平成11年7月9日
金 融 監 督 庁

 

第3回自動車損害賠償責任保険審議会懇談会議事概要について

 

 自動車損害賠償責任保険審議会懇談会(平成11年6月25日(金)開催)の議事概要は、別紙のとおり。

 

担当者:金融監督庁監督部保険監督課 田内、中林

連絡先:電話(代表)3506−6000 内線3336、3340

 本議事概要は暫定版であるため、今後修正がありえます。


第3回自動車損害賠償責任保険審議会懇談会議事概要
 

1.日  時  平成11年6月25日(金)14時00分〜15時50分

 

2.場  所  中央合同庁舎第四号館第二特別会議室

 

3.議  題  委員からの意見発表又は説明

 

4.議事概要 
 
(1)  高瀬委員(日本医師会常任理事)から、「(a)交通事故医療担当者の視点から意見を申し上げる。傷害事故支払限度額(120万円)については、昭和53年から据え置かれているが、適正カバー率が80%を超えていればよいのかということを含めて、適正な限度額の設定について審議会で議論すべきである。また、自賠責保険と任意保険の一括請求・支払という方法の採用が多いが、任意保険会社は任意保険からの支払を極力抑える方法として、自賠責保険の段階から健康保険での診療を強要している。医療機関と外国の損害保険会社とのトラブルについて問題を解決する機関がない。示談交渉において、自動車保険に精通している損害保険会社が加害者の代理人として関与するため、被害者は非常に弱い立場となり、健保使用に移行する。被害者が十分な賠償を受けるためのシステムといい難い。
 (b)被害者への適切な対応、医療機関への支払等の迅速性、公平性を持たせるために、専門的な損害調査機関や健康保険・労災保険のような中立的な審査・支払機関を設置することが望ましい。この機関としては、自動車保険料率算定会が最も適しているのではないか。
 (c)診療報酬について、自賠責保険での診療に止まらず、任意保険での診療に対しても自賠責保険診療報酬新基準が適用されるべきである。
 (d)運用益は、救急医療体制の整備のため、公的医療機関に対して使用されているが、交通事故診療件数の多くは民間医療機関が担当している。運用益の取扱いについては、加入者・交通事故被害者にとって有効的な活用方法を様々な分野の代表により検討し、自賠責審議会へ報告した上で決定していくべきである。
 (e)政府再保険制度の見直しについては、被害者保護・救済という自賠責保険制度の目的を損なうことのないよう検討されたい。」との発言があった。

 これに対し、他の委員から「任意保険会社は健康保険での診療を強要していない。被害者の方の選択の問題である。」、「運用益は、ユーザーに還元するのが第一義である。運用益の使途を一度精査し、また、どんな効果があるのか明らかにすべき。」、「自賠責審議会の役割(保険制度の企画・設計、被害者救済、特別会計運用益の活用など)を明確化すべき。また、委員から行政関係者を除外すべき。」、「支払機関の設置について、過失相殺、任意保険と自賠責保険の二本建てという構造問題があり、現在の枠組みでは、健保、労災のような制度は非常に困難。」との発言があった。

 

(2)  布江委員(自動車保険料率算定会専務理事)から、自算会における損害調査の流れについて、「自賠責保険の請求は、(a)加害者・被害者から自賠責保険の請求がある場合(任意保険が付保されていない場合が多い)、(b)任意保険と自賠責保険をまとめて被害者に保険金を一括払いする保険会社から自賠責保険の請求がある場合がある。(自賠責保険の請求は、(b)の場合が多い)
 (a)の場合、自賠責保険の引受会社は一件書類を自算会調査事務所に送付し、そこで損害調査を行う。このうち、判断が困難なものについては、自算会地区本部に稟議又は照会され、また、特定事案(死亡事案で自賠責保険金が支払われないか減額される可能性のある事案、後遺障害の等級認定に関し異議申立てがあった事案等)については、すべて自算会本部の審査会で審査される。審査会は専門領域の医師や弁護士で構成されている。さらに、この審査会の結論に異議がある場合には、再審査会で審査されることとなる。再審査会は交通法学者、弁護士、学識経験者、専門医師等、自算会以外の第三者のみで構成されている。
 (b)の場合、任意保険会社が調査を行い、調査完了後、一件書類を自算会調査事務所に送付し、そこで点検を行う。このうち、判断が困難なものや特定事案の取扱い、また、審査会、再審査会の位置づけは・と同様である。このほか、・の場合において、任意保険会社が示談前に自賠責保険での取扱いを確認する、事前認定制度等が設けられている。
 このように、自賠責保険の損害調査については、公平性、客観性を確保して、被害者へ適正な支払いが行われるよう努力している。」との発言があった。また、審査会・再審査会の審査状況や審査事案について説明があった。

 これに対し、他の委員から「審査会、再審査会を運用してみて、何か気付いた点はあるか。」との発言があり、これに対し「調査時点から時間がたって、被害者側からの新たな立証資料の提出や、捜査の進展による新事実の判明により、再審査会で結論が変更になる事案が散見される。」との発言があった。
 また、他の委員から「自算会には警察情報はどの程度入ってくるのか。」との発言に対し「事故状況の確定のため、捜査に支障のない範囲の客観的事実、公知の事実について教示してもらい、請求者が提出した事故状況報告書との照合を行っている。また、必要に応じ、捜査終了後、弁護士に依頼して弁護士法に基づく照会により、刑事記録を取り寄せている。判断の前提となる事実関係は保険請求者へも開示しており、請求者が不利になるようなことはない。」との発言があった。
 この他、他の委員から「自算会の損害調査に係る費用はどこから出ているのか。」との発言に対し「自賠責保険料の一部である損害調査費の中に織り込まれている。」との発言があった。

 

(3)  樋口委員(日本損害保険協会会長)から、「政府再保険は廃止すべきと考える。政府再保険が導入された昭和30年当時と比べて保険会社の体力は格段に向上し、リスクヘッジとしての再保険の必要性はない。自賠責制度の基本的枠組みを維持する限り、被害者救済が後退することはない。政府出再が強制されているのはまれである。官民の役割分担の見直しの観点からも政府再保険廃止は妥当である。それまでは、現行事務処理の中で事務の効率化を図るべきである。運輸省による保険金支払のチェックについては、他の保険にない特別のチェック体制を設ける必要があるか疑問であるが、被害者保護の観点から何らかのチェックが必要だとすると、制度の効率的運営の観点から必要最小限のものとすべき。
 政府再保険以外の基本的枠組み(ノーロス・ノープロフィットの原則、二本建て制度、強制付保・引受義務)は現行維持が妥当である。
 運輸省が挙げている政府再保険廃止のための3条件自体に基本的には異論はなく、業界としては各条件に照らし、政府再保険廃止の環境は整っていると考える。再保険を廃止した場合の保険料への影響について、具体的なコストの算出は困難であるが、引下げ幅の多寡に関係なく、効率化を実施すべきである。
 被害者からの苦情を柔軟に受け止めて処理ができるADR(裁判外紛争処理制度)のようなシステムを設けるべきか否かについても検討している。
 個人的には、被害者保護の重要性については十分理解しているが、強制保険の保険料が、被害者に対する賠償金の支払にとどまらず、医療施設や、自動車の安全性の検証、事故防止等、広範囲に使われていることにいささかの疑問を感じている。」との発言があった。

これに対し、他の委員から「規制緩和・自由化の時代であることを考えると、見直す時期にきているとも言えるが、政府再保険制度は、廃止した場合の被害者の保護、ノーロス・ノープロフィットの原則の下で、利用者の利益を明確にした上で、現状では、政府再保険を当分の間継続するのが妥当ではないか。」、「支払いについて監督する制度について、行政的な監督制度を作る方向で話を進める前に、監督が必要であるその原因とそれに対する最適な手段を考える必要があるのではないか。例えば、後遺障害の等級認定の誤りについては異議申立の手続きの充実により解決すべき問題ではないか。」、「被害者保護を維持、充実しながら、全体として自賠責制度を効率的に運用していくためになんらかの見直しが必要ではないか。」との発言があった。

 

(4)  最後に、会長から「次回の懇談会の段取りについては、後日、改めて皆さんに相談させていただく。」との発言があった。

(以 上)

 


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