〔別添〕 当局の指摘した事例は以下のとおり。 なお、指摘事項については、改善済み若しくは改善中である。
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1.自己査定態勢及び償却・引当態勢 | ||||
【評価】 | 自己査定態勢及び償却・引当態勢については、概ね整備されているが、今後、更に充実・強化に努める必要がある。 | |||
【事務フロー】 | ||||
自己査定から償却・引当までの事務処理としては、一般的に、(1)1次査定を12月末を仮基準日として営業店が実施し、(2)2次査定を本部審査部が実施した後、(3)与信監査部等で2次査定を監査している。また、(4)1月から3月の決算時までの修正を同様に行い、さらに、(5)4〜6月の後発事象で加味すべきものについて修正している。 この自己査定を踏まえ、償却・引当を行っている。なお、償却・引当には主計部、企画部等も関与している。
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2.自己査定基準 | ||||
【評価】 | 自己査定基準については、その内容の一部に問題が認められたので、大半の銀行に改善を求めたが、総体としては当局の「資産査定について」通達に対応しており、概ね妥当である。 | |||
【主な問題点】 (指摘事例:各項目に該当する銀行は1行若しくは数行である。) |
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(1) | 上場有配企業等の子会社の債務者区分を、子会社の財務内容等を勘案せずに親会社に準じた債務者区分を行う規程となっている。 | |||
(2) | 要注意先について、その財務内容等を勘案せず、一律に将来の一定期間の収益返済を控除している。 | |||
(3) | 破綻懸念先以下の債務者について、有価証券担保の時価から処分可能見込額を差し引いた額に対して III 分類にする規程となっていない。
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3.償却・引当基準 | ||||
【評価】 | 償却・引当基準については、その内容の一部に問題が認められたので、大半の銀行に改善を求めたが、総体としては日本公認会計士協会の「銀行等金融機関の資産の自己査定に係る内部統制の検証並びに貸倒償却及び貸倒引当金の監査に関する実務指針」に整合しており、概ね妥当である。 | |||
【主な問題点】 (指摘事例:各項目に該当する銀行は1行若しくは数行である。) |
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(1) | 関連ノンバンク等の償却・引当に関しては、一般の取引先と異なる基準を適用し、その一部を償却・引当の対象外としている。 | |||
(2) | 実質破綻先債権等の III 分類については、全額償却する規程となっていない。 | |||
(3) | 貸倒実績率の算出に当たって、算出根拠となるデ−タの大半を異常値として除外している。
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4.自己査定の正確性 | ||||
【評価】 | 自己査定の正確性については、関連会社や大口メイン先の分類誤り等、当局査定と自己査定が相違しているものが全行について認められた。 | |||
【主な問題点:各項目に該当する銀行は1行若しくは数行である。】 | ||||
(1) | 関連会社等について、その財務内容を勘案せずに、正常先、要注意先としたり、債務者区分を行わず「その他」としたりしている。 | |||
(2) | 大口メイン先や他行関連会社等について、その財務内容を勘案せずに、非分類若しくは II 分類にとどめている。 | |||
(3) | 債務者の信用格付制度に基づいて自己査定を行っているが、信用格付が適切に行われていない。 | |||
(4) | 自己査定の仮基準日以降決算日までの時点修正が適切に行われていない。 | |||
(単位:億円) |
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(注) | *1. | 総与信とは、貸出金、貸付有価証券、外国為替、支払承諾見返、未収利息、仮払金の融資関連科目をいう。 |
*2. | 「自己査定(2)」は、銀行法第24条で報告を受けた総与信の自己査定結果について、修正報告(誤謬等の訂正)を受けた後の計数。 | |
*3. | IV 分類には、信託勘定の分類債権(
1,180億円)が含まれている。
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● | 分類の正確性 (当局査定と自己査定の II 〜 IV 分類の合計額の差額を総与信額で除した率) (率) (該当行数)
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5.償却・引当の適切性 | ||
【評価】 | 償却・引当の適切性については、自己査定が正確に行われていないほか、償却・引当基準自体に問題が認められたことなどから、全行について償却・引当額の追加が必要であると認められた。 |
(単位:億円、%) |
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(注) 「当局査定償却・引当額(2)」は、当局査定に原則として各行の償却・引当基準を適用して算出したもの。
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● | 償却・引当の適切性 (不足率) (該当行数)
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6.ディスクロージャーの適切性 | |||
【評価】 | 不良債権(旧基準)については、若干の開示漏れ、区分誤り等が認められるが、概ね適切に開示されている。 リスク管理債権(新基準)のディスクロージャーについては、全銀協の統一開示基準により10年3月期から自主的に開示しているが、貸出条件緩和債権については、基準を各行が区々に定義しているため、統一性を欠く状況となっている。 |
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【主な問題点】 (新基準) 貸出条件緩和債権の開示基準の例 |
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(1) | スプレッド融資の場合、上乗せ金利が0%、0.125 %等未満の場合のみ開示している。( 各行が開示基準としているスプレッドは、 0.0% 〜 0.375 %の範囲に分布している。) | ||
(2) | 長・短期プライムレート基準融資の場合は、開示しない。
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7.自己査定結果の当局への報告の正確性(総与信の自己査定等の報告) | |||
【評価】 | 大半の銀行で正確性を欠いた報告が認められた。 | ||
【主な問題点】 | |||
(1) | 総与信に、不動産など与信と無関係なものを加算して報告しているものが認められた。 | ||
(2) | 集計等の誤りが認められた。 | ||
(3) | 総与信から一部の与信を除外して報告しているものが認められた。 | ||
(単位:億円) |
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(注1) | 償却・引当後の総与信ベ−ス |
(注2) | 7月17日付で公表した資料では、(2)の IV 分類
1,204億円は欄外注記となっている。
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8.監査の改善・強化の必要性 | ||
【評価】 | 自己査定基準、償却・引当基準の誤りがあったほか、大半の銀行で償却・引当不足等が認められたため、内部監査の改善・強化はもとより、外部監査についても改善・強化のための具体的方策を講じる必要がある。 |