第4章  金融検査の充実・強化のための方策

 

第1節  金融検査マニュアルの策定
 
I  金融検査マニュアル検討会について
 
.検討会の審議状況等(資料4−1−1〜5及び9参照)
 
(1)  検討会の発足経緯
 我が国金融システムの安定と再生を図り、内外の信頼を回復するためには、不良債権の処理、業務再構築やリストラ、情報開示等に取り組むとともに、検査マニュアル等の整備を通じて検査監督体制の一層の拡充を図っていく必要がある。こうした観点も踏まえ、平成10年7月、政府・与党は「金融再生トータルプラン(第2次とりまとめ)」において、「金融検査については、外部のノウハウを取り入れた検査マニュアル及びチェックリストを整備し、年内に公開する。」との方針を明らかにした。
 また、平成10年11月に策定された「緊急経済対策」においても、金融機関に対し実効性ある監督を行っていくために、検査マニュアルの整備・公表等を通じて検査・監督手法の一層の充実を図ることとされた。
 このため、当庁においては、法律家、公認会計士、金融実務家からなる「金融検査マニュアル検討会」を設置し、検討を進めることとした。
 
(2)  検討会の審議経過
 当検討会は、平成10年8月25日に、金融検査マニュアルについての検討を行うため、金融監督庁検査部のプロジェクトチームとして発足した。平成10年12月には、検討の成果として「中間取りまとめ」を公表し、これに対するパブリック・コメント等を募集した。その後、各界から寄せられたパブリック・コメント等を踏まえ更に検討を重ね、合計24回にわたる審議の結果、平成11年4月8日には、その最終的な成果として、金融検査マニュアル検討会「最終とりまとめ」を公表したところである。
 
.「中間とりまとめ」の概要
 平成10年8月以降、合計14回にわたり検討を行った成果として、平成10年12月22日に「中間とりまとめ」を作成した。
 「中間とりまとめ」においては、金融検査マニュアル案の作成に当たり、自己責任原則に基づく金融機関経営を補強するものであるとの考えを基本に、
 
 従来の当局指導型から、自己管理型への転換
 
 従来の資産査定中心の検査から、リスク管理重視の検査ヘの転換

を図ることに重点を置くとともに、グローバル・スタンダードも念頭に入れてとりまとめた。
 

.「パブリック・コメント」の概要
 金融検査マニュアルは、あくまでも検査官向けの内部通達ではあるが、ルールに基づく公正で透明な金融監督を確立するという観点から、平成11年2月1日を期限として、「中間とりまとめ」に対して、広く外部から意見を求めることとした。
 この結果、パブリック・コメントは、金融界のみならず、広く経済界産業界等も含め、計47先から、600以上の項目が寄せられ、その全てのコメントを平成11年2月23日に公表した。
 主なコメントとしては、
 
 マニュアルが金融機関を法的に拘束するとの誤解を与える。
 
 リスク管理等の責任を取締役会以外の機関へ委ねることを認めるべき。
 
 中小企業向け与信を含め、信用収縮が懸念される。
 
 金融機関の規模・特性を考慮する必要がある。

などが挙げられる。
 

.「最終とりまとめ」を作成するに当たっての見直しの方向
 「中間とりまとめ」に対するパブリック・コメントを踏まえ、平成11年2月以降、さらに10回にわたり検討を重ね、「最終とりまとめ」を作成した。
 「最終とりまとめ」を作成するに当たって見直した主な点としては、
 
 チェック項目の表現振りを修正した。
 
 取締役会で決定すべき重要事項以外のものに関し、取締役会以外の常務会等に委ねることについては、取締役会による明確な委任に加え、十分な内部牽制が確保される体制であれば認めることとした。
 
 機械的・画一的な運用を行ってはならない旨、規模・特性に応じた運用を行う旨を明確化した。
 
 信用リスク管理態勢の確認検査用チェックリストに、円滑な資金供給を行っているかをチェックする項目や金融検査マニュアルを理由とした不適切な取扱を行っていないかをチェックする項目の追加した。

ことが挙げられる。
 

.「最終とりまとめ」の概要(資料4−1−6〜8参照)
 
(1)  金融検査の基本的な考え方
 「最終とりまとめ」を作成するに当たっては、「中間とりまとめ」の考えを踏襲し、金融検査は自己責任に基づく金融機関の経営を補強するためのものであるとの考え方を基本に、
 
 従来の当局指導型から、自己管理型への転換を進める(検査は、金融機関自身の内部管理と会計監査人による厳正な外部監査を前提として、内部管理・外部監査態勢の適切性を検証するプロセス・チェックを中心とする)
 
 従来の資産査定中心の検査から、リスク管理重視の検査ヘの転換を図ることに重点を置くとともに、グローバル・スタンダードを踏まえ、諸外国の検査を巡る動向やバーゼル銀行監督委員会における議論をも勘案している。
 
(2)  各マニュアル案の概要
 
.法令遵守態勢(コンプライアンス)のチェックリスト
 取締役等に求められている役割等を明確にし、取締役等のコンプライアンスに対する自覚を求め、コンプライアンス重視の企業風土醸成により、金融機関としての公共性を発揮することを促している。
 
.リスク管理態勢
 
 リスク管理態勢のチェックリスト
 すべてのリスクに共通するチェック項目を、バーゼル銀行監督委員会の「銀行組織における内部管理体制のフレームワーク」の原則を踏まえ整理するとともに、リスク管理の基本を示し、取締役等にリスク管理に対する自覚を求めているほか、あるべきリスク管理体制の整備を促している。
 
 信用リスク管理態勢のチェックリスト及び信用リスク検査マニュアルチェックリストにおいては、ポートフォリオ管理の重要性や信用格付、信用リスクの計量化を促すとともに、信用収縮に配慮し、マニュアルを理由とした資金供給の拒否等をチェックする項目を設けている。
 また、マニュアルについては、旧大蔵省金融検査部の「資産査定について」をベースに、金融支援先を含めた債務者区分の判断基準の明確化や、業種の特性や特に中小企業向けの与信については代表者の資産等も勘案するなど、総合的な判断が必要な旨を明記している。
 償却・引当については、基準の明確化を図るとともに、貸倒実績率の算定方法の適切性、償却・引当水準の適切性についても検査を行うことを明記している。
 
 市場関連リスク管理態勢のチェックリスト
 旧大蔵省金融検査部の「市場関連リスク管理態勢のチェックリスト」と「海外拠点検査のチェックリスト」を一本化した上で、金融環境の変化に応じたレベルの向上を求めるとともに、新たに自己資本比率に係るマーケット・リスク規制やトレーディング勘定についてのチェック項目を設けている。
 
 流動性リスク管理態勢のチェックリスト
 昨今の金融情勢を踏まえ、特に資金繰りリスクに重点を置き作成しており、資金繰りの逼迫度に応じた管理手法等の整備や対応策の策定、調達先の集中の排除、危機時を想定した円滑かつ十分な調達手段の確保について記載し、適切な管理態勢の確立を促している。
 
 事務リスク管理態勢のチェックリスト
 従来の現物・実調検査を通じた事務管理態勢のチェックに代わり、本部検査等を通じて事務リスク管理態勢のプロセス・チェックを行うこととし、網羅的な事務規定の整備を明確化するなど、事務管理態勢の整備状況をチェックすることとしている。
 また、顧客保護の観点から融資先の財務情報など個別企業に関わる情報については特に慎重に扱うことを求めている。
 
 システムリスク管理態勢のチェックリスト
 旧大蔵省金融検査部の「コンピュータシステム及びコンティンジェンシープランチェックリスト」をベースとしているが、従来のシステム安全対策等を中心としたものからシステムの企画・開発体制や管理・運営体制の状況のチェックに重点を移し、システム戦略やセキュリティーポリシーの明確化を求めるほか、内部監査時の監査証跡の確認を促している。

 

II .コンピュータ2000年問題に関する金融検査におけるチェックリストについて(資料4−1−10参照)
 
 西暦2000年にコンピュータが、誤作動する恐れのある、いわゆるコンピュータ2000年問題については、その与える影響の大きさ、深刻さに鑑み、我が国においても各方面で様々な取組みが行われてきている。
 大蔵省金融検査部においても、金融検査におけるチェックポイントを整理したものとして、平成9年12月24日に、「コンピュータ2000年問題に関する金融検査におけるチェックリスト」を作成、公表した。しかしながら、2000年問題のために残された時間が少なくなるとともに、必要な対応のフェーズが変化してきていることから、平成10年8月25日には、「コンピュータ2000年問題に関する金融検査におけるチェックリスト(改訂版)」を作成し、公表した。
 チェックリストは、
 
 経営陣等の認識・関与及び取組体制
 
 現状評価及び対応策の策定
 
 システム等の修正及びテスト
 
 コンティンジェンシー・プランの作成
 
 その他

から構成されており、特に、システム等の対応スケジュール、コンティンジェンシー・プランに重点を置いて改訂している。

 

第2節  非常勤職員の活用
 
I  基本的な考え方
 
.当庁では、新しい検査体制の強化策のひとつの核として、民間から専門家の登用を図ることにより、有為な人材を確保するとともに金融を取り巻く専門的・先端的知識等を取り入れることとし、当庁発足に当たり、常勤職員として公認会計士5名を検査官に採用したほか、非常勤職員として商法学者(大学教授)1名を参事として登用した。
 
.これと機を同じくして、当庁発足直後の平成10年7月2日に政府・与党金融再生トータルプラン推進協議会が策定した「金融再生トータルプラン(第2次とりまとめ)」の中に、主要行への集中的な検査、早期是正措置に基づく厳正な対応とともに検査・監視・監督のための体制強化の方策として「広い意味での検査機能を充実強化するため、……中略……金融検査機能の代行や民間のノウハウの導入に係る新たな仕組みについて早急に結論を得る」ことが盛り込まれた。
 
.これを受けて、専門的なノウハウが必要な検査を実施するための検査手法の質的な向上とともに、検査官の量的な補完を図る観点から、民間の専門家を非常勤職員として採用し、常勤の職員と同様、国家公務員の一員として求められる守秘義務等の法的制約の中で検査に従事させることにより、広い意味での金融検査機能を代行させることとした。

 

II  非常勤職員の活用方法(資料4−2−1〜6参照)
 
.コンピュータ2000年問題については、2000年という期限が迫った緊急を要する課題であり、短期間に集中的に検査を実施する必要がある上、その検査内容がコンピュータ・システムに関連するという極めて専門性の高いものであることから、民間の専門家を非常勤職員として活用する分野と捉え、平成10年8月から9月にかけて、コンピュータなどの専門的知識を有する者を対象に公募したところ、23人から応募があった。面接等による厳正な選考の結果、同年10月1日付けで4人を非常勤職員として採用の上、検査手法に関する検討及び金融機関に対する専門的かつ集中的な検査に従事させている。
 
.また、コンピュータ2000年問題に関する金融検査において民間の専門家を活用して一定の成果が得られたこともあり、他の専門性の高い分野である「デリバティブ取引の実態把握及び市場リスク規制に関連して導入された『内部モデル』の検証検査」においても民間の専門家を活用する観点から、同年11月及び平成11年4月の2回にわたり、非常勤職員の募集・採用を行ない、デリバティブ取引及び内部モデルに関する金融検査等に活用している。
 
.なお、非常勤職員の募集・採用状況は別図のとおり。

 

 

第3節  その他
 
I  金融検査に関する研修等
 
.概要
 
 金融検査に従事する職員に対して、明確なルールに基づく公正で透明な金融行政実現の重要性を徹底するとともに、その専門能力の向上と高いモラルの保持を図る観点から、大蔵省財務局に所属する検査官を含めた職員に対する研修の充実・強化を図ることとし、従来から実施している検査部主催の職場研修等に加え、長官官房企画課に開発研修室を設置し、検査経験等に応じた体系的な研修等を実施している(資料4−3−1参照)。

 

 

.長官官房開発研修室主催の研修
 
(1)  金融検査実務初等・中等研修及び総合金融高等研修
 金融監督庁及び大蔵省財務局の金融証券検査官等を対象に、初めて金融検査に従事する者、3〜5年程度の金融検査を経験した中堅の検査官クラス、検査班を取りまとめる立場にある主任検査官クラスの3段階に分けて、それぞれの立場で必要となる専門知識や検査手法を身につけさせるために、1週間から2ヶ月程度の研修を実施することとした。
 特に、金融検査実務初等研修においては、講義形式による研修に加え、進行中の立入検査に参加させた。
 
(2)  デリバティブ研修
 金融取引の高度化が進展している状況に対応し、検査官の専門能力の向上を図る観点から、外部の専門研修機関に委託して、金融証券検査官・証券取引検査官を対象に、デリバティブ取引に関する基礎的知識についての研修を実施した。

 

.検査部主催の職場研修等
 
(1)  全体研修
 厳正で実効性ある検査を実施するとともに、早期是正措置の導入など金融の新しい流れに即応した検査手法や専門的知識を身につけさせる観点から、職場研修を充実させることとし、検査部に所属する全職員を対象に、年2回、外部講師及び内部講師からの講義形式により、金融関連のトピックスに関する研修を開催することとしした。平成10検査事務年度においては、早期是正措置、金融再生関連法、税効果会計、債権の流動化、資産の健全性の確認のための検査手法、コンピュータ2000年問題に関する検査手法等についての研修を開催した。
 
(2)  初任者研修及び基礎的査定実務研修
 昨今、金融情勢を取り巻く環境はますます厳しく、金融検査の重要性が高まっている状況を踏まえ、検査官の能力向上を図り、検査体制を充実させる観点から、長官官房開発研修室主催の長期研修とは別に、初めて金融証券検査官となる者を対象に、検査実務の基礎の習得を目的として、内部講師からの講義形式による初任者研修、さらには熟練した検査官による指導のもと実例に基づき資産査定を実習する基礎的査定実務研修を実施した。
 
(3)  その他の職場研修及び説明会等
 上記(1)・(2)に加え、金融検査を実施するに当たり必要となる実践的な知識具体的な検査手法等を習得させることを目的として、検査部に所属する職員を対象に、研修及び説明会等を実施した。
 主なものとしては、コンピュータ2000年問題や保険会社の責任準備金制度等についての専門的知識及び検査手順に関する研修・打ち合わせ、あるいは平成11年4月に金融検査マニュアル検討会において取りまとめられた金融検査マニュアルを周知するための説明会が挙げられる。

 

.大蔵省財務局所属の検査官等に対する研修及び説明会等
 
 大蔵省財務局における厳正で実効性ある検査の実施及び検査官等の能力向上を図る観点から、金融監督庁検査部職員と同様、大蔵省財務局職員で金融検査に従事している者を対象に、検査部主催により、金融監督庁における検査手法や検査に必要となる専門的知識等に関する説明会・打ち合わせ会議を実施しているところである。また、これと同時に、各財務局管内の金融機関等に対して金融検査マニュアルを周知するための説明会も開催している。

 

II  海外金融検査監督当局との情報交換
 
.人材交流
 
(1)  グローバル・スタンダードに則り、国際化・高度化の著しい金融取引等を的確に把握するためには、海外の主要金融検査監督当局との人材交流を通じて、双方の検査手法等について意見交換を行うことが重要であるとの考えのもと、米国財務省通貨監督局(米国OCC)及び英国金融サービス機構(英国FSA)との間で、それぞれの職員を約2週間の日程で相互に派遣し合うこととした。
 
(2)  その結果、米国OCCとの間では、平成10年10月に先方から職員2名を受け入れ、11月には当庁から職員3名を派遣する一方、英国FSAとの間では、平成10年10月に当庁から職員2名を派遣し、平成11年4月には先方から職員2名を受け入れ、それぞれの国における検査手法等について幅広く意見交換を行った。
 
(3)  特に、米国OCCから職員を受け入れた際には、別途、開催されていた金融検査マニュアル検討会におけるヒアリングの一環として、同国における検査マニュアルに関する説明が行われた。

 

.日英・日米銀行監督者会合(資料4−3−2参照)
 
(1)  これまでの経緯
 昭和63年10月に東京で開催された第5回世界銀行監督者会議の際に、米国から銀行検査監督当局間の協力関係を密にするため定期的な意見交換の場を設けてはどうかとの提案があったことを契機に、平成元年2月、当時の大蔵省銀行局・国際金融局と米国・英国両国の銀行検査監督当局との間で金融検査を含む銀行監督全般にわたる専門的事項について非公式な意見交換を行うための会合が開催された。
 この結果、英米両国の銀行検査監督当局との間においても、それぞれの会合が極めて有意義であり、定期的なものとしたいとの点で意見が一致し、金融監督庁が発足する平成10年6月までの大蔵省時代に、概ね年1回の頻度で、日米間では7回、日英間では8回の会合を開催した。
 
(2)  この1年間の開催実績
 金融監督庁発足後においても引き続き開催することとし、平成11年1月にロンドンにおいて、英国FSAとの間で、両国における最近の銀行監督行政等の動向等について非公式な意見交換を行うため、第9回目の会合を開催した。
 なお、米国当局との間の会合については、両国の都合が合わないため、この1年間は開催していない。

 

 

III .システム対応の充実・強化
 
.検査情報のシステム化(資料4−3−3参照)
 
 検査を効果的・効率的に実施する観点から、銀行・保険会社の決算関係資料や検査により得られた情報をデータベース化した業務システムの構築・整備を図るなど、検査手法の高度化や情報技術(IT=Information Technology)の発達に対応した検査情報のシステム化に努めているところである。

 

.情報システムを利用した事務の効率化
 
 上記のほか、検査業務の効率的な遂行に資するため、平成11年7月に始まる次期検査事務年度から、検査実施の際、金融機関に立ち入っている検査班にモバイル端末を携行させることにより、当庁の事務部門と各検査班との間の情報交換、意思疎通をより迅速かつ的確に行うこととしている。
 

第5章  今後の課題

 

I  今後の検査に当たってのポイント
 
 平成10検査事務年度においては、主要行、地方銀行、第二地方銀行の資産内容等を的確に実態把握するため、集中検査を実施したところである。金融機関の資産内容については、引き続きタイムリーかつ的確に実態把握する必要があり、平成11検査事務年度においては、検査官の増員が認められていることを踏まえ検査件数を高めるとともに、主要行等に対する集中検査の実施に重点をおいた結果十分にカバーできなかった他の業態(保険会社、外資系金融機関、信用金庫等)に対しても、順次、検査を実施していきたいと考えている。
 
.銀行等検査
 
 平成10検査事務年度における集中検査の結果等を踏まえ、検査頻度や検査内容等についてメリハリのきいた弾力的かつ効率的な検査を実施、その際モニタリングシステムとの連携を確保
 
 金融取引の高度化、国際化の進展を踏まえ、海外向け債権のリスク管理状況の実態把握やルール遵守体制、リスク管理体制の整備状況及びその機能発揮状況等についても的確に実態把握
 
 連結ベースでの監督を踏まえ、基本的に親銀行(今後予想される持株会社形態を含め)と銀行子会社等の銀行グループ・コングロマリットの一体的な検査を実施
 
 海外拠点についても、本店検査と合わせて、ルール遵守状況、リスク管理態勢に重点をおいた一体的な検査を実施

 

.証券会社等検査
 
 証券会社については、財務内容の厳正な把握、早期是正措置制度の基盤となる自己資本規制比率のチェックと合わせ分別管理状況に重点を置いた検査を実施

 

.保険会社等検査
 
 生命保険会社については、平成10検査事務年度に引き続き、財務内容等の実態把握のための検査を集中的に順次実施

 

.外資系金融機関検査
 
 外国金融機関の銀行拠点、証券拠点、信託銀行現地法人、投資顧問等をグループとして効率的な実態把握を行うため一体的に検査を実施

 

.コンピュータ2000年問題に関する検査
 
 コンピュータ2000年問題については、その対応のために残された時間も少なくなってきていることから、今後、システム対応の完了確認、作成されたコンティンジェンシー・プランの内容確認等に重点を置いた検査を実施

 

.銀行の内部モデルに関する検査
 
 市場リスク等の計測のために各行がそれぞれ採用しているリスク計測モデル(内部モデル方式)の妥当性等の実態把握等に関する検査を引き続き実施

 以上のような基本的な考え方に立ち、検査体制の整備状況等も充分考慮しつつ、機動的、弾力的な検査を実施していきたい。

 

II  検査体制の確立
 
.要員の確保
 
 検査官の増員に伴い、主要行に対しては、原則1年に1回の検査、地方銀行・第二地方銀行に対しては1〜2年に1回の検査、その他の業態については、3年に1回の検査を目標とし、出来る限り検査頻度を高めるとともに、あわせて頻度、深度にメリハリをつけていきたい。
 また、現在、国会に提出されている「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(案)」によって、信用組合の検査については、平成12年度から国の直接執行事務とされる見込みであり、これらに対応する検査体制の整備が必要と考えている。
 なお、金融機関の実態を的確に把握していくためには、海外拠点を含め全ての金融機関を原則毎年検査できるだけの要員の確保が理想である。今後、検査体制の一層の充実・強化のため引き続き整備を図って参りたい。

 

.部門制の採用
 
 従来、毎回の立入検査の都度あらたに検査班を編成し、各検査官は検査の都度、異なる業態・内容を対象として検査を実施していたが、今後、検査官の増員に伴い部門制を採用することにより、各業態ごとの特色に対応した、より専門性の高い深度ある検査を実施したいと考えている。これにより、各部門毎の業務の継続性、効率性が高まることが期待される。

 

.検査手法の向上
 
 検査官の数の増加に加え、あわせて効果的な検査手法の確立等質的向上も不可欠である。具体的には、
 
 検査マニュアルの活用、チェックリストの整備を通じ検査の効率性、統一性を確保
 
 検査監理機能の確立や審査部門の充実を図ることにより、検査の全体としての質的水準の維持・向上を図る
 
 海外主要金融検査当局の検査ノウハウの吸収や外部ノウハウを検査に活用するため、海外当局との人材交流を図るとともに適性ある民間の専門家を登用する

など、引き続きその充実・強化を図っていきたい。
 


第1編  本編(目次)へ
 
第2編
 
 資料編

 
概 要

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