「金融検査マニュアル検討会」第12回会合議事要旨

 

1.日  時:1998年12月16日(水) 10時00分〜12時50分
 

2.場  所:中央合同庁舎第4号館 共用第2特別会議室
 

3.議事概要:

  「信用リスク管理」等に関して、マニュアル(案文)等に基づき審議が行われた。

  審議の概要については以下の通り。

 

(リスク管理(共通編))

 ○ 取締役及び取締役会の責任の明確化については、銀行の実務上、常務会等で意思決
  定を行うことが多いのが実態であり、全ての意思決定や報告が取締役会で行われるの
  は困難ではないか。銀行の実態に配慮すれば、常務会等に取締役会の権限が委譲され
  ている場合の取扱いをマニュアル上で明確にした方がよいのではないか。

 ○ 商法上の法的責任もなく、監査手続き上にも規定されていない常務会等の取扱いに
  ついて、法律に則ったマニュアル上で明示することには問題があるのではないか。
   また、監査役は取締役会に参加することはできても、常務会等に参加しないことが
  多いことから、監査役の機能強化のためには、取締役会以外のどのような形の意思決
  定機関であってもマニュアル上規定することには問題があるのではないか。

 ○ 常務会のような法令上規定もない意思決定機関が取締役会の上に存在すること自体、
  コーポレートガバナンス上問題であり、また、グローバルスタンダードにも反するこ
  ととなり問題となるのではないか。

 ○ 監査役の機能強化のために、監査役の情報収集機能を強化することが必要であり、
  そのためには、必要な人員の配置や予算の確保等が必要であるという項目についても、
  マニュアルに明示するべきではないか。
 

(信用リスク管理態勢)

 ○ 信用リスク管理態勢における取締役の役割としては、あくまで基準を定めることに
  あり、個々の債権の判断にまで及ぶべきではないということを原則としてマニュアル
  に盛り込むべきではないか。また、信用リスク管理の一環として、十分な引当を積ん
  でいるということについても確認するべきであるということも盛り込む必要があるの
  ではないか。

 ○ 信用リスク管理態勢のチェック項目として重要な点は、(1)信用格付の内部規定に対
  する準拠性、(2)償却・引当の内部規定に対する準拠性、(3)償却・引当額の事後的な検
  証、(4)事後的な検証にかかる内部規定に基づく議論の有無、であり、この点について
  検証することをマニュアル上明記すべきではないか。また、回収方針についても組織
  的な方針の決定やモニタリングの手法についても、マニュアルに盛り込んでおくべき
  ではないか。
 

(資産査定関連)

 ○ マニュアルを厳正に運用すると、破綻懸念先が急増する可能性があるが、債務者区
  分を破綻懸念先と認定した場合、その後の貸出等について背任の疑いがかかることと
  なり、金融機関としてはリーガルリスクをとる必要があることから、その判断につい
  ては慎重にならざるを得ないのではないか。

 ○ 破綻懸念先に対するリーガルリスクについては、融資が直ちに背任とはならないと
  する判例もあり、両者を結びつけて債務者区分を議論するのは不適切ではないか。

 ○ 破綻懸念先の債務者区分の認定にあたっては、債務超過の期間が一つの基準になる
  と思われるが、業種によっては、正常に営業していても一定期間債務超過となるもの
  もあることから、その点についても考慮する必要があるのではないか。

 ○ 経営支援中の債務者については、金融機関が経営改善計画に基づき破綻しないこと
  を前提に支援しており、その計画に合理性があれば債務超過であったとしても要注意
  先に止めることが適当ではないか。
   また、債務者区分の認定に際しては、債務者の破綻の可能性以外にも債権の回収の
  可能性についての定義も入れるべきではないか。

 ○ メインバンクが支えるから債務者の破綻はあり得ないと言い切れなくなってきてい
  る現状において、客観的な信用リスクの検証を行うに際し、金融機関自身の債務者に
  対する支援意思を考慮するということは馴染まないのではないか。

 ○ 未収利息の資産不計上の基準については、現状不明確なものとなっており、今後明
  確にしていく必要があると思われるが、破綻懸念先以下の債務者区分の債務者にかか
  る未収利息を資産計上している場合の取扱いについては、マニュアル上明確にしてお
  く必要があるのではないか。

 ○ 減価法を採用している上場株式や、店頭株式・投資信託に強制評価減を適用する上
  で、その回復可能性に関する判断ルールをマニュアル上明確にすることは、意義があ
  ると思われるが、その基準が一人歩きする可能性があることについても、配慮する必
  要があるのではないか。
 

(償却・引当関連)

 ○ 要注意先に対する引当については、マニュアルで示している債務者区分との整合性
  を確保しながら、要管理債権とそれ以外のものに細分化して引当を行うべきではない
  か。

 ○ 償却・引当については、そもそも債務者区分毎に行うべきものであり、債権毎に区
  分される要管理債権とは性格が異なるものであることから、要管理債権の概念で要注
  意先に対する引当を細分化することは、技術的に不可能ではないか。

 ○ 償却・引当のチェック項目について、マニュアルに細かく記載してしまうと、本来
  金融機関が負うべき償却・引当の検証責任を当局が負うこととなってしまう恐れがあ
  るので、金融機関において適正な償却・引当が行われていることに関する検証システ
  ムを構築すべきである旨をマニュアルに盛り込むべきではないか。

 ○ 各金融機関で制定されている償却・引当基準については、積極的に開示して市場の
  評価を受けるべきであり、定性的、定量的な自己検証の基準の開示が望まれているの
  ではないか。
 

(自己資本比率関連)

 ○ 自己資本比率の正確性の検証を行うにあたっては、自己資本比率対策のためだけの
  取引については、重点的に検証する旨を明記すべきではないか。

 ○ 要注意先債権に対する貸倒引当金の算定にあたって、割引現在価値による評価を行
  う場合は、個別貸倒引当金として扱われる可能性が高いが、自己資本比率の分子に
  算入することが可能かどうか検討するべきではないか。
 

(注)本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。


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