平成11年9月10日
金 融 監 督 庁
 

コンピュータ西暦2000年問題への対応について

 

1.金融機関等の対応状況について(平成11年6月末)

 平成10年12月18日付で銀行法第24条第1項等に基づき発出した報告命令(「コンピュータ2000年問題対応に関する資料の提出について」)により各金融機関等(預金等取扱金融機関、保険会社、証券会社、投資信託委託会社)から報告された平成11年6月末におけるコンピュータ西暦2000年問題への対応状況の集計結果は(資料1)のとおりであった。

 この結果によると、平成11年6月末までに「重要なシステム」について、修正を完了したとする金融機関等の全体(1535社)に占める割合は98%(前回報告(平成11年3月末時点)比+10ポイント)、このうち内部テストを完了したとする金融機関等の全体に占める割合は96%(同+19ポイント)となった。

 また、危機管理計画の作成については、作成済とする金融機関等は94%となった(同+72ポイント)。

(注 )本問題についての対応は、対応すべきシステムの優先度を決めて対応することが重要であり、当庁が求めている報告においては「重要なシステム」を「対応が完了しなければ業務に直接支障を生じるおそれのあるもの」と定義している。具体的に何が重要であるかについては各金融機関等が判断するものであるが、代表的なものとしては、基幹勘定系、対外接続系、国際系システム等があげられる。
 

2.共同接続テストの実施について

 重要なシステムの中でも最重要である決済関係(日銀ネット、全銀システム、東証等の決済・取引システム)については、日本銀行、全国銀行協会、東京証券取引所等により、共同の接続テストが昨年12月以降6回にわたって実施されており、日本銀行等では、各種決済システムを通じたテスト参加者間における2000年日付等のデータ授受については基本的に正常に処理されたとしている。
 

3.報告を受けての対応について

 今回の報告を見ると、「重要なシステム」の修正・テストを完了し、危機管理計画を作成している金融機関等の全体に占める割合は前回報告に比べ大幅に上昇しているものの、なお6月末時点においてもこれらの対応を完了していないところがあるほか、これらを既に完了したとしている金融機関等についても一部に内部テストの実施要領や危機管理計画の内容等に不明な点があるところがある。このような金融機関等に対しては、現在、銀行法第24条等に基づき追加報告を求めているところである(対象は全金融機関の9.1%)。

 当庁としては、2000年まで残された時間が4か月を切ったことを踏まえ、システム対応の完了状況、危機管理計画の内容等の確認を行うため、各金融機関等に対する個別のモニタリング等を一層強化していくこととしており、その際には、銀行法第24条や第26条等の法律に基づく措置を厳正に行使していく所存である。
 

4.金融機関等以外の業態における対応について(平成11年6月末)

 金融機関等以外の当庁所管業態についても、業界団体等に対して傘下機関等の対応状況の報告を要請しているところであり(証券金融会社、信用保証協会、(社)東京銀行協会については法律に基づく報告命令)、これら業界団体等からの11年6月末時点の対応状況報告によると、短資業者、証券金融会社、手形交換所等金融システムに与える影響が大きいと見られるところについては、重要なシステムについての修正、テストは全てにおいて完了しており、危機管理計画についても大部分のところで作成を完了している(資料2参照)
 

以 上

 連絡・問い合わせ先 

金融監督庁2000年対策室

 TEL 03-3506-6180

北川、清重


(資料1)
 

金融機関の2000年問題に関する平成11年6月末の対応状況の集計結果の概要

(預金等取扱金融機関、保険会社、証券会社、投信委託会社)
 

対象金融機関:○
(1535)  
預金等取扱金融機関1,087(主要行19、地銀64、第二地銀61、外国銀行支店87、子会社信託17、外資系信託10、信用金庫・全信連 395、労働金庫・労金連42、信用組合・全信組連 311、信農連・信漁連・農林中央金庫81)
保険会社110(生命保険44、損害保険35、外資系生保3、外資系損保28)
証券関係338(証券 216、外国証券54、投信委託会社68)
 
システムについての修正及び内部テストの進捗状況
 
(1)  各金融機関等(1,535社)からの平成11年6月末時点の対応状況についての報告によると、重要なシステムの修正を完了したところは 1,502社であり、全体に占める割合は98%(前回報告(平成11年3月末時点)比+10ポイント)となった。また、このうち内部テストを完了した金融機関等は1,471社であり、全体に占める割合は96%(同+19ポイント)となった。

 6月末までに「重要なシステム」について内部テストを完了していないところは、64社(第二地銀1、外銀11、信金・信組等17、保険12、証券7、外国証券7、投信9)であるが、これらの殆どは9月末までに完了するとしており、完了が10月以降になるとしているところは4社(全体の0.26%、内訳は外銀1、外国証券1、投信2)となっている。
 

(2)   重要なシステム以外のシステムについては、6月末までに修正を完了したところは1,364社 (89%、同+26ポイント)、内部テストを完了したところは1,275社(83%、同+31ポイント)となった。6月末までに修正又はテストを完了していないところについては、殆どが9月末までに完了するとしているが、10月以降となるとしているところは修正、テストとも7社(全体の0.46%、内訳は外銀2、保険1、証券1、外証2、投信1)となっている。
 
(3)  なお、重要なシステムの中でも最重要である決済関係(日銀ネット、全銀システム、東証等の決済・取引システム)については、日本銀行、全国銀行協会、東京証券取引所等により、2000年初の日付についての共同接続テストが昨年12月、今年の2月、5月及び6月に、また2000年閏日についてのテストが4月及び7月に行われた。

 これらのテスト結果として、日本銀行等では、各種決済システムを通じたテスト参加者間における2000年日付等のデータ授受については基本的に正常に処理されたとしている。

 このほか、各業態が設けているCD・ATMネットワーク(CDネット中継センターデータ通信システム)のテストが4月(2000年初)、5月(閏日)に行われ、各業態では両日付で問題なく処理できることが確認されたとしている。
 

.顧客等との関係

 2000年問題について影響を受ける可能性のある顧客、主要取引先等(EB等による接続先を除く)への対応については、全金融機関等の87%が計画に盛り込んで対応を行っており(前回報告比+16ポイント)、このうち、主要行、地銀、第二地銀等については全てが対応を行っている。

 EB等による接続先、MTやFDによるデータ持ち込み先等とのテストについてはテストの実施の有無や実施時期が顧客の意思に左右されることもあり、「対応の必要なし」とする 653社を除く 882社中テストを完了したとするところは 649社(74%)に止まっており、完了時期が10月以降あるいは時期未定とするところがあわせて62社(7%)残っている。
 

.対応体制
 
(1)  経営における位置づけ

 経営における本問題の位置づけについては、ほぼ全ての金融機関等が、経営計画等において2000年問題を最重要課題として位置づけている。
 

(2)  総費用の見積もり

 対応に必要となる費用の見積もり状況については、ほぼ全ての金融機関等が見積もりを行っており、全金融機関等合計で6,991億円であった。

 1金融機関当たりの平均見積額は、主要行121億円、大手生保56億円、本庁監理証券会社13億円等となっている。
 

.危機管理計画の作成

 危機管理計画の作成については、本年6月末時点で作成済としたところは1,442社で全金融機関の94%(前回報告比+72ポイント)となった。

 6月末時点で作成中であるとする93社(外銀17、信金・信組等27、保険18、証券13、外国証券5、投信13)については大半が9月末までに作成を完了するとしているが、4社(全体の0.26%、内訳は外銀1、信金・信組等2、投信1)については10月以降になる等としている。

 危機管理計画の内容については、多くの金融機関等において、2000年1月1日にシステム等の起動を確認し、2日には日銀ネット等の確認テストへ参加、3日にはこれらを踏まえた対応を行い、万全の体制で4日の営業初日を迎えるとしている。

 また、全国銀行協会の調査によると、加盟銀行全てにおいて、顧客の預金データが消失することのないよう、例えば年末時点のデータの磁気媒体等へのバックアップ等を行うとしている。

 なお、重要なシステムの中でも最重要である決済関係(日銀ネット、全銀システム、東証等の決済・取引システム)については、日本銀行、東京銀行協会、東京証券取引所等により危機管理計画が策定されている。
 

.対応状況の開示

 対応状況の開示については、全金融機関等の95%が何らかの開示を行っており、前回報告(78%)に比べ大きく増加した。全ての業態で80%以上のところが開示を行っており、このうち主要行、地銀、労金、農漁協系、大手生保、大手損保では100%が開示を行っている。

 しかしながら、6月末時点において83社(5%)のところが開示を行っていないとしており、その殆どは9月末までに開示を行うとしているが3社については10月以降になるとしている。

 すでに開示を行っているところの手段としては、インターネットを活用した開示のほか、店頭でのポスター掲示、パンフレットの配布等が見られるが、今後も、開示内容の充実を図るとともに、対応状況に応じた内容の変更を行うことが必要である。

 一方、開示を行っていないところについては、7月以降にディスクロージャー誌による開示を予定しているところが多いものの、今後、金融機関の取引先において危機管理計画の策定等の対応が一層進む中、取引金融機関の対応状況は重要な情報となるものであり、早期に開示する必要がある。
 

.障害発生報告について

 当庁は、平成11年3月19日付「コンピュータ西暦2000年問題に起因するシステム障害等についての資料の提出について」により、銀行法第24条第1項等に基づき、銀行、保険会社、証券会社等から本年1月以降に発生した2000年問題(いわゆる「1999年問題」を含む)に起因すると見られるシステムのトラブルの発生状況の報告を求めているところであり、本年4月から6月末までの間に10金融機関から16件の報告があった(1-3月比△36件)が、いずれも発見後速やかに修正や代替措置が講じられており、混乱なく解消されている。

 なお、報告件数を業態別にみると、銀行:2銀行5件、協同組織金融機関等:2金融機関3件、保険会社:5会社7件、証券会社1社1件となっている。

 このうち、顧客等に影響を与えたものは4件(銀行1、信金1、保険2)で、その内容をみると、CD手数料誤徴収、財形解約処理遅延(1時間)、保険証券誤表示2件であった(但し、CD手数料誤徴収については2000年対応のための修正後の設定ミスによるものであり、厳密には2000年問題そのものではない)。
 

報告を受けての対応について

 今回の報告を見ると、「重要なシステム」の修正・テストを完了し、危機管理計画を作成している金融機関等の全体に占める割合は前回報告に比べ大幅に上昇しているものの、なお6月末時点においてもこれらの対応を完了していないところがあるほか、これらを既に完了したとしている金融機関等についても一部に内部テストの実施要領や危機管理計画の内容等に不明な点があるところがある。このような金融機関等に対しては、現在、銀行法第24条等に基づき追加報告を求めているところである(対象は全金融機関の9.1%)。

(参考) 追加報告を求めている金融機関数

 
(うち外資 系)
預金等取扱金融機関 45 29
 
保険会社 36
 
証券会社 37 17
 
投資信託委託会社 22
 

合  計

140 64

以上


(資料2)
 

金融機関の2000年問題に関する平成11年6月末の対応状況の集計結果

(預金等取扱金融機関、保険会社、証券会社、投信委託会社以外の所管業界)
 

 平成10年9月11日に政府・高度情報通信社会推進本部から出された、「コンピュータ西暦2000年問題対応計画」では、各省庁は所管の業態における対応状況について実態を把握の上、その結果を公表することとされており、これを受けて、預金等取扱金融機関、保険会社、証券会社、投信委託会社以外の所管業界についても、業界団体等に対して、傘下機関等の対応状況についての報告を要請していたが、その結果は概要以下のとおり。
 

(1) 前払式証票(プリペイドカード)発行者

 (社)前払式証票発行協会を通じて平成11年6月末時点の会員及び会員以外の前払式証票の発行専門会社の対応状況を調査したところ88社中70社から回答があった。このうち、対応不要とする10社を除く60社についてみると、発行業務にとって重要なシステムについて、50社(83%)が修正、模擬テストともに完了しており、残り10社についても、概ね平成11年10月までに修正、模擬テストとも完了するとしている。

 危機管理計画を作成あるいは明確に作成予定としているものは45社となっており、このうち29社が策定済としている。
 

(2) 抵当証券業者

 (社)抵当証券業協会を通じて平成11年6月末時点の会員業者の対応状況を調査したところ、64社中61社から回答があった。このうち、対応不要とする9社を除く52社についてみると、重要なシステムについて、44社(85%)は修正、模擬テストともに完了しており、残り8社についても、遅くとも平成11年9月までに修正、模擬テストともに完了するとしている。

 危機管理計画を作成あるいは明確に作成予定としているものは28社となっており、このうち24社が策定済としている。
 

(3) 貸金業者

 (社)全国貸金業協会連合会を通じて平成11年6月末時点の状況をサンプル調査したところ147社から回答があった。このうち対応不要とする9社を除く138社についてみると、88社(64%)は、修正もしくは入替を完了しており、全体としては多くのところが平成11年10月には修正を完了するとしている。また、模擬テストの実施時期を明確にしているものは86社(62%)であり、危機管理計画を作成しているのは68社(49%)となっている。
 

(4) 投資顧問業者

 (社)日本証券投資顧問業協会を通じて平成11年6月末時点の会員業者の状況を調査したところ、 225社(助言100社、一任 125社)中167社(助言43、一任 124社)から回答があった。このうち、コンピュータの使用なし、外部委託システムのみ使用等により対応不要とする82社を除いた85社(助言7、一任78)の状況をみると、73社(86%)は達成目標時期を定めて対応中であり、危機管理計画については68社(80%)の業者が作成済としている。
 

(5) 金融先物取引業者

 (社)金融先物取引業協会を通じて平成11年6月末時点の会員業者(銀行等別途調査対象となっている業者を除く)14社の状況を調査したところ、重要なシステムについては、12社は模擬テストを含めて対応が完了したとしており、他の業者についても概ね計画通り進捗しているとしている。また危機管理計画については11社が策定済としている。

(6) 短資業者

 短資協会を通じて平成11年6月末時点の会員(6社)の状況を調査したところ、全社とも重要なシステムについては計画通り98年12月末までに修正を完了しており、模擬テストについても、平成11年5月末までに全社完了している。また、全社とも日銀ネットのテストに参加しており、危機管理計画については全社が策定を完了している。

(7) 証券金融会社

 証券金融会社3社に対し、平成11年6月末時点の対応状況の報告を求めたところ、3社とも重要なシステムの修正は完了しており、内部テストについても、本年6月末までに完了している。なお、危機管理計画については2社は作成済、1社は対応中としている。

(8) 信用保証協会

 信用保証協会52協会に対し、平成11年6月末時点の対応状況の報告を求めたところ、重要なシステムについて、48協会(92%)は修正を完了、44協会(85%)は内部テストを完了しており、他の協会についても概ね本年9月末までには対応を完了する見込となっている。なお、危機管理計画については、39協会は作成済、13協会が作成中となっている。

(9) (社)東京銀行協会(手形交換所)

 手形交換所システム(他に全銀システム、個人信用情報システム等)を保有する東京銀行協会に対して、平成11年6月末時点の対応状況の報告を求めたところ、修正は各システムとも完了しており、昨年12月以降、銀行等との接続テストを数度にわたり実施している。危機管理計画については、いずれのシステムについてもこれまでに作成を完了している。

(注 )手形交換所(平成11年9月現在 606か所)のうち 106か所については、全国で67ある各地の銀行協会で運営されているが、東京銀行協会によると日銀等と接続されているシステムを有するのは東京銀行協会のみである。同協会を除く66協会のうちコンピュータを保有する協会は33、このうち2000年問題の対応を要するものは6協会で、いずれも平成11年5月までには対応を完了している。

 また、手形交換所における危機管理計画については、東京銀行協会が作成した危機管理計画を基にして作成することを各地区の銀行協会に対して求めており、全ての銀行協会において9月末までには作成を完了するとしている。

以上


コンピュータ2000年問題対応に関する報告の集計表

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