企業会計審議会 第一部会 議事録

日時:平成12年3月10日(金)午後2時00分〜午後4時05分

場所:大蔵省第三特別会議室

 

○斎藤部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第4回の第一部会を開催させていただきます。

 本日は、皆様方お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 前回は、第3回目ということで、「固定資産の会計処理」に関する国際会計基準について、小宮山委員及び太田委員から御報告をいただき、意見交換を行いました。

 さらに、岩田委員から「不動産取引と会計処理」ということで御報告をいただいたところで、前回は終了いたしております。

 本日は、前回の続きということで、まず前回の岩田委員の御報告につきまして、質疑応答・意見交換を行いたいと思っております。

 続いて、西川委員及び秋葉委員から、日本公認会計士協会における固定資産の会計処理に関連する問題意識や実務指針の作成状況等について御報告をいただきたいと思っております。

 さらに、本日は、参考人としてソニー株式会社国際会計部の長坂統括課長に出席いただいておりますので、主に米国基準による「のれんの減損」の実務について御報告をお願いしたいと存じます。

 それでは、早速でございますけれども、本日の審議に入ります。

 まず、前回の岩田委員の御報告について意見交換をしたいと存じます。

 前回からちょっと間がありますので、細かく覚えていらっしゃるかどうか不安なんですけれども、前回、最後に私が箇条書きでまとめましたことをもう一遍繰り返させていただきまして、その上で御議論いただきたいと存じます。

 誤っていたら、岩田委員から御訂正をいただきたいのですが、論点は大きく分けて4つぐらいございました。第1が不動産の賃貸というのは事業であって、キャピタルゲインを目的とした不動産投資ではない、キャピタルゲインねらいではなくて、本来は事業であるということが第1点。それから2点目に、時価評価ということを仮に考えたときに、その時価というものの一義性がどうやって担保されるのか、又、評価のためのコストも非常に重要な問題ではないかというのが2番目でございました。それから3番目は、不動産については、時価よりもむしろ収益還元価値が非常に重要になってくるだろうという見通しをお述べになられました。ただし、その場合にインフラの整備等が前提になるだろう、そういう必要なインフラが整備されない限り、不動産に関しての収益還元価値の評価というのは大変難しいだろうということでございました。4番目に、評価の問題と損益認識の問題については、その当該不動産の保有目的や経済状況を考慮して行われるべきであるという論点であったと思います。

 岩田委員、このような大雑把な御紹介でよろしゅうございましょうか。

○岩田委員 結構でございます。

○斎藤部会長 それでは、前回の岩田委員のお話に対しまして、御質疑・御意見があれば10分程度お伺いできればと思います。御自由に御発言ください。

○太田委員 2点ほど、どんな状況なのかなということをお伺いしたいと思っているんですが、まず賃貸不動産は事業投資であるということはまさにそのとおりであるかと思うんですが、その賃貸事業を始めるに当たっても、会社は中でこの賃貸業務を始めるかどうかという評価を何かされるのではないか、それからその後もその事業を継続していくかいかないかという評価を毎年されていくのではないかと思うわけですが、IASの前提にありますのが、そのような評価というのはいわゆるDCFの考え方で会社はやっているだろうという前提で議論が進められているかと思うんですが、その点について現状はどのようなことをやられているのかということをまずお伺いしたいのが1点でございます。

 それからもう1つは、時価というものを取り入れるときに、不動産に関してはいろいろな時価があって、非常に幅があるというようなお話だったかと思うんですが、例えば本当に概略で結構でございますので、一番高い時価と低い時価でどの程度の開きがあるのか、もし一般的なところでアイデアをいただければと思います。よろしくお願いします。

○岩田委員 最初の投資意思決定の仕方、事業を開始する方法までの議論だと思うんですが、今まで投資者も、大体ほかの不動産会社もそうだと思うんですけれども、大きさとか規模とかそういうものを確定しましたら、賃料がどれぐらい取れるというところで総事業費がはかられまして、それを何年で回収していくか、例えば賃料が幾らだからといろいろやっていくと、例えば単年度黒字が何年目で累損解消が何年、借入金返済が何年という形でもって事業をどうするかということをやっておりました。

 ただ、最近、いろいろ考え方もありまして、賃料がやはり右肩上がりになかなかできないということもございまして、意思決定の方法の中にはDCFを用いたやり方も最近は出てきておりますが、まだ割と大勢は私が今申し上げたようなやり方ではないかなと思っております。ただ、やはり今後、収益還元法の問題もありましたけれども、考え方としてはDCFの考え方を当然取り入れていかなければだめかなと。特に所有をずっと続けることが前提になっておりましたので、途中で現在価値に割り戻すみたいな議論はなかなかしてこなかったというのが事実でございます。

 高い時価と低い時価というお話なんですけれども、これは1つの物件についてということでございましょうか。1つの土地とかということですか。

○太田委員 はい、同じものについて取った場合に。

○岩田委員 固定資産税評価額とか路線価とかといったものがあるんですけれども、一番低いのが路線価と言われるものではないか。それを0.7とか0.8で割り戻していくと、固定資産評価額という形の数字ぐらいになっているんでしょうか。それで、実際は今度、取引価格というのがございますので、今、一番使うのはその3つぐらいかなと思います。それぐらいの感じでございます。3割、4割違うとか、5割以上違うみたいな議論にはちょっとならないと思います。

○斎藤部会長 品川委員、どうぞ。

○品川委員 今の御説明のところ、実は私は実務を長い間やっておりましたものですから、ちょっと補足させていただいて、質問にかえさせていただきます。今、相続税の評価と固定資産税の評価はそれぞれ路線価を別々につくっておりまして、相続税の路線価は公示価格に対する8割水準、固定資産税については7割水準ということで、一応は固定資産税が一番低いことになっているわけですね。しかし、固定資産税については現在、いろいろな負担調整を取っておりまして、昨年までは7割の8割を上限にするという調整措置がとられておりますし、ことしの税制改正では段階的にそれを7割にもっていく。従って7・7・49で49%水準にもっていこうというのが現在の自治省の対応の仕方であります。

 この問題については、この2ページにまとめられた以外に、課税上は所得税、法人税の問題に絡めてその評価をどうするかということが、実務的には常に問題になるはずであろうかと思います。その問題は、マル5の実勢価格に大体は符合するわけですが、この実勢価格自体は、もともとこの不動産鑑定士の評価が公示価格と基準値価格に対応されておりますので、その辺はタイムラグを除けば大体一致するはずなんですが、実務的には必ずしも一致しないという問題があります。

 それから、あとは質問なんですが、前回の御報告では、時価が非常にばらばらであると。昔はよく公的土地評価の一元化をすべきだということが国会等でも非常に議論されたわけでありますが、ただ、実務的には逆にいろんな時価があるということは、それを調整するとある程度のその目的に合った時価の調整ができるのではないかというふうに考えられますし、その辺、実務的に申し上げますのは、会社が、岩田委員の立場で、そういうことが可能なのか。私は課税上の立場でむしろそういう調整がかなり容易にできてくるようになっていたと感じているんですが、その辺が実際、課税とは別にこういう会計上、土地を評価する場合においてそれが可能なのかどうかということが1点お聞きしたいことです。

 それからもう1点、従来の土地の評価は取引価格中心で来たわけでありますが、御報告のように収益還元価格が非常に重視されてきたということは御報告のとおりだと思うんですが、ただ私もその収益還元価格をどういうふうに具体的に算定するかという場合に、通常、値上がり益、値下がり損というのはそれに反映しないやり方が大部分とられているんですけれども、広義の意味の土地の収益というのは、当然、この値上がり益、値下がり損ということを考慮した上でないと、投資とか賃貸とかというところから適正な賃料の算定というのは非常に難しいのではないかと考えられるわけでありますが、その辺、特に最近のこの地価が下落している場合において、何年間保有していればどのくらい地価が下落するだろうという予測を見込んだ上での収益還元価格というのは算定が可能なのかどうか、実際、どうやっておられるのかどうか、その辺を実務上の観点からお教えいただければと思います。

○岩田委員 まず、後の方の話なんですけれども、土地の下落率というよりも、要するに5年なり10年なりの期間の中でキャップレートというのがありまして、例えば10年後の価値に対してどれぐらいで今割り戻すかという割り戻し率をキャップレートと呼んでいるんですけれども、それがそのときの収入とのバランスの中から数字を割り戻して現在価値をつくると、そういったような形で今考えておりますので、下落率をどうするかよりも、どういう割り戻しの仕方をするかというのが、今のところ非常に重要な要件になっているかなと思っております。

○品川委員 そうすると、収益と率が二大要素になっているわけですが、その割り戻し率の方が専らの関心事で、収益そのものについては余り厳格に詰めてはいないということですか。

○岩田委員 一応厳格に賃料とかそういうものを見ながら数字としては押さえまして、それでどれだけの割り戻し率で戻したときに価値として認められるかという議論に今なっていると思います。

○品川委員 そうすると、平常な賃料だけを見ているわけですね。

○岩田委員 基本的には若干のアップ率はありますけれども、通常のキャッシュ・フローを見ているという考え方です。

 それと、最初の方なんですけれども、これは私ども会社の中で数字を調整するかということでございましょうか。

○品川委員 いえ、指標が5つあれば、その指標の特性を把握しておけは、むしろ会計上の目的に合った評価が容易ではないのか、非常にコストが高い第三者に鑑定をわざわざ依頼することもないということは考えられないのかということを、実務上の観点からお教えいただければと思います。

○岩田委員 実際、そういう点はございます。ですから、公示価格とかそういった調整なんかもできますので、その他何を選択するかという議論も一方であるんですけれども、そういった簡易的な数字は把握することができる、それはそのとおりでございます。

 ただ、今回、固定資産ではありませんけれども、販売不動産の方、棚卸資産の評価減の議論のときに、どの数字を使って評価減するかというところで非常にもめたことがございまして、これによってかなり数字が違ったり、中には数値自体も異なる、例えば路線価格があるものとないものとの関係とか、そういった中で、本来数字がなかなかできないものが、例えばマイナス評価になるものが路線価と固定資産評価額の中では逆の結果が出ているというのもちょっとありまして、大体はそういった使い方ができるんですけれども、最後、そういった問題が出てきたということが実務としてありました。

○品川委員 ありがとうございました。

○斎藤部会長 ほぼ予定した時間になってしまいましたので、恐縮でございますが、後でもう一度、総合的なディスカッションの時間を設けますので、先へ進ませていただきます。

 次に、日本公認会計士協会における固定資産の会計処理に関連する問題意識や実務指針の作成状況等について御報告をお願いしたいと存じます。

 まず、西川委員からお願いいたします。

○西川委員 それでは最初に、資料1−1の「固定資産会計に関連する日本公認会計士協会の委員会報告等」という紙で、今までどういうものを出してきているかということと、それから今現在公開中のもの、それからこれからどうしようかという議論中のものといったことを、概略御報告させていただきたいと思います。

 一応、委員会報告の方ですけれども、古い順に並べたような感じになっております。昔のものについては割とオーソドックスなことが書いてあるということで、余り説明を要しないものではないかという感じでございます。最初にありますのが「減価償却に関する会計処理及び監査上の取扱い」ということで、1.正規の減価償却とはどういうものだということで、それは必ずしも税法の規定に依存するものではないというのがありますけれども、3の監査上の取扱いのところで、法人税法に規定する普通償却限度額を正規の減価償却費として処理する場合は当面、監査上妥当なものとして取扱うというようなことが述べられております。それから、特別償却は正規の減価償却に該当しない、そのほかに2.臨時償却とはどういうものかといったようなことについて述べております。

 それから2枚目にまいりまして、「不動産開発事業を行う場合の支払利子の監査上の取扱いについて」です。これは原価算入をどういう場合に認めるか、その要件を言っているということで、○所要資金が特別の借入金によって調達されていること、○適用利率は一般に妥当なものであること、○原価算入の終わる時点は開発の完了までとすること、○開発期間の支払利子であること、○着手から完了まで相当の長期間を要するものであり、金額が重要であること、○原価算入を注記すること、○みだりに変更しないこと、といったような要件を入れておりまして、これを原価算入することを認めるという要件にしています。IASの方も借入れコストの認められる代替処理として直接的に帰属するような利子については認められる代替処理で原価算入するというふうになっているので、似ているといえば似ているんですけれども、向こうは認められる代替処理という選択をすれば全部同じような処理をするということで、微妙に違うかもしれないという感じがしております。これはあくまでも監査上の取扱いということで、具体的な対応ということで出てきているものということでございます。

 それから、その次のこれも監査上よく使われるものなんですけれども、「関係会社間の取引に係る土地・設備等の売却益の計上についての監査上の取扱い」ということで、これにつきましても、もともと変だなというような取引が出てきているということを受けて作成されているものです。評価益計上と同一の結果を招くようなことにならないようにということのための扱いということで、会計上の利益が実現したかどうかの判定の留意点というのを挙げております。これらを全部満たしていれば、会計上の利益が実現したというようなことを認めていいというようなことになるわけで、○合理的な経営計画の一環として取引がなされていること、○買戻条件付売買でないこと、○資産譲渡取引に関する法律的要件を備えていること、○譲受会社において、資産の運用について主体性があること、○引渡しまたは所有権移転の登記があること、○代金回収条件が明確かつ妥当であること、○売主が譲渡資産を引続き使用しているときは、それに合理性があるということを求めております。

 それから、その次のページにいきまして、監査報告書作成日までに買戻しされてしまったというような場合は、売買取引はなかったものとして扱う、それ以降であっても、短期間のうちに買戻しが行われた場合で正当な理由がない場合は、売買取引がなかったような処理をしてもらうということを入れております。

 それから、「耐用年数の適用、変更及び表示と監査上の取扱い」につきましては、一般的な耐用年数とはどういうものかということと、耐用年数の変更が会計処理の原則または手続の変更に該当しないということを言っております。

 それから、「休止固定資産の会計処理及び表示と監査上の取扱い」、これは休止固定資産についても減価償却を行うということを言っております。それから経済価値の低下又は陳腐化が明らかな場合、臨時償却その他必要な措置を行い、特別損失として処理するということを入れております。

 それから、その次の「圧縮記帳に関する監査上の取扱い」なんですけれども、これは会計上、交換と収用等について同じような考え方をしているわけです。譲渡資産と同一種類、同一用途の固定資産を取得し、取得価額として譲渡資産の帳簿価額を付した場合は、簿価を引継ぐという会計処理を認めているということでございます。

 その次が「リース取引の会計処理及び開示に関する実務指針」、これは会計制度委員会で審議会の基準を受けて作成したものということになるわけですけれども、ここでは1.ファイナンス・リース取引の具体的な判定基準ということを言っておりまして、(1)所有権が借手に移転すると認められるリース取引として、まず○割安購入選択権というものと、○特別の仕様等によってほかの人が使用するというのは困難で、借手のみによって使用されることが明らかというケース。それから、(2)所有権移転外のリースとしましては、○リース料総額の現在価値が現金購入の場合のおおむね90%以上であること、あるいは○解約不能のリース期間が、経済的耐用年数のおおむね75%以上であること、こういう具体的なケースに当てはまった場合は、ファイナンス・リースに当たるということを規定しております。

 それから2.セール・アンド・リースバック取引につきまして、ファイナンス・リース取引に該当し、売買処理を行う場合、売却に伴う損益については繰延処理を行うということを決めておりますが、その売却損失が減損みたいなものであれば、その売却時の損失として計上するということにしております。

 会計制度委員会としては、最近もう一つありまして、それはちょっと別のペーパーになってしまっているんですけれども、資料1−3「研究開発費及びソフトウエアの会計処理に関する実務指針」というのがございます。これは研究開発費の会計基準を受けて作成した実務指針なんですけれども、内容的には七、八割がソフトウエアの会計処理ということで、そういう意味では無形固定資産の実務指針というような形になっておりますので、一応これも挙げておきました。研究開発費については当然、発生時の費用ということになるわけですけれども、2番目のところで「市場販売目的のソフトウエア」というものについて、これも基準の部分ですけれども、研究開発活動の終了時点は、最初に製品化された製品マスターの完成時点ということで、その後の機能の改良・強化を行うための費用というのが資産に計上されるということで、それは無形固定資産を計上することになるということです。

 その後の減価償却の方法なんですけれども、合理的な方法として、見込販売数量に基づく方法と、見込販売収益による方法を例示しているということになっております。ただ、その方法によった場合も均等償却を下回らないということにしておりまして、残存有効期間は原則として3年以内の年数とする、それから、見込販売数量あるいは見込販売収益を見直した結果、変動があるという場合には、償却費の額を補正をする必要が出てくるということでございます。

 それから、見直しの結果、予見することのできなかった販売数量等の著しい減少が見込まれるような場合については、経済価値の減少部分を一時の費用又は損失として処理するということを言っております。

 それから、「自社利用のソフトウエア」については、利用によって将来の収益獲得又は費用削減が確実という場合に無形固定資産に計上する、それ以外の場合は費用処理するということでございますが、大幅に仕様変更をするという場合については、同じように将来の収益獲得または費用削減が確実かどうかで固定資産に計上するかどうかを判断するということです。自社利用ソフトにつきましては、一般的には定額法で5年以内償却ということを言っております。これについても利用可能期間の見直しであるとか、場合によっては一時的な費用損失処理を求める場合があるということでございます。

 以上が実務指針の関係、委員会報告の関係なんですけれども、引き続いて資料1−1の方に戻っていただきまして、そのほかに現行、動いているものとして審理情報というのがあるんですけれども、これらについては余り影響もないと思いますので、とりあえず審理情報関係は省略させていただきまして、その次に作成中のものということで、公開草案、これも監査委員会なんですけれども、「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い」というものがことしの1月に公表されております。これにつきましては、当然販売用不動産ですから棚卸資産ということで、外国の例といたしましては一応IASやアメリカ基準は低価法ということですので、この強制評価減の話は必要ないということだろうと思います。そういう意味ではローカル基準的なものになろうかと。これは極めて現実対応といいますか、非常に巨額な含み損を抱えている企業が多いのではないかということに対して、監査上リスクが高まっているということから出したということもありまして、公開草案で実際にこれが委員会報告として効力を発揮するのは、強制という意味では来年度なんですけれども、もともと商法の強制評価減の規定自体そのものはあるということで、それをどういうふうに適用するかという技術的な話だけであるので、そういう意味ではこの3月決算からこれを参考にして商法の評価減をやってもらいたいというのが協会のスタンスということでございます。

 内容的に見ていきますと、1.販売用不動産に適用する時価というのは、これは販売用とはっきりしておりますので、正味実現可能価額が妥当である、それから、2.時価の著しい下落をどういうふうに判定するかということですが、おおむね50%以上下落している場合としております。

 それから、不動産の評価について大きく分けまして、開発を行わない不動産、または開発が完了した不動産というものと、これから開発後販売する不動産というふうに分けまして、時価の算定方法について2つの式を出しております。

 3.開発が不要という方は、販売用不動産の時価=販売見込額−販売経費等見込額ということで、4.開発を要する方は、開発事業等支出金の時価=完成後販売見込額−(造成・建築工事原価今後発生見込額+販売経費等見込額)となっております。

 ただ、開発を要する方で、開発計画の実現可能性が認められないものについては、原則として開発を行わない不動産の方に入れるということにしております。では、その開発計画の実現可能性というのはどういう判断をするのかということですけれども、具体的にはその次のページになります。

 (3)実現可能性のない開発計画と判断するものについて、開発用の土地等の買収が完了していないために、着工予定からおおむね5年を経過している開発計画、あるいは土地等は買収済みなんだけれども、買収後おおむね5年を経過しても着工していない計画、それから着工はしているけれども、途中で工事を中断しておおむね2年を経過している開発計画というようなことを挙げております。

 6.強制評価減をするというときの時価の選択なんですけれども、これについては(1)販売用不動産等を取り巻く諸条件の下で、販売公表価格、鑑定評価額、公示価格、路線価による相続税評価額等の時価の中から、最も適切と判断する時価を選択するということになっておりまして、(2)この評価方法は、毎期継続して適用ということでございます。(3)販売不動産等の評価は、1事業年度に最低一回は実施する必要があるということにしております。

 それから、7.時価が下落しているんですが、回復すると見込まれるという場合に、強制評価減を実施せずに取得価額を付すという場合には、その旨を注記する必要があるということです。

 それから、8.販売用不動産等について保有目的変更を行うと、これは固定資産の減損会計がまだこれから出るという段階のところで棚卸資産を先に出しているということもありまして、固定資産に持っていけば評価減しなくてもいいのではないかというようなことになるとまずいということで、経済的合理性がない保有目的変更の会計処理は認められないということを入れております。

 特徴としましては、この販売用不動産ということで、ある程度数も絞られているということもあると思うんですけれども、固定資産会計の場合ですとどういうときに評価減をしようかという判断の兆候であるとか、そういうものをまず全部の固定資産についてやらないわけですから、そういう検討が最初にあるかと思うんですけれども、これは棚卸資産ですから特にそういうことについてうたっていない。それから、時価の方も、販売ということを通じて実現するということですので、正味実現可能価額であるというふうにはっきりしているということだろうと思いますので、固定資産の減損会計の方はもうちょっと複雑になるのかなという感じがしております。

 それから最後に、一番下に書いてあります「特別目的会社を活用した不動産の証券化に関する会計処理」というのは、これは非常に最近、ニーズが高いということもあって、何らかの会計処理の対応をしなければいけないということで、会計士協会でこれから議論をしていくわけですけれども、できれば公開草案にして実務指針にしたいと、基準を受けたものではありませんけれども、そういうことを考えておりまして、内容についてはこの後、秋葉委員の方から説明していただきたいと思います。

 それでもう一つ、会計士協会の問題意識ということで言われたわけですけれども、一応ずっといろいろ見直してみましても、特に固定資産会計でカバーしなければいけない領域というのは、新しい領域というのは特にないんだと思いますので、今回、審議会のこの議論の中で減損会計が明らかになると、これは当然必要だろうと思いますし、必要があれば実務指針を作成するということを考えたいと思いますけれども、そのほかにつきましては、これから検討する不動産の証券化みたいな話ですね、これをどこまで具体的に規定すればいいかということはあるわけですけれども、本当に売却したのかしないのかがよくわからないような取引について、どういう対応をしていくか、答えは難しいんですけれども、何らかの対応をしなければいけないなということは考えております。それ以外のことについては、今のところ、特段思い浮かんでいないというような感じでございます。

○斎藤部会長 大変パンクチュアルにスケジュールをお守りいただきまして、ありがとうございました。

 続いて、秋葉委員にお願いいたします。

○秋葉委員 私の方からは、資料1−2にございます会計士協会、会計制度委員会、特別目的会社専門委員会における審議の状況について、簡単にお話しさせていただきたいと思います。

 今、協会の西川常務理事の方から御説明がありまして、私自身は一会員ではありますが、協会のコメントというような立場にはないわけですが、この専門委員会の方に属しております関係で、これまでの審議状況について御説明させていただきたいと思います。

 まず、現在、1.諮問としまして「特別目的会社、いわゆるスペシャル・パーパス・カンパニーと呼ばれるようなSPCを活用した不動産証券化に関する会計処理について検討されたい」というものが出ておりまして、これについて次の2にありますように、昨年の12月以降、検討を開始しております。これは高橋専門委員長を含め、私を含めて6人で議論しておりますが、ほぼこの企業会計審議会と同時にスタートしまして、既に7回開催しております。実はこれは昨日も5時間ぐらい議論しまして、最後の4の(1)にありますように、また月曜日に8回目の議論をするというように精力的に進んでいるわけですけれども、後ほど御紹介しますように、必ずしもなかなか議論が収束しているわけではないという状況にあろうかと思います。

 実際に今後どう進めるかというのは、今、西川常務理事の方から、できれば実務指針でというお話がありましたが、実際に2月下旬の会計制度委員会の正副委員長会議、これはちょっと私自身も会計士協会の手続関係のところに不案内な部分があるんですけれども、そちらの方でも検討されていると聞いております。

 具体的になぜこのようなものが問題になって検討を諮っているかということでございますが、ちょっとここには触れてございませんけれども、いわゆる標題にありますような「SPCを活用した不動産証券化」というもののスキームでございますが、これは不動産をSPCと呼ばれるような会社なりほかの事業体もあるわけですが、そちらの方に売却して、そのSPCがいわゆる社債や借入金のようなデットと、それから資本のような形のエクイティを用いて資金を調達して、当該不動産を購入するようなスキームをもって資金調達なりを図るわけですが、このときに会計上問題になりますのは、このSPCに対する不動産の売却を、会計上売却処理として認めていいのかどうかという点が一つと、もう一つは、このSPCと呼ばれるような事業体を連結の対象にしなくていいのかどうかという点の2つが一般的に議論の対象になっておりまして、逆に言えば、実務の方が、最近の財務の流れでオフ・バランスのニーズというのが非常に高まっている部分と、それから特に不動産を利用する場合には、売却処理を行うことができれば売却益が計上されるということで、恐らくこの2つぐらいの理由が、かなり売手の方についてはニーズがあるわけですが、先ほどもお話がありましたように、全く売切りであれば問題はないわけですけれども、いわゆる売手の方が何らかの形でこのSPCに関係を持つ、ないしは売った物件に関係を持つということで、売却処理を認めていいのかどうかという点が問題になっております。

 これは金融商品に関しましても、いわゆるオフ・バランス化の問題につきまして出たのと非常に似ているわけですが、金融商品の場合には売却益が出るケースというのが株式とか一部の含み益の持つようなもの以外は、いわゆるバランスシートの問題としては重要でしたけれども、損益の問題というのは不動産よりも少なかったんじゃないかなということが考えられますが、問題の所在としては同じことであります。

 したがいまして、この売却を認めていいかどうか、実現益というものをどう考えるかというのが一つのポイントになるわけですが、そういう意味で次の3番目に、これまでの論点ということを簡単にまとめさせていただきました。

 まず、3の(1)は不動産の売却処理をどう考えるかということで、先ほど金融商品の例を挙げましたが、金融商品の会計基準の方でも、考え方としていわゆる財務構成要素アプローチというものと、リスク経済価値アプローチというものと2つ並べていたわけですが、今後は財務構成要素アプローチをとる、ところが不動産の場合には、金融商品の持つ性格と異なるということでリスク経済価値アプローチをとるべきであろうという考え方、これはほぼコンセンサスを得ております。

 この際に、不動産の売却手法の考え方が、先ほどのお話ですと、実際上問題がないのかというお話がありましたが、現状、基準なり会計士協会の指針としまして明確なものがなく、実務上は先ほども出た関係会社間の土地設備の売却益が出た場合の監査上の扱いという指針と、それから審理室情報から出ております土地信託の売却にかかわる話、この2本だけのどちらかというと細々とした指針をもっていろいろと難しい問題を考えなければいけないという状態になっておりますので、ここをどう考えるかという点が議論の焦点になっております。

 それから(2)の不動産信託受益権の売却処理の扱いでございますが、特に不動産の証券化の場合には、価格の問題から不動産信託受益権を用いて売却処理を行おうというようなスキームが結構多くて、その場合にも単純な分割をされているケース、これは比較的問題が少ないんですけれども、優先劣後といったような形の質的に分割されている場合にどう考えるかというような問題がございます。

 それと(3)、この不動産の証券化も、売却しました物件とのかかわりという意味では、いわゆるリースバックを伴うケースが非常に多くございまして、この不動産のセール・アンド・リースバック取引という、古くて新しい問題をどう扱うかという点が議論になっております。

 この場合も、先ほどの御報告にもありましたが、このリースバックがファイナンスリースになる場合には問題がないわけですが、不動産の指標の場合にはほとんどリースバックはいわゆるオペレーティング・リースバック、いわゆる賃貸バックと言われているような形になりますので、現状の実務慣行を前提にすれば、リースバックがオペレーティングリースであれば売却益が一時的に生じるということになりまして、ここの扱いをどうするかという点が問題になっております。

 それと(4)のところですが、もう一つの証券化にかかわる特有の問題としまして、この特別目的会社SPCの連結という話があるんですが、これは基本的にこの企業会計審議会の方で1998年10月に連結の問題を議論した際に、具体的な取扱いという形で、不動産に限らず特別目的会社の連結の話をしておりますので、差当たりはこれに従うべきといいますか、従うしかないわけですが、ただ、SPCの利用の仕方も、この証券化のスキーム以外に、逆に投資家の方から見た場合、具体的には金融審議会なんかでも議論されておりますが、SPCの利用も資産の流動化を念頭に置いたスキームのほかに、資産の運用を念頭に置いた使い方というのがある場合に、投資家サイドの連結としてどう考えるか、特に実質支配力基準の考え方からすると、連結の是非というのが必ずしも現状の指針なり基準では明確ではないんじゃないかというような議論がされております。

 それと、実務的には(5)にありますように、新たにこれをつくる場合にどういう形で適用するか、過去の取引まで対象にするのか、それ以降の取引にするのか、それ以降の場合でも、どういった場合に見直すような必要があるのかというような点が議論されております。

 このようなことを議論しておりまして、できるだけ早急にというような指示がございますので、また来週以降も検討するような運びになっております。

 以上、簡単ですけれども御報告させていただきました。

○斎藤部会長 大変ありがとうございました。

 それでは、ただいまの西川委員、並びに秋葉委員の御報告に関連いたしまして、御意見、御質問等、御自由に御発言ください。川村委員、どうぞ。

○川村委員 今の秋葉委員の御報告の中で、不動産の売却処理についてはリスク経済価値アプローチを採用することでコンセンサスを得ているというお話だったんですけれども、金融資産の証券化の場合に比べて、なぜリスク経済価値アプローチの方がいいのかという根拠について、お聞かせ願えればと思います。

○秋葉委員 これは私の方も教えていただきたい部分があるんですが、一応、皆さんの理解としては、世界的なといいますか、海外の流れも金融資産と非金融資産、これは端的にいえばのれんを持つ商品とそうじゃない商品を分けて、のれんを持つような不動産につきましては、不動産のみならずその他一般の非金融資産については、大きく分けるとリスク経済価値アプローチをとるということではなかろうかという理解でいると思います。お答えになっているかどうかわかりませんが、すみません。

○斎藤部会長 補足して御発言ありますか。西川委員、どうぞ。

○西川委員 一応リース会計のファイナンスリースのオン・バランス化というようなあたりは、完全にリスク経済価値アプローチだからということになるんだと思います。

○斎藤部会長 よろしゅうございますか。要するに実物資産は、丸ごとでしか扱わないということですか、例えば10年の耐用期間を持った資産を4年間だけリースして、4年目の後に取り返すということは考えない、全部丸ごと移転するか、丸ごと持っているかという考え方で実物資産を扱うと、そういうことでしょうか。

 川村委員、よろしゅうございますか。

 お待たせしました、辻山委員、どうぞ。

○辻山委員 全くの用語の確認なんですけれども、西川委員の報告の中の6ページ、公開草案の1でございますけれども、特に販売用不動産等に適用する時価という項目です。売却時価を資産の評価額の基礎とする正味実現可能価額ということですけれども、これはあくまでも評価減といいますか、原価よりそれが下回っている場合に限定された文言であると、これは言うまでもないことだと思うんですけれども、そのように理解してよろしいでしょうか。

○斎藤部会長 西川委員、よろしゅうございますか。

○西川委員 はい。

○斎藤部会長 確かにこれを見ますと、ちょっとミス・リーディングですね。これ、在庫は全部時価評価をしろと言っているような表現に見えなくもないので、そうしますとそれはそれでまた別に議論が必要になると思いますが。

○西川委員 これはまだ公開草案ですので、そういうことであれば直す余地はいかようにでもあると思います。

○辻山委員 どうもありがとうございました。

○斎藤部会長 ほかに御発言ございませんか。安藤委員、どうぞ。

○安藤委員 ちょっと直接内容にかかわることではなくて、公認会計士協会の内部の組織の委員会が幾つかあるようなんですけれども、そういうレベルの話をして恐縮なんですけれども、報告された中に、監査上の取扱いとあるのが監査委員会で、それから実務指針は会計制度委員会ですか、こういうテーマの割振りというのは何かルールに基づいてされているんですかというのが1点と、それから僕らが見ていると、実務指針というか、会計制度委員会でつくった方が企業の現場ではインパクトが強くて、監査上の取扱いというと何かワンクッションあるような印象を受けるんですが、その2点についてちょっと伺いたいと思います。直接内容とかかわらないことかもしれませんが、すみません。

○西川委員 一応、会計制度委員会の今の柱というのは、やはりこの企業会計審議会で出される基準のところで実務上の扱いを委ねられた場合において実務指針を出すということが柱になっておりまして、ただ、現実の実務上の問題が出てきたときに、どちらで扱うかと悩むことというのは多いんですけれども、実務指針から関連したことは引続き会計制度委員会で議論したり、案件ごとにどこで扱うべきかというふうに判断しているというのはありまして、そういう意味では違った方で議論をしてしまうということがないわけではないかもしれないんですけれども。

○安藤委員 それから、企業へのインパクトは、私が言ったようなことでよろしいですか。監査上の取扱いの方が、企業の実務の現場に対してワンクッションあると。それとも全く同等でしょうか。

○西川委員 我々の意識の中では、監査上の取扱いが出るときというのはある程度かなり切迫したような状況の場合があり得るんですね。例えば販売用不動産のものについても、非常に監査リスクが高まっているということで、どうしても会社等には評価減をある程度してほしいということで、インパクトがないと困るものです。ですから、確かに監査上の取扱いという標題で会社に影響を与えようというのは難しいのかもしれないんですけれども、そういう緊急性のあるものが出ていることがよくあると思います。

○安藤委員 この問題は、この間の太田委員が報告された、IASのE64で、あれはアメリカでやったのかな、FASBかSASかで、例えば企業の継続能力は一体どちらで扱っているのか、あと、ここでもやりましたよね、あの問題は企業会計審議会第一部会でもやってくれとか、今、第二部会でやっていますけれどもね、それとちょっと通じるところがあるんですよね。というような問題意識を私は持っているんです。

○斎藤部会長 それでは、品川委員、どうぞ。

○品川委員 西川委員にちょっとお尋ねしたいんですけれども、圧縮記帳に関する取扱いに関して、現在では当面監査上妥当なものとして扱うということで、税法の取扱いで容認した形になっているんですが、当面ということに関して近いうちにこれを見直すということがあるのかどうかということと、ここに上がっているのは交換の圧縮と収用等の圧縮ですが、この保険差益のようなものについては圧縮はどういうふうに対応するのかということと、そもそも会計的にこういう税法上採用している圧縮記帳について理論的にどう考えているのか、譲渡があったものなのか、なかったものなのか、その辺をあわせて御説明いただければと思います。

○西川委員 保険差益については、ちょっと最終確認をしないとあれですけれども、収用等の等の中に入っているんじゃないかと思います。要するにこの43号というのは、むしろ税法の規定を会計的に説明しているようなところがあると思うんです。IASにも同じようなものがあったかと思いますけれども、同一種類、同一用途の資産を取得するということは、前の資産を持っていたときの収益の実現が起きていないと、要するに固定資産というのは売却して実現するんじゃなくて、それを使用することによって会社に利益を与えていくというものですから、そういう、言葉は忘れてしまいましたけれども、実現の過程は終わっていないというようなことで、簿価を引き継げるという会計上の理屈があると思うんですけれども、それを使って、時価ではなくて前の簿価を引き継げるような考え方を入れているということだと思います。ですから、この当面というのは、当面変える予定はないというものだと思います。

○斎藤部会長 ほかに御発言はございますか。小宮山委員、どうぞ。

○小宮山委員 ちょっと感想みたいな質問なんですけれども、この減価償却のところからずっと最後の委員会報告の一連のものを見ていくと、当部会のテーマというのは固定資産会計を扱えということになっているんですけれども、土地、建物という不動産に対する問題点と、それから機械装置という固定資産に対する問題点というのが混在しているんだろうと思うんです。従来、連続意見書とか、委員会報告の中で言ってきた臨時償却というのは、頭の中で考えると、機械装置なんかにはまる考え方なんですね。機能的減価という考え方、特に今、通信とか情報とかという産業を考えると、設備の陳腐化のスピードがものすごく早いですね。それと不動産の値下がりをベースにした利回りの低下という、この2つの問題が固定資産会計の中で走っているような、そんな印象を受けるんです。この2つというのはやっぱり今後、少し分けて議論をした方がいいのかな、そうでないと、非常に議論の争点が、時価の値下がりの問題と機能的減価という話が並行して走っているような印象を持つんです。

○斎藤部会長 今の問題について、関連して御発言はございますか。秋葉委員、どうぞ。

○秋葉委員 まさしく今のお話は私自身も思っておりまして、先ほど御報告を申し上げた不動産の証券化という場合の不動産は一体何を指すのか、どこまでが射程距離かというのは、実はこの委員会を既に7回開いておりますが、ほとんど話がされておりません。私の理解ですと、アメリカでもリアル・エステートという場合に、以前、66号と98号の定義が違っているので、昨年の段階でインタープレテーションだったと思いますけれども、リアル・エステートの定義を同一化するように改正されたというような経緯がありますように、この不動産というものをとっても、非常に範囲ないしは印象の持ち方が実は違うんじゃないかと。

 ちなみに、アメリカの場合ですと、土地、建物以外にもなかなか移設がしにくい、ないしはコストがかかるというような設備とか装置、これについてもリアル・エステートの範囲に入れているかと思いますので、そういうものも入るのか入らないのか、実はこれは結構難しいというか、議論の余地はあるように理解しております。

○斎藤部会長 ほかに御発言はございますか。今の小宮山委員の御指摘は、obsolescenceがあるかどうかということで分けておられるわけですが、同時に償却性かそうでないかということでも問題はかなり違ってくる可能性がございます。償却性の資産ですと、例えば減損いたしますと、それによって後の償却費が違ってきて利益が違いますが、非償却性ですと、その減損が直ちに後の年度の利益には影響しないわけですね、持っている限りは。仮に減損を考えたとした場合にも、その後の取扱い方はかなり違ってくる可能性がございまして、私も小宮山委員御指摘のようなobsolescenceのあるなしで分けてみるという考え方と、それから償却性かどうかで分けてみるという考え方と、いろいろ考えてみなければいけないなと考えております。

 ほかに御発言はないでしょうか。

○品川委員 もう一点よろしいですか。西川委員の御報告の中で、関係会社間の土地取引の問題でありますが、この監査上の取扱いについては、一応手法上というか契約の金額が妥当かどうかという議論で、むしろ評価益計上を否定しようという趣旨は理解できるんですが、関係会社間ですと、完全にこの譲渡の場合にも価格を操作する場合が非常に多いわけですね。時価が1億円であっても、これを1,000万円で譲渡する場合があるわけで、この低額譲渡については、かつて昭和41年の企業会計審議会の税法と企業会計との調整に関する意見書で、会計的にも1億円のものを1,000万円で売った場合には時価の差額9,000万円についてキャピタルゲインを認識すべきかどうか、会計上明らかにすべきであるという意見書が出されて、30何年放置されているわけですが、そういう低額譲渡の問題について、そもそも監査上議論したことがあるのかないのか。あるいは、する予定があるのかないのか。よく法人税法の第22条第2項が一人だけ悪者にされて議論されるんですけれども、あの問題はむしろ会計的に議論をしないのがおかしいのではないかと常々考えているんですが、そのあたりも含めてお願いします。

○西川委員 低額譲渡自体を議論してはいないんですが、この監査上の取扱いの書き方の構成の問題になってしまうのかもしれませんけれども、価格の妥当性というのは、この1から7の中には書いていないかもしれないんですけれども、それは大前提だというのが、どこかこの監査上の取扱いの説明か何かの中に書いてあったと思いますので、一応価格の妥当性は大前提だと、じゃあ、それはどういうことかと深く分析しているかというと、そうでもないんだと思いますけれども、特に低額譲渡に関してどうかというのは議論しておりません。

○斎藤部会長 それでは、おおむね予定した時間になりましたので、続きまして、長坂参考人から御報告をいただきたいと思います。

 本日の会議の冒頭で御紹介いたしましたように、長坂参考人はソニー株式会社国際会計部連結管理課において統括課長をされております。

 では、長坂参考人、よろしくお願い申し上げます。

○長坂参考人 ソニーの長坂でございます。よろしくお願いします。

 私どもの会社は連結決算をUS GAAPで行っておりますので、そこにおける減損会計の経験というものを若干御紹介させていただきます。

 当社は比較的保守的な経営を行っていると思っていますが、実際には減損会計を適用した例というのは余り多くはございません。これから紹介させていただく営業権の減損処理を除けば、遊休となったような機械装置ですとか遊休の土地、そういったものに適用したものが若干ある程度です。実際に使用して収益を生み出しているような資産については、US GAAPのFASB121で割引前のキャッシュ・フローを用いて減損の有無を判定するというところでは、減損の判定に至るという事例は余りないのではないかと思っております。

 営業権の償却ですが、1994年の会計年度、随分古くなるんですけれども、この連結決算で映画部門にかかる営業権の減損に伴う損失を2,650億円ほど計上しております。

 1994年度の当社のアニュアル・レポートにおきまして、財務諸表の脚注にその要旨を記載してありまして、最後の2ページに全文を載せさせていただいております。

 1ページ目から順番に御説明させていただきます。まず1.営業権の一時償却に至った背景ですが、当社は1989年11月にコロンビア・ピクチャーズを買収しまして、その際に3,830milドルの営業権を計上しております。

 買収当時は、次のような理由によって将来を大きく期待していました。(1)まず2年前、1988年1月に行ったCBSレコードの買収が非常にうまくいきまして、好業績をおさめていたこと。そういった理由によって映画でも同じようにうまくいくのではないかという期待があったわけですね。

 (2)映画と音楽、両方ともエンタテイメント産業で、これの両方のシナジー効果というものを期待していたこと。

 (3)エンタテイメントがまとまることによる投資効果の向上、それと映画部門はもともと経費がかかりますが、まとまってコントロールすることによって経費の大幅節減ができるのではないかと期待していましたが、実際にはこの期待は実現せずに、累計で多大の損失となっております。

 事業予算におきましても、その予算を達成したというのはそれまで1回しかなく、1992年、1993年は著しく下回ってしまいました。

 償却を実施する前に行いました、その後の4年間の中期計画でも、それまでの累損を上回るような損失を計上することが見込まれていました。キャッシュ・フローの計画についても、買収時点での予想よりも大きな不足が生じることが明らかになり、営業権の償却費をまかなう利益を上げるためにはさらに追加投資を必要とするようになったという状況でございます。

 そのような状況から、従来の認識としては事業の永久的な継続を前提にキャッシュ・フローにより残存簿価は全額回収できると判定したため評価の調整はしなかったと書いてありますが、基本的に永続すればいずれはキャッシュ・フローで回収できるだろうという判断のもとに、特に割引後のキャッシュ・フローと比較するなどの判定をその前に行っていたわけではございませんでした。

 ただ、この期にそういった状況を見まして、会計方針を変更いたしまして、将来の予測される営業キャッシュ・フローを現価まで割引いた額を対象として、投資がそれに達していない場合、その額を評価減をするというように変更いたしました。

 実際の計算上、将来の割引キャッシュ・フローが当初簿価を下回ったために、その下回った金額を評価減いたしました。

 3ページ目になりますが、これは実際の計算です。ある程度アニュアルレポートの脚注にも書いてございますが、1994年以降、35年間の営業キャッシュ・フローを見積もりまして――これは営業権の償却残存年数の分の営業キャッシュ・フローです――それから、2030年時点での残存価値による収入、売却した場合の収入ですね、それを見込んで、その合計を42bilドルと見込んでおります。

 これを9%の割引率で割り引いたところ、約3bilドルにしかなりませんでした。これは前提が当初数年間はキャッシュ・フローも赤ということで、その後半になって黒字になっていくという状況でしたので、合計のキャッシュ・フローから比べると相当ディスカウント後の金額が小さくなってしまうという状況でございました。

 その時点での会社の純投資額というものは、約5.8bilドルございまして、その差額の2.7bilドル、当時の円換算では2,600億円ですね、これを一時償却しております。

 5.8bilドルが純投資額なんですが、償却前の営業権は約3.5bilドル、取得時に3.8bilドルあったものが、毎年の償却で3.5bilドルまで下がっておりまして、それに対して営業権の一時償却が2.6bilドルで、営業権の残高は約852milドルという状況でございます。

 その下に、営業キャッシュ・フローの計算は実際にどのようにしたのかということを書いてございます。

 次のページですが、将来のキャッシュ・フロー計算に当たっての想定というものをしております。収入の伸び率を毎年5%。米国での一時償却時の金利水準が6%で、それに映画ビジネスのリスク・ファクターを加味して9%の割引率で割り引いております。キャッシュ・フローの期間は35年で、その時点で売却した場合の収入、最終年度のキャッシュ・フローの18倍というものを加えて、総キャッシュ・フローを計算しております。

 以上は実際の計算なんですけれども、最後のページに、どういった会計基準をベースにこの変更を行ったかということを説明してあります。APB17、第31項の無形固定資産の償却の再検討という項目で、「無形固定資産の価値および将来受けられる便益の見積り額が著しく減少した場合には、評価減を行う。」という項目があります。ただ、減損の測定方法については詳細な規定はございません。ディスカウンティッド・キャッシュ・フローを使うことも認められているというようにSECは解釈しており、私どもは実際評価減を行うに当たっては、SECとの確認をとっております。

 1994年9月の時点で、当社は減損処理を行ったんですけれども、その時点で、SFAS121が公開草案となっておりまして、これが1995年3月に発行されております。これによってGoodwillの減損に関する会計基準は現在では2つ存在することになっているという理解でおります。

 SFAS121は、減損の対象となった長期の有形・無形固定資産に関連する営業権は、減損の有無の判定および減損の測定の際に、それらの資産グループに含めて取り扱うこと、したがって、将来キャッシュ・フローを現在価値に割引かない状態で減損の有無を判定することを求めております。これはある文献によりますと、The

Impairment Test Level goodwillというような使い方をしているようです。

 しかし、買収の時点で特定の資産と関連づけられない営業権の償却については、従来の基準書であるAPB17号が適用されています。これは先ほども申し上げましたようにはっきりした詳細な規定はございませんが、APB17においては評価減の判定には現在価値に割引後のキャッシュ・フローを使うことも認められると解される、というのは、現在、公開草案となっているBusiness Combinationsの公開草案にも書いてあります。これはThe Enterprise level goodwillというような使い方がされているようです。

 これはちょっと感想なんですけれども、今のSFAS121とAPB17の規定の関係といいますか、そこら辺がいまいち実務的にはわかりにくいところかなと思っておりますので、規定を考える際には、そこら辺も考慮していただければというような感想を持っております。

 以上でございます。

○斎藤部会長 大変ありがとうございました。

 それでは、ただいまの長坂参考人の御報告に関しまして御意見、御質問等、御自由にお出しいただければと存じます。都委員、どうぞ。

○都委員 質問させていただきます。1つは、まだこういった減損会計がアメリカの中でなかったときに、経営としてこれを減損計上しようと御判断するに至った、経営上の判断の背景のようなものがもしあればお聞かせ願いたいと思います。

 それから、あとはこれを割り引く前の成長性を評価されておられるんですが、この辺は当然、経営として将来の見通しというのはある幅があるはずなんですが、当然一番上と一番下とあると思うんですけれども、この評価をされるときには、その幅の中で非常に高いところで見られたのか、あるいは保守的に見られたのか、その辺のところをお聞きしたいと思います。

 それから最後に、これは税の取扱いはどうなるんでしょうかということです。

○長坂参考人 後ろの方から申し上げますと、税務上はこれは全く関係ございません。

○都委員 損金にはならないと。

○長坂参考人 損金にはなりません。税務上はgoodwillの計上もございませんので、これはあくまでも会計上の処理ということでございます。

 それから、評価する際の幅ですけれども、これは私は実際に1994年のときには担当しておりませんで、詳細は存じておらないのですが、前に聞いたところでは、中間値をとっているとのことです。ベストケース、ワーストケース、中間と一応出しまして、中間値をとったというような話を聞いてはおります。ただ、確認はしてございません。

 それから、経営上の判断ですが、減損処理そのものについては、もともとは会計上の方から話は出てきたと私は理解しております。相当期待して買ったわけですけれども、それまでの期待を裏切って業績が低迷し、ちょうどそのころに経営陣を交代させたということもありました。こうした経営状況を見て会計的に見直しをするべきではないかという意見が、アメリカの経営担当から出てきました。それをベースに日本・アメリカ間でいろいろ検討をして決めていったわけです。最終的には経営判断も入ってきたのかもしれませんが、まず最初に出てきたのは会計上の話から出てきたと理解しております。

○都委員 どうもありがとうございました。

○斎藤部会長 ほかに御発言はございますか。品川委員、どうぞ。

○品川委員 冒頭に御説明のあった税務上の処理ですけれども、これはこの年代でしたら、当然営業権として会社が資産を計上すれば税法上も資産として計上されているわけですから、これを償却すれば、当然税法上も所得計算上も損金の額に算入されるわけですよね。これは任意償却ですから、昨年の税法改正で5年均一償却に戻しましたけれども、そのずっと前はまた均等償却でしたけれども、この1989年から1994年の場合は、資産に計上するのも自由だし、その計上した範囲内でいつでも損金に落とせるという、これは商法の規定と歩調を合わせていたはずですので、当然、税務上もこの分だけ損金の額に算入されたのではないかと思われますが、いかがですか。

○長坂参考人 日本からの投資はアメリカの持株会社にされておりまして、その持株会社がコロンビア・ピクチャーズの株式を買っているという形になっております。

○品川委員 そうすると、本社の営業権には載っていないということですか。

○長坂参考人 はい、本社の営業権には載っていません。この持株会社から投資されております。

○品川委員 子会社の営業権ですか。

○長坂参考人 はい、子会社の営業権です。アメリカの中でも、私の理解では資産買収をして、いろいろな資産と一緒に営業権も一緒に買った場合には、税務上、その当時ですけれども営業権として償却できたと思いますが、株式を買収しておりますので、それは連結をつくる際に営業権として出てきますけれども、基本的に税務上は償却できなかったと理解しております。

○品川委員 それでは、税法上は有価証券の取得価額に入っているんですか。

○長坂参考人 そうです。

○品川委員 そうしたら、おっしゃるように企業支配の対価として償却できないということになりますね。わかりました。

○斎藤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。都委員、どうぞ。

○都委員 それでは、もう1点だけお願いいたします。これは西川先生の方にお願いしたいんですが、もし日本の企業が今、同じような判断でこういったことをしようと思えばできるんでしょうか。もしできるのであれば、どういったことがよりどころになるんでしょうかということのお尋ねです。

○西川委員 連結調整勘定の償却ということですかね。

○都委員 はい、そうです。

○西川委員 規定はないと思います。

○都委員 規定は特にないということですか。はい、わかりました。

○斎藤部会長 ほかに御発言ございませんか。小宮山委員、どうぞ。

○小宮山委員 今のところは、先ほど言ったところと同じ論点なんだろうと思うんです。これ、日本の基準でやると、要するに減損の会計処理でやると恐らくキャッシュ・フローでやるのがマストになってくると思うんですね。それ以外に、日本の場合、機能的減価で何割みたいな考え方があるので、キャッシュ・フローを使うとひょっとしたらできないかもしれないけれども、例えば5割評価減をするという考え方をとるとできるのかなと、何かそういう感じがここの部分するんですよね。これは臨時償却の考え方と非常に似てくるので、減損会計が実質的に適用できるケースがあるのではないか。どうやってやるかというのは、また難しい話だろうと思うんですけれども。

 現行の制度でやると、臨時償却の理屈で押していくと、DCFを使えるかどうかというのが「はてな」という部分があるんじゃないかと私は思っているんです。

○斎藤部会長 太田委員、どうぞ。

○太田委員 今の論点なんですけれども、多分会計上あるいは帳簿上というんでしょうか、著しい下落ですとか回復の可能性がないというのは、そういう割と抽象的なところで決めているように思います。確かに実務上は50%とか30%とか、一律何%切り下げというようなところで動いているのがほとんどというか、多分実質的にすべてではないかと思うんですが、じゃあ逆に、こういうような著しい下落というものの会社としてはこういうキャッシュ・フローのついた基準でやるんだといって、もしそれで会計上処理してしまった場合に否定できるかというと、それはなかなか難しいのではないかなと個人的には考えます。

○斎藤部会長 ほかに御発言はございますか。辻山委員、どうぞ。

○辻山委員 単なる質問なんですけれども、先ほどちょっと聞き漏らしたと思うんですけれども、35年をとっていらっしゃるのは、40年の5年経過なので残りの期間というふうに承ったんですけれども、単なるバリューを出すときに18年分、これは何か一言いただけないでしょうか。聞き漏らしたのかもしれないんですけれども。

○長坂参考人 根拠は私もよくわからないんですけど、そのぐらいで売却できるだろうということだと思うんですが、私も当時はこれにかかわっていないので、実際に何で出したかというのは聞いておりません。

○斎藤部会長 どうぞ、中島委員。

○中島委員 今の見積もりのことでちょっとお尋ねしたいんですけれども、普通そういう経営計画とか何かをやられる場合に、35年というような長いタームで計算されるんですか。それともたまたまもう少し短い期間でやっていたのを、この場合はのれんの残っている償却期間が35年だからということで、それをそのまま延ばしたというふうに考えていいんでしょうか。

○長坂参考人 基本的には、長期のキャッシュ・フロー予測を作ってもせいぜい5年ぐらい、長くて7年とかそのぐらいしか数字は出せないので、その後は一定の率で伸びていくという前提で、このために計算したという形でございます。

○中島委員 そうすると、収入の伸びと金利の関係ということになりますかね。

○長坂参考人 そうですね。一応収入の伸び率5%というような形を前提にして、最初の方にもお話しましたけれども、最初の数年、二、三年はキャッシュ・フローでも赤という感じで、その後、収入が伸びていけばだんだん黒になっていくとようなものを、五、六年のものをつくって、その後その伸び率を使用してつくっているはずなんです。

○中島委員 ありがとうございました。

○斎藤部会長 ほかに御発言ございますか。安藤委員、どうぞ。

○安藤委員 ちょっとやじ馬的な質問ですけれども、この1994年度アニュアルレポートで、この2,651億円の営業権の償却を出したことによって、株価がどの程度振れたかというのは、何か伝わっていますか。

○長坂参考人 これは正確な数字は持っておりませんが、株価にはやはり影響があったと理解しております。

○安藤委員 それはマイナスの影響ということでしょうか。

○長坂参考人 マイナスの影響です。

○安藤委員 体質がよくなった、プラスになるとか。

○長坂参考人 リストラをやると、そういう場合もあります。

○斎藤部会長 理屈ではわからないですね、どちらに出るかは。織込み済みであれば、むしろそれよりよかったのであれば上がる可能性はあるわけです。

○長坂参考人 そうですね。多分十分織込んでいなかったんだと思うんですね。

○斎藤部会長 平松委員、どうぞ。

○平松委員 今の話で申しますと、やじ馬的なことで一言。当初、先ほどアメリカの持株会社を通じてコロンビア・ピクチャーズが買収された、それで営業権の償却が40年、もし日本の親会社がやっていれば5年以内というようなことで、むしろ株価を上げたのではないかと思っていたら、この一時償却で、それは上に振れたか下に振れたかわからないですけれども、非常に大きな影響があっただろうと。

 これは今の話を受けてたまたま思いついたことなんですが、私の質問、簡単ではあるんですが、先ほどSFAS121号とAPB17号ですね、このどちらかというと端境期といいますか定かでない時期に、SECの了解を得てこういうことをなさったということがあります。その場合に、たしかプライスウォーターハウスさんですか、監査法人の方はこういう時期にこの処理をすることについて何か戸惑いなり意見を出すことをちゅうちょする、そういうことはなかったんでしょうか。

○長坂参考人 いや、特にございません。SECに話を持っていったときも、プライス・ウォーターハウス(PW)も――現地の方のPWですけれども――サポート等をしていただいてやっているはずですので。

○斎藤部会長 はい、中島委員。

○中島委員 さっき小宮山さんがおっしゃったことに関連してなんですけれども、臨時償却で場合によっては読めるかもしれないというお話だったんですが、それはそうすると、今の臨時償却の中には、いわゆる償却という部分と減損の部分とが要するに渾然一体となって入っているという理解でよろしいですか。

○長坂参考人 その点は、今、確かなことは、よく分かりません。

○斎藤部会長 ほかに御発言はないでしょうか。辻山委員、どうぞ。

○辻山委員 この減損の問題というのは、そもそも会計の減価償却がどういう性格のものなのかということに密接に関係していると思うんですけれども、仮にこの償却を一時にしませんと、その後の年々の映画の方が、単年度で見ますと年度利益でマイナスになっていくわけですよね。それを減損というのは、この場合は明らかにキャッシュ・フローが当初の見積もりよりも少なくなったわけですから意味がありますけれども、当初から見積もりどおりのキャッシュ・フローを上げた場合でも、その利益の上がり方によってこの基準を適用しますと減損を適用した方がいいような結果が得られる場合等々ございますね。その場合に、減損で一時に償却するということは、言ってみれば、減価償却の過年度修正に該当するものが一時で償却することにならないのかということなんですね。

 それから、それとの関連で、先ほどちょっと経営者の交代という、アメリカなんかでよく経営者が交代しますと、テイキング・バス・メソッドといって、一時で損を出してしまえば、その後の利益が単年度で好転するという、そういう要素もあったと思うんです。前者の方は直接お答えにくいことだと思うんですけれども、後者の方は実際のところどうだったのか。たまたまセグメントの問題で打ち消し合うから、実際に利益が出ているものが、単年度で利益でなくなるから、一度に償却してしまえば、単年度利益に転じますよね。ただ、経営者が交代しますと、一度きれいにしてほしいという、その辺のところはどうなんでしょうか。

○長坂参考人 私は存じませんが、にそういう議論というかリクエストはあったかもしれません。しかし、基本的には会計的に見て、まず会計的なアプローチから行ったというのが実際だったと理解しております。

○斎藤部会長 今の辻山委員の御質問も、先ほどの都委員の御質問もそうなんですけれども、要するに減損を行うに至った経緯、背景の議論というのは私どもから見ると非常に興味深い議論です。基本的にはその減損会計を行うインセンティブを発行体の方でどういうふうに持っているのかということですね。同時に、そういう情報が出たときの情報のユーザーの側がそれに対してどう反応をするか、どういうふうに評価するか、そういう問題にかかわっている非常に興味深い議論なんですが、余りお伺いいたしますと、やじ馬的と申しますか、余りにも内情に踏み込むことになりますので、一応時間も予定したところを既に超過しておりますので、一たん長坂参考人のお話についての質疑を打ち切らせていただきます。大変ありがとうございました。

 あと、まだ20分ほど時間を残してあるんですけれども、第2回、第3回のヒアリングまで振り返りまして、追加的な質疑とかその他御意見等があれば、この機会に少しまとめて御発言いただければと思います。もちろん今の長坂参考人のお話に戻ってくださっても構いません。

○安藤委員 前回になるんですか、きょうもちょっと引き継ぎましたが、岩田委員の御報告の投資不動産ですね。それからそれに関連して、これは太田委員で間違いないんでしょうか、前回、IASのE64ですね、それが私には大変対照的で、ちょうどホームページとかで報じられている、IASの内部の議論の縮図みたいなものがやはり出ていると思うんです。E64を決定するときにもやはり激論が相当あって、5日間だか投票を繰り返して、やっと最後に決まったというようなことになっておりますが、その根本には、私はこれは古くて新しい問題だと思うんですけれども、今まで言われている言葉で言えば、企業の立場に立った主観価値説の考え方と、それから市場の立場に立った客観価値説、要するに時価でいくという、これは私の認識ですと、私は商法会計の歴史をやっていましたので、ドイツの旧商法ですね、1861年の、その1850年代に、ニルンベルクの立法会議で延々とやった中にもう既に出ているんですよね。経営者の立場あるいは企業の立場をとる委員は、これは絶対に取得原価主義。取得原価主義というのは、500年前からずっとやってきたわけで、そういう歴史があると。これは商人の立場、企業の立場なんですね。

 それに対して証券投資家、市場の立場、あるいはそういった企業を評価する立場の人から見ると時価を知りたいということで、これはですから非常に古くて、そしてまた今、それが非常に脚光を浴びているテーマになっているという点では非常におもしろいなと。つまり、何も今出てきた話ではないんだ、少なくとも150年前から既にある話が、ここに来て、私に言わせれば市場論理が非常に強くなったので、投資不動産ということで最後の企業の論理が踏ん張っているなというのが、私の印象でございます。

○斎藤部会長 ありがとうございました。辻山委員、どうぞ。

○辻山委員 それにちょっと関連したことなんですけれども、実は今、安藤先生からの市場の論理ということなんですけれども、もう少し厳密に考えてみますと、市場の欲しがっている情報というのは、一体本当に時価なんだろうかということを改めて考えてみる必要があると思うんです。例えばこの減損の問題はのれんの問題に深くかかわっているんですけれども、負ののれんと正ののれんというのは一応ロジックとしては対照的というか整合的な議論、一応まずはそこをやってみる必要があるのかなという感じがするんですが、例えば正ののれんで考えますと非常にわかりやすいのは、投資家がある投資プロジェクトに投資しまして、そこからキャッシュ・フローが年々出てくる、購入原価よりもキャッシュ・フローの割引現在価値が高いから投資に参入していくわけですよね。

 そうしますと、投資したその瞬間に、例えば割引現在価値ですべての資産を時価評価するということは、会計情報として、ストックの情報として情報価値があるのかもしれないけれども、その会計上の利益というものは、実際にその投資をもくろんだときのキャッシュ・フローがその後年々予定どおり回収されていっているのかどうかというフロー情報であったと思うんです。

 ですから、そういう意味ではストックを時価で評価してみる、あるいは割引現在価値、収益還元法でも何でもいいんですけれども、そういうもので評価して、そういう情報要求が高まったということと、そこで出てくる差額というものが会計上予定していた、情報として当初想定していた利益情報なのかというのをちょっと分けて考えてみる必要があるのかなということが1つです。

 そして、もう1つは、現在の議論の中で、先ほど西川委員のあれでちょっと私はこだわって質問したんですけれども、正ののれんは想定していないんだ、そういうことを議論しているんではないんだということになりますと、そうするとその負ののれんが生じたときに、少しそのことを市場に早く知らしめるということが、それはストックの減損の問題ですね、ですから、その減損を一時に損というふうに考えることが、会計の構造の中で自明のことなのかというのはちょっともう一つ、先ほど償却の議論もありましたけれども、結局1つは過年度償却の修正の意味もありますし、あるいは将来の見積もりが狂って、負ののれんが生じた場合でも、それを一時に利益としてフロー情報として考えることはどういうことなのかということも少し詰めて考える必要があるのかなという感じがするんです。

 ですから、市場というと、市場が時価を欲しがっているというのは、ストックの時価というのが1つありますし、それからストックの時価を開示したときに、そこで出てくる差分を会計が当初予定していたフロー情報と言えるのか言えないのか。それから、会計の利益というのは,そもそもそのプロジェクトがキャッシュを回収している、その事実のてん末を開示することに意味があるのかなと。安藤先生とそんなに違わない意見だと思うんですけれども、その辺をお願いします。

○斎藤部会長 基本的にはストックの評価の問題と、その差分としてのフローに当たる利益の認識測定の問題とを理論的にきちんと分けて考えるべきだということ、そしてそのストックの評価に関して、どこまでそれが時価を必要としている問題であるのかということをきちんと考えていくべきだと、そういう根源的な御指摘だと思います。

 ほかに御発言はございますでしょうか。品川委員、どうぞ。

○品川委員 今のお二人のお話でいろいろと考えさせられるところがあるんですが、いわゆる最近の時価会計の流れの中で、時価というと何か非常に客観的な価値をあらわしているような印象が強いんですね。ところが、私は長い間実務をやってきて、時価ほどいい加減なものはないという問題があるんですね。いい加減なものはないというのは、これは非常に難しいんですね。先般来、岩田委員からの御指摘にもありますように、割引率ひとつ何%をとるかによってものすごく変わってしまうわけですね。現在においてこの資産の割引率が何%であるかというのはだれも知らない、いろいろな市場金利や何かを目の子勘定でやるんですけれども、極めてこれは融通無碍というか、適正な割引率は何%かということは究極のテーマというか、非常にわからないわけです。

 私は長い間、課税の実務をやってきて、課税の問題は極めて納税者の権利義務に直接突き刺さる問題ですから、1%違っただけでも何百万円、何千万円という税負担に影響しているので、ここは究極に議論し合ってきて、自分が課税をする立場でいながら、課税をすること自体に対して、非常にある意味の畏怖というか、とにかくやらざるを得ないからやるけれども、しかしそこには究極的なテーマとして時価とは何かということについて常に考えさせられるわけで、今の企業会計の流れの中でも、何か時価会計というとすごくいい指標のように考えられるんですけれども、そこにはいろいろなわながある、そのわなをどう取り払うかということについて議論していく必要があると思うんです。

○斎藤部会長 ありがとうございました。太田委員、どうぞ。

○太田委員 今のお話に関連して、非常に考えさせられる御発言で、時価というのはそれほど信頼性のあるものではないというところは、非常によくわかったんですけれども、ただ、今回の固定資産の議論で、大きくは減損の会計と、それからもう一つは投資不動産等に当てはめられる時価会計ということで、私はそういう切り口で2つに分けて考えたらどうかなと思っております。

 それで、1つ目の減損会計は、まず時価会計ではないのではないかというところから出発すべきではないかなと思います。これまで見てきましたアメリカの基準、それからIASで語られている減損会計というのは、固定資産そのほかの固定資産関係の帳簿価格というのは、取得価額を基礎にして貸借対照表に計上されている、ただ、取得価額といいますのは、昔の時価であった、それを買ったときの時価であったということは言えるのではないかなと思うんです。会社は、まず投資をしたときには、買った値段以上のものを回収できるぞというもくろみで買っていまして、それ以降、そういうつもりで回収して、その結果があらわれてくるのが損益計算書であるということで、取得原価主義会計というのが成り立っているのではないかなと思うんですが、その大前提が、どうもやはり昨今のバブルの崩壊ですとかいろいろな状況で成り立たなくなるということも当然あるわけです。そうなってしまった場合に、取得価額、昔の時価のままでいいのかという問いかけをしているのが減損会計ではないかなと思います。

 最終的には、今の時価を使って、それもいい加減なんですけれども、昔の時価である取得価格よりはまだましかなというところで、そういうケースにおいては減損を認識してよというのが、減損会計ではないかなと思っております。

 それからもう一つは、また別に議論をしなければならないというのが、不動産関係の、いわゆる客観的な時価があるかもしれないなと思われている不動産について、それを減損とは分けたところで、時価で会計処理をしていくべきなのかそうでないのか、分けるべきなのかそうでないのかというところから始まって議論を進めていくというのがいいのではないかなと思いました。

○斎藤部会長 ありがとうございました。ほかに御発言はございますか。秋葉委員、どうぞ。

○秋葉委員 一応今までのことを踏まえてということなので、一言だけ申し上げますと、今もかなり評価の問題に焦点を絞られてお話をされているのかと思うんですけれども、いわゆる損益の問題、特に実現損益という観点からすると、先ほどもお話がありましたけれども、売却の処理に関する話というのも、実は日本の場合に、私の理解ですと基準が基本的にはないというところの中で行っておりまして、特に不動産の場合には大きな含み益を持っているものが、売却として扱えれば実現益が出るということになりまして、それが先ほどの辻山先生のお話にありましたような会計情報としての、これまで予定した実現益なのかどうかという観点も、今、不動産のいろいろな取引が行われる中で、もし可能であれば考察していただければどうかなと思っています。

 特にリースバックなり賃貸バックと言われているもの、個別具体的には申し上げにくいんですけれども、実際に先日、岩田委員の方から、岩田委員の所属している会社の方が昨年度1,000億円強の銀行の本店を購入しているわけですけれども、売った側の銀行の方では、ほぼ1,000億円に近い利益が上がっているということが、実現益という観点でどうなのかということも、それに似た話というのは非常によく実務的にありまして、その辺が実際上基準がない中で動いているので、その辺も実は問題の所在としてはあるということを、一言だけ申し上げたいと思います。

○斎藤部会長 ありがとうございました。ほかに御発言はございますか。

○新原東証監理官 ないようでしたら、恐縮ですが事務局から一言だけよろしいでしょうか。

 今のお話を聞いていまして、品川委員、辻山委員、安藤委員が時価についての問題点をいろいろ発言されました。ところが一方で、企業会計の国際的調和ということを考えると、IASなり諸外国でも随分議論が進んでいて、ここでいろいろ言っているんですけれども、それからIASで議論されていることはホームページで安藤先生は見ておられるということで、情報が一方的に向こうから来ているわけなんです。これから日本の会計基準をつくっていこうというときにも、どうしてもここだけで言っていても、なかなか海外の動きとの調和を考えると、影響力が小さいということもあると思うんですが、そういう場合に、そういう意見を世界で議論している場にどういうふうに反映していけばいいのか、私ども事務局としては大変気になるところなんですが、そういうのが平松先生とか西川先生とか、実際に国際的舞台で議論されている方々に御意見を伺いたいんですが、これからどうしていったらいいんでしょうか。私ども事務局として教えていただければと思うんですが、御意見があればお願いいたします。

○西川委員 どうしてもやっぱり言語の問題があると思うんですけれども、英語圏の国であれば、議論したのがそのまま流れるというのが今の状態だったら簡単にできますので、要するにこういう議論をしているというのをそのまま出せれば、いい意見もいろいろあるんだろうと思いますけれども、それを日本語で出してもだれもわからないということで、そういう技術的な面が非常に障害になっているんじゃないかなと思います。

○平松委員 両方の方々の御意見を伺いながら、私が今、考えていたことはこういうことだったんです。一般論は後でまた申しますが、例えばこの議論で幾つか論点の整理、例えば償却性の資産とか、幾つか分けて考えた方がいいんじゃないかという御意見もございました。一般論として、例えば過去の経験で、FASBがある意見をまず出します。基準書なり概念書なりを出しますと、カナダとかオーストラリアを見ますと、もっとわかりやすいんですね。同じような内容でもわかりやすい。例えば我々が、結果として国際会計基準とそう違わないものであるとしても、もう少し議論が整理された形のものを最終的に出すことができれば、それを例えば英語に直したときに諸外国がそれを見たら、日本の議論というのは随分きちんと整理されているぞという結果として見ていくようなことが実績として出てくれば、これは世界の尊敬を集められるだろうなと、今の議論を聞きながら、そう思いました。これはきょうの議論の印象です。

 一般論ですが、私は学界の人間ですから、学界としてどういうことが考えられるかということと、それからその後でこの審議会がどうかということを申し上げたいと思います。学界としては、やはり日本の学会というのは日本語で行っているせいもあって、外国からの参加者は少なくて、逆に我々が世界の学会、あるいは国際会議というものに出て行って発言するという機会を持たないと、日本のことはどうしても理解されないということがあります。それから、ホームページにしましても、今、世界の学会のホームページを見ますと、ジャパン・アカウンティング・アソシエーションはタイトルだけでクリックできないんですね。諸外国は、その欄を設けてくれているんですが、日本会計研究学会が中身を持っていない、ウエブサイトを持っていないものですからクリックできない状況にある。こういうことですから、これは早く何とかしなければいけない、特に若い人たちの力を活用する必要があるなと私個人が勝手に考えていることですが、思っております。

 と同時に、国際会議を招致するといいますか、開催するということが一つの大きなきっかけになるだろうと思います。それで、翻ってこの審議会について申しますと、全体的にはやはり欧米主導型、特にアメリカ主導型というのは否めないことですので、どうしてもこちらから出ていく場合、国際会議に参加するということはできますし、そして発言することも可能だと思いますが、必ずしもインパクトは大きくないと思います。もっと大きな発言をする人たちがたくさんいる会議ですから。

 このところ、しばらく様子を見ていますと、アジアでの会議というのが幾つかありまして、これは学会もそうですし、公認会計士の方を絡めたような会議もございます。我々日本として何ができるかというときに、場合によれば国際会議もそうですし、審議会のようなところが国際会議のホスト役を務めることもできますが、長期的には足元のアジアというところから固めて、幾つかの会議を開催するというようなことも考えられるかなと思います。そうすると、コスト的にも比較的楽ですし、日本のアジアでの立場というものを、やはり今、非常に重要だと思いますので、これを確認しておく、あるいは、アジアの国々に理解していただくということが、翻って世界の中でのアジア、その中の日本ということで発言力、あるいは尊敬を集める一つの手だてではないかと考えます。したがいまして、会議に出ていくということと、日本が会議の主役になって、これはなかなか辛いことですけれども、ホスト役になって開催する、しかもその共通言語は英語でやる、ここは一つネックですけれども、そういうことで幾つかの方策は考えるべきだと思います。

 それから、審議会としては英語のホームページをどうするんだという話もあるかもしれませんが、期待しております。

○斎藤部会長 ありがとうございました。要するに、手っとり早いのは、国際的な会計基準の議論をしている場に、きちんとした議論のできる人を送り込むということであって、その体制を長期持続的につくっていくということが、そもそも会計基準の設定主体なんていう議論をする人たちの義務なんだろうと私は思います。それがなければ、いかんともしがたいんだろうという感じはいたします。

 もう時間がまいりましたので、一応ここで切らせていただきますが、私としても伺っていて、幾つか大変気になっていて、論点を絞っていく上でどうしたらいいのかなと頭を抱えることが少なくございません。例えば先ほど辻山委員から御指摘がありましたストックの評価ということ一つをとりましても、仮に事業投資に関して、当初から期待キャッシュ・フローの割引価値で評価した場合は、その後の利益は資本コストに当たるフェア・リターンしか出てこないということになります。エクセス・リターンが出ないわけですね。エクセス・リターンを目指すのが事業投資ですから、それは非常におかしなことになるだろう。エクセス・リターンのない金融投資ならそれでいいわけですけれども、通常の事業投資に関してはそこは違うだろうという感じはいたします。

 それから、従来、減損ということが非常に強く問題になりまして、その場合にある時点の固定資産の簿価が、そこから先に期待されるキャッシュ・フローの現在価値を超えている状態を減損というふうに一般に定義されているようでありますけれども、もしそういう定義をいたしますと、投資期間全体を通じて投資額を回収できる場合でも減損が生じかねないんですね。つまり減価償却の方法がキャッシュ・フローのパターンから独立に決められていますから、例えばキャッシュ・フローが急速に低減する一方で、当初の償却率が低く、早い年度でたくさん利益が計上されるケースでは、実際過年度修正に当たるものが減損としてとらえられる可能性があるわけであります。それは先ほど来、小宮山委員が御指摘になられたとおりなんですね。そういう場合に、過年度修正か減損かで結果としての会計処理は違ってまいりますので、そこをきちんと考える必要が当然あるだろう。そもそも投資期間を通算して投資額を回収できるケースで減損を問題にするということについて、そのこと自体の意味も問うことは必要だろうという感じはいたします。

 それから、もう一つ非常に気になっていることですけれども、ある固定資産から期待されるキャッシュ・フローを、キャッシュ・フローを生成単位で見積もるという手法を一般にとっているようでありますけれども、それは原理的には個別資産の評価ではないんですね。プロジェクトの評価になるわけです。ですから、これが仮にM&A市場で売買されるような企業とか事業部門がキャッシュ・フロー生成単位となる場合には、常に事業の売買価格と簿価を比べて減損を認識するということになりかねないという問題を含んでおります。それは減損のケースに限られている議論ではありますが、結果的には自家創設のれんを強要するものです。前に西川委員がこれは減損だからいいじゃないか、上の方を問題にしているのではないとおっしゃいましたけれども、確かにそれはそのとおりなんですが、もともと企業の事実を開示して投資家の予測に役立てるというのが企業会計の基本的な役割でありますから、例えば将来のキャッシュ・フローを期待して現在の価値を評価するというのは、これは本来ユーザー、投資家の仕事なんですね。それをどこまで開示する側がかわってやるのかということについては、これは相当原理的な議論が必要で、あんまり安直な議論をするべきではないという感じはいたしております。

 ともかく論点を整理する上ではどこか理屈が必要でありまして、理屈はこの際考えないで、国際的な動向がそうだから当面合わせていこうというのも一つの理屈なんですけれども、それをやりますと、向こうが変わるとまたすぐ変えなければいけないということになりますね。その場合には、今、ここで審議にかかわっている人たち、皆さん方全員の責任が問われるわけでありますので、多少、理屈を考えなければいけないところは考えるという姿勢は堅持したいと思っております。

 特に御発言がなければ……、はい、どうぞ。

○若杉会長 この第一部会を発足させるときの審議の内容は、減損だけやるわけではなくて、固定資産全般を見直していこうということでしたので、ただ、今現在のところ、大体減損とか、そういったむしろマイナス、取得原価とかあるいは帳簿価額を減らすという面に目が向いていますけれども、その逆の面も我々の審議の対象として考えていいんじゃないかと思うんです。ただ、そういうことを考えてそうするかどうかは、最終的にまたここで諮って決めるわけですけれども、減損もアプリシエーションの方も考えて議論していいんじゃないかと思うんです。

 それから、先ほど来、既に平松委員などからもお話がありましたように、我々がやっていることが海外にちっとも情報として届いていかないというまどろっこしさがありますので、何とかしてそれを突破しなければいけないと思うんですね。国内的にも我々がやっていることが、最近はこういう議事録という形でインターネットでとれるわけですけれども、そういう詳しくやっている内容だけではなくて、我々はこんなふうにやっているんだということを、もう少しコンパクトに理解してもらえるような情報を流す必要もあるんじゃないかと思うんです。詳しいのは詳しいのでいいんですけれども、皆がその詳しいのを関心をもって読んでくれればいいですけれども、わかりやすく概略的なものも必要ではないかと考えられます。

 それから、それをさらに英語にして、そして海外にも流すという努力をぜひしたいと思うんですけれども、なかなか人の問題とかあるいはコストの問題とかいろいろありますものですから、すぐにはできませんけれども、だんだんにそういうふうに考えていった方がいいのではないかと思っております。

○斎藤部会長 ありがとうございました。

 それでは、予定の時刻が参っておりますので、本日の部会はこれで終了させていただきます。長坂参考人には、本日はお忙しいところを御出席いただきまして、大変ありがとうございました。

 なお、次回の当部会の日程でございますが、3月31日午後3時30分からを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。次回は、アナリストからのヒアリング等を予定しております。正式には改めて事務局の方から皆様に御案内をさせていただきたいと思います。

 また、次回以降の予定でございますが、3月31日の次は4月28日の午後を予定しておりまして、論点の整理を行いながら、各委員の御意見を伺ってまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。また、その次はまだ部屋の問題等がありますが、5月26日(金)を予定しております。

 本日は、皆様方には大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。これで散会させていただきます。

 

午後4時5分閉会