金検第147号
平成23年3月31日

検査監理官
統括検査官
特別検査官
専門検査官
金融証券検査官
殿

金融庁検査局長 細溝 清史

平成23年東北地方太平洋沖地震による災害についての金融検査マニュアルの特例措置及び運用の明確化について

今般の東北地方太平洋沖地震の影響により、被災地では債務者と一時的に連絡が取れないこと等から、金融機関による債務者の実態把握や担保物件の確認等が一時的に困難となっているものと見込まれる。また、金融機関は、全国で、同地震の影響により計画停電や原材料の調達難等から財務状況等が一時的に悪化した債務者を抱えているものと見込まれるほか、貸出条件の変更時に直ちに経営再建計画を策定できない債務者を抱えているものと見込まれる。

こうした異例な事態を踏まえ、金融検査マニュアルについて、別添のとおり、特例措置及び運用の明確化に係る事項を付記した「資産査定管理態勢の確認検査用チェックリスト」の別表を定めたので、了知されたい。

また、貸出条件緩和債権の特例措置については、「平成23年東北地方太平洋沖地震による災害に関する主要行等向けの総合的な監督指針の特例措置について」等に留意されたい。

本通達については、平成23年3月期の決算処理から適用する。

なお、保険検査マニュアルの「資産査定及び償却・引当の確認検査用チェックリスト」についても、本通達に準じて取り扱うこととしたので了知されたい。

別表における留意事項

東北地方太平洋沖地震による災害の影響について、金融機関は、金融機関及び債務者の被害状況並びに担保物件・保証人の状況等の実態を、合理的に判断できる範囲内で可能な限り自己査定に反映させることとする。その上でもなお、災害の影響のため、債務者との連絡が一時的に取れないこと等により、一時的に当該債務者などの実態把握が困難であり、又は担保物件の実査・再評価が困難であること等により、基準日における自己査定を行うことができない一部の資産については、それまでに把握している情報を用いることを妨げない。その際は、財務諸表等への注記が必要となる場合があることに留意する。具体的な注記内容については、金融機関の利害関係者に対して必要な会計事実を明瞭に表示する観点から会計監査人の意見等を踏まえつつ検討する必要があるが、特に預金者等に対して適切な情報開示を行う観点からは、少なくとも、それまでに把握している情報を用いて査定した事実を記載することとする。

  • I. 「債務者区分」とは、債務者の財務状況、資金繰り、収益力等により、返済の能力を判定して、その状況等により債務者を正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先及び破綻先に区分することをいう。

  • II. 自己査定において、II、III及びIV分類に分けることを「分類」といい、II、III及びIV分類とした資産を「分類資産」という。また、II、III及びIV分類としないことを「非分類」といい、分類資産以外の資産(Ⅰ分類資産)を「非分類資産」という。

  • III. 「債権区分」とは、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号。以下「金融機能再生緊急措置法」という。)第6条第2項の規定により、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律施行規則」(平成10年金融再生委員会規則第2号。以下「金融機能再生緊急措置法施行規則」という。)第4条に定める資産の査定の基準に基づき、債権を債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として正常債権、要管理債権、危険債権、破産更生債権及びこれらに準ずる債権に区分することをいう。

  • IV. 自己査定における分類区分

    自己査定においては、回収の危険性又は価値の毀損の危険性の度合いに応じて資産をⅠ、II、III、IVの4段階に分類する。

    • 1. Ⅰ分類は、「II分類、III分類及びIV分類としない資産」であり、回収の危険性又は価値の毀損の危険性について、問題のない資産である。

    • 2. II分類とするものは、「債権確保上の諸条件が満足に充たされないため、あるいは、信用上疑義が存する等の理由により、その回収について通常の度合いを超える危険を含むと認められる債権等の資産」である。なお、II分類とするものには、一般担保・保証で保全されているものと保全されていないものとがある。

    • 3. III分類とするものは、「最終の回収又は価値について重大な懸念が存し、従って損失の可能性が高いが、その損失額について合理的な推計が困難な資産」である。ただし、III分類については、金融機関にとって損失額の推計が全く不可能とするものではなく、個々の資産の状況に精通している金融機関自らのルールと判断により損失額を見積ることが適当とされるものである。

    • 4. IV分類とするものは、「回収不可能又は無価値と判定される資産」である。なお、IV分類については、その資産が絶対的に回収不可能又は無価値であるとするものではなく、また、将来において部分的な回収があり得るとしても、基本的に、査定基準日において回収不可能又は無価値と判定できる資産である。

  • V. 自己査定における基準日

    基準日は決算期末日である必要があるが、実務上、仮基準日を設けて自己査定を行っている場合には、仮基準日は原則として決算期末日の3カ月以内となっているかを検証する。なお、債務者の状況の変化に応じて、適宜、信用格付、債務者区分及び分類区分等の見直しを行なっている場合は、信用格付等の見直しが適時適切に行われているかを検証する。

自己査定(別表1)
項目 自己査定基準の適切性の検証 自己査定結果の正確性の検証 備考
1. 債権の分類方法      
(2) 信用格付

債務者の財務内容、信用格付業者による格付、信用調査機関の情報などに基づき、債務者の信用リスクの程度に応じて信用格付を行う。また、信用格付は、次に定める債務者区分と整合的でなければならない。

なお、東北地方太平洋沖地震の影響のため、債務者との連絡が一時的に取れないこと等により、当該債務者の業況及び今後の見通しについて把握することが一時的に困難である場合があることに留意する。

信用格付が行われている場合には、信用格付が、債務者の財務内容、信用格付業者の格付、信用調査機関の情報などに基づき、合理的な格付となっているか、信用格付と債務者区分の概念とが整合性のとれたものとなっているかを検証する。

また、被検査金融機関内部のデータに基づき信用格付を行っている場合は、当該データの信頼性及び標本数が十分であるかを検証する。当該データが不十分と認められる場合には、外部の信用調査機関等のデータをもって補完されているかを検証する。

さらに、債務者の業況及び今後の見通し、信用格付業者による当該債務者の格付の見直し、市場等における当該債務者の評価などに基づき、必要な見直しが定期的かつ必要に応じて行われるとともに、信用格付の正確性が監査部門により検証されているかを検証する。

  • (注)「信用格付業者」とは、金融商品取引法第2条第36項に定める信用格付業者のことをいう。以下同じ。

(3) 債務者区分

原則として信用格付に基づき、債務者の状況等により次のように区分する。

なお、債務者区分については、東北地方太平洋沖地震の影響のため、債務者との連絡が一時的に取れないこと等により当該債務者の実態把握が一時的に困難である場合には、それまでに把握している情報を用いても差し支えない。

債務者区分の検証は、原則として信用格付に基づき、債務者の状況等により正確に債務者区分が行われているかを検証する。なお、プロジェクト・ファイナンスの債権については、回収の危険性の度合いに応じて、見做し債務者区分を付して分類を行うことに留意する。

債務者区分は、債務者の実態的な財務内容、資金繰り、収益力等により、その返済能力を検討し、債務者に対する貸出条件及びその履行状況を確認の上、業種等の特性を踏まえ、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュ・フローによる債務償還能力、経営改善計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案し判断するものである。

特に、中小・零細企業等については、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて判断するものとする。

また、当該債務者の親会社等の状況を勘案する場合には、単に親会社の財務状況が良好であるとの理由だけで債務者区分を決定することは適当ではない。なお、当該債務者の親会社等の支援を勘案する場合には、親会社等の支援実績、今後の支援見込み等について十分検討する必要がある。

さらに、債務者が、法令等に基づき、国又は地方公共団体が民間金融機関の貸出に対して利子補給等を行うなどの政策金融(以下「制度資金」という。)を利用している場合には、債務者の財務状況等の検討に加え、制度資金の内容をも踏まえた上で、債務者区分の検討を行うものとする。

  • (注)「プロジェクト・ファイナンス」とは、例えば、ノン・リコース・ローンのように、特定のプロジェクト(事業)に対するファイナンスであって、そのファイナンスの利払い及び返済の原資を原則として当該プロジェクトから生み出されるキャッシュ・フロー(収益)に限定し、そのファイナンスの担保を当該プロジェクトの資産に依存して行う金融手法である。以下同じ。

  • (注)「債務者の実態的な財務内容」の把握にあたり、十分な資本的性質が認められる借入金は、新規融資の場合、既存の借入金を転換した場合のいずれであっても、負債ではなく資本とみなすことができることに留意する。

  • (注)「キャッシュ・フロー」とは、当期利益に減価償却など非資金項目を調整した金額をいう。以下同じ。

  • (注)左記の適用に当たっては、「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」を参照。

マル1 正常先

(略)

(略)  
マル2 要注意先

要注意先とは、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者をいう。

また、要注意先となる債務者については、要管理先である債務者とそれ以外の債務者とを分けて管理することが望ましい。

左記に掲げる債務者が要注意先とされているかを検証する。

また、要注意先となる債務者について、要管理先である債務者とそれ以外の債務者を分けて管理している場合には、当該区分が適切かを検証する。

さらに、債務者の財務状況等により判断すれば、破綻懸念先と判断されるものが、単に当該債務者の親会社等の財務状況が良好であるとの理由で債務者区分を要注意先としていないかを検証する。

  • イ.創業赤字で当初事業計画と大幅な乖離がない債務者は、正常先と判断して差し支えないものとする。

    創業赤字で当初事業計画と大幅な乖離がない債務者とは、当初事業計画が合理的なものであり、かつ、事業の進捗状況と当初事業計画を比較し、実績が概ね事業計画どおりであり、その実現可能性が高いと認められる債務者をいう。

    具体的には、黒字化する期間が原則として概ね5年以内となっており、かつ、売上高等及び当期利益が事業計画に比して概ね7割以上確保されている債務者をいう。

    なお、本基準は、あくまでも事業計画の合理性、実現可能性を検証するための目安であり、創業赤字となっている企業の債務者区分を検討するに当たっては、本基準を機械的・画一的に適用してはならない。

    債務者区分の検討は、業種等の特性を踏まえ、事業内容、事業規模、キャッシュ・フローによる債務償還能力等のほか、債務者の技術力、販売力及び成長性等を総合的に勘案して行うものとし、本基準の要件を形式的に充たさない債務者を直ちに要注意先と判断してはならない。

  • ロ.赤字企業の場合、以下の債務者については、債務者区分を正常先と判断して差し支えないものとする。

    なお、本基準は、あくまでも赤字企業の債務者区分を検証するための目安であり、本基準を機械的・画一的に適用してはならない。

    債務者区分の検討は、業種等の特性を踏まえ、債務者の業況、赤字決算の原因、企業の内部留保の状況、今後の決算見込み等を総合的に勘案して行うものとし、本基準の要件を形式的に充たさない債務者を直ちに要注意先と判断してはならない。

    • (イ) 赤字の原因が固定資産の売却損など一過性のものであり、短期間に黒字化することが確実と見込まれる債務者。

  • (注)「要管理先である債務者」とは、要注意先の債務者のうち、当該債務者の債権の全部又は一部が要管理債権である債務者をいう。ただし、要管理債権が貸出条件緩和債権のみであり、貸出条件緩和債権の全てが、本別表1.(3)(注)又は「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]7.資本的劣後ローンにおいて資本とみなすことのできるとされている債権である債務者は、「要管理先である債務者」に該当しない。以下同じ。

   
  • (ロ) 中小・零細企業で赤字となっている債務者で、返済能力について特に問題がないと認められる債務者。

  • (ハ) 東北地方太平洋沖地震の影響による固定資産の滅失・毀損や生産活動の停滞等により赤字となっている債務者で、返済能力について特に問題ないと認められる債務者。

  • (注)左記の適用に当たっては、「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」を参照。

    ハ. (略)  
マル3 破綻懸念先

破綻懸念先とは、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)をいう。

具体的には、現状、事業を継続しているが、実質債務超過の状態に陥っており、業況が著しく低調で貸出金が延滞状態にあるなど元本及び利息の最終の回収について重大な懸念があり、従って損失の発生の可能性が高い状況で、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者をいう。

左記に掲げる債務者が破綻懸念先とされているかを検証する。

ただし、金融機関等の支援を前提として経営改善計画等が策定されている債務者については、以下の全ての要件を充たしている場合には、経営改善計画等が合理的であり、その実現可能性が高いものと判断し、当該債務者は要注意先と判断して差し支えないものとする。

なお、本基準は、あくまでも経営改善計画等の合理性、実現可能性を検証するための目安であり、経営改善計画等が策定されている企業の債務者区分を検討するに当たっては、本基準を機械的・画一的に適用してはならない。

  債務者区分の検討は、業種等の特性を踏まえ、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュ・フローによる債務償還能力、経営改善計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案して行うものとし、本基準の要件を形式的に充たさない債務者を直ちに破綻懸念先と判断してはならない。
 
   

特に、中小・零細企業等については、必ずしも経営改善計画等が策定されていない場合があり、この場合、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて検討するものとし、経営改善計画等が策定されていない債務者を直ちに破綻懸念先と判断してはならない。

さらに、債務者が制度資金を活用して経営改善計画等を策定しており、当該経営改善計画等が国又は都道府県の審査を経て策定されている場合には、債務者の実態を踏まえ、国又は都道府県の関与の状況等を総合的に勘案して検討するものとする。

  • (注)左記の適用に当たっては、「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」を参照。

   
  • イ.経営改善計画等の計画期間が原則として概ね5年以内であり、かつ、計画の実現可能性が高いこと。

    ただし、経営改善計画等の計画期間が5年を超え概ね10年以内となっている場合で、経営改善計画等の策定後、経営改善計画等の進捗状況が概ね計画どおり(売上高等及び当期利益が事業計画に比して概ね8割以上確保されていること)であり、今後も概ね計画どおりに推移すると認められる場合を含む。

  • ロ.計画期間終了後の当該債務者の債務者区分が原則として正常先となる計画であること。ただし、計画期間終了後の当該債務者が金融機関の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、計画期間終了後の当該債務者の債務者区分が要注意先であっても差し支えない。

  • ハ.全ての取引金融機関等(被検査金融機関を含む)において、経営改善計画等に基づく支援を行うことについて、正式な内部手続を経て合意されていることが文書その他により確認できること。

    ただし、被検査金融機関が単独で支援を行うことにより再建が可能な場合又は一部の取引金融機関等(被検査金融機関を含む)が支援を行うことにより再建が可能な場合は、当該支援金融機関等が経営改善計画等に基づく支援を行うことについて、正式な内部手続を経て合意されていることが文書その他により確認できれば足りるものとする。

  • ニ.金融機関等の支援の内容が、金利減免、融資残高維持等に止まり、債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を伴うものではないこと。

    ただし、経営改善計画等の開始後、既に債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を行い、今後はこれを行わないことが見込まれる場合、及び経営改善計画等に基づき今後債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を計画的に行う必要があるが、既に支援による損失見込額を全額引当金として計上済で、今後は損失の発生が見込まれない場合を含む。

    なお、制度資金を利用している場合で、当該制度資金に基づく国が補助する都道府県の利子補給等は債権放棄等には含まれないことに留意する。

  • (注)なお、東北地方太平洋沖地震の影響により突発的に左記に該当することとなった債務者については、当該影響を勘案し、計画期間について5年を超える合理的期間に延長して差し支えない。

マル4 実質破綻先

実質破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者をいう。

具体的には、事業を形式的には継続しているが、財務内容において多額の不良資産を内包し、あるいは債務者の返済能力に比して明らかに過大な借入金が残存し、実質的に大幅な債務超過の状態に相当期間陥っており、事業好転の見通しがない状況、天災、事故、経済情勢の急変等により多大な損失を被り(あるいは、これらに類する事由が生じており)、再建の見通しがない状況で、元金又は利息について実質的に長期間延滞している債務者などをいう。

左記に掲げる債務者が実質破綻先とされているかを検証する。

法的・形式的には経営破綻の事実は発生していないが、自主廃業により営業所を廃止しているなど、実質的に営業を行っていないと認められる場合に、当該債務者を実質破綻先としているかを検証する。

  • イ.「金融機関等の支援を前提として経営改善計画等が策定されている債務者」のうち、経営改善計画等の進捗状況が計画を大幅に下回っており、今後も急激な業績の回復が見込めず、経営改善計画等の見直しが行われていない場合、又は一部の取引金融機関において経営改善計画等に基づく支援を行うことについて合意が得られない場合で、今後、経営破綻に陥る可能性が確実と認められる債務者については、「深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にある」ものとして、実質破綻先と判断して差し支えないものとする。

  • ロ.「実質的に長期間延滞している」とは、原則として実質的に6カ月以上延滞しており、一過性の延滞とは認められないものをいう。ただし、6カ月以上延滞している債務者であっても、当該延滞が東北地方太平洋沖地震の影響のため、債務者が一時的に業務を正常に運営できない等による一過性の延滞と認められる場合には「実質的に長期間延滞している」ものに該当しないこととしても差し支えない。

 
マル5 破綻先

(略)

(略)

 
(4) 担保による調整

担保により保全措置が講じられているものについて、以下のとおり区分し、優良担保の処分可能見込額により保全されているものについては、非分類とし、一般担保の処分可能見込額により保全されているものについては、II分類とする。

また、担保評価及びその処分可能見込額の算出は以下のとおりとする。

なお、東北地方太平洋沖地震の影響のため、担保物の実査を行うことができない等により、以下の方法による担保評価及びその処分可能見込額の算出が一時的に困難であり、その他の簡便な方法によっても合理的に見積もることが困難である場合には、それまでに把握している担保評価及びその処分可能見込額を用いても差し支えない。

左記に掲げるとおり、担保により保全措置が講じられているものが区分され、担保評価及びその処分可能見込額の算出が合理的なものであるかを検証する。

 

(中略)

(中略)

(中略)

 
       
(5) 保証等による調整等
マル1 優良保証等

(略)
(略)

(略)
(略)

 
マル2 一般保証

優良保証等以外の保証をいう。

例えば、十分な保証能力を有する一般事業会社(上記マル1のロを除く。)及び個人の保証をいう。

なお、東北地方太平洋沖地震の影響のため、現に保証を行っている者が被保証人との連絡が一時的に取れないこと等により、現に保証を行っている者の保証能力について、把握することが一時的に困難である場合には、それまでに把握している当該者の情報を用いても差し支えない。

左記に掲げる保証が一般保証とされているかを検証する。

保証会社の保証能力の有無等の検証に当たっては、当該保証会社の財務内容、債務保証の特性、自己査定、償却・引当、保証料率等の適切性等を踏まえた十分な実態把握に基づいて行う。また、保証が当該金融機関の子会社によるものである場合において、例えば、当該子会社が親金融機関等から支援等を受けている場合には、経営改善計画の妥当性や、その支援等を控除した場合等の状況についても踏まえることに留意する。

 
       

(中略)

(中略)

(中略)

 
(6) 分類対象外債権

分類の対象としない債権は次のとおりとする。

左記に掲げる債権が分類対象外債権とされているかを検証する。

 
 
  • マル1 決済確実な割引手形及び特定の返済財源により短時日のうちに回収が確実と認められる債権及び正常な運転資金と認められる債権。

  • マル2マル5 (略)

  • マル1 債務者区分が破綻懸念先、実質破綻先及び破綻先に対する債権とされている債務者が振り出した手形は、自己査定上は決済確実な割引手形として取り扱わない。

    「特定の返済財源により近く入金が確実な」場合とは、概ね1か月以内に貸出金が回収されることが関係書類で確認できる場合をいう。ただし、東北地方太平洋沖地震の影響のため、債務者が一時的に業務を正常に運営できない等による一過性の延滞が生じている場合であって、概ね3か月以内に貸出金が回収されることが関係書類で確認できる場合は、「特定の返済財源により近く入金が確実な」場合としても差し支えない。

  • マル2マル4 (略)

  • (注)「特定の返済財源」とは、近く入金が確実な増資・社債発行代り金、不動産売却代金、代理受領契約に基づく受入金、あるいは、返済に充当されることが確実な他金融機関からの借入金等で、それぞれ増資、社債発行目論見書、売買契約書、代理受領委任状又は振込指定依頼書、その他の関係書類により入金の確実性を確認できるものをいう

       
       
       
(7) 債権の分類基準

(略)

住宅ローンなどの個人向けの定型ローン等及び中小事業者向けの小口定型ローン等の貸出金については、延滞状況等の簡易な基準により分類を行うことができるものとする。

この場合、東北地方太平洋沖地震の影響により、給与振込が一時的に途絶えていることなどによる一過性の延滞は延滞とみなさなくとも差し支えない。

(略)

なお、簡易な基準により分類を行っている場合には、基準及び基準を適用する対象が合理的なものとなっているかを検証する。

 

(後略)

(後略)

(後略)

 
償却・引当(別表2)
項目 償却・引当基準の適切性の検証 償却・引当結果の正確性の検証 備考
1.貸倒引当金 (略) (略)  
(1) 一般貸倒引当金

一般貸倒引当金については、正常先に対する債権及び要注意先に対する債権について、原則として信用格付の区分、少なくとも債務者区分毎に、以下に掲げる方法により算定された過去の貸倒実績率又は倒産確率に基づき、将来発生が見込まれる損失率(予想損失率)を求め、原則として信用格付の区分、少なくとも債務者区分の債権額に予想損失率を乗じて予想損失額を算定し、予想損失額に相当する額を貸倒引当金として計上する。

(略)

一般貸倒引当金については、正常先に対する債権及び要注意先に対する債権について、信用格付の区分又は債務者区分毎に、償却・引当基準に基づき、予想損失額が合理的に見積られているかを検証する。

具体的には、以下に掲げる項目について検証する。

  • イ.貸倒実績率又は倒産確率に基づく貸倒引当金計上額の妥当性の検証

  • マル1マル2 (略)

  • マル3 異常値控除の検証

    特定先に対する損失額又は倒産件数を異常値として、貸倒実績率又は倒産確率の算定の際に控除している場合には、控除することに合理的な根拠があるかを検証する。

    具体的には、貸倒実績率又は倒産確率の算定に当たっての債務者区分を正常先あるいは要注意先としていたものを、本来の債務者区分は破綻懸念先であったことを理由に、当該特定先に対する損失額又は倒産件数を異常値として控除している場合には、当該損失額又は倒産件数を破綻懸念先に対する債権の予想損失額の算定に反映するなど、何らかの方法により貸倒引当金の算定に反映しているかを検証する。

    なお、東北地方太平洋沖地震の影響により生じた特定先に係る損失額又は倒産件数が、その他の債務者に対する貸倒実績率又は倒産確率に影響しない場合については、予想損失率の算定に際して、当該損失額又は倒産件数を異常値として控除して差し支えない。

    また、特定の業種又は地域に係る損失額又は倒産件数がその他の業種又は地域に係る損失額又は倒産件数に比べ、著しく相違していることを理由に、当該業種又は地域に係る損失額又は倒産件数を異常値として控除していないかを検証する。この場合は、特定の業種又は地域に対する損失額又は倒産件数を異常値として控除することは適当ではなく、当該特定の業種又は地域毎にグルーピングを行い、グループ毎の貸倒実績率又は倒産確率を算定し、これに基づき予想損失率を求め、グループ毎の債権額に予想損失率を乗じて予想損失額を算定することが望ましい。

    なお、東北地方太平洋沖地震の影響により生じた、特定先に係る損失額又は倒産件数については、当該特定先の業種、地域又は被害状況等に基づいてグルーピングを行い、グループ毎の債権額に予想損失率を乗じて予想損失額を算定することとして差し支えない。

 

(後略)

(後略)

(後略)

 

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