平成11年8月3日
金 融 監 督 庁

「平成11検査事務年度検査基本方針及び基本計画」の公表について
 

 公正で透明な金融行政が求められる中で、金融検査の重要性はますます高まってきている。こうした状況を踏まえ、金融検査にかかる事務運営の透明性の向上を図る観点から、平成11検査事務年度検査基本方針及び基本計画を公表することとした。

 なお、平成10検査事務年度検査基本方針及び基本計画は、「金融検査・この1年(平成10年度版)」(平成11年6月22日発行)の中で公表している。
 

本件についての問い合わせ先

金融監督庁

検査部検査総括課

  黒澤(03-3506-6060)
  橋本(03-3506-6061)
  加藤(03-3506-6065)

平成11検査事務年度検査基本方針及び基本計画
 

I .平成11検査事務年度の検査基本方針
 
.基本的考え方
 
(1)  金融監督庁発足2年目にあたる平成11検査事務年度は、実効的・効率的な金融検査実現に向けての基盤固めの年と位置づける。当庁は、発足以来、自己責任原則の徹底と市場規律を基軸に明確なルールを前提とした透明性の高い行政への転換を押し進め、もって預金者の保護、信用秩序の維持等に資することに努めてきたところである。こうした当庁の責務を果たす観点から、本事務年度においては、検査官の増員、統括検査官をトップとする部門制の採用、特別検査官・専門検査官の設置、さらに金融検査マニュアルの整備など、ハード・ソフトの両面にわたって検査態勢の拡充が図られている。本事務年度においては、こうした態勢を踏まえ、内部管理体制の充実を確保しつつ、専門性の高い深度ある検査を実施することを基本とする。
 
(2)  なお、検査の実施に際しては、以下の金融行政を巡る環境の変化を踏まえるものとする。
 預金等の全額保護という特例措置の適用期限である平成13年3月まで残すところ2年弱となり、我が国金融システムの安定性と信頼性を高めるという課題は、さらに重要性を増している。
 前事務年度においては、「金融再生トータルプラン(第2次とりまとめ)」を踏まえ、主要行、地方銀行、第2地方銀行の資産内容について集中検査を実施したところであるが、本事務年度においては、検査官の増員等を踏まえ、検査頻度を高めるとともに、前事務年度においては必ずしも十分な事務量を確保できなかった他の業態(保険会社、信用金庫等)に対しても、順次、検査を実施していく必要がある。
 また、我が国金融市場の国際的市場としての地位を確固たるものとする観点から、昨年12月、金融システム改革法が施行され、金融のグローバル化や会計・ディスクロージャー制度の国際標準化等が進展しつつある。こうした流れを踏まえた検査を適切に実施する必要がある。
 さらに、西暦2000年を迎える本事務年度においては、コンピュータ2000年問題に対して、機動的かつ重点的な検査を実施し、万全の対応を期する必要がある。

 

.検査の重点事項
 
(1)  金融機関検査
 前事務年度においては、緊急的対応として、主要行、地方銀行、第2地方銀行に対し、自己査定及びそれに基づく償却・引当の実施状況等について実態把握するため、財務局、日本銀行とも連携しつつ集中検査を実施したところである。
 本事務年度においては、近年における金融機関を取り巻く環境の大きな変化、金融取引の著しい高度化、国際化、金融機関を巡る不祥事の増加を踏まえ、金融検査マニュアルに基づき、金融機関における自己責任原則の徹底を前提に、資産内容の健全性、ルール遵守状況、リスク管理状況等について、的確な実態把握に努める。
 
(2)  金融機関等グループ・コングロマリットの一体的な実態把握
 金融機関等の信託子会社、証券子会社等に対しても、資産内容の健全性、ルール遵守状況、リスク管理状況等に関する実態把握を行っていくが、その際、連結ベースでの監督を踏まえ、親金融機関等と金融機関等子会社のグループを一体的に検査するなど効果的な実態把握に努める。
 また、我が国の金融機関等の海外支店、海外現地法人についても、本店・本社等の検査の実施と合わせて、ルール遵守状況、リスク管理状況、特に本店の資産内容の健全性に影響を与えるような取引に重点をおいた検査を実施する。
 
(3)  保険会社検査
 保険会社については、銀行と同様、平成10年3月期から自己査定制度が導入され、自己査定に基づき償却・引当を適切に行うこととされている。また、平成11年4月から早期是正措置制度が導入され、ソルベンシー・マージン比率に基づいて、必要な措置が適時に講じられることになっている。本事務年度においては、こうした制度的枠組みを踏まえ、生命保険会社を中心に資産内容等の実態把握のための検査を集中的に順次実施する。
 
(4)  証券会社等検査
 証券会社については、金融システム改革によってその業務等が大幅に自由化されたことに伴い、検査を通じた資産内容の的確な実態把握が一層重要となる。また、平成11年4月から証券会社等は顧客から預託を受けた有価証券等を自己の固有財産と分別して保管することが義務付けられている。こうしたことを踏まえ、資産内容の厳正な把握、早期是正措置制度の基盤となる自己資本規制比率のチェックと合わせ分別管理状況に重点を置いた検査を的確に実施する。
 
(5)  外国金融機関等に対する検査
 ビッグバンの本格化に伴い、外国金融機関等の我が国への進出、我が国金融機関等との提携が増加していることに鑑み、在日外国金融機関等のルール遵守状況、リスク管理状況等に重点を置いた検査を実施することが、これまで以上に重要になってきている。外国金融機関等については、我が国市場における活動状況を踏まえつつ、銀行支店、証券支店、信託銀行現地法人、投資顧問等をグループとして一体的に検査を行うことにより、効果的な実態把握を行う。
 
(6)  内部モデルに関する金融検査
 マーケット・リスク規制は、バーゼル委員会合意に基づき、平成10年1月から我が国でも導入されているが、市場リスクの計測のために採用されたリスク計測モデル(内部モデル方式)の妥当性等の実態把握に重点を置きつつ、前事務年度に引き続き、市場関連リスクに関する検査を実施する。
 
(7)  コンピュータ2000年問題に関する検査
 コンピュータ2000年問題については、その対応のために残された時間も少なくなってきていることから、今後、システム対応の完了確認、作成されたコンティンジェンシー・プランの内容確認等に重点を置いた検査を実施する。

 

.機動的な検査の実施等
 
(1)  金融機関等を取り巻く現下の厳しい状況において、金融機関等の資産内容の急激な悪化等問題が生じた場合には、適時の実態把握に的確に対応することが重要である。このような観点から、検査計画の策定及び検査班の編成に当たっては、機動的・弾力的な対応が可能となるよう努めるものとする。
 
(2)  従来、個々の検査ごとに検査班を編成し、各検査官は検査の都度、異なる業態・内容を対象として検査を実施していたが、本事務年度においては、検査官の増員、部門制の採用を踏まえ、各業態ごとの特色に対応した、より専門性の高い深度ある検査の実施に努めるものとする。
 
(3)  また、検査官の数の増加に加え、あわせて効果的な検査手法の確立等質的向上も不可欠であり、
 金融検査マニュアルの活用、チェックリストの整備を通じ検査の効率性、統一性を確保する
 検査監理機能や審査部門の充実を図ることにより、検査の全体としての質的水準の維持・向上を図る
 海外主要金融検査当局の検査ノウハウの吸収や外部ノウハウを検査に活用するため、海外当局との人材交流を図るとともに適性ある民間の専門家を登用する
など、引き続き態勢の充実・強化に努めるものとする。

 

II .検査基本計画
 
.金融機関検査の実施予定数
 
    銀    行      
 
75行
    信 用 金 庫
 
220庫
      計
 
295行 (庫)
.保険会社検査の実施予定数
 
    保 険 会 社      
 
 20社
.証券会社等検査の実施予定数
 
    証 券 会 社      
 
90社
    証券投資信託委託会社 
 
5社
    投資顧問業者
 
35社
      計 130社

 

(注 )上記検査実施予定数は、当初計画として設定しているものであり、金融機関等を取り巻く現下の厳しい経営環境下において適時の実態把握に的確に対応するため、弾力的な運用を行うこととしていることから、実施予定数は変動することがあり得る。
 

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