特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等
の一部を改正する法律案要綱

 

 二十一世紀を展望した金融サービスに関する基盤整備として、投資者から資金を集めて市場で専門家が管理・運用する集団投資の仕組みについて、資金調達者の選択肢を拡大し投資者に対する多様な商品の提供を可能とする観点から、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律及び証券投資信託及び証券投資法人に関する法律について幅広い資産を対象とするとともに適切な投資者保護のための枠組みを整備するための改正を行うこととする。

一 特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の一部改正(第1条関係)

1.題名等

 (1 ) 題名の改正
 法律の題名を「資産の流動化に関する法律(以下「資産流動化法」という。)」に改めることとする。

 (2

) 目的の改正
 この法律は、特定目的会社又は特定目的信託を用いて資産の流動化を行う制度を確立し、これらを用いた資産の流動化が適正に行われることを確保するとともに、資産の流動化の一環として発行される各種の証券の購入者等の保護を図ることにより、一般投資者による投資を容易にし、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とすることとする。(資産流動化法第1条関係)

 (3

) 定義の改正
 不動産及び指名金銭債権等から財産権一般への流動化対象資産の拡大に伴い、特定資産の定義について、資産の流動化に係る業務として特定目的会社が取得した資産又は受託信託会社等が取得した資産をいうこととする。(資産流動化法第2条関係)
 特定目的信託制度の創設に伴い、特定目的信託、受益証券等の定義を新設するほか、資産の流動化等の定義に関する規定の整備を行うこととする。(資産流動化法第2条関係)

2.特定目的会社制度

 (1 ) 登録制から届出制への変更
 特定目的会社は、資産の流動化に係る業務を行うときは、あらかじめ金融再生委員会に届け出なければならないこととし、あわせて特定目的会社名簿制度を創設することとする。(資産流動化法第3条、第8条関係)
 資産の流動化に係る業務のうち資産対応証券の発行に先立って特定資産の取得等を行うときは、上記○の届出に係る事項のうち一定のものの記載等を省略することができることとする。(資産流動化法第7条関係)
 その他、届出事項の変更、業務の終了及び新たな資産流動化計画等の届出に関する規定の整備を行うこととする。(資産流動化法第9条〜第12条関係)

 (2

) 資産流動化計画の記載事項について、転換特定社債、新優先出資引受権付特定社債及び特定目的借入れ制度の創設等に伴う規定の整備を行うこととする。(資産流動化法第5条関係)

 (3

) 特定目的会社の設立
 特定目的会社の定款記載事項から資産流動化計画を除外するとともに、資産流動化計画について、すべての特定社員の承認を受けなければならないこととする。(資産流動化法第6条、第18条関係)
 特定目的会社の特定資本の最低額を、300万円から10万円にすることとする。(資産流動化法第19条関係)

 (4

) 社員の権利義務等
 特定社員による権利行使を制限するため、特定持分を社員総会の承認を受けないで信託することができることとする。(資産流動化法第31条の2関係)
 優先出資について、時価発行を行うための規定の整備を行うほか、消却・併合制度及び単位未満優先出資制度の創設等を行うこととする。(資産流動化法第37条〜第38条の2、第48条〜第49条関係)

 (5

) 特定目的会社の機関
 取締役の選任又は解任について、社員総会招集請求権及び社員提案権を定款により排除することができることとするとともに、優先出資社員の議決権を法定しないこととする。(資産流動化法第54条、第56条、第65条、第67条関係)
 社員総会における優先出資社員のみなし賛成に関する規定を設けることとする。(資産流動化法第60条関係)
 資産流動化計画違反について、社員等に社員総会決議の取消訴権及び取締役の行為の差止請求権を付与することとする。(資産流動化法第61条の2、第76条の2関係)
 監査役に非行取締役解任を目的とする社員総会招集権等を付与することとする。(資産流動化法第81条関係)

 (6

) 特定社債
 特定社債の払込みを取り扱う銀行又は信託会社に関する規定を設けることとする。(資産流動化法第110条関係)
 特定社債について、担保附社債信託法第4条に規定するもののほか、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の規定により質権の設定が登記される債権及び同法の規定により譲渡が登記される債権を物上担保の目的として追加することとする。(資産流動化法第113条関係)
 転換特定社債及び新優先出資引受権付特定社債に関する規定を設けることとする。(資産流動化法第113条の2〜第113条の5関係)

 (7

) 資産流動化計画の変更について、要件及び手続を定めるほか、買取請求権等の投資者保護のための規定を設けることとする。(資産流動化法第118条の2〜第118条の7関係)

 (8

) 優先資本の減少に関する規定を設けることとする。(資産流動化法第118条の8〜第118条の10関係)

 (9

) 業務
 特定資産の管理及び処分に係る業務について、原則として信託会社等に信託しなければならないこととする。(資産流動化法第144条関係)
 資産対応証券の募集等に係る業務について、特定目的会社の取締役又は使用人が行うことを禁止する一方、金融再生委員会への届出により特定資産の譲渡人が募集等の取扱いを行うことができることとする。(資産流動化法第150条の2〜第150条の5関係)
 特定目的会社は、特定資産を取得するために必要な資金の借入れを行うことができることとする。(資産流動化法第150条の6関係)
 特定目的会社は、資産の流動化に係る業務の遂行を妨げるおそれがある資産及び親会社の株式等を取得し、又は所有してはならないこととする。(資産流動化法第151条関係)

 (1

0)所要の監督規定の整備を行うこととする。(資産流動化法第154条〜第160条関係)


.特定目的信託制度
 資産の流動化を行うことを目的とし、かつ、信託契約の締結時点において委託者が有する信託の受益権を分割することにより複数の者に取得させることを目的とする特定目的信託制度を創設することとする。

 (1

) 届出
 信託会社等は、受託者として特定目的信託契約を締結するときは、あらかじめ金融再生委員会に届け出なければならないこととする。(資産流動化法第164条関係)
 資産信託流動化計画には、特定資産に関する事項、受益権に関する事項並びに特定資産の管理及び処分に関する事項等を記載しなければならないこととする。(資産流動化法第165条関係)
 資産信託流動化計画の変更に係る届出及び特定目的信託終了の届出に関する規定を設けることとする。(資産流動化法第166条、第167条関係)

 (2

) 特定目的信託契約
 特定目的信託契約について、特定目的信託たる旨、資産信託流動化計画及び原委託者の義務に関する事項等を定めなければならないこととするほか、受託信託会社等に対する指図の禁止等の条件を付さなければならないこととする。(資産流動化法第168条、第169条関係)
 受託信託会社等が行う資金の借入れ及び費用の負担に関する規定並びに特定目的信託の信託財産に属する金銭の運用方法に関する規定を設けることとする。(資産流動化法第170条、第171条関係)

 (3

) 受益権の譲渡等
 特定目的信託の受益権は譲渡することができるものとし、その譲渡は受益証券をもってしなければならないこととする。(資産流動化法第172条、第173条関係)
 受益証券を取得する者は、原則として、その取得により当該受益証券に係る特定目的信託契約の委託者の地位を承継することとする。(資産流動化法第176条関係)
 その他、権利者名簿等に関する規定を設けることとする。(資産流動化法第174条、第175条、第177条、第178条関係)

 (4

) 受益証券の権利者の権利
 特定目的信託の受益者及び委託者の権利は、権利者集会のみがその決議により行使できることとする。(資産流動化法第179条、第180条関係)
 権利者集会等に関する規定を設けることとする。(資産流動化法第181条〜第192条関係)
 権利者集会は、受益証券の権利者の中から代表権利者を選任し、受益証券の権利者のために特定目的信託の受益者及び委託者の権利の行使を委任することができることとする。(資産流動化法第193条関係)
 代表権利者を選任した場合は、代表権利者の権利に属する特定目的信託の受益者及び委託者の権利は、代表権利者のみが行使することができることとする。(資産流動化法第195条関係)
 代表権利者が存しない場合においては、受託信託会社等は、特定信託管理者を選任することができることとし、特定信託管理者は、受益証券の権利者のために自己の名をもって特定目的信託の受益者及び委託者の権利を行使することができることとする。(資産流動化法第199条関係)
 代表権利者及び特定信託管理者が存しないときは、各受益証券の権利者は、権利者集会の法定決議事項を除き、特定目的信託の受益者及び委託者の権利を行使することができることとする。(資産流動化法第200条関係)
 各受益証券の権利者に、受託信託会社等に対する差止請求権及び信託財産の管理方法の変更請求権を付与することとする。(資産流動化法第201条、第202条関係)

 (5

) 計算書類等の作成、受益証券の権利者の閲覧請求権等に関する規定を設けることとする。(資産流動化法第203条〜第207条関係)

 (6

) 特定目的信託契約の変更、解除及び終了等に関する規定を設けることとする。(資産流動化法第208条〜第218条関係)

 (7

) 受託信託会社等の権利義務等について、忠実義務及び善管注意義務を規定するほか、受託信託会社等の費用償還請求権及び信託報酬請求権等に関する規定を設けることとする。(資産流動化法第219条〜第225条関係)


.罰則
 所要の罰則規定の整備を行うこととする。(資産流動化法第232条〜第254条関係)

5.その他所要の規定の整備を行うこととする。

二 証券投資信託及び証券投資法人に関する法律の一部改正(第2条関係)

1.題名等

 (1 ) 題名の改正
 法律の題名を「投資信託及び投資法人に関する法律(以下「投信法」という。)」に改めることとする。

 (2

) 目的の改正
 この法律は、投資信託又は投資法人を用いて投資者以外の者が投資者の資金を主として有価証券等に対する投資として集合して運用し、その成果を投資者に分配する制度を確立し、これらを用いた資金の運用が適正に行われることを確保するとともに、この制度に基づいて発行される各種の証券の購入者等の保護を図ることにより、投資者による有価証券等に対する投資を容易にし、もつて国民経済の健全な発展に資することを目的とすることとする。(投信法第1条関係)

 (3

) 定義の改正
 「主として有価証券」から不動産を含めた幅広い資産への運用対象資産の拡大及び委託者非指図型投資信託制度の創設に伴い、委託者指図型投資信託、委託者非指図型投資信託及び投資信託等の定義を設けるほか、証券投資信託等の定義に関する規定の整備を行うこととする。(投信法第2条関係)
 投資信託委託業者の定義について、投資信託委託業(業として委託者指図型投資信託の委託者となること)又は投資法人資産運用業(業として登録投資法人の委託を受けてその資産の運用に係る業務を行うこと)を営む者をいうこととする。(投信法第2条関係)

2.投資信託制度

 (1 ) 投資信託委託業者の認可等
 投資信託委託業又は投資法人資産運用業のいずれかを営もうとする者は、金融再生委員会の認可を受けなければならないこととする。(投信法第6条関係)
 認可申請書の添付書類である業務方法書には、運用の指図又は運用を行う資産の種類等を記載しなければならないこととする。(投信法第8条関係)

 (2

) 投資信託委託業
 投資信託委託業者について、委託者指図型投資信託の受益者に対する善管注意義務を規定することとする。(投信法第14条関係)
 投資信託委託業者の行為準則について、運用対象資産の拡大に伴う規定の整備を行うこととする。(投信法第15条関係)
 投資信託委託業者は、運用の指図を行う投資信託財産について特定資産(有価証券等を除く。)の取得又は譲渡等が行われたときは、第三者に資産の価格等を調査させなければならないこととする。(投信法第16条の2関係)
 投資信託委託業者は、特定資産(有価証券等を除く。)について利益相反のおそれがある取引が行われたときは、当該取引に係る事項を記載した書面を当該運用の指図を行う投資信託財産に係る受益者等に対して交付しなければならないこととする。(投信法第28条関係)
 投資信託約款の変更について異議申立て手続に関する規定を設けるほか、異議を述べた受益者は自己の有する受益証券を買い取るべき旨を請求することができることとする。(投信法第30条、第30条の2関係)

 (3

) 投資法人資産運用業
 投資法人資産運用業を営む投資信託委託業者について、上記(2)と同様、善管注意義務、行為準則及び価格調査義務等に関する規定を設けることとする。(投信法第34条の2〜第34条の9関係)

 (4

) 投資信託委託業者のその他の業務
 投資信託委託業者は、一定の要件を満たす宅地建物取引業、不動産特定共同事業等を営むことができることとする。(投信法第34条の10関係)
 投資信託委託業者が投資信託委託業及び投資法人資産運用業以外の業務を営む場合の行為準則に関する規定を設けることとする。(投信法第34条の12〜第34条の15関係)

 (5

) 委託者非指図型投資信託
 一個の信託約款に基づいて、受託者が複数の委託者との間に締結する信託契約により受け入れた金銭を、合同して、委託者の指図に基づかず主として特定資産に対する投資として運用することを目的とする委託者非指図型投資信託制度を創設することとする。
 委託者非指図型投資信託契約は、一の信託会社等を受託者とするのでなければ、これを締結してはならないこととする。(投信法第49条の2関係)
 信託会社等は、委託者非指図型投資信託の信託財産を主として有価証券に対する投資として運用することを目的とする委託者非指図型投資信託契約を締結してはならないこととする。(投信法第49条の3関係)
 委託者非指図型投資信託について、委託者指図型投資信託と同様、委託者非指図型投資信託契約の締結及び受益証券等に関する規定を設けることとする。(投信法第49条の4〜第49条の7関係)
 委託者非指図型投資信託に係る業務を営む信託会社等について、投資信託委託業者と同様、善管注意義務等、行為準則及び価格調査義務等に関する規定を設けることとする。(投信法第49条の8〜第49条の11関係)

3.投資法人制度

 (1 ) 投資主の請求により投資口の払戻しをしない旨を規約に定めた投資法人は、投資法人債を募集することができることとし、投資法人の規約記載事項として、借入金及び投資法人債発行の限度額を定める等、その要件及び手続等に関する規定を設けることとする。(投信法第67条、第139条の2〜第139条の6関係)

 (2

) 設立企画人、一般事務受託者及び資産保管会社について、投資法人に対する善管注意義務を規定することとする。(投信法第70条、第112条、第209条関係)

 (3

) 資産保管会社について、投資法人の資産に関する分別保管義務を規定することとする。(投信法第209条の2関係)


.罰則
 所要の罰則規定の整備を行うこととする。(投信法第228条〜第251条関係)

5.その他所要の規定の整備を行うこととする。

三 所得税法の一部改正(第3条関係)



.特定目的信託及び投資信託について、信託財産に帰せられる収入及び支出の帰属の原則を適用しないこととする。(所得税法第13条関係)


.一定の要件を満たす特定目的信託が国内において支払を受ける一定の利子等又は配当等については所得税の源泉徴収を行わないこととする。(所得税法第176条関係)

3.その他所要の規定の整備を行うこととする。

 法人税法の一部改正及び経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律の一部改正(第4条、第5条関係)



.特定目的信託及び投資信託について、信託財産に帰せられる収入及び支出の帰属の原則を適用しないこととする。(法人税法第12条関係)


.特定目的信託及び投資信託(証券投資信託及び証券投資信託以外の投資信託のうち一定の要件を満たすものを除く。以下「特定信託」という。)の各計算期間の所得について、法人税の課税対象とし、その課税標準及び税率等を定めることとする。(法人税法第2条、第15条の2、第82条の2〜第82条の17関係)

3.その他所要の規定の整備を行うこととする。

五 租税特別措置法の一部改正(第6条関係)



.特定目的信託及び投資信託に係る受益証券の収益の分配につき、これらの信託に係る受益証券又は信託財産の内容に応じた課税を行うこととする。


.一定の要件を満たす特定目的会社若しくは投資法人又は投資信託が国内において支払を受ける一定の利子等又は配当等については、所得税の源泉徴収を行わないこととする。(租税特別措置法第9条の3関係)


.一定の要件を満たす特定目的会社又は投資法人が支払う利益の配当の額を、当該特定目的会社又は投資法人の所得の金額の計算上損金の額に算入することとする。(租税特別措置法第67条の14、第67条の15関係)


.一定の要件を満たす特定信託の収益の分配の額を、当該特定信託の所得の金額の計算上損金の額に算入することとする。(租税特別措置法第68条の3の3、第68条の3の4関係)


.特定目的会社が資産流動化計画に基づき特定資産を取得した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置について、適用対象となる特定目的会社の要件等の見直しを行うこととする。(租税特別措置法第83条の7関係)

6.その他所要の規定の整備を行うこととする。

六 地方税法の一部改正(第7条関係)



.特定目的信託及び投資信託に係る受益証券の収益の分配につき、これらの信託に係る受益証券又は信託財産の内容に応じた課税を行うこととする。(地方税法第23条関係)


.特定目的信託及び投資信託については、信託財産について生じる所得の帰属の原則を適用しないこととする。(地方税法第24条の3、第72条の3、第294条の3関係)


.一定の要件を満たす特定目的会社若しくは特定目的信託又は投資法人若しくは投資信託が支払を受ける一定の利子等については、道府県民税利子割を非課税とすることとする。(地方税法第25条の2関係)


.特定信託の各計算期間の所得について、法人事業税の課税対象とし、その課税標準及び税率等を定めることとする。


.特定目的会社が資産流動化計画に基づき取得する一定の不動産に係る課税標準の特例措置について、適用対象となる特定目的会社の要件等の見直しを行うこととする。(地方税法附則第11条関係)

6.その他所要の規定の整備を行うこととする。

七 宅地建物取引業法の一部改正(第8条関係)

 一定の要件を満たす宅地建物取引業者が、投資信託契約等により宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介を行う場合において、受託会社等に対する重要事項説明義務及び書面交付義務を免除する等、不動産に関する投資運用の円滑化のための所要の規定の整備を行うこととする。

八 そ の 他



.施行期日
 この法律は、別段の定めがあるものを除き、公布の日から起算して六月を超えない範囲において政令で定める日から施行することとする。(附則第1条関係)


.経過措置等
 その他所要の経過措置等に関する規定を設けることとする。



 

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