平成12年5月2日
金 融 監 督 庁
 

第109回自動車損害賠償責任保険審議会議事概要について


 第109回自動車損害賠償責任保険審議会(平成12年4月12日(水)開催)の議事概要は、別紙のとおり。

 

担当者:金融監督庁監督部保険監督課 重藤、加藤

連絡先:電話(代表)3506−6000 内線3375、3431

 本議事概要は暫定版であるため、今後修正がありえます。


第109回自動車損害賠償責任保険審議会議事概要
 

.日  時   平成12年4月12日(水)10時00分〜12時10分

 

.場  所   中央合同庁舎第四号館第二特別会議室

  

.議  題
 
(1)  金融監督庁長官からの諮問
 
(2)  参考人からの意見陳述及び質疑
 
守永  宗氏 (財団法人交通事故紛争処理センター常務理事・事務局長)
 
松代  隆氏 (財団法人交通事故紛争処理センター理事・本部審査員)
 
北原 浩一氏 (全国交通事故後遺障害者団体連合会代表)
 
(3)  自賠責保険の見直しに関する議論

 

.議事概要
 
(1)  金融監督庁長官からの諮問

 金融監督庁長官から以下の諮問がなされた。
「自動車損害賠償責任保険制度創設時より現在までの自動車交通を巡る環境の変化及び社会経済情勢の変化を踏まえ、自動車損害賠償責任保険全般のあり方について、貴審議会の意見を求める。」

 

(2)  参考人からの意見陳述及び質疑
 
 守永参考人と松代参考人からの意見陳述及び質疑
 
 意見陳述の概要
 
 交通事故紛争処理センターは無償の法律相談と斡旋、裁定を主たる業務としている。従来より対人賠償を中心に行ってきたが、昭和57年から物損も対象としている。
 
 センター設立から26年が経つが、近年、相談件数も増加してきており(平成5年度:13,900件→平成10年度:16,156件)、それだけ要望が高いと考えている。
 
 自賠責保険の制度を知らないで当センターに相談に来るようなケースもあり、被害者に自賠責保険の情報が十分行き渡っていないのではないかと感じる。
 
 後遺障害は診断書に基づいて認定しているが、診断書に不備があるケースが相当数見られる。
 
 重度後遺障害については、死亡の場合より自賠責保険の保険金限度額が高くてもよいのではないか。
 
 質疑応答の概要
 
 委員から、紛争処理センターの裁定額と保険会社の提示額の差はどのくらいあるのかとの質問があり、参考人より、保険会社の提示額が紛争処理センターにおける示談成立額を大きく下回るケースがかなりあるとの発言があった。
 
 委員から、保険会社に全てを任せるのは被害者保護の観点から望ましくないのではないかという質問があり、参考人より、基本的に立場が違うのでやむ得ない面もあるが、双方の意見が色々出てくるような風通しのよい過程が用意されればかなり良くなるのではないかとの発言があった。
 
 委員から、紛争処理センターとは別に自賠責保険の紛争処理機関を設けることにつきどう考えるかという質問があり、参考人より、自賠責保険の支払だけを担当するのであれば創設した方がよいが、自賠責保険の範囲を超えたものとなると別の問題であるとの発言があった。
 
 委員から、紛争処理センターの対外的な周知の方法について質問があり、参考人より、都道府県等の交通事故相談所からセンターに事案を紹介してくるようなルートは出来ている旨の説明があった。
 
 委員より、保険金限度額の引上げの必要性に関し、現在殆どのドライバーが任意保険に加入していることとの関係をどう考えるのかという質問があり、参考人より、任意保険の加入率は高まっているが、中には未加入の者もおり、特に経済的に余裕のない、いわば本来保険に加入すべき者が加入していないという事例があり、また、過失相殺がなされると補償額が不十分な結果となるとの発言があった。
 
 参考人から、できればもう少し業務を充実させ、救済できる事件数を多く出来れば望ましいとの発言があった。
 
 北原参考人からの意見陳述及び質疑
 
 意見陳述
 
 交通事故による脳障害のため植物状態にされた者やこれと同等の最重度障害者の親は、1日24時間、1年365日休暇のない介護を余儀なくされており、深夜でも安眠できない、自由時間がとれない等の不自由をかかえ、また、自分が年老いたとき子供はどうなるかと怯えている。
 
 現行の自賠責保険制度では、植物状態など最重度障害者は、損害額を反映する救済を受けていない。また、現行の等級認定は外見的に見える部分の欠損を優先しており、高次脳機能障害者は救済水準を大幅に低く放置されている。
 
 現在、植物状態の被害者を救済するための療護センターは3カ所あるが、ショート・ステイ制度につき、全国に分布する被害者に対応できるよう改善を求める。また、在宅介護者指導センターの設置、高次脳機能障害認定指針の作成、(高次脳機能障害者に対する)介護者相談センターの設置を求める。
 
 我々の会員は交通犯罪の被害者であり、車に関係ない立場の国民が支える福祉に依存せず、自賠責保険で救済を受けるべき。
 
 上述のような救済対策のために要する費用を加味した上で自賠責保険の保険料引下げの可否を論ずるのでなければ、被害者救済を黙殺することとなる。
 
 自動車保険は営利企業である保険会社が事業として維持しているので、自賠責保険については、損害保険会社と構造的に利害が対立し、弱い立場にある被害者の意見を受け入れて頂きたい。
 
 質疑応答
 
 委員より、事故対策センターが支給するの在宅介護者に対する日額2,250円は被害者保護としては不十分であり、また、高次脳障害機能については調査が始まったばかりの段階であり、こうした状態で6月までに結論を出すに当たり始めから政府再保険廃止ありきでは困る、との発言があった。
 
 委員から、政府再保険と被害者救済対策は別の問題だという意見があるがどう思うか、また、紛争処理についても国ではなく第三者機関などで行っているとの発言があり、参考人より、自賠責保険制度は被害者救済を目的とする仕組みであるから、再保険廃止と被害者救済は別だというのは問題をそらす議論である、この問題は並列に並んでいるのではなく、被害者救済を確かめた後に再保険廃止を論ずるべきで直列に並んだ問題である、との発言があった。
 
 委員から、交通事故被害者も65歳以上であれば介護保険制度の対象となることについて質問があり、参考人より、交通事故に遭う確率は若年層が高く、65歳云々の議論は実状に遭わない、との発言があった。
 
 委員から、交通事故被害者の救済も介護保険制度の中でカバーしていくということについてどう考えるかとの質問があり、参考人より、日本の自賠責制度は優れたものであり、無責事故の被害者は社会福祉で救済すべきであるが交通犯罪の被害者は自賠責保険で救済されるべき、との発言があった。

 

(3)  自賠責保険の見直しに関する議論
 
 全般的な議論
 
 最初に、政府再保険制度のあり方に関する運輸省の考え方について、運輸省の委員より紹介があった。
 
 また、これに関し、委員より、運輸大臣懇談会では、懇談会の案を決めるということではなく、運輸省の案に対し色々と意見を述べるという前提で議論している、例えば紛争処理機関については、公的な権限を持たせるか、あるいは民間の中立的な機関として運用するとか、色々な意見が出ている、との発言があった。
 
 紛争処理機関としては、現行の再審査会を独立させて、さらに中立性を高め、被害者からの直接の異議申し立てを可能にする新たな審査機構を創設をすべきではないか。
 
 官から民への行革の流れの中で、新たに官主導による組織を立ち上げることは、流れに逆行するものではないかとの懸念を持っている。
 
 死亡・重度後遺障害に係る精密審査を当面行うとしても、極力、事務の簡素化を図るべき。また、紛争処理機関の定着状況等に応じ、将来は廃止することも視野に入れた検討が必要。
 
 運用益は第一義的には保険契約者である自動車ユーザーに還元すべきであり、運用益を活用して行っている事業については、極力効率化・適正化を図るべき。また、重度後遺障害者対策は、他との社会保障制度とのバランスを考慮し検討が必要。また、その財源を自動車ユーザーの負担に求めるに当たっては、ユーザーの十分な理解、納得を得る事が必要。
 
 国の機関として紛争審査会を作ることは、法律上の根拠とか、法的な効力をどうするのか等、緻密に検討する必要がある。
 
 現在、自算会が運営している審査会や、事務局として参加している再審査会は円滑に機能しているのではないか。また、一部に透明性が不十分だという意見もあるので、透明性、中立性、公平性の向上につき検討しているところ。
 
 運用益の活用事業について

 運用益活用事業について事務局より説明があり、次いで、平野委員から損害保険会社分について、運輸省委員より特別会計分についての説明があった後、議論に移った。委員より出された意見の概要は以下の通り。

 再保険を廃止した場合、被害者保護の充実というのは誰がやるのか。
 
 被害者保護の充実を図るというのは、自賠責保険制度全体として被害者保護が図られるようにしていこうということ。
 
 運用益については、被害者保護充実を図った上で、余った運用益をユーザーに還元するとすべき。
 
 運用益の支出に関し、民間救急医療への支出を実現すべき。
 

(以 上)

 


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