企業会計審議会 第一部会 議事録

日時:平成12年5月26日(金)午後2時01分〜午後3時36分

場所:大蔵省第四特別会議室

 

○斎藤部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第7回の第一部会を開催させていただきます。本日はお忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は、まず去る12日に開催されました総会の結果についてお話ししたいと思います。総会に出席された企業会計審議会委員の方もおられますので、当部会に関係する事項について簡単に御報告したいと思います。本来であれば、若杉会長から御説明いただくところでありますけれども、本日は国際会計士連盟(IFSC)の総会に参加するなどのために英国に出張しておられますので御欠席でございます。従いまして、私の方から当部会に関係が深い事項についてお話ししたいと思います。

 まず当審議会の新たな審議事項として「企業結合会計」を取り上げることが決定されました。総会における審議の結果、「企業結合会計」の検討の場は当第一部会となりまして、固定資産に係る会計処理については、当部会において論点整理をまとめた後に、新たに「固定資産部会」を設置して審議を引き継ぐことになりました。従いまして、論点整理が終了した後で、委員の異動が行われると思われますので、あらかじめお含みおきください。

 また、総会において「企画調整部会」が設置されることになりました。その役割などについてはお手元の参考資料をごらんください。

 次に、最近の国際会計基準委員会(IASC)の動向につきまして、事務局より委員の皆様方に御報告したい件があるとのことでありますので、説明をお願いしたいと思います。

 それでは、事務局の方からよろしくお願いいたします。

○大藤大臣官房参事官 それでは、IASC(国際会計基準委員会)の動向ということでございますが、去る5月23日、米国時間では5月22日でございますけれども、現在国際会計基準委員会は全面的な組織改編を行っているところでございますが、それの評議会の評議員のメンバーが決定され、公表されましたことを報告させていただきます。

 まず、「国際会計基準委員会(IASC)評議員の選出について」という資料をお配りしております。ちょっとページを振っていなくて恐縮でございますけれども、5ページでございますが、「国際会計基準委員会(IASC)の新しい組織」というポンチ絵がございます。昨年12月に指名委員会、7ページの指名委員会の7名のメンバーが決定されまして、この指名委員会のメンバーによりまして、この真ん中の四角でございますけれども、評議会の構成メンバーであります評議員の選考が進められてきたところでございます。

 その選考でございますけれども、1ページおめくりいただきますと、地域的、あるいは出身背景のバランスをとるということで、この縦横のマトリックスの考え方に基づき、枠組みの中で全体で19名を世界から選出するということで、今回作業が進められてきたところでございます。これはもう結果が入ってございますけれども、こういう作業が進められてきたところでございますが、この結果がこちらの時間の5月23日にIASCの指名委員会で決定されたということで公表されたわけでございます。

 その公表プレスリリースを資料の2ページから4ページにかけまして、英文でおつけしているところでございます。

 その新しい構成員の評議員のメンバーでございますが、2ページに19名掲げているところでございますけれども、我が国から三井物産の副社長でございます福間年勝氏とデロイト・トウシュ・トーマツの共同議長でございます田近耕次氏の2名が選出されたところでございます。

 評議員の地域別内訳、先ほどマトリックスを見ていただきましたけれども、北米6、欧州6、アジア・太平洋4、その他3ということになっておりまして、日本のお二方はアジア・太平洋4のうちの2名ということになるわけでございます。

 なお、1国から複数の評議員が選出されているのは米国の5名と日本の2名という結果になっているわけでございます。

 ポンチ絵に戻っていただきますと、このたび評議員が決まったわけでございますが、新しいIASCの組織というのは、いわゆる指名委員会は評議会メンバーを指名された後解散ということになりますので、評議会と理事会という大きな2つの層で構成されるということになりまして、この新しい評議会は理事会等のメンバーの指名、いわゆる人事、それから執行の監視、資金調達ということで、IASCの組織の人事運営の責任機関ということになるわけでございます。そのもとで独立性を持って、世界から専門的能力等により選出されました理事会、14名の理事で構成される理事会で公開草案、基準、解釈指針の検討、審議等が行われるということになるわけでございまして、評議会は非常に大きな力を持っているということでございます。

 昨年12月に指名委員会、7名のメンバーが選ばれたとき、日本から残念ながら選ばれなかったということもございまして、IASCへの影響等について危ぶむ声もあったわけでございますけれども、今回我が国から評議員が選出されまして、しかも複数、2名選出されたということは、我が国の企業会計のプレゼンスを示し、お二人の評議員のメンバーを通じまして、我が国の意見等を伝えることができるということで極めて意義が大きいものと私どもとしても考えているところでございます。

 事務局からの御報告は以上でございます。

○斎藤部会長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの御説明につきまして、御質問等ございましたら、どうぞ御発言ください。

 御発言はないでしょうか。よろしゅうございますか。どうぞ、安藤委員。

○安藤委員 分からないので教えていただきたい。これは、日本は2名枠ということで、ずっとこれはいくという意味ですか、それとも今たまたま2名だという意味ですか。

○大藤大臣官房参事官 そこは、最初に選ぶときに、昨年の12月の戦略作業部会というところで最初の19名の選び方について枠組みが示されて、それをIASCの理事会で承認されたということで、イニシャルというか、初めのメンバーがそういう形で選ばれたということでございますので、これから日本の枠が2がずっと確保されるということではございません。

 ちなみに、参考までに申し上げますと、評議員につきましては順次改選が行われるようにということで、おのおの3年任期の方、4年任期の方、5年任期の方ということでこれから割り振られまして、それでそれ以降は3年任期ということで次々と改選していくというようなことになるというふうに聞いております。

○斎藤部会長 ほかに御発言ございますでしょうか。ないでしょうか。

 それでは、時間の都合もございますので、なお御質問のある方は別途事務局の方にお尋ねいただきたいと存じます。

 さて、前回でございますが、論点整理に向けて粗ごなしの議論をしていただくということで、骨子を記した資料に基づいて大日方委員、川村委員、荒木委員から簡単な報告をしていただき意見交換を行いました。本日は、前回の意見交換を踏まえて、中島委員、辻山委員、西川委員、小宮山委員ほかの各委員の御協力を得まして文章化したものを、原案と申しますか、たたき台として用意してありますので、それをもとにして前回に引き続いて議論を重ねてまいりたいと存じます。お手元に「委員限」と打ってある資料でございます。

 早速本論に入りますけれども、私の方から、まず原案作成に当たってポイントとなると思われる事項について少しお時間をいただいて話をさせていただきたいと思います。

 お手元のこのペーパーで取り上げますのは、申すまでもありませんけれども、収益性の低下に伴う資産価値の下落を資産の簿価にどう反映させるのか、かつ利益にどう影響させるのか、そういう減損問題でございます。そこでの簿価の切り下げというのは、収益性の低下という原因の側に制約される一方で、その期の利益を減らすことの当否という結果面での合理性にも制約されているわけであります。概念や理屈を一貫させるという点では、減損認識の合理性というものを、この原因と結果の両面で確認していく必要があるわけでございます。

 しかし、そうは申しましても、当部会の審議が国際的な調和化を目的にしております以上、会計処理の選択肢は海外の現行基準に限られております。事実上はアメリカFASBの基準と国際会計基準のどちらかに合わせるということになるだろうと思います。この二つの、つまりアメリカの基準と国際会計基準が同じであれば、これは非常に話は簡単なわけでございますが、問題はその二つが違っていて、しかもそれぞれに根強い支持があるということであります。いわばファンがそれぞれおられるということなんですね。一方を選択するためには他方を棄却しなければならないわけでありますけれども、大変困ったことには、どちらの基準も読む限りは自分自身を正当化しているというだけでありまして、他方を否定するに足る論理であるとか、あるいは他と比較されるべき基準を準備しているというわけではありません。その意味では、それぞれが信念を表明しているわけでありますけれども、信念を言うだけでは違った信念を否定することはできないわけであります。

 私の希望は、それぞれの基準を支持される方が御自身の信念を披瀝するだけではなくて、対立する二つの基準を比較検討し得る座標軸というものを整えて、その一方を選択するという論拠をきちんと提示していただくということでありました。しかし、現在までのところ、どうもそれはかなえられていない感じがいたします。

 論点整理を目的にしているわけでありますけれども、現時点では何が本当に対立する基本的な論点なのかということは必ずしも明らかになっていないわけであります。これは私の杞憂かもしれませんけれども、もしかすると、ルールを選択するためには、より上位のルール、メタルールですね、より上位のルールが必要だという前提自体がもしかすると必ずしも共有されていないのかもしれないという感じもいたします。このペーパーはそういう状況の中で書かれているということをまず御理解いただきたいと存じます。

 もう各委員が十分御承知のように、アメリカの基準、お手元の資料の3ページですけれども、アメリカの基準は簿価が将来のキャッシュ・フロー、これは割引前の総額でありますが、この将来のキャッシュ・フローの割引前の総額を超えるときに減損が生じたと考える、そしてその資産を公正価値まで切り下げるというルールになっております。これは恐らく減損の生じた資産については、それまでの投資プロジェクトを一たん清算して、その時点の時価で再び同じ資産を買い戻して新しい投資を始めたと見る、そういうフィクションだろうと思うんですね。

 その一方、国際会計基準では、これは簿価が回収可能額を超えるときに、その回収可能額まで簿価を切り下げるというルールになっております。ただ、ここでいう回収可能額はその時点の正味売却価格と将来のキャッシュ・フローを割り引いた現在価値とを比較してより大きい方であります。これはよく知られておりますボンブライトの企業にとっての価値を定義する際の経済価値という要素でありまして、これを価値の指標と考えているのだろうと推測されるわけであります。

 このように二つの基準、米国基準と国際基準はそれぞれの観点から資産価値の指標を選択して、それぞれ違った評価のルールを定めているわけであります。どちらに合わせるかということを決めるためには、どちらのフィクションをとるかという選択をしなければいけないわけであります。ただ、何よりもどちらの基準も平常の状態では、そこで今定めました資産価値の指標を評価には使っていないわけであります。つまり、減損という例外的な状況での評価を文字通り例外的に決めていると考えた方がいいのだろうと思うんですね。当然ながら、そこでは原則的な基準との整合性を必ずしも大事にしているわけではないわけであります。だからこそ、例えば今この3ページから4ページの方にかけて書きましたようないろいろな問題が出てくるわけであります。

 その問題点についてはお読みいただいた上でまた後ほど議論をしていただきたいと思いますが、むしろ一つ、このお手元にお配りしたペーパーで意を用いた点を一点つけ加えたいと思います。このペーパーでは二つの基準、つまりアメリカの基準と国際基準というものを比べて、そのどちらに合わせるかを検討する上で、むしろ減価償却等の原則的な会計処理と整合するような概念もつけ加えるという方針をとってあります。つまり、例外的な基準であれば、それは一つだけなら理屈は要らないわけでありますけれども、対立するものが二つ以上ありますと、それは幾ら例外的な基準であってもやはり選ぶのに理屈が要るからであります。つまり、そこで特に意を用いました点は、アメリカの基準や国際基準では、いずれも共通してある時点の簿価のそこから先の将来における回収可能性を検討しているわけでありますけれども、それだけですと、過去の減価償却計算と収益性の低下とのどっちが原因なのか分からない、そういう減損が生ずる可能性があるわけであります。そのために、過年度の回収分も含めて、投資期間全体を通した投資額の回収可能性を問題にする、そのことによって、収益性の低下による減損だけを引き出そう、そういう目的を持った概念を一つ非常に抽象的につけ加えてあります。もちろん、それは申すまでもありませんけれども、現実的な選択肢であるアメリカの基準と国際基準とのどちらが原則的な資産評価と整合するかということを考えるためのごく抽象的な道具にすぎません。それだけの意味しかないということをおことわりしておきたいと思います。

 もちろん、そういう基準を――基準といいますか概念を一つ後につけ加えて仮に提示しているわけでありますけれども、そういう概念をつけ加えるということは、これは申すまでもありませんが、私の本意ではありません。できることなら、先ほど申しましたように、どなたかが明確な理屈でどちらかの基準を支持して、他方を否定してくだされば、それが一番ありがたいし、一番歓迎するところであります。それが現在まではどうもうまく出ていないものですから、これは場違いになることを承知の上で、無理に概念を組み立てて、遠慮しいしい書き加えているわけであります。その意味では、今からでも遅くはないわけでありますので、どうかこの場で各委員が、信念だけでない論理でこういう窮状を救っていただきたいと考えております。理屈抜きで信念だけが食い違っているのが非常に困るわけでありまして、これは政策決定であれば価値の選択だからそれでいいわけでありますが、この問題はどうもそういう信念だけ言われても解決のしようがない技術的な問題であろうと思います。その意味で、もしかしてお目ざわりな余計な概念がこの文章の中に入っているかもしれませんが、それはそういう趣旨であるということをぜひ御了解いただき、お許しいただいて、その上でこの論点整理ペーパーの仮案について御意見を賜りたいと存じます。

 それでは、以上簡単に私の方からこの文章の性格についてお話し申し上げましたけれども、それを踏まえた上で、この原案について事務局から簡単に説明していただきたいと思います。

 では、よろしくお願いいたします。

○平松課長補佐 それでは、ごく簡単でございますが、特に前回の部会の議論等を踏まえまして御説明させていただきたいと思います。

 事前にこの論点整理の(案)ということで皆様にお送りしてあると思いますので、あらかじめお読みいただいているのではないかということで、全文の朗読等、非常に長時間にわたりますので、本日は割愛させていただきたいと思います。

 まず、全体の構成についてでございますが、前回の部会でスケルトンをお示ししたように、まさにそれに沿って作ってあります。経緯及び基本的な考え方、IIとして具体的な論点、それから IIIとして、その他の指摘事項、それを受けましたところの別紙、そして最後に参考資料という構成になっております。

 その他の指摘事項につきましてですが、中身に書いてありますように、審議事項としての優先順位とか、あるいは審議時間等との関係から、論点とはせずに、今回はただ内容を別紙にまとめて記載するということでどうかという一つの御提案でございます。

 それからまた参考資料といたしまして、米国基準と国際会計基準の主要な相違点を末尾につけるということでしてみたいというふうに考えております。

 それから中身の問題ですが、全体として用語とかいろいろと整理されていない、あるいは不統一なものがありましたものですから、そういったものの整理をとりあえず行っております。

 さらに1ページからの経緯及び基本的な考え方についてというところでございますが、この部分につきましては、特に本日も今部会長からお話がありましたが、前回の部会長の御発言等を軸にしてこれを文章にしております。

 この部分の構成につきましては、ディスクロージャー制度の意義であるとか、審議会における今までの基準の設定の状況とか、あるいは金融資産と事業用資産の性格の違い、事業用資産をめぐる問題意識、それから国際的な基準の動向、その他の課題についての考え方の整理、部会における審議状況などを盛り込んでおります。

 それから今後の検討課題といたしまして、減損会計と不動産会計を取り上げるということ、さらに、論点整理を公表して広く各界の意見を求めることというような基本的な事項が盛り込まれているということでございます。

 それから3ページ以降の具体的論点でございますが、まず第一に固定資産の減損会計ということでございまして、総論として、まず減損会計についての基本的な考え方が記述されているということでございます。ここでは減損会計の意義といった部分、それから減損の会計基準を設定する場合の視点、考え方ないし問題点といったようなことについて記述がされているわけでございます。この辺を入れると、先ほどもありましたようにお考えがあるところではないかというふうに思います。

 それから最後に減損と臨時償却との関係の整理の必要性が言及されております。

 それから(1)以下の基本的な論点以下の部分なんですが、この5ページ中段以降の部分は、前回、大日方委員、川村委員、荒木委員に説明していただいたことを文章化しているということでございます。ただし、用語の修正は若干しておりまして、例え

ば前回御紹介いただきました「あるべき簿価」といったような用語を「資産評価基準」といったように、より一般的な用語に置きかえているということ、文章的にもやや整理されていないものを整理したということでございます。

 それから、(2)の減損の対象資産でございますが、前回繰延資産との関係につきまして若干議論があったかと思うんですが、今回は繰延資産については、固定資産という範疇から少し外れるということで明示的には記載をしておりません。今後またパブリック・コメントをとるわけですが、その際に何か意見があれば、また別途考えていきたいというふうに思っております。

 それから、(3)、(4)につきましては、特段つけ加えたことはございません。

 (5)の資産のグルーピング、それから全社資産の減損、それから減損の配分というところの最後に、前回意見がございまして、個別と連結との関係という文章を追加しております。前回、収益性の低下という問題については、個別財務諸表だけではつかみ切れない場合があるというような発言がございまして、そういう一文を入れさせていただいております。

 以下、のれんの減損、それから減損損失の戻し入れ、(8)の減損の会計処理及び表示といったところは、前回御発表いただいた内容を基本的に文章化しているということでございます。

 それから11ページの投資不動産についても同様でございます。

 それから、その他の指摘事項についてでございますが、別紙ということで、現在13ページから15ページに便宜的に入れてありますけれども、これにつきましては、前回項目だけお示ししたんですが、今回それぞれの項目ごとに内容を簡潔に記述をしておるということでございます。

 それから大きな項目の整理をするために、不動産の売却取引に関する会計処理を取得原価に関する指摘事項に移しております。

 それから、前回御意見のあった所有権移転外のファイナンス・リースの会計処理方法の見直しといった問題意識をつけ加えております。

 それから、前回からございましたセール・アンド・リースバック取引の問題につきましても、取得原価に関する事項ということで、場所を移しかえているということでございます。

 大体以上でございます。

○斎藤部会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいま紹介されました原案に関しまして、御意見なり、御質問なりおありの方は御自由に御発言いただきたいと存じます。

 安藤委員、どうぞ。

○安藤委員 内容に入る前に、3ページのところに、真ん中のIIの具体的論点のすぐ上のパラグラフの3行ですが、これは日程的にこの論点整理を公表して各界から意見を徴するというんですけれども、これは日程は大体決まっているんですか。情報としてちょっと知りたい。

○平松課長補佐 もちろん部会の今後の展開によるんですけれども、私の予定というんでしょうか、考えでは、6月に一応取りまとめていただいて公表をするということで、2カ月ぐらいコメントの期間をいただいて、8月中ぐらい、8月いっぱいか8月の途中ぐらいで締め切らせていただいて、事務局の方でまとめて、9月以降の部会につなげていきたいというふうに考えています。

○斎藤部会長 ちなみに、その9月の部会というのは固定資産部会になるわけですね。

○平松課長補佐 はい、そうです。

○安藤委員 それから、もう一つ。

○斎藤部会長 どうぞ、安藤委員。

○安藤委員 すみません、外回りの話ばかりなんですけれども、先ほどの斎藤部会長のお話の中で、非常に苦労されているのはよく分かります。それから、既存のルールとの整合性ということを非常に心配されてすばらしいことだと思うんですけれども、これは、今までの最近出た新しい基準が幾つかありますよね、税効果とか、あるいは、一々言いませんけれども、それを作るときは必ずしも既存のルールとの整合性ということを、それほど意識しないで作ってきたんではないかというような私は気はしているんですけれどもね。それとの関連から言いますと、これは固定資産の会計ということで、最近できたのが比較的新しい領域問題だとすれば、これはかなり根幹にかかわる問題だということと、あと既存ルールがちゃんとあって、はっきり言えば、企業会計原則にまともに重なる部分があるんで、特に整合性ということを気にされているのかなと解釈したんですが、それでよろしいでしょうか。

○斎藤部会長 そうだと私は思っておりますが。

 ほかに御発言ございませんでしょうか。太田委員、どうぞ。

○太田委員 ちょっとこれも確認みたいな形なんですが、今回の論点整理のときには、いわゆる国際会計基準なのか、米国の基準なのかというような、どちらがいいというような選択の判断というのは余り強くは出されないという御意向なのか、あるいはある程度もうそこでは選択を終わってしまって、その確認という形でやられる方向なのか、ちょっとお聞かせ願えればと思います。

○平松課長補佐 むしろそれは部会における審議の状況によるんだと思うんですけれども、現状ではどちらということまで強く出せるような状況にはないというふうに考えています。

○斎藤部会長 八木委員、どうぞ。

○八木委員 先ほど部会長がおっしゃったAかBかというのをどうするかというところまではとてもまだ及んでいないんでございますが、実際にこれを使って実務をやっていく立場から幾つか、今後の方向でお願いをしておきたいなと。今、平松さんおっしゃったように、来月には取りまとめていろいろ論点整理をおやりになるので、当然そういうところに出てくると思うんでございますが、産業界の状況から見て、いろいろ立場立場で意見があると思いますが、基本的な認識のところは、我々としてはこの方向で御検討いただいていいんじゃないかなという認識でございますが、ただ実務ということで、必ずしもこの中で触れられていない部分を、あえてまたちょっと強調しておきたいのは、一つは不動産に関しては、例えば、この国の市場でありますとか、価格だとか、所有形態だとか、それから最近は流動化に対する法整備だとか、そういったいろいろなことがまだ流動的だったり未確定だったりはっきりしなかったり、そういうことを十分に配慮していろいろまとめていくことをぜひやっていただきたいということでございます。特に土地に関しては、もう所有形態から何から非常に複雑な部分がありますので、これはこれまでの議論でもいろいろ出ましたけれども、非常に注意していきたいなというところでございます。

 それから、やはり、実務の面からは税法、商法というものとの関係ですね、この配慮が必要だと思うんでありまして、ただいまでも既に税とこの会計との関係で、私どもの例えば帳簿は完全に二重になっています。これは表現が悪うございますが、所得の計算用の固定資産の台帳と税額の計算用のそれとは既にもういろいろ耐用年数の問題から何から、ルールもしょっちゅう変わりますし、そういうことからして、二重、三重になっている前提でもうやっている。これがまあ普通の企業のあり方だと思っておりまして、そういうのが今後のこれでますます拡大していく。だから、会計と税務とも完全に別のものになっていくということなんだと思うんでございますが、そういうことがこれからのまた企業結合の会計処理の面からもこういうものは増幅されていくと思うんで、そういう意味からも、できるだけ調整に御配慮をいただければと。固定資産に関しては、大体やはり我々税法を中心に長い間仕事をしてきたようなのが現状だと思うんでございまして、ここでいろいろこれが変わっていくということが実務をより複雑にしていくんだとこういうふうに思っております。

 それからその結果として、当然のことながら我々のコストとか手間とか、そういったものがどうしてもふえていきます。コンピュータ時代になっても、いろいろその辺は複雑になればなるほど手数がかかるわけなんでございまして、その辺の御配慮というものをぜひお願いしたいなと思っております。いろいろ変動の兆候の有無とかいうのをどう判断するかとか、実際の実務からすると難しいことがいろいろこの中にありますが、そういうこともある程度分かりやすくしていかなきゃいけないと思いまして、この辺、これから実務的には相当具体的に煮詰めていかなきゃいけない問題があるなと、こういうふうに思っておりますので、まあ概括的でございますが、とりあえずその3点をよろしくお願いいたします。

○斎藤部会長 ありがとうございました。品川委員、どうぞ。

○品川委員 3ページのところで、固定資産の減損会計の定義が行われているわけですが、ここではこの金融商品に適用されている時価評価とは異質なんだ、要するに、取得原価以下の中で従来の評価損が計上される場合の問題だけを取り上げようという形で書かれておりまして、これはこのペーパー全般がそうなんですが、その前提があるのは、このIASとアメリカの会計基準がそうなっているからということなんだと理解しているんですけれども、先ほど部会長がおっしゃったように、ロジカルに物事を考える場合に、なぜ固定資産だけ時価評価をやらないのか、言うならば取得原価を超えた場合にどう扱うかということを議論しないのかということについてやや疑問があるんですけれども、その辺は……。ただ、国際会計基準とアメリカがそうやっているからもうそれ以上のことは考えないというそこだけで済ますのか、そこはちょっと気になるんですけれども、いかがでしょうか。

○斎藤部会長 それは私から簡単にお答え申し上げますけれども、この文章でいきますと2ページの一番上のパラグラフでございますが、「他方」というところがございますね。そこで、事業用の資産については、時価というものがレリバントな数字ではないということを書いておりまして、それは国際基準やアメリカの基準がそうだからというのではありません。それらも含めて基本的に事業用の資産を時価評価しようという動きはほとんどないわけでございまして、それを確認しているつもりでございます。

○品川委員 損が生じたときだけはそれをまた認めるというわけですね。

○斎藤部会長 だから、その理屈を組み立てるのに、それぞれアメリカの基準も国際基準も今ここでの作業もみんなきゅうきゅうとして頭をひねっているわけでございます。

○品川委員 そういう取得原価に枠をはめたからロジカルに物事が進まないようにも感じられるんですけれども、そこに一定の枠をはめたがゆえに。

○斎藤部会長 しかし、時価評価にしてしまいますと、枠はありませんが、事業用資産について時価が上がればその分は利益と見る、そういう議論になりますが、その議論は恐らく探しても余りないんじゃないかと思うんですね。そうしろという議論がいっぱい出てくれば、それはそれで検討できるんですけれども、そういう主張をなさる方というのは、かなり例外的なケースを除きますと余り見られないような気がするんですが。

○品川委員 それは今の二つの基準に枠がはめられているから、それを超えた発想が起きない、また、そういう発想をしても現実的でないということで打ち消されるだけで、冒頭にロジカルにというのがどうも気にかかって、私自身もこの減損会計の問題について枠をはめることがそもそもロジカルに反するのではないかという一つの疑問がずっと解消できないでいるものですから。まあ、大体は分かりました。これ以上は申し上げません。

○斎藤部会長 念のために申し上げますと、決して外国の基準によって枠をはめているつもりはなくて、理屈で考えて、多分事業用の資産は時価評価はできないのではないかというふうに考えているというつもりでございます。

 ほかに御発言ございませんでしょうか。安藤委員、どうぞ。

○安藤委員 僕は斎藤部会長の言われるのはよく分かるんです。僕も賛成なんですけれども、その論理からすると、IAS40号の投資不動産で賃貸不動産に公正価値モデルを残していますよね。あれはやはりおかしいという結論になりますか。

○斎藤部会長 それは投資不動産を事業資産と見るか見ないかの問題であって、IASのそのケースですと、純粋の事業用資産とは見ていないということだと思いますね。

 小宮山委員、どうぞ。

○小宮山委員 全体の論点の中には入っていると思うんですけれども、この論点整理の冒頭にも出てきますけれども、不動産関係の話が出てきて、先ほど八木委員の話にもあったと思いますが、恐らく一般事業会社で一番気にするのは事業用の土地の評価減だろうと思うんですね。特に顕著なのは、やはり本社の土地とか営業所の土地とかです。工場の土地というのは一般に工場団地のようなところにありますので、余り減損みたいな問題が起きてこない。そうすると、それを評価減すべきなのかどうかという議論をするときに、一般的には、例えば本社の土地、10年ぐらい前に50億で買っていると、恐らく今10億ぐらいですね。これをどういうふうに考えていくか。これはキャッシュ・フローのグルーピングをすると全社資産なんですね。これをもし事業の製品グループ、もしくはセグメントに割り振っていくと、その会社がもうかっている限り絶対に減損は生じないんですね。ただ、50億のものが10億に下がっていることはこれは事実なんですね。その辺の問題というのをやらなければいけないというふうに考えるのか、やってもいいと考えるのか。その解決方法として、減損の時価のとり方として、公正価値をとるという考え方をとるのか、キャッシュ・フローの現在割引価値をとるのか、あるいはそういう土地について、投資不動産の減損に近いような考え方をとるのか。どこかでこれは多分結論を出さないと、一番事業会社が気にしている問題というのがはっきりしてこないんじゃないかなというふうに思ったんですね。関連した問題はこの論点の中には上がっていますけれども、それをどこかで決めるロジックというものをどこかで決めないといけないのかなというふうに思っているんですけれども。

○斎藤部会長 おっしゃるとおりだと思います。

○八木委員 実に同じことを考えておりまして、土地をやるといったときに、今連結でございますよね。そうすると、うちの場合は海外も含めて一千社。それを一律対象にするかどうかとそのとり方とか、そういう実務の上ではいろいろあると思います。

 それから、あとキャッシュ・フローにしても、例えば私どもですと、半導体の設備。親の持っている設備に加えて関連会社が、しかも全世界に点在しているものを見たときにどうするか。そのキャッシュ・フローの範囲をとらえる範囲の論点とか、実務的には連結というのが主になっているだけに話が非常に複雑かつ広がってきているなと思っておりまして、今の小宮山さんのおっしゃったのをちょっと敷衍していいますと、そういうこともいろいろあると思います。

○斎藤部会長 ありがとうございました。それもよく理解できます。ただ、その一方で、減損問題というのが世間からやかましく言われるときの一番ターゲットになっているのはやはり土地でございますので、そこの一番重要な問題の接点に土地があるということで、どちら側からもいろいろな議論が出てくるということだと思います。

 どうぞ、太田委員。

○太田委員 今の会社は世界的にいろいろアメリカにも子会社があり、ヨーロッパにもありというような状況が続いているというようなお話を伺えたんですが、ちょっとそこと関係する話で、日本に本社がありまして、アメリカにも子会社がある、ヨーロッパにも子会社があるというような会社は非常に多いと思うんですね。そういうような会社が、それぞれ現地の会計基準で財務諸表を作って本社に、例えばレポートしてきましたという前提で考えた場合に、理論的にはアメリカの基準でアメリカの子会社は減損が計上されている、また、ヨーロッパについては、IASを採用している国であるとすれば、そのIASの基準で減損が計上されてきた、そういうようなケースの場合に、じゃあ今度は日本において連結財務諸表を作成する際に、どうやって考えていったらいいのかなというのもかなり実務的には問題として出てくる可能性があるんじゃないかなというふうに思います。

○斎藤部会長 よく分かりました。ありがとうございました。

 ほかに御発言ないでしょうか。安藤委員、どうぞ。

○安藤委員 7ページの文章は何回も何人もの人が集まって非常に繰り返し練られた文章だと思うんですけれども、ここだけちょっと確認なんですが、7ページの上から二つ目のパラグラフ、行数では4行目の行ですが、その行に「理念的には、期末時点における簿価の回収可能性ではなく、過去に回収した額の情報も含めて、資産を取得した当初の回収可能額が見積り直される」。ここで「回収可能」、あるいは「回収」という言葉が3カ所出てくるんですけれども、最初の簿価の回収というのはこれは分かるんですね。その後の「過去に回収した額」とか「当初の回収可能額」、これで言っている2行目、そのパラグラフの2行目で言っている「回収」というのは、これは収益としての回収というふうに理解してよろしいでしょうか。

○斎藤部会長 恐らくこれは資産を取得した当初の投資額の回収性ということではないかと思いますが。通常の会計上の表現でいけば取得原価の回収可能性。

○安藤委員 ああ、そうですか。じゃあ、やっぱり私が間違えていたな。その後の収益性ということと、それはつながって理解していいんでしょうかね。

○斎藤部会長 なるほど。そうですね。回収可能性、回収というと当初の投資を回収するという意味なんですけれども、今の安藤委員が御指摘のこのパラグラフ2行目の「当初の回収可能額」というのは、これはIAS的な意味での回収可能額ですから、将来に回収されるキャッシュ・フローの当初の時点における割引現在価値という意味だろうと思いますね。

 ですから、一番当初に見積もったその割引現在価値が、しばらく時間がたって、後の情報を使って見積り直したら、当初の見積りよりも低いというときには、収益性はそこは明らかに下がっている。けれども、減損が生じたと言えるにはそれだけじゃだめなのであって、その見積り直した当初の割引現在価値が、当初の取得価格を割り込むほど下がったときに明らかにこれは減損が生じていると考えようと、そういう感じの議論なんですね。

○安藤委員 そうすると、あくまでも投資額の回収ということは変わらないんですね。

○斎藤部会長 変わりません。

 太田委員、どうぞ。

○太田委員 今のくだりのところに関連しての確認なんですが、今の部会長の方の御説明だと回収可能性ということで、これはもう割引現在価値で回収可能性は考えるということになりますか。

○斎藤部会長 このパラグラフはそうですね。このパラグラフは。全体がそうだということでは必ずしもありません。

○太田委員 はい、分かりました。

○斎藤部会長 ほかに御発言ないでしょうか。どうぞ、太田委員。

○太田委員 ちょっと今の部分と関連するんですが、投資の回収可能性とそれから簿価の回収可能性、それから投資を行ってから減価償却方法を会社は選択したり、耐用年数を見積もったりするという作業が必要になるわけなんですが、じゃあ減価償却をどういうベースで方法なり耐用年数を選択していくべきなのかという理屈の整理というのは、何か三つとも関連しているように考えられるのですが、その辺を一緒に議論していく必要がないものなんでしょうか。

○斎藤部会長 これは減価償却というものに対する考え方だと思うのですけれども、現在我々が共有している減価償却の概念というのは、年々の業績にディペンドして償却するということはしない。そういうのが本来、近代会計における減価償却だと思うんですね。ですから、例えば毎年もうかったときにたくさん償却して、もうかっていないときは少ししか償却しないという、利益償却に結びつくようなことは、もともと減価償却という概念が出てきたときから否定されているわけですね。その意味で、減価償却の方法の選択問題とそれからその資産の収益によって決まるような年々の資産価値の減耗とは独立になっている。そういう構造はこのペーパーでは与件になっております。ですから、太田委員がおっしゃるようにその二つをリンクさせるべきだということになりますと、それは一つの御見解だと思いますが、その場合には近代会計において減価償却が入ってきたその時点からの基本的な概念を組み直すという作業が必要でございますので、現時点では減価償却の方法の選択問題とそれからここでの減損、あるいは投資の回収という問題とは一応独立に論点を設定しているということでございます。

 どうぞ、岩田委員。

○岩田委員 不動産の話が出てまいりましたので、ちょっと一言申し上げさせていただきます。

 八木委員、小宮山委員と繰り返しになるかもしれませんけれども、今現在不動産会社とか建設会社で、販売用不動産の評価減を実際1年前倒しでかなりやっているわけでございますが、これにつきましても、やはり企業の力とかそういうものの中で、今まで過去にそういった過大の投資をしていたといういろいろな問題があるんですけれども、そのために経常では利益が出ていても、全体的な当期利益を見ますとマイナスに転じているという状況でございます。今これは販売用不動産の場合は、当然1年以内にいろいろな事業化したり分譲したりしなくちゃいけないので、いろいろ時価の問題との関係はビビットに反映されるべきだとは思うんですけれども、特に固定資産の議論につきましては、いろいろな問題を抱えているのではないか、先ほど小宮山委員もおっしゃいました本社の問題とかそういった問題もございますので、その辺のことをどこまでやるかによって、実際に今の企業に与える影響はかなり厳しいものになるのではないかなというふうに思われますので、いろいろなことを急激に変えられると、なかなか企業としては対応できないのではないかというのが正直な感想でございます。

 それとやはり、いろいろ難しいテクニカルな議論はちょっとあると思うんですけれども、やはり実務というのは一番シンプルなものがよろしいのではないかなというふうに思いますので、この辺も税法の絡みとかいろいろございますけれども、なるべく分かりやすくいい方向性でまとめていただきたいなというふうに考えております。

 以上です。

○斎藤部会長 ありがとうございました。

 ほかに御発言ないでしょうか。太田委員、どうぞ。

○太田委員 ちょっと今の御発言に関連してなんですが、会社側が当然利益に反映されるその他の要因で、非常に短期的にドラスティックに会計基準を変えられるとちょっと困るということは実務に携わっている身としてよく分かります。ただ、その一方で、やはり減損ですとか、固定資産関係の評価損というものは、会社の今ある状態自体を別に変えるものではないという要素もあるかと思うんですね。今ある現状は変わらずに、それをどうとらえるかという部分の考え方のところで影響される会計基準でもあると思いますので、影響が大きいということはよくわかりますが、それは例えば1年、2年、何年かかけるということであっても、そこで影響が大きいので、そういう基準はやはり緩やかにした方がいいとか、そういうような方向で考えない方がいいのではないかなというふうに考えますので、よろしくお願いいたします。

○斎藤部会長 分かりました。ほかに御発言ないでしょうか。西川委員、どうぞ。

○西川委員 この間、ちょっとリースのことを申し上げたんですが、7ページの下の方の「賃貸借処理しているリース資産についても借り手側で減損会計の対象とするかどうか検討する」という書き方で、分かったんですけれども、これを読んだ人が必ずしも分かるかどうかということを感じてたんで、今思いますのは、要するに減損会計というのはやはりオンバランスになっているものがあるから減損会計だと普通の人は思っておりますので、例えば「減損会計の対象とするかどうか」という言い方と、それからその次の「不均衡が生じない」というのも一緒にして、例えば「減損会計と同様の会計処理が可能であるか検討する」といったような書き方にした方が読んだ方は分かるんじゃないかなという感じがしました。

○斎藤部会長 分かりました。減損会計と同様の、あるいは同じ効果を持つということが分かればいいわけですね。

 ほかに御発言ないでしょうか。

 中島部会長代理、いかがですか。

○中島部会長代理 それでは、信念の話に入ってもいいですか。

○斎藤部会長 どうぞ。

○中島部会長代理 それでは、私、ちょっと一言発言させてもらいますけれども、私はアメリカの基準とIASの基準で随分アプローチが違うんじゃないかという気がしているんですね。アメリカの基準というのは、減損会計を対象にする減損というのをかなり限定しているというか、絞っているという気がするんですね。というのは、判定の基準のところで、一定の減損の兆候があるということのほかに、回収可能額というのを割引前のキャッシュ・フローで見ているわけですから、かなりバーを高くしていると思うんですね。その上で、要するに減損会計というものを考えているんだろうと思うんですよ。

 それから、一方のIASの方はそうじゃなくて、かなり小刻みな変動というんですかね、そういうものまでも減損会計の対象に取り込んでいる。だからこそ事後的に状況が変わればそれを修正するというようなことをやるという点で、基本的なアプローチがかなり違っていると思うんですね。減損会計というのは、今までの償却計算からのかなり大幅な変更というんですかね、例外的な処理ですから、私はどちらかというとアメリカみたいに、特にいろいろな見積りの誤差とか何かも考慮すれば、減損の会計の対象をかなり絞るというアプローチの方が現実的じゃないかなという気がするんですね。

 それであと理論的なところでいろいろ問題になっていますけれども、アメリカの処理で公正価値を使うというところに関してかなりいろいろ批判があるように思うんですけれども、ただ私はアメリカの基準を読んでみると、そんなにわかりにくくはないような気がするんですね。というのは、減損というのをそういうふうに非常に限定しているわけですから、だから、要するに兆候があって、割引前のキャッシュ・フローで見て簿価を下回っちゃっているという事態、というのはかなり大幅な価値の減少が出ているというときじゃないかと思うんですね。例えば、逆瀬さんから日立の例が御報告がありましたけれども、僕は多分日立の例なんていうのは定率法でやっていて、それでその簿価がなおかつ回収可能額、割引前のキャッシュ・フローを上回るような事態だと思うんですね。そういう事態になれば、多分企業側としては生産計画とか何かを大幅に見直しますし、場合によったら、ラインの一部とか一つをとめてしまうとか、それから割り当てている人員も大幅に減らすとか、稼働率も大幅に減らすとかいうことをやると思うんですね。そういうことをやったとすれば、それは、果して今までの投資の継続なのかどうかということがあると思うんですよ。それはもうその時点で、従来の投資はもう明らかに失敗だということで、要するに閉めちゃったと。にもかかわらず、二束三文で設備を売るよりは、やっぱり使い続けた方が有利だからということで使い続けるというのであれば、それは新しい投資というふうに考えた方が何となく実態に合っているんじゃないかという気がするんですね。だから、それは、一たん売却して再投資だという、フィクションですけれども、擬制を使ってそこで新しいニュー・コストベーシスに変えるというのは、そんなに分かりにくい理屈ではないような気がするんですね。

 一方で、IASの方は、要するにここの論点整理で言っているのでいえば、その資本価値というんですかね、そういうもので評価をし直すということですから、今までの会計の考え方からいうと、ちょっとそれは多分違うんだろうと。私はその辺余りよくわかりませんけれども、多分違うんだろうと思うんですね。公正価値でやる方というのは、もしそこで新しいコスト・ベーシスを入れるという考え方に立てば、別に今までの取得会計と矛盾するものではないんじゃないかというような気がするものですから、私はどちらかというと、その二つを比べるとアメリカの基準の方が何となく分かりやすいなという、そういうことで多分に信念で申し訳ないんですけれども。

○斎藤部会長 ありがとうございました。今の中島委員のようなお話で皆さん方が賛同してくだされば、もうそれでおしまいということで、非常に楽なんですけれども、どうも今のところそうでもないような気配でございますので、苦労しているということでございます。

 太田委員、どうぞ。

○太田委員 ちょっと今の話に関連してしまうんですが、実は私も個人的にはアメリカの基準の方がわかりやすいのかなというふうに思っております。

 あともう一つ、IASに対する批判というか、そういう物の見方の批判としまして、実はどういう場合にIASの見直しをすればいいのかということがよくわからない。基準自体は常にやらなくてもいいですよ、経営者の人が減損の兆候があるというふうに思った場合にやってくださいというふうにあるんですが、何かそれ以上のガイドラインがなくて、同じように規定されているFASBの方は割引前のキャッシュ・フローで回収ができなければ、それは減損なんだなということが割と見てとれるかと思うんですが、IASの方は一体どういう場合に減損なのかということが、理論的に言ってしまえば簿価よりもちょっとでも下がっていれば減損だというふうにありますが、じゃあそういう場合に常にやはり認識しなきゃいけないのかとか、そういう決め方がいま一つ筋が基準の中で通っていないように思いまして、その基準自体のわかりやすさ、それから整合性、あるところでは減損というのは経済的に考えて、常に下がっているんであれば認識するという考え方をとっていますと言いながら、あるところでは、米国基準でいっているような確率の要素というのは、既に減損を考える機会をそもそも兆候がある場合だけでいいよと言っているところで排除していますというあたりで、かなり基準の中での不整合が見られるような気がしまして、そういう点からもちょっと分かりにくい基準なんではないかなというふうに思っております。

○斎藤部会長 ありがとうございました。実際にそのルールを作るときに、これは先の話ですけれども、アメリカの基準と国際基準というのを比較していろいろ調整をするんでしょうが、その場合には、必ずしも現在あるアメリカの基準丸ごとと現在ある国際基準丸ごとを比較する必要はなくて、今のお話の中にありましたように、減損をどの状況で認識するかというルールの問題と、認識するとして減損をどう評価するかという問題は別々に考えても一向に差し支えない議論でありますので、その辺はいろいろとこれから議論が出てくるのだろうと思います。

 安藤委員、どうぞ。

○安藤委員 今のお話大変おもしろく、中島部会長代理とそれから今の太田委員の御発言を聞いていて…。私は好きで、最近興味があって、昭和9年でしたか、商工省の臨時産業合理局財務管理委員会の財務諸表準則とかですね、昭和10年2月の財産評価準則、特に財産評価準則のところにすごくいい1パラグラフの文章があるんですね。それを今ちょっと関係しているので、読ませてもらいますけれども、「決算時における財産の評価に関しては、学説区々にわたるといえども、本準則は理論の一方に偏せず、計算の堅実に留意して安全確実を第一主義とするとともに、営業の継続を前提とする評価法としてその実用性を尊重せり」という、これはすごくすばらしい行政だと思うんですよね。これのアナロジーで言いますと、私は、もしも今、例えばたまたま今出ているのはアメリカ基準と国際基準の二つがあるとして、どっちが堅固かというのかな、あるいはどっちに不確定要素が少ないかとかわかりやすいかとか、やっぱりそれも一つの選択の要素だと思うんですね。つまり、理論的に五分五分であれば、その前提条件がなるべく少ない方、例えば割引率が片方入る、片方入らないというのは、キャッシュ・フローを見積もるだけでも大変なことなんですけれども、それプラス、現在価値になったら割引率をやらなくちゃいけない。それからわかりやすさということであれば、理論的に五分五分だったら、子供のおもちゃじゃないけれども、壊れない方というんでしょうかね。非常に微妙な機構がない方が私は健康なんじゃないかということで、この昭和10年、11年の財産評価準則のこの精神というのはそういうところに使えるんじゃないかなというふうに思いました。

○斎藤部会長 ありがとうございました。ほかに御発言ございませんでしょうか。

 黙って座っていらっしゃるのは大変苦痛だと思って、大変私も気が引けるんですけれども、こちらから御指名申し上げるわけにはいきませんので、私もじっと忍耐しておりますので。

○品川委員 よろしいですか。

○斎藤部会長 どうぞ、品川委員。

○品川委員 前回若杉会長から、トライアングル体制にとらわれることなく、新たな会計基準の策定を目指すべきだというごもっともなお話があったわけでありますが、しかし、この企業会計審議会の昭和20年代から特に40年代までのかつての大きな職務といいますか、いろいろ議論されてきた問題に、やはりトライアングル体制をいかに拡充するか、むしろ税法、商法との調整をどう図るべきかという議論がずっとなされてきて、この企業会計審議会を通じて多くの提案がなされてきたわけです。現在法人税法の22条4項に、一般に公正妥当と認められれば、会計処理の基準に従って所得計算を行うべきだという規定も昭和42年に設けられたわけです。そういう企業会計審議会の審議を経た上で税制調査会の答申等を経て確立されて、現在税法上は所得計算と利益計算との結合性というか統合性というか、その調整についていろいろな議論が行われているわけです。しかし、その問題は、一昨年の税法改正でかなり方向が変わったということで、何となく企業会計と税法とはもう別々にやるべきだというムードが非常に高くなってきた。先般の若杉会長のお話もそういうムードの一つの反映なのかなと、そういう感じはしておるんですが、ただ、この減損会計自体については、極めて税法と企業会計との共有する部分が非常に大きいわけですね。その共有する部分が大きい問題について、会計は会計、税法は税法でそのまま泣き別れになっていいのかどうか。恐らく今この方向でアメリカ基準にしても国際会計基準にしても、税法との規定とはかなり隔離した方向で方法が決まるかと思うんですけれども、そういう問題について、そこはもう割り切って、会計だけの基準を決めればいいのであって、あとはすべてもう税効果会計で処理すればいいんだ、その辺の割り切りがあるのかないのか。あるいはそう割り切って現行の法人税法のような、22条4項のような規定はもう過去の遺物でいいのかどうか。あとは残された問題だけやればいいというふうな考えもあるんでしょうし、あるいはいろいろな減価償却制度自体についても、税法上の規定にもう依存する必要がないのかどうか。その辺をある程度、双方腹をくくりながら議論をしていかないと、冒頭部会長がおっしゃったような既存会計制度との調整をどうするかということにもかかわってくると思うんですけれども、その辺がやや、まあこれから議論の中で議論されていくんでしょうけれども、若干このペーパーにはその辺が少し薄いような感じがしたんです。これは今後の議論の中で議論されていくということであれば、それはそれでそのときの議論を楽しみにしたいと思っております。ぜひよろしくお願いします。

○斎藤部会長 企業会計のディスクロージャーと税制とをリンクさせる制度とさせない制度は両方世界に存在するわけで、そのどちらを選択するかというのは非常に難しい問題だと思うんですね。そもそも論として、こういうペーパーで両者の関係をどうするかということを最初に決めつけて、その後具体的な議論するというのは大変難しくて、恐らく個別の論点の積み上げで、ここまで来ちゃったら分けるしかないとか、あるいはこの程度だったらやっぱりくっつけておく方がいいだろうという議論になると思うんですね。恐らくどの国でも、両者を分ける国でもくっつける国でも、選択の基準は基本的にはどっちが取引コスト、あるいは契約コストが安く上がるかという観点だと思うんですね。ですから、恐らくその国々で固有の事情があって、くっつけている方が安いと思っている国はくっつけていますし、そうじゃないと思っている国は分けている。それは恐らく個別のいろいろな議論を積み上げていって、その制約、枠組みが果して現時点で桎梏になっているかどうかを議論するしかないのではないかと私は考えておりますけれども。

○品川委員 まあ、既に方向性としてはそうなのかも分かりませんね。個別の議論を通じて事実関係を作り上げていくということは、ある意味では前提論を避けてなし崩し的に流れた方向で、もうトライアングルは終わったんだという、そういう形に将来的になっていくのかなという感じはしてはいるんですけれども、そこに先ほども冒頭におっしゃったようなロジカルな問題がどこかでやっぱりひっかかるような気がしてならなかったんですが、まあここではここだけちょっと申し上げておきたいと思います。

○斎藤部会長 ありがとうございました。どうぞ、久保委員。

○久保委員 それでは、御質問と気がついたところです。1ページ目の2行目の「企業経営に対する有効な外部規律」という、ここに文言が盛られておりまして、そういう意味でいきますと、ディスクロージャーについての位置づけというのが投資判断情報という側面を私なりに解釈すると、コーポレート・ガバナンスにおけるモニタリング機能にも資するということが示唆されているように思われ、今までもあったのかもしれませんけれども、大変高く評価したいと思いました。

 それから3ページの先ほど委員の方からの御指摘ございましたけれども、減損会計のところで最初のパラグラフの下から3行目の終わりごろからございまして、「期末の価値を表示するためのものでもない」ということで、将来に損失を繰り越さないための減額措置だと。これは減損会計の考え方、よく行われている考え方からいったらまさにこのとおりであって、価値表示のためのものではないということは明らかだ。従って、ここに置く内容としては全くこのとおりでよい。

 ただ、先ほど御指摘がありましたけれども、これは可能なのかどうかよく分かりませんけれども、固定資産の評価をいかようにするかということで始まった議論のようにも思われますので、このように期末の価値を表示することが果してよいのかどうか、あるいは求められているのかどうかというのは、論点の対象にならないのでしょうか。私の理解ですと、最初のページに触れておられますけれども、原価基準を前提にして考えておられるので、そもそも将来回収可能性のないものは原価配分の配分対象にならないというのがベースにあるように思われます。けれども、事業用資産をどのように効率的に使ったかを示して、事業資産の評価について、会社と外部者との間の情報格差を解消することは考えられないのか。特に異を唱えるものではありませんが。

 それからこれは御質問でございまして、7ページの二つ目のパラグラフのところ、先ほど別の議論が出ておりまして、これは純粋な質問で大変恐縮なんですけれども、二つ目のパラグラフの終わりから3行目のところから「もちろん、それは、海外の基準を含め、実務的調整を図るための抽象的な概念」で、そこから測定方法を生み出そうというものではないということでございまして、海外の基準を含めた実務的調整を図るとここでおっしゃっているのはどのところを指しておられるのか、ちょっと教えていただければというのが1点でございます。

 それから最後に、これは今のはお教えを受けるということなんですが、先ほど、品川委員からもございましたけれども、トライアングル体制の件につきましては、例の22条4項のところの公正妥当な会計基準に基づいて所得の基礎がありまして、そこから始められていくというのは株式会社が株主の、まあ所有するところであって、経営活動の成果に対して課税を受けるというような基本概念からしますと、やはりそういったものがベースで考えられるべきだというふうに思っております。従って、経営活動の成果をそもそもいかに測るかというのが、企業会計に課せられた課題でもあるので、そこが最初に来るというのが、前回若杉会長の御指摘の趣旨だったのかとなというふうに考えておりまして、そこにプラス徴税目的からして種々の規定が加わると、このように解してもおりますので、最初に経営活動の成果、企業活動の成果をはかる企業会計の理論、論理からしてどのようになるかというような視点から議論が行われ、そしてまた実際に開示基準、会計基準を定めるに当たっては、一方の作成者側の要請というものも踏まえられて基準ができるというのは、これは世界の流れからしても当然になっておりますので、その視点から考慮されるというようなことなのかというふうには思っております。

 以上でございます。

○斎藤部会長 ありがとうございました。お答え申し上げるべきところを、まず私の方から申し上げますと、順不同ですけれども、7ページの第1パラグラフの最後の2行、「海外の基準を含め実務的調整を図るための抽象的な概念であり」というのは、これは平たく言えば、アメリカの基準と国際基準とをどういうふうにつまみ食いして、うまく日本に使いましょうかという程度の意味でございまして、ここで申しましたのは、何か変な概念をこね回して、そこから日本に独自な測定、あるいは計算の方法を出そうなんていうことは全く考えておりませんという、その用心のために申し上げているだけでございます。

 それからその前の固定資産についての、それ自体の評価が論点になるかならないかということでありますけれども、これはもちろん論点にすることは可能だと思うんですね。ただ、それだけですと、恐らくその議論をしたときには、じゃあ脚注で開示すればいいんじゃないかという話で終わってしまう可能性がございますので、あくまでもオンバランスのレベルということになりますと、利益とのリンケージを強調したということでございます。

 それから、最後の課税目的との関係でございますが、確かに御指摘の点、最もオーソドックスな考え方で、多分異論というのはなかなか出しにくいだろうと思うんですね。ただ、多分税制と企業会計というものが、これは生まれながらにしてくっついているわけでは必ずしもなくて、恐らく別々のものが何かある思惑があってくっついているという面も否定できないと思うんですね。特に税制との関係について、こちらの審議会だけで議論しても、相手のあることで、税務当局の方が何か目的があって会計のデータを使っている可能性も幾らでもあると思うんですね。税務当局からすれば、細かいことを全部自分たち自前で決めて、監査も全部自分で請け負って、そして課税をするというやり方に比べると、大方のところは企業会計に合わせておく。そうしますと、開示のインセンティブは通常反対方向を向きますので、いい格好をしたければ税金を払え、税金を払いたくなければいい格好をするな、後は自分で考えろ、全部を通算すればみんな同じになるということで決めた方が徴税コストが安い。そう考えれば、その二つはくっつけるんじゃないかという感じがするんですね。その意味で、なかなかこちら側で一方的に議論しにくい論点だなという感じを持っております。

○久保委員 ありがとうございました。

○斎藤部会長 ほかに御発言ございませんでしょうか。特にないでしょうか。

○品川委員 1点だけよろしいですか。

○斎藤部会長 どうぞ、品川委員。

○品川委員 この論点整理は、固定資産の会計処理ということで貫かれているわけでありますが、資産の時価が下がってきたという問題は、ここで除外されている長期の金融資産以外にも棚卸資産との関連について全く議論する必要がないのかどうか。例えば、不動産業の棚卸用の土地についても、固定資産の土地とどういうふうに関連性があるのか。そういう面から、この棚卸資産に関する評価損とか減損とか、そういうこととの関連というのは、ここでは全く触れる必要がないんでしょうか。

○斎藤部会長 6ページの一番上のところをごらんいただきたいのですけれども、上から、例えば2行目に「具体的には」とございますね。

○品川委員 失礼しました。7ページの方でちょっとフォローされていないので、ちょっと気になったんです。どうも失礼しました。

○斎藤部会長 ほかに御発言ございませんでしょうか。太田委員、どうぞ。

○太田委員 ちょっとまた今回の論点整理のどこまでやるかということの確認と重なってしまうんですが、今の他の例えば現行の会計基準との関係とか、それはそういう類似の会計基準と減損との関係を検討する必要があるという指摘で論点整理は終わっていいと、そういうことで理解してよろしいでしょうか。

○斎藤部会長 現在までの審議の状況では、そこでとめるしか方法がないというふうに考えております。

○太田委員 分かりました。

○斎藤部会長 御発言ないでしょうか。

 どうぞ、逆瀬委員。

○逆瀬委員 確認させていただきたい点ですけれども、12ページのローマ数字の III .その他の指摘事項というところがありまして、別紙にゆだねてあるわけですね。それで別紙にゆだねたものは望まれるということになっていて、これは今回の見直しの対象とするのかしないのかというのはなぞである、必要に応じてピックアップするというふうなことになるのかどうかという点が1点目ですね。と申しますのは、その中にかなり大きなテーマが入っております。例えば14ページのマル8のリース取引に関する原則法を本来やるべきなんだけれども、ほとんどの会社がやっていないといったような事実を受けて、先ほど前段にもありましたような、賃貸借処理をしている場合の扱いを減損会計と同様の効果をもたらすように検討すべきだというお話がありましたが、こういうようなものとの兼ね合いでどうするのかという話。テーマは大きいですね。補助金の話もあったと思いますし、交換の話もありましたんで、固定資産会計の基本のようなものも入っておりますので、その点に関するお考えがどうかというのが1点目であります。

 それからもう一点目は、ちょっと本論から外れるかもわかりませんが、影響としては大きいなと思われるもので、土地再評価法というのがここ数年行われて、何兆円かの簿価の評価替えが行われたというのがございました。あれは損益計算書を通さないやり方でバランスシートを書きかえた、それが今度減損会計になって、今度は損益計算書を通して落としていくのかと。こういうことで、ちょっと立法、あれは議員立法でしょうけれども、そのときの頭の中のアイデアと会計の処理が180度というわけじゃありませんが食い違ってくると。もう一回御破算で願いましてはで、損益計算書を通して減損の負担をPLに上げていくのかどうかという、その2点ですね。どういうピックアップをされるのか、どういうふうにとらまえられるのか、ちょっとお考えを確認したいと思います。

○斎藤部会長 これは事務局からお答えいただけますか。

○平松課長補佐 1点目のその他の事項については、先ほども申し上げましたように、事柄の緊要性というような観点から、減損会計とさらに不動産の問題について優先的にこの場では審議した方がいいのではないかということでございまして、その残された問題についても、大小さまざまな問題があると思うんでけれども、これらを取り上げていきますと非常に切りがないというか、かなり時間もかかるでしょうし、ないしは実務指針のようなもので解決できるような問題もあるのではないかということでございます。それから先ほどちょっと御紹介しましたように、先般の総会で企画調整部会というのができまして、そこでは、テーマにつきましてもいろいろと整理をして、あるものは審議事項として取り上げたりとか、あるものは基準の部分修正とか、あるものは実務指針というようなことを一つの役割として果たすというような機能を与えられておりますので、一つの方法としてはそういったものに、部会にお諮りをするとかいうようなこともちょっと考えられるんじゃないかなというふうに思っています。その辺は会長と相談して、今後どうするかということを決めていきたいというふうに思っています。

 それから2点目の土地再評価法については、お話ししましたように議員立法で政策的にできたものですから、この場ではとりあえず基本的な会計基準の問題を先にそれを議論するんだろうと思うんですね。その土地再評価法の適用を受けたような、そういう意味でやや特殊な問題ですので、それはその次といいますか、とりあえず基本的なものが見えてきたような段階でまた議論していくことになるんじゃないかというふうに思っています。

○斎藤部会長 第2点目の問題については、たしかこの第一部会の第1回目ぐらいでしょうか、久保委員から御紹介いただいたケースがございました。あのケースで、土地再評価法を使って減損のルールができる前に、損益計算書を通さないで土地を切り下げる、そういう実務は既に存在している。私は非常に強い印象を受けて鮮明に覚えておりますけれども、そういう問題が恐らく今後は、仮にこのルールができれば制約されるということになるでしょうね。

○品川委員 私が冒頭に質問したのも、土地再評価法のような考え方が会計基準の中で採用されるのかどうかということが頭の中に入っていたものですから、評価益の計上についてどう考えるべきかということに……。

○斎藤部会長 ああ、そうですか。

○品川委員 ちょっと舌足らずで、どうも失礼しました。

○斎藤部会長 ほかには御発言ないでしょうか。一応4時まで時間はとってあるんですが、別に時間いっぱい粘るのが能ではないので、特に御発言なければと思いますが。

 それでは、本日は御欠席の委員が多かったということもございまして、例えば先ほどの中島委員の信念の披瀝に対して違った信念を披瀝される方がたまたまおられなかったのかもしれません。本日の検討はこの辺で一応終了させていただきたいと思います。

 私といたしましては、細かな表現は別として、次回の部会におきまして論点整理をお取りまとめいただければと考えておりますので、本日十分に御発言いただかなかった方は、御意見がある場合には来週末までに事務局にお送りいただければと存じます。もちろん次回までにはこの文章の表現等もかなり修正して原案をお出しすることになると思います。例えば、部分的にはだれが書いたか見当がつきそうな文章もあるので、なるべくそういうことのないように。特に私の価値観ですと、学者の書いた論文は、優秀なものは一点に向かってきりをもみ込むようなものでなければいけないと思っておりますけれども、この種の議論は、場合によってはどこを向いているかはっきりしない方がいいこともあるわけでございまして、その辺は事務局の御判断でいろいろと修文をしていただきたいと思っております。

 皆様からの御意見を踏まえまして、本日の原案を修正いたしまして、極力次回の審議に先立って御送付できるようにしたいと存じておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、まだ予定の時間には十分余裕があるわけですけれども、本日の部会はこれで終了させていただきたいと思います。

 次回の当部会の日程でございますけれども、6月16日(金曜日)の午後3時30分からを予定しておりますので、よろしくお願いをいたします。

 本日は皆様方にはお忙しいところをお集まりいただきまして、大変ありがとうございました。これで散会させていただきます。