平成11年6月10日
金 融 監 督 庁
 

コンピュータ西暦2000年問題への対応について

 

1.平成11年3月末の対応状況の集計結果について

 平成10年12月18日付で銀行法第24条第1項等に基づき発出した報告命令(「コンピュータ2000年問題対応に関する資料の提出について」)により各金融機関等から報告された平成11年3月末におけるコンピュータ西暦2000年問題への対応状況の集計結果は(資料1)のとおりであった。

 この結果によると、平成11年3月末までに「重要なシステム」について、修正を完了したとする金融機関等の全体に占める割合は、前回報告(平成10年12月末時点、73%)より上昇し、全金融機関等の88%となった。また、このうち内部テストを完了したとする金融機関等の全体に占める割合も、前回報告(同、56%)より上昇し、77%となった。

 今後の見込としては、重要なシステムについて、主要行、地銀、第二地銀では、本年6月末までに全てが修正、テストとも完了する見込であり、金融機関等全体では本年6月末までに99%が修正を完了し、98%が内部テストを完了する見込となっている。

 また、危機管理計画の作成については、作成済とする金融機関等は全体の20%程度に止まっているが、当庁の事務ガイドラインにおいては、本年6月末までに作成を完了することを求めており、各金融機関等では、この目標に向かって引き続き準備を行っているところである。

(注 )本問題についての対応は、対応すべきシステムの優先度を決めて対応することが重要であり、当庁が求めている報告においては「重要なシステム」を「対応が完了しなければ業務に直接支障を生じるおそれのあるもの」と定義している。具体的に何が重要であるかについては各金融機関等が判断するものであるが、代表的なものとしては、基幹勘定系、対外接続系、国際系システム等があげられる。
 

2.報告を受けての対応について

 今回までの報告を見る限りにおいては、本問題への対応は、全体としては概ね順調に行われているとみられるが、当庁としては、6月末の対応完了に向けて各金融機関等に対する個別のモニタリングを従来にも増して一層強化していくこととしており、その際には、銀行法第24条や第26条等の法律に基づく措置を厳正に行使していく所存である。
 

3.共同接続テストの実施について

 重要なシステムの中でも最重要である決済関係については、日本銀行、全国銀行協会、東京証券取引所等により、日銀ネット、全銀システム、東証等の決済・取引システムについて共同の接続テストが昨年12月以降4回にわたって実施されており、日本銀行等では、各種決済システムを通じたテスト参加者間における2000年日付等のデータ授受については基本的に正常に処理されたとしている。同様のテストは、6月、7月にも実施される予定である。
 

4.他の当庁所管業態における対応について

 平成10年9月11日に政府・高度情報通信社会推進本部から出された「コンピュータ西暦2000年問題に関する行動計画」では、各省庁は所管の業態における対応状況について実態を把握の上、その結果を公表することとされており、これを受けて、預金等取扱金融機関、保険会社及び証券会社以外の当庁所管業態についても、業界団体等に対して傘下機関等の対応状況の報告を要請しているところである。

 これら業界団体等からの11年3月末時点の対応状況報告によると、引き続き修正等の対応を行っているところが多いが、短資業者、証券金融会社、手形交換所等金融システムに与える影響が大きいと見られるところについては、重要なシステムについての修正、テストは概ね完了している(資料2参照)。

以 上

 連絡・問い合わせ先 

監督部監督総括課

 TEL 3506-6000

北川(内3307)
清重(内3362


(資料1)
 

金融機関の2000年問題に関する平成11年3月末の対応状況の集計結果の概要

(預金等取扱金融機関、保険会社、証券会社、投信委託会社)
 

対象金融機関:○
(1525)  
預金等取扱金融機関1,089(主要行19、地銀64、第二地銀62、外国銀行支店87、子会社信託18、外資系信託9、信用金庫・全信連396、労働金庫・労金連42、信用組合・全信組連311、信農連・信漁連・農林中央金庫81)
保険会社109(生命保険43、損害保険35、外資系生保3、外資系損保28)
証券関係327(証券211、外国証券56、投信委託会社60)
 
.重要なシステムについての修正及び内部テストの進捗状況
 
(1)  各金融機関等(1,525社)からの平成11年3月末時点の対応状況についての報告によると、重要なシステムの修正を完了したところは1,344社であり、全体に占める割合は前回報告(平成10年12月末時点)比+15%の88%となった。同様に、内部テストを完了した金融機関等は1,168社であり、全体に占める割合は前回報告比+21%の77%となった。

 今後の見込としては、重要なシステムについては、本年6月末には大部分の金融機関等が修正(99%)、テスト(98%)を完了する見込となっており、完了が7月末以降となるとしている金融機関等についても、ベンダーや共同センターの事情によるものが多い。

 また、重要なシステム以外のシステムについては、修正を完了したところは959社(63%)、内部テストを完了したところは790社(52%)となっているが、本年9月末までには、修正、テストともに大部分の金融機関等が完了する見込となっている。
 

(2)  各金融機関等の重要なシステムへの対応の進捗率(内部テスト、外部の接続テストまで完了した重要システムの本数/対応すべき重要システムの本数)の平均をみると、全体では66%(前回報告比+10%)となっている。
 
(3)  なお、重要なシステムの中でも最重要である決済関係については、日本銀行、全国銀行協会、東京証券取引所等により、日銀ネット、全銀システム、東証等の決済・取引システムについて、2000年初の日付についての共同接続テストが昨年12月、今年の2月及び5月に、また4月には閏日についてのテストが行われた。

 これらのテストの結果について、日本銀行等では、各種決済システムを通じたテスト参加者間における2000年日付等のデータ授受については基本的に正常に処理されたとしている。今後、6月(2000年初)、7月(閏日)にも同様のテストが実施される。

 このほか、各業態が設けているCD・ATMネットワーク(CDネット中継センターデータ通信システム)のテストが4月(2000年初)、5月(閏日)に行われ、各業態では両日付で問題なく処理できることが確認されたとしている。
 

.顧客等との関係

 2000年問題について影響を受ける可能性のある顧客、主要取引先等への対応については、全金融機関等の71%が計画に盛り込んで対応を行っており、前回報告(49%)に比べ大幅に増加している。とくに顧客の対応が不十分な場合、与信取引を通じて顧客の影響を受けるおそれのある金融機関等のうち、主要行、地銀、第二地銀,生保等についてはおよそ90%~100%のところが対応を行っている。一方、依然としてその割合が低い業態もあり、顧客、主要取引先等から受ける影響について十分認識することが求められる。
 

.対応体制
 
(1)  経営における位置づけ

 経営における本問題の位置づけについては、大部分(99%)の金融機関等が、経営計画等において2000年問題を最重要課題として位置づけている。

 また、職員全体に本問題を周知するために、主要行で30%、外銀で28%、外国証券で23%のところが研修プログラムを設けている(全体では11%)。
 

(2)  総費用の見積もり

 対応に必要となる費用の見積もり状況については、大部分の金融機関等(99%)が見積もりを行っており、1金融機関当たりの平均見積額は、主要行129億円(前回報告比+7億円)、大手生保50億円(同+1億円)、本庁監理証券会社13億円(同+2億円)等となり、全体では7,935億円(同+525億円)であった。
 

.危機管理計画の作成

 危機管理計画の作成については、既に作成済としたところは全金融機関の22%に止まった。

 作成を完了していない金融機関等については、想定されるリスクシナリオの構成等に当初の予定以上に時間を要しているものもあるが、3月末までに第1次案を作成しているところも多く、外部コンサルタントの活用等、各金融機関は本年6月末までの作成に向けて着実な努力を行っているところである。

 なお、決済システム関係については、日銀ネット、全銀システム等については、既に万一の際の危機管理計画を策定しており、日銀ネットについては、日本銀行が万一システムに障害が発生した際には可能な限り手作業で対応するとしている。
 

.対応状況の開示

 対応状況の開示については、全金融機関等の78%が何らかの開示を行っており、前回報告(53%)に比べ大きく増加した。業態別には、多くが80%以上のところで開示を行っており、全国銀行、大手生保、大手損保、労働金庫ではほぼ100%近いところが開示を行っているが、一部の業態では50%以下の割合に止まっている。

 すでに開示を行っているところの手段としては、インターネットを活用した開示のほか、店頭でのポスター掲示、パンフレットの配布等が見られるが、今後も、開示内容の充実を図るとともに、対応状況に応じた内容の変更を行うことが必要である。

 一方、開示を行っていないところについては、4月以降にディスクロージャー誌による開示を予定しているところが多いが、いずれにしても、今後、金融機関の取引先において危機管理計画の策定等の対応が一層が進む中、取引金融機関の対応状況は重要な情報となるものであり、早期かつ継続的な開示が求められる。
 

.障害発生報告について

 当庁は、平成11年3月19日付「コンピュータ西暦2000年問題に起因するシステム障害等についての資料の提出について」により、銀行法第24条第1項等に基づき、銀行、保険会社、証券会社等から本年1月以降に発生した2000年問題(いわゆる「1999年問題」を含む)に起因すると見られるシステムのトラブルの発生状況の報告を求めているところであり、本年1月から3月末までの間に25金融機関から52件の報告があったが、いずれも発見後速やかに修正や代替措置が講じられており、混乱なく解消されている。

 なお、報告件数を業態別にみると、銀行:7銀行11件、協同組織金融機関等:7金融機関13件、保険会社:11会社28件となっている。

以上


(資料2)
 

金融機関の2000年問題に関する平成11年3月末の対応状況の集計結果

(預金等取扱金融機関、保険会社、証券会社、投信委託会社以外の所管業界)
 

 平成10年9月11日に政府・高度情報通信社会推進本部から出された、「コンピュータ西暦2000年問題対応計画」では、各省庁は所管の業態における対応状況について実態を把握の上、その結果を公表することとされており、これを受けて、預金等取扱金融機関、保険会社、証券会社、投信委託会社以外の所管業界についても、業界団体等に対して、傘下機関等の対応状況についての報告を要請していたが、その結果は概要以下のとおり。
 

(1) 前払式証票(プリペイドカード)発行者

 (社)前払式証票発行協会を通じて平成11年3月末時点の会員及び会員以外の前払式証票の発行専門会社の対応状況を調査したところ、88社中回答のあった76社からさらに対応不要とする10社を除く66社についてみると、発行業務にとって重要なシステムについて、47社(71%)が修正、模擬テストともに完了しており、残り19社についても、概ね平成11年10月までに修正、模擬テストとも完了するとしている。

 危機管理計画を作成あるいは明確に作成予定としているものは49社となっており、このうち24社が策定済としている。
 

(2) 抵当証券業者

 (社)抵当証券業協会を通じて平成11年3月末時点の会員業者の対応状況を調査したところ、68社中回答のあった66社からさらに対応不要とする10社を除く56社についてみると、重要なシステムについて、39社(70%)は修正、模擬テストともに完了しており、残り17社についても、遅くとも平成11年9月までに修正、模擬テストともに完了するとしている。

 危機管理計画を作成あるいは明確に作成予定としているものは29社となっており、このうち17社が策定済としている。
 

(3) 貸金業者

 (社)全国貸金業協会連合会を通じて平成11年3月末時点の状況をサンプル調査したところ、回答のあった147社から対応不要とする9社を除く138社についてみると、78社(57%)は、修正もしくは入替を完了しており、全体としては多くのところが平成11年10月には修正を完了するとしている。また、模擬テストの実施時期を明確にしているものは82社(59%)であり、危機管理計画を作成しているのは55社(40%)となっている。
 

(4) 投資顧問業者

 (社)日本証券投資顧問業協会を通じて平成11年3月末時点の会員業者の状況を調査したところ、225社(助言98社、一任127社)中回答のあった165社(助言40、一任125社)から、さらにコンピュータの使用なし、外部委託システムのみ使用等により対応不要とする88社を除いた77社(助言6、一任71)の状況をみると、62社(81%)は達成目標時期を定めて対応中であり、危機管理計画については52社(68%)の業者が作成済としている。
 

(5) 金融先物取引業者

 (社)金融先物取引業協会を通じて平成11年3月末時点の会員業者(銀行等別途調査対象となっている業者を除く)13社の状況を調査したところ、1社を除き対応策を策定し対応を行っており、9社は模擬テストを含めて対応が完了したとしており、他の業者についても概ね計画通り進捗しているとしている。また危機管理計画については9社が策定済としている。
 

(6) 短資業者

 短資協会を通じて平成11年3月末時点の会員(6社)の状況を調査したところ、全社とも重要なシステムについては計画通り98年12月末までに修正を完了しており、模擬テストについても、平成11年3月末までに完了している。また、全社とも日銀ネットのテストに参加しており、危機管理計画については4社が策定を完了している。
 

(7) 証券金融会社

 証券金融会社3社に対し、平成11年3月末時点の対応状況の報告を求めたところ、3社とも重要なシステムの修正は完了しており、内部テストについても、1社は98年12月までに完了しており、2社についても本年5~6月には完了するとしている。なお、危機管理計画については2社は作成中、1社は対応済としている。
 

(8) 信用保証協会

 信用保証協会52協会に対し、平成11年3月末時点の対応状況の報告を求めたところ、重要なシステムについて、45協会(87%)は修正を完了、38協会(73%)は内部テストを完了しており、概ね本年9月末までには対応を完了する見込となっている。なお、危機管理計画については、19協会は作成済、31協会が作成中となっている。
 

(9) (社)東京銀行協会(手形交換所)

 手形交換所システム(他に個人信用情報システム、全銀システム)を保有する東京銀行協会に対して、平成11年3月末時点の対応状況の報告を求めたところ、修正は完了しており、昨年12月以降、銀行等との接続テストを数度にわたり実施している(他の2つのシステムについても同様)。危機管理計画については、いずれのシステムについてもこれまでに作成を完了している。

(注 )手形交換所(平成11年4月現在615か所)のうち106か所については、全国で67ある各地の銀行協会で運営されているが、東京銀行協会によると日銀等と接続されているシステムを有するのは東京銀行協会のみ。同協会を除く66協会のうちコンピュータを保有する協会は33、このうち2000年問題の対応を要するものは6協会で、いずれも平成11年5月までには対応を完了するとしている。

以上


コンピュータ2000年問題対応に関する報告の集計表

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