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3−9  法定帳簿の省略等に係る留意事項
−9−1 法定帳簿の省略等の承認

 証券会社に関する命令第60条第3項の規定による法定帳簿の省略等の承認は、次に定めるところにより行うものとする。

(1)  本店については、(3)又は(4)の規定による場合を除き、法定帳簿の省略等を承認しないものとする。ただし、証券業務の性質及び事務の機械化等これにより難い特別の事由がある場合において、投資者保護及び事故防止上特に支障がないと認められるときは、この限りでない。
 
(2)  注文伝票、取引日記帳、顧客勘定元帳、保護預り有価証券明細簿及び現金出納帳は、その省略等を承認しないものとする。
 
(3)  受渡計算書は、次のマル1からマル7までのいずれかに該当する場合に限り、その省略等を承認するものとし、承認にあたっては、社内規則の整備が図られていることを確認するものとする。
 
マル1  株券の共同買付累積投資による買付けの場合(3−3(7)マル3の規定により通知書を顧客に交付することとしている場合に限る。)
 
マル2  日経300上場投信の共同買付累積投資による買付けの場合(3−3(7)マル4の規定により通知書を顧客に交付することとしている場合に限る。)
 
マル3  イのaからeまでに掲げる取引(cを除く各取引にあっては、3−3に規定する方法によるものに限る。)の区分に応じ、aからeまでに定める事項があらかじめ顧客と取り交わした契約により定められている場合において、当該取引に係る有価証券の種類ごとに、ロに規定する買付け等の履歴等を記載した通知書を6月に1回以上作成し、これを顧客に交付することとしている場合
 
 取引の種類等
 
 顧客の預金口座等から自動引き落としした金銭による有価証券の定期・定額の買付け引落し月日、1回あたりの引落金額、買付日及び買付有価証券の種類
 
 顧客の毎月の賃金等から控除した払込金による証券投資信託受益証券の定期・定額の買付け又は財形貯蓄契約に係る有価証券の買付け1回あたりの控除金額、買付日及び買い付ける証券投資信託受益証券の種類又は3−3(10)に規定する事項
 
 有価証券の定期・定額の売付け(解約の取次ぎを含む。(3)において「売付け等」という。当該売付け等の代金の全額を顧客の預金口座等に振込む場合又はaに準ずる方法による他の有価証券及び法第34条第2項各号に掲げる業務若しくは同条第4項の規定により承認を受けた業務において取り扱う証券、証書、権利若しくは商品(cにおいて「有価証券等」という。)の定期・定額の買付けに係る代金に充てるために預金口座等若しくは顧客口座に振込み若しくは振り替える場合に限る。)売付け等をする月日、1回あたり売付け等金額、振込口座及び売付け等をする有価証券等の種類
 
 寄託有価証券に果実が生じた都度行う当該果実による他の有価証券の買付け寄託有価証券及び買付有価証券の種類
 
 寄託有価証券に果実が生じた都度行う当該果実による当該有価証券の買付け(再投資)寄託有価証券の種類
 
 次に掲げる事項を記載した通知書
 
 顧客名
 
 有価証券の種類
 
 期間中における取引ごとの約定年月日、売付け等又は買付け若しくは再投資の別、数量、単価、金額及び受渡日
 
 期間中における売付け等又は買付け若しくは再投資に係る数量及び金額の合計
 
 期間末日における寄託証券残高
 
マル4  マル3イのcに掲げる場合以外の売付け等について、当該売付け等の代金(売買約定日から起算して4日目以前に受渡しを行うこととしているものに限る。)の金額を、あらかじめ顧客から届出を受けている預金口座等(マル4及び(4)マル3おいて「指定預金口座等」という。)に振込む場合(当該売付け等に係る取引報告書に、当該売付け等の代金は受渡日に指定預金口座等に振込む旨の記載をする場合に限る。)
 
マル5  国債証券の売買において、日本銀行の国債DVPシステムを利用して受渡しを行う場合
 
マル6  マル1からマル5までに掲げる場合以外のMMF、中期国債ファンド又は証券総合口座用ファンドの買付け又は売付け等について、受渡計算書に代えて、定期的に通知書を作成し交付する場合であって、次に掲げる要件(受渡し(現金自動支払機等によるものに限る。)の都度、受渡金額及び当該受渡し後における寄託証券残高に係る金額を記載した書面を作成し交付する場合にあっては、イに掲げる要件を除く。)のすべてに該当する場合
 
 顧客との間で受渡計算書不発行の契約書を取り交わし、顧客の同意を得ること。
 
 最低限、証券会社に関する命令別表第8の3の受渡計算書に規定する受渡計算書の必要記載事項及び期間末日における寄託証券残高を通知書に記載すること。
 
 通知書は、マル1からマル5までに掲げる場合以外のMMF、中期国債ファンド又は証券総合口座用ファンドの買付け又は売付け等の取引日から起算して1月以内又は契約で定める期間の末日より2週間以内に作成し交付すること。
 
マル7  現金自動支払機等を利用して受渡しを行う場合であって、次に掲げる要件のすべてに該当する場合
 
 顧客から申出があった場合には、受渡計算書を作成し交付すること。
 
 MMF、中期国債ファンド又は証券総合口座用ファンドの売付け等について、受渡しの都度、受渡金額及び当該受渡し後における寄託証券残高に係る金額を記載した書面を作成し交付すること。ただし、顧客が、当該書面の交付に代えて、これらの金額を現金自動支払機等に表示する方法を選択した場合を除く。
 
(4)  有価証券預り証((4)において「預り証」という。)は、次のマル1からマル8までのいずれかに該当する場合に限り、その省略等を承認するものとし、承認にあたっては、社内規則の整備が図られていることを確認するものとする。
 
マル1  累積投資顧客から寄託を受けた金銭及び有価証券について、寄託を受けた都度直ちに寄託残高を記載した書面を作成のうえ顧客に交付する場合
 
マル2  有価証券の売買等の内容及び有価証券寄託残高について定期的に月次報告書を作成し交付する場合であって、次に掲げる要件のすべてに該当する場合
 
 顧客との間で預り証不発行の契約書を取り交わし、顧客の同意を得ること。
 
 顧客との間で単純に証券又は金銭を授受する場合においては、受領した者は受領書を交付すること。
 
 最低限、次に掲げる事項を記載した月次報告書を毎月1回以上作成し、交付すること。ただし、当該月において売買等が全くなかった顧客(信用取引、発行日取引、有価証券先物取引、有価証券指数等先物取引、有価証券オプション取引、選択権付債券売買、有価証券先渡取引、有価証券店頭指数等先渡取引又は有価証券店頭オプション取引(d及びニにおいて「信用取引等」という。)を行っている顧客を除く。)については、前稼働月より起算して1年に1回以上作成し交付することができる。
 
 報告時における証券及び金銭の預り残高
 
 有価証券取引の内容(売買及び入出金)
 
 預り有価証券の明細
 
 信用取引等に係る未決済勘定の明細及び評価損益
 
 月次報告書の内容については回答書により顧客の確認を得ることとし、当該回答書は必ずその都度回収し保存すること。ただし、「月次報告書について疑義ある場合には、速やかに連絡し、連絡がない場合には、内容について承認したものとみなす」旨の契約書を顧客と取り交わしている場合で信用取引等を行っている顧客以外の顧客、当該月において売買等が全くなかった顧客及びホームトレード顧客については、回答書の回収を省略することができる。
 
 月次報告書の交付及び回答書の回収の状況を別途帳簿に記載すること。
 
マル3  公社債及び証券投資信託受益証券の売買の内容及び寄託残高について受渡しの都度取引明細書を作成し交付する場合であって、その内容が次に掲げる要件のすべてに該当する場合
 
 対象顧客は、原則として証券会社の店頭又は指定預金口座等を利用して受渡しを行う顧客に限ること。
 
 顧客との間で預り証不発行の契約書を取り交わし、顧客の同意を得ること。
 
 顧客との間で単純に証券又は金銭を授受する場合においては、受領した者は受領書を交付すること。
 
 最低限、次に掲げる事項を記載した取引明細書を受渡しの都度作成し交付すること。
 
 当該受渡しにかかる取引の内容(売買及び入出金)
 
 当該受渡し後における証券及び金銭の預り残高
 
 預り有価証券の明細
 
マル4  株券の共同買付累積投資により買い付けられた株券に係る預り証を省略する場合(3−3(7)マル3の規定により通知書を顧客に交付することとしている場合に限る。)
 
マル5  日経300上場投信の共同買付累積投資により買い付けられた日経300上場投信に係る預り証を省略する場合(3−3(7)マル4の規定により通知書を顧客に交付することとしている場合に限る。)
 
マル6  (3)に規定する承認を受けて、(3)マル3ロに規定する買付け等の履歴等を記載した通知書を6月に1回以上作成し、これを顧客に交付することとしている場合において、(3)マル3イのaからeまでに掲げる取引により買い付けられた有価証券に係る預り証を省略する場合
 
マル7  (3)に規定する承認を受けて、(3)マル6に規定する通知書を作成し、これを顧客に交付することとしている場合において、(3)マル6に規定する有価証券に係る預り証を省略する場合
 
マル8  (3)に規定する承認を受けて、(3)マル7ロに規定する書面を作成し、これを顧客に交付することとしている場合((3)マル7ロただし書に規定する場合を含む。)において、(3)マル7ロに規定する有価証券に係る預り証を省略する場合
 
−9−2 法定帳簿のマイクロフィルムによる作成・保存
 
(1)  法定帳簿の作成後3年を経過し、かつ、この間に金融監督庁長官及び証券取引等監視委員会による検査が行われている場合には、一般に妥当と認められている作成基準により作成したマイクロフィルムをもって保存することができるものとする。
 
(2)  次に掲げる場合には、法定帳簿を当初からマイクロフィルムより作成・保存できるものとする。この場合、あらかじめ、届出書を提出することを求めるものとする。
 
マル1  対象となる法定帳簿が、顧客勘定元帳又は保護預り有価証券明細簿である場合
 
マル2  金融監督庁長官及び証券取引等監視委員会による検査等において、各営業所において直ちに書面による帳簿の作成が可能である場合
 
マル3  マイクロフィルムの作成・保存に関する責任者をおき、管理の手続が整備されている場合
 
−9−3 法定帳簿の本店等における集中保管
 
(1)  法定帳簿の保管場所については、作成後3年を経過し、かつ、この間に金融監督庁長官及び証券取引等監視委員会による検査が行われている場合には、本店(事務センター等を含む。(2)において同じ。)において集中保管することができるものとする。
 
(2)  法定帳簿の保管場所については、次に掲げる要件が満たされていることを条件として本店及び証券会社が法定帳簿の作成を委託している会社において作成時から集中保管することができるものとする。この場合、あらかじめ、以下の要件が満たされている旨を証する届出書を提出することを求めるものとする。なお、当該届出書に変更があった場合においても、同様とする。
 
マル1  顧客の照会に対し、速やかに回答できる体制となっていること。
 
マル2  法定帳簿の閲覧が本支店において合理的期間内に可能な体制となっていること。
 
マル3  内部監査に支障がないこと。
 
(3)  (2)に規定する届出書には、次に掲げる書類を添付することを求めるものとする。
 
マル1  法定帳簿の集中保管の対象とする法定帳簿、保管場所及び保管方法に関する説明文
 
マル2  法定帳簿の集中保管に関し、(2)マル1からマル3までの要件が満たされている旨を証する説明文
 
−9−4 注文伝票のコンピューターへの直接入力による作成
 
(1)  次に掲げる要件を満たす場合は、注文伝票をコンピューターへ直接入力することによって作成することができるものとする。この場合、あらかじめ、以下の要件が満たされている旨を証する届出書を提出することを求めるものとする。なお、当該届出書に変更があった場合においても、同様とする。
 
マル1  受注と同時に、注文内容をコンピューターへ入力すること。
 
マル2  顧客の照会に対し、速やかに回答できるようになっていること。
 
マル3  コンピューター作成の注文伝票については従来の手書きの注文伝票と同様の手段で保存されること。
 
マル4  入力データのバックアップを作成・保存すること。
 
マル5  入力時刻が自動的に記録されるシステムとなっていること。
 
マル6  入力事績の取消・修正を行った場合その取消・修正記録がそのまま残されるシステムとなっていること。
 
マル7  注文内容を電話により執行店に連絡するケース、コンピューターシステム稼働終了後に翌日の注文を受注するケース、災害等によりコンピューターが使用不能となるケース等受注と同時にコンピューターに直接入力して作成することが不可能な場合は、従来どおり、受注時に手書きで注文伝票を作成すること。ただし、受注時に作成した手書きの注文伝票とその注文内容を後で入力して作成した約定結果等が記載されたコンピューター作成の注文伝票を併せて保存する場合は手書きの注文伝票に追記を行う必要はない。
 
マル8  内部監査に対応できるシステムとなっていること。
 
(2)  (1)に規定する届出書には、次に掲げる書類を添付することを求めるものとする。
 
マル1  注文伝票のコンピューターへの直接入力による作成に関し、(1)マル1からマル8までの要件が満たされている旨を証する説明文並びに(1)マル1及びマル7の要件に関する事務手順のフローチャート
 
マル2  注文伝票のコンピューターへの直接入力による作成に関する社内規則
 
マル3  コンピューター作成の注文伝票のサンプル
 
マル4  その他必要な書類
 
−9−5 法定帳簿の電子媒体による保存
 
(1)  法定帳簿の電子媒体による保存の対象となる法定帳簿は、法第41条に規定する取引報告書及び証券会社に関する命令第60条第1項各号に掲げる法定帳簿で顧客に対して交付するものを除いた全てのものとする。ただし、注文伝票に関しては3−9−4(1)に規定する届出書を提出し、コンピューターへの直接入力により作成している場合に限る。
 
(2)  次に掲げる要件を満たす場合は、法定帳簿を電子媒体により保存することができるものとする。この場合、あらかじめ、以下の要件が満たされている旨を証する届出書を提出することを求めるものとする。なお、当該届出書に変更があった場合においても、同様とする。
 
マル1  証券会社に関する命令別表第8に規定する全ての記載事項が電算システムにより作成され、電子データとして保存されること。
 
マル2  保存に使用する電子媒体は商法に規定する10年の保存期間の耐久性を有すること。
 
マル3  データ保存に使用する電子媒体の一つを「原本」として定め、その旨を明示すること(法定帳簿の保存状態の判定はこの「原本」に準拠して行うものとする。)。
 
マル4  マル3の「原本」のバックアップを作成し、これを「副本」として保存すること。
 
マル5  顧客の照会に対し、速やかに回答できるシステムとなっていること。
 
マル6  保存されているデータにつき合理的期間内にハードコピーによる帳簿の作成が可能なシステムとなっていること。
 
マル7  入力データの取消・修正を行った場合、その取消・修正記録がそのまま残されるシステムとなっていること。
 
マル8  内部監査に対応できるシステムとなっていること。
 
マル9  作成・保存に関する責任者をおき、当該作成・保存に関する社内規則が整備されていること。
 
マル10  電算システムにより作成した法定帳簿のハードコピーに手書きによる追記・補完等を行った場合は、当該ハードコピーを原本として保存すること。
 
(3)  (2)に規定する届出書には、次に掲げる書類を添付することを求めるものとする。
 
マル1  (1)に規定する法定帳簿のうち電子媒体により保存しようとするものの名称の一覧
 
マル2  法定帳簿の電子媒体による保存に関し、(2)マル1からマル10までの要件が満たされている旨を証する説明文及び(2)マル1の要件に関するフローチャート
 
マル3  法定帳簿の保存に関する社内規則
 
マル4  法定帳簿のハードコピーのサンプル
 
マル5  その他必要な書類
 

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