企業会計審議会 第一部会 議事録

日時:平成12年3月31日(金)午後3時39分〜午後5時52分

場所:大蔵省第三特別会議室

 

○斎藤部会長 それでは、定刻を10分ほど超過いたしましたけれども、ただいまから第5回第一部会を開催させていただきます。

 本日は、お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 前回は、第4回目でありましたけれども、第3回の続きということで、まず、岩田委員の御報告について質疑応答・意見交換を行いました。

 次に、西川委員及び秋葉委員から、日本公認会計士協会における固定資産の会計処理に関連する問題意識や実務指針の作成状況等について御報告をいただきました。

 さらに、参考人としてソニー株式会社国際会計部の長坂統括課長に出席いただきまして、主に米国基準による「のれんの減損」の実務について御報告をいただき、意見交換を行いました。

 本日は、まず、山田委員に国際会計基準の公開草案第64号「投資不動産」についての御報告をいただき、質疑応答・意見交換をいたしたいと存じます。

 次に、本日は、参考人として株式会社日本格付投資情報センターの格付第二部の中塚副部長に御出席いただいておりますので、アナリストから見た固定資産の会計処理に係る問題点について御報告をお願いいたしたいと思います。

 さらに、逆瀬委員から、固定資産の減損会計の実務について御報告をいただきたいと存じます。

 最後に、大日方委員から、今までのヒアリング結果を踏まえて、会計理論的に少し問題点を整理していただくという観点から御報告をお願いする予定にしております。

 では、早速でございますけれども、本日の審議に入りたいと思います。

 まず、山田委員に国際会計基準の公開草案第64号「投資不動産」について、先頃ブラジルのサン・パウロにおいて開催された国際会計基準委員会理事会における検討状況や検討結果を御報告いただき、質疑応答・意見交換を行いたいと思います。

 では、山田委員、よろしくお願いいたします。

○山田委員 それでは、お手元の資料の資料1に基づきましてお話しさせていただきたいと思います。

 今お話がございましたように、この3月にサン・パウロで開催されましたIASC理事会において、国際会計基準第40号ということで「投資不動産」が承認されました。これに伴いまして、IAS第25号という会計基準がございましたが、これの大半がIAS第39号「金融商品」に移り、残っていた「投資不動産」も、新しい基準ができたことに伴いまして、これが廃止されております。IAS第40号ができ上がりました結果、95年からIASCが続けてきましたコア・スタンダードを作成するという作業が完了したことになります。従いまして、今後は、証券監督者国際機構によるコア・スタンダードの評価、願わくば、それに対する支持表明を待つという状況になりました。

 まず、本日御用意している中で、最初の1.というところがE64「投資不動産」での提案ということなんですが、それから、2ページ目のところからIAS第40号の簡単な特徴を御説明しまして、3ページ以降に第40号の細かい中身について表形式でまとめてありますので、それに簡単に触れたいと思います。

 まず、E64でございますけれども、ここでの提案というのは、投資不動産の定義を実はかなり狭いものにしておりました。その特徴というのは、「投資不動産とは、次の条件を満たす不動産をいう。」という2つの条件を実はつけておりまして、1つがaの方ですが、「当該不動産が、賃貸収益もしくは資本増価又はその両方を目的として保有されているものである」ということです。例外として、いわゆる物品の製造もしくは販売又はサービスの提供、それから、経営管理目的、いわゆる企業の本社というような目的で利用されているものについては対象外にする。それから、通常の営業過程において販売目的で保有されるものは除外するという形で決められておりまして、もう一つ、bというところで、「企業が当該不動産を取得又は建設するときに、当該不動産の公正価値が継続して測定可能であると企業が期待できること」という形で、実は範囲の中に「測定の可能性」というものが入って範囲を狭めていた。これはE64ができるときのある妥協として、こういう形で範囲を狭めたんですが、こういうものになっておりました。

 それで、マル2というところで、「不動産の取得時に、公正価値が継続して信頼をもって測定できないという稀な場合には、当該不動産は投資不動産の定義を満たさないので、IAS第16号「有形固定資産」にいく」、こういう論理で、実は投資不動産に対する時価評価の範囲をかなり限定しようというのが当初のもくろみでした。

 マル3のところにありますように、「投資不動産は、その取得後、原則として公正価値で測定し、公正価値の変動を損益計算書で認識する。従来の取得原価で計上し減価償却を行うという会計処理は禁止する」という、非常にラジカルな提案という形になっておりました。

 その後、コメントを受けまして、次の2ページでございますけれども、最終的に決まったIAS第40号は、少しこれとは異なったものになっております。

 まず、投資不動産の定義が拡張されたといいますか、少なくともE64の、先ほど見ていただいたbという要件、「公正価値が継続して測定可能でない場合には投資不動産とならない」という要件が一応外れました。これは、多くのコメントが、こういう定義のところに、測定可能性のようなものを入れるのはおかしいという指摘があって、それを反映した。

 それから、最大の特徴がこのマル2でございますけれども、「公正価値による測定(公正価値モデル)と取得原価による測定(原価モデル)という2つの方法からいずれかを企業が任意に選択することを認める。ただし、当該方法は、すべての投資不動産に一律に適用する」ということで、会社全体としての会計方針の選択という形で、どちらかを選ばせるということにしてございます。

 それから、マル3でございますが、「原価モデルを採用した場合においても、投資不動産の公正価値を注記で開示する」ということで、時価の開示ということに対しては一応のこだわりを見せております。

 この改訂内容が、実はかなり大幅だったわけですけれども、再公開はせずに採決されまして、賛成14、反対2、棄権0ということで承認されたということになりました。

 それで、次に補足というところでございますが、IAS第40号の最大の特徴は、国際会計基準の中で初めて、いわゆる非金融資産に対して公正価値モデルを導入したという点でございます。あと、公正価値モデルと原価モデルという形で実は併存しているわけですけれども、通常のIASですと、標準処理、ベンチマークというのと、それから、アラウド・オルタナティブという、認められた代替基準という形で、実は通常決まるんですが、そういうふうにすべきではないかという議論も理事会では行われましたが、最終的に、ベンチマークとアラウド・オルタナティブというのは、ベンチマークの方がより適切な会計基準に近いというニュアンスが出てしまうので、今回の問題は、公正価値モデルと原価モデルという、どちらのモデルをとるかという問題であって、どちらかがより優れているかということではないということで、最終的には、標準処理とか、アラウド・オルタナティブという形の命名を採用しませんでした。

 それから、次の補足のマル2のところでございますけれども、E64の公正価値モデルに対して指摘された問題点が幾つかございますが、イギリスやオーストラリア等のメンバーは、投資不動産に対する公正価値測定を強く支持していたんですが、ドイツ、それから、日本も含めまして、いわゆる非金融資産に公正価値測定を導入することの概念的、理論的な検討が十分がなされていないということを主張しまして、公正価値モデル一辺倒というのはまだ時期が早い、難しいのではないかという主張が行われまして、これがある程度力を得た。

 それから、もう1点目は、IAS第39号において、金融資産においてさえ、純粋な公正価値モデルを採用していない状況で、投資不動産だけ、より一歩進んだ公正価値モデルというのは問題があるのではないかと、こういう指摘もございました。

 さらに、投資不動産の場合は、各国において市場慣行が大きく異なるということから、公正価値を信頼をもって測定できることが困難な国があるので、こういう国に対する配慮というのも、現実の問題としてすべきであるというような、こういうような理由で、最終的に両方のモデルが併存するという形になりました。

 次の3ページ以降でございますが、細かくちょっと見る時間がございませんので、まず特徴的な点でございますけれども、「当初測定」という上から3つ目の箱でございますが、当初測定においては、取得原価で測定し、取引コストは当該測定に含めるという形をとっております。

 それから、「当初測定後の測定」というところで、ここで、先ほど申し上げました公正価値モデルと原価モデルという2つのモデルが採用できることになっておりまして、その際のそれぞれの、特に公正価値モデルはいろいろ書いてございますが、公正価値モデルのところのマル2のところですね、公正価値の変動から生じる損益は、発生した期の損益計算書に計上する。それから、マル3でございますが、公正価値モデルを採用した場合であっても、信頼をもって継続的に測定できない場合、例外的に、公正価値を測定できない場合においては、ある一定の開示を条件に、IAS第16号の標準処理、すなわち取得原価で計上し減価償却と減損を認識するという基準を採用することを認めるという取扱いになっております。原価モデルの方は、これはIAS第16号のモデルでございますので、これに対する説明はよろしいかと思います。

 それから、次の4ページでございますが、4ページで振替という、目的の変更を認める場合というのが5つほど特定されておりまして、それに伴う損益の取扱いというのが、ここにありますように、決まっております。

 それから、「開示」のところを見ていただきまして、開示は、公正価値モデルと原価モデルで共通の開示と、それから、次のページ、5ページにございますように、公正価値モデルのみの開示、それから、原価モデルのみの開示というふうに、開示が、共通部分と、それぞれの場合に分けて規定されております。

 それで、この中で、特に5ページの「公正価値モデル」のところで追加開示の中のb.というところなんですが、稀な場合として、公正価値が測定できないような場合、この場合にどういう開示を行うかということなんですが、公正価値を測定できない投資不動産の概要、それから、公正価値が信頼をもって測定できない理由の説明、それから、可能であれば、見込まれる公正価値が該当しそうなレンジですね、金額のレンジを開示しなさい、さらに、公正価値で測定されていない投資不動産が処分された場合には、その事実、売却時の簿価、それから、認識された売却損益額といったものを開示しなさいということで、公正価値モデルで、稀な場合として、公正価値が測定できない場合にある種の追加開示を求めている。

 それから、「原価モデル」のところでは、この中では、特にマル3のd.というところに「投資不動産の公正価値」というのがございまして、ここでも、原則として取得原価でやったとしても、公正価値を開示する。ただ、例外的に、公正価値を信頼をもって測定できない場合には、やはり公正価値モデルと同じように、投資不動産の概要、公正価値が信頼をもって測定できない理由の説明、それから、公正価値が入っていそうなレンジの金額の開示ということが求められております。

 発効日は、2001年1月1日以降開始する事業年度の年度財務諸表から適用という形になっております。

 以上、ざっとでございますが、御説明申し上げました。

○斎藤部会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの山田委員の御報告につきまして意見交換をいたしたいと思います。余り時間はありませんけれども、御質問、御意見のある方は、どうぞ御発言ください。いかがでしょうか。

 どうぞ、安藤委員。

○安藤委員 ちょっと野次馬的な質問で、2ページの真ん中のところですね、括弧書きで、賛成14、反対2、棄権0と。私がちょっと興味あるのは、反対2という意味なんですが、分かったら教えていただきたいんですけど。

○山田委員 IASCのボードメンバーは16票ございまして、そのうちの2票ということで、これは、具体的にはアメリカとイギリスでございます。

○斎藤部会長 辻山委員、どうぞ。

○辻山委員 ちょっと手短に御質問いたしますけれども、ただいまの御報告は、投資不動産のストック面での評価の問題だったんですけれども、これがリンケージを考えますと、業績、評価差額についての取扱いについてはどのようなことになっているんでしょうか。

○山田委員 評価差額につきましては、3ページの「当初測定後の測定」というところの「公正価値モデル」のマル2というところにございますけれども、公正価値モデルの場合は、評価差額は、発生した期の損益計算書に計上する。それから、取得原価モデルにつきましては、注記で対応し損益計算書では認識しないという形になります。

○斎藤部会長 よろしゅうございますか。

 ほかに御質問ございませんか。どうぞ、品川委員。

○品川委員 3ページの投資不動産の定義のところで、(注)では、使用目的が未定の土地は投資不動産の中に入るというふうな説明ですが、将来、販売又はサービスの提供、物品の製造等に使うという、そういう場合には未定になるんですか、あるいは、これは年数的に二、三年後、あるいは三、四年後とか、そういう期間的な限定があるのかどうか。この未定の意味はどういうふうに検討されたんですか。

○山田委員 まず、期間の限定はございません。それで、取得した当初、どちらに使うかはっきりしない場合というのが未定という場合でございまして、将来的にある目的で使うということであれば、その目的でさばいて構わないと思うんですが、例えば、自社ビルを造るというようなことで、投資不動産ではないとしたときに、その建設計画が10年後というようなことであると、多分、説得力に欠けるのではないかと思うんですけれども、その辺は、実は基準の中では余り具体的に、何年だったらとか、どういう計画がなければいけないという、そこまではちょっと触れておりません。

○斎藤部会長 よろしゅうございますか。

 どうぞ、西川委員。

○西川委員 ちょっと聞き漏らしたかもしれないんですけど、2つのモデルの間の変更は禁止ですか。

○山田委員 基本的に、公正価値モデルから原価モデルへ変えることはほとんどないであろうという記述になっておりまして、明示的には、明確にブラックレターで禁止というふうには最終的にはなっていないと思います。

○斎藤部会長 よろしゅうございますか。

 秋葉委員、どうぞ。

○秋葉委員 今回の基準のところで、ほかの基準との関係なんですけれども、リースにかかわる部分とか、あと、最後、処分の話がありましたが、不動産の売却、ですからリースバック、そこにかかわる部分との関係で何かございましたら、教えていただきたいと思います。

○山田委員 リースの基準につきましては、ファイナンスリースの借り手ですね、いわゆる不動産をあげる方ですけれども、その借り手に対しては、この基準が適用されます。しかし、売却損益については、いわゆるセール・アンド・リースバックのように、あるものを後の期間に按分するというような処理については、IAS第17号が優先するという形になっています。

○斎藤部会長 ほかに御発言ございますか。

 どうぞ、辻山委員。

○辻山委員 たびたび恐れ入ります。この基準は、IASのこれまでのスタンス、比較可能性の問題でかなり特色があると思うんですけれども、その点についてはどういう議論があったんでしょうか。

○山田委員 多少歴史的なことを申し上げますと、このプロジェクトが97年10月に開始したときに、IASCは、これは非常に小さなプロジェクトだということで、起草委員会すら設けていなかったんですね。これは、多分、投資不動産を金融資産と見るか、有形固定資産のように見るかという、その業の違いというのがあると思うんですけれども、そういうところが十分さばけていないまま、ずっと進んできたということがございます。従って、歴史的に余り十分さばけないまま来たということが一つなんですね。

 それから、不動産の市場というのが、他の物品の販売等々、デリバティブ等の金融商品と違いまして、物を動かせないものですから、地域のマーケットの特性に縛られざるを得ない。そうすると、今の不動産のマーケットが、日本とかヨーロッパ、オーストラリア、アメリカというところで、かなり広く違い過ぎていまして、どちらかの処理、ないしは、IASの前提は、一つの事象に一つの会計基準ということなんですが、それでさばくには、まだ経済実体がさばけないという認識があって、最終的にこういう2つのモデルの併存というところに割り切ったということだと私は理解しています。従って、その面において比較可能性は損なわれているというか、どういう意味で比較可能性というかという問題なんですけれども、一律に評価というだけの意味でいいますと、その意味の調整は十分なされていないということです。

○斎藤部会長 よろしゅうございますか。

 ほかに御発言ございますか。

○品川委員 もう1点だけ、よろしいですか。

○斎藤部会長 どうぞ。

○品川委員 公正価値モデルと取得原価モデルの併存になっているということに関して、取得原価モデルを採用する場合に、従来の取得原価主義という問題もさることながら、取得原価こそ、当事者間で通常成立した価額であれば、最も公正価値を表しているという、そういう考え方が背景にあるのかないのか。あるいは、そういう考え方があるとすれば、何年ぐらい有効なのかどうか。もちろん、対象不動産の物価変動にも影響されるんでしょうが、その辺の議論はありますか。

○山田委員 あった議論は、取得時において、取得原価、ここでもございますが、これはそのときの当事者間で成立した客観的な価額であるということについては異存がないんですが、それ以降の処理について、公正価値モデルを推奨する方は、とにかくマーケットで時価があり、ないしはDCFで時価が出せるとすれば、それが価額ではないかという主張なんですけれども、一方、日本等のような国では、いわゆる貸しビル業のような業務をしているところは、製造業と同じような意味で、サービスを提供することによってそのコストを回収するという業ではないかという主張なんですね。この主張については、余り賛同は、どちらかというと得られない状況でした。というのは、いつでも売れるにもかかわらず、製造業とはその点ではちょっと違うのではないかという指摘だったんですけれども、最終的な決め手になったのは、いわゆる普通の非金融資産に公正価値モデルを入れるということが、IASの枠組みの中でどういう意味を持つのかということを十分検討しないまま入れるということにやはり懸念があって、片一方に割り切れなかったということだと理解しております。

○斎藤部会長 概ね予定した時間が参りましたので、次へ進ませていただきます。大変ありがとうございました。

 先ほど御紹介しましたように、本日は、株式会社日本格付投資情報センターの格付第二部の中塚副部長に御出席いただいておりますので、アナリストから見た固定資産の会計処理に係る問題点について御報告をお願いいたしたいと存じます。

 では、中塚参考人、どうかよろしくお願いいたします。

○中塚参考人 中塚でございます。よろしくお願いいたします。

 私の方から御報告いたしますのは、有価証券報告書のユーザーとして今どういうような扱い方をしているというような、実態のところを御報告させていただければというふうに考えております。

 まず、固定資産の評価でございますが、これは非常にいろいろな問題がございますけれども、やはりアナリストとして一番関心の高い部分は金融取引の中で担保とか、あるいは抵当権の設定等、金融取引の基盤を構成している不動産の価値がどうなっているのかという点です。最終的には資金の調達能力、あるいは赤字になったときの利益の補填というような形で使われてまいりますので、この点について非常に関心が高いということでございます。

 株式の場合は、企業の継続価値が基本となりますので、不動産があったとしても、最後、倒産したときにどうなのかという問題は余り発生してこない。ところが、私どもが格付をしております債券、これは社債でございますけれども、こちらの場合には、倒産後の処理というのも非常に重要な問題になってまいります。従いまして、例えば、倒産した後、どの程度の配分があるのかということも、実は低位の格付、特にCでありますとか、あるいはCCCでありますとか、いわゆるCゾーンの格付になってまいりますと、非常に重要な要素になってまいります。

 その上で、では、社債権者が、そうした資産の状況についてどの程度情報を入手し得る立場にあるのかということになってまいりますと、これは基本的には、有価証券報告書をベースに社債権者は情報を得ておりますので、株式のホルダーと同等の立場ということになってまいります。一方で、同じ債権者の立場ということになってきますと、いわゆる貸付債権等を持つ銀行等ございますが、こちらの方は基本的には相対取引でございますから、ある意味で社債権者に比べて情報を入手できる確率、あるいは質というものが非常に高いということになっておりまして、そういう意味では、社債権者と同じ債権者でありながら、いわゆる一般債権者といいますか、金融機関等の立場とはかなり離れてしまうということがございます。

 従いまして、私どもの格付上の分析の手続の中で、実はバランスシートに計上されている不動産、これが実際に処分される場合にどういう価値を持ってくるのかというのは、ある意味でバランスシートに表記されている数字を離れて考えていかなければならないという問題になってまいります。

 そういう前提があるということで、私の方からの御説明をさせていただきたいと思います。

 まず1枚目、ページ1というところでございますけれども、まず私どもとしては、企業がそのときに置かれている経営状況の中で、どの資産から先に時価評価をしていかなければいけないのかということを考えてまいります。

 まず、販売用不動産。これは当然のことながら、事業活動の中で処理されていくものでございますから、基本的に、取引される市場における価格が幾らなのかということを考えなければならない。それから、投資不動産ですけれども、これは売却をしない限りは、その期その期のキャッシュフローで回収をしていくという形の資産でございますので、収益還元に基づいて評価をしていくという形になります。それから、事業用資産でございますが、これは工場等あるいは店舗等ですので、事業環境に変化がない限りは、そこで事業が継続されるということになりますから、取得原価で考えていいのだろう。こういうステップをとってまいります。

 ただ、今現在の企業のバランスシートの問題として考えますと、特に、不動産あるいは建設、それから、一部総合商社等の中で、依然として非常に販売用不動産の在庫水準が高いという問題がございます。それから、第2番目の問題として、いわゆる塩漬けの販売用不動産、これに関しまして投資不動産ないしは事業用資産への移し替えという問題が全くないとは言えないということでございます。そして3番目でございますけれども、投資不動産ないしは事業用資産であっても、企業のキャッシュフロー創出能力が落ちてまいりますと、当然のことながら資金調達に問題が出てまいります。その場合に、やはり今の日本企業の拠り所としては、担保価値はどうなのかという問題に入ってまいります。従いまして、企業のそのときの収益力、あるいはキャッシュフローの創出能力の段階によって、実は所有する不動産についての価値というのをある程度段階的に厳しく見ていかなければならないということになります。

 2ページ目に御提出させていただいているのが、これは販売用不動産を保有しております会社のうち、上位16社の資産構成を集計したものでございます。大体1,000億円以上の販売用不動産を持つ会社になります。データとしては99年3月期末のデータを採用しております。会社によっては、連結ベースの販売用不動産の開示がないものもございますので、その場合には単独決算の数値を使用しております。

 もちろん、不動産会社等が入っておりますので、販売用不動産のウェイトが高いというのは当たり前ではございますが、額を見ていただけるとお分かりいただけると思うんですが、まず販売用不動産、これは16社で4兆円以上でございます。これが自己資本に対してどうなのかというふうに考えますと、ほぼ自己資本と同等の額がある。従って、この市場価値がどの程度の状況にあるのかというのは、こうした会社の実際の財務構成を考える上で非常に重要な問題となってまいります。従って、今、強制評価減について50%という基準があるわけですけれども、自己資本比率等のデータ、あるいはデット・エクイティ・レシオといったようなデータを考えていく上で、ここの価値をかなり厳しく精査していかないと、結果的に実質債務超過といったような場合を見逃してしまうという問題が起こります。

 それから、その次、事業用地と書いてありますのは、いわゆる事業用不動産のことでございます。こちらに取り出しておりますのは、まさに土地そのものの表記を抜き出しました。事業用地も実は4兆円以上ございます。従いまして、事業用地と販売用不動産を合計いたしますと、自己資本の2倍の額になってまいります。ですから、こちらがどの程度減損されてくるのかということも、実際の企業の評価上、特に日本企業の評価上は重要な問題となってまいります。

 それから、使用総資本に占める割合がどうなのかということになってまいりますと、これも当然のことながら、販売用不動産のウェイトは自己資本比率に近い水準となります。

 その上で、販売用不動産から事業用地等への移し替えがどの程度あるのかという問題でございますが、これについては、現段階においては開示はございません。従って、私どもとしては、事業用地あるいは販売用不動産の増加あるいは減少を第一次的な手掛かりとして使わざるを得ないということになります。その上で、どうもやはり移し替えが多いなという場合には、移し替えた資産についての内容の御開示をお願いするということになります。

 この左側の表のBの事業用地、これは99年3月期末の数字ですが、Cは98年3月期末の数字でございます。このBからCを差し引きますと、事業用地は1年間、この16社でどのぐらい増えたのかという数字になります。これは約3,000億円増えています。この間の評価というのは、基本的には取得原価でなされているのではないかと考えております。従って、こういう形で移し替えが発生いたしますと、移し替えた段階での価値評価というのは、基本的には発生しないということになります。まずこの分について、私どもとしては精査をしなければならない。

 次に、3ページ目にまいります。では、実際に実質的な価値評価というのをどういうふうにしたらいいのかということになるわけですけれども、当然のことながら、土地の取引等については、必ずしも当該地自身が取引される価格というのが分かるわけではございませんので、幾つかの接近法を使わざるを得ない。

 第1に、周辺地価を参考にした推計値を出してみるということになります。それから、2番目、特にこれは投資不動産についてなんですけれども、償却前営業利益率を目安にして理論値を算出していくということになります。概ね、賃貸用資産であれば、取得原価に対して5%から6%ぐらいの償却前営業利益率があれば、今の段階ではそうそう大きな評価の狂いはないのだろうという前提で考えております。それから、3番目、周辺地価ないしは課税評価額を参考にした推計値も出してみるということになります。特に、売却の可能性が高い不動産につきましては、事業用資産に入っていたとしても、売却処理もあり得ますし、周辺の地価というものが必ずしも当該地の評価に結びつかない場合もございますので、ここでは課税評価額も参考にしなければならない。

 最近の販売用不動産から事業用不動産ないしは投資不動産への移し替えのケースを見ておりますと、例えば不整形地等で、これを駐車場に振り替えるといったようなケースもございますので、例えば駐車場等に振り替えた場合、もともとの取引は、上に例えばマンションを建てる、あるいは賃貸ビルを建てるというような段階で取得された価格とは相当利回りが変わってまいります。従って、この分についてのチェックというのは、特にこれから重要になってくるのではないかというふうに考えております。

 それでは、こういったものを実際の信用力の評価体系の中でどの程度の要素として見るのかということですけれども、基本的には格付は何も清算バランスを作って考える世界ではございませんので、まず会社のキャッシュフロー創出能力が今どの水準にあるのかということ、それに対して負債がどういう状況になっているのかというのが基本でございます。資産の価値というものが第一に格付に響いてくるということではございません。

 ただし、例えば、収益が非常に低迷している、あるいは事業構造を大きく変更しなければならない、そのための資金が必要であるといったような会社については、どの程度、当該用地が売却の対象になってくるのかということを考えざるを得ません。

 3番目には、やはりその土地が、では実際に売れるのか。周辺の地価がある程度見えているという場合であっても、その周辺において、例えば、どの程度の土地の需要があるのかということを考えませんと、例えば、2年も3年もその周辺で土地の取引がないような場合には、周辺地価というのが基本的に参考にならないという場合もございますので、周辺の人口の増加動向なども考えていかなければならないということになります。それから、公的規制でございますけれども、例えば、同じ用地であっても、住宅専用あるいは工業地域等の指定がございますので、用途変更を受けなければ、会社の方で想定している価値に達しないというケースも多々ございます。その場合には売れないということになりますので、会社の方で時価が幾らと見積もっても、換金可能資産には入れられないという判断になります。その上で、私どもとしては、資産の流動性の高い順位に、上から並べてまいりまして、その上で、負債全体の中で当該社債の債権者としての順位がどこにあるのかを考え、それが満たされているのか、満たされていないのかを検討します。

 私どもとしては、そういった接近法をとっているわけなんですけれども、実際にそれでは、企業の方から、そういった開示を受けられない社債権者はどうなんだろうかという問題がございます。

 特にこの問題で最近悩ましいと思っておりますのは、資産を再評価をしている会社がありますので、片方では資産の再評価が終わってしまっている、片方では資産の再評価をされていないという状況がある点でございます。バランスシートを一覧しただけでは、必ずしもその土地がどういうようなステップを経てこの価格になっているのかということが分からないということになります。注記事項等に資産再評価というのは当然出てくるとは思いますけれども、例えば、企業の決算短信等をさっと見るような投資家の場合に、それに対して十分な注意喚起になり得るかどうかというのは、疑問の残るところでございます。

 もう一方で、全てを厳しく評価すればいいというものでもない。例えば、用途変更等によってキャッシュフロー創出力が変わるケースが出てくるということでございます。例えば、賃貸用資産に使っているものであっても、その賃貸ビルが何に利用されるのかということによってもキャッシュフローの見通しというのは変わってきますので、その資産が今後どういうような利用のされ方をするのかというのも、先々のキャッシュフローを見る上での検討項目となってまいります。

 それから、含み損益を通算する必要性があるのかないのかという問題もございます。概ね、資産の再評価をやった場合に、歴史の古い会社の場合ですと、相当な含み益を持っている。従って、特定の資産に対して、含み損が大きくても、当然のことながら、いや、ほかに含み益もあるという話になってまいりますので、実質的な評価になってまいりますと、やはり全体のバランスも考えなければならない。従って、私どもとしては、負債の非常に多い会社の場合には、資産内容等について一覧表を出していただくケースがあります。

 こうした判断の補助となる情報というのは、業績動向、経営計画、今後の資金需要、そしてある意味で簡便法になりますが、主要物件の取得時期でございます。例えば、強制評価減の対象になるような資産ということであれば、概ね狂乱地価以降、従いまして、地価の監視とか、あるいは中小三業種に対する融資規制のあった以降の物件というふうに考えられます。つまり、87、8年以降の取得原価と、それ以前の取得原価には、断層があるというふうに考えております。従いまして、これをいつ取得したのかということがある程度分かりますと、あるいは、土地の中に占めるウェイトが分かりますと、実際問題として、時価通算をやった場合にどういう結果になってくるのかということもある程度想定し得るということになります。

 続いて、5ページ目ですが、特に、今後、時価評価が非常に重要になる背景を列挙いたしております。

 1つは、民事再生法の施行でございます。これは、倒産の可能性というのが非常に増えるということでございます。基本的には、社債権者にとって、最終的な倒産処理の中での原資回収という問題が、これから増える可能性があるということでございます。

 それから、金融機関の融資行動の変化。これも、やはり従来、メインバンク制度、あるいは担保重視という形でしたが、大きくここへ来て変わっております。従いまして、特に投資不動産についてはキャッシュフロー、あるいは利回りの問題というのも、重視せざるを得なくなってくる。

 それから、もう一つは不動産市場の動向でございます。当然のことながら、まだ下げどまっていないという状況にございます。

 その上で、やはり取得原価との差異、あるいは実際にデフォルトが起こった後の回収時期がどうなるのかということを、私どもは考えなければいけないということになります。そこで売却対象地に対する需要予測、それから、民事再生法で新たに導入されております担保権の消滅制度の適用の可能性がどうなのかという問題、また、工場財団抵当における不動産と設備のそれぞれの資産評価の関係を考えていかなければなりません。

 担保権の消滅制度は、事業上必要な資産について、適正価値に相当するお金を、再生債務者が裁判所に金品を納付すれば担保権を外すことができるという規定になっております。従いまして、社債権者の立場からすると、回収の原資の一種ということになります。ただ、事業上不可欠な資産という要件がございますので、設備等についてはキャッシュフローが基本的には評価の対象となるべきと考えます。ただ、その下の不動産については、不動産の資産価値の中における重要性等の問題もございまして、基本的には時価、従って、取引価格という形に実務上はなるのではないかと考えられます。つまり、同じバランスシート上にあっても、機械設備等と土地とでは評価の手法が変わってまいります。それと同時に、取得原価に対して社債権者が期待し得る回収可能性も、実は断層が出てくるということになってまいります。

 以上、大体このあたりが私どもの不動産についての関心ということでございます。

 それから、ページ6、長期性資産の減損に関わる諸問題については、ここでは簡単に御説明いたします。

 やはり営業権の評価減という問題、特に国際的なM&Aが非常に増えておりますので、これは非常に重要な問題であろうというふうに考えております。TOB等で非常に営業権が膨らむ状況にございます。しかし、M&Aをかけた後、実際にその会社が立ち直っていくというケースもありますが、立ち直らないケースもかなりあります。従いまして、この営業権をどう取り扱っていくのかは非常に重要な問題と考えます。

 それから、特許権等の取扱いも今後重要であろうというふうに考えております。特許権は、実は上の営業権の問題ともかなり絡んでまいるんですけれども、やはり技術に注目して企業を買収するといったような場合に、特許権が企業を構成する非常に重要な価値の一つというふうに考えられます。

 それから、3番目、いわゆる工場設備等の問題なんですけれども、やはり稼働率の低下、あるいは設備が陳腐化した場合の減損をどう考えるのかという問題でございます。これは、今のように国際的な競争条件が大きく変化している場合、特に工場立地をその土地その土地の、例えば賃金等の問題で考え直さなければならないというような場合には、やはり稼働率の低い工場を閉じて、そして稼働率を高められる地域に移し替えていくという操作が頻繁になってまいりますので、ここをどう取り扱うかというのも、格付、特にキャッシュフロー創出能力の評価の中で重要になってまいります。

 米国の場合を見ましても、必ずしも工場についての特別な評価減をやっているというケースというのは、そう多くはないんですけれども、例えば、ある自動車会社は、ここ数年、コンペティティブ・スタディというタイトルで、資産の稼働率の低下ないしは陳腐化に対して一定の損失を出しているという状況でございます。

 それから、その次のページでございますが、固定資産に関する今日的な問題を列挙しました。1つは、ブランド価値。これが資産に相当するのかしないのかという問題でございますが、今の段階では、市場のないものを評価することはできないという立場に立っております。従いまして、買収等によって一定の市場価格が発生したものについては資産として認識し得るだろうというふうに考えておりますけれども、あるブランドに対して、これは幾らの価値がありますというふうに言われても、客観的な評価の方法がないものを資産と考えるわけにはいかないと考えております。

 それから、また不動産の問題なんですけれども、土壌汚染等による事業用不動産の価値低下、この問題をどう考えるのか。例えば、臨界事故が起こったようなケースでございますが、あの土地が、では担保価値ないしは資産価値としてどの程度のものがあるのかという問題でございます。あるいは、ダイオキシン等の発生の問題もございますし、ですから、このあたりは環境会計の中でどう取り組むかという問題でもあるとは思うんですけれども、引当処理ないしは費用処理等の問題を考えざるを得なくなるのではないか、あるいは、そういったものを土地の評価に適正に反映できるのであれば、直接的な土地の評価の問題として取り扱ってもいいのだろうと考えております。

 それから、もう一つ、こちらはややイレギュラーな問題ではございますが、市場性のない投資有価証券の価値、これをどう評価するのかというのも、証券化商品が非常に多様化してまいっておりますし、中には、証券化商品の形をしたデリバティブというのも相当多いものですから、重要な問題ではないかと考えております。

 ただ、こういうふうにいろいろ列挙をしていっても、最終的にはやはり情報開示のコスト・ベネフィットというのも企業側にとっては大きな問題であろうと考えます。全てのものを網羅するということはやはりできないだろう。従って、ユーザー側の立場からすれば、それと分かる脚注のような処理、これを充実していただくのが、比較的接近しやすいかなと考えております。

 今の日本企業のバランスシートに対する不信感というのは、時価公正価値等の評価が非常に遅れてきたという問題が大きいと思っておりますし、それから、世界的な流れとして、現金ないしは流動性を投資評価の中で非常に重要視するという傾向が出ておりますので、これへの対応も急いだ方がいいのだろうと考えております。

 同時にこういったことを企業の側でどういうふうに意識するかということも非常に重要な問題だと考えます。マスコミの中では、どちらかというと、公認会計士の責任ではないのかという議論が多いわけですけれども、保守的な会計方針をとるのかとらないのかというのは、これはまず第一義的には企業の側の問題であろう。それから例えば監査報酬の問題等を考えた場合、例えば、米国基準でやった場合と日本基準でやった場合では、監査報酬の水準が違うということも伺っておりますので、実際に、米国基準がいいのかどうかという問題はあるにしても、充実した評価を行っていく上で、どういったコストを社会的に容認するのかも今後の重要な問題であろうと思います。関連するものとしては、例えば、特許の問題、あるいは土地の評価、不動産の鑑定の問題ですね、こういった体制をどう充実していくのかは、社会的に考えていかなければいけないのではないかと考えております。

○斎藤部会長 大変ありがとうございました。

 それでは、ただいまの中塚参考人の御報告に関しまして、短時間でございますが、御意見、御質問のある方は御発言いただきたいと存じます。

 大塚委員、どうぞ。

○大塚委員 非常に基本的なことをちょっとお伺いしたいんですけれども、債券の格付をするときの入手できる情報なんですけれども、我々が普通、手に入るようなパブリックにアベイラブルのもの以外のものも当然使うということになるだろうと思うんですけれども、その辺の大体比率といいましょうか、大体どの辺を一番重要視しているのかという、その辺のところをちょっとお聞きしたいんですけど。

○中塚参考人 基本的には、私ども、格付の対象となる債券を発行している会社との間で守秘義務を結んでおります。従いまして、私どもとしては納得のいくまで資料を出していただきたいというのが基本的な立場でございます。ですから、もちろん、調査に入る以前の段階では、有価証券報告書が一番重要な情報源ということになりますけれども、調査に入って精査を始めた段階で、特にバランスシートの内容の、実質的な変化の激しい会社につきましては、場合によっては公開情報よりも、改めていただく非公開情報の方が多くなるというケースもございます。全体の中で何%ということはちょっとお答えしにくいんですけれども、といいますのは、経営の今後の、例えば土地の売却あるいは事業の売却、あるいはリストラクチャリングといったような情報も取得してまいりますので。ただ、年々、特に時価の変動が激しくなってくる、あるいは企業の活動も非常にスピードが速くなっていくというような中で、そのウェイトが上がっていることは事実でございます。

○斎藤部会長 どうぞ、大塚委員。

○大塚委員 というのは、例えば、1ページの収益還元法に基づく評価の必要性、投資不動産ですね、これは、それぞれの格付をされる会社が、例えば具体的に当社としてはこういうような予測をしているんだというようなことに対して、格付会社は、それに対してチェックをするというような形でどんどん進めていくということをやるんですか。それとも、おたくの方が、自分が見て、これについての投資の将来のキャッシュフローを予測して、そこから投資不動産の価値を見ようとしているのか、その辺のことをちょっとお伺いしてよろしいでしょうか。

○中塚参考人 まず基本的には、利回りをある程度見ることによって、どの程度劣化しているのかというのが算段としてつけられるということでございます。その上で、利回りの低下がどうも激しいといったような場合には、主要物件についての過去のキャッシュフローの推移といったようなものをお願いするということになります。その上で、これから、ではどうなるのかという予測でございますが、これはテナントの入れ替え状況、あるいは周辺の競合となる賃貸ビルの状況といったようなものを調査した上で、これはキャッシュフローの見通しについて、会社とのお話し合いになるということでございます。

○斎藤部会長 よろしゅうございましょうか。

 ほかに御発言。どうぞ、太田委員。

○太田委員 今の1ページ目の販売用不動産、投資不動産、事業用不動産の時価評価の必要度ということに関連してなんですが、販売用不動産といいますと、在庫という位置付けになるかと思うんですが、それは強制評価減という枠組みの中の評価で十分だというお考えかという点と、それから、最後の事業用資産について、事業環境に変化がなければ、取得原価というのは余り異論がない部分であるかと思うんですが、逆に事業環境に変化があった場合に欲しい情報というのはどんなものなのかをお聞かせ願えないでしょうか。

○中塚参考人 販売用不動産のボリュームが多い会社に関しては、強制評価減だけで十分とは言い切れないかと思います。と申しますのは、2ページの表にもお出ししたとおり、自己資本に対して非常に大きいウェイトを持っております。従って、これが例えば半分であるとすれば、自己資本比率から考えると、非常に恐ろしいことでございます。ですから、やはりどの程度というのが分かる方が、多分会社にとっても、結果的には、自分の会社は大丈夫なんだということを対外的に示す上で、かえっていいのではないかと考えるときもございます。

 それから、事業用資産の問題でございますが、これはその事業そのものを継続するのかしないのかという段階に入ったときに一番重要になります。余剰設備等の問題、一説には50兆円相当というようなことも言われておりますけれども、そうした中で、過剰設備の廃棄等が当然出てまいります。当然のことながら、リストラに占めるコストというのは非常に大きいわけですから、それに対して何らかの資金の手当てをしなければならない。そのためには、やはり土地を売るということは十分考え得るということになってまいります。問題は、事業用資産が上に乗っているということで、これを撤去しなければならないという問題が起きてまいります。そういたしますと、これを撤去するのにどのぐらいの時間がかかるのか、あるいは費用がかかるのかといったような問題、それから、先ほどの環境汚染の問題ですね。こういった点も考慮していかなければならないということになります。

○斎藤部会長 よろしゅうございますか。

○太田委員 ありがとうございました。

○斎藤部会長 ほかに御発言はございますか。

 それでは、品川委員、どうぞ。

○品川委員 3ページのところで、価値評価に当たって、課税評価額を参考にするというお話があったんですが、この場合、一般には路線価の2つに分かれておりまして、相続税と固定資産税、両方あるんですが、いずれを活用するのかということと、もう1点、固定資産税については、現在負担調整をとられているので、評価額と課税標準額が違うわけでありますが、そのいずれを採用するのかということと、それから、相続税、固定資産税についてはそれぞれ公示価格の7割、8割水準でそれぞれ行っているわけですが、その7割、8割を割り戻して活用するのかどうか。あるいは、先ほどは公示価格については一切お触れになりませんでしたけれども、公示価格なり、基準値価格をどのように活用されるのか、その辺について。

○中塚参考人 基本的には、こちらでとっているのは固定資産税でございます。ただ、ケース・バイ・ケースなんですけれども、相続税も一緒にお願いするケースもございます。

 それから、7割の問題があるんですけれども、これはやはり保守的に考えるということで、割り戻しはいたしません。というのは、売却をしなければならない、あるいは損を切ってでも売却をしなければならないというような状況であれば、やはりその土地の需給について保守的に見ざるを得ない環境があるのだろうということになりますので、これはできるだけ保守的にという立場をとります。

 それから、公示地価の問題でございますが、これも同様でございまして、いずれか低い方と申しますか、幾つかのパターンを考えた上で、その中で最も保守的なものを採用すると。

○品川委員 固定資産税の課税標準額か評価額かというのは、どちらをとるんですか。

○中塚参考人 今現在では評価額の方をとっております。

○斎藤部会長 よろしゅうございますか。

 では、秋葉委員、どうぞ。

○秋葉委員 お話があった中で、注記での情報の開示の話があったんですが、当然、債券アナリストという立場で結構なんですけれども、そういう注記での情報、これで十分と考えられるか、それとも、ないよりはましという程度にお考えなのか、その辺についてお話しいただければと思います。

○中塚参考人 1つは、バランスの問題があると考えておりまして、特定の評価を、例えば先ほどの土地の再評価なんかもそうなんですけれども、財務比率の中で特定の評価を行った会社と行っていない会社とで違いが出てきてしまう。従って、基本的には統一した評価でなければ、財務比率がどこの会社がよくて、どこの会社が悪いというのを考えることができないということになります。特に、事業上の競争力ということを評価する上では、同業種の中での比較というのが非常に重要な要素でございますので、それを全て同じ基準で評価されるのであれば、私どもとしても非常にありがたいということになるわけですけれども、それが特定の会社同士で違うということになってまいりますと、そもそも評価の軸が違ってしまうということですので、これは実際の評価をどこまで進めていくかという水準の問題と、一方で統一性がどこまでとれるのかという問題のバランスではないかと思います。

○秋葉委員 すみません。趣旨としては、財務諸表にそういう時価を入れる必要があるのか、それとも注記だけで十分なのか。もちろん、前提としては、全面的に同じ基準とか方法とか方針をとるということで、注記でも十分とお考えになるのか、それとも、やはり財務諸表の中に、債券というか、ボンドということを考えますと、ストック情報ということになると、それでも財務諸表に入れなければいけないのかという点について、もしお話ししていただければと思います。

○中塚参考人 私どもの作業の中では、一連の作業の中で発生した損失ですね、これは実際には自己資本から控除して計算いたしますので、最終的に私どもとしては、実はある程度そういったものをバランスシートの中に入れて見ているということでございます。

 ただ、実際にそうしたことを毎期やっていくのかということになりますと、企業の側の負担も相当なものになるのではないかというふうに考えますし、そうしたことまでしなくても大丈夫な会社というのがやはり多いのではないか。そういたしますと、あとはやはり注記の中でどの程度の情報を盛り込んでいくのかということかと思います。例えば、日本の場合には資金の移動については、後ろの脚注の方で資金繰り表等があるわけですけれども、例えば資金のマチュリティ(maturity)の問題ですね、これについてはやはり従来はほとんど開示がなかったということで、例えば、期間5年間の間で債権の評価等については、入ってくるお金、それから、返さなければいけないお金というバランスが今まで見ることができなかったわけですね。そういたしますと、例えば、日本の流動資産の中には、売掛債権であっても、何年後に返ってくるか分からないというものも含まれているわけですから、そもそも、例えば、流動比率をそれで計算するということ自体がおかしいということになるわけですね。それと同様の問題だと思うんですけれども、ではこれを脚注処理でどう考えるのか、例えば、米国であれば、5年間の債権の回収状況、回収の見通しですね、それと5年間の負債の返済予定というのが入っていて、これで実はバランスを見れるということになるわけです。ですから、そういう形で担保されていれば、それは必ずしもバランスシートの中に評価されていなくても、十分使用できる情報ということになるかと思います。

○斎藤部会長 ありがとうございました。よろしゅうございますか。

 それでは、時間の都合もございますので、中塚参考人、大変ありがとうございました。

 続きまして、逆瀬委員からの御報告に移りたいと存じます。日立製作所の事例に即してお話をいただく御予定と伺っております。どうか、逆瀬委員、よろしくお願いいたします。

○逆瀬委員 では、資料3ということでお配りしたものに沿って、簡単に説明いたします。

 私どもの決算、単独決算の話、連結決算の話、連結はSEC基準ということで作っているわけですけれども、ここでは8年度の事例を掲げておりますけれども、設備に関して、発想としては減損のアイデアで幾つか処理をこれまでやってきておりますので、それの御紹介ということです。

 まず、平成8年度の単独決算ということで、1.の「内容」というところで(1) と書いてあるところですけれども、ここでは、我々は半導体のメーカーであるということでありまして、御承知のとおりで、半導体についてはいろいろ価格競争が非常に厳しいし、一部、市況品のような趣もあるということで、当時は、書きましたように、需給のアンバランスと、それから、韓国とか台湾勢の安値攻勢という、これは商売ですから優勝劣敗ということでいろんなことが行われるわけですけれども、製品価格が結果として大幅に落ちたということで、経営環境が大きく変わったという状況に見舞われたということです。そういう場合には、当然、需要の見直しとか、生産計画なり、経営計画なりを随時見直すことをやるわけですから、そういう状況にあったというのが1点目の内容です。

 2点目は、当時の固定資産の会計処理なんですけれども、定率法ということですね。あるいは耐用年数の短縮とか、償却についてはある程度保守的な会計方針をもともと採用してはいたわけですけれども、そういう前提を超えるような激しい価格低下という状況があったということですね。いわゆる償却不足という状況に陥ったということです。

 そこで、(3)に書きましたように、予期しない陳腐化ということを受けて、臨時の償却ということで、半導体用の製造設備の償却費の修正という形で処理を行ったわけです。一部、ラインの凍結とか、そういうこともあわせてやりましたから、凍結期間見合いの維持費用等も含めて、特別損失に計上したということであります。

 2.ですけれども、その金額は、(1)にありますように、288億円ということで、臨時の償却として計上した分は276億円でありました。これは、半導体といっても、DRAMというメモリのラインなんですけれども、4メガと16メガのラインを対象にしまして、年度末時点での販売価格、コストの見通し等をもとに回収可能額を見積もり、簿価との差額を計上したということです。

 (2)ですけれども、単純に算式を書いておりますけれども、簿価から残存価額を引いて、回収可能額を引いて、差額が特別損失計上額ということです。

 (3)ですが、回収予定期間ということで、当該固定資産使用期間、これは耐用年数からラインの経過年数を控除した期間を予定期間と置いたということです。事実上、半導体は技術革新も激しいものですから、各ラインの実際の使用期間といいますか、終了予定期間というのは概ね耐用年数の到来時と一致するような状況ではありました。

 (4)ですけれども、こういう見積りをやるというのは非常に難しくて、なかなか大変なんですけれども、何か一つ会社としての権威のある機関が決めた事業計画なり、予算といったようなものを前提に見積りを行わざるを得ない状況にあるわけですけれども、数量だとか、それから、売価ですね、プライス、これについては、書きましたように、取締役会、経営会議資料で見積ったものを前提にしたということであります。

 (5)ですが、予想コストですけれども、これは、当時の材料費であるとか、労務費であるとか、償却費、これらに合理的に予測できる原価の低減活動――結局、原価のダウンもあるわけですね――これを見積ったということです。こういう物づくりをやる場合には、値段のダウンというのと、原価の切下げといいますか、原価低減といいますか、コストの切下げというのは、常時、両方やっているわけで、織り込んで商売をやるわけですけれども、双方を見込んだということですね。

 以上が大ざっぱなステップであります。

 以上のような結果で、3.財務諸表には何を表示したかということなんですけれども、ごくごく簡単な表示しか行ってはいないんですけれども、(1) 臨時の償却額については、BS上、有形固定資産の償却累計額に含めて表示しております。

 (2)ですが、損益計算書上は、特別損失として区分掲記をいたしました。

 (3)に、損益計算書の注記として、「臨時の償却等特別損失288億6,200万円は、半導体の急激な価格低下により実施した同製品の製造用機械装置に係る臨時の償却額276億4,700万円及び一部半導体製造装置の生産停止期間に係る維持費用12億1,500万円である。」といったようなことを表示しております。

 次のページ、1枚くっていただきまして、あとは、附属明細表等にも同様の記載をしております。

 4.ですけれども、根拠規定ということなんですが、この臨時の償却につきましては、過去2度と書いてありますが、これは以前にも私ども同じような処理をやっておりますけれども、そのときにも臨時の償却の会計処理をやったわけです。JICPAの監査第一委員会報告ですね、減価償却に関する会計処理というのがありますけれども、これをもとにしたんだと、こういうことでやっております。

 5.に、それ以前にも同様の処理をやっておりましたので、その事例をちょっと書いてありますけれども、(1)昭和61年度という、大分古いんですけれども、このときは、マル1に書きましたように、償却費としては189億円を計上した。

 このときの論点は、臨時償却の話として、3号に書いてあるわけですけれども、これに該当するんだという解釈でやりました。頭の中は評価減のアイデアでやっているわけですけれども、当時、昭和61年当時には、いわゆる事業用資産として現に使用されているもので評価減というのは、事例がないというようなお話だったんですね、関係者の皆さんは。ないんだと、こういうことだったわけです。商法第34条にありますような減額、減損といったような言葉というのは、原価サイドを切り下げるという話が、事務としては慣行として存在しませんでしたので、私どもの事務処理は、臨時償却に含まれるのであるという、そういうような解釈でやったわけです。これは米国の基準においても、当時、昭和61年当時には、長期の事業用資産についての明確な規定はまだ存在していなかったということもあって、かなり議論を各方面とやらせていただいた覚えはあるんですけれども、結局は償却という範囲で処理せざるを得なかったのでございます。

 (2)の平成3年度と書いてあるところですけれども、これもまた同じなんですけれども、2回目だということもあって、結局、償却という事務処理を重ねて行った経緯がございます。

 それから、(3)に書きましたけれども、この昭和61年とか平成3年の処理を行ったときには、現実に操業度が著しく落ちている、あるいは落とすと言っていたんですが、そういう経営判断もあって、物的にも利用度合いが減ったと、こういうような前提条件がございました。

 それから、 II .ですけれども、先ほど申し上げた平成8年度の個別決算を受けた連結事務上の処理なんですけれども、ここでは、米国の121号ですね、これはごく新しいルールで、ここに書きましたように、1995年12月16日以降開始する年度ということで、たまたま平成8年度と合っているわけですけれども、ようやくアメリカ基準も出たかという覚えがあるんですけれども、1.に書きましたけれども、連結ベースでの減損の額というのは、バランスシートでは443億円で、損益計算書では442億円ということで、この442億円を営業外費用に計上したという経緯があります。

 2.ですけれども、「減損を認識するに至った根拠」と書いてありますけれども、半導体の商売というのは、御存じのとおりで、同じことを繰り返しているようなこともあるんですけれども、所定の計画値が事実上大きく狂うというのが状態としてございました。経営環境としては、急激な価格低下という実態があって、いわば通常の原価配分の前提が成り立たないというような認識があったということですね。

 先ほどちょっと説明しなかったんですけれども、連結の方で(2) に書いてありますけれども、操業度自体は維持していたんですね。だから、物的な使用というのは、可能といいますか、アウトプット自体はやっていたわけですけれども、問題は値段の問題というような事態だったわけです。ですから、先ほど申し上げた昭和61年とか平成3年度の状況とはちょっと違う状況だったわけです。

 3.に対象とした資産ということで、私ども、半導体の製造は、ここにありますように、国内と米国とドイツですね、3つの拠点でやっておりまして、これの個々のラインに係る機械装置ということです。実際には14本のラインですね。ここには書いていませんけれども。

 それから、4.ですけれども、資産のグループ分けの考え方、これがなかなか厄介であります。SFAS121号では、測定単位をどうするかということについては、分かったようで分からないような書き方になっている。識別可能なキャッシュフローが生じる最小の区分に分別するんだとなっているわけですけれども、なかなか容易ではない。結局、経営者の判断という部分があると思うんですね。この設定の仕方によっては、減損が減損でなくなったりするわけなんですね。というところがございます。

 それから、(2)は、私どもは「認識可能なキャッシュフローの最低単位」で判断したとあります。たまたま製造装置が半導体という、比較的はっきりと色分けができるラインであったものですから分かりやすいわけですね。4メガとか16メガとかいっても、スペックもございまして、あるいは複数の仕様を1本のラインで流すとか、いろいろあるんですけれども、一定程度まとめないと実務はできないんですね。ですから、内部の管理体制だとかというようなものも大変大きな要素になってくると思うんですね。ここが、結局、みそじゃないかと思うんです。区分の測定単位を大きくすればするほどなくなっちゃうんですね。先ほど御説明もありましたけれども、いろいろな時価の評価をするときに、どこを最低区分にするのかというような、なかなか難しい問題が現実には存在していると思います。

 以上で2ページを終わりまして、3枚目に移りまして、5.ですけれども、公正価値の算定方法。121号では、売買価格というのも認めているわけですけれども、この場合、活発な市場とかという前提がちゃんと置かれているわけですね。活発な、独立した第三者が自己の意思で行うといったような、かなり難しい要件になると思います。と申しますのは、現に操業度を維持しつつアウトプットを行っている機械装置について、活発なマーケットがあるかというと、ないわけですね。従って、売買価格といったようなものは存在しないというようなことでございましたので、結局(2) に書きましたような、キャッシュインフローを見積って、その設備が生み出す価値と費用との見積りを行った上での計算ということにならざるを得ないということです。

 ここに書きましたように、親会社といいますか、個別決算上は臨時の償却費なんですけれども、日本のルールではなかなか減損は難しいということでありますので、従って、残存価額を残したままの処理になっているんですね。ところが、121号の方は原価の切下げという、評価減ですから、こういう残存価額を残すとか残さないとか、そういう話は慮外のことですので、親会社についてはそういう調整を、連結上は行っております。

 実際には、ここに書きましたように、生産計画を練り直したものをオーソライズして、将来使用期間を設定して、将来の収入と、あるいは原価の要素別将来原価見積りを行って、回収不能となる償却不足額を算定したということです。

 ラインによっては、それぞれ使用計画が異なりますので、割引につきましては、それほど長い期間でもともとないんですけれども、追加借入利子ということで、当時は2%ちょっとの水準で計算したわけであります。

 それから、(4)ですけれども、具体的算定手続ということで、私どもの場合は、半導体事業に限らず、営業赤字を抱えるようなライン、こういうものについて、私どもは半導体以外にもいろんな商売をやっているものですから、生産ラインごとに検討を行う。極めて事務的な話ですけれども、そういう泥臭いことからやっていかないと、なかなかできないということなんです。それから、親会社の償却仕訳は振り戻しております。それから、ii.に書きましたように、先ほど申し上げたような手続を、要するに将来計画の見積りをやるということです。それから、iii.に書きましたように、一般費と売上原価に係る要素別の見積り、iv.が、ラインごとに営業損益を見積るというようなことをやっております。

 それから、(5)は、121号は処分を決めた資産についても同様に処理を求めておりますが、これはなかったということであります。

 III.に臨時の償却、これは日本でやる場合にいろいろ直面した諸問題ということで書いておりますけれども、結局のところ、先ほど申し上げましたように、償却か評価減かという問題に尽きると思います。

 それから、(1)ですけれども、あくまでも3号は償却であったと、こういうことでありまして、評価減というのは実施できなかったということであります。

 あとは、(3)ですね。税務会計とは乖離しておりますので、この辺の問題がありますということです。

 それから、減価償却の方法の見直しと減損手続とを、どのように順序立てて行うかという問題もあると思います。ちょっと書いてありませんけれども。

 それから、次のページ、もう1枚くっていただきまして、4枚目ですけれども、IV.で「121号適用に際して直面した諸問題」ということですけれども、暖簾の問題が121号で触れられておりますけれども、この辺が、資産と関連する暖簾というものについては121号で規定しているわけですけれども、それ以外のものについてはあいまいになっているということで、5.に書きましたような、APB17の方でやるということになっていまして、認識と測定のやり方が違うんじゃないかというのがまだあるのではないかということです。

 それから、V.ですけれども、減損会計の導入についてどうかということなんですけれども、いろいろ議論が出ておりますように、国際調和の観点からは検討が必要であろうというふうに、私どもも考えております。

 2.ですけれども、金銭債権等を含めて、費用性資産といいますか、棚卸資産であろうが、有形固定資産であろうが、無形であろうが、きちっとした整理がこのあたりでそろそろ要るのかなというふうに認識しております。

 ただ、公正価値といっても、私ども、経験があるんですけれども、なかなか、そのときは正しいと確信してやるわけですけれども、時間がたつと、結果的に違ったという事態が起きるわけです。こういう問題が常につきまとうということが、公正価値を利用する実務処理の欠陥だと思います。やむを得ない面もあるかも分かりませんが、この辺が、商法のいわゆる会社規制法上の配当の話とか、利益処分の話と直結するという問題になってきたときにどのように整理されるのかという議論が一つあるんじゃないかという思いで、2.を書いております。

 それから、3.ですけれども、減損に限って申し上げた、認識と測定の話なんですけれども、(1)の認識ですね。先ほどちょっと申し上げましたとおりで、判定単位をどう設定するかによって、かなり恣意性が入ってくるという点ですね。それから、(2)の測定に関しては、割引方式というものが果たしてどうかという議論はきっちり行う必要があるんじゃないかと思います。

 4.ですけれども、これはまともにやると相当大きなインパクトが出るわけでございまして、私どもの経験上の話ですけれども、理論的な検討はもちろんですけれども、税を含めて、実務上の諸問題の検討をする必要があるだろうと考えております。

 先ほどちょっと申しました、処分を決めた資産の取扱いというものも対象になってくるとは思うんですけれども、これもまたマーケットが本当に実在するかどうかという議論も重なってきまして、なかなか難しい。私どもの経験でも、アメリカ等でも、評価会社等があって、そこを使っていろいろやるというようなこともやりますけれども、見積りと実際の結果が違うというのはよくあることでありまして、この辺をどのように議論するのかという点もあわせて検討が必要だと考えております。

 以上です。

○斎藤部会長 大変ありがとうございました。生きた現実の事例に即してお話をいただきまして、大変ありがとうございました。

 それでは、ただいまの逆瀬委員の御報告に関しまして、ごく短時間、御質疑を受け付けたいと思いますが、御発言ございますでしょうか。

 山田委員、どうぞ。

○山田委員 1つ、4ページの、今最後に問題提起された3.の「減損の認識・測定」の(2)の「測定」のところで、割引方式が日本に馴染むかという御指摘の点でございますけれども、この場合、先ほどおっしゃったのを私が理解したところでは、割引方式の中で、まずキャッシュフローの見積りの問題と割引の問題があるかと思うんですけれども、それはどちらの方に問題点があるとお考えなのかということと、それから、商法の配当可能利益の計算というようなこととの絡みで、こういう評価が何か問題があるということをお考えなのかどうか、そこのところをお聞きしたいと思います。

○逆瀬委員 割引方式が別に悪者というわけじゃないんですけれども、要するに、見積りがある程度長期にわたって予測して行われるということになるわけで、結果は常に異なるというのが公正価値方式の一つの特徴ですよね。それを許すか許さないかという議論だと基本的には思っております。商法上こういう方式を導入したときに、処分可能利益の問題とどう兼ね合いをつけるのかという議論だと思いますけれども。

○斎藤部会長 よろしゅうございますか。

○山田委員 はい。

○斎藤部会長 では、小宮山委員、どうぞ。

○小宮山委員 確認なんですけれども、平成8年度に臨時償却を行われたときの、単独決算のやり方と、SFAS121号でやった場合のやり方の違いというのは、残存価額を残したかどうかというところが違うだけで、具体的な回収可能額の計算は同じというふうに考えてよろしいかどうか。

○逆瀬委員 もとのベースは同じです。

○小宮山委員 同じですか。

○逆瀬委員 はい。

○小宮山委員 それともう一つ、その前に2回ぐらい臨時償却をやっていらっしゃいますね。これ、前のケースは著しい操業度の低下と。後の場合は操業度は同じという前提ですので、前のものは操業度の低下ですので、例えば、10台機械を買ったけれども、3台しか動いていないという状況と同じだと。後の方は、ちょっと状況が違うんですけれども、具体的なやり方は違うわけですか。

○逆瀬委員 61年当時にはルールが存在しなかったんですね。従って、割引の頭を入れるとかということはやらずに、単に測定の方で割引を入れていないというところが違う。そこだけです、違いは。

○小宮山委員 回収可能額と考えた点は基本的に同じなんですか。

○逆瀬委員 ええ、同じです。発想は何も変わっていないんです。

○斎藤部会長 ほかに御発言、御希望の方はいらっしゃいますか。

 それでは、ちょっと時間の制約がございますので、おひと方だけ。平松先生、どうぞ。

○平松委員 先ほどの山田委員からの御質問と同じような箇所なんですけれども、今、印象としましては、減損につきましては、認識も測定もかなり難しい問題があるというニュアンスで受け止めさせていただきました。その場合に、これは一般論としてで結構なんですが、仮にこういう制度を我が国に導入した場合に、公認会計士監査との関係でかなり難しい問題が生じてくるんじゃないかというような気もするんですが、その辺は、御経験の中からどんなものでしょうか。一般論としてお聞きしたいと思います。

○逆瀬委員 この事務処理は、会計士の先生から、御指摘を受けてからやったわけじゃなくて、私どもの内部管理上、その事業を請け負っている責任者からそういう発案が出たということなんですね。要するに、私どもの場合には、一定の事業区分ごとに管理上バランスシートをそれぞれの責任者に与えて、BSの責任を持つというようなことを内部管理上やっておりまして、従って、そういう責任部署からの問題提起というのを受けて、私どもの部門がきちっと検討したということで、会計士さんに対しては、その後で御相談するといったような、そういう状況でした。

○斎藤部会長 よろしゅうございますか。

 まだ御発言いろいろあると思いますけれども、私は同時にタイムキーパーの役割も担っておりますので、ここで打ち切らせていただきます。

 次に、大日方委員からの報告に移りたいと思います。

 大日方委員には、初回のフリートーキングの際に理論的な観点から簡単に御報告をいただきました。一方、前回までのヒアリングにおきましては、固定資産の会計処理について幅広く議論するという審議テーマとの関連もあって、さまざまな指摘が行われたところであります。当然の結果といたしまして、現時点では、個々の論点のウェイトや相互関係などがほとんど整理されておりません。また、IASCやFASBの基準なども、原価評価であるとか、公正価値評価であるとか、減損であるとか、そういったものを問題の局面ごとにばらばらに取り上げているパッチワークのようなものになっておりまして、到底robustな制度に必要な体系性というものが備わっているとは考えにくいわけであります。当部会では、次回以降、論点整理のために審議を進めていただくことになりますけれども、このまま論点整理に入るには多少不安がございます。そのため、大日方委員には、今までのヒアリングや意見交換を踏まえて、論点整理につなげていく一過程として少し議論を整理するための予備的な報告をお願いした次第であります。

 では、大日方委員、よろしくお願いいたします。

○大日方委員 東京大学の大日方でございます。よろしくお願いいたします。

 1枚目を御覧ください。今回のレジュメは、ほとんどサマリーつきでございますので、サマリーのところのみを報告させていただきますが、今回の報告の趣旨、眼目は、原価主義会計の枠内、あるいは原価評価の論理と整合的に減損の問題を取り扱えるかどうかという1点のみでございます。従いまして、ストックの価値評価という問題意識は当初からございません。また、時間の関係上、基本的かつ重要な問題に限定させていただいております。

 報告は概ね3部からなっております。

 第1部は、基本的な用語の整理でございます。ここでは特に金融資産と事業用の実物資産、その評価にいかなる違いがあるのかということで、基本的には、市場平均を上回る収益が期待できるかどうかという、つまり暖簾の存在がかぎを握っているわけですけれども、暖簾の概念について確認する。それと、市場価格によって評価した場合に一体何が生じるのかということも確認いたします。

 2番目の基本論点につきましては、これまでこの会でも御報告がありましたけれども、アメリカの基準や国際会計基準のルールを念頭に置きまして論点の確認をいたします。ここで私が一番言いたいことは、国際的調和化をしようとすると理屈が通らない。理屈を通そうとすると国際的調和が果たせないという、選択問題が出てくるということでございます。

 3番目は、アメリカの基準や国際会計基準というのが与えられているわけですが、選択肢はそれだけに限られない。つまり、理論的には、冒頭に申し上げましたように、原価主義会計あるいは原価評価の論理と整合的な切下げ方法があるのではないかと。実は2番目の基本論点を御覧いただくと分かりますように、これは針の穴を通すぐらいかなり難しい作業でして、従来なかったものが従来の枠組みの中であり得るというわけですから、土台無理な話なわけです。無理も承知で、つまり、従来の枠組みを守ろうとするなら、評価切下げのやりようがないんだということになっては元も子もないので、一応の試案という形で計算例をまじえて選択肢を提示しております。

 次、2ページへ進みたいと思います。これは設例なんですけれども、ここの設例の趣旨は、将来の回収可能額で評価した場合、あるいは、しばしば話題に出てまいります割引現在価値たる資本価値で評価した場合、あるいは、時価、市場価格で評価した場合、それから、現行の取得原価をマイナスすることの減価償却累計額で評価した場合で、その後の利益計算が、どのぐらい意味付けが与えられるかという観点で整理したものでございます。これは2期間からなっておりますが、0時点で資産を取得したというふうにお考えになっても結構ですし、例えば、耐用年数5年のものについて、残りの4年目と5年目という形で御覧になっても構いません。これはその点で、特定のケースを想定したものではございません。

 3ページのサマリーを御覧ください。幾つか言わずもがなの点もありますが、まず1点目は、将来の回収可能額で評価するとなりますと、期間費用になる部分は回収可能額の下落分、つまり回収額になります。従いまして、収益は当然回収額ですから、費用が回収額になるということは、その後、将来の年度に利益は生じないということになります。在庫で言えば、分かりやすく言えば、将来の回収可能額で評価しちゃえば、売ったときに利益は出ないというのと同じでございます。

 2番目ですけれども、資本価値で評価すると、将来の年度ではフェア・リターンのみが計上されてまいります。フェア・リターンというのは、資本価値掛ける資本コストであります。これは設例を見て、後で御確認いただきたいと思います。

 3番目の点、これは非常に重要な点ですが、設例を見て御確認いただきたいと思いますけれども、簿価より資本価値や市場価格が下回るケースというのは、収益性の低下があろうが、なかろうが、生じ得ることがあるということでございます。つまり、簿価より資本価値や市場価格が低いということを減損の定義にしてしまうと、収益性の低下が生じていなくても減損が生じるという、極めて概念上厄介な問題が出てくると思います。つまり、簿価よりも資本価値や市場価格が下回っているというのは、減損の定義にはなり得ないとお考えいただきたいと思います。

 4番目は、市場価格で評価した場合どうなるかということですが、市場価格はマーケットの平均ですから、フェア・リターンのみならず、平均を超える部分、エクセス・リターンもその後の利益に登場してまいります。

 資本価値か市場価格かという選択は、その後の利益計算において、どれぐらいの利益水準を保証してあげるかという議論に結びついてまいります。つまり、その後、将来の期間で、エクセス・リターンを会計上利益に計上させてあげたいということであれば、市場価格まで切り下げればよい。フェア・リターンだけ利益が出るように切り下げておけば十分だということであれば、資本価値という形で分かれます。

 5番目は、これは皆さん御存じの議論ですけれども、今問題になっている評価替えは、事業継続中の評価替えですから、市場価格は基本的には問題になりません。有効な経済変数ではありません。従ってこれは、理論的には、選択肢からは落とさざるを得ないということになります。

 1枚めくっていただきまして、第2部ですけれども、ゴシックのところだけ説明させていただきますが、今説明させていただいたことと何点か重複いたします。

 まず1番目ですが……すみません、これは不等号が逆ですね。両方とも逆です。時価よりも簿価の方が大きくなる、つまり時価が簿価を下回る事態、次も逆ですが、資本価値が簿価を下回る事態が生じていても、直ちにそれだけでは減損が生じているとは言えないということです。つまり、簿価は何で規定されているかというと、償却パターン、償却速度で規定されているわけですが、定額法とか定率法とかという制限があるために、この事態を避けるということは事実上不可能なケースがあるわけです。つまり、非常に良好な収益性に優れたビジネスをやっていも、こういうのが生じてしまうかもしれない。そこで、減損が生じたというのは、やはりおかしいだろうということです。

 2番目は、これは専ら学問の姿勢ですけれども、タイミング(認識)ですね。切下げのタイミング。それから、そのときに計上される損失は、一体損失と言えるのかどうか。いつの損失と言えるのかということ。それから、マル3は、その後の利益計算はどう意味付けられていくのかということ。つまり、当然これは、その後、一旦切り下げた資産の評価額を、もう一回取得原価まで戻すかどうかということまで含めて、当然検討されなければならないということでございます。

 3番目は、これは非常に重要なことだと思いますけれども、やはりビジネスとの適合性ということからすると、先ほども御報告がありましたけれども、事業を継続中に生産を続行するという意思決定をしているにもかかわらず、それを売ったらどうかという評価を問題にするというのは、やはりそれは非合理的であろう。つまり、既に企業の意思決定は、ビジネスの意思決定は済んでいて、会計はそれを与件とするだけである。従って、会計の判断に立って一体企業にとってどの価値があるのかということをするのは、ある意味で僣越であって、関係のない事柄であろうと思います。

 4番目ですが、これは非常に難しいところでして、これもたびたび指摘されているところではありますが、当然、会計の構造上、個別資産の評価額を合計して利益計算を行うということになっております。従いまして、基本的に複数資産をまとめて評価するということは行われておりません。複数資産をまとめて評価した場合には、暖簾が入ってしまう。従いまして、キャッシュフローの割引現在価値を考える場合には、いかにしてそこの部分を除けるかという点がキーポイントになってまいります。これはまた、資本価値で評価するかどうかという論点もかかわりますけれども、これはもう一度触れたいと思います。

 5番目は、先ほども御指摘があったと思いますけれども、通常の在庫、あるいは有価証券についての低価評価、あるいは強制評価減との整合性を考えざるを得ないということでございます。つまり、保有目的のハードルを重視すべきことは確かなんですけれども、迂闊にルールを作ると、そのアービトレージが働いて操作されねかない。そこで、これはちょっと先取りし過ぎかもしれませんけれども、低価法の強制というのが、恐らくは避けて通れない論点になるだろうと思われます。低価法を強制するということであれば、減損の会計処理というのは当然のことになりますけれども、例えば、減損を強制しておきながら低価法は強制しないということであれば、不動産の場合は、全部販売目的に移しちゃうということになりかねないわけですから、これは避けて通れないだろうと思います。

 もう一枚めくっていただきまして、繰り返しになる部分は避けますけれども、この設例は、収益性が低下してしまった場合に一体どうやって評価を切り下げたらいいだろうか。かつ、直前の第2部で御説明いたしました基本論点――ある意味で地雷なんですけれども、理論的に言えば――これをいかに踏まないでゴールにたどり着けるかという、綱渡りの芸当ですけれども、ただし、ここでは大前提が置かれております。6ページの半分よりもちょっと上ですけれども、四角で囲ってあるところですが、個別の資産が生み出すキャッシュフローが分離把握できると。つまり、暖簾を含まないキャッシュフローが算定可能であるということ。かつ、資本価値を問題にしますから、これは先ほどの事例とはちょっと違っていたと思いますけれども、基本的には、これは企業の平均資本コストにならざるを得ない。つまり、追加借入利子率というわけにはいかないで、総資産が借り入れ資金によっているか、自己資金によっているかという区別がつかない以上、やはり平均資本コストが適用されなければならず、それは会計処理に先立って、外側から与えられないとならないということであります。

 この条件がそろいますと、多少気が楽になって、ここが実行可能性の問題が大変なんですが、7ページをおめくりください。サマリーですけれども、第1点目は、アメリカの基準でかなり重要な問題だと思われるのは、回収可能性を問題にするときに、その時点から将来にわたって簿価が回収されるかどうかだけを言っているわけですが、その時点までに既にビジネスを続けてきているわけで、回収分があるんですね、既回収分が。そのときに、償却不足があれば、当然将来の回収可能性は怪しくなるわけですけれども、当初にいっぱい回収してあるときに、それなりに償却をしておけば、減損の問題が生じなくて済んでいるわけです。つまり、回収可能性ということで減損が生じているかどうかを考えるとしたならば、例えば、設備なら設備、あるいは不動産なら不動産でも構いませんが、その取得まで遡って、プロジェクト全体期間を通じた回収可能性を考えざるを得ないということであります。

 2番目は、減損の基本的なフィロソフィーというのは、ユースフルなコストを繰り越すと。ユースフルなコストというのは、その後ビジネスにとって、リストラと同じ感覚ですが、その後、利益を出す水準まで下げないといけない。減損を出したところで将来全然利益が出ないというのでは、それは何のためにその生産活動をやっているか、会計上全く反映されないということになります。

 では、どの水準の利益を適正かと考えるかということによって、これは意見が分かれてくるところだろうと思われます。つまり、フェアな部分だけでいいか、それを上回る、エクセス・リターンまで利益と見なしてあげるかということですが、基本的には、過去の経緯と、経緯というか、会計は歴史ですけれども、を考えると、フェアなリターンくらいは生じるだろう、そこまでは認めてもいいだろう。ただし、エクセス・リターンが生じるというのはやはりおかしいのではないのか。これはある意味で、貸出金の処理もそうなっているわけです。つまり、減損を計上したが、その後、当初より高い利回りで儲かるというのはどうもおかしいだろうと。しかし、当初考えていた程度のことは、その率では生じてもいいだろうということです。

 3番目は計算例を御覧いただかないと、しっくりこないところなんですけれども、この案は、1枚戻っていただいて、6ページを御覧ください。この設例では、毎期500のキャッシュフローを期待していたものが300に低下してしまったというケースです。このときに、収益性が低下した結果、振り返ってみて、一体この資産の資本価値はどのくらい取得時点であったんだろうか。この場合、計算例は、6ページの下の方のマル3、資本価値746というふうになりますが、収益性が低下して、各年度300であれば、資本価値は746しかなかった。しかし、それを900で買ってしまっていた。これは明らかに過大投資ではないか。つまり、合理的な主体であれば、資本価値を超える支出はしないはずですから、この部分は、ある意味で無効原価に等しいのではないか。これを切り下げようというわけであります。つまり、減損が生じた時点の資本価値を問題にするのではなくて、過剰投資額を切り捨てようと。その形にすると、キャッシュフローの配分という、現行の体制には支障なく取り込むことができると。かつ、定額法を使っていようが、定率法を使っていようが、減損の判断には影響を与えませんし、定額法を使っていても、定率法を使っていても、減損が生じれば、必ず損失が出てまいります、この手法によった場合。つまり、減損を判定した時点の簿価そのものを問題にしないからでありますけれども、これが1つあり得るだろうと思います。

 ところが、問題が残されておりまして、最後のページを御覧ください。今見ていただいたのは償却性の資産ですが、非償却性の資産というのは、将来の費用を構成いたしません。収益性の低下は、実現ベースで反映されることになっております。どうしても、非償却性資産の評価問題というのは、アロケーションの問題ではなくて、ストックの評価問題にならざるを得ないわけです。先ほど申しました、針の穴を通すようなアイデアをここに適用すると、やはりゴシックで書いてあるように、その都度その都度、資本価値を判定するということにならざるを得ないわけです。償却性資産と非償却性資産で整合性をとるということを重視すれば、こうなるわけですが、果たしてこれでいいかというと、多少やはり問題が残っている。つまり、先ほど申しましたように、将来の年度利益がどうなるかという観点から減損問題を考える場合に、ほとんどこの土地については関係がないわけです。つまり、どう評価しようが、将来の利益は賃貸収入側で上がってきているわけですから、それは左右されないわけですね。償却しませんから。そうすると、これは専ら、何か違うゴールを外側から与えないといけない。つまり、例えば、特定の財務諸表利用目的を考えて正当化しない限り難しいだろうという感じがいたしております。

 以上が私の御報告ですが、ちょっとややこしいので、後日また、質問等がございましたら、御連絡いただきたいと思います。以上です。

○斎藤部会長 ありがとうございました。

 これは、申し上げるまでもありませんけれども、会計基準というのは社会の規範でありまして、別に学者の趣味で作るものではありませんけれども、それなりの理屈が通っていないと安定性もありませんし、他の制度との調整もできないわけであります。また、将来の再検討も不便であります。特に、成文法を重視する日本の法的環境の下では、会計基準もまた時代の風潮の一面だけに合わせる実利主義といいますか、便宜主義とは多少違った考慮が必要なわけでありまして、その観点から論点整理に向けて、今、大日方委員に多少の予備的な整理をしていただいた次第であります。

 ただいまの御報告につきまして、ごく短時間、御質疑を受け付けたいと思いますが、御発言ございますでしょうか。

 太田委員、どうぞ。

○太田委員 すみません、一つ基本的なところだけ確認させていただきたいんですが、基本論点のところで、原価主義との整合性ということで考える必要があるという御指摘だったかと思うんですが、この原価主義というものには、低価法の考え方というんでしょうか、それは原価主義というものの中には入らないというふうにお考えなのか、いや、入っていいんだというふうにお考えなのか、そこを確認しておかないと、何か原価主義といったところで、それぞれが別の原価主義を考えてしまうような気がいたしまして、そこだけ確認したいと思うんですが。

○斎藤部会長 どうぞ、大日方委員。

○大日方委員 いじわるな答え方をすると、どちらでも可能でございますが、現行の制度を原価主義という形で定義してやると入りまして、入った説明も可能になります。低価法につきましても、過剰投資額の切捨てという形で論理化するということは、御承知のように、かつてから試みられてきたはずでございまして、それは、多少説はいろいろございますが、残留有効原価説とか、回収可能価額説等も、将来に繰り越すことができる有効な原価という点では一脈を通じていたと考えられるので、その点では、取り込んで考えていただいても結構かと思います。

○斎藤部会長 よろしゅうございますか。

 ほかに御発言ございますか。

 どうぞ、中島委員。

○中島部会長代理 ストックの評価の問題はちょっと対象にしないという話だったんで聞きにくいんですけれども、アメリカの基準の背景説明やなんかを読みますと、貸借対照表の簿価というのは、要するに、最低限回収可能なものでなければいけないというのが、貸借対照表の基本的な前提であるというのが書いてあるんですね。そういう捉え方というのはどう評価したらいいのかということと、それから、さっき大日方さんがおっしゃったような、過去に遡って考えるというやり方でいくと、場合によると、貸借対照表上の簿価が回収可能額を上回っているような状況がそのまま続くというということは起こり得るんじゃないかという気もちょっとするんですが、その辺はどうでしょうかというのが質問なんですけど。

○大日方委員 まず1点目に、アメリカの基準が全て回収可能性テストを資産に課しているかどうかという点なんですけれども、これはかなり怪しいわけですね。もちろん、減損でメインに対象にしていることは、当然回収可能性テストがかかっているわけですが、私は詳しく存じませんが、全部検討したことがないので分かりませんけれども、それは本当に大原則なのか。つまり、アメリカの基準の中に減損のバックグラウンド・インフォメーションではそう言いながら、他の基準で回収可能性テストを課していないものがあるのではないかという点が多少疑問に思っているところでして、仮にそれを受け入れるということになりますと、では一体、回収可能性テストで全てを律した場合に、利益計算の意味付けがどう与えられるのかということになろうかと思うんです。つまり、資産というのが回収可能額以下であって、差額が利益だという定義しかなされなくなる危険があって、そうすると、一体そういうものを投資家に開示する意味はどこにあるのかということになるんじゃないかという気がします。

 2点目は、おっしゃるとおり、常識的に言えば、回収不能なものが貸借対照表に載っている状況というのは、やや違和感を覚えるのかもしれないわけですけれども、しかしそれは、例えば、現代ではほとんど数が少なくなってしまっているわけですけれども、アロケーションを初めて、繰延項目、繰延資産なり、繰延費用なり、あるいは引当、そういうのを認めた瞬間から、そういうことで資産・負債の評価を決めないという前提に立ってきたはずなんですね。もしも、例外的なことをやるとすれば、それなりの根拠を求めてきたはずであって、その点で、多少突出した利害が特定業種なり、特定資産に向けられていて、そのときに、理屈よりも常識が勝っているので、多少違和感があるかと思いますけれども、私の感覚からすると、その状況は、ある目的のために、例えば、利益を計算するというその目的のために生じた結果であるのなら、それはやむを得ないんじゃないか。ただし、放置していいとかという問題ではなくて、注記なり、いろいろな手段があるので、そういう形で考えた方がいいかなと思っております。

○斎藤部会長 よろしゅうございましょうか。

 今日の大日方委員のお話は、今後の論点整理にかかわる問題でございますので、特に今日、集中して御議論いただかなくても、改めて、これとの関連で御議論いただく機会は幾らもあると思いますので、特にどうしても今日のうちに確認したいという方がおられれば御発言いただきますが、そうでなければ、開始がもともと10分遅れましたので、この辺で一旦打ち切らせていただきたいと思います。よろしゅうございましょうか。

 ありがとうございました。

 それでは、ここで若杉会長から御発言がありますので、よろしくお願いいたします。

○若杉会長 本日も活発な御審議をいただきまして、誠にありがとうございました。

 今日の議題とは直接関係がないのですが、1月31日に公認会計士協会から公表されました「金融商品会計に関する実務指針」におきまして、金融機関に特別の経過措置が設けられましたことに関連して、国会でもその問題が取り上げられたようでございます。当審議会といたしましても、実務指針の作成を協会にお願いしております関係上、ここでこの経過措置につきまして、会計士協会の方から御説明いただければありがたいと、こう考えております。

 それでは、会計士協会の常務理事でいらっしゃる西川委員から、この件に関しまして御説明をお願いしたいと思います。

○西川委員 該当している箇所は、コピーがあったと思いますけれども、市場性のある有価証券の減損についてということで、これは基準の方で、「時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当期の損失として処理しなければならない」ということを受けまして、それはどういう状況であるかということを具体的な指針として示すということで実務指針を作成したわけでございます。

 当初の公開草案の段階では、「50%程度又はそれ以上下落した場合には著しいといえる」、それから、「1つ又は少数の銘柄の有価証券を保有していて、これらの銘柄に係る時価の下落が、たとえ50%を下回る下落率であっても、保有会社にとって金額的に重要性を有する場合には、時価が著しく下落したものと判断する」というようなことを入れていたわけですけれども、まず考え方として、「著しい下落」と「回復可能性」ということを2段階で見ていく。そのうちの「著しい下落」については、保有会社の重要性ということも考えて、重要性のある著しい下落が認められれば、次に回復可能性テストにいくという判断でやっているわけですけれども、公開草案の書き方は、「1つ又は少数の銘柄の有価証券についての判断を50%を下回るものについてする」ということで、これですと、大量に少しずつ株を持っている金融機関等がどういう扱いになるかというのが明確でありませんので、実務指針では、それを含めてまとめようということで議論を進めたわけですけれども、結論といたしましては、そこにありますように、まず、「30%までの下落については無視する」。これは一般的なボラテリティの範囲で、戻る可能性があるからということなんですけれども、そして、「50%を超える下落については著しい下落であり、かつ、回復可能性も見込めないというふうに推定する」ということにしたわけです。残るのが、30から50%ということになるために、30%から50%について重要性テストと回復可能性テストを行うというふうに若干誤解されているんですけれども、30%ではなくて、会社が決めた合理的な基準から50%という範囲で重要性テストと回復可能性テストをするという書き方になっております。

 この「合理的な基準」につきまして、今現在、金融監督庁から協会の中地会長あてに質問が来ておりまして、質問の内容は、この合理的な基準というものがいかなるものかということと、それから、金融機関について経過措置を入れた趣旨、それから、これが検査マニュアルによるということになっておりますので、預金等受け入れ金融機関とその他の金融機関でどこが違うかといったような質問が来ているところでございます。この「合理的な基準」につきましては、要するに、その後にある、著しい下落の重要性テストであるとか、回復可能性テストを先取りして、しなくていい部分を、企業ごとに判断するということで位置付けられるかと思いますので、それは、一般事業会社であれば、持ち方に偏りがある、業種であるとか、ある特定の銘柄について大量に株を持っているというような個性があるということから、「合理的な基準」を決められるのではないか。それに対して、金融機関の場合は、大量に持っているということもありますけれども、業種をまたいで満遍なく少しずつ株を相当量持っているということになりますので、この「合理的な基準」というのをうまく説明できるかというようなこともありまして、「一律的な基準」の方がいいのではないかということから、現行の実務で動いている金融検査マニュアルを利用するというようなことにしたわけですけれども、実際の金融検査マニュアルのところでは、50%未満の下落について触れていないということもありまして、お話がありましたように、金融機関に甘いのではないかというような話になっているわけでございます。

 現在、金融監督庁からの質問に対して回答を検討中という状態でございまして、金融機関の持っている持ち方ですね、大量に持っているということ自体は余り個性とは言えないのかもしれませんけれども、満遍なく少しずつ持っているということで、一般事業会社とは違うという判断ができるかどうか、すべきでないかどうかということを検討しております。

 いずれにしましても、現在ある209項をそのまま使って、現在の金融検査マニュアルに従うということが、恐らく難しいのかなというふうに考えられますので、方向性としては、そこを削除するのか、あるいは、新たに監査上の扱いを設けて、金融機関について、もっとクリアな基準を考えるか、あるいは209項の書き方を変えて、本文のうちのどの部分のみを使うといったような、3通りの方向性が考えられると思いますけれども、それについて現在検討しているという最中でございます。

 以上でございます。

○若杉会長 御説明、どうもありがとうございました。

 実務指針につきましては、当審議会から会計士協会の方に作成を依頼しております経緯がございます。従って、合理的な理由なく金融機関が特別な取扱いを受けるというようなことは考えられません。ただいまの御説明にもありましたが、金融機関だけ適用を緩和するような趣旨では決してないというふうに思いますので、協会におかれましては善処していただきたいと、こんなふうに考えております。

 実務指針をこれからも作成をお願いする関係上から、今後もこのような問題がありました場合には御説明をいただきまして、いろいろ我々としましても、その状況について把握してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

○斎藤部会長 どうもありがとうございました。

 それでは、予定した時刻をかなり超えておりますので、本日の部会はこれで終了させていただきます。

 中塚参考人には、本日はお忙しいところを御出席いただきまして、大変ありがとうございました。お礼を申し上げます。

 なお、次回の当部会の日程についてでございますが、4月28日(金曜日)の午後2時からを予定いたしておりますので、よろしくお願いいたします。次回は、論点の整理を行いつつ、各委員の御意見を伺ってまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いをいたします。御案内は席上に配付させていただいております。

 また、次回以降の予定でありますけれども、4月28日の次は5月26日の午後を予定しておりまして、論点整理の案について各委員の御意見を伺ってまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 本日は、皆様方には大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。これで散会させていただきます。ありがとうございました。