平成12年5月30日
金 融 再 生 委 員 会
金 融 監 督 庁
   
新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応(運用上の指針)について

       

 標記の件につき、金融再生委員会及び金融監督庁では、別紙1の基本的な考え方の下、別紙2の「異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応(運用上の指針)」を決定することを検討しています。

 上記別紙2の運用上の指針につきご意見がありましたら、平成12年6月30日(金)までに、氏名又は名称、住所を付記の上、郵便、ファックス又はインターネットにより下記にお寄せください。電話等によるご意見はご遠慮願います。

 なお、頂戴したご意見につきましては、氏名又は名称も含めて公表させていただくことがありますので、あらかじめご了承願います。
    

ご意見の送付先

○金融再生委員会事務局総務課

  郵便:〒100-6013 東京都千代田区霞が関3−2−5 霞が関ビル
  ファックス:03-3502-7326
  ホームページアドレス:http://www.fsa.go.jp/frc/

○金融監督庁監督部銀行監督第一課

  郵便:〒100-0013 東京都千代田区霞が関3−1−1 中央合同庁舎第4号館
  ファックス:03-3506-6141
  ホームページアドレス:http://www.fsa.go.jp/

内容について照会先

金融再生委員会 事務局総務課 03-3502-7338
     宮 原
金融監督庁 TEL 03-3506-6000(代)
  監督部銀行監督第一課
     長谷川(内線3321)

 
ご意見の募集は終了しました。ご協力ありがとうございました。


(別紙1)

平成12年5月30日
金 融 再 生 委 員 会
金 融 監 督 庁

異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する基本的な考え方

    

.最近、事業会社等の異業種による銀行業参入の動きや、コンビニ等の店舗網にATMを設置し、主に決済サービスの提供を行う業務形態、更には店舗網を持たずインターネット上でのみサービスの提供を行う業務形態等、従来の伝統的な銀行業にはない新たな形態の銀行を設立する動きが見受けられる。こうした動きは、金融技術の革新、競争の促進等を通じて、我が国金融の活性化や利用者利便の向上等に寄与する可能性がある。

  

.他方、こうした新たな形態の銀行業については、(1)子銀行の事業親会社等からの独立性確保の観点、(2)事業親会社等の事業リスクの遮断の観点、(3)事業親会社等と総合的な事業展開を図る場合の顧客の個人情報の保護の観点、(4)資産構成が国債等の有価証券に偏っている場合のリスク管理や収益性の観点、(5)有人店舗を持たずインターネット・ATM等非対面取引を専門に行う場合の顧客保護の観点等、従来の伝統的な銀行業においては想定していなかった様々な観点からの問題が考えられる。これらの問題は、銀行の資本形態や業務形態・店舗形態の面で従来にない新たな形態が出現したことに伴い生じた問題であり、銀行法上要請されている銀行業務の健全かつ適切な運営の確保の観点から、改めて検討する必要がある。

  

.金融再生委員会・金融監督庁としては、以上のような基本的な考え方の下、こうした新たな形態の銀行業に対する現行法令下での免許審査・監督上の対応について、別添の通り、運用上の指針(案)として策定し、これをパブリックコメントに付すこととした。今後、パブリックコメントを踏まえた上で、最終的に取りまとめることとしたい。
 もとより、新規に参入する銀行においても、決済機能や金融仲介機能の担い手として、通常の銀行と同様、十分な財産的基礎、適格な人的構成、内部管理体制等が求められることになる。今後、本指針が確定された後は、これらの点も含め、本指針を踏まえ、免許審査や免許後の監督において十分なチェックが行われることになる。

  

.また、本指針は、あくまでも現時点で想定し得る主な問題点に対する基本的な対応方針を示したものであり、急速に進む金融技術の革新やイノベーション等により、今後とも新たな形態の銀行が出現することが予想され、その際には、別途の検討が必要となる場合もあり得ると考えられる。

  

.なお、最後に付言すれば、現行法令上、免許付与後、銀行の主要株主の変更を事前に把握し、銀行の健全性確保に支障をもたらすような不適格な株主を排除する権限は、監督当局に付与されていない。そこで、いわゆるバーゼル・コア・プリンシプルの要請や主要先進国の制度等を踏まえ、銀行の健全性確保の観点から、銀行の健全性に支障をもたらすような不適格な主要株主を把握し、これを排除し得る権限を監督当局に付与すること等について、今後、金融審議会等において早急に検討を開始するよう、関係当局に要請したい。
 また、銀行の他業禁止の緩和等、異業種の銀行業参入問題とは裏腹の関係にある規制緩和の問題についても、本年3月末に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画(再改定)」に沿って着実に検討を行うこととし、このうち制度改正が必要な事項については、金融審議会等において併せて検討することを要請したい。

   

(注 )バーゼル銀行監督委員会による「実効的な銀行監督のためのコアとなる諸原則」(1997年9月)においては、各国の金融監督当局が銀行を監督するにあたり適用すべき最低限の基準として、以下の原則を掲げている。
 
原則3 :免許付与当局は、免許付与の基準を設定し、一定の基準に満たない企業の申請を却下する権限を有していなければならない。免許付与のプロセスでは、最低限、銀行の株主構造、取締役・・・(略)・・・に対する評価を行わなければばらない。
 
原則4 :銀行監督当局は、現存の銀行に対する主要な所有権や支配力を他の主体に移譲させる提案を点検し、棄却する権限を持っていなければならない。

(別紙2)

平成12年5月30日
金 融 再 生 委 員 会
金 融 監 督 庁
  
異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応(運用上の指針)(案)

    

I .新たな形態の銀行業における主な問題点と免許審査・監督上の対応
 
.子銀行の事業親会社等からの独立性確保の観点
 
(1)

 基本的考え方
 銀行の経営の健全性を確保するためには、経営の独立性の確保が前提となるが、銀行の経営方針に重要な影響を及ぼし得ると想定される主要株主(注)に事業会社等が存在する場合には、当該事業会社等(以下「事業親会社等」という)の事業戦略上の要請によって、子銀行の健全性が損なわれることのないよう、銀行経営の独立性の確保について、特に留意する必要がある。

(注)  銀行の経営方針に重要な影響を及ぼし得ると想定される主要株主とは、企業会計上の実質影響力基準に基づく関連会社の基準等を踏まえ、原則、議決権の20%以上を自己の計算において所有する株主とする。具体的には、銀行を企業会計上の子会社又は関連会社とする国内会社、及び銀行の議決権の20%以上を自己の計算において所有する外国法人等とする。
 なお、投資組合等については、当該投資組合等の背後に存在する実質的な出資者で、銀行の議決権の20%以上を自己の計算において実質的に所有する者を含むものとする。
 
(2)  免許審査及び免許後の監督において留意すべき事項
 
.免許審査において確認すべき事項
 
)事業親会社等の有無、並びに事業親会社等が存在する場合、その概要及び事業戦略における子銀行の位置付け等
 

)子銀行の経営陣が常に銀行経営の健全性を最優先として、独立して経営判断を行う経営体制が確保されているかどうか。
 例えば、子銀行の役員が事業親会社等の役員又は職員を兼任すること等により、子銀行の経営の独立性が損なわれていないか。
 

)事業親会社等の店舗を共有する場合等において、銀行業務の一部を事業親会社等に委託したり、事業親会社等の職員が銀行員を兼職すること等により、保安上ないしリスク管理上、銀行業務の健全かつ適切な運営が損なわれていないか。
(なお、この点は、コンビニにATMを設置する等のインストアブランチ(小売店舗内銀行営業所)一般の形態に適用されるべき事項である。)
 
.免許後の監督において留意すべき事項
 
)免許付与後、事業親会社等に該当する主要株主に変動がある場合には、子銀行に対し、当局に速やかに報告するよう求める(免許の条件とする)。
 
)免許付与後の子銀行の経営の独立性や、銀行業務の健全かつ適切な運営の確保の状況等について、子銀行に対する検査ないし報告徴求等により確認する。
  
.事業親会社等の事業リスクの遮断の観点
 
(1)  基本的考え方
 銀行経営の独立性が確保されたとしても、事業親会社等の経営悪化等、子銀行の意図しない事業親会社等のリスクが子銀行に及ぶ可能性がある。特に、子銀行と事業親会社等とが営業基盤を共有しているような場合には、事業親会社等の破綻等に伴い、子銀行の営業基盤が一気に失われるおそれ(共倒れリスク)がある。こうしたリスクに対応するためには、現行の大口信用供与規制及びアームズ・レングス・ルール(特定関係者に対する優遇禁止)の遵守は当然のことであるが、以下のような諸点について留意する必要がある。
 
(2)  免許審査及び免許後の監督において留意すべき事項
 
.免許審査において確認すべき事項
 
)子銀行において、事業親会社等のリスクを遮断するための方策が十分講じられているかどうか。なお、当該方策には、最低限、以下の項目が含まれている必要がある。
 
(1)  事業親会社等の業況が悪化した場合、当該事業親会社等に対し、支援、融資等を行わないこと
 
(2)  事業親会社等の業況悪化や事業親会社等による子銀行株の売却等、事業親会社等に起因する種々のリスク(シナジー(相乗)効果の消滅、レピュテーショナルリスク(風評リスク)等に伴う株価の下落・預金の流出、取引先の離反等)をあらかじめ想定し、それによって子銀行の経営の健全性が損なわれないための方策(収益源の確保、資本の充実等)を講じること
 
(3)  特に、子銀行が事業親会社等の営業基盤を共有しているような場合には、事業親会社等の破綻等に伴い、営業継続が困難とならないような措置を講じること
 
)上記のリスク遮断策によっても、完全に事業親会社等のリスクを遮断することが困難な場合も想定され、事業親会社等の経営リスクに伴う子銀行の経営悪化を早期に把握する観点から、子銀行の経営に影響を及ぼし得る事業親会社等の業況について確認する。
 具体的には、免許申請者の収支の見込や社会的信用等を審査するにあたり、当該事業親会社等の財務状況や社会的信用等についても十分勘案する。その際、免許申請者に対し、事業親会社等の直近の決算期の財務諸表及び監査報告書(注1)、並びに当該監査報告書の内容が適正であることを監査した他の監査法人による報告書(注2)等の資料(事業親会社等が外国法人等である場合には、財務状況を示す類似の資料)の提出を求めることとする。
 
(注1)  監査報告書と併せ、当該事業親会社等の継続企業(ゴーイング・コンサーン)としての存続可能性について特段問題がない旨の監査法人等の意見書の提出を求めるものとする。
 
(注2)  企業内容等の開示に関する省令第9条の4の規定により有価証券届出書の簡便な記載が認められる一定以上の格付を取得している者については、監査報告書の内容を監査した他の監査法人による報告書の提出を省略することができるものとする。
 
(注3)  事業親会社等が事業を行わない個人である場合には、本項目によるリスク遮断策のチェックは基本的に不要と考えられるが、社会的信用等に関するチェックは必要である。
 
.免許後の監督において留意すべき事項
 
)免許付与後のリスク遮断策の履行状況(その確実な履行を免許の条件とする)については、子銀行に対する検査ないし報告徴求等により確認する。なお、リスク遮断策の履行状況に問題がある場合や、当初予定していたリスク遮断策では不十分である場合には、銀行法第26条に基づく業務改善命令を発出することもあり得る。
 

)免許付与後の事業親会社等の業況等については、定期的に、子銀行に対し、事業親会社等の財務諸表、監査報告書等、事業親会社等の経営状況・財務状況を示す資料の提出を求める(免許の条件とする)ことにより確認する。仮に、事業親会社等の経営に問題があると判断される場合には、子銀行の経営に対する影響及び必要な場合の対応策等について子銀行に対し報告を求める。
 

.事業親会社等と総合的な事業展開を図る場合の顧客の個人情報の保護の観点
 
(1)

 基本的考え方
 顧客の個人情報の保護は、一般に、銀行が適切な業務運営を営む上で必須の事項であるが、事業親会社等と子銀行の関係においては、両社のシナジー(相乗)効果を図る観点から、特に、顧客情報を相互に活用することが予想される。そのため、顧客の個人情報の保護が十分図られているかどうかについて確認する必要がある。本問題は、現在、関係省庁等において、個人情報保護法の法制化に向けた検討がなされており、将来、法制化された場合には、各銀行は、当該法律の規制に服することになるが、当面、監督当局としては、以下の点に留意する必要がある。
 

(2)  免許審査及び免許後の監督において留意すべき事項
 

.免許審査において確認すべき事項
 子銀行において、顧客の個人情報の保護のための方策が十分講じられているかどうか。具体的には、顧客情報の相互利用を行う場合には、最低限、事前に、利用する業者の範囲、利用目的、利用方法等を明確にした上で、顧客本人の明示的な同意を得ることを必要とする運用体制となっているかどうかを確認する。
 

.免許後の監督において留意すべき事項
 免許付与後、顧客の個人情報の保護のための方策を確実に履行しているかどうかについて、子銀行に対する検査ないし報告徴求等により確認する。
 

.資産構成が国債等の有価証券に偏っている場合のリスク管理や収益性の観点
 
(1)  基本的考え方
 銀行の資産構成が貸出ではなく国債等の有価証券に偏っている場合には、現行の信用リスクを中心とした自己資本比率規制の下では、信用リスクはほとんどないことから所要自己資本額は極めて小さくなるが、伝統的な銀行業とは異なる業務形態に鑑み、金利リスク、事務リスク等のリスク特性に見合った自己資本が必要である。
 また、伝統的な銀行業に想定される信用リスクを取らない場合には、信用リスクに対応するリターン(収益性)も期待できないことから、将来の収支見通しについては、この点も勘案した審査が必要である。
 
(2)  免許審査及び免許後の監督において留意すべき事項
 
.免許審査において確認すべき事項
 
)銀行の資産構成が貸出ではなく国債等の有価証券に偏っている場合には、伝統的な銀行業とは異なる業務形態に鑑み、金利リスク、事務リスク等のリスク特性に見合った自己資本となっているか、ALM管理(資産負債管理)等のリスク管理が適切に行われるような体制となっているかどうか。
 
)将来の収支見通しの審査に当たっては、収益源をどこに求めるのか、その収益源は確実かつ将来にわたり安定的と見込まれるか、収益の前提となる諸条件について見込みを下回った場合の対応策が講じられており、そのような場合でも一定の収益を見込めるか。
 
)なお、全国的に決済業務を営む場合には、確実な決済の確保が見込まれるかどうか。
 

.免許後の監督において留意すべき事項
 免許審査時に確認した自己資本が維持されているか、ALM管理等のリスク管理が適切に行われているか等について、検査ないし報告徴求等により確認する。
 また、免許審査時に確認した収益源については、計画通りの収益を上げているかどうか、収益の前提となる諸条件に変更はないかどうか、計画通りの収益を上げていない場合にはその対応策等について、報告徴求等により確認する。
 

.有人店舗を持たずインターネット・ATM等非対面取引を専門に行う場合の顧客保護等の観点
 
(1)  基本的考え方
 インターネット等による電子金融取引は、既存銀行において既に取扱いを開始しており、規制のあり方や監督方法を電子取引の特性に対応したものへと見直すことにより、実効性のある利用者保護を図る必要が生じている。
 特に有人店舗を持たず、専らインターネットやATM等の非対面取引を専門に行う銀行については、従来有人店舗が果たしてきた機能を、適正なルール及び行内の態勢整備等を行うことにより他の手段で代替する必要がある。また、ITを活用した新たなサービスの提供にあたっては、一般の利用者が特別の訓練を経ずに安全かつ簡便に利用できるような仕組みが整えられている必要がある。
 以上のような観点を踏まえ、当面、インターネットやATM等の非対面取引を専門に行う銀行に対する免許・監督については、以下の点に留意する。
 なお、電子金融取引に係る規制・監督一般については、関連分野の有識者からなる「金融サービスの電子取引と監督行政に関する研究会」の報告書(12年4月18日)の指摘も踏まえ見直しを行う。
 
(2)  免許審査及び免許後の監督において留意すべき事項
 
.免許審査において確認すべき事項
 
)以下に掲げる事項について、無店舗営業であっても適切に対応し得るための態勢が整備されているかどうか。
 
(1)  顧客からの苦情・相談の対応
 
(2)  システムダウン等に伴う顧客対応
 
(3)  法令に基づく顧客への説明義務の履行
 
(4)  ディスクロージャーの履行
 
(5)  マネーローンダリング防止等の観点からの本人確認義務の履行
 

)収支見通しについて、競合者の参入、システムの陳腐化等、環境の悪化に伴う対応方策が確立しており、その場合でも一定の収益を見込めるような計画となっているかどうか。
 

)金利等の条件に敏感である顧客層の特性や、取引の解約・変更が容易になされ得る特性に鑑み、顧客の一時大量流出に備えた流動性確保のための方策が確立しているかどうか。
 
)システムのセキュリティのレベルが十分な水準に達しているかどうか。システムの安全管理体制(外部委託先の管理を含む)や障害発生時の危機管理体制等が適切に講じられているかどうか。(外部機関の評価書類を提出させる)
 

.免許後の監督において留意すべき事項
 免許審査時に確認した対応策の履行状況について、検査ないし報告徴求等により確認する。

    

II

.既存銀行等への適用

 上記 I .に掲げた監督上の留意点は、既存の銀行を事業会社等が買収した場合、既存の銀行が顧客の個人情報を活用する場合やインターネットバンキングを行う場合等、同様の形態を持つ既存銀行の監督においても、基本的に適用することとする。

 また、上記 I .の1.〜3.に掲げた免許審査・監督上の留意点は、事業会社等が銀行持株会社を保有しようとする場合についても適用することとする。


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