遵守態勢及びリスク管理態勢という態勢面の確認検査にも重点を置くこととしたところである。
 このような考え方の下で、リスク管理態勢は、自己資本規制比率及び純財産額規制といった財務規制と密接な関係があることから、財務規制とリスク管理を統一的に把握することが適当であり、原案のような構成及び目次が適当であると考えたものである。
 なお、法令等遵守(態勢)においても、証券会社の自己責任により内部管理を十分に行うことが求められるものであると考えている。

[法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト(共通編)関係]

コメントの概要 コメントに対する考え方
10ページ III -2-(7)
○ 事故防止の方策として、職員が一定の期間職場を離れることを挙げているが、この一定期間とはどのくらいの日数を想定しているのか。具体的な期間を明示すべきではないか。
(個人)

○ 原案のとおりとする。
 「職員が一定期間職場を離れること」とのチェック項目は、あくまでも証券会社の事故防止策についての例示であり、業務の特性が多様である証券会社において、さらに具体的にその期間を示すことは困難であると考える。
16ページ IV -5-(1)-マル7、(2)-マル3
○ 「不公正取引の防止のための方策を講じているか」及び「不公正取引の防止のための確認」に関して、具体的にどのような「不公正取引」に関してどのような防止策を講じ、どのような確認を行うことを想定しているのかをより明確に記載すべきではないか。
 そのような記述にすることによって、証券会社における内部管理体制を充実させるための参考に資することになると考える。
(モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券会社)

○ 原案のとおりとする。
 本項目は営業員管理体制及び顧客管理体制のチェックを目的としており、ここでの「不公正取引」は一般に法令等に違反する不公正な取引を意味し、個々の会社がその防止のためにどのような取り組みを行っているかを点検するとの趣旨であり、特定の防止策を行うことを求めているものではない。

[取引の公正確保に係る法令諸規則の遵守に関する検査用マニュアル関係]

コメントの概要 コメントに対する考え方
29ページ II -1-(3)-ハ-マル2
○ 「また、広告責任者は適切な審査を行っているか。」を「また、広告に該当する場合には広告責任者が、広告に該当しない場合であっても、管理者等が適切な審査を行っているか。」に変更すべきではないか。
 投資勧誘資料の全てが広告責任者による審査を必要とする広告に該当するわけではないことを明確にすべきであるとともに、広告に該当しない場合であっても適切な審査がなされていれば十分であると考える。
(モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券会社)

○ 本項目は証券業協会規則を念頭にしており、広告について広告責任者が適切な審査を行っているかを確認することを記述しているものである。一般に投資勧誘資料は広告に該当するものと考えられ、対象が広告であることは原案のままで明確であると考える。
 なお、証券業協会規則では、広告責任者の他、支店の内部管理責任者が審査をする場合を規定していることから「広告責任者等」と修文する。

[純財産額検査用マニュアル関係]

コメントの概要 コメントに対する考え方
○ 対象となる「証券会社」の定義がないが、登録金融機関については該当しない旨明記すべきではないか。
(生命保険協会)
○ 証取法65条の2などにおいて、登録金融機関には純財産額規制を含め財務規制が適用されないこと、また、登録金融機関については金融検査マニュアル等によりリスク管理態勢の確認検査を行うことから、財務規制(リスク管理)に係る部分と電子証券取引に関するリスク管理態勢確認検査用チェックリストについては、登録金融機関には本検査マニュアルの適用はないことを明確にする。

[市場関連リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト関係]

コメントの概要 コメントに対する考え方
98ページ IV -(2)
○ 個々のデリバティブ商品等の開発の社内承認手続きにおいて、常に取締役会等による承認を要することは、自由かつ機動的な商品開発を行うことの妨げになると思われる。実務担当者や管理者が参加する新商品検討委員会等の適切なレベルの者による承認手続きによって新規デリバティブ商品等の検討・承認を行えば足りると考え、取締役会等には事後的報告を行えば十分と考える。
(モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券会社)

○ 原案のとおりとする。
 デリバティブ商品等の開発において、公益上、コンプライアンス面のチェックや評判リスクといった経営への影響評価なども重要であるため、単なる実務レベルでの手続きだけでなく、取締役会による明確な委任がある取締役会等の承認を要するものと考える。
 なお、本検査マニュアルにおいては、「取締役会」、「取締役会等」には、外国証券会社の本邦支店における最高意思決定機関等を含むものとしている。

[信用リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト関係]

コメントの概要 コメントに対する考え方
102ページ II -1-(2)
○ 「リスクの評価結果を取締役会等に報告し、新商品、新規業務の導入について規定に従い承認を受けているか。」を「リスク評価結果を考慮して社内手続き上の承認を得ているか。」に変更すべきではないか。
 取締役会等の承認を常に必要とすることを義務づけるようなことは、自由かつ機動的な商品開発を行うことの妨げになり、実務の観点からは適切ではない。
(モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券会社)

○ 原案のとおりとする。
 新商品、新規業務の導入の際には、公益上、コンプライアンス面のチェックや評判リスクといった経営への影響評価なども重要であるため、単なる実務レベルでの手続きだけでなく、取締役会による明確な委任がある取締役会等の承認を要するものと考える。
 なお、本検査マニュアルにおいては、「取締役会」、「取締役会等」には、外国証券会社の本邦支店における最高意思決定機関等を含むものとしている。
104ページ II -2-(2)-【投資等】マル2
○ 「また、ベンチャー・ビジネス投資及びプライベート・エクイティ投資等については、投資先の信用状況等のモニタリングが適切に行われているか。」は削除すべきではないか。ベンチャー・ビジネス投資やプライベート・エクイティ投資等における価格決定要素及び投資するか否かについては、通常営業部門(投資銀行部門)がデューデリジェンスを行って判断するものであって、リスク管理部門によって行われる業務とはその性質を異にするものである。
(モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券会社)

○ 原案のとおりとする。
 ポートフォリオの状況の検証等と同様に、ベンチャー・ビジネス投資及びプライベート・エクイティ投資等の投資後においても、投資先の信用状況等のモニタリングが適切に行われているかどうかを検証することは、リスク管理上必要なことであると考えている。

[システムリスク管理態勢の確認検査用チェックリスト関係]

コメントの概要 コメントに対する考え方
123ページ  IV -(4)-マル3
○ チェック項目にかかる説明において、マル1マル2マル4の項とは異なり、マル3の項は災害等の際におけるシステムの復旧を念頭におかれたものと考えられる。従って、マル3項に記述されている「重要なシステム」とは、「コンティンジェンシープランの中で、災害等被災時に継続しなければならない業務に関するシステム」を指していると考えます。受注業務や精算業務のような対外的な機能を担うものであると想像され、このような業務の継続は1証券会社の努力により実現するものではなく、取引所、決済機構、同業他社等の関係者との連携の元で初めて維持されるものであり、本項で要求していることは、広く証券業界全体の中で考慮していくべき内容ではないか。
 また、求められている範囲が上記と異なり、広く一般的な概念としての「重要なシステム」を指しているのであれば、その対象は各証券会社の主観的判断に委ねられることになり、「しているか」ではなく、「望ましい」に変更すべきではないか。
(野村證券)

○ 「証券取引所」などへの対外的な機能を担うシステムは証券業界全体で努力することが望ましいと考えられるが、ここで言う「重要なシステム」は各証券会社の管理するものを念頭に置いていることから、その趣旨を明確にするため、チェックリスト中の記述を「自社の管理する重要なシステム」と修文する。
 また、「重要なシステム」は各証券会社の業務内容等により自ら判断するべきものであり、各証券会社が「重要」であると判断したシステムについては、「オフサイトバックアップシステムを保有しているか」について検証することが適当であると考えており、原案のとおりとする。

[電子証券取引に関する法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト関係]

コメントの概要 コメントに対する考え方
127ページ  II -4-マル1マル2
○ 「各種情報、勧誘資料が広告責任者の審査を経たものであるか。」については、「それらが広告に該当する場合には、広告責任者の、それらが広告に該当しない場合には、適切な管理者等の審査を経たものであるか。」に変更すべきではないか。
 また、「広告責任者」は、「広告責任者等」に変更すべきではないか。
 各種情報・投資勧誘資料の全てが広告責任者による審査を必要とする広告に該当するわけではないことを明確にすべきであるとともに、広告に該当しない場合であっても適切な審査がなされていれば十分であると考える。
(モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券会社)

○ 本項目は証券業協会規則を念頭にしており、広告について広告責任者が適切な審査を行っているかを確認することを記述しているものである。一般に取引を誘引する各種情報、勧誘資料は広告に該当するものと考えられ、対象が広告であることは原案のままで明確であると考える。
 なお、証券業協会規則では、広告責任者の他、支店の内部管理責任者が審査をする場合を規定していることから「広告責任者等」と修文する。

[その他]

コメントの概要 コメントに対する考え方
○ 取引に関する約諾要綱が公平であるかの見直し、顧客の自己責任範囲の設定と所在の周知指導、取引客への対応欠陥の是正等をさせるべきではないか。
○ 金融取扱者の限定、権限の規制及び義務の遵守、紛争処理・解決の手段の見直し等を行わせるべきではないか。
(個人)
○ 原案のとおりとする
 取引に関する約諾要綱が公平であるかの見直し、顧客の自己責任範囲の設定と所在の周知指導については本マニュアルの対象であると考えられるが、取引顧客への対応欠陥については法令遵守態勢の確認検査用チェックリスト(共通編) III .2.(4)において証券事故等や苦情等に対処する体制の整備を記載している。
○ 勧誘の規制、案内の公開、分別理解の徹底を努めさせるべきではないか。
○ 支店社員は本店から伝達される指示の履行に専念させるべきではないか。
(個人)
○ 原案のとおりとする。
 勧誘の規制等については法令遵守態勢の確認検査用チェックリスト(共通編) IV .3において営業員の法令等の理解の促進及び法令等の遵守意識の徹底のための施策の実施状況のチェックとして記載している。
○ 国際的商品の取引行為に関わる一切の取扱いは、顧客に不安を生じさせないようプロ意識の向上に努力させるべきではないか。
(個人)
○ 原案のとおりとする。
 国際的商品の取引行為に限らず、証券会社の営業員は顧客に販売する商品特性に理解が求められていることから、法令遵守態勢の確認検査用チェックリスト(共通編) IV .5において、営業員が商品特性を把握した上で顧客に対し十分な説明を行なっているかについて確認することを記載している。
○ 会社の信用を第一とする心の改革を自発的に行える環境に改めさせるべきではないか。
(個人)
○ 原案のとおりとする。
 取締役が業務執行にあたり信用の基礎を強固にする実質議論に基づき善管注意義務等を十分に果たしているか確認することを法令遵守態勢の確認検査用チェックリスト(共通編) I .1(2)に記載している。
○ 証券会社組織の実態把握と問題点排除の措置、無届け不法行為の摘発等を講ずべきではないか。
(個人)
○ 原案のとおりとする。
 本マニュアルは、「基本的考え方等」に述べられているとおり、自己責任原則に基づき証券会社自身が整備・運用する内部管理体制等のもとで、証券取引法等に定められた規制を証券会社が遵守しているかどうかの実態把握を厳正かつ適切に行うこと(事後監視の原則)や、公益及び投資者の保護のため、証券会社の取引の公正の確保及び財務の健全性の確保に向けて、その機能を十分発揮するように、実施される必要があること(実効性の原則)等の原則の下、検査官が証券会社を検査する際に用いる手引書として作成するものであり、ご指摘の点については、こうした観点から、必要に応じ、盛り込んでいるところである。

(注) 本表において、ページ数は4月25日に公表した「証券会社に係る検査マニュアル(案)」による。

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