平成12年6月15日
金 融 監 督 庁
大  蔵  省
 
預金取扱い金融機関等の自己資本比率規制に関する告示等の改正について

  
 平成12年4月14日付けでパブリック・コメント手続に付した標記の件につきましては、5月12日をもってコメントの受付を締め切らせていただきました。お寄せいただいたコメントを踏まえ、本日付けで、預金取扱い金融機関等の自己資本比率規制に関する告示及び関係命令の改正を行うこととしました。ご協力ありがとうございました。

 お寄せいただいたコメントの概要及びそれに対する考え方は以下のとおりです。

コメントの概要 コメントに関する考え方
○ 持分法投資損失の取扱い
  「関連法人等に該当する金融業務を営
 む会社」について、銀行の保有する株式
 その他の資本調達手段を自己資本額から
 控除する場合において、持分法投資損失
 が生じるケースでは、その損失が銀行の
 Tier1資本の減少要因に別途織り込まれ
 るため、自己資本からの二重控除が生じ
 てしまう。そこで、この場合においては、
 連結自己資本比率の算出上、持分法は適
 用しないという取扱いにしていただきた
 い。(全国銀行協会)

○ 「金融関連業務を営む会社」の範囲
  草案2 (1)マル2においては、銀行法第16
 条の2第1項に規定する金融関連業務を
 専ら営む会社に対する株式等が控除項目
 とされているが、控除の対象となる会社
 は、あくまで金融監督当局による健全性
 規制に服する範囲の会社とすべきである。
 具体的には、昨年6月に公表されたBI
 S規制市中協議案「新たな自己資本充実
 度の枠組み」で明記されている自己資本
 比率規制の対象金融機関(銀行、証券会
 社、保険会社)に限定すべきである。
 (全国銀行協会)
  
  
  

○ 比例連結を選択できる場合の範囲
  草案2 (1)マル3における、「関連法人等に
 該当する金融業務を営む会社」において、
 比例連結が認められる対象を拡大し、広
 く認めることを要望する。
  前出のBIS規制市中協議案では、「規
 制対象金融機関に対する重大な少数持分
 の株式投資」で、「支配力が及んでいない
 ものは、一定の条件の下で比例連結、な
 いしは株式投資の控除により自己資本か
 ら除外されるべき」とされ、比例連結と
 資本控除の2つの方法が提示されており、
 「比例連結」を当初から例外的な扱いと
 しなければならない明示的な理由は見あ
 たらないのではないか、と考えられる。
  例えば、草案2 (1)マル3においてイ、ロ
 に加え、下記のハを追加すべきである。
 「ハ.以下の要件を全て満たす場合。
  ・ 当該金融業務を営む関連法人が内
   外の金融監督当局の監督を受けてい
   ること
  ・ 当該金融業務を営む関連法人の株
   式が上場されており、公開会社とし
   て情報開示がなされ、他の株主や市
   場参加者等の監視を受けるなど市場
   規律に晒されていること
  ・ 当該銀行または当該銀行持株会社
   が、当該金融業務を営む関連法人の
   事業の状況、財務の状況、保有して
   いるリスク等を定期的に把握してい
   ること
  ・ 当該銀行または当該銀行持株会社
   が、当該金融業務を営む関連法人等
   に対する投資に係る持分を超えてそ
   の事業に関して責任を負うべきこと
   を約する契約等がないこと 」
 (全国銀行協会)

○ 比例連結の方法を用いる要件
  草案2 (1)マル3ロにおいて、「当該銀行…
 が当該金融業務を営む関連法人等に対す
 る投資に係る持分に相当する額を超えて
 その事業に関して責任を負うべきことを
 約する契約等がないこと」とあるが、例
 えば、設立間もない時期においては、各
 種規制を原因として事業に制約が課され
 る可能性を排除するため、共同して出資
 比率に応じた追加出資を行うことの合意
 が必要なケースがある。したがって、当
 該部分は、「当該銀行…が当該金融業務を
 営む関連法人等に対する投資に係る持分
 を超えてその事業に関して責任を負うべ
 きことを約する契約等がないこと」とす
 べきである。これは、当該関連法人等に
 対する投資に係る持分に属する部分のみ
 が対象となる、比例連結の方法とも整合
 的である。(全国銀行協会)

○ 比例連結の具体的方法
  銀行法第14条の2の規定に基づき自己
 資本比率の基準を定める告示第2条では、
 自己資本比率を連結財務諸表規則に準拠
 して作成した連結財務諸表に基づき算出
 すると定められているが、現行ルールで
 は比例連結は認められていない。従って、
 自己資本比率の計算においては、事務負
 担も考慮し簡便な方法を採用すべきであ
 る。例えば以下のような方法が考えられ
 る。
  まず、対象となる関連法人等について、
 現行通り連結財務諸表を作成した上で、
 比例連結の考え方は自己資本比率計算の
 算式にて取り込むべきである。具体的に
 は、以下の通り。
 マル1 期末日における、当該関連法人等の
  リスクアセットの「投資に係る持分」
  に相当する額を、自己資本比率計算上
  の算式において、当該銀行の連結リス
  クアセットに合算。
 マル2 連結リスクアセットから、連結財務
  諸表における当該関連法人等に対する
  出資に相当する額を控除。
 マル3 劣後債権も含め債権・債務関係があ
  る場合においては、当該銀行及び当該
  関連法人の債権額の持分額に相当する
  額を連結リスクアセットから控除。
 マル4 内部取引の未実現損益の取扱いは、
  自己資本比率計算の基礎となる持分法
  を用いた連結財務諸表において既に勘
  案済みであるので不要。
  また、比例連結の考え方を取り込むに
 あたっては、マル1債権・債務相殺消去を行
 わないこと、マル2当該関連法人等のリスク
 アセット算定上高めの掛け目を適用する
 こと等の算定方法も、健全性の判断にお
 いて問題がないため許容されるべきと考
 える。(全国銀行協会)

○ ご指摘の内容を踏まえ、事務ガイドライ
 ンにおいて、持分法投資損失・利益の双方
 の取扱いに関し、「控除すべき資本調達手
 段の額は、投資原価にそれまで計上された
 持分法による評価損益の累計額を加減した
 額とする」旨を明示することとする。
  
  
  
  
  
  

○ 銀行等の自己資本比率規制上、ダブル・
 ギヤリングを排除することは、金融システ
 ム外の投資家から資本を調達せず金融シス
 テム内で資本を持ち合うことを防止すると
 ともに、金融機関間のリスクの伝播を遮断
 する観点から重要である。
  したがって、自己資本比率規制が課され
 る銀行、証券会社及び保険会社だけでなく、
 ノンバンク等の金融関連業務を営む会社
 (各業法上、最低自己資本が課されるもの
 も含まれる。)もダブル・ギヤリングを排
 除する対象に含めることが適当である。
  なお、市中協議案も、規制対象外の金融
 機関への投資の取扱いについてダブル・ギ
 ヤリング排除の必要性を否定しているわけ
 ではない。

○ 比例連結が認められるためには、関連法
 人等の保有する資産等に係るリスクのうち
 親銀行等の出資割合に相当する分のみを、
 当該親銀行等の資産等と連結することによ
 り、当該親銀行等の連結ベースの自己資本
 充実度が合理的かつ適正に算定されること
 が必要である。
  このような観点からは、当該関連法人等
 の資産等に係るリスクのうち親銀行等の出
 資割合相当分が、合弁契約上の合弁割合と
 して明確に示されている場合や、銀行持株
 会社段階で資本が完全保有されることによ
 りこれに準ずる場合など、親銀行等が出資
 割合を超えて負担を負わないことが確認さ
 れることが必要である。
  ご提案の、関連法人等に対する金融監督
 当局による監督、上場を通じた情報開示、
 親銀行等による事業・財産状況等の把握と
 いった要件は、関連法人等の株主が多数存
 在し得る場合にも充足可能なものであり、
 これらの要件によって関連法人等の資産等
 に係るリスクの親銀行等に及ぶ割合が親銀
 行等の出資割合に限定される蓋然性が高い
 とは考えられないことから、比例連結が認
 められるための要件として十分とはいえな
 いと考える。
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  

○ ご指摘を踏まえて告示に規定することと
 する。
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  

○ 我が国の会計制度上比例連結が採用され
 ておらずなじみがないことや、会計上の事
 務負担が増加することに鑑み、当分の間、
 自己資本比率の過大算定とならない範囲で
 の簡便法を行って差し支えない旨を事務ガ
 イドラインにおいて明確化することとする。

内容についての照会先

金融監督庁  TEL 03-3506-6000
  長官官房企画課  飯守(内線3153)、渡辺(〃3163)
  監督部監督総括課  堀田、田中、西尾

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