ポ イ ン ト

 

1. リスク管理債権の状況

 11年9月末の全国銀行のリスク管理債権の総額は、29.7兆円と、11年3月末の29.6兆円と比較し、ほぼ横ばい。

これは、主に、
 
(1)  地域銀行を中心に新たに未収利息を不計上とする貸出金の範囲を拡大
 
(注1) したことによる増加(+約1.3兆円)
 
(2)  地域銀行を中心に、貸出条件緩和債権の計上基準を一層厳格化したこと等による貸出条件緩和債権の増加(+約0.6兆円)
 
があった反面、
 
(3)  不良債権の実質的処理等により、破綻先債権、延滞債権等が減少(▲約0.6兆円)
 
(4)  11年3月末に引き続き部分直接償却(注2)を行い、リスク管理債権の一部をバランスシートから落とす処理により減少(▲約1.2兆円)したことによる。

 

2. 個別貸倒引当金の状況

 11年9月末の全国銀行の個別貸倒引当金の残高は、11年3月末の11.2兆円から9.6兆円に減少した。部分直接償却考慮後の残高でみても、11年9月末は約 16.6兆円となり、11年3月末の約17.0兆円に比べ0.4兆円の減少となっている。これは、過去に引当処理が行われた引当金の不良債権の売却等による取崩しが、新規の個別引当金への繰入を上回った結果による。

 

3. 自己査定の状況

 11年9月末の全国銀行の自己査定の結果(償却・引当後)をみると、 II 〜 IV 分類の額は、11年3月末の64.3兆円から62.1兆円に減少した。特に III 分類については、不良債権処理の進捗により、3.2兆円から2.6兆円に減少した。

 

4. 不良債権の処分損の推移

 11年9月末における全国銀行の不良債権処理額は、約2.3兆円となっており、平成4年度からの累計の処理額は、約61.0兆円にのぼるが、このうち直接償却等による処分損の累計は、その4割強に相当する約25.5兆円となった。この他、過去に引当処理が行われた貸倒引当金のうち、不良債権の売却等によりオフバランス化されたものが約21兆円に達するものと推計される。
 

(注1) 「未収利息を不計上とする貸出金の範囲を拡大」とは、破綻懸念先以下の債務者に対する貸出債権について、元本等の回収可能性に問題があるとして未収利息の計上を行わないこととし、リスク管理債権(延滞債権等)とすることをいう。
 
(注2) 「部分直接償却」とは、破綻先及び実質破綻先に対する担保・保証付債権について、担保等による回収が不可能な額( IV 分類)に対し、個別貸倒引当金の計上ではなく、直接償却することをいう。

 


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