「金融監督庁の1年(平成11事務年度版)」の公表について

平成12年6月27日
金 融 監 督 庁
     
I .公表の趣旨

 一昨年の6月22日に金融監督庁が発足して以来、はや2年が経過した。この間、集中検査の厳正な実施、金融再生法の施行、大手行等に対する資本増強等の様々な取り組みにより、我が国金融システムも一時期に比べ格段に安定してきている。そのような環境の中、金融監督庁発足2年目となったこの1年間、金融監督庁においては、生命保険会社への集中検査、金融機関等グループ・コングロマリットの一体的な実態把握、信用組合検査・監督事務の移管への対応、商工ローン問題への対応、マネー・ローンダリング問題への対応など、多方面にわたる様々な取組を行ってきた。しかしながら、一方では、異業種の銀行業への参入問題、電子取引への対応等、行政として対応すべき新たな課題も出てきている。

 「金融監督庁の1年(平成11事務年度版)」は、このような金融監督庁の発足2年目の活動を広く紹介するために、昨年に引き続き取りまとめたものである。これにより、金融検査・監督に対する国民の一層の理解が得られ、金融行政に対する信頼の増進につながることを期待している。



II


.全体の構成

「金融監督庁の1年(平成11事務年度版)」は、本編及び資料編から成り立っている。本編は、

第1部  金融監督庁の組織及び運営

第2部

 法制度面の新たな進展

第3部

 金融監督

第4部

 金融検査

第5部

 国際関係の動き

から構成されており、本編に関連する資料(報道発表資料等)を資料編としてまとめている。



III


.概要
 
. 第1部 金融監督庁の組織及び運営

 第1部は、金融監督庁の現行の体制、金融庁の設置と平成12年度の体制整備、金融監督庁のこの1年間の行政運営について記載している。主なポイントとしては、

(1)  金融行政機構については、全体の中央省庁再編(平成13年1月)に先行して平成12年7月1日に金融再生委員会に置かれる金融監督庁を改組して金融庁とし、更に、平成13年1月6日に金融再生委員会を廃止して内閣府の外局として金融庁を設置することや、金融庁設置後の所掌事務等の内容について記載している。
 体制整備については、中央省庁等改革の方針に沿って金融庁への円滑な移行を行うとともに、検査・監督体制等の早急な整備を図ることが課題となる中で、当庁としてこれまでに講じてきた、人員・組織の両面での措置について記載している。

(2)

 金融監督庁のこの1年間の行政運営については、この1年間の主な出来事を年表形式で記載しているほか、当庁顧問や金融業界との意見交換の状況、地方部局との連携の状況、職員の任用及び研修の状況、当庁の広報体制、パブリック・コメント手続の実績、行政情報化の推進状況について記載している。


. 第2部 法制度面の新たな進展

第2部は、

(1)  金融機関等の経営基盤の強化及び的確な破綻処理のための法整備

(2)

 21世紀を展望した金融サービスに関する基盤整備のための法整備

(3)

 商工ローン問題等へ対応するための法整備

について、各法律の概要、改正の内容等を記載している。



. 第3部 金融監督

 第3部は、金融監督にあたっての基本的考え方、信用組合検査・監督事務の移管、事業形態をめぐる新たな動きへの対応、商工ローン問題への対応、グループ・コングロマリットに対する一元的な監督、コンピュータ2000年問題への対応等について記載している。主なポイントとしては、

(1)  信用組合検査・監督事務の移管については、移管の経緯や「信用組合移管円滑化のためのプロジェクトチーム」を発足させ移管を円滑に進めるために当庁が採った措置の内容、移管後に採った措置等について記載している。

(2)

 事業形態をめぐる新たな動きへの対応については、昨年秋以降の異業種の銀行業参入の動き、プロジェクトチームや金融再生委員会における検討・協議を踏まえて公表された「異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応(運用上の指針)(案)」の概要、最終的なとりまとめまでのスケジュール、今後の課題について記載している。

(3)

 商工ローン問題等への対応については、
 
 商工ローンについて、昨年夏以降、過剰融資、高金利、取立てをめぐるトラブル、根保証についての説明不十分等の問題が各地で指摘され社会問題化した状況の下で、金融監督庁が採った、
 
.財務局、都道府県及び全貸金業者に対する、適正な業務の運営の確保の要請


.全国貸金業協会連合会(全金連)会長に対する、根保証に関して保証人とのトラブルを避けるための自主的な取組み等の要請(その後、全金連において要請の趣旨に沿った自主規制基準を策定)

等の対応について記載している。

 日賦貸金業者については、近年、登録者数が増加している中で、高金利、取立てをめぐるトラブルや日賦貸金業者の要件に違反した貸付けが行われていること等が問題となった状況の下で、当庁から財務局及び都道府県に対して、貸金業規制法等に基づいた適切な対応が図られるよう、債務者等からの法令違反や苦情等に対する的確な取扱いの徹底等の指示を行っていること等について記載している。

(4)

 グループ・コングロマリットに対する一元的な監督については、グループ内金融機関間のダブルギアリングの排除、グループ内証券会社及び銀行等における内部管理業務の統合、金融グループに対する行政処分等、当庁が採った監督上の対応について記載している。  

(5)

 コンピュータ2000年問題への対応については、金融監督庁の対応として
 
 銀行法等に基づき金融機関から対応状況の報告を求め、主要行等についてはヒアリングを行うなど、モニタリングの強化に努めたこと、


 専門検査班を組成し、本問題に重点を置いた立入検査を実施したこと、


 年末年始及び閏日における特別体制をとって万一の問題の発生の対応に備えたこと

等について記載している。


(6)

 民間金融機関の再編等の状況については、平成11事務年度における、主要行間での業態を超えた提携等の状況、外国銀行の参入・退出の状況、協同組織金融機関の合併等による再編の状況、保険会社・証券会社の再編の状況について記載している。

(7)

 マネー・ローンダリング問題への対応については、昨年8月に成立した「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(組織的犯罪処罰法)の成立を受け、金融監督庁が採った
 
 関係政省令の制定作業を行い、疑わしい取引の届出に関する事務に対応するため、長官官房に「特定金融情報管理官」を設置するとともに、総務課に「特定金融情報室」を設置したこと、


 全国銀行、信用金庫、保険会社、証券会社及び財務局の職員等に対して「疑わしい取引の届出制度」に関する説明会を開催したこと、


 金融機関等における個別具体的な取引が疑わしい取引に該当するか否かを判断する基準となる「疑わしい取引の参考事例」を改訂したこと、

等の対応について記載している。



. 第4部 金融検査

 第4部は、金融検査体制の整備、平成11事務年度の金融検査の実施状況、金融検査の充実・強化のための方策等について記載している。主なポイントとしては、

(1)  金融検査体制の整備については、平成11年度において、検査官の定員を大幅に増員するとともに、各業態を専門に担当する部門制を採用し、各業態毎の特色に対応した、より専門性の高い深度ある検査の実施に努めていること等について記載している。

(2)

 グループ・コングロマリットの一体的な実態把握については、連結ベースでの資産内容や親子間の取引の実態を的確に把握するため、親金融機関等と信託子会社や証券子会社等の金融機関等子会社のグループを一体的に検査することにより、効果的な実態把握に努めていること等について記載している。

(3)

 銀行に対する検査については、金融検査マニュアルに基づき、自己責任原則の徹底を前提に、資産内容の健全性、ルール遵守状況、リスク管理状況等について、的確な実態把握に努めていること等について記載している。

(4)

 検査により発見された重大な法令等違反に対する告発については、日本長期信用銀行及びクレディ・スイスグループについて、検査忌避行為があった事実を把握したことから、刑事訴訟法第239条第2項の規定(公務員の告発義務)により警視庁等に対して告発書を提出したこと等について記載している。

(5)

 保険会社に対する検査については、平成11年4月から早期是正措置が導入され、ソルベンシー・マージン比率に基づいて、必要な措置が適時に講じられるという制度的な枠組みを踏まえ、生命保険会社に対する資産内容等の実態把握のための集中検査を実施したこと等について記載している。

(6)

 外国金融機関等に対する検査については、「外国金融機関等については、我が国市場における活動状況を踏まえつつ、銀行、証券、信託銀行、投資顧問等各拠点をグループとして一体的に検査を行うことにより、効果的な実態把握を行う。」との方針に沿って、内外無差別の原則に基づき取り組んだ検査の実施状況や検査結果の概要について記載している。

(7)

 金融検査の充実・強化のための方策については、「保険会社に係る検査マニュアル」を始めとする検査マニュアル等の整備の内容や、検査において検査官と被検査金融機関との間に意見相違が生じた場合の金融機関からの意見申出制度について、概要等を記載している。


. 第5部 国際関係の動き

 第5部は、バーゼル銀行監督委員会を始めとする、金融監督国際機構の活動の状況及び我が国のこれら国際機構への対応のほか、海外の金融検査監督当局との連携の強化のための金融監督庁の取組みの状況について記載している。

 

連絡・問い合わせ先


金融監督庁 TEL 03-3506-6000
  長官官房総務課  中川(3148) 加藤(3146)

 

金融監督庁の1年

はじめに

 一昨年の6月22日に金融監督庁が発足して以来、はや2年が経過した。この間、集中検査の厳正な実施、金融再生法及び金融機能早期健全化法の施行、これに基づく破綻金融機関の迅速な処理や大手15行等に対する資本増強などの様々な取組みにより、我が国金融システムも一時期に比べ格段に安定してきている。
 そのような環境の中、金融監督庁発足2年目となったこの1年間、当庁においては、専門性の高い深度ある検査の実施、早期是正措置等の監督上の措置やオフサイト・モニタリングの的確な実施、金融機関との緊密な情報交換、海外金融監督当局との連携の強化等に努めてきたところである。中でも、

 (1)  生命保険会社への集中検査
 
 (2)  金融機関等グループ・コングロマリットの一体的な実態把握
 
 (3)  信用組合検査・監督事務の移管への対応
 
 (4)  商工ローン問題への対応
 
 (5)  コンピュータ西暦2000年問題への対応
 
 (6)  保険会社に係る検査マニュアルのとりまとめ
 
 (7)  マネー・ローンダリング問題への対応

等については、喫緊の課題として取り組んできたところである。しかしながら、一方では、異業種の銀行業への参入問題、電子金融取引への対応等、行政として対応すべき新たな課題も出てきている。

 金融監督庁としては、市場規律と自己責任原則を基軸とし、明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政の確立に努めてきたところであるが、金融を取り巻く環境の変化の流れが非常に早いものとなっている状況の中、その流れに迅速かつ的確に対応し、多くの課題に対処していくことにより、より強固な金融システムを構築し、健全で活力ある金融市場の発展を促していく必要があると考えている。

 また、本年7月1日には、これまで金融機関に対する検査・監督を担ってきた金融監督庁は、金融制度の企画立案に携わってきた大蔵省金融企画局と統合されて金融庁になる。さらに、来年1月6日には、金融再生委員会の廃止に伴い、金融破綻処理及び金融危機管理に関する事務も金融庁に移管されることとなっている。金融行政機構が移行する慌ただしい時期ではあるが、金融行政には1日の停滞も許されないことから、引き続き、信頼される金融行政の確立に努めてまいりたい。

 本冊子は、昨年の「金融監督庁の1年」に引き続き、発足2年目における金融監督庁の取組みをまとめたものである(原則として本年5月31日までの活動について記述しており、その後の経緯等についても必要に応じて盛り込んでいる。なお、証券取引等監視委員会は別途その活動状況をとりまとめており、本冊子には記述していない。)。これにより、金融検査・監督に対する国民の一層の理解が得られ、金融行政に対する信頼の増進につながれば幸いである。

  

  平成12年6月27日

金融監督庁長官


○本 編

○資料編

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