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1 共通事項
 

 以下の共通事項は、基本的に銀行法を念頭に置いて作成したものであり、長信銀、信託、信金等の他業態においては適宜読み替えて運用するものとする。なお、その取扱いが銀行と異なる場合においては、各業態の項目を参照されたい。
 
 (注)  本項目の略語
 
   銀行法=法
 
   銀行法施行令=施行令
 
   銀行法施行規則=施行規則
 
 
1−1  早期是正措置の運用について
 普通銀行の経営の健全性を確保していくための新しい監督手法である早期是正措置については、「銀行法施行規則の一部を改正する省令」(平成9年大蔵省令第60号)において、具体的な措置内容等を規定しているところであるが、その運用基準については下記のとおりとする。
 
−1−1 命令発動の前提となる自己資本比率
 
 施行規則第21条の2第1項の表の区分に係る自己資本比率は、次の自己資本比率によるものとする。
 
(1)  決算状況表(中間期にあっては中間決算状況表)により報告された自己資本比率
 (ただし、業務報告書の提出後は、これにより報告された自己資本比率)
(2)  上記(1)が報告された時期以外に、当局の検査結果等を踏まえた銀行と監査法人等との協議の後、当該銀行から報告された自己資本比率
 
(注) 本事務ガイドラインにおける自己資本比率の具体的計数は、便宜、海外営業拠点を有しない銀行の自己資本比率である国内基準の数値を用いることとするが、海外営業拠点を有する銀行にあっては、国際統一基準の数値(特に注書のない限り、国内基準値の2倍の計数)と読み替えるものとする。
 
−1−2 施行規則第21条の2第1項の表の区分に基づく命令
 
(1)  第1区分の命令、第2区分の命令及び第2区分の2の命令の相違
 第1区分の「経営の健全性を確保するための合理的と認められる改善計画(原則として資本の増強に係る措置を含むものとする。)の提出の求め及びその実行の命令」は、経営の健全性が確保されている基準として自己資本比率4%以上の水準の達成を着実に図るためのものである。したがって、計画全体として経営の健全性が確保されるものであることを重視し、その実行に当たっては、基本的に銀行の自主性を尊重することとする。
 第2区分の2の「自己資本の充実、大幅な業務の縮小、合併又は銀行業の廃止等の措置のいずれかを選択した上当該選択に係る措置を実施することの命令」は、自己資本の充実の状況が特に著しい過小資本の状況にある銀行に対し、これを速やかに改善するか、銀行業務の継続を断念するかを迫るものである。
 
(2)  第1区分に係る改善計画の内容
 「経営の健全性を確保するための合理的と認められる改善計画」とは、当該改善計画を実行することにより自己資本比率が毎年向上するものであり、かつ、原則として3年以内に自己資本比率が4%以上の水準を達成する内容の計画とする。
 ただし、施行規則第21条の3第1項本文及び「銀行法施行規則の一部を改正する省令」(平成9年大蔵省令第60号)附則(以下「附則」という。)第2条第1項本文の規定により施行規則第21条の2第1項の表の区分に係る自己資本比率の範囲を超えて確実に改善するための合理的と認められる計画を金融監督庁長官に提出している銀行にあっては、自己資本比率が0%未満又は0%以上2%未満の場合は、当該改善計画の実行により自己資本比率が毎年向上するものであり、かつ、自己資本比率が、原則として1年以内に2%以上の水準を達成した後、原則として3年以内に4%以上の水準を達成する内容の計画とする。
 
(3)  第2区分に係る措置の内容
 「自己資本の充実に資する措置」とは、自己資本比率が毎年向上するものであり、かつ、原則として2年以内に自己資本比率が2%以上の水準を達成するための自己資本の充実に資する措置とする。
 
ただし、施行規則第21条の3第1項本文及び附則第2条第1項本文の規定により施行規則第21条の2第1項の表の区分に係る自己資本比率の範囲を超えて確実に改善するための合理的と認められる計画を金融監督庁長官に提出している銀行にあっては、自己資本比率が1%未満の場合は、自己資本比率が毎年向上するものであり、かつ、自己資本比率が、原則として1年以内に1%以上の水準を達成した後、原則として1年以内に2%以上の水準を達成するための自己資本の充実に資する措置とする。
 
(4)  第2区分の2に係る措置の内容
 「自己資本の充実、大幅な業務の縮小、合併又は銀行業の廃止等の措置のいずれか」のうち、当該銀行が合併(解散会社となる場合)、銀行業の廃止以外の措置を選択した場合にあっては、自己資本比率が毎年向上するものであり、かつ、原則として2年以内に自己資本比率が2%以上の水準を達成するための措置とする。
 ただし、施行規則第21条の3第1項本文及び附則第2条第1項本文の規定により施行規則第21条の2第1項の表の区分に係る自己資本比率の範囲を超えて確実に改善するための合理的と認められる計画を金融監督庁長官に提出している銀行にあっては、自己資本比率が0%未満の場合は、自己資本比率が毎年向上するものであり、かつ、自己資本比率が、原則として1年以内に0%以上の水準を達成した後、原則として1年以内に2%以上の水準を達成するための自己資本の充実に資する措置とする。
 また、当該銀行が合併等を選択した場合にあっては、例えば合併の場合には合併の相手方の意思が明確であるなど確実に実現する内容であることが必要である。
 
(5)  改善までの期間
 自己資本比率を改善するための所要期間については上記(2)から(4)を目処とするが、銀行が策定する経営改善のための計画等が、当該銀行に対する預金者、投資家、市場の信認を維持・回復するために十分なものでなければならないことは言うまでもない。
 したがって、当該銀行の市場との関係の程度等によっては、市場の信認を早急に回復する必要があるため、上記の期間を大幅に縮減する必要がある。例えば、国際統一基準適用銀行であれば、少なくとも1年以内(原則として翌決算期まで)に自己資本比率が8%以上の水準を回復するための計画等であることが必要である。
 なお、銀行が「金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第143号。以下「早期健全化法」という。)に基づき株式等の引き受け等に係る申込みを行う場合にあっては、自己資本比率を改善するための所要期間については、同法に基づく経営健全化計画と同一でなければならない。

 
−1−3 施行規則第21条の3第1項に規定する合理性の判断基準
 
 施行規則第21条の3第1項の「自己資本比率の範囲を超えて確実に改善するための合理的と認められる計画」の合理性の判断基準は、次のとおりとする。
 
(1)  自己資本比率が0%未満の銀行の場合は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を図り当該銀行に対する預金者等の信頼をつなぎ止めることができる具体的な資本増強計画等が必要であり、自己資本比率が、原則として1年以内に0%以上の水準を確実に達成する内容の計画であること。
 
(2)  自己資本比率が0%以上1%未満の銀行の場合は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を図り当該銀行に対する預金者等の信頼をつなぎ止めることができる具体的な資本増強計画等が必要であり、自己資本比率が、原則として1年以内に1%以上の水準を確実に達成する内容の計画であること。
 
(注) 具体的な資本増強計画等は、例えば、増資の場合は、出資先又は負債性資本調達先の意思が明確であることが必要である。((3)において同じ。)
 
(3)  自己資本比率が1%以上2%未満の銀行の場合は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を図り当該銀行に対する預金者等の信頼をつなぎ止めることができる具体的な資本増強計画等が必要であり、自己資本比率が、原則として1年以内に2%以上の水準を確実に達成する内容の計画であること。
 
(4)  銀行が早期健全化法に基づき株式等の発行等に係る申込みを行う場合にあっては、上記(1)から(3)の資本増強計画等は同法に基づく経営健全化計画と同一でなければならない。
 
−1−4 附則第2条第1項に規定する合理性の判断基準
 
 附則第2条第1項の「施行前に、・・・自己資本比率の範囲を超えて確実に改善するための合理的と認められる計画」の合理性の判断基準は、次のとおりとする。
 なお、当該計画における自己資本比率は、平成9年7月大蔵省告示第189号により算出された自己資本比率(修正国内基準)とし、平成5年3月大蔵省告示第55号により算出された自己資本比率(現行国内基準)による計画を提出している銀行にあっては、平成10年3月31日までに修正国内基準に基づき計画を修正させた上、合理性を判断する必要がある。
 
マル1  平成10年3月末の自己資本比率が0%未満の銀行の場合は、1−1−3(1)の規定によるものとする。
 
マル2  平成10年3月末の自己資本比率が0%以上2%未満の銀行の場合は、1−1−3(2)の規定によるものとする。
 
マル3  平成10年3月末の自己資本比率が2%以上4%未満の銀行の場合は、自己資本比率が毎年向上するものであり、かつ、原則として3年以内に自己資本比率が4%以上の水準を達成する内容の計画であること。
 
(注)  平成10年3月31日までに、施行規則第21条の2第1項の表の区分に係る自己資本比率の範囲を超えて確実に改善するための合理的と認められる措置に係る計画を提出している銀行は、附則第2条第2項により、施行規則第21条の2第1項の表の第1区分に掲げる命令を受けた場合であっても新たに計画を提出する必要はなく、既に提出されている計画をもって命令に基づく計画に代える旨の書面を提出すれば足りる。
 
−1−5

 施行規則第21条の3第1項及び附則第2条第1項の適用に当たり「実施後に見込まれる当該銀行の自己資本比率以下の自己資本比率に係る同表の区分(非対象区分を除く。)に掲げる命令」は、自己資本比率が0%未満又は自己資本比率が0%以上2%未満の銀行にあっては、提出された計画が1年超の場合は、原則として1年後(附則第2条第1項の場合は、平成10年3月末から原則として1年後)に確実に見込まれる自己資本比率の水準に係る区分(非対象区分を除く。)に掲げる命令とする。
 

−1−6 計画の進捗状況の報告等

 計画の進捗状況は、毎期(中間期を含む。)報告させることとし、その後の実行状況が計画と大幅に乖離していない場合は、原則として計画期間中新たな命令は行わないものとする。ただし、第2区分の2の命令を行った銀行にあっては、その後自己資本比率が1%以上4%未満の範囲に達したときは、当該時点における自己資本比率の係る区分に掲げる命令を行うことができるものとし、第2区分の命令を行った銀行にあっては、その後自己資本比率が2%以上4%未満の範囲に達したときは、当該時点において第1区分の命令を行うことができるものとしする。
 また、施行規則第21条の3第1項本文及び付則第2条第1項本文の規定による命令を行った銀行にあっては、次のとおりとする。

(1)  自己資本比率が0%未満の銀行
 施行規則第21条の2第1項の第1区分の命令による場合は、当該計画提出後(附則第2条第1項による場合は、平成10年3月から)、原則として1年以内に自己資本比率が2%以上の水準を達成していないときは、当該時点における自己資本比率に係る区分に掲げる命令を行うものとする。
 同項の第2区分の命令による場合は、当該計画提出後(附則第2条第1項による計画の場合は、平成10年3月末から)、原則として1年以内に自己資本比率が1%以上の水準を達成しないときは、当該時点における自己資本比率に係る区分に掲げる命令を行うものとする。
 また、同項の第2区分の2の命令による場合は、当該計画提出後(附則第2条第1項による計画の場合は、平成10年3月末から)、原則として1年以内に自己資本比率が0%以上の水準を達成しないときは、当該時点における自己資本比率に係る区分に掲げる命令を行うものとする。
 
(2)  自己資本比率が0%以上1%未満の銀行
 施行規則第21条の2第1項の第1区分の命令による計画提出後(附則第2条第1項による場合は、平成10年3月から)、原則として1年以内に自己資本比率が2%以上の水準を達成していない場合は、当該時点における自己資本比率に係る区分に掲げる命令を行うものとする。
 また、同項の第2区分の命令による場合は、当該計画提出後(附則第2条第1項による計画の場合は、平成10年3月末から)、原則として1年以内に自己資本比率が1%以上の水準を達成しないときは、当該時点における自己資本比率に係る区分に掲げる命令を行うものとする。
(3)  自己資本比率が1%以上2%未満の銀行
 施行規則第21条の2第1項の第1区分の命令による計画提出後(附則第2条第1項による場合は、平成10年3月から)、原則として1年以内に自己資本比率が2%以上の水準を達成していない場合は、当該時点における自己資本比率に係る区分に掲げる命令を行うものとする。
 
−1−7 施行規則第21条の3第2項に掲げる資産の評価基準
 
 施行規則第21条の3第2項各号に掲げる資産のうち、次に掲げる資産については、それぞれに規定する方法により評価するものとする。
 
(1)  第1号「有価証券」
 施行規則第21条の3第2項第1号の「公表されている最終価格」とは、取引所取引価格、基準気配値、基準価格等とする。また、「これに準ずるものとして合理的な方法に」より算出した価格とは、証券会社等から算出日の時価情報として入手した評価額又は銀行の独自の評価方法によるもので合理的と認められるものとする。
 なお、算出にあたっては、以下の点に留意する。
 
マル1  株式又は社債で発行会社が大幅な債務超過に陥っていること等により、償還等に重大な懸念があるものについては、実態に即して評価し算出する。
 
マル2  外貨建有価証券は、円貨に換算することとし、算出日のTT仲値により算出する。
 
(2)  第2号「動産不動産」
 
マル1  土地
 鑑定評価額(1年以内に鑑定したもの)又は直近の路線価、公示価格、基準地価格及び客観的な売買実例等を参考として算出した妥当と認められる評価額とする。
 
マル2  建物及び動産
 原則、帳簿価格とする。
 
(3)  第3号「前三号に掲げる資産以外の資産」
 金銭の信託(有価証券運用を主目的とする単独運用のものに限る。)において信託財産として運用されている有価証券(外国有価証券を含む。)の評価は、施行規則第21条の3第2項第1号及び上記(1)に準ずるものとする。なお、金融先物取引、証券先物取引及びオプション取引を組み入れている金銭の信託については、当該取引に係る未決済の評価損益も加え算出する。
 
−1−8 その他
 
(1)  施行規則第21条の2、第21条の3及び附則第2条の規定に係る命令を行う場合は、行政手続法等の規定に従うこととし、同法第13条第1項第2号に基づく弁明の機会の付与等の適正な手続きを取る必要があることに留意する。
 
(2)  自己資本比率が2%未満の銀行に対しては、原則として施行規則第21条の3第2項各号に掲げる資産について当該各号に定める方法により算出し、これにより修正した貸借対照表(様式は任意で可)を提出させるものとする。
 
(3)  早期是正措置は、自己資本比率が銀行の財務状況を適切に表していることを前提に発動されるものであることから、いやしくも早期是正措置の発動を免れるための意図的な自己資本比率の操作を行うといったことがないよう銀行に十分留意させることとする。
 
(4)  なお、平成11年3月31日までの間は、弾力運用省令(「銀行に対する早期是正措置制度の弾力的な運用に関する省令」平成10年2月27日省令第13号)が適用となることに留意するものとする。
 

1−2  検査終了後のフォローアップ
 平成10年3月31日に金融検査部長より発出された「新しい金融検査に関する基本事項について」(蔵検第140号)による新検査方式に導入に伴い、検査終了後のフォローアップを以下のとおり行うものとする。
 
(1)  検査結果通知書の交付日と同日付けで、相手銀行に対し、当該通知書において指摘された事項についての事実確認、発生原因分析、改善策、その他をとりまとめた報告書を1ヵ月以内(必要に応じて項目ごとに短縮するものとする。)に提出することを、法第24条に基づき求める。(別紙ひな型参照。)
 
(2)  上記報告書については、提出された段階で、銀行から十分なヒアリングを行うこととする。ヒアリングにあたっては、検査部検査班及び審査業務課とも密な連携を図るものとし、検査班の主任検査官若しくはこれに準ずる者及び検査結果通知書の審査を担当した課長補佐若しくはこれに準ずる者の出席を原則として確保するものとする。
 
(3)  検査結果又は法第24条に基づく報告書の内容等により、次回検査までの間定期的なフォローアップが必要であると認められる場合には追加的に法第24条に基づき報告を求め、また、自主的な改善努力に委ねたのでは当該銀行の健全性の確保に支障を来すと認められる場合には、法第26条に基づき業務改善を求める。
 
(4)  なお、既に検査を終了し、検査結果通知書を交付している場合で、かつ、法第24条に基づく報告を求めていない場合には、上記(1)に準じて報告を求めることとする。
 また、示達書を交付している場合には、以下の場合を除き(特に必要と認められる場合はこの限りではない。)、上記(1)に準じて報告を求めることとする。
 
回答を要しない示達書を交付している場合。
 
回答を要する示達書を交付しており、かつ、当該示達書に基づく回答書を受理している場合(定期的な報告を要する示達にあっては、示達回答に加え、当該報告を1回以上受けている場合。)
 
(5)  財務局所管金融機関について検査部検査が行われた場合においては、法第24条報告発出、受理及びフォローアップ等は原則として財務局にて行うこととする。
 その際、財務局金融監督担当課は監督部担当課との十分な連携によりこれらの事務を行うものとし、検査部との連携は財務局検査担当課を通じて行うものとする。
 

1−3  自己資本比率の計算について

 自己資本比率の計算の正確性等については、法第14条の2の規定に基づく自己資本比率の基準を定める件(平成5年大蔵省告示第55号。以下、1−3において、告示という。)及びバーゼル合意の趣旨を十分に踏まえ、以下の点に留意してチェックするものとし、その正確性等に問題がある場合には、その内容を通知し、注意を喚起するものとする。
 

−3−1 届出書の記載内容のチェック

 施行規則第35条第1項第27号に規定する劣後特約付金銭消費貸借(以下「劣後ローン」という。)による借入れ又は劣後特約付社債(以下「劣後債」という。)の発行の届出があった場合において、これらが自己資本比率規制上の自己資本として適格であるかについて確認するためには、以下の点に留意するものとする。
 

マル1  少なくとも破産及び会社更生といった劣後状態が生じた場合には、劣後債権者の支払い請求権の効力が一旦停止し、上位債権者が全額の支払いを受けることを条件に劣後債権者の支払い請求権の効力を発生する、という条件付債権として法律構成することにより、結果的に上位債権者を優先させる契約内容がある旨の記載があるか。
 
マル2  告示第5条第1項第4号に該当するものとして発行する場合には、利払いの義務の延期が認められるものであるものとするために、少なくとも当該銀行に配当可能利益がない場合及び利払いを行うと当該銀行が債務超過になる場合に利払いの義務の延期が認められるものである旨の契約となっているか。
 また、業務を継続しながら損失の補てんに充当し得るために、例えば当局が要求する最低自己資本比率基準の1/2に相当する水準を下回る場合には利払いの義務の延期が認められる旨の契約となっているか。(平成11年3月1日以降に発行又は契約更改されるものにつきチェックする。)
 
マル3  告示第4条第3項に定める海外特別目的会社を通じて発行された優先出資証券の代り金を銀行に回金するために銀行より発行等が行われる劣後債務については、当該債務取り入れの資金の裏付けたる当該海外特別目的会社の発行する優先出資証券が告示及びガイドラインに定める基本的項目としての適格性を満たしているか。
 
マル4  上位債権者に不利益となる変更、劣後特約に反する支払いを無効とする契約内容がある旨の記載があるか。
 
マル5  債務者の任意(オプション)による償還については、バーゼル合意を踏まえ、当局の事前承認が必要であるとする契約内容がある旨の記載があるか。
 
−3−2 「意図的な保有」控除のためのチェック

 金融システム内での資本調達(いわゆるダブル・ギアリング)は、「ある金融機関における問題が他の金融機関に迅速に伝播することから金融システムを脆弱なものにする」というバーゼル合意における指摘を踏まえ、我が国においては、告示第7条第1項第1号において自己資本から「控除項目」として控除しなければならない場合を、「他の金融機関の自己資本比率向上のため、意図的に当該他の金融機関の株式その他の資本調達手段を保有している場合(以下「意図的な保有」という。)」と規定している。この「意図的な保有」については、当面、具体的に以下のような場合を指すこととするが、これに該当しているか。
 

マル1  我が国の預金取扱金融機関が借手となる劣後ローンを平成9年7月31日以降供与している場合
 
 この場合については、資本増強協力目的によるものとみなし、すべて「意図的な保有」に該当する。
 
マル2  劣後ローンを除く他の金融機関の株式その他の資本調達手段を、経営再建・支援・資本増強協力目的として、平成10年3月31日以降、新たに引き受ける場合
 
 なお、前述の経営再建・支援・資本増強協力目的以外の場合で、純投資目的等により流通市場等から調達する発行済の株式その他の資本調達手段の保有、及び証券子会社によるマーケット・メイキング等のための一時的保有は、「意図的な保有」には該当しない。
 
(注)  「意図的な保有」のうち、「第三者に対する貸付け等を通じて意図的に当該第三者に保有させていると認められる場合」についてのチェックは、平成11年4月1日以降に資金の払込みが行われた自己資本の調達について行うものとする。
 
−3−3 資本の安定性・適格性等のチェック
 
(1)  告示第4条第2項に定めるステップアップ金利等を上乗せする特約を付す資本調達手段について、その発行形態が直接発行であるか間接発行であるかを問わず、当該ステップアップ金利等が以下の基準を満たしており、過大なものとなっていないか。
 
マル1  『「100ベーシス・ポイント」から「当初の金利のベースとなるインデックスとステップアップ後の金利のベースとなるインデックスとの間のスワップ・スプレッド」を控除した値』ないしは『「当初の信用スプレッドの50%」から「当初の金利のベースとなるインデックスとステップアップ後の金利のベースとなるインデックスとの間のスワップ・スプレッド」を控除した値』以下となっているか。
 
マル2  資本調達手段の条件には当該資本調達手段の残存期間の間に1回を越えるステップアップの特約が付されていないか。
 
マル3  スワップ・スプレッドは、届出日ではなく価格決定時における当初参照証券・金利とステップアップ後の参照証券・金利との値付けの差により計算されるものであるが、これが確実に上記マル1の範囲内となるよう計画されたものとなっているか。
 
マル4  発行後10年目以降にステップアップ特約により金利が上昇するものとなっているか。
 
(2)  告示第4条第3項に定める基本的項目として該当するもの(海外特別目的会社が発行する優先出資証券)については、当該銀行が直接国内で永久優先株を発行する場合に比べて同等の資本性を有しており、かつ業務を継続しながら当該銀行の損失に充当されるものとするために、少なくとも以下の基準を満たし、バーゼル合意の趣旨を十分に踏まえたものとなっているか。
 
マル1  当該発行銀行にとって発行代り金は即時かつ無制限に利用可能なものであるか。仮に、発行代り金が海外目的会社において利用可能なものである場合には、連結ベースでの自己資本には算入可能であるが、その場合でも、当該銀行の健全性に問題が生じる十分前に、例えば当局の要求する最低自己資本比率を下回る場合には、例えば当該銀行の発行する基本的項目に該当する資本への転換などにより発行代り金相当額が即時・無制限に当該銀行に利用可能となる契約内容となっているか。
 
マル2  当該優先出資証券に先立って当該銀行の普通株式への配当が停止されている場合には、当該銀行が優先出資証券の配当の金額と時期についての裁量を有しており、停止した優先出資証券の配当は当該銀行に完全に利用可能なものであるか。また、国内直接発行の優先株が存在する場合、それに対する配当と連動する契約内容となっているか。
 
マル3  上記に関わらず、当該優先証券及びこれと同順位の配当受領権を有する銀行のその他証券の配当金額合計が、銀行の配当可能利益を越えてはならない旨の契約内容となっているか。
 
マル4  当該優先証券の配当が事前に設定されている場合には、発行者のその後の信用度によって設定が変更されることがないようになっているか。
 
(3)  告示第5条第4項に定める「ステップ・アップ金利等が過大なものである」かどうかは以下の条件に照らして判断するものとする。
 
マル1  契約時から5年を経過する日までの期間において、ステップ・アップ金利等を上乗せしていないこと。
 
マル2  『「150ベーシス・ポイント」から「当初の金利のベースとなるインデックスとステップ・アップ後の金利のベースとなるインデックスとの間のスワップ・スプレッド」を控除した値』ないしは『「当初の信用スプレッドの50%」から「当初の金利のベースとなるインデックスとステップアップ後の金利のベースとなるインデックスとの間のスワップ・スプレッド」を控除した値』以下となっているか。
 
マル3  スワップ・スプレッドは、届出日ではなく価格決定時における当初参照証券・金利とステップアップ後の参照証券・金利との値付けの差により計算されるものであるが、これが確実に上記マル2の範囲内となるよう計画されたものとなっているか。
 
(4)  資本調達を行った金融機関が、劣後ローン等の貸手等に対して迂回融資等により、その原資となる貸出を行っていないか。
 
−3−4 自己資本比率算定に際してのチェック
 
(1)  資産の流動化が行われた場合には、法形式上の譲渡に該当する場合であっても、リスクの移転が譲受者に完全に行われている等、実質的な譲渡が行われているか。
 
(2)  意図的な保有に該当する場合には、貸手金融機関の自己資本の額から当該保有相当額を控除することとなるが、適正な控除が行われているか。
 
(3)  連結財務諸表の作成上、意図的な保有に係る他の金融機関又は金融業務を営む関連法人等(比例連結の簡便法が適用されているものを除く。)に持分法が適用されている場合には、控除すべき資本調達手段の額は、投資原価にそれまで計上された持分法による評価損益の累計額を加減した額となっているか。
 
(4)  決算期を跨いで又は決算期日に保有債権に銀行保証等を付している場合には、原則、当該債権の残存期間と保証等の期間が等しい場合にのみリスクアセットの削減効果を認める。ただし、保証等の残存期間が債権の残存期間を下回っている場合であっても、当該保証等につき正当な理由があり、かつ、継続して信用リスクの削減が期待できる場合(注)にはリスクアセットの削減効果を認める。
 なお、一時的な自己資本比率の引上げを行う意図をもって保証契約等を結んでいる場合には、上記に関わらずリスクアセットの削減効果を認めない。
 
(注) 当面、保証等の残存期間が1年以上の場合を目途とする。(ただし、保証等の残存期間が1年以上のものでも、実質的に1年以内に保証契約等を解除するインセンティブを与えるような契約を結んでいるものについては、リスクアセットの削減効果を認めない。
(5)  買戻し権利付債権譲渡については、原則としてリスクアセットの削減効果を認める。
 ただし、決算期を跨いで買戻し権利付債権譲渡を行った場合、当該決算期以降1年以内に当該権利を行使して買戻しを行うインセンティブを与えるような契約を結んでいるものについては、リスクアセットの削減効果を認めない。
 なお、一時的な自己資本比率の引上げを行う意図をもって買戻し権利付債権譲渡を行っている場合には、上記に関わらずリスクアセットの削減効果を認めない。 
 
(6)  資本勘定に算入される税効果相当額(=繰延税金資産見合い額)は適正に計上されているか。
 
(注) 例えば、計上された税効果相当額が今後5年間の利益見込額の合計額を上回っている場合には、監査法人と十分な協議が行われているかを含め、その理由等を聴収する。
(7)  マーケット・リスク相当額算出時における外国為替リスクの算出対象ポジションについて、当面、次の取扱いとするが、これに対応しているか。
 
別表第3、 II −2−(3)中、金及び外国為替のポジションのうち、外国為替リスクの対象から除くことができるとされていた、円投別枠ポジション等については、今後も除いてよい。
 
−3−5 期限前償還等の届出受理に際してのチェック

 施行規則第35条第1項第28号に規定する劣後ローンの期限前弁済若しくは劣後債の期限前償還にかかる届出又は施行規則第35条第1項第29号若しくは第30号に規定する自己の株式の消却を受理しようとする時は、告示及びバーゼル合意の趣旨を十分に踏まえるとともに、当該届出金融機関における期限前弁済、期限前償還又は株式消却後の自己資本比率がなお十分な水準を維持しているかどうか、特に留意するものとする。
 

−3−6 連結自己資本比率を算出する際の比例連結の方法の使用に関するチェック
 
(1)  連結自己資本比率を算出する際に金融業務を営む関連法人等について比例連結の方法の使用の届出があった場合においては、以下の点に留意するものとする。
 
マル1  告示第7条の2第1項第2号イ又は第25条の2第1項第2号イに規定する投資及び事業に関する契約(以下1−3において「合弁契約」という。)については、以下の点についてチェックする。
 
 契約当事者にすべての共同支配会社が含まれているか。また、共同支配会社以外の法人等が含まれていないか。
 
 合弁契約に係る金融業務を営む関連法人等の設立、株式の発行等、共同支配会社の持株割合等(告示第7条の2第1項第1号に規定する持株割合等をいう。以下1−3において同じ。)、共同支配会社からの役員派遣その他の役員の選任に関する事項、共同支配会社による経営への関与に関する事項(株主総会の決議方法等に関する事項並びに取締役会等の構成及び決議方法等に関する事項を含む。)などが契約内容に含まれているか。
 
マル2  告示第7条の2第1項第2号ロ又は第25条の2第1項第2号ロに規定する、合弁契約に基づき持株割合等に応じて共同でその事業の支配及び運営を行う体制がとられているかどうかについては、以下の点についてチェックする。
 
 合弁契約に係る金融業務を営む関連法人等の株主総会その他これに準ずる機関(以下1−3において「意思決定機関」という。)において、共同支配会社は持株割合等と同一の割合の議決権を与えられているか。
 
 各共同支配会社の合弁契約に係る金融業務を営む関連法人等への取締役派遣割合(合弁契約上、取締役を指名又は任免することが認められる取締役の数が全取締役数に占める割合をいう。)は持株割合等と同一となっているか。それらが同一でない場合には、代表取締役、社長、会長その他の役員の派遣状況等に照らして、実質的に持株割合等が同一であるのと同視できるか。
 
 合弁契約において定められている持株割合等が、当該合弁契約の変更を伴うことなく変更され得ることとなっていないか(下記マル4の場合を除く)。
 
 意思決定機関及び取締役会の決議事項及び決議方法は、法令及び定款に基づいているか。
 
 合弁契約に係る金融業務を営む関連法人等に対する各共同支配会社の追加出資並びに各共同支配会社(その子会社、子法人等及び関連法人等を含む。)の融資、債務保証その他のリスク負担行為が持株割合等に応じて行われることとされ、又はこれに反する内容となっていないか。
 
 合弁契約に係る金融業務を営む関連法人等について、新設、既存企業からの営業譲受け等、その設立態様の如何を問わず、合弁契約に定められている事業の遂行に必要な免許、許認可等所要の手続を経て、銀行が自己資本比率を算定する日において現に事業が行われているか。
 
 その他合弁契約に基づき持株割合等に応じて共同でその事業の支配及び運営が行われていないと認められる点はないか。
 
マル3  告示第7条の2第1項第1号若しくは第2号ニ又は第25条の2第1項第1号若しくは第2号ニに規定する、当該銀行が持株割合等を超えてその事業に関して責任を負うべきことを約する契約等(以下1−3において、「過大負担契約等」という。)は、書面又は口頭、明示又は黙示のいずれによるかを問わないものとする。
 
マル4  合弁契約において一定の事由を停止条件として持株割合等の変更を認めることとされている場合には、停止条件の内容が明確かつ合理的なものであり、かつ、当該停止条件が成就していないことが明らかである限りにおいては、過大負担契約等に該当しないものとする。
 
マル5  告示第7条の2第2項及び第25条の2第2項については、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則第4条第1項第4号に規定する継続適用の原則に照らして判断することに留意する。
 
(2)  金融業務を営む関連法人等について比例連結の方法を適用するに当たっては、その資産、負債、収益及び費用のうち、投資をしている銀行及び連結子法人等に帰属する部分のみを対象として連結の範囲に含める点を除き、子会社の全部連結に準じて行うものとする。但し、我が国の会計制度上比例連結が採用されておらずなじみがないことや、会計上の事務負担が増加することに鑑み、以下の簡便法によっている場合には、当分の間、比例連結の方法によっているものとして取り扱って差し支えない。
 
マル1  簡便法は、当該金融業務を営む関連法人等の資本調達手段(意図的に保有している他の金融機関の資本調達手段を除く。以下(2)において同じ。)を控除項目の額(告示第7条第1項、第8条第1号、第25条第1項及び第26条に規定する控除項目の額をいう。以下(2)において同じ。)に含めず、告示第7条の2第1項本文後段又は第25条の2第1項本文後段の規定にかかわらず持分法を適用し、かつ、連結自己資本比率に係る算式における分母の額(信用リスク・アセットの額及びマーケット・リスク相当額を8パーセントで除して得た額(国際統一基準に係る場合に限る。)の合計額をいう。以下(2)において同じ。)に調整を加えることにより行うものとする。
 
(注1 )簡便法において持分法を適用するのは、持分法の適用に当たって、当期純損益の認識、投資消去差額の調整、未実現損益の消去、配当金・役員賞与の消去等の会計処理が行われることによる。
 
(注2 )連結自己資本比率に係る算式における分子の額(自己資本の額をいう。)には調整を行わない。
 
マル2  連結自己資本比率に係る算式における分母の額は、当該金融業務を営む関連法人等を連結の範囲に含めないで算出した連結自己資本比率に係る算式における分母の額から次のイに掲げる額を控除し、ロに掲げる額を加算した額とする。
 
 当該金融業務を営む関連法人等の資本調達手段の額(資本勘定に属するものに限る。)
 
 毎決算期(中間期を含む。)の末日における当該金融業務を営む関連法人等の貸借対照表に基づき、告示第8条から第10条まで又は第26条及び第27条を適用して得た当該金融業務を営む関連法人等に係る分母の額に持株割合等を乗じて得た額
 
マル3  上記マル2ロにおいて、当該銀行と当該金融業務を営む関連法人等の間の債権・債務については、相殺消去を行わないこととして差し支えない。なお、相殺消去を行う場合には、当該銀行又は当該金融業務を営む関連法人等の有する債権を資産等から除いて上記マル2ロの分母の額を算定する。
 
マル4  上記マル2ロにおいて、当該金融業務を営む関連法人等に係る信用リスク・アセットの額の算定上、告示別表第1のリスク・ウェイト及び別表第2の掛目に、本来適用すべき割合よりも高い割合として掲げられているものを用いても差し支えない。
 
マル5  その他、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従っているか。
 

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