平成12年4月25日

金 融 監 督 庁
   

保険会社に係る検査マニュアル(案)について

(保険検査マニュアルワーキング・グループとりまとめ)

  

 金融監督庁では、検査官が保険会社を検査する際の手引き書(マニュアル)を整備するため、昨年11月、検査部内に「保険検査マニュアルワーキング・グループ」を設置し、過去13回におよぶ検討を行ってきたところですが、本日、その成果として、具体的なマニュアル案を内容とする「保険会社に係る検査マニュアル(案)」がとりまとめられました。

 今後、当局において、「保険会社に係る検査マニュアル(案)」に基づき、さらに具体化に向けての作業を進め、保険会社に係る検査マニュアルを検査官宛の通達として発出することとしておりますが、それに先立ち、「保険会社に係る検査マニュアル(案)」の内容を公表(概要及び詳細は別添参照)し、外部のご意見をお伺いすることといたしました。

 つきましては、ご意見がありましたら、平成12年5月25日(木)までに、氏名又は名称、住所を付記の上、郵便、ファックス又はインターネットにより下記にお寄せ下さい。電話等によるご意見はご遠慮願います。

 なお、頂戴したご意見につきましては、氏名又は名称も含めて公表させて頂くことがありますので、あらかじめご了承願います。

ご意見の送付先

〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-1-1 中央合同庁舎第4号館

金融監督庁検査部審査業務課

   FAX:03-3506-6119
   HPアドレス:http://www.fsa.go.jp/

内容についての照会先

金融監督庁検査部 

TEL:03−3506−6067(代)
審査業務課 藤 本  内線:6069

    
ご意見の募集は終了しました。ご協力ありがとうございました。


保険会社に係る検査マニュアル(案)の概要

(保険検査マニュアルワーキング・グループとりまとめ)

 

 金融監督庁においては、検査官が保険会社を検査する際の手引き書(マニュアル)を整備するため、昨年11月、検査部内に「保険検査マニュアルワーキング・グループ」を設置し、検討を進めてきたところであるが、今般、その成果として、具体的な保険会社に係る検査マニュアル(案)をとりまとめ、公表するに至った。

I .概要
 
. 目的

 保険会社に係る検査マニュアルを整備・公表することにより、金融監督庁の検査監督機能の一層の向上を図るとともに、保険会社の自己責任に基づく経営を促し、もって透明な金融行政の確立に資する。
 

. 基本的考え方

 本検査マニュアル案の策定に当たっては、保険検査は保険会社自身における業務の健全性及び適切性の確保と、市場規律による監視を補強するためのものであるとの考え方を基本に、

(1)  自己管理型への転換(検査は、保険計理人を含む保険会社自身の内部管理と会計監査人等による厳正な外部監査を前提として、内部管理・外部監査態勢の適切性を検証するプロセス・チェックを中心とする)
 
(2)  リスク管理重視の検査への転換
に重点を置いている。また、グローバル・スタンダードを念頭に、保険監督者国際機構(IAIS)における議論等をも勘案している。
 このような基本的考え方は、昨年策定した「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」と同様であり、従ってチェックリストは預金等受入金融機関に係る検査マニュアルを基に、保険会社に特有の事項を踏まえ策定した。
 
.預金等受入金融機関に係る検査マニュアルとの主な相違点

 全体の構成について、保険会社の特有の事項を踏まえた主な相違点は以下のとおり。

(1)  保険契約者等保護の観点から、法令等遵守態勢に「保険募集管理態勢確認用マニュアル」を加えた。
 
(2)  将来にわたる収支予測を基に、保険契約締結時に将来の収入保険料及び支払保険金等の額を確定させるといった保険契約の特殊性から、これらのリスクの管理状況を確認するため「保険引受リスク」を新設した。
 
(3)  保険会社は多様な手段を用いた資産運用を行っていること、運用期間が長期であること等から、「不動産投資リスク」及び「(別紙)ソルベンシー・マージン比率等に関する検査について」を新設するとともに、「市場関連リスク」、「信用リスク」及び「不動産投資リスク」の総論として「資産運用リスク」を設けた。
 
(注 )生命保険会社と損害保険会社については、保険会社として必要な法令等遵守及びリスク管理態勢等は基本的に差異はないことから同一のマニュアルとし、必要に応じ書き分けることとした。
 
.対象範囲

 本検査マニュアル案は、本邦保険会社の海外拠点及び外国保険会社等(特定法人を含む)の在日拠点も含め、全ての保険会社に対する検査において用いることを予定している。なお、募集人・代理店及び保険仲立人を検査する際にも本マニュアルを踏まえることとなる。
 

注)
 本マニュアル案においては、現在国会において審議されている保険業法改正案及びパブリックコメントに付された省令の改正案等については盛り込んでいない。よって、今後これらの点について修文等がありうる。
 本パブリックコメント終了後、頂いたご意見を踏まえ所要の作業を行い、速やかに検査官宛の通達として発出したうえ、発出日以降を検査実施日とする検査(7月1日以降実施する検査を予定)より適用することを予定している。なお、決算に係る事項については、通達発出以降最初の決算期である平成13年3月期から適用することを予定している。

 

II .各マニュアル(案)のポイント
 
法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト及び保険募集管理態勢確認用マニュアル

 経営者の責任の下、営業推進に対する本社によるコンプライアンス機能・検査機能の発揮、募集人・代理店に対する指導・管理など、組織的な相互牽制の取り組みにより、適正な募集態勢の確立が図られているかについて状況を確認するため「保険募集管理態勢確認用マニュアル」を加えた。
 具体的には、(1)業績評価等が営業優先となっていないか、(2)コンプライアンス部門が営業から独立した役割を担っているか、(3)営業拠点や募集人・代理店等に対する指導・管理、内部検査の実施及びこれにより把握された問題点の是正が本社の取組みにより実効性をもって行われているか、(4)保険金詐欺等の回避や不適正な募集行為の排除及び、変額保険等の募集や転換契約に当たっての適切な説明に取り組んでいるか、等について確認することとした。
 

.リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト(共通編)

 各リスクの管理に当たっては、保険契約は長期にわたるものが多いこと、保険金支払の発生時期の予測が困難であるなどの負債の特性を有していることから、負債の特性を考慮したリスク管理を行っているかについて確認項目として加えた。また、責任準備金などの適切性の確認という保険計理人の業務は、保険会社の財務の健全性及び保険契約者等保護の観点から重要であることから、保険計理人の業務の実効性を確保しているか等について確認することとした。
 

.保険引受リスクに関する検査に係るチェックリスト及びマニュアル

 保険商品は、将来にわたる収支予測を基に、保険契約締結時に将来の収入保険料及び支払保険金等の額を確定させるといった特殊性を有することから、保険料設定時の予測に反して経済情勢や保険事故の発生率等が変動する事によるリスクについて、その管理のための態勢整備状況や保険商品毎の収支分析を行うこと等によるリスク把握・管理状況等を確認するため「保険引受リスク」を設けた。
 また、責任準備金等及び支払備金については、これらは保険契約者等への保険金等支払原資となることから、その積立について法令等に則り適切に行っているか等を確認することとした。
 

.資産運用リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト

 保険会社は、多様な手段を用いた資産運用を行っており、また、保険契約は長期にわたるものが多いこと、巨大災害が発生し多額の保険金支払義務が生じる可能性があること等、支払義務の発生の予測が難しいという負債の特性を有している。これら保険会社特有の事情を勘案し、資産全体のリスク及び負債特性を考慮した投資対象資産の選定・資金配分等のリスク管理を行っているかを確認するため、資産運用にかかる各リスクの総論として「資産運用リスク」を設けた。
 

.市場関連リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト

 機関投資家として、最も基本的かつ重要なリスクコントロール手法はポートフォリオの構築そのものであることから、取締役会においてその特性を認識し、その上でポートフォリオの構築に関する基本的な考え方を明確にしているかを確認することとした。
 

信用リスクに関する検査に係るチェックリスト及びマニュアル

 保険会社は、その資産運用の一環として不動産投資を行っていることから、投資用不動産の査定基準について追加するとともに、融資部門において、保険本来の趣旨を逸脱するような保険契約獲得のための融資が行われていないか等、健全な融資態度の確立状況を確認することとした。
 

不動産投資リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト

不動産投資は、一般的に一件当たりが巨額であり、また個別性が強く流動性に乏しいという他の資産とは異なるリスクを有していることから、これらの特性を踏まえたリスク管理の態勢整備状況を確認するため「不動産投資リスク」を設けた。
 

ソルベンシー・マージン比率等に関する検査について

 ソルベンシー・マージン比率は、保険会社における健全性の基準であり、本比率をもって早期是正措置の発動基準としていることから、その算定の適切性を検証する必要があるため「ソルベンシー・マージン比率等に関する検査について」を設けた。
 

流動性リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト

 保険会社は、通常安定した保険料収入が得られ、また資産を流動性の高い有価証券等を中心に運用しており資金繰りは容易であることから、基本的に大口解約、巨大災害発生時等の状況に応じた資産売却等によるキャッシュの調達方策等の策定状況を確認することとした。

10 事務リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト

 保険会社にとって、損害調査事務及び保険金等支払事務は、公平・公正な保険金支払のために必要不可欠であることから、損害調査態勢及び保険金等支払管理態勢の整備状況を確認することとし、更に、具体的な事務の流れに沿って、損害調査事務及び保険金等支払事務の管理にあたっての留意すべき事項を、例示という形で掲載した。
 

11 システムリスク管理態勢の確認検査用チェックリスト

 新たな保険募集形態であるインターネットを使った保険募集について、保険契約者等の情報漏洩などの事故が発生しないよう管理態勢の整備を行っているか等を確認することとした。

 


Adobe Acrobat のページにリンクしています 以下の資料を御覧いただく場合には、PDFファイルの閲覧用ソフトが必要です。 Acrobat Reader等をお持ちでない方は、左のボタンをクリックし、手順に従いダウンロードしてからご覧下さい。

 

保険会社に係る検査マニュアル(案)
(保険検査マニュアルワーキング・グループとりまとめ

 

平成12年4月

 


Back
メニューへ戻る