令和4年7月29日
金融庁

  「FinTech実証実験ハブ」支援決定案件の実験結果について

 金融庁では、フィンテックを活用したイノベーションに向けたチャレンジを加速させる観点から、平成29年9月21日、フィンテック企業や金融機関等が、前例のない実証実験を行おうとする際に抱きがちな躊躇・懸念を払拭するため、「FinTech実証実験ハブ」を設置しました(FinTech実証実験ハブの設置について)。
 今般、本スキームにおける支援を決定した第8号案件(令和2年8月27日公表)の実証実験が終了し、その実験結果について、お知らせします。

実験概要

(実験内容)
 本実証実験では、ユーザーのパーソナルデータを集約し、ユーザーの同意を前提として、利用目的に応じた企業への提供を一元的に行う、いわゆる情報銀行サービスを行う上で、ユーザーの購買履歴情報の効率的な取得方法のほか、同サービスに対するユーザーの受容性や利用企業における有用性等を検証。

(実験期間)
令和2年8月から令和2年9月まで

(申込者)
三菱UFJ信託銀行株式会社
BHI株式会社

結果概要

 本実証実験では、ユーザーとして本実証実験に参加する者(以下、「参加者」という。)の同意の下、BHIが参加者のメールアカウントから物品の購買等に際して企業等から受信した自動配信メールを取得し、購買履歴情報の抽出を行った。これを踏まえ、自動配信メールの取得を行う方法(以下、「本仕組み」という。)により取得可能なデータの量と種類の分析や(参加者を含む)個人へのアンケート・データ利用企業へのヒアリングを通じた、ユーザーの情報銀行サービスに対する受容性やデータ利用企業におけるユースケースや有用性を検証し、以下のことを確認した。
・取得可能なデータの量・種類

 ECサイト等での物品購入情報に加え、飲食店やレジャー施設、交通機関の予約情報など多種多様な購買履歴情報の取得が可能。

・ユーザーの受容性

 アンケートの結果、本仕組みに必要となるメール連携にアンケート対象者の約8割が抵抗感を抱いたものの、そのうち約半数は千円以下の対価でこれらの情報の提供を許容することを確認。

・データ利用企業における有用性

 本仕組みの効率的なデータ取得を評価する一方、メール連携に対するユーザーの抵抗感を懸念する評価もあり。購買履歴情報からユーザーの価値観・感性や近い将来のライフイベントを推知できる可能性を踏まえて、ビジネス戦略を検討することが可能と評価。

 
 また、本実証実験を踏まえ、三菱UFJ信託銀行株式会社(以下、「MUTB」という。)及びBHI株式会社(以下、「BHI」という。)が、以下の流れにより業務を行うことを検討。

①MUTBは、MUTBのアプリケーション(以下、「アプリ」という。)のユーザーから購買履歴情報集約依頼を受け、メール連携に必要な情報の提供を受ける。

②MUTBは、BHIに購買履歴情報の集約を委託し、アプリID及びメール連携に必要な情報を提供。

③BHIは、MUTBから提供されたアプリID及びメール連携に必要な情報を用いて、ユーザーのメール情報を取得・解析し、購買履歴情報のみを集約して、委託元であるMUTBに提供。

④MUTBは、データ利用企業から情報提供オファーを受けた場合、オファーの条件に合致するユーザーに対して、アプリを通じてデータ利用企業への購買履歴情報の提供可否を確認。

⑤MUTBは、④で同意が得られたユーザーの購買履歴情報に限り、データ利用企業に提供。

⑥データ利用企業は、購買履歴情報を提供したユーザーに対して、当該ユーザーの特性に合わせたサービスを、MUTBのアプリを通じて提供。


 上記においてMUTB及びBHIが検討した、ユーザーの依頼を受けて購買履歴情報を集約し、ユーザーの同意を前提として、データ利用企業へ購買履歴情報の提供を行う業務は、銀行法第10条第2項第20号に規定するいわゆる情報銀行業務に該当する旨、金融庁から回答した。

 また、個人情報保護委員会事務局にも確認の上、以下の点を金融庁から回答した。

(i)上記②及び③において、MUTBがBHIに委託して購買履歴情報の集約を行うに当たっては、MUTBは、BHIに提供するアプリID及びメール連携に必要な情報の管理と、BHIが取得することとなるユーザーのメール情報(購買履歴情報のほか、メール解析のために取得する情報を含む。)の管理の双方について、BHIを適切に監督する必要があること。

(ii)上記②及び③において、MUTBがBHIに委託して購買履歴情報の集約を行うに際して、個人情報保護法第27条第5項第1号に該当する者として委託元から委託先に個人データの取り扱いを委託する場合には、委託先は委託元の利用目的の達成に必要な範囲内でのみ個人データを取り扱うこと、要配慮個人情報を取得することとなる場合には、同法第20条第2項に従い、あらかじめ本人の同意を得なければならないとされていること、また、金融分野における個人情報保護に関するガイドライン(以下、「金融分野ガイドライン」という。)第5条第1項各号に掲げる場合を除き、機微(センシティブ)情報を取得してはならないとされていることなど、個人情報の保護に関する法令等及び金融分野ガイドラインに従い適切に対応しなければならないことに留意すること。

(iii)上記②及び③において、MUTBがBHIに委託して購買履歴情報の集約を行うに当たっては、ユーザーの家族など、第三者の情報を含めて取得することも考えられるが、その場合には、当該第三者の情報についても個人情報の保護に関する法令等及び金融分野ガイドラインを踏まえた対応が必要となることに留意すること。

(iv)上記④及び⑤において、MUTBが購買履歴情報をデータ利用企業に提供することについてユーザーから同意を取得するに当たっては、個人情報保護法第27条第1項及び金融分野ガイドライン第12条第1項に基づき、データの提供先、提供先における利用目的、提供されるデータの内容をユーザー本人に認識させた上で、同意を得る必要があること。
 

 さらに、総務省に確認の上、以下の点を金融庁から回答した。

(i)上記②及び③において、MUTBがBHIに委託して購買履歴情報の集約を行うに当たっては、通信の秘密の保護の観点から、MUTB及びBHIが取得する情報の内容、利用目的、利用態様等について、ユーザー本人に認識及び理解させた上で、個別具体的かつ明確な同意を得る必要があること。

(ii)上記①~⑥の各業務が、「他人の通信を媒介する」電気通信役務を提供する電気通信事業に該当する場合は、原則として電気通信事業法第16条に基づく届出が必要になること。


 今後、こうした新たな情報収集技術を活用したサービスの実現により、金融機関等による情報銀行サービスの実現やユーザーの利便性の向上等が期待される。

 
 ※ 参考
  PDF本実証実験の概要
  申込者における実証実験に係るニュースリリースリンク先 (BHI株式会社)
   https://bhi.co.jp/news/2022-fsa_2/新しいウィンドウで開きます

  お問い合わせ先

 金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

 総合政策局 イノベーション推進室(内線2917、2417)

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