平成12月1月25日
金 融 監 督 庁


組織的犯罪処罰法施行後のマネー・ローンダリング問題への取組
 
 

 我が国のマネー・ローンダリング対策は、他の主要国に比べ、必ずしも十分ではないとの国際的な批判を受けてきたが、我が国においても、昨年8月に組織的犯罪処罰法が国会で可決・成立し、マネー・ローンダリング対策が拡充されることとなった。

 金融監督庁としては、組織的犯罪処罰法の施行を2月1日に控え、高い公共的使命を有する金融機関等が犯罪集団によってマネー・ローンダリングのために利用されることを阻止したいと考えており、これまでも全国の財務局で金融機関への説明会を開催する等を行ってきたところであるが、今後も内外の関係機関、関係団体との連携を強化していく。

 上記の基本的考え方に立ち、金融監督庁としては、下記の施策に取り組んでいく。

 

1.  特定金融情報室の設置

 2月1日付で日本版FIU(注1)として特定金融情報室を設置するとともに、同室の最終責任者として、志賀参事官を特定金融情報管理官に任命する。同室は、室長以下12名から成り、金融監督庁の職員(4名)のほか、警察(3名)・検察(2名)・税関(2名)・厚生省麻薬取締官事務所(1名)からの出向及び兼務職員により構成する(資料1参照)。

(注1)  FIU(Financial Intelligence Unit)とは、金融機関等から届け出られたマネー・ローンダリング情報を一元的に管理することにより、情報の効果的な処理及び国際的な情報交換の促進等を図ることを目的とする政府機関である。

 

2.  疑わしい取引の届出制度(資料2)の適切な運用の確保
 
(1)  疑わしい取引の参考事例(注2)の改訂
 昨年12月に開催した全国の財務局での説明会、各業界団体との意見交換会等の場で出された意見を踏まえ、金融監督庁の事務ガイドラインに掲載されている「疑わしい取引の参考事例」に所要の改訂を加えるとともに、届出手続に関する現行事務ガイドラインを整備し(資料3、4参照)、本日、各財務局に通知した(2月1日から適用)。
 
(注2)  参考事例は,個別具体的な取引が、疑わしい取引に該当するか否かを判断するための基準として、マネー・ローンダリングの蓋然性が高い取引類型を列挙したものであり、金融監督庁の事務ガイドラインの一部を構成している。
 
(2)  疑わしい取引の分析強化
 組織的犯罪処罰法により「疑わしい取引」の分析が金融監督庁の権限とされたことから、特定金融情報室で独自に開発した分析プログラムを活用して、金融機関等から届出のあった疑わしい取引に関する情報の分析を強化する。
 
(3)  捜査当局等との連携強化
 捜査当局等との協議会を実務者レベルで定期的に開催し、届出制度の運用に関して捜査当局等との意見交換を行う。

 

3.  金融機関等との協力関係強化
 
(1)  全国銀行協会等との定期的な情報交換
 国の内外の「疑わしい取引」の動向について、全国銀行協会等のマネー・ローンダリング担当部門と定期的に情報交換を行う。
 
(2)  個別金融機関に対する働きかけ
 検査・監督を通じ、個別金融機関に対し、マネー・ローンダリング防止のための内部管理体制の構築、職員に対する十分な研修の実施等を働きかける。

 

4.  海外マネー・ローンダリング規制当局との協力強化
 
(1)  エグモント・グループ(資料5参照)加入申請
 2月1日付で、特定金融情報室が設置されることから、FIUの国際機関であるエグモント・グループ(48カ国・地域が加盟)への加入手続を速やかに進める。
 
(2)  主要国とのマネー・ローンダリング情報交換協定締結交渉の準備
 組織的犯罪処罰法に外国FIU当局との間の情報交換を可能とする規定が置かれたことを受けて、これを円滑に実施するためマネー・ローンダリング情報交換協定の締結を主要国に働きかける。
 
(3)  FATF(注3)への貢献―マネー・ローンダリング対策非協力国認定作業への協力

 FATFはG7からの要請を受けて、国際的なマネー・ローンダリング対策に非協力的な国・地域を特定する作業を開始することになっており(資料6参照)、当庁はFATFアジア太平洋アドホックグループ(注4)の議長として同作業に積極的に貢献していく。

(注3)  1989年7月のアルシュ・サミット経済宣言を受けて設立された政府間機関であり、世界的なマネー・ローンダリング対策の発展と促進を目的としている。現在、26の国・地域及び2つの国際機関により構成されており、事務局はフランス・パリに置かれている。
 
(注4)  FATFに設置されたサブグループの一つ。アジア太平洋地域におけるマネー・ローンダリング対策の促進、FATF非加盟国・地域に対する啓発等を扱う。

 

5.  マネー・ローンダリング対策に関する一般向けPR活動の強化

我が国におけるマネー・ローンダリング規制の概要、1999暦年の疑わしい取引の届出状況、届出のあった取引の全体的な傾向等を記述した「マネー・ローンダリング−疑わしい取引−最近の動向(仮称)」を本年3月を目途に発行する。

 

本件について問い合わせ先

03−3506−6055(直通)

特定金融情報管理体制等検討準備室

秋田(能)・山田


資料1

特定金融情報室等の設置について


 本年2月1日に組織的犯罪処罰法が施行されることを踏まえ、同日付で「特定金融情報管理官」及び「特定金融情報室」を設置し体制整備を行う。


金融監督庁組織図

 


資料2

「疑わしい取引の届出制度」について


 疑わしい取引の届出制度は、金融機関等から特定金融情報室に届け出られたマネー・ローンダリングの疑いがある取引情報を捜査当局の捜査の端緒として役立てるとともに、犯罪者が金融機関等のサービスを利用することを防止し、金融機関等及び金融システムへの国民の信頼を保つことを目的としている。


次へ

Back
メニューへ戻る