目次 NEXT

1−7  預金等の取扱いについて
 次の預金及び定期積金(外貨建てのものを除く。以下「預金等」という。)について、その商品の定義等に係る照会があった場合には、一般法令や他商品の取扱いを定めた法令等での取扱いを勘案し、以下の点に留意のうえ対応するものとする。
 なお、銀行における預金等の商品設計については、元本保証を前提に、原則として自由であり各行の経営判断によりこれを行うことができる点に留意するものとする。
 
−7−1 譲渡性預金(外国で発行されるものを除く)
 
 譲渡性預金とは、「払戻しについて期限の定めがある預金で、譲渡禁止特約のないもの」をいう。なお、こうした商品性に鑑み以下のような取扱いについて留意する必要がある。
 
(1)  期限前解約及び買取償却
 預入日に指定された満期日前の解約及び発行金融機関による買取償却は行われていないか。
 
(2)  流通取扱
 金融機関は、自己の発行した譲渡性預金の売買を行っていないか。また、金融機関は、譲渡性預金発行の媒介等を行っていないか。
 
(3)  個別の相対発行ではなく、均一の条件で不特定多数の者に対して、公募といった形で大量に発行されている場合はないか。
 
−7−2 期間の定めのある預金
 
 以下の点に留意した取扱いとなっているか。
 
(1)  定期預金の預入期間については、「準備預金制度に関する法律(昭和23年法律第135号)」に定める区分(払出しについて期限の定めのある預金で、その払戻期限が当該預金を締結した日から起算して一月を経過した日以後に到来するもの)との整合性が保たれているか。
 
(2)  変動金利定期預金(預入時に満期日までの利率が確定しない定期預金)の利率は、基準となる指標及び一定の利率設定方法により設定し、この指標及び利率設定方法を満期日まで継続しているか。
 
−7−3 期間の定めのない預金
 
 以下の点に留意した取扱いとなっているか。
 
(1)  据置期間のある預金
 据置期間が1か月以上の場合又は据置期間内と据置期間後とで利率設定があらかじめ異なる場合には、据置期間内の取扱いについて、上記1−7−2(2)と同様の取扱いがなされているか。
 
(2)  貯蓄預金
 貯蓄預金とは「受入対象を個人のみとする預金で、預入・払出について、給与、公的及び私的年金(財形年金を含む)、株式・信託の配当金及び投資信託の分配金等並びに保護預りの国債及び社債等の元利金に係る自動振込入金、同時に百件以上の取扱いを行う総合振込入金、公共料金の払込み等契約に基づく継続的な自動振替及び振込出金、総合口座の取扱いが行われていないもの」をいい、当局は、本預金を官民トータルバランスの確保の際の基準となるべきベンチマークとするものとする。
 

1−8  疑わしい取引の届出手続きについて
 
 「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(平成11年法律第136号)第5章に規定する疑わしい取引の届出手続き等について照会があった場合には、下記の要領により対応することとする。
 
(1)  疑わしい取引の届出様式
 疑わしい取引が発生した場合には、文書による届出にあっては「疑わしい取引の届出の方法等に関する命令」(平成11年総理府令・法務省令第1号)別紙様式第1号により、フレキシブルディスクによる届出にあっては別紙様式第5号に届出事項を記録したフレキシブルディスクを添付のうえ、発生の都度速やかに当局あて届け出るものとする。
 
(2)  届出先
 金融監督庁長官官房総務課特定金融情報室に、郵送又は持参により届け出るものとする。ただし、財務局管轄金融機関については財務局理財部金融監督課を経由し、2部(フレキシブルディスクについては1枚)を届け出るものとする。
 なお、郵送の場合には、書留・親展扱いとする。
 
(3)  特定金融情報室への進達
 財務局は管轄金融機関から届出があった場合には、届出事項を確認のうえ、直ちに特定金融情報室に1部を郵送(書留・親展扱い)又は持参により進達する。なお、フレキシブルディスクによる届出にあっては、別紙様式第5号の確認のみとする。
 
(4)  疑わしい取引の参考事例
 別添に掲げる参考事例は、個別具体的な取引が、疑わしい取引に該当するか否かを金融機関が判断するための基準である。同参考事例は、疑わしい取引の類型を網羅的に列挙したものではなく、これに該当しない取引であっても、金融機関が疑わしい取引に該当すると判断したものは届出の対象となる。
 
(5)  責任者の把握
 疑わしい取引の届出に関する連絡を確実かつ円滑に行うため、疑わしい取引の届出に関する事務を担当する各金融機関の責任者を別紙様式により把握するものとする。
 
(6)  捜査機関等への情報提供等
 捜査機関等への情報提供等は、特定金融情報室においてのみ行う。
 
(7)  その他
 金融機関から届け出られた取引についての情報は、個人のプライバシーに関する情報も含まれることから、届出書の保管及び情報管理には特に留意する。


別紙様式


(別添)

疑わしい取引の参考事例

第1  現金を使用する取引に係る事例
 
 多額の現金(外貨を含む。以下同じ。)又は小切手により、入出金(有価証券の売買、送金及び両替を含む。以下同じ。)を行う取引。但し、顧客の職業、事業内容等から、当該多額の現金又は小切手を保有していることについて合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
 短期間のうちに頻繁に行われる取引で、現金又は小切手による入出金の総額が多額である場合。但し、顧客の職業、事業内容等から、当該多額の現金又は小切手を保有していることについて合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
 多量の小額通貨(外貨を含む。)により入金又は両替を行う取引。但し、顧客の職業、事業内容等から、当該多量の小額通貨を保有していることについて合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
 夜間金庫への多額の現金の預入れ又は急激な利用額の増加に係る取引。
但し、顧客の職業、事業内容等から、当該多額の現金を保有していること又は当該急激な利用額の増加について合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
第2  口座開設に係る事例
 
 架空名義口座又は借名口座の開設を企図した疑いのある顧客に係る取引(本人確認が未済等の理由により口座開設に至らなかった場合を含む。)。
 特に、口座開設時の本人確認等に際し、顧客に次のことが認められる場合。
 
 本人確認書類の提示を拒む場合(合理的な理由がなく、本人確認書類以外による確認を希望する場合を含む。)。
 
 来店者のうち、本人確認書類をコピーで提示し、合理的な理由がなく、原本の提示を拒む場合。
 
 虚偽の疑いがある情報又は不明瞭な情報を提供する場合。
 
 合理的な理由がないにもかかわらず、口座の開設手続きを行う者と口座の名義人が異なる場合(本人確認等の過程において、口座の開設手続きを行う者と口座の名義人が異なることが判明した場合を含む。)。
 
 口座開設後、架空名義口座又は借名口座であるとの疑いが生じた口座に係る取引。特に、口座開設後、顧客に連絡等を行った場合において、口座開設時の本人確認等に関する情報(住所、電話番号等)に虚偽の疑いがあることが判明した場合。
 
 口座開設後、口座名義人である法人の実体がないとの疑いが生じた口座に係る取引。特に、口座開設後、顧客である当該法人に連絡等を行った場合において、口座開設時の本人確認等に関する情報(住所、電話番号等)に虚偽の疑いがあることが判明した場合。
 
 住所と異なる連絡先にキャッシュカード等の送付を希望する顧客又は通知を不要とする顧客に係る取引。但し、法人で業務上の必要性から異なる連絡先への送付を求める場合、個人で勤務先に送付を求める場合等、合理的な理由がある場合を除く。
 
 本人確認が未済等の理由により、メールオーダーによる口座開設に至らなかった顧客に係る取引。
 
10  多数の口座を開設しようとする顧客に係る取引。但し、顧客の職業、事業内容等から、当該多数の口座を開設することについて合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
11  多数の口座を保有していることが判明した顧客に係る取引。但し、顧客の職業、事業内容等から、当該多数の口座を保有することについて合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
12  当該支店で取引をすることについて明らかな理由がない顧客に係る取引。
例えば、顧客が自宅付近の支店でも同種の取引が可能であるにもかかわらず、殊更遠方の支店において取引を行う場合。
 
第3  口座を利用した取引に係る事例
 
13  口座開設後、短期間で多額又は頻繁な入出金が行われ、その後、解約又は取引が休止した口座に係る取引。但し、顧客の職業、事業内容等から、当該口座解約又は入出金の動きについて合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
14  多額の入出金が頻繁に行われる口座に係る取引。但し、顧客の職業、事業内容等から、当該入出金の動きについて合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
15  多数の者に頻繁に送金を行う口座に係る取引。特に、送金を行う直前に多額の入金が行われる場合。但し、顧客の職業、事業内容等から、当該送金について合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
16  多数の者から頻繁に送金を受ける口座に係る取引。特に、送金を受けた直後に当該口座から多額の送金又は出金を行う場合。但し、顧客の職業、事業内容等から、当該送金又は出金について合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
17  通常は資金の動きがないにもかかわらず、突如多額の入出金が行われる口座に係る取引。但し、顧客の職業、事業内容等から、当該入出金の動きについて合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
18  経済合理性から見て異常な取引。例えば、預入れ額が多額であるにもかかわらず、合理的な理由もなく、利回りの高い商品を拒む場合。
 
第4  債券等の売買に係る事例
 
19  大量の債券等を持ち込み、現金受渡しを条件とする売却取引。但し、顧客の資産状況、事業内容、取引経過等から、当該大量の債券等を保有していることについて合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
20  第三者振出しの小切手又は第三者からの送金により債券等の売買の決済が行われた取引。但し、預金小切手、本人の取引先及び本人への融資先からの送金等、第三者と本人との関連が明らかな場合を除く。
 
21  現金又は小切手による多額の債券の買付けにおいて、合理的な理由もなく、保護預り制度を利用せず、本券受渡しを求める顧客に係る取引。
 
第5  保護預り・貸金庫に係る事例
 
22  保護預り及び信託取引の開始状況等に着目した事例については、「第2 口座開設に係る事例」に準じる。
 
23  貸金庫の利用開始状況等に着目した事例については、「第2 口座開設に係る事例」に準じる。
 
24  頻繁な貸金庫の利用。但し、顧客の職業、事業内容等から、合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
第6  外国との取引に係る事例
 
25  他国への送金にあたり、虚偽の疑いがある情報又は不明瞭な情報を提供する顧客に係る取引。特に、送金先、送金目的、当該支店の利用等に合理的な理由があると認められない情報を提供する顧客に係る取引。
 
26  短期間のうちに頻繁に行われる外国送金で、送金総額が多額にわたる取引。但し、顧客の職業、事業内容等から、当該送金について合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
27  経済合理性のない目的のために他国へ多額の送金を行う取引。
 
28  経済合理性のない多額の送金を他国から受ける取引。
 
29  多額の旅行小切手又は送金小切手(外貨建てを含む。)を頻繁に作成又は使用する取引。但し、顧客の職業、事業内容等から、当該作成又は使用について合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
30  資金洗浄対策に消極的な国・地域又は不正薬物の仕出国・地域に拠点を置く顧客が行う取引。但し、当該取引を行うことについて、合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
31  資金洗浄対策に消極的な国・地域又は不正薬物の仕出国・地域に拠点を置く者(法人を含む。)との間で顧客が行う取引。但し、当該取引を行うことについて、合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
32  資金洗浄対策に消極的な国・地域又は不正薬物の仕出国・地域に拠点を置く者(法人を含む。)から紹介された顧客に係る取引。但し、当該取引を行うことについて、合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
第7  融資に係る事例
 
33  延滞していた融資の返済を予定外に行う取引。但し、顧客の職業、事業内容、資産状況等から、当該返済資金を保有していることについて合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
34  融資対象先である顧客以外の第三者が保有する資産を担保とする融資の申込み。但し、担保提供の経緯、資金の使途等から、合理的な理由があると認められる場合を除く。
 
第8  その他の取引に係る事例
 
35  複数人で同時に来店し、別々の店頭窓口担当者に多額の現金取引や外国為替取引を依頼する一見の顧客に係る取引。
 
36  顧客が自己のために活動しているか否かにつき疑いがあるため、真の受益者の確認を求めたにもかかわらず、その説明や資料提出を拒む顧客に係る取引。代理人によって行われる取引であって、本人以外の者が利益を受けている疑いが生じた場合も同様とする。
 
37  自行職員又はその関係者によって行われる取引であって、当該取引により利益を受ける者が不明な取引。
 
38  自行職員が組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第10条(犯罪収益等隠匿)又は第11条(犯罪収益等収受)の罪を犯している疑いがあると認められる取引。
 
39  偽造通貨、偽造証券、盗難通貨又は盗難証券により入金が行われた取引で、当該取引の相手方が、当該通貨又は証券が偽造され、又は盗まれたものであることを知っている疑いがあると認められる場合。
 
40  取引の秘密を不自然に強調する顧客及び届出を行わないように依頼、強要、買収等を図った顧客に係る取引。
 
41  職員の知識、経験等から見て、不自然な態様の取引又は不自然な態度、動向等が認められる顧客に係る取引。
 

1−9  説明書類の作成・縦覧等について
−9−1 重要性の原則の適用について
 
(1)  連結の範囲・持分法の適用範囲に関する重要性の原則については、証券取引法に基づいて作成する連結財務諸表等はもとより、銀行法に基づいて作成する銀行の中間連結財務諸表・連結財務諸表(法第19条第2項、施行規則第18条第3項・第4項)、銀行の連結貸借対照表・連結損益計算書(法第20条第2項)、銀行持株会社の中間連結財務諸表・連結財務諸表(法第52条の11第1項、施行規則第34条の15第1項・第2項)、銀行持株会社の連結貸借対照表・連結損益計算書(法第52条の12)も対象となることに留意する。
 
(注)  連結して記載する説明書類については施行規則上明定されている(施行規則第19条の3第1号及び第34条の16の2第1項第1号イ)。
 
(2)  その内容については、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則第5条第2項及び第10条第2項の規定並びに日本公認会計士協会監査委員会報告第52号『連結の範囲及び持分法の適用範囲に関する重要性の原則の適用に係る監査上の取扱い』(平成5年7月21日付)に従っているか。
 また、重要性の判断に当たっては、銀行グループの財政状態及び経営成績を適正に表示させる観点から、量的側面と質的側面の両面で並行的に判断され、金融業を営む個々の子会社等の特性が十分考慮されているか。
 
−9−2 記載項目についての留意事項
 
(1)  一般的な留意事項
 
 各記載項目については、この事務ガイドラインに定めるもののほか、企業内容等の開示に関する省令、連結財務諸表規則等も参考として、適切かつわかりやすい表示がなされているか。
 
 各記載項目について自行において該当がない場合、注釈が必要な場合等には、その旨適切な表示がなされているか。
 
 施行規則に定められた義務的な開示項目以外の情報を自主的・積極的に開示することは、何ら差し支えないことに留意する。
 
(2)  個別の記載項目についての留意事項
 
 「経営の組織」については、組織図等を用いて系統的に分かりやすい説明がなされているか。
 
 「主要な業務の内容」には、預金業務、貸出業務、商品有価証券売買業務、有価証券投資業務、内国為替業務、外国為替業務、社債受託及び登録業務、金融先物取引等の受託等業務、附帯業務等の区分ごとにその内容が記載されているか。
 
 「直近の営業年度における営業の概況」には、業況、営業実績、損益の状況等についての概括的な説明、自行が対処すべき課題等について説明されているか。
 
 「リスク管理の体制」には、リスク内容、リスク管理に対する基本方針及び審査体制・検査体制・ALM管理体制等のリスク管理体制等について記載されているか。
 
 「法令遵守の体制」には、法令遵守(コンプライアンス)に対する基本方針及び運営体制について記載されているか。
 
 銀行単体及び銀行グループに係る「自己資本(基本的項目に係る細目を含む。)の充実の状況」には、決算状況表の「自己資本比率の状況」の内容と同程度のものが記載されているか。
 
 「貸倒引当金」については、個別貸倒引当金、一般貸倒引当金及び特定海外債権引当勘定(租税特別措置法第55条の2の海外投資等損失準備金を含む。)ごとの内訳も併せて記載されているか。
 
 「銀行及びその子会社等の主要な事業の内容及び組織の構成」については、銀行グループにおける主要な事業の内容、当該事業を構成しているグループ会社の当該事業における位置付け等について系統的に分かりやすい説明がなされるとともに、その状況が事業系統図等によって示されているか。
 
 「銀行及びその子法人等が二以上の異なる種類の事業を営んでいる場合の事業の種類ごとの区分に従い、当該区分に属する経常収益の額、経常利益又は経常損失の額及び資産の額(以下「経常収益等」という。)として算出したもの(各経常収益等の額の総額に占める割合が少ない場合を除く。)」については、連結財務諸表規則第15条の2第1項に規定する事業の種類別セグメント情報が記載されているか。
 
−9−3 リスク管理債権額の開示
 
(1)  連結ベースのリスク管理債権額については、連結貸借対照表に基づき銀行及び連結の範囲に含まれる子法人等について作成されているか。
 
(2)  開示区分
 
マル1  破綻先債権
 施行規則第19条の2第1項第5号ロ(1)の「元本又は利息の支払の遅延が相当期間継続していることその他の事由により元本又は利息の取立て又は弁済の見込みがないものとして未収利息を計上しなかつた貸出金」については、昭和41年9月5日付国税庁長官通達「金融機関の未収利息の取扱いについて」に基づき未収利息を益金に算入しなかった場合等をいう。
 
マル2  延滞債権
 
 施行規則第19条の2第1項第5号ロ(2)の「債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として利息の支払を猶予したもの」については、「金利棚上げにより未収利息を不計上とした貸出金」をさすものとする。
 
 「延滞債権」に「金利減免」が含まれるかどうかについては、金利減免後の利息回収状況により判断するものとし、金利減免後の未収利息について収益不計上が認められる場合には、「延滞債権」として開示対象債権に含まれることに留意する。
 
マル3  貸出条件緩和債権
 
 施行規則第19条の2第1項第5号ロ(4)の「債務者に有利となる取決め」とは、債権者と債務者の合意によるものか法律や判決によるものであるかは問わないことに留意する。また、その具体的な事例としては、例えば、以下のような債権又はその組み合わせが考えられるが、これらに関わらず施行規則の定義に合致する貸出金は開示の対象となることに留意する。
 
イ.  金利減免債権:約定条件改定時において、当該債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用される新規貸出実行金利を下回る水準まで当初約定期間中の金利を引き下げた貸出金。なお、債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として金利を減免した場合には、金利水準の如何に関わらず開示の対象となることに留意する。
 
ロ.  金利支払猶予債権:金利の支払を猶予した貸出金。
 
ハ.  経営支援先に対する債権:損金経理について税務当局の認定を受けて債権放棄などの支援を実施し、今後も必要に応じ再建・支援を継続する方針を固めている債務者に対する貸出金。
 
ニ.  元本返済猶予債権:約定条件改定時において、当該債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用される新規貸出実行金利を下回る金利で元本の支払を猶予した貸出金。なお、債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として元本返済を猶予した場合には、金利水準の如何に関わらず開示の対象となることに留意する。
 
ホ.  一部債権放棄を実施した債権:会社更生法の認可決定等に伴い、元本の一部又は利息債権の放棄を行った貸出金の残債。
ヘ.  代物弁済を受けた債権:債務の一部弁済として、不動産や売掛金などの資産を債務者が債権者に引き渡した貸出金(担保権の行使による引き渡しを含む)の残債。
 
ト.  債務者の株式を受け入れた債権:債務の一部弁済として、債務者の発行した株式を受領した貸出金の残債。ただし、当初の約定に基づき貸出金を債務者の発行した株式に転換した場合は除く。
 

1−10  産業活力再生特別措置法に関する金融機関の留意事項について

 産業活力再生特別措置法(以下「産活法」という。)等に定める事業再構築に関する計画(以下「事業再構築計画」という。)の記載事項については、金融機関の計算書類等の記載方法に則し、以下の点に留意するものとする。
 
−10−1 産活法第2条第2項第2号及び同法告示第6条、第8条、第9条の事業革新の定義について
 
(1)  告示第6条の「当該新たな役務の売上高の合計額がすべての事業の売上高の1%以上となる場合」は、例えば、当該新たな役務の業務収益(資金運用収益、役務取引等収益及びその他業務収益)の合計額がすべての事業の業務収益の1%以上となる場合をいう。
 
(2)  告示第8条の「当該役務に係る1単位当たりの販売費が5%以上低減される場合」は、例えば、業務収益又は業務粗利益の1単位当たりの経費が5%以上低減される場合をいう。
 
(3)  告示第9条の「事業再構築期間中の当該役務の売上高の伸び率を百分率で表した値が、過去3事業年度における当該役務に係る業種の売上高の伸び率の実績値を百分率で表した値を5以上上回る場合」は、例えば、事業再構築期間中の当該役務の業務収益の伸び率を百分率で表した値が、過去3事業年度における当該役務に係る業種の業務収益の伸び率の実績値を百分率で表した値を5以上上回る場合をいう。
 
−10−2 産活法第3条第6項第1号及び同法告示第11条の事業再構築の認定の基準について
 
(1)  告示第11条第1項第1号の「自己資本当期純利益率(当期純利益金額を自己資本の額で除したものを百分率で表した値)が2以上上昇する」場合は、例えば、自己資本当期利益率が2以上上昇する場合をいう。
 
(2)  告示第11条第1項第2号の「有形固定資産回転率(売上高を有形固定資産の帳簿価額で除した値)が5%以上上昇する」場合は、例えば、業務収益を有形固定資産の帳簿価額で除した値が5%以上上昇する場合をいう。
 
(3)  告示第11条第1項第3号の「従業員1人当たりの付加価値額(営業利益、人件費及び減価償却費の和)が6%以上上昇する」場合は、例えば、従業員1人当たりの付加価値額(業務純益、人件費及び減価償却費の和)が6%以上上昇する場合をいう。
 

1−11  その他
−11−1 職員の派出の取扱いについて
 
 派出とは、特定の施設内の一定の場所に職員を派遣し、当該施設主体のために、金銭出納事務を行うことをいい、官公庁、公営住宅団地、総合病院等の公共性のある施設内において公金等の金銭出納事務に限った事務(注)を行っている限りにおいて、銀行法上の営業所としない扱いとすることができる。
 
(注)  やむを得ず預金等の取次行為と同様の行為を行う場合は、必要最小限度に留め、次の点に留意すること。
 
マル1  取次を行う対象とする者は、当該派出先の施設に所属する職員及び当該派出先の施設をもっぱら利用する者に限られているか。
 
マル2  取次行為を行うに当たっては、金銭や通帳の預り証等を発行するなど事故防止について万全を期しているか。
 

NEXT