企業会計審議会 総会 議事録

日時:平成11年10月22日(金)午後2時00分〜午後3時54分

場所:大蔵省第四特別会議室

 

○若杉会長 定刻になりましたので、これより企業会計審議会の総会を開催いたします。

 委員の皆様方には、お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 議事に入ります前に、大蔵省に異動がございましたので御紹介申し上げます。

 7月8日付けで、金融企画局長に福田 誠氏が就任されております。

○福田金融企画局長 福田でございます。よろしくお願いいたします。

○若杉会長 同じく、大臣官房審議官に窪野鎮治氏が就任されております。

              〔窪野審議官 立礼〕

○若杉会長 大臣官房参事官に高木祥吉氏が就任されております。

○高木参事官 よろしくお願いいたします。

○若杉会長 東京証券取引所監理官に新原芳明氏が就任されております。

○新原監理官 どうぞよろしくお願いいたします。

○若杉会長 総務課長に三國谷勝範氏が就任されております。

○三國谷総務課長 よろしくお願い申し上げます。

○若杉会長 また、企業会計審議会の事務局でございますが、市場課参事官には大藤俊行氏が就任されております。

○大藤参事官 よろしくお願いいたします。

○若杉会長 ここで、福田局長から、一言御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○福田金融企画局長 金融企画局長の福田でございます。審議会総会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。

 企業会計審議会の委員の皆様方には、企業会計制度及びディスクロージャー制度の整備・改善のために、常日頃精力的な御審議をいただいております。大変御世話になっておりまして、この席で厚く御礼申し上げたいと存じます。

 申し上げるまでもございませんが、我が国を取り巻く厳しい経済環境の中で、私どもとしては、金融システム改革をここ数年来真剣に取り進めてまいりました。昨年、金融監督庁ができ、また、金融再生委員会ができましたが、金融制度と証券取引制度の企画立案につきましては大蔵省が所管するということになっております。従いまして、金融システム改革をぜひ着実に進めるために、いつも言われております自己責任原則を確立するということも必要でございまして、何をおいても、公正で透明なディスクロージャー制度、そして企業会計制度の整備が重要と考えております。経済の基本中の基本でございまして、この決め方によって大きな影響も出てまいると思っております。

 企業会計審議会におかれましては、ここ数年で多くの意見書を取りまとめていただいておりまして、本日の総会では、「外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書」をお取りまとめいただくというふうに伺っております。

 今年の1月には、金融商品の会計基準をお取りまとめいただきまして、これに対応して、今般、外貨建取引の換算方法などが見直されることになりまして、グローバルな国際的に通用する会計基準が整備されることになりまして、大変意義深いと思っております。

 また、本日は、今後の審議事項についても検討していただけるということでございます。国際的にも通用する会計基準の整備が現時点での肝要な課題となっておりますので、ぜひ忌憚のない御意見を頂戴いたしたいと存じます。

 最後に、今後とも皆様方の御協力をお願い申し上げまして、大変簡単でございますが、御挨拶にさせていただきます。

 どうぞよろしくお願いいたします。

○若杉会長 どうもありがとうございました。

 次に、当審議会の議事録の公開につきましてお諮りいたしたいと思います。

 御案内のように国は、公文書公開制度を設けまして、国が保管しております公文書をディスクローズするということに決まっております。当審議会の透明性の向上を進めるというような趣旨から、当審議会におきましても、既にこれまで議事要旨の公開は行ってまいりましたが、本日の総会以降、総会及び部会の議事録を公開することといたしたいと考えております。

 なお、発言者の名前も含めまして議事録を公開いたしたいと考えておりますが、企業の非公表情報など、公表することに差し障りのあるような事項につきましては、お申し出いただきまして、公表されないように取り計らいます。そんなことでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、本日の総会から議事録を公開させていただくことといたします。

 本論に入りまして、これより議事に入りますが、まず、今年の2月から、金融商品部会において検討していただいております「外貨建取引等会計処理基準」の改訂につきまして、同部会において改訂案が取りまとめられましたので、御報告いただき、審議いたしたいと思っております。

 それでは、金融商品部会の大塚部会長から審議経過等について御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○大塚金融商品部会長 大塚です。よろしくお願いいたします。

 金融商品部会における「外貨建取引等会計処理基準」の改訂に関する審議経過並びにその結果について御報告いたします。

 まず、審議経過について御報告いたします。

 本年1月に当審議会におきまして「金融商品に係る会計基準」が公表され、金融商品の時価評価が導入されましたことを受けまして、引き続き金融商品部会におきまして、「外貨建取引等会計処理基準の改訂」について審議を行うこととされました。当部会では本年2月から検討を開始し、本年6月に草案を取りまとめ、これを公開草案として公表し、各界からの意見を求めました。この公開草案に対して寄せられました意見を踏まえまして、さらに審議を行い、最終的な改訂案を作成いたしました。

 改訂のポイントといたしましては、基本的には、公開草案から大きな修正は行っておりませんが、主要な点は次のとおりでございます。

 まず、第1番目は、外貨建金銭債権債務につきましては、短期・長期の区分をせずに、決算時の為替相場により換算すること。

 2番目は、ヘッジ会計については、その要件を金融商品の会計基準に委ねた上、当面、従来の振当処理も認めるとしたこと。

 3番目は、有価証券につきましては、子会社及び関連会社株式を除いて、決算時の為替相場により換算すること。

 4番目は、為替換算調整勘定は資本の部に計上すること。

 最後に、その他、いわゆる多通貨会計を採用できるとしたことでございます。

 また、公開草案からの修正点といたしましては、一つは、その他有価証券に属する債券の換算差額を損益計上できるとしたこと。

 2番目は、償却原価法における償却額の換算を期中平均相場によるとしたこと。

 3番目は、子会社への純投資のヘッジから生じる換算差額を為替換算調整勘定に含めて計上できるとしたことなどでございます。

 改訂の概要は、以上のとおりでございますが、お手元の資料により、公開草案との比較した個々の事項につきましては、事務局から説明していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○多賀谷課長補佐 それでは、内容にわたりまして若干付け加えて御説明を申し上げます。

 資料でございますが、資料1、これは改訂案といいますか、改訂の正本でございます。現在まだ案という形にさせていただいております。それから、資料1に付属するものといたしまして、参考が1、2、3とございます。参考1は、ただいま部会長から説明がありましたポイントについて、ごく簡単にまとめたものでございます。参考2は、現行の基準と今般の改訂案との比較をしたものでございます。参考3は、6月18日に公表いたしました公開草案と改訂案との比較した表でございます。

 それでは、公開草案との比較を中心に御説明をさせていただきます。参考3を御覧いただきたいと思います。字句の修正は省かせていただきまして、主に内容にわたる部分を中心に、ページを追って御説明させていただきます。

 1ページ目の最後の部分、下線のところは、これは時間の経過によりまして経緯が変更されました。最終意見書でございますので、その旨、文章を変更したということでございます。

 それから、2ページ目、「改訂の基本的考え方」の換算基準の基本的考え方につきましては、ただいま部会長から御説明がございましたとおり、参考1の改訂のポイントの1でございますが、金銭債権債務のレートは基本的には新基準では、決算時レートという形で整理をしておりまして、ここは変更はございません。

 それから、3ページ目でございますが、その基本的な決算時レートの中身でございますけれども、金銭債権債務につきましては、(1)にございますように何ら変更はございません。

 (2)でございますが、ここは有価証券につきまして記述した部分でございますけれども、公開草案におきましては、いわゆる保有目的、参考1で見ていただきますと、有価証券の中の四つの区分がございますが、これを一つにして記述をしていたわけですが、非常に分かりにくいのではないかというような御意見もございまして、これを分けて記載してございます。

 意見書案の(2)では、満期保有の債券につきまして区分して書いておりまして、その内容につきましては公開草案と変わりがございません。基本的には決算時のレートで換算をするということ。それから、再投資に充てるために保有しているもの。外貨建の例えば社債を保有しており、これをもって将来、固定資産を取得するといったような場合には、その換算差額を再投資する資産の取得価額に含めて調整をする。国際会計基準等ではベーシス・アジャストメントと言われているような考え方もとれるということを示しているところも変更はございません。ここは現行の基準から見ると、新しく付け加わったことで、改訂された部分に当たります。

 この点は公開草案に対する意見にもございましたが、必ずしもここに言います社債に限らず、いわゆる金銭債権等につきましても同じような考え方がとれるということと解釈されると考えております。

 それから、(3)でございますが、(3)は、売買目的の有価証券及びその他有価証券、これはいずれも金融商品の会計基準におきましては、時価で評価をするということになっているものでございます。これらにつきましては時価評価でございますので、当然為替レートも決算時、期末のレートで換算をしていただくということになろうかと思います。

 意見書案の方の(3)の第2番目のパラグラフでございますが、ここは、その他有価証券に属します債券、ボンドでございますけれども、この換算につきましては、その時価の変動全体の評価額を見るか、あるいは取得価額に係る為替の変動とその債券そのものの外貨での時価の変動とを区別して見るかという、二つの考え方がございます。

 公開草案におきましては、これは総合的に一緒に見るということでございまして、その換算差額といいましょうか、時価評価差額に換算も含めて、金融商品の会計基準によりますと、資本の部に表示するということになっておりました。この点につきましては意見書案では、それに加えまして、下から5行目でございますが、但書がございますが、「評価差額には外国通貨による時価の変動を決算時の為替相場で換算したことにより生じる差額と外国通貨による取得原価を決算時の為替相場で換算したことにより生じる差額がある。」としまして、これらを分けて、取得原価に係る為替の変動分だけはその期の為替差損益に含めるという方法も認めるということに変更をしております。

 このような方法は国際会計基準ではとられておりますが、米国の基準では、もともとは公開草案の考え方がとられておりまして、必ずしも一致をしていないわけでございます。

 この辺につきましては、その後の審議の中でも幾つかの御意見が出されましたが、いわゆるその他有価証券自体が非常に保有目的が多義的であるということから、必ずしも時価の変動だけを捉えるというわけではなくて、為替の変動の部分は、いわゆる通貨関係のデリバティブ等でヘッジをするということもあるのではないかというような御意見もございましたので、これを分けて認識をするということもできるというふうに修正がされております。

 その点は4ページの一番上の3ページから続いている部分に書いてございますが、「その他有価証券に属する有価証券は、その保有目的が多義的であること等から、このような考え方も考慮し、債券については取得原価に係る換算差額を損益に計上することもできることとした。」ということになっておりまして、外貨額に対するヘッジといいましょうか、為替変動のヘッジをするということもできるということになろうかと思います。

 次に、「ヘッジ会計との関係」でございますが、ここは説明の文章、中ほどより若干下ですが、「キャッシュ・フロー・ヘッジと共通する考え方に基づき、」という文章を少し丁寧に補充したということでございまして、ヘッジ会計については、金融商品の会計基準によるという考え方は公開草案と変わっておりません。

 それから、5ページ目でございますが、「為替換算調整勘定の処理」。これも公開草案を修正することなく、従来といいますか、現行の基準では資産又は負債に計上しております為替換算調整勘定を今後は資本の部に計上するということになっております。

 この点につきましては、諸外国でもこのような方法になっているということでございます。ただ、御承知のこととは存じますが、為替換算調整勘定につきましては、在外子会社に投資をした親会社の子会社株式の評価は、親会社の単体決算ではこれは原価評価でございますので、特に換算上も取得時レートということになっております。従いまして、連結決算をする場合に、在外子会社の財務諸表、例えばドル建の財務諸表を円に置き換える、換算するというときに、後で出てまいりますけれども、その資産と負債は決算時のレートで換算をしますが、子会社の資本はその投資をしたとき、基本的には投資をしたときのレートで換算をしますので、貸借の換算のずれから生じるいわゆる投資の含み損益と申しましょうか、換算上の含み損益がこの為替換算調整勘定ということで貸借の調整に使われているわけでございます。これを資本に入れるということになりますと、連結決算上の資本の額の中に子会社に対する投資に係る含み損益が調整される。資本が増えたり、あるいは含み損がある場合には減ったりということで、子会社の投資がそこに含み損益という形ではございますが、反映をされるという形になってまいります。この点は現行の基準と非常に大きく変わる点でございます。公開草案とはここは変更はされておりません。

 それから、6ページ目でございますが、非常に早くて申し訳ございませんが、「改訂基準の要点」は、上記の改訂の基本的考え方を受けまして、個々の部分につきまして説明を加えているところでございます。

 ここでは、1.取引発生時の処理、それから、2.換算の区分につきましては、公開草案と変更はございません。取引発生時には取引時の為替相場により換算し、金銭債権債務については、期末時に現行のように長期と短期という区分をせずに、全て基本的に決算時の為替相場で換算をするという趣旨は、変更がございません。

 3でございますが、為替予約につきまして、ヘッジ会計を適用する場合の取扱いでございます。

 ここでは、振当処理という、これは一種我が国独自の方法かとも思いますが、先物為替予約等のレートで現在の取引の金額を固定するということで、いわゆる円貨取引のようにその金額を確定して帳簿につけるという方法でございます。このような方法は、今後も当面の間、我が国では使えるということにしております。

 ただし、ヘッジ会計の要件というのは、金融商品に係る会計基準にございますので、その詳細につきましては、どのような場合にこのような処理ができるかということについては、金融商品の会計基準におけるヘッジ会計の包括的要件を満たした上で使っていただくという形にしております。

 それから、最後の部分で文章が追加されておりますのは、現行の外貨建基準では、通貨スワップの契約につきまして非常に詳細な規定が置かれております。

 スワップ契約のやり方には、非常にバラエティーがあるということになっておりますが、大きく三つのやり方を示しておりまして、一つは、為替予約と同等な通貨スワップ。もう一つは、元本と返済金額の為替レートを一致させまして、あたかも円での借入れ、貸付が行われたかのように外貨建の貸付金や借入金を円貨額とフィックスするために行われるスワップ契約。それから、もう一つは、もう少し投機的と申しましょうか、そういう為替予約のレートですとか、元本額を固定するといったとは違う任意のレートでスワップ契約をするという場合でございます。

 この任意のレートでスワップ契約をするということにつきましては、これまでもレートを補正した上で振当処理を認めるという処理は認めておりましたけれども、これは金融商品におけるヘッジ会計の要件を基本的には満たさないのではないかということになりましたので、今般は、このような為替予約のレートとは異なるスワップレートを用いている場合には、基本的には振当処理は認めないということを明確にさせていただきました。その点の説明を付け加えたものでございます。

 それから、7ページでございますが、4のところに付け加わっておりますが、これは先ほど御説明いたしましたその他有価証券に属する債券については、取得原価に係る換算差額を当期の為替差損益として処理することができるといった部分をもう一度繰り返したものでございます。

 それから、8ページでございますが、6でございます。これは外貨建取引に関する注記事項でございますが、公開草案では、基本的には決算時の為替相場により換算されるような基準の変更が行われますので、いわゆる原価評価と申しましょうか、取得時のレートで換算するものがなくなるので、決算時の為替相場による円換算額の注記は求めないということにして、その上で、債権債務の額のみを注記するということになっておりましたが、その後寄せられた意見では、連結財務諸表では、いわゆる在外子会社が入る。在外子会社は当然全ての資産・負債を外貨で持っているというのが原則でございますので、これの外貨額を注記するということに意味があるのかどうかという問題。

 それから、金融商品という幅広い包括的な基準ができておりますので、外貨建の債権債務なり有価証券、あるいはデリバティブにつきましても、幅広い金融商品の情報提供という中で考えていくべきではないかというような御意見を踏まえまして、意見書案では、注記については削除をするということになっております。

 しかしながら、今申し上げました点につきましては、項目6の下から3行目からにございますが、「なお、外貨建有価証券その他の外貨建金融商品について必要と認められる注記事項については、金融商品全般に係る注記事項のなかに含まれることとなる。」ということでございますので、例えば外貨建有価証券であれば、有価証券に関する金融商品の注記事項に当然含まれる。デリバティブも同様でございます。そのほか、例えば長期借入金等についても必要な附属明細書がございますので、現行の基準の中でもそういうものはそちらの方で注記あるいは開示をしていただくということになろうかと思います。

 従いまして、注記の方法は変わりますが、必要な注記は従来どおり、いずれかの場所で引き続き行われるというふうに考えております。

 それから、7でございますが、在外支店の財務諸表の換算につきましては、この説明を詳しく付けております。基本的には現行の考え方、実務的な処理を変えようということではございません。

 ただ、この中で申し上げておりますのは、基準の形式として、まず、在外支店は支店でございますので、本店と同様の処理をするということが大原則である。その上で、外貨建の財務諸表を作っているというところに着目しまして、幾つかの特例を置くという形に修正をしております。その点をここで説明を加えております。

 いま一つは、損益項目の換算につきましては、国際的にも期中平均相場が原則であるということでございます。決算時の為替相場も使えるようにはしておりますが、基準の上では原則は期中平均相場だということを明確にしまして、国際的な会計基準との調整を図らせていただいております。

 それから、8番目、在外子会社の財務諸表の換算でございますが、これにつきましても、損益項目の換算は期中平均相場によるということを原則とするというのを明確にしております。

 それから、9ページの上から4行目、「また、」以下の部分でございますが、ここは子会社の純投資のヘッジに関するヘッジ取引を認め、そこから生じる為替換算の換算差額につきましては、為替換算調整勘定に含めて処理する方法をするということをできることとしております。

 これは非常に技術的な問題でございますが、先ほど御説明を申し上げましたように、在外子会社の資本金は当然アメリカであればドルで資本金が構成をされております。このドルの変動というのが連結財務諸表の上では為替換算調整勘定ということで、円換算した場合の換算含み損益として資本の増減をもたらすという結果になります。

 そこで、その資本の増減がもたらされないように、子会社に対するドルベース、仮にドルであればドルベースの資本金の金額を為替変動をヘッジをするために、為替予約ですとかそのようなデリバティブを使ってヘッジをするということを行った場合には、そのヘッジ取引から生じる為替の差損益というのは、その子会社の資本金の増減と相殺をされるという関係になるはずでございますので、これを一つのヘッジ取引と認めまして、為替換算調整勘定、すなわち資本の額においてこれをネットをする。資本のぶれをヘッジするという効果を表現できるようにしたところでございます。この辺につきましても公開草案に対して意見がございましたので、それを踏まえて修正をされております。

 なお、この最後の部分でございますが、「税効果会計の適用に際しては慎重な配慮が必要である。」となっております。この点は公開草案のときと考え方は変わっておりませんが、公開草案に対しましては、税効果会計を適用すべきであるという意見と、すべきでないという意見と両方寄せられております。

 子会社株式につきましては、まさに子会社をやめるというのは経営判断の問題でございまして、その子会社株式でなくなる、あるいはそれを売却をする、清算をするというときまでは、その資本金の返還が親会社にとっては受けられませんので、従いまして、その子会社を清算したときに利益が出るか、損が出るか、為替換算の含み損が実現するということは極めてまれであると考えられます。従いまして、通常の状態、子会社である状態でそれを税効果会計を適用しますと、余り実際的でない含み損益に税効果会計が適用されるということになるのではないかというような考えが強かったと思います。

 従いまして、子会社を処分したとき、あるいは処分するということが決まったときというように具体的にこの投資の損益が実現する可能性が高くなったとき以外は基本的には税効果会計を適用しないという意味で、この「慎重な配慮が必要である。」ということになっていると思います。この辺につきましては、今後、どのような場合には可能かということについては、実務指針等で明確にさせていただくことになるのではないかと考えております。

 それから、「改訂基準の適用」でございますが、平成12年4月1日以後開始する事業年度から適用します。この点も変わっておりません。

 なお、有価証券でございますけれども、有価証券につきましては、いわゆる長期保有等のその他有価証券に属します有価証券の時価評価は、平成13年4月1日以後開始する事業年度から行う。平成12年からでもできますが、原則は13年からとなっておりますので、換算につきましても、時価評価を行ったときから換算も決算日レートに変えるということにしております。

それから、2の為替換算調整勘定の表示、資本の部に表示することにつきましては、この基準が固まりました以後、早期の適用も妨げないということにしております。

 それから、10ページでございますが、3に「多数の外貨建金融資産又は外貨建金融負債を保有している金融機関等においては、金融商品に係る会計基準及び本基準の趣旨を踏まえ、より合理的な会計処理及び表示方法を採用することが認められる。」という文章が付け加わっております。

 これは主に金融機関につきまして、金融商品の会計基準におきましても特殊なヘッジ取引、包括的なヘッジ取引について、これをより合理的であれば認めるということにしておりますので、その金融商品の会計基準に対応して、換算につきましても同じような考え方を示したということでございます。従いまして、金融機関につきましては、この基準より別の合理的な基準、あるいはヘッジ会計の方法を採用する余地があるということでございますが、いずれの方法がより合理的なものかということについては、今後、実務指針等で検討していただくことになろうかと考えております。

 その点につきましては4に、公認会計士協会が今後、実務指針を検討していただくということでお願いをしているところでございます。

 11ページ以降は、ただいま申し上げました基本的考え方に基づきまして修正をされた会計基準本体とその注解でございます。こちらにつきましては、ごく簡単に御説明させていただきます。

字句の修正は飛ばさせていただきますと、ただいま申し上げましたことが反映されている部分といたしましては、13ページ、「財務諸表の注記」がございます。この注記のところを削除したところでございます。ここは公開草案と違っております。

それから、14ページ、「在外支店の財務諸表項目の換算」でございますが、2のところでございます。ここも公開草案では、「すべての財務諸表項目について決算時の為替相場による」という特例を設けておりますが、意見書案では、「貸借対照表項目について決算時のレート」、「損益項目についても」ということで、つまり損益項目については本来は期中平均相場によるということを前提として、非貨幣性項目、すなわち固定資産、棚卸資産等に重要性がないという場合には、損益項目についても特別に決算時の為替相場によることができるというふうに考え方を整理をしてあります。

 それから、15ページの「在外子会社等の財務諸表項目の換算」につきましても、3のところでございますが、「収益及び費用」で、「原則として期中平均相場による」ということにした上で、「ただし、決算時の為替相場のよることも妨げない」というような文章に修正をさせていただいております。

それから、16ページ以降、注解でございますが、注解につきまして字句の修正が若干ございますが、内容的には18ページ、「為替予約等の振当処理について」というところでございますが、公開草案では最後に3行、「利息に相当する部分の金額については、合理的な方法により処理する。」という文章が付いております。これは先ほど申し上げましたように、スワップレートが為替予約レートと非常に異なっている場合には、それを修正をして、利息相当額は補正をしますという意味でございましたが、これは今回の会計基準ではヘッジ会計とは認めないということでございますので、従いまして、この部分は必要ないのではないかという御意見がございましたので、それで削るということにしたものでございます。

 それから、注8は、「直物為替相場」ということに直しております。これはデリバティブ等がございますので、先物相場と混同を避けるために正確に表現をしたものでございます。

 それから、19ページでございますが、注9でございます。これは償却原価法による償却額。いわゆる満期保有の債券等につきましては、その債券に示されております券面額、額面でございますが、額面と異なる金額で取得をした場合には、当然その差額を期間にわたって償却をするということが行われるわけでございます。これを償却原価法と申しておりますが、外貨建の債券の場合には、外貨で償却原価を行うということになろうかと思います。従いまして、取得時のドルであれば、ドルの取得価額とドルの券面額との差額をドルベースで期間にわたって、費用又は収益に計上する。その場合の換算レートをここで決めております。

 公開草案では「決算時の為替相場」ということになっておりましたが、このような価値の増加は、期間の経過に応じて発生する利息の一部だという御指摘がございまして、期間の経過に応じているということであれば、期中全体にわたって発生するので期中平均相場ということが妥当ではないか。国際的にもそのような考え方がとられているということでございますので、意見書案では、「期中平均相場により換算する」ということに変更されております。

 それから、注10でございますが、これは最初の方に御説明申し上げましたその他有価証券の換算差額については、取得原価の部分の換算差額を為替差損益として処理することができる旨を追加してございます。

それから、注11でございますが、この規定は現行基準には本則に書いてございます。ただ、在外支店の棚卸資産の低価基準というのは、これは特例というよりは、在外子会社特有の事項でございます。親会社においては外貨建で棚卸資産を仕入れましても、これが取得時のレートで換算されて、円貨で貸借対照表には載っておりますので、期末に換算するということは発生はしません。子会社においてのみ、外国では外貨で記帳しておりますので、外貨での低価基準ということが発生し得るということでございますので、その規定を注解の方に移させていただいたということでございます。

それから、最後に20ページでございますが、「注13 子会社持分投資に係るヘッジ取引の処理について」というのが、先ほど申し上げましたように、子会社の外貨建の資本金の変動を換算の変動をヘッジするための取引から生じます為替換算差額については為替換算調整勘定、すなわち資本の部の中で調整をしていただいて、処理するという方法を採用することができるということを追加したところでございます。

 大変早足で申し訳ございませんでしたが、以上でございます。

○若杉会長 どうもありがとうございました。

それでは、ただいま説明していただきました改訂案につきまして、皆様から御質問、御意見を頂戴したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

いかがでしょうか。どなたか御意見、御質問いただけますとありがたいのですが……。

どうぞ、高田委員、お願いします。

○高田委員 御質問が簡単に出ないようですので、何か素人からこういう話を質問という形でさせていただくという羽目になりましたけれども、私の方の理解の不足があれば、御指摘いただきたいと思います。

今大きく問題になっているリスクの中には、子会社の先ほど言われました、ヘッジでないから排除するという予約取引といいますか、任意のものでございますが、それによるリスクが非常に大きいんですね。今度のヘッジがしっかりしたものだけは取り上げると、為替換算調整勘定で処理するんだと。会計自体が非常に確実性を持ってくるということは分かるんでございますが、そのリスクに関して何らかの開示方法というものを担保されておるのかどうか。先ほどのお話では何か排除する方が勝っておりますので、そういう危険な任意予約のようなものがあるときには、どうされるのかという点、ちょっとお答えいただきたい。

○多賀谷課長補佐 御指摘の点につきましては、現在の有価証券報告書に付いております証取法上の財務諸表においては、デリバティブの時価の注記というのはございます。ただ、高田委員がおっしゃられましたように、それをヘッジかどうかというような区分けをしておりません。従いまして、今後、ヘッジ会計が正式に導入されたときには、そのヘッジかどうかという点、逆に申し上げれば、いわゆるスペキュレーションのことだと思うんですが、その点につきましては、当然ヘッジ会計としてカバーされていない部分については、どういう状態にあるのかというのは、何らかのディスクロージャーが必要になるのではないかということは言えるのではないかと考えております。その点につきましては、今後、注記情報を整備する際に考慮させていただきたいと考えております。

○若杉会長 よろしいですか。

○高田委員 その辺はぜひ整備をしていただかないと、多くの事例では、ここが問題というところが注記から外れるということにもなりますし、その点は有価証券報告書を見ろと言ったって、そうは通常の投資家は簡単にできるものでもありませんので、ひとつぜひディスクロージャーという観点から、注記でもいいから、危険性を開示する方向で調整をしていただきたいと。これは公認会計士協会の方かもしれませんが。

○若杉会長 ほかに御意見、御質問等ございませんでしょうか。

 高田委員、お願いいたします。

○高田委員 私は気が短いので、またしゃべらせていただきますが、これだけこちらの外貨取引に関する会計を変更するということは、ちょっとおかしなことを申し上げますが、これは質問の順序が逆さまかもしれませんが、かつての商法における債権者保護というような考え方と、外貨会計を基準として出された段階でかなりの調整は進んでいると思うんですが、公正な会計慣行という範囲内で理解を得ておられるんでしょうか。商法との調整の問題については、概略で結構でございますが、日頃聞いていない者としては気になるところですので。

○若杉会長 事務局、お願いします。

○多賀谷課長補佐 外貨換算につきましては、換算と評価という問題は、従来から問われているところでございます。この辺は基準の上では、換算と評価というのを分けるということで商法上のいわゆる評価の問題ではないと、換算は独立した問題であるということに整理をされていると我々は考えておりますし、税法上もそのように整理をされていると考えております。

 ただ、御指摘のように有価証券等につきまして時価評価が入りました。この点につきましては、本年の8月に商法が改正されまして、時価評価が可能であるということになっておりますので、学問的な区分は、なお基準の上であると思いますが、実務的にはそれを仮に評価の一部として見たとしても、商法に違反するということがないというふうに調整をさせていただいております。

○高田委員 そこは分かるんですが、配当可能利益として、特に有価証券からかなり違った要因が入ってまいりますので、この辺は細かく詰めておられるんでしょうか。配当可能利益は商法にとっては債権者保護をバックに、命がけの数値といいますか、そういうものと思われるんですが、この辺は細かく詰めておられますか、その辺ちょっとお聞きしたいんですが。

○若杉会長 事務局、お願いいたします。

○多賀谷課長補佐 今日、法務省の幹事が来ておられないので、私から御説明申し上げますが、今般、8月の商法改正におきましては、評価額、時価評価をした場合には、その評価差額のネットでございますが、評価益も評価損もあるということですので、このネットにつきましては、配当可能利益から控除するということで 290条が改正をされております。

従いまして、評価益としてみなされる部分については、配当はできないということになっております。ただ、その換算につきましては、従来から、これはあくまでも換算であるということで配当可能利益に含めるといいましょうか、益であれば含まれますし、換算損であれば当然控除されるという形になっておりますので、そこの解釈、取扱いについては変更がないということでございます。

○高田委員 外貨の差額がうまくそういうふうに評価損益で排除できるかどうか、これも実務計算にはしっかりと詰めていただかないと、ややリスクが残るんじゃないかというふうに思うものですから、どうも茫漠とした規定改正の連続で、ちょっと神経質にならざるを得ないので御質問申し上げた次第です。公認会計士協会に甘えるわけじゃありませんが、しっかりその辺は詰めていただいて、実質的に両立できるということならば幸いと思います。

どうも余計なことを申し上げました。

○若杉会長 ありがとうございました。

ほかに御質問、御意見等ございませんでしょうか。

どうぞ。

○須田委員 全く素人的な質問で、何かよく分からないんですが、よくこれまでは為替が変化したことによって、企業が大損したというのが突然出てくるというようなことは、基本的にこの新しい会計でそういうことは起こらないというふうに思って大丈夫ですかという質問です。

○若杉会長 事務局から何かありますか。

○多賀谷課長補佐 故意ということを別にすれば、これまで問題であったのは長期のものだと思います。5年ですとか、長期の社債、外貨建の債権債務については取得時のまま置いておりましたので、現在5年間ぐらいのスパンで考えますと、相当為替が変動するということでございます。この点については、少なくとも半期毎に、今後は6カ月毎の中間決算、本決算のときに換算替えをして、そのときまでに生じた損益は、その期で出てくるということになろうかと思います。

○若杉会長 よろしゅうございますか。

 どうぞ。

○吉牟田委員 中身についての意見は部会で相当申し上げまして、例えば、6ページの先ほど説明のありましたスワップの直先フラット等のところは、前よりも読みやすく書き換えしていただいて、指摘した点は書き換えてありまして、前よりも分かりやすくなったと思っております。

 先ほど商法の時価評価の話と税法の話もちょっと出たようですので、一言。

 今日、実は、税制調査会の法人課税小委員会が午前中にございまして、午後は基本問題小委員会の方を行っております。その法人課税小委員会で「時価法関係資料」というのが出されまして、税法を時価法に改正する問題を議論しておりまして、大体、商法会計に従いまして、会計が時価でやるものは、税法も時価でやるという方向で検討されております。これも来年に商法が実施されるときには、一致する方向で改正、施行されるだろう。これは質問じゃなくて、情報でございます。それだけでございます。

○若杉会長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 いろいろ御発言いただきまして、どうもありがとうございました。

 ほかに御発言がございませんようですので、それでは、本改訂案をもちまして、「外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書」といたしたいと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。

            〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○若杉会長 それでは、お認めいただきまして、どうもありがとうございました。

 それでは、ただいま御承認いただきました意見書を福田局長にお渡しいたしまして、大臣への報告とさせていただきます。

 なお、金融商品部会につきましては、これをもちまして、終了させていただきます。委員の皆様方には、長い期間にわたりまして、大変御苦労さまでございました。改めて御礼申し上げます。

 それでは、本日、作成されました意見書をお渡しいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

○福田金融企画局長 謹んでいただきます。

          〔会長から福田局長に意見書を手交〕

○若杉会長 それでは、次に、企業会計審議会の今後の運営につきましてお諮りいたしたいと思います。

 先ほど外貨建取引等会計処理基準の改訂につきまして御承認いただきましたが、今後、本審議会といたしまして、どのようなテーマを取り上げて審議するかという点につきましていろいろ御意見をいただきたいと思います。

 皆様から御意見を頂戴する前に、現在の企業会計を取り巻く状況につきまして、事務局の方から説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

○大藤参事官 それでは、今後の審議事項について御検討いただくに際しまして、参考としていただくため、最近の企業会計を巡る動向につきまして簡単に御説明させていただきます。

 まず、国際的な動向について御説明いたします。

 まず、国際会計基準の整備状況についてでございますが、お手元に配付しております資料の2を御覧いただきたいと存じます。

 資料の2は、IAS(国際会計基準)のいわゆるコア・スタンダードの具体的な項目と、これまでの整備状況を示したものでございます。国際会計基準の項目と我が国の会計基準におきます諸基準の項目については、内容的に差異があるものもございますけれども、大部分は対応する基準が整備されているものと思われます。

 主要な項目の中で我が国の基準との対応が不明確なものといたしましては、資産の減損のうち、固定資産の減損に関する事項、企業結合のうち、合併に関する事項などがございます。また、現在検討中の項目といたしましては、資料の2の一番下に掲げてございます投資不動産という項目があるわけでございます。

 次に、米国の状況でございますが、米国におきましてもデリバティブ及びヘッジ会計の会計基準が昨年公表されております。また、連結の範囲に関しましては、国際会計基準や我が国の連結原則で採用されている実質支配力基準につきましては、まだ米国の方でも見直し中でございますけれども、企業結合に関しまして、いわゆるパーチェス法の会計の公開草案が本年9月8日にFASBから公表されているところでございます。

 なお、国際会計基準の方で検討されております投資不動産につきましては、米国におきましては、現在のところ、検討されていないという状況にあると聞いております。

 これに関連いたしまして、国際会計基準を整備しております国際会計基準委員会につきましては、御承知のとおり、現在組織改革の検討が進められているところでございますけれども、これにつきましては、後ほど別途、担当の方から御紹介させていただきたいと思っております。

 次に、我が国における関連事項の動向を御説明いたします。

 まず、土地再評価法の附帯決議につきまして御紹介させていただきます。

 我が国におきまして、本年3月に、土地の再評価に関する法律が改正されたわけでございますけれども、その際、国会決議におきまして、附帯決議が行われているところでございます。

 その関連の附帯決議を読み上げさせていただきますと、「金融資産の評価については時価会計がグローバル・スタンダードになりつつある現状に鑑み、こうした会計慣行又は会計基準に委ねるべきである。さらに、土地を含むその他の資産についても、時価会計の流れに留意しながら、平成13年末を目途に現行の評価原則について見直しの是非を検討すること。」以上のような附帯決議が行われているという状況がございます。

 なお、これに関しましては、金融商品につきましては、本審議会におきまして既に1月に「金融商品に係る会計基準」を公表していただいたところでございますし、商法におきましても、本年8月に、金銭債権、社債、株式につきまして時価を付すことができる旨の改正が行われているところでございます。

 次に、いわゆる監査基準に関連する事項といたしましては、公認会計士審査会の下に設けられたワーキンググループにおきまして、本年7月に、会計士監査の在り方についての主要な論点、基本的な考え方等が取りまとめられているところでございます。これはお手元の資料3ということで配付してございます。

 ここで説明は省略させていただきますが、このワーキンググループには、企業会計審議会の委員の方々にも御参加をいただいておりますところでございますし、また、若杉会長にも御出席をいただいているところでございます。

 ワーキンググループの論点整理で指摘されております個別の論点につきましては、去る9月30日の公認会計士審査会におきまして、今後、関連の深い審議会等で具体的、専門的な検討を進めていただきたいと決定されたところでございます。これを受けまして、監査基準に関係いたします個別の論点につきましては、企業会計審議会で具体的な検討をしていただくということになるのではないかというふうに思っております。

最後に、自民党の企業会計に関する小委員会についても簡単に御報告させていただきます。

 本年8月に自民党の金融問題調査会の下に企業会計に関する小委員会が設けられているところでございます。小委員会の委員長は、参議院の塩崎恭久議員でございます。当小委員会におきましては、企業会計、監査を巡る問題につきまして、幅広い観点から議論をいただいているところでございます。これまで5回にわたるヒアリングが行われておりまして、その第2回会合におきまして、大蔵省の方から、企業会計、監査の制度の概要、最近の動向等について説明を行ったところでございます。

 当初は、臨時国会の冒頭を目処に何らかの取りまとめを行うという意向もあったようでございますけれども、現在のところは、どのようなタイミングで、また、いかなる形で取りまとめを行うかということにつきましては流動的でございまして、明らかにはなっておりません。今後とも企業会計小委員会におきます議論等につきましては、機会を捉えまして委員の皆様方には適宜お知らせしたいというふうに思っております。

 私からの説明は、以上でございます。

○若杉会長 どうもありがとうございました。

 それでは、今後の審議事項につきまして御検討いただきたいと思います。

 ただいまの御説明を伺いまして、私の方から口火を切らせていただきたいと思います。

 まず、第1番目に、監査基準の問題につきましては、公認会計士審査会からの要請もございますので、当審議会として検討していかなければならないと、こういうふうに考えております。

 また、会計基準につきましては、企業結合会計という課題もございますが、国際的にもまだ確立されていないように思われます。そういたしますと、固定資産の会計処理について見直すべき点がないかどうか、少し検討してみたらどうかというふうに思われます。

 いずれにいたしましても、これらの課題は幅広い観点から捉えていく必要があるのではないかと思います。

 まだいろいろな問題もあろうかと思いますけれども、皆様方の忌憚のない御意見をいただきたいと思いますが、どなた様からでも結構ですけれども、どうぞ御発言をお願いしたいと思います。

○八木委員 よろしゅうございますか。

○若杉会長 どうぞ。

○八木委員 今、順序がちょっと逆になるかもしれませんけど、固定資産の会計について一つ申し上げたいと思うんですが、この御提案になった減損会計というのはSEC基準とかIASとか、既にそういう中には導入済みということで、たまたま私どもの会社もSEC基準で連結決算やっているものですから、いろいろな形で経験をしておりまして、これは一言で言うと、かなり痛みを伴う会計だという印象が非常にあるわけでございまして、特に今、我々の実業界といいますか、企業の立場からすると、かなりいろんな意味で現下の経済情勢が特に抵抗が強い業界もあろうかと、こういうふうに考えております。

 ただ、一つの方向だと思うので、私はこれをぜひ検討していただきたいと思うのでございますけれども、固定資産というのも内容が非常に多様でございますし、それから、土地一つとっても、保有目的とか、保有期間とか、いろいろ違いますし、当然のことながら、この公正価値とか回収の可能価額といった評価の手法だけでも非常に多い。こういうことなんで、議論に相当十分な時間をかけてやる必要があるなと、これがこのテーマに取り組む一つの印象でございます。

 そういうことで、減価償却とか減損会計とか、いろいろなそういう関係をしっかりやっていく上では、今相当多岐にわたる議論があるものですから、かつまた、今申しましたように業界に非常に大きなインパクトがあるので、時間をかけることと、特にこの適用をいつからやるか。先ほど13年云々という附帯決議がありましたけれども、これについては、1年と言わず2年がかりで、じっくり取り組むとか、かなりその辺に御配慮いただいた方がいいかなというのが感じでございます。

 そしてまた、非常に大きなインパクトのある業界がございますので、ぜひそういうところの代表の方も臨時委員とか参考人、いろんな形があろうかと思うんですが、いろんな折に意見表明されるような御配慮というか、そういうことも要るのかなと、こういうふうに実務の方から感じております。

 以上でございます。

○若杉会長 ありがとうございました。

 ほかに。

 どうぞ。

○吉牟田委員 固定資産という話ですけれども、主として減損の話でしょうか。減価償却資産とか、これでは国際会計基準が4とか、16とかにもありますけれども、減損だけだとすると、減損としての問題点があるように思いますし、私もCOFRIの減損の研究会で税務との関係を話してくれというので話したりしましたが、私は国際会計基準の減損に関して申し上げますと、非常に日本の会計、税務と異質だなと思ったのは、減損の取戻しという規定が書いてありまして、減損は損を建てることなので、企業の痛みはないのですが、減損の取戻しは益を建てねばならないということだものですから、この方が企業に対するインパクトが強いのかと思います。テーマが減損主体であれば、その辺が一つの問題かというふうに思っております。

○若杉会長 固定資産の会計処理につきましては、いろいろ問題があるわけですけれども、減損だけとか、あるいは投資不動産の評価だけとかというふうに個別的な問題を取り上げるというよりも、幅広い観点から関連する問題を検討していくというようなことがよろしいかと存じております。

 ほかに何かこの問題を巡りまして、御意見ございませんでしょうか。

どうぞ。

○広瀬委員 今、固定資産というお話を伺ったんですが、その場合、無形資産というのは範疇に入っているんでしょうか。とりわけ、企業結合を見送られるというお話でしたんですけれど、企業結合絡みでは、のれんの中身というのが今後非常に重要であろうと思うんですけれども、その場合、無形資産に振り替えるとか、無形資産をどう考えるかということが非常に国際会計基準でもFASBでも重要であるし、私自身も非常に重要であると考えているんですけど、その固定資産の中には無形資産をお考えに入れられているかどうかということをお聞きしたいんです。

○若杉会長 前にもお話ししましたように、固定資産を広い角度で検討していくということですので、無形固定資産の問題もそれに関連して浮かび上がってくれば、当然それも論議の対象になるかと思います。

○中嶋委員 よろしいでしょうか。

○若杉会長 はい、どうぞ。

○中嶋委員 公認会計士協会の意見と言ってもいいんですけれども、要するに監査基準ですね。特に報告基準について、幅広く御検討いただけるとありがたいと思うんですけど、それをお願いしたいと思います。

○若杉会長 はい、分かりました。ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

○八木委員 よろしいでしょうか。

○若杉会長 どうぞ。

○八木委員 やっぱり会計監査につきまして、これまでもいろいろな議論が尽くされてきたわけでございますけれども、今、中嶋委員からもありましたように、ゴーイング・コンサーン問題について産業界からは、これまでですけれども、「いろいろな面で慎重な対応をお願いします」というような姿勢でやってまいった経緯はあります。

ただ、ここのところ、いろいろ諸外国からのそういう監査に対する問題、また、現実にいろんな事件も起きていたり、そういう監査の問題というのも、これはやっぱり別の意味でまた取り組まなきゃいけないと、こう思っておりますので、我々発行体側としても、これには真剣に取り組んだ方がいいなという認識でおるわけでございます。

ただ、ゴーイング・コンサーン問題というのは、なかなか実際にやるとなると大変であるわけでございまして、私、海外でも導入したと、制度はできていると、こうあっても、現実どこまで運用され、どこまで適用されていくかというのは、以前こういうのを議論したときも、なかなか実例が少ないというような印象を持っておるので、ぜひこれをまたやるに際して、諸外国の実態みたいなものは、ぜひいろんな面で調べてみるということをお願いしたいなと、こういうふうに思っております。

そのほか監査報告書の開示内容とか、ゴーイング・コンサーン問題の企業業績への影響とか、監査人の責任論とか、いろんなものがあるので、やはり広い角度から、これは取り上げるべきだろうと、こういうふうに印象として持っております。ぜひ取り組むべき問題だと思っております。

○若杉会長 ありがとうございます。

 公認会計士審査会のワーキンググループでも、なるべく広い角度から見ていこうということになっておりますので、御意見を尊重してやってまいりたいと思います。

 どうぞ。

○安藤委員 固定資産の会計処理の見直し、検討するということはしようがないのかもしれないんですけど、特に私、商法会計を長くやっていまして、その観点から言いますと、これでもしも固定資産にまで時価会計が及ぶということになると、言いたいことは、根本的に会計制度が変わっちゃうことが、これは皆さん常識で分かると思うんです。今のところでは流動資産とか金融商品ということで限られているんですけど、これで今度、固定資産も時価会計というと、オールの資産が時価で評価するということになっていくわけですね。

そうしますと、商法も巻き込んだ議論になっていくと思いますけど、例えば、配当可能利益の今の 290条のような配当規制がひょっとしたら根本から変わっちゃうかもしれないというような気もいたしますし、これ大変大きな影響があると思いますね。少なくとも今までの会計のテキストは全部役に立たないというのは常識ですし、それから、企業会計原則ももう一回全部やり直しということで、本当に日本の会計が言語だとすれば、言語を作り替えるというに等しい大きなインパクトがある。もちろん現場の実務の方、企業の方、財界の方は影響を受けるわけですけど、我々学者としても、これは大変な問題だなという気がいたしますね。ですから、十分時間をかけて、国際的な付き合いも大事ですけど、場合によったら、日本語をやめて、英語にしようという話かもしれないという覚悟でやっていただきたいと思います。

○若杉会長 ありがとうございました。

 時価評価問題に収束していくかどうか、まだこれからやってみないと分からないんですけど、主にその点も配慮すべきことかと思います。

どうぞ、お願いします。

○今野委員 今の問題でやはりそれぞれ社会というか、人間が必要に応じて作ってきて、必要に応じて変化をしたということですね。ですから、今の私らも、税法に関する問題も抱えていますが、やはり私的企業、私的会社、パブリックカンパニー、こういうものが混在することによって初めて成り立っているときに、余りにも今の現象だけで捉えていくということではない。だから、基本的な問題を十分考えた上で固定資産会計に、これ全部時価でいきますよと、時価主義でいきますよということには、そんな簡単なことにはいかないだろうと思っていますけれども、何か成り行きに流れてしまう処理にならんようにしてもらわないと大変だ。

一つは、企業そのものから言えば、安全性ということが一番大事なことになって考えてきておるということだし、投資をする人については、自分の投資目的を達することのできる情報を開示しなさいよというのから出てきたと思っていますから、それぞれ目的があって動いているものを、全ての基準には絶対ならんと私は考えているので、その辺は十分よく御審議をいただけると、こういうふうに期待しておりますから、よろしくどうぞ。

○若杉会長 ありがとうございます。御意見をよく体しまして、検討してまいりたいと思います。

 ほかに何かございましょうか。

それでは、時間の関係もありますので、ただいまの御意見を伺っておりますと、会計基準としましては、固定資産の会計処理について検討する必要があるということが確認されました。また、監査基準につきましても、公認会計士審査会の論点整理や国際的水準も踏まえまして、一層の充実のために検討する必要があるというふうに思われますので、これら二つの問題を今後の審議事項にしてまいったらどうかというふうに思われます。

ただ、固定資産の会計処理につきましては、いろいろ論点がございますけれども、減損とか投資不動産の評価といった個々の項目を別々に取り上げるというのではなくて、先ほどもちょっと申しましたように、幅広い観点から論点の整理をしながら検討を進めることが必要ではないかというふうに考えております。

また、監査基準につきましても、公認会計士審査会の論点整理におきまして、いろいろの角度から問題点が指摘されておりますので、それぞれの問題点の相互の関連性や国際的な監査水準などを踏まえながら、監査上のルール全体について問題点の整理をしてみてはどうかと、こんなふうに考えております。

今後の審議につきまして、今私が整理いたしましたような形で進めさせていただくということでよろしゅうございましょうか。

            〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○若杉会長 どうもありがとうございます。それでは、皆様の御賛同を得られましたようですので、今後、固定資産の会計処理と国際的水準も踏まえ、監査基準の一層の充実という、この二つの問題を審議事項といたすことにいたします。

 固定資産の会計処理につきましては第一部会で御担当いただきたいと思います。斎藤部会長にはよろしくお願いいたします。また、監査基準につきましては第二部会で御担当いただきます。第二部会につきましては、脇田委員に部会長をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 なお、委員の皆様方の部会所属につきましては、各部会長とも相談させていただきまして、後日、連絡させていただきたいと思います。

 それでは、次に、当審議会から御依頼しております各会計基準の実務指針の整備状況につきまして、公認会計士協会会長の中地委員に御報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○中地委員 お手元に資料の4というのがございますけど、2枚にわたりますが、ちょっと御覧ください。

 左のコラムが企業会計審議会意見書、それから右の方が実務指針等であります。右のコラムは実務指針そのものと、それから、Q&Aなどを含めて、「等」と書きました。左側の意見書には括弧で日付がありますから、その日付に従って、ここに書いてありますような八つの意見書が既に出ており、それに関連しまして、右の方に実務指針として、作ったのを全部列記してあります。●を付けてあるのが今年になってから公表したものでございます。太字のもの、それは実務指針でありまして、薄い方の明朝体のものはQ&Aその他であります。

 そういうふうに配列してみたわけですけど、例えば左側の連結財務諸表制度の見直しに関する意見書に関しては、右の方で親子会社間の会計処理の統一。それは既に平成9年の12月8日に出したり、あるいはJICPAジャーナルで平成10年の7月号でQ&Aを出したというような状況であります。その次の資本連結手続の場合は、前の方の○は平成10年5月12日に会計制度委員会報告第7号として、「連結財務諸表における資本連結に関する実務指針」として出し、それから、次に●を打ったのが、資本連結手続に関係しまして、今年の3月17日に追補として出したものであります。また、今年の8月にはQ&Aを出したというような状況であります。

 最近の問題としては、この1ページの一番下にありますような退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書に基づきまして、右の実務指針、会計制度委員会報告第13号というのを今年の9月14日に中間報告として出しました。そして、それに先立ちまして、その下の方にありますけど、1月19日には論点整理を公表するとか、それから、3月25日はここに書いてありますような「「退職給付に充てるために積み立てる資産について」、「信託」を用いる場合の基本的な考え方」というような形のものを出しました。これらにつきましては公開しまして、公開草案として意見を皆さんからいただきました。この退職給付の実務指針に関する論点の場合は、35通のコメントをいただき、これに基づいて手当てをし、さらに一番下に書いてあります公開草案の「退職給付会計に関する実務指針(案)」というのを今年の8月2日に公表しまして、それについても75通のコメントをいただきました。

こういう具合に、できるだけ時間があったら公開するというのではなく、その時間をひねり出し公開して皆さんから御意見をいただくということでやっております。実務指針の最終的なまとめに移る前に、実務指針をよく分かっていただく。いわゆる透明性を高めるといいますか、そういうような手続をすべく、作業は猛烈に急ぎますけど、その公開の時間ももつというようにやっているわけであります。

その次のページの税効果会計に関する問題とか、あるいは金融商品その他、まさに実務指針を作る我々自身が実際に実務の中に当てはめるのにはどうやるか、できるだけ細かく書くということに気を配ってやっております。金融商品のところの「金融商品に係る実務指針に関する論点整理」を8月23日に公開しましたら、51通のコメントをいただきました。来年1月には確定すべく、今後、さらなる公開草案を公表しようとしているところであります。

以上が現在我々がいたしております実務指針及びそれに関連する作業です。

簡単ですが、以上、御報告いたします。

○若杉会長 どうもありがとうございました。

大変たくさんの問題をお願いいたしまして、ありがとうございます。今後ともひとつよろしくお願いいたします。

それでは、続きまして、国際会計基準委員会がその組織の見直しについて現在検討しておりますので、最近の状況につきまして、事務局の方から御説明をいただきたいと思います。お願いします。

○剱持課長補佐 それでは、簡単に御説明を申し上げます。本件は、直接会計基準の中身に係わることではございませんが、会計基準の設定のプロセス、しかもそのプロセスの国際的な協力関係の強化というような重要な問題を含んでおりますので、ここで改めて御報告をさせていただくわけでございます。

本日、ここに御臨席の方々には、先般御案内を差し上げまして、国際会計基準委員会(IASC)の事務総長、カーズバーグ氏が来日しました折に、簡単に御説明を聞いていただいたということもございますので、そのときのペーパーの記録の概要を基に簡単に御説明をさせていただきます。お手元の資料で申しますと5になります。

 現在のところ、皆様御承知かと思いますけれども、国際会計基準委員会(IASC)は、各国の職業会計士団体の代表から構成されるという形をとっております。現在の時点では公式に各国の会計基準設定主体との間で関係を持っておるわけではございません。唯一例外的なケースを挙げるとすれば、理事会にアメリカのFASBがオブザーバーシップを認められているという例はございますけれども、正式な形での関係というものは持っておりません。

 現在のIASCはそういう形で公式な関係を各国の設定主体とは持っていないわけなんですけれども、そこを根本的に改めて、各国の、特に主要国の会計基準設定主体との協力を強化しようというのがこの改革のキーとなるコンセプトでございまして、その目的は、質の高い国際的な基準を設定して、その利用の促進を促しますとともに、各国の基準の調和化、統合化を進めると、そういう目的があるわけでございます。

 このカーズバーグ氏の来日した折の説明と申しますのは、非常に最近の動きのみを説明した形になっておりますので、ここに至る若干の経緯がございますので、そこをまず申し上げまして、その後でこのペーパーを説明させていただきたいと思います。

 本件につきましては、実は1997年頃から検討は行われておりまして、ただ、様々な経緯がございまして、議論が二転三転しておりまして、なかなか収束を見なかったというような経緯がございました。それが昨年の12月末にディスカッション・ペーパーという形でとりあえず一応の案という形でまとまりまして、世界各国の関係者にコメントが求められたところでございます。

その中では、従来の今の職業会計士団体から構成されるIASの基本構造を維持しつつ、その中に各国の設定主体との協力関係を設けられるようなメカニズムを設けると、そういった形の案が提起されておったわけでございますが、実はその案はアメリカを中心とする、特にアメリカなんですけれども、反対に遭いまして、反対と申しますのは、やはり設定プロセスの独立性をアメリカは強く主張しておりまして、これは最終的な会計基準の設定、決定を行われるその場において、その代表者が特定の業界なり団体からの代表のみによって構成されるのは望ましくないと。すなわち現行の各国の会計士団体から派遣される代表のみによってそれが決定されるというメカニズムを維持しておる限りにおいては、それはだめだという強い主張がございまして、この案は公開草案、ディスカッション・ペーパーという形で世に問われたわけではございますが、その後の議論の過程で事実上の廃案という形になっております。

その後で実は新しい案が出てまいりまして、その新しい案について実はカーズバーグ氏は説明をしておるわけでございます。

新しい案と申しますのは、従来の職業会計士団体から構成されていたIASCの枠組みというものを根本的に改めまして、そういう意味では職業会計士団体の役割は小さくなるわけでございますけれども、代わって、基本的に各国の基準設定主体との協力関係を担えるような単独の独立した会計基準設定を担う理事会というものが設けられまして、それを中心に活動が行われると、そういうものでございます。

新たなIASCの基本構造の中で特に注目される点としてカーズバーグ氏から説明もあったんですけれども、以下の2点が挙げられようかと思われます。

 それは、現行理事会というところが確かにございまして、そこが基準を設定しておるんですが、その理事会が実は会計士の団体のみならず、それ以外の、すなわち会計基準設定主体なり、あるいは会計基準設定主体ではないんですけれども、独立した個人、会計士あるいは財務諸表作成者等によって構成されるというものでございまして、現在16名の委員からなる構成をもって理事会を設けるという案が出されておるところでございます。

お手元の資料5の中で、「1.カーズバーグ事務総長の説明の概要」というところの三つ目のパラグラフを御覧いただければと思います。ここで16人のメンバーから構成される理事会の説明がございまして、そこに12名のフルタイムのメンバー、それから、4名のパートタイムのメンバー。その12名のうち、7名は主要国の会計基準設定主体との協力関係を担うための役割を担う、そういった形でのリエゾン・メンバーを設けるという記載があろうかと思いますけれども、この辺は我が国にとっても重要な意味を持つのではないかと思われます。このリエゾン・メンバーについては、カーズバーグ氏は明確に以下のように説明しておりまして、以下のようにと申しますのは、そのすぐ下に「日本の場合に則して言えば、」と、このくだりでございます。

 すなわち、IASC理事会における議論に出席すると同時に、リエゾン関係のある主要国の設定主体における会計基準の設定における議論にも参画すると、そういうメンバーを置いて、設定主体との協力を強化したいということでございまして、カーズバーグ氏は自らの希望として、日本ともぜひそういう関係を持ちたいというところを明確に説明されたところでございます。

 それから、これは会計基準の設定を行う理事会とはまたちょっと質の違う組織なのでございますけれども、評議会という組織を併せてIASCの中に設けるという議論がございます。これは今のIASC理事会は、各国の職業会計士団体が代表を派遣すれば、それで終わりなわけですけれども、そういう形ですと、実は理事会の理事の任命というのは事実上、各国の会計士団体に委ねられたままという形になりまして、その任命といいますか、選出のプロセスというものは、ある意味では分からない。各国の自由ということになっておるわけでございますけれども、そういう形では望ましくない。

 これは特にアメリカの意見なんですけれども、やはり透明なプロセスを経て質の高い人材を集めるという要請に鑑みれば、そういう人材を適切に任命するための機関がやはり必要であろうと。そのために評議会という、これはもちろん人事権だけを行使するための組織ではないんですけれども、新たにそういった組織の活動全般を監視するような組織を設けまして、IASC全体の運営の適正化を図るというところが提起されておるわけでございます。現在そこには19名程度の代表で構成されるような人たちが活動するということが提起されておるわけでございます。

 実は本件につきまして、先般のカーズバーグ氏の説明では、新たな公開草案が今週中にも出されるというものがあったんでございますけれども、それが今まで私どもが聞いておるところでは、大分遅れておるということでございまして、実際にいつ出るかというのは、今のところ、分かっておりません。確認されている範囲の情報では、やはり理事会なり評議会なりの構成、特にその内訳ですね。各国が何人出すとか、その地域がどうだとか、そういった内訳に関する議論で大分特定の国が特定の主張をして、なかなか調整がつかないという情勢にあるようでございまして、現在のところもまだ調整が行われている。

 カーズバーグ氏は先般10月5日に来日して審議会の皆様にも御説明された折に、2週間ほど後には出せるはずだというふうに言っていたわけなんですけれども、どうもその予定は遅れているようでございます。

 いずれにいたしましても、本件につきましては、我が国の基準設定主体、審議会も含めまして、引き続き注意深く見ておく必要があるのではないかというふうに思われます。必要に応じてまた御報告をさせていただくことになろうかと存じます。

 以上でございます。

○若杉会長 どうもありがとうございました。

 このIASCの組織改革問題、現在進行中でございまして、また、日本では、それに関連して、自民党の企業会計小委員会がいろいろ審議しているところでございます。

 ただいま御説明につきまして、あるいは広く国際会計基準につきまして、御質問、御意見がございましたら、御発言をお願いしたいと思います。

 どうぞ。

○中村委員 中村ですが、今の国際会計基準委員会の御説明いただきまして、ありがとうございました。この会計基準の国際的調和の問題に関連いたしまして、一言申し上げたいと思います。

 国際的に信頼されます財務諸表を作成するニーズは、企業活動のグローバル化ということで、ますます高まってきております。ただ、その際、やはり企業の負担のみならず、投資家の誤解を招かないという観点から、複数基準での財務諸表の作成というのは、ぜひとも回避していただきたいというふうに考えております。

 これに関連いたしまして、いわゆるSEC基準の特例というのが2001年3月に切れるわけでございますが、日本の基準も国際的に整合的になってきておりますけれども、アメリカではまだ日本の基準の財務諸表というものは容認されていないのが現状だと思います。そうしますと、このままでは二重の財務諸表の作成というのが余儀なくされてしまいます。

 そこで、会計基準の国際的調和の動向が確定し、日本としての対応を見定めるまでには、まだまだ時間がかかるのではないかなと思っております。従いまして、日本企業がSEC基準などで国際的に通用する財務諸表を作成している場合においては、日本におきましてもこれを容認するような措置をぜひともお願いしたいと思っております。

 以上でございます。

○若杉会長 どうもありがとうございました。

○八木委員 関連でよろしゅうございますか。

○若杉会長 どうぞ。

○八木委員 今の中村委員と全く同意見なんでございますが、私どもの会社も昭和38年以来、ずっとこのSEC基準の財務諸表を作ってまいりました。今話のあったいわゆるSEC基準特例というのが昭和51年に作っていただいて、平成2年にこれがもう終わりだよと、撤廃だよと、こういうことになりまして、それ以来、ちょうど私たちと条件を同じくする企業が相寄りまして、平成4年と平成5年にSEC当局まで民間の立場で参りまして、アメリカに対して何とか認めてくれないかということをずっと言ってきた経緯がありまして、幾つかのウエーバーをもらったんですけど、そういう形で認めてもらいましたけど、相互承認というわけにはその時点ではとてもいく状況ではございませんでした。

 ただ、ここのところ、先ほど来御説明のように連結基準から金融商品までずっと変えていただいたんですが、まだ実務をやっていきますとどうしても決算書が二通りになるという状況になっているわけでございまして、この辺ぜひ、今話があったように二重基準は何とか避けたいと、こういうふうに思っております。

 一方、IASも先ほど来コア・スタンダードの推移についての御紹介がありましたけれども、これが実際のルールになって、欧州や日本でこれを今度は共通基準にするというところまでいくには、まだ相当時間もかかると思っております。

 もう一つは、IASをSECがどう認めていくかと、この辺もまだ極めて不透明だというような背景もございまして、現実論としては、SEC基準で作る決算書を引き続き認めていただくようにお願いしたいと、こういうふうに作成者の立場から切実な問題として思っているところでございます。

 欲張りついでにもう一つお願いを申すとすれば、期限が迫っておりますので、この辺は方針をはっきりしていただくのも、できるだけ本年内ぐらいにやっていただかないと、これからいろいろ機械化その他の準備等もございますので、その辺も欲張りついでに併せてお願いを申し上げおきたいところでございます。よろしくお願いいたします。

○若杉会長 どうもありがとうございました。

 ほかに御意見、御要望などございましたらお願いしたいと思います。

○剱持課長補佐 会長、ちょっと補足させていただきます。

○若杉会長 はい、どうぞ。

○剱持課長補佐 恐縮でございます。先ほどの説明の中で一つ、カーズバーグ氏が強調されていた点で補足をしておいた方がよろしいかと思われるポイントがございますので、申し上げます。

 この資料5の2枚目でございますけれども、2枚目の一番上の・で始まっているパラグラフについてでございます。これは実はカーズバーグ氏がいろんなところでこの旨の発言をされておりまして、審議会の皆様に御説明をした折も強調されていた点ですので、補足的に申し上げます。

 IASCの組織改革の議論というものとの関連で、各国の基準設定のあり方についてカーズバーグ氏も大分方々で聞かれるらしいのですけれども、IASCの問題を各国の国内のあり方に関連して議論しようというつもりは全くない。本件はあくまでIASCの問題であって、各国の問題とは無関係であると、そこははっきり申しておりまして、各国の設定のあり方というのは、その各国の実情に応じて決まってくるものであって、それがいかなるものであったとしても、IASCとしては協力関係を持っていきたいというのが真意であって、そこはぜひ伝えたいというところを申しておりましたので、ここはカーズバーグ氏の強調されていた点でもございますので、補足させていただきます。

 失礼しました。すみません。

○若杉会長 ありがとうございました。

 伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員 これにも関連しますし、先ほど来の中地さんのお話もあるんでございますけれども、今回の企業会計審議会での一連の実務指針に関しまして、先ほど来CPA協会からお話しございましたが、大変な御努力で実務指針をやっていただきまして、私ども産業界としましては、その御意見を十分聞いていただいたというような形で、立派にまとめていただいているわけでございまして、大変な労力をおかけになって、皆さんふらふらになっているとも聞いておりまして、審議会のあり方というのは、今、自民党で御検討されて、ヒアリングが行われているとも今お話がございましたけれども。

 こういう場でこういうお話をしていいのかなと思うんでございますが、民間の独立の常設機関が必要だという声も聞いているんでございますけれども、私はやはり会計基準はあくまでテーマが直面する問題でございまして、先ほど来八木さんがおっしゃいまして、非常に急ぐという問題もありまして、内容が非常に専門的でもありますので、中立的な独立性のある官民の有識者で構成されるようなこういった審議会で決定されるのが非常にいいんじゃないか。中にいる私がこんなこと申し上げて、客観性がないかも分かりませんけれども、そういうふうに今私は思っているわけなんです。

 ただ、私、実は経済企画庁の経済審議会の委員もやっておりまして、これは内容が10年後の日本の姿という、大臣が堺屋さんになったものですから、多少文明評論的なところもあって、開かれた審議会にしようということで、随分地方行脚もやりましたし、今日から公開ということですが、公開も随分いたしましたし、インターネットですぐ流したというようなことも、いろいろございました。

 それとこれとは恐らく違うと思うのでございますが、やはりそういったことも今後この委員会というのは恐らく続けていかれるんじゃないかと思いますし、現に企業会計についても経団連とか、あるいはCOFRI等が、私は関西に拠点のある会社なものですから、関西でもそういう会合をやっていただいて、大変感謝したのでございますが、見ていますと、事務局が大変な御努力だとも聞いておりまして、そういう意味ではこの審議会の補完といいますか、それを強化する意味で、何か下部機構として、独立性があって、かつ、中立的な常設機構の存在というものがあればいいんじゃないかな。なければ、何か今あるものを改組して、少し変えるとか、そういったことを私ども産業界としては望みたいなというふうに思っているわけでございます。

 もちろんここでは我々も企業として参画したいと思っておりますし、学者の先生とか、あるいはCPA協会の方も御参画をされて、審議会の調査・整理のほかに実務指針レベルの取りまとめ。もちろん決めるのはこの企業会計審議会だと思いますが、そういったこともやらせるようにしたらどうかという感じがいたしたんでございます。この場で結論を期待するんじゃなくて、一委員の意見という形で御参考にしていただければ、大変ありがたいと思っています。

 以上です。

○若杉会長 どうもありがとうございました。

 IASCの組織改革につきましては、先ほど来詳しく事務局からの説明もありますし、先般10月5日にカーズバーグ事務総長がおいでになったときにもいろいろ伺いまして、その組織基準設定主体というものがどういうものでなければならないかということについてのIASCとしての別に決まった意見はないわけで、その国の国情に応じた組織設定主体というものが存在してしかるべきだという御意見だったわけです。

 現に国際的にも、国によって日本のような今の我々のような形の国もあれば、あるいは第三セクター方式の国もあったりして、どこかに統一しろというような力は別に全然働いておりません。

 さらにこの問題につきまして、ほかに何か御意見ございましたら、ぜひ伺っておきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。

 どうぞ。

○中地委員 今の剱持さんが指摘された2ページ目のところ、先ほど私、二度も三度も読んだんですけど、確かに私はこれをカーズバーグさんが言われたときに、すぐそばにいませんでしたけど、彼と別の機会に話したときに、「なるほど、各国がそれぞれ違ったカルチャーがあるから、違ったスタイルでいいだろう。しかし、大事なことは、その基準設定機関というのは独立性がなくちゃいかん」と強調していました。

 イギリスの場合、基準設定機関の予算の3分の1は政府が金を出しているんだそうですけど、しかし、絶対に嘴を入れないと、そういうようなことでイギリスのケースを話したんです。そういうので、私は逆に、「いや、日本は政府の中にあるようだが、政治は嘴出さないよ」と言ったんですけど、彼は、彼なりにまた別の理解をしたんだと思います。だから、「ここでそれぞれの国でそれぞれのカルチャーに基づいた設定機関があっても、それはIASCとしてはどうこうは申し上げません。しかし、国際的に一つの基準設定主体を作るときには、その構成員は行政からも、それから、国会からも独立して、また、ビジネスからも独立して、そして、中立的な基準設定機関である方がベターでしょう」と、そういう意向でありました。

 たまたま私あえてこれを申し上げたのは、伊藤さんや八木さんあたりが、実務家から見て、早く決めてくださいというときに、中立的な設定機関だったら、早いアクションがとれるかなということを考えながらちょっと申し上げたんですけど、よろしくお願いします。

○若杉会長 どうもありがとうございました。

 ほかに何か御意見、御要望などございましたら、いかがでしょうか。

 どうぞ。

○須田委員 私もこれを読ませていただいて、今までの国際会計基準というのはアメリカからは結構別のものがあったんだけれど、ここでアメリカが結構口出しをするようになったら、アメリカのスタンダードにどんどん近づいていくんじゃないかというのをすごく懸念していますので、ぜひ中立性ということは重々重要視していただきたいと思います。

○若杉会長 どうもありがとうございました。

 どうぞ、お願いします。

○高田委員 この前のカーズバーグさんのときに私も参加したんですが、中立の立場として感じたことを申し上げさせていただきますと、カーズバーグさん自体、アメリカの支配が大きいということに対して危惧の念を持っておられるということを感じました。

 それから、会計統一の問題で、文化や経済情勢の違う各国が統一することには多くの困難があるんじゃないかという質問をし、例えば先ほどの固定資産のような問題ですが、商法とか債権者保護の思想を持っている国がかなり多い中で、統一はどのぐらいで達成可能か。また、可能ならば、幾つかのパターンで調整はできないのかというような質問をしましたところ、これはいろいろ不満もあるかもしれない。しかし、世界の会計が統一の方向で努力しないことには、ボーダーレスの社会ではこれから動きがとれなくなるということで、ぜひ結果だけは統一をしたいというお話だったと思います。

 固定資産についての、討議の結果、一本化するわけですから、必ずしも時価で換算という結論になるかどうか、それは各国の議論によるものですから、その辺は日本も完全に頑張るような人々をそろえないと、というふうな感じはいたします。形式よりは、むしろ実質的に動き、発言をするグループというのが必要ではないかということを感じた次第です。

○若杉会長 どうもありがとうございました。

 まだいろいろ御意見あると思いますけれども、時間も大分来ておりますので、それでは、最後に、大蔵大臣から御挨拶が寄せられておりますので、福田局長より御紹介をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○福田金融企画局長 本日は、どうも深い御審議ありがとうございます。

 本来、大蔵大臣がこの場に出席申し上げて御挨拶を申し上げるところでございますが、政務多忙のために出席することができないということでございますので、私から大蔵大臣の挨拶を代読の形で御紹介させていただきます。

 大蔵大臣の宮澤でございます。

 企業会計審議会に当たり、一言御挨拶申し上げます。

 企業会計審議会の委員の皆様には、日頃より企業会計制度の整備・改善に多大な御貢献をされていることに対し、厚く御礼申し上げます。

 政府は、金融システム改革を着実に進めておりますが、企業会計審議会におかれましても、その一環として、公正・透明な証券・金融市場の発展に資するため、国際的に遜色のない企業会計・ディスクロージャー制度の整備に関する諸課題について、精力的に御審議をいただいているところであります。

 本日は、外貨建取引に係る会計基準の改訂について意見書をお取りまとめいただきました。この意見書では、金融商品の時価評価の導入に対応した外貨建取引の換算方法の見直しなどが行われ、国際的にも通用する会計基準が示されたと伺っております。これは、我が国証券・金融市場の健全な発展に資するものとして、誠に意義深いものと考えております。

 また、本日は、今後の審議テーマについてもお決めいただいたとのことですが、今後の御審議におかれましても、委員の皆様方の一層の御協力をお願い申し上げまして、簡単ではございますが、私の御挨拶といたします。

 以上でございます。

○若杉会長 どうもありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして、本日予定いたしました議事は全て終了いたしました。

 委員の皆様方には、お忙しいところを誠にどうもありがとうございました。