平成11年11月1日
金 融 監 督 庁
 
第5回自動車損害賠償責任保険審議会懇談会議事概要について

 

 第5回自動車損害賠償責任保険審議会懇談会(平成11年10月7日(木)開催)の議事概要は、別紙のとおり。

 

担当者:金融監督庁監督部保険監督課 重藤、加藤

連絡先:電話(代表)3506−6000 内線3375、3431

 本議事概要は暫定版であるため、今後修正がありえます。


第5回自動車損害賠償責任保険審議会懇談会議事概要
 

.日  時   平成11年10月7日(木) 14時00分〜16時00分

 

.場  所   中央合同庁舎第四号館第三特別会議室

 

.議  題 
 
(1)  「今後の自賠責保険のあり方に係る懇談会」(運輸大臣懇談会)報告書について(西崎同懇談会座長からの説明及び質疑)
 
(2)  自賠責保険制度の基本的な枠組みについて

 

.議事概要
 
(1)  冒頭、今後の懇談会の進め方について、事務局から、資料に沿って概要以下の通り説明があり、了承された。
 
 今回(第5回)から第7回までの3回の懇談会で、自賠責保険に関する一通りの論点をカバーし、各回の議論で引き続き議論する必要があるとされた事項等については、第8回懇談会(12月頃を予定)で再度議論する。
 
 その後については、上記の懇談会での議論の状況を踏まえた上で検討する。
 
 毎年2月頃に開催している保険料率の検証のための審議会は来年も開催することとなると考えられるので、今後の議論の結果、方向性の出てきた事項については、そのころまでに具体化できることは具体化していく。
 
(2)  「今後の自賠責保険のあり方に係る懇談会」(運輸大臣懇談会)報告書について(西崎同懇談会座長からの説明及び質疑)
 
 西崎座長からの説明の概要
 
 運輸省の懇談会では、政府再保険の廃止・民営化の問題も含め、一切議論を制約せず、自由にオープンに議論するという方針の下、広範な問題を議論。
 
 自賠責保険は、創設以来、いくつかの問題点はあるが、無保険車の少なさ、被害者保護、保険料の低さ等からみて、車社会の安全ネットとして有効に機能。
 
 懇談会では、この自賠責制度の骨格をなす強制保険制度、二本建て制度、ノーロス・ノープロフィット原則の3つは維持する必要があるということで一致。
 
 政府再保険については、ただ廃止すればよいというものではなく、報告書にある5条件が満たされれば廃止していいだろうという結論。なお、再保険の廃止に関しては、税の問題も解決する必要がある。
 
 政府保障事業の「死亡無責事故」等への拡大については、自賠法の性格と基本的に対立する考え方であるが、一方で、交通事故の原因は複合的であり、また、犯罪や災害による死亡の場合には保障を行う制度があることから、ユーザー負担、任意保険との関係、社会保障制度全体との関係、自賠法の目的との関係等も多角的に検討した上でという前提条件付で、制度例を提示している。
 
 重度後遺障害者に対する保険金支払限度額について、これを引き上げる必要があるのではないかということで、これの引上げを行った場合を例示している。
 
 政府保障事業の「死亡無責事故」等への拡大は自賠法自体との調整をどうするかという問題があるが、重度後遺障害者に対する保険金限度額の引上げについては、任意保険あるいは社会保障制度全体との調整をどうするかという問題につながるが、あえて言えば「死亡無責事故」等への拡大に比べ難易度が少ないかという感じもする。
 
 政府保障事業に係る被害者の過失相殺の緩和については御存知の通りの状況。
 
 被害者保護の充実を図るための制度運用の改善としては、交通事故の客観的な情報の被害者側への提供、示談代行制度の運営改善、一括払いにおけるチェックシステムの強化、後遺障害者等級の認定のための専門指定医による再診断システムの導入等といった点を提起。
 
 政府再保険手続の規制緩和等を通じた負担軽減について、現在の事前審査全廃、支払審査の民間委託等を提起している。
 
 運用益を活用した政策支出については、必要なものは継続し不必要なものは縮小する、政策評価や第三者のチェック等を活用するといった考え方を提示。
 
 パブリック・コメントでは、運用益は第一義的にユーザーに還元すべきとの意見が多かった。ユーザーに還元するという場合、保険料引下げと保護救済の条件の改善という2つの面がある。いずれにせよ、保険料に還元するという問題は非常に大きく、当然ここには重点を置くべきと思う。
 
 自賠責保険の制度の問題は、自賠審の主管事項であり、今後の自賠審の検討を踏まえつつ、運輸省の懇談会も必要に応じ検討を行いたい。
 
 実施時期については、中央省庁の再編が2001年4月からであること等も踏まえれば、制度改正を来年やるかという問題もあるが、2001年4月から逐次実施するとともに、運用改善や政策支出の見直し・改善等の可能なものはそれを待たずに実施していくこととしている。
 
 質疑
 
 委員から再保険の見直し等にかかる議論の状況について質問があり、西崎座長より、再保険の見直しに関しては、当初は被害者代表と保険業界との間で激論があったが最終的には完全な合意の下に報告書の記載となった、死亡無責事故の取扱、保険金限度額の取扱等に関しては、業界は業界の意見があり、被害者代表は被害者代表の意見を持っている、との説明があった。
 
 委員から政策支出に係る政策効果の試算に関して質問があり、西崎座長より、報告書に記載されている政策効果の試算はあくまでも運輸省の試算であり、懇談会として了承した訳ではない。ただ、いずれにせよ、その政策効果については厳密に検討する義務、責任があるとの説明があった。
 
 委員から、再保険部分から生じる運用益は政策支出へ、民間部分から生じる運用益は保険料の還元にあてるといった考えがあったのか、との質問があり、西崎座長より、そのようなことはないとの回答があった。
 
 運輸省の委員から、政策支出については世の中に対してきちんと、できるだけ定量的に説明しなくてはいけないと思っている、また、客観的な監視の目を向けてもらうため政策支出について部外の意見を定期的に聞かなくてはならない、といった説明があった。また、報告書全体に関しては、自民党の行革本部に報告し、そこでの議論も踏まえた上で、自賠審で、実行に移すものと引き続き検討すべきものの仕分けをしてもらい、金融監督庁とも相談しつつ、政府全体としての方向性を決めていきたい、との発言があった。
 
(3)  自賠責保険制度の基本的な枠組みについて
 
 事務局から、強制保険制度、二本建て制度、ノーロス・ノープロフィット原則、政府再保険制度の4点について、資料に沿って説明を行い、その後、議論を行った。それぞれの事項について委員から出された意見の概要は以下の通り。
 
 強制保険制度について
 
 強制保険は必要性が高く、また車検証の交付との連動についても、無保険車をなくすためにも必要。ただ、複数年契約の場合の保険料の支払について、前払いとなっている現行の方式を、融通性を持たせ利便性の向上を図れないか。
 
 損害賠償責任能力の担保によって被害者救済を完全に果たすという制度は非常に重要であり、強制保険制度は最低限必要。
 
 車検とのリンク、契約解除制限等の工夫によりほぼ100%の付保率が達成されており、現在考えられる制度としては最も優れている。なお、原付等車検がないものについても、業界として付保率向上に努めていきたい。
 
 単に抽象的な制度としてではなく、車検リンク等といった現行法上の手法と合わせ、このまま維持すべき。
 
 強制保険と任意保険の二本建て制度について
 
 自賠責保険は基本保障として被害者保護に大きな役割を果たしている。一方、任意保険は、普及率が90%近くまで上昇し、かつ、そのうち保険金額が無制限のものが9割を超えており、世の中に不可欠な制度となっている。また、保険料負担の公平性を確保するということで、リスクに応じた割増引き制度、ユーザーの多様なニーズに応えるための種々のサービスの提供等を行っている。自賠責保険と任意保険はそれぞれ固有の特色を生かしながら相互に補完し合っており、現在の二本建て制度は評価できる制度である。
 
 二本建て制度は、外国からも注目されている。
 
 二本建て制度は維持すべきであるが、国民の立場から分かりにくくなっている部分というのもなくはなく、改善の余地はあるのではないか。
 
 二本建て制度については、改善や啓蒙の余地があるとしても、二本建て制度という構造そのものは維持すべきではないか。
 
 ノーロス・ノープロフィット原則
 
 強制保険と不可分の制度でありこの原則を維持すべきである。実際にそれが適切に運用されているかが問題であるが、それをチェックするためのシステムも伴っている。改善すべき点もあるとは思うが、基本的な枠組みとしてはこういうことなのではないか。
 
 現状は、準備金の蓄積があるため、事故の発生による保険金の支払の状況と保険料が連動しなくなっている。事故が減少すれば保険料が下がるといった連関が国民にわかるようにすべき。そうした透明性を高めることが必要。
 
 PRが必要。ただ、その費用は保険料に跳ね返るので、そのバランスの問題がある。
 
 保険料支払いについて、車検の時に税金等と一緒に支払うということで保険料支払いについて支払う側の痛みが少ない。ユーザーには保険料を支払っているという自覚を持ちやすくするという観点も必要。
 
 営利企業である損害保険会社が利潤を求めないということについては問題意識もあるが、自賠責保険に営利目的を介入させる余地はない。
 
 強制保険であるので、保険料を低廉に保つ必要があるということによって、ノーロス・ノープロフィットの原則は有効に機能している。
 
 政府再保険制度について
 
 保険会社の担保力が向上してリスク・ヘッジの必要性がなくなっている。また、再保険を廃止しても必要な政府の監督を維持する限り被害者保護には影響はない。更に、諸外国と比較しても政府再保険を行っているのは日本のみであり、OECDからも度々勧告を受けている。
 
 官民の役割分担の見直しという観点から、民に出来ることは民ですべき。
 
 再保険の廃止の議論に当たり、ユーザー・メリットとして保険料がいくら下がるのかという金銭的なメリットが強調されているが、制度の透明性の向上、行政機関の簡素化といったことが国民としてのメリットである。
 
 官でなくてはできないことが何で、それは今後も必要なのか、その代替策として民で何かできるのか、ということを考えると簡単に廃止とはいかない。
 
 果たして公共でないとできないような事業があるのかを明らかにすべき。
 
 制度の目的の公共性と、それを運営するのが公的セクターであるべきかという点がまだ詰まっていない。
 
 過小払いの実態をみると、これを全部民でできるのか。
 
 公的なチェック機能が残ることは有りうべしということだとしても、更に、それが再保険と結びつくかという点も詰める必要がある。
 
 プラスがなければ変えないというよりは、プラス・マイナス・ゼロならば民にした方がいいのではないかという考えもある。その際、プラス・マイナスという意味が、ひとつは国の行政制度のあり方、またもうひとつは自賠法の目的との兼ね合い。
 
 今の段階では廃止あるいは存続といったまとめ方はできず、その検討をするためにはもう少し課題が残っているということではないか。

 

.次回の自動車損害賠償責任保険審議会懇談会は、11月4日に開催予定。
 

Back
メニューへ戻る