企業会計審議会 第二部会 議事録

日時:平成12年1月28日(金)午後1時01分〜午後3時08分

場所:大蔵省第四特別会議室

 

○脇田部会長 それでは、定刻になりましたので、これより第2回第二部会を開催させていただきます。

 委員の皆様にはお忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 議事に入ります前に、前回の部会におきまして、企業の継続能力に関する議論をどこで扱うか。第一部会でも審議すべきではないのかという御意見も出ておりましたので、この点につきまして、本日はまず若杉会長から御説明をお願いいたすことにいたしました。よろしくお願いいたします。

○若杉会長 前回の部会におきまして、企業の継続能力に関する議論は財務諸表の注記にもかかわることから、第一部会におきましても会計基準として検討すべきではないかという御意見がございました。そう申しますと、今度は会計基準に関する問題が監査の方にも関連するし、相互に関連がありますので、両方で同じ問題を関連があるからといって扱っておりますと、ほかに本来の審議すべき事項がたくさんありますのに、さらにそういうことが加わりますことは、会議の円滑な進行にも問題があるんじゃないかというふうに考えられます。そこで、お互いに関連のある事項につきましても、本来その部会でやることに一応予定してあります事項は、その部会でもって扱っていただくというふうにいたしたいと思います。

 なお、審議した結果につきましては、それは今度はもう片方の部会の方に結果が伝えられていくということもできますし、最後に総会で決定する場面におきましても、そういうことが可能ですので、そのような理由から、それぞれ本来担当するべき部会でもってその問題を審議するということにいたしたいと思います。どうぞ御了承をお願いいたします。

○脇田部会長 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして御発言ございませんでしょうか。

 山浦さん、どうぞ。

○山浦委員 御趣旨は、要するに、もし第二部会でそのゴーイングコンサーンの問題を扱うとすれば、こちらの方で先行してこの問題について詰めて、そしてもし必要であれば第一部会とのすり合わせも後に行うと、そういうスケジュールをお考えなんでしょうか。

○若杉会長 おっしゃるとおりです。そのとおりです。

○脇田部会長 よろしゅうございましょうか。それでは、ただいまの御説明を受けまして、今後その方針で第二部会の審議を行わせていただくことにいたします。御了承いただきたいと思います。

 それでは、本日の議事に入らせていただきます。

 審議の手順といたしまして、前回申し上げましたとおり、まず審議を進めていく上での材料を本日は提供していただくという観点から、いろいろなお立場での問題点、あるいは課題について本日はヒアリングという形で開催させていただきます。そして、監査基準等の充実のために検討すべき論点を見出していくための本日は最初の作業というふうにさせていただきます。

 本日はまず監査実務の現状につきまして、日本公認会計士協会リサーチセンターの高山委員から御紹介をいただき、続きまして那須委員、松野委員、藤田委員から、それぞれのお立場からの問題点等について御報告をいただき、その後、皆様方から御質問、あるいは御意見等を頂戴いたしたいと考えております。

 なお、まずお手元に配付しております資料につきまして一言申し上げたいと存じます。資料の1から4までが本日の資料でございます。そして、その1から4以外に、本日は参考資料といたしまして「監査実施状況調査」という資料を配付いたしております。もう一つは、「“監査への批判”に対する公認会計士の意識」という近畿C.P.A.ニュースからの抜粋を用意いたしております。これらのものは、特に監査実施状況調査は、日本公認会計士協会が会員に限り公表しているものでございますので、委員の皆様には参考として御利用いただくことといたしまして、審議資料として公表いたすことはいたしませんので、この点は取り扱いをよろしくお願いいたしたいと思います。この点につきましては、この資料の「監査実施状況調査」のところに幅副会長の文言の中にも、協会会員に対する要請が出ておりますが、その点でお取り扱いを御配慮いただきたいと思います。

 この点につきまして、よろしゅうございますでしょうか。

 それでは、早速本日の議事に入らせていただきますが、まず高山委員から御報告をいただくことにいたします。よろしくお願いいたします。

○高山委員 私、日本公認会計士協会リサーチセンター研究員をしております高山と申します。私の方からは、監査実務の現状について簡単に御説明させていただきます。

 お手元の資料の1というものをごらんいただきたいと存じます。

 まず初めに、証券取引法監査及び商法監査の会社数ということで、今、日本の証券取引法監査及び商法監査の会社数がいかほど現状としてあるかということにつきましてこちらの方に書かせていただいております。

 なお、集計の期間におきましては、平成9年4月から平成10年3月期までの1年間を期間として集計されておりましたデータがございましたので、そのデータをこちらの方に書かせていただいております。

 まず、証券取引法監査ですけれども、監査概要書提出数、これ以外に実際の有価証券報告書等の提出の数から集計いたしました数でございますが、4,135社に上っております。なお、この中には外国の会社及び更生会社等は含まれておりませんので、御了承のほどよろしくお願いいたします。

 内訳といたしましては、1部上場会社が1,388社、2部上場会社が938社、その他上場会社が80社、店頭登録の会社が869社、非上場の会社が860社になっております。

 なお、その他上場につきましては、これは地方の取引所単独での上場と御理解いただければよろしいかと思います。また、非上場に関しましては、この期間におきます非上場会社の有価証券報告書提出数のいわゆる集計ですけれども、5億円以上かつ50名以上の株主の募集売り出しを行った会社について有価証券届出書ないしは報告書を提出しなければならない会社数ということで御理解いただければと思います。

 続きまして、商法監査ですけれども、7,150社に上っております。内訳といたしましては、資本金5億円以上ということで監査を受けておられる会社が5,878社、負債総額200億円以上ということで商法特例法の監査の対象となっております会社数が1,272社になっております。

 続きまして、証券取引法監査及び商法監査の会社数は上記のとおりなんですが、実際の監査実施状況につきまして以下に書かせていただいております。

 まず、証券取引法監査の単体のみということですけれども、これは特に連結財務諸表を作成されていらっしゃらない会社についての監査の集計になっております。監査時間の集計に当たっては、実際に監査概要書並びに商法監査実施報告書に記載されております時間数を提出会社数で単純に割り算したものでございます。

 なお、延べ日数に関しましては、平均の時間数を1日6時間として仮定し算出しております。

 さらに、関与人数につきましては、監査責任者、関与社員も含まれているということで御理解いただければ幸いに存じます。

 まず、単体ですけれども、監査時間数にいたしますと約877時間。延べ日数にいたしますと約147日間の日数を使っておるということでございます。それから、関与の人数ですが、約9名で監査を行っておるということでございます。

 続きまして、証券取引法監査の連結財務諸表まで含む監査におきましては、監査時間数といたしましては約1,550時間。延べ日数にいたしまして約259日。関与人数におきましては、約12名で監査が実施されておるということでございます。

 続きまして、商法監査でございますが、監査時間数におきましては約361時間。延べ日数におきましては約60日間。関与人数におきましては、約7名で監査を実施しておるという結果が出ております。

 続きまして、監査の実務に関しての現状ということでございますが、こちらに今現在の監査基準及び監査実施準則の規定を載せさせていただいておりますが、これは2枚目のページで説明する上で必要なものでしたので載せさせていただいております。後ほどごらんいただければと存じます。

 続きまして、2ページ目にいっていただきたいと思います。標準的な監査計画の内容ということでございますが、実際我々監査人が監査を実施するに当たりまして、監査をどのように行うかということにつきまして、実際に監査作業に入る前に監査計画というものを毎年立案するわけですけれども、具体的な内容につきましては、なかなか表に出る機会も少のうございまして、こちらの方で簡単に紹介させていただきたいと存じます。

 まず、内容でございますけれども、黒ポチで箇条書きにさせていただいておる内容が主な内容でございます。まず基本事項、それから監査チームの編成、監査の方法と範囲、往査事業場の選定、監査項目の分担、それから日程、さらには主要な監査手続であります実査、立会、確認等に関する事項。主な内容といたしましては、このようなものについて監査計画の段階で立案いたしております。

 続きまして、個々の詳細につきまして書かせていただいておりますが、まず基本事項ですけれども、まず1番目といたしまして実際の監査対象会社の会社名、それから本店の所在地。監査対象事業年度。それから監査の目的。例えば、証券取引法に基づく監査であるとか、あるいは商法特例法に基づく監査であるとか、そのような内容につきまして記述するということでございます。

 4番目といたしましては、監査報告書等の提出期限ということです。商法特例法におきましては、株主総会の8週間前までに提出する義務がございますし、証券取引法においては株主総会の開催日というような形で提出期限が一応切られておるということですので、その辺の内容を記述するということです。

 それから、審査の予定ということですが、大手の法人におきましては、今現在社内審査ということで、実際監査報告書を提出するに当たっての事前審査というものが行われておるかと思いますが、そのような内容についての予定をここで記述するような形になっておると思います。

 続きまして会社の概要。これは被監査会社の業種ですとか、あるいは営業の目的。それから過去の業績の推移。それから株主の構成、役員構成。それから特に特殊な業界の場合の特徴ですとか、あるいはその会社の特有の内部統制関係。これらについての関与先の理解を特に重視するということで、最近重視されてきているところでございます。

 続きまして見積監査時間。これに関しましては、下記の2番から4番等の内容について必要と認める時間数が見積もられるかと存じます。これ以外にも下の方に書かせていただいているようなその他ということがございます。

 2番目といたしまして、監査チームの編成ですけれども、監査チームの構成といたしましては、関与社員であります監査責任者。それから実質的な現場を取りまとめる主査。それから実際の作業を行う補助者というようなピラミッド型のような組織体系になっておるかと思います。これは指揮命令系統並びに職務権限、分担を明らかにするということで気を使いながらチーム編成を行うということをやっております。

 3番目といたしましては、監査の方法と範囲ですが、監査の実施の時期、それから監査目標、監査項目等につきまして計画を行っております。この場合には、試査の範囲ですとか抽出の方法、判断基準の設定、これらも同時に検討しておるということでございます。

 4番目といたしまして、往査事業場の選定ですけれども、支店、それから工場、連結の場合の子会社並びに関連会社への往査場所の選定。それから往査の実施時期。どの担当者がどちらの往査場所へ伺うのかというような内容。それから監査実施の程度。さらには範囲という内容について計画を立案しているということでございます。

 5番目といたしまして、監査項目の分担ということですが、2番目で監査チームの編成ということを行っておると言いましたが、それに編成されました人員が実際にどのような作業を行うかということにつきまして分担の割り振りを実施いたします。これは被監査会社の重要性、それから勘定科目等においては相対的な危険性等を勘案いたしまして、各担当者の経験年数、それから知識、能力等に応じまして作業の分担をしておるということでございます。

 6番目といたしまして日程ということですが、3ページ目の方に参考という形でつけさせていただいておりますので、それを後ほど簡単に御説明させていただこうと思います。

 7番目といたしまして、実査、立会、確認に関する事項ということですが、主な監査手続におきまして実施時期、それから実施の範囲、実際の担当者、これらについて計画を立案しております。

 さらにその他でございますが、監査対象事業年度において発生した新たな事象、具体的には新規事業への展開ですとか、新たな重要な拠点の開設、あるいは統合、子会社等の設立並びに清算、合併・買収、このような内容が監査対象事業年度において新たに発生した場合には、当然それらの影響を考慮いたしませんと問題が起きるということでもございますので、そのような内容について考慮するということで検討をいたします。

 さらには、前期に認識されました監査上の問題点、あるいは全体的な経済環境といいますか、業界の動向ですとか、会計方針の変更等がないかどうか。また、関係する諸法令等が改正あるいは廃止になっておる場合には、その影響がないかどうかというようなことを監査計画の段階で検討しておるということでございます。

 最後になりますが、先ほど申し上げました日程の件についてですけれども、これは具体的な内容ということではなくて、ある程度、このような形で実際行われておるのではないかということで、参考までにこちらの方で書かせていただいておりますので、実際の被監査会社の業種ですとか規模、それらを考慮いたした場合は、必ずしもこのような形ではなくて、より詳細な計画という形で作成される場合も当然ございますし、これはあくまでも参考ということで御理解いただければと存じます。大体このようなスケジュールで実際の監査の作業が行われておるということでございますので、またお時間のあるときにごらんいただければと思います。

 私の方からは以上でございます。

○脇田部会長 ありがとうございました。なお、御報告いただきます内容につきましては、それぞれ相互に重なるところもございますし、御報告いただいた委員の方々にも質疑に参加していただくということで、4人の委員の方々の御報告が終わりました後、質疑、あるいは御意見を頂戴するということにさせていただきたいと思います。

 それでは、引き続きまして、那須委員から御報告をお願いいたします。

○那須委員 那須でございます。お時間をいただきましたので意見を述べさせていただきます。

 まず、きょう配っていただいた資料の2でタイトルをつけろということでつけたんですが、余りにも大上段に振りかぶり過ぎてしまって、これは私のあくまでも個人的な意見で、協会の何ら関係するものではないということをお断りしておきたいと思います。

 まず初めに、監査基準をどうするのかというようなことをお話しする前に、監査とは何かということを前もってというか、あえてここで確認しておきたいと思っております。

 監査は経営者が投資家に対して業績等を開示するために作成する財務諸表を第三者である監査人が見て適正かどうかを意見表明するということであって、そこにおいては、役割と責任は明確に分かれているというふうに考えております。

 きょうお配りいただいたペーパーの1、責任の明確化というところですが、まず財務諸表の作成責任は当然経営者にあると。会計士がつくるわけではございませんので、当然作成者側、つまり経営者の方々が義務と責任を負われていると。

 じゃあ、一方、会計監査人は何をするのかと。正当な職業専門家としての注意義務に従って監査手続を実施し意見表明することが役割であり、意見に対して責任を持つということが会計士の役割だということになります。

 ここで形式的な話になるんですけれども、日本の監査報告書というのは、通常代表取締役あてに出されることが一般的であると思います。これは1名と書きましたが2名の場合も、会長、社長というような場合もあるかと思いますが、主にこういうあて先になると。ただ、一方アメリカでは、これはアカウンディング・トレンド・アンド・テクニクスという事例の本ですけれども、それによると約8割がここにある Board of Directors and Stockholdersと。経営者と株主というあて先になっています。また、監査報告書と交換で我々が今入手しております経営者確認書というのがございますが、そちらについては、日本もアメリカも全く同じ制度であります。それで、そのタイトルというのは、やはり経営者確認書であって代表取締役確認書ではございません。細かい話かもしれませんが、アメリカの考え方はあくまでも取締役全体、つまり取締役会が経営者と言われているものであり、彼らが財務諸表の作成責任を負っており、一方で監査人は経営者だけでなく、当然ながら株主に対しても責任を負っているというのが、その監査報告書のあて名から明確になるのではないかと思います。もちろん日本の代表取締役は取締役会の代表者であられますので同じことじゃないかという方もいらっしゃると思いますが、取締役のおのおのの方の受け取られ方が若干異なってくるのかなというふうに考えます。

 続きまして、会計監査人の責任というところですけれども、これは監査報告書の会計士の署名の部分を思い出していただきたいんですが、日本は監査法人が監査を行っていても関与社員が個人で署名を行っています。これのよしあしをここで詳しく述べるつもりはございませんが、多分これからの御発言の中にはこの関与社員という、個人が署名し続けることに対して否定的なコメントをなさる方も多いのではないかなと考えます。米国では、皆さん御存じのとおり、監査法人が監査を行って監査報告書を出すときには監査法人名で署名が行われます。つまり個人ではなく、あくまでも法人として仕事を行ったことをここでも明確に表現をしているというふうに思われます。

 日本の監査法人は社員の無限連帯責任で運営されているはずですので、こここそ、全員だというのであれば、本来監査法人名で署名がなされて、全社員が責任を負っているということを明確にすべきではないかと。先ほど経営者というのが取締役会を指すということであるのであれば、その裏側で監査人側も関与社員だけが責任を持っているわけではないんですから、それを明確に監査法人全体の社員が負っているということを明らかにしてはどうかというふうに個人的に思います。

 次に、2番目の記載事項というところですけれども、これは株主や投資家の目に触れる書類への記載事項について考えを述べさせていただきたいと思います。

 財務諸表といいますか開示書類全般については、先ほども、作成者はあくまでも経営者であり責任があるというふうに申し上げました。日本の有価証券報告書はちょっと後にしまして、例えば日本の会社が作成されている外国向けのアニュアルレポート等を思い出していただきたいんですが、あの中には日本では開示されていないような情報がかなり多く盛り込まれているように思われます。これを情報格差だというふうにおっしゃる方もいらっしゃるようです。また、アメリカで上場されていらっしゃる企業さんの場合ですと、当然アメリカのルールに従って開示を行っておられると。その中には過去の情報、過去の分析だけではなくて、将来の予測情報と言われるくくりのものもかなり含まれているというふうに思われます。

 ただ、これらの予測情報といいましても、それは現在の事実や状況の積み上げと、あとは経営者の意思表明と。今後どうしたいとか、どういうふうにする予定だというような意思表明であって、ルール自体が正確な予言を求めているわけではないというのは内容を見ればわかると思います。将来の情報を開示するのはなぜかというと、そういう将来のリスクを投資家に開示しておくことが必要だと経営者の皆さんが思われていると。そういう意思表明であり、かつ投資家がそれを求めているからそのようなものが出されているということだと思います。

 では、日本ではどうかと申しますと、これまでも有価証券報告書は多くの情報提供をしてきたと思います。ただ、その一方で、画一性などが批判の対象にもなっていたと思います。この3月期からは開示省令等が改正されまして、改めて書きたいことは書けと言われていなくても書くべきことと関連づけて書いてよいという規定まで設けられたほどであります。こういう環境が整ったにもかかわらず、経営者の意思である開示事項に日米で格差が生じるということが果してあるのかなと。書いてはいけないと言われているのであれば話は別ですけれども、書いてはいけないと言われていないのに、アメリカの投資家が求めている情報を日本の投資家には開示しないと、そういう理由はないのではないかと思います。日本の投資家が求めていないというのであれば話は別だと思いますが、そのようなことは同じルールのもとであればないと思います。

 また、この3月期からはキャッシュ・フロー計算書が基本財務諸表として加えられることになっております。これまでも将来の損益に対して影響を与えるような事項についてはかなりシビアな記載を求められてきていると思いますが、キャッシュ・フロー、簡単に言えば資金繰りですけれども、これに関してどのような情報があったかと。まあ、これについてはつぶれてみて初めてわかったといったようなことも少なからずあったのではないかと思います。こういうことに対応するためにも、将来のキャッシュ・フローに与えるリスクについても損益に与えるリスクと同様に記載をすることが必要になるのではないかと思います。

 では、ここまで経営者ばかりに責任を押しつけてきて監査人が何もしないようなニュアンスになってしまうといけないと思います。監査人といった場合、ここまでは会計監査人を想定してきましたけれども、当然監査人には監査役が含まれております。まず、企業の内部におられる監査役の方々に商法上の業務監査をやはりきちっとやっていただくということが必要かと思います。会計士は第三者であり外の人間ですので、当然知ること、知り得ることが限られてきてしまいますので、やはり監査役のお力というのがかなり大きなウエートを占めるということは改めて私が言うほどのことでもないと思います。

 次、ペーパーの2枚目ですけれども、じゃあ会計士は何をするのかというところで、会計監査が何かということはここで改めて言うまでもありませんが、監査報告書の類型というのは日本もアメリカももちろん同じで三つしかありません。そこにもありますが、適正意見、不適正意見、意見差し控え、この三つのうちどれかを述べるだけです。従って、白黒の程度を監査報告書上で記述するということは、今の監査という理論から始まって実践もありますが、あり得ないというふうに考えます。ただ、日本とアメリカでは違う違うと言われますが、違うとすればじゃあ何かと申しますと、未確定事項として取り上げられる範囲が異なるということだと思います。これにつきましても、未確定事項、日本でよく挙げられていますのは訴訟リスクに関する記述というのがあるかと思いますが、アメリカの代表的な未確定事項として挙げられているものが訴訟と継続可能性ということの2点ですので、先ほど申し上げたキャッシュ・フローに与える将来のリスクというものが開示書類で記載されるのであれば、この点についても当然監査報告書で取り上げるべきものになると思いますので、そのような処置がなされるのであれば、監査報告書上の意見についても余り差がなくなるのではないかと思います。

 もちろん、会計士が社会的な批判を受けているという現状は承知しております。積極的に自己改善を図る必要があると思います。例えば、欧米に比べて劣ると言われている監査技術、これはドキュメンテーションですとか、統計的技法の採用のような点がかなり、まあ個人的にもまだまだやる余地はいっぱいあると思っておりますし、クライアントの皆さんですとか関与会計士の関係、あるいは関与している会計士のローテーションなどの形式面についても改善する余地がまだまだ多くあると思います。ですので、これらについては、逆に我々の業界ではなくて受けられている側、外の方々からいろいろな御指摘を受けるべきだと思います。

 ただ、会計監査が精査ではなくて経済的な合理性を背景にした試査を行っているということ、つまりすべてを見ているわけではないということについては、我々自体がもっと公の場で発言をして理解を得ていくと。監査制度の理解ということになると思いますが、そのような必要があると思っております。

 あと、企業の中には監査報酬も単にコストの一つで安いにこしたことはないと。世間はみんな原価引き下げを図っているのだから、監査報酬もディスカウントしろというふうにはっきりとおっしゃる方もいらっしゃいます。それはそれだと思いますので、そのような経営者の方々の意思を投資家はきちんと判断する必要があるのではないかと思います。つまり、監査も人がやることですから、このようなことを申し上げていいのかわかりませんが、理論的にはもらう報酬で監査の程度に差が出るはずはないということは事実ですが、現実にはできることに限界があるということはあるんだと思います。それをまだ胸を張って我々やるべきことをすべてやっていると言えるかというとそうではないとはもちろん思います。

 そのあたり、監査報酬額は幾らかという情報を投資家に対して提供すべきか否かということは、我々が被監査会社、クライアントの方々から報酬を得ているという状況を説明するとともに、その見返りとして、投資家や株主に対して我々が幾らでどのようなことをやったのかということをそもそも細かく説明すべきなのかといったようなところも議論をしていただいて、何らかの方向性を出していっていただくのがいいのではないかと思います。

 また、最近ではレビューという、監査とは少し違うという保証程度の概念があらわれ始めていると思います。報酬によって保証の程度に差があってはいけないのかもしれませんが、このような制度がもしルールとしてできるのであれば、そのようなものの使い分けというのが議論されてもいいように思います。

 もう一点ですが、まあいろいろな批判を受けている中でルールに従ってやったからいいんだというふうに半分開き直りと受け取られていると思います我々の発言に対して、そもそもルール自体が現実に合っていないんじゃないかという御叱責を受けるんですが、どのような場合に我々が当たり前と思っているルールから離脱して違ったこと、通常ではやらないことをやるべきなのかというようなことについても、この場で議論があればいいなと思います。そこに、会計の原点に戻って「真実性の原則」を尊重するというふうな書き方をしましたが、会計のルールというところは、通常はこういうことをやると。つまり、継続性の原則、企業は継続していくんだという前提で我々は会計をやっていますし、監査も見ています。従って、それが崩れるというところはどのようなところなんだというルールがなければ、どのような場合に、じゃあその原則から外れていっていいのかというようなこともあやふやになってしまいますし、そこに判断が入るというのは少々おかしいのではないかなというふうに考えておりますので、一般的、通常、当たり前と思われているルールからの離脱についてもある程度のルールを設けていただく必要があるのではないかなと思います。

 とりとめのない話になってしまいましたが、今後の議論のたたき台としていただければ幸いです。ありがとうございました。

○脇田部会長 那須委員、ありがとうございました。それでは、引き続き松野委員から御報告をお願いいたしたいと思います。

○松野委員 それでは、少しお時間をいただいてお話をさせていただきます。

 これからお話しさせていただくことは、多分に私の私見ということでお聞きいただければというふうに思います。

 資料3に少し項目を書かせていただきましたので、これに基づいてお話しをさせていただきます。

 まず、本論に入る前に、私ども企業のサイドから見ますと、会計士の監査、これは商法の監査も含めまして企業においては会計実務をサポートしていただくと。また、内部検査のあり方等のチェックをしていただくと。さらには、効率的な企業の運営と。こういうさまざまな観点から多面的な指摘等をいただいておりまして、全体としては有効に機能していると、こういうふうに考えております。また昨今、コーポレートガバナンスのあり方と。こういう問題が非常に問われている中で、いわゆる株主、投資家、債権者等の社外の関係者からの会社への信頼というものを得るための中心的な役割の一つが会計士監査だというふうに考えております。

 ただ、最近企業の倒産が多発している。もしくは、いわゆるレジェンド問題等において御指摘はいろいろあるというふうにそれは十分承知しておりますけれども、現在の制度が全くおかしいというふうには我々考えておりません。

 それでは、1の開示及び監査の充実という、そういう点から少しお話しをさせていただきます。

 いわゆるゴーイングコンサーンについて、ここの審議会で議論をされるということで、私、前回欠席したもので、前回の議論を余り踏まえずにお話しをさせていただくことになってしまうんですけれども、実際に企業が倒産した事例と監査報告書、いわゆるそこにミスマッチがあって、現在世の中でいろいろな御指摘があるんですけれども、これについてもう少しいろいろと調べる必要があるのではないのかと。確かに、私の理解では相当の倒産の例が含み損のケースであるというふうに考えておりまして、これは監査報告書の問題なのか、いわゆる財務諸表の注記の問題なのか。その財務諸表の注記の問題であれば、ゴーイングコンサーンとは少し議論が違うのではないかと、こういうことも思います。

 さりとて、いずれにしても財務諸表及びその監査報告書と全体の中で解決していくということを考えれば、もう一度、ちょっと冒頭に第一部会との問題もございましたが、注記において開示すべきなのか、監査の意見表明の中で述べていくのかという議論があるのかなというふうに思います。

 それで、日本に特記事項という制度がございます。確かに財務諸表にないものについて特記事項では記載できないという、こういう考え方だと私は理解しておりますけれども、この特記事項についてどういう利用の仕方があるのかと、こんなふうに思っております。

 そういう意味で、まず企業といいますか、財務諸表における開示の責任ということを少し考えてみたいと思います。もちろん正確なBS、PL、そういうものを記載するということは前提といたしまして、今回は特にリスクについての開示をしていこうというテーマだと理解しておりますけれども、企業のリスクといいますと、これは欧米の財務諸表及びアニュアルレポート等を見ていただくとよくわかりますように、景気ですとか、為替ですとか、私どものように自動車の会社ですと各国の排ガスの規制、こういうものがすべてリスクとして書かれております。こういういわゆる経営全体にかかわるリスクと、割と会計的な、資金繰りですとか、会社が債務超過の状態にあるですとか、こんなようなリスク、いろいろなリスクがあるわけですから、これを全部リスクを開示すると、こういう議論にはならないと私は個人的に思っているんですけれども、財務諸表の読者という点で見て、企業による適切な記載というのはどのリスク、どういうリスクになるんだろうかと、こういう議論も必要ではないかというふうに思っています。

 それで、今言いましたリスクには、財務諸表ではなくて、例えば現状の有価証券報告書で言いますと、事業の概況ですとか、営業の概況に記載した方がいいようなもの、そういう種類のものもあるのではないかという気がします。

 次に、監査人(監査報告書)の責任という意味では、いずれにしても、企業の継続能力、ゴーイングコンサーンについて監査報告書に何らかの記載、もしくは意見、こういうものを考えますと、そもそもその企業がどういうリスクを負っているんだということを監査人の方に相当十分に理解をしていただかないと、先ほど言った種々のリスクを一般的な形で書くと、これはほとんど意味がない。そもそもリスクがあるわけですから。あることが前提になって企業というのは経営されているものですから、そこの部分のリスクに対する理解が必要だなということになります。

 それともう一つ、ちょっとすみません。表現が適正でないかもしれませんけれども、継続能力に関する情報が監査人の免責を意図したもの、これになると、また財務諸表ですとか監査報告書の趣旨から少し逸脱すると。こんな感じもしております。

 それと最近のいろいろな文献の中にありますように、一番多分問題になるのは、リスクを書いた後にそのリスクが実現しなかったと。このときにどういう考え方を理解をすればいいのかと。ここの問題の整理というのが、実務の中で非常に大きなウエートを占めてくるのではないかというふうに思います。

 もう一つは、私ども企業からしますと、そういうリスクについての記載が求められるということ、現実的には何が起こるのかなと。これは海外でよくあるんですが、例えば、子会社、関連会社の監査人から親会社にいわゆるサポートレター、これを出せと。要するに、子会社が資金繰りで困ったり、債務超過に陥ったり、いろいろなことをしたら親会社が助ける、こういう趣旨のレターを出してくれと。それさえあれば何も書かないよと。こういうリクエストがございます。こういうリクエスト、確かに会社間で主体的にそういうレターが出される場合はいいんですが、監査のたびにそういうレターが要求されると。これは少し趣旨が違う。そういう状況を生み出さないような注意も必要ではないのかなというふうに思います。

 それと、企業サイドと監査をされる方サイド共同で果たす役割という意味では、その継続能力について開示するまでのステップ、これをしっかり整理していただきたいと。具体的に申しますと、先ほどのちょっと繰り返しになりますけれども、例えば監査人の方は企業の内部資料ですとか、こういうものをしっかり見ていただいて、その企業を十分理解していただくと。これがまずスタートになる。その上で企業はどんな財務諸表をつくろうとしているのか。どんな注記をしようとしているのかと。それに対して監査人の立場からの要請は何なんだと。こういう個々の企業のレベルでのディスカッション、これが相当大きな意味をもたらしてくるのでないかというふうに考えております。こういうものを経た後に監査報告書での何らかの意見の表明ですとか、情報の開示と。こういうステップがきちっとないと、一律に開示を求めるといっても非常に混乱をするのではないかなというふうに思います。

 それと、企業そのものの活動とか、いわゆるマーケットへの影響という意味では、経済、マーケットの状況はこういうことですので、記載によっていたずらにマーケットが疑心暗鬼に陥ると、こういうことのないような配慮も必要だというふうに考えております。

 それともう一つ、ここで議論していただくことが、いわゆるバブルが崩壊した以降企業倒産が増加して、倒産件数が従来ない高水準で推移していると、こういう環境の中での議論になると思います。例えば、この1990年代のこの状況が非常に長期にわたって続くかどうかと、こういう問題もありまして、私個人的には少し特殊な環境にあるというふうに考えています。そうしますと、普遍的な基準とかルールをつくる際に、この90年代だけを考えてつくるということは、少しまた偏ったというか、過激なルールができてしまうというのは避けていただきたいなというふうに考えております。

 それで、これは大変失礼な言い方かもしれませんけれども、監査人の監査というのは必ず限界がございますので、これがすべてという前提では、これは皆さんもう御承知と思いますけれども、この限界を十分わきまえた上で初めて効果的な開示が読者もわかると、こういうことだと思います。

 ちょっと余談になりますけれども、いわゆるレジェンドの問題につきましては、これは極めて遺憾ではありますけれども、国内における倒産の件数とか、そういうものをもう少しいろいろなところできちっと理解を得て、日本全体がおかしいと、こういう海外からの批判そのものはもう少し誤解を避けると、こういう努力が必要なのかというふうにも思っております。

 続きまして、2番の監査の体制及び手続の充実ということで少しお話しをさせていただきます。

 最初のお話の中で、商法監査と証取法監査というものがございました。これは私ども企業からしてみると、大体同じ会計士の方に監査をしていただきますので、余り重複感というのは実務上はございません。一方で、私ども監査役という制度がございますので、ここにもう一つ、まあ会計専門ではございませんが、監査という機能があると。企業によっては、それとは別に内部監査と、こういうものをされている会社もあると思います。従いまして、監査役の監査、内部監査と会計士の監査と、こういうものの協調というものが非常に効率的な監査をする上で必要ではないかというふうに考えております。現実的にはそれぞれの会社で実態に合ったいろいろな取り組みがされていると思いますけれども、こういうものが、法的には非常に難しい側面がありますけれども、現実をいろいろと御理解いただければというふうに思います。

 もう一つは、法律の話では、いわゆる商法と証取法の問題、これはいろいろな議論をするときに出てくるんでありますけれども、監査役と証取法の監査というものの関係について、これは今すぐということではないんですが、将来的にはそういう課題があるのかなと。特に連結財務諸表が中心になったときに、監査役の監査との関係がどういうふうになるんだろうというのは今日的に少し整理が必要かなというふうに考えております。

 3のその他と書いてあるところは、せっかくの機会をいただきましたので、監査周辺のことも含めまして、少し今感じておることをお話しさせていただきたいと思います。

 一つは、国際的調和ということでございます。これは順不同で書いたものですから、三つ目の白い丸の海外子会社の監査というところとも関係しますけれども、いよいよ決算が連結中心ということになりますので、多くの企業で海外の子会社の監査というものが大きな位置を占めるようになると思います。当然具体的には海外子会社の担当監査人への監査指示書ですとか、監査指示書の送付、それから監査結果のタイムリーな入手、それと監査人同士のディスカッションと、こういうことになってくるんですけれども、こういう前提を考えてみましても、監査基準ですとかその運用で内外にギャップがあると、非常にやっぱり効率性が失われるのかなという気がしております。

 それと、その効率性という意味では、2番目の監査のスピード化ということでございます。今、日本の多くの企業が決算の早期化ということを推進しておりまして、その中での決算を発表するまでのステップとしては当然監査というものも入ってまいりますので、監査のスピードアップについても十分に意識していただきたいと。実査、立会、確認等とこういう手続が期末に集中しますと非常に早期化のネックになるケースもございますし、効率アップのためには、従来の追跡テスト中心のものから企業全体のメカニズムをシステム的にチェックすると、こういう監査が必要になってくるのではないかというふうに思います。

 それと、四つ目の白い丸の日本公認会計士協会に関する実務指針という点でございますが、私ども実務指針の公表を持って、非常に財務諸表の注記ですとか、会計処理の例ですとか大変参考になっております。これはいつもお願いしておりますけれども、公表の早期化という点については言わずもがなでよろしくお願いしたいということと、少し実務指針の運用面におきましては、これは私個人的な感想で、少し画一的、硬直的で、どの企業の注記も同じ文言だと。そういう印象が私個人はしておりまして、いつも同じ文言でどの会社も注記されるものですから、かえって企業の実態がわかりにくいと。そんなこともあるのかなというふうに考えております。その重要性ですとか、表現方法、運用面について、その実態に即した御配慮が必要かというふうに考えております。

 以上、ちょっと雑談風になってしまいましたけれども、私からの御説明を終わらせていただきます。

○脇田部会長 ありがとうございました。それでは、引き続きまして、最後に藤田委員より御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○藤田委員 藤田です。簡単なレジュメがお手元にあると思いますが、1番から5番までございまして、1番はこれは実は去年の5月の公認会計士審査会のワーキンググループでドイツの話をさせていただきました。そのときドイツの監査というのは経済実態重視ということで非常にいいんだというお話をしたと思うんですが、その点、ちょっと修正方々申し上げたいと思います。

 それから2番・3番は監査役としての立場でといいましても、日本監査役協会とすり合わせたわけではございません。私の個人的な意見です。

 それから4番・5番は商社に勤務していたときの実務経験から申し上げたいというふうに思います。

 まず1番ですが、ドイツの監査制度というのは、経済実態に即して、形式あるいは基準にとらわれないで非常にいい意見を述べてもらっているというようなお話をしたわけですが、実は去年の11月に第2位のゼネコン、フィリップホルツマンというのが突然21億マルクの含み損が顕在化しまして、支払い不能に陥り、まあ裁判所に更生法の適用申請というようなことで、大きなゼネコンなものですから、あちこちで大型の公共事業をやっている、それがストップすると。それから6万人が路頭に迷いそうだということで大騒ぎをしておりました。たまたまそのときにドイツにいたものですから驚いたんですが、例によって、どこでもそうですけれども、新旧経営者間の責任のなすり合いということのほかに、会計監査人はどうしていたんだと。あるいは、監査役というのは役立たずじゃないかというような、どこかで聞いたような話がございました。

 その後、現地の新聞記事なんかを送ってもらって見ていますと、まだまだ結果は出ておりませんが、会計監査人は同じ人が10年以上関与してきたと。ただ、マネジメントレターという形でそういう問題の指摘はしてきたと。要するに警告はしてきたんだけれども、正式な監査報告には一切出ていなかったと。それが取締役会、あるいは監査役会には出ているわけですが、どうも監査役は、一部の人は知らなかったとか、あるいは一部の監査役はどうも取締役と共謀してそれを無視してきたとか、こういうようないろいろな批判がございまして、実態はまだこれからの解明だと思います。

 ただ、それをいろいろ考えてみますと、一言で言いますと、制度だとか基準というのがどんなに立派でも、やっぱり監査人のマインド、簡単に言いますと自己保身に走りがち、要するにパブリックの精神よりも自己保身に走りがちというところが、やはり世の東西を問わず共通ではないかなというふうに思ったわけです。

 まあ、去年の5月にかなりドイツの話で褒めまくったものですから、多少下方修正させていただきます。

 それから2番・3番は、2番が会計監査人と監査役との協調分野の拡大ということですが、逆に、反面3番では、今度はもう少しお互いにチェックし合う、そういう機能が大事じゃないかと。2番が友好的とすれば、3番がやや敵対的かなというように思います。

 それで、2番の協調分野の拡大という点では、これはこれからの連結監査に向けて、これは会計監査人とますます連携を強めないと我々の親会社の監査役としての役割というのは果たせないと、これはもう言うまでもないと思います。

 それから2番目の点、これも経済実態主義となりますと、経営者による確認書というのも、これも取締役会だけじゃなくて、やはり監査役の意見はどうなんだということもぜひ聞いていただきたいなと思います。

 先ほどの那須委員の報告に、この経営者というのがアメリカの場合は取締役会だというのがございましたが、アメリカの場合はオーディティング・コミティというのが取締役会に入っちゃって監査役というのはございませんけれども、日本の場合は、この経営者の中には、少なくともそういううそをついていないかどうか。要するに、虚偽記載の発生の可能性がないかどうかという点では、やはりもう少し監査役を有効に活用すべきではないかというふうに思います。

 それから、これまた言うまでもないんですが、決算が終わった後に監査役に報告するというんじゃなくて、やはり期中、あるいは監査が始まる前に打ち合わせを、あるいは協議をしてほしいというふうに思います。

 それから3番目に入りますが、今度は逆に、お互いに役割を果たしているかどうかというような相互チェックの強化ということになりますが、まあ、監査契約というのは通常、会計監査人、あるいは監査法人と取締役の間で結んでいるわけですが、通常であればそれでいいと思うんですね。執行部である取締役が契約すればいいと思うんですが、監査役はやはり会計監査人の監査結果を受けて判こを押すという立場から言いますと、監査役も監査契約の内容とか、あるいはむしろ監査法人、あるいは関与社員の選定、会議に至るまでやはりもう少し関与してしかるべきじゃないかと。契約の当事者になる必要はないと思いますが、例えばウィットネスとか、そういう形で入ることは必要ではないかというふうに思います。

 それで、数日前に新聞にこういうコンペによる監査法人選定などという記事が出ておりました。これは、先ほどの那須委員のお話で、アメリカだと関与社員よりも監査法人だという話がございましたが、私の経験では、もう監査法人というよりも、少なくとも日本の現状から言えば、どういう関与社員を選定するかというのが、これが非常に大事だというふうに思います。

 まあ不適切と考えたときには、じゃあどうしたらいいのかということになるわけですが、なかなかどこに話していいのかわからないわけで、監査法人の中に、やはりそういう話があったときに、じゃあ次はだれにするかというようなことがわかるような形が望ましいなと思うわけです。

 関与社員が長過ぎる、先ほどのドイツも10年以上同一監査人が関与していたというのが問題になったんですが、私は経験から言うと、必ずしも形式10年とかにとらわれる必要はなくて、むしろそういう人が本当にきちっと任務を果してもらっているかどうかというのが大事だというふうに思っております。

 それから、特別の利害関係という解釈、私も詳しくないんですが、どうも公認会計士本人とその配偶者というようなとらえ方じゃなくても、もう少し広くとらえるべきではないかなというふうに思います。例えば、生計をともにしている者とか、していた者とかですね。

 それから、4番・5番は、これはちょっと監査役の立場を離れまして、昔の経験で申し上げるんですが、効率的な監査という点では、やはりまず内部統制組織、あるいは内部管理資料にどういうものがあるのかというのをまず見ていただくというのが非常に大事ではないかと思います。これとダブるようなことをするのは非常に効率が悪いわけです。

 内部管理資料といいましても、最近はコンピューターのシステムをよく見ていただければ、非常に驚くほど有効な資料がいろいろ使えると。そのコンピューターシステムを使わないで、手で案件を拾って統計的手法と称して出した結果とコンピューターから出てくる内部管理資料から得られる結論とまるで逆の結論が出たこともございまして、非常にこういうのを活用しないと、効率、なおかつその内容の質も悪いということになると思います。

 それから連結重視自体に、やっぱり子会社とか関連会社の重視、監査に時間をより多く割いてほしい。そのためには支社とか支店というのは、どちらかというと、これはもう内部統制組織にシフトするというのが必要かと思います。

 それから、時価会計で金融商品をどう評価するかと。実務指針の前の前の段階ですから、論点整理の段階を見ますと、あるいは二項定理だとか、あるいはブラックショールズモデルで評価すればいいと、こういうふうに書いてありますけれども、ボラティリティーの見方というのは、これはどんなモデルを使っても簡単に得られるものじゃなくて、こういうところのリスクの評価の仕方、あるいは金融商品だけに限らず、これから棚卸し商品というのも一つの大きな相場商品ですし、これから固定資産についても同じことが言えると思うんですが、こういうものに対する適切なアドバイスというか、コンサルティングといいますか、これがこれから監査の質を高める上で不可欠だというふうに思っております。

 ちょっと長くなってしまいましたけれども、最後に5番の公認会計士協会監査委員会報告のあり方についてというところなんですが、この監査委員会報告というのも、事実上実務指針に相当するようなものが多々ございまして、これは実務の上では非常に参考にしているわけですが、中に、もう最近出てくるものじゃございませんけれども、既存の監査委員会報告の中を見ますと、どうもいかがなものかと思えるものがございます。例えば一つ挙げますと、外貨換算における短期の特例ですね。昭和59年以来当分の間という形で短期特例、短期について取得時、発生時レートのままでもよろしいという、そういう特例がもう15年以上も続いているのは、これはもう来期からは長期、短期の区分もなくなる時代に、いまだにこういうものがまだ残っているのはやはりおかしいというふうに思うんです。どうもこういうのが続いていますと、会計基準はグローバルになっても、監査面では相変わらずローカルルールが続くと。こわもての会計基準にもかかわらず、監査の取り扱いは心優しいんだというような、こういうような印象を与えて非常に望ましくないというふうに私は思うんです。

 以上です。

○脇田部会長 ありがとうございました。4人の委員の方々からそれぞれのお立場での御報告をいただきました。今、伺っておりますと、それぞれにかかわりがあり、重なり合い、またそれぞれの御意見が含まれておりました。

 そこで、これから質疑に入りたいと思いますけれども、その前に、せっかくここに「“監査への批判”に対する公認会計士の意識」という資料がございまして、この調査のときにアドバイザーをなさいました内藤委員がおられますので、ちょっとこの点について御発言をお願いしたいと思います。

○内藤委員 今、御紹介がありましたが、この公認会計士協会の近畿会で、今お手元の参考資料の1枚目にございますが、その二つ目のパラグラフに書いてございますように、平成9年4月に公認会計士監査問題特別委員会を発足させまして、さまざまな社会からの公認会計士監査に対する批判にどういうような改善策を提言すべきかということを、ずっとこの研究活動を続けておられまして、それにアドバイザーとして関与したわけです。

 お手元のアンケート調査なんですが、これは時間的には少し古うございまして、平成10年6月に実施されたものでございます。これにつきましては、ちょうど1年前の今ごろに単純集計結果が出ていたわけですけれども、これをもう少し統計学的に分析して、何かそこから有意な結果が得られないかどうかということを検討してきて、このたびこういう形で公表されたと。そしてまた企業会計の3月号、2月8日発売予定なんですが、そちらにももう少し詳しい内容が公表されるという運びになっております。

 このアンケート調査の結果を、じゃあなぜこういう形で出させていただいたのかという趣旨と、それから若干、せっかくですので五つのポイントに絞って結果から得られることについてお話をさせていただきたいと思います。

 平成10年といいますか、近畿会がこういう特別委員会を発足した当初から非常に監査が問題になっておりまして、特にマスコミの報道等で公認会計士に対する批判が非常に多かったわけでございます。それに対して、じゃあ現場の公認会計士の方々はどんなふうに考えているのかということに関する記事がほぼないといっていいような状況であったわけです。それでこの特別委員会の方では、じゃあまず近畿会ですので、近畿会の公認会計士の方々がどんなふうに考えているのか。それをもとにいろいろな施策の提言をしていくのが筋じゃないかという話で、純粋にどういう意識を持っておられるのかということを調査するということからスタートしたわけです。ですからよく、これは学者の世界なんですけれども、自説を統計学的に証明するために、何か誘導的な調査をするということもたまにあるわけですが、そういう趣旨でこれをしたんじゃなくて、あくまでも純粋な形でしているだけに、そういう何かの意図があってやったものじゃないということをまずお断りしておきたいと思うんです。

 そしてまたもう一つお断りしておかないといけないのは、何度も申し上げますが、平成10年6月の結果ですので、それ以後その批判に対して日本公認会計士協会の方で具体的な施策、提言、あるいは実質的な改善の制度が実施に移されておりますので、そういう点については、この調査結果はもう陳腐化しているというふうに思います。ですから、そういう点はぜひ御注意して読んでいただきたいなというふうに思うわけです。

 しかし、その中でも、まだ陳腐化していないのではないかという点につきまして、よりポジティブに建設的な観点からこの結果を利用するという立場で御説明させていただきたいんですけれども、お手元の資料を少しめくっていただきまして、右上の隅に25ページというふうに書いてあるところに、 V 番目の項目としまして、粉飾経理の発見可能性という問いがあったわけです。経営者が巧妙に操作して粉飾経理を行うと、公認会計士による監査でその発見が難しいという問いに対しまして、巧妙な粉飾経理の発見には限界があるという意見が約6割を占めていたと。これは監査のプロフェッショナルが粉飾経理を発見できないとする慎重な判断を行っている原因とか背景というのは何かあるんじゃないかと。だとすると、やはりここが一番現在の監査にとっての大きな点だと思いますので、監査体制とか、あるいはこの手法に何か工夫とか改善が必要ではないかと、これは言えるんじゃないかということでございます。

 それから次のページをめくっていただきまして、 VI 番目の項目で、虚偽記載の発見の有無と監査責任なんです。財務諸表に重要な虚偽記載がある場合に、その事実を知っていて適正意見を表明する場合と、十分な監査手続を実施しないで発見できず、適正意見を表明してしまう。そういう両者の場合に責任の程度に差異を認めるかどうかということについては、これはいずれも差異を認めないと。だから、十分に責任をとるべきだという結果が出ていまして、公認会計士の方々が自己の責任を十分に認識した上で、この虚偽記載発見に苦心されている様子がうかがわれるというふうに思います。

 それから次の問題なんですが、次の27ページの VIII 番目でございますが、今、本会でも議論されようとしております企業の継続能力に関する問いでございます。企業の継続能力に関する財務諸表の開示と監査報告書における意見表明について、これをどうすべきかということの結果は、会計監査基準で明文化してほしいという意見が6割近くになっております。そういう問題については開示はしないという方が、逆に4人に一人ぐらいの割合がいらっしゃるんですが、しかし、この継続企業の問題につきましては、監査の問題につきましては、少なくとも会計基準、監査基準で整備しなければ、公認会計士の方々は積極的にこれに関与できないと。そういう結果になっているわけでして、まさにそういう意味では本会のこの改定の方向というのは、非常に実務上もちろん重要な点であるというふうに認識できると思います。

 それから、2枚めくっていただきまして29ページの X I 番目の項目でございますが、日本公認会計士協会の情報開示について問うたものがございます。監査に関係する個別問題事例につきまして、日本公認会計士協会は、これは会則により情報開示することが強く制限されているんですが、しかし、その情報開示のあり方につきまして聞いたところ、会則で制限されているのでやむなしとする意見は少数で、情報公開を促進すべきであると。その中には、会則を改正してでも情報公開を進めるべきであると。そして、その問題事例について、各自の実務で、その経験を十分考慮することができるような情報開示にしてほしいと、そういうような期待があらわれております。

 それから最後のページでございますが、 X II 番目の項目です。粉飾決算疑惑事件の発生原因としていろいろ伺ったわけですが、その中で多かった御意見というのは、公認会計士の方々のまずプロ意識が欠如している。経営者の方々に負けてしまっているというようなことがある。あるいは、訴訟事件がないためにそういう意識が弱くなってしまっている。私はこれ自身は驚いたんですけれども、監査人の知識、経験不足で問題点発見能力の低下があると。あるいは、その一方でクライアント獲得競争が激しい。こういうようなことが公認会計士の方々の中では、粉飾決算疑惑事件の発生原因として挙げられていると。としますと、こういったところに今後監査の質を改善していく方向性があるのではないかと、そういうような結果が得られております。

 なお、このアンケート調査結果の後に、そういう監査の批判に対して具体的にじゃあどういうふうに改善していくのかという提言を、この公認会計士監査問題特別委員会の方では2月末をめどにおまとめになって公表されるというふうに伺っております。

 以上でございます。

○脇田部会長 的確におまとめいただきまして、ありがとうございました。

 それでは、以上のような資料を委員の皆様方から御提供いただいております。この後は御自由に御発言をいただくつもりでございますけれども、一応流れといたしまして伺っておりますと、現状認識に関しての問題、それから監査報告書、特にリスクとのかかわり、あるいはゴーイングコンサーンの問題とか、特記事項とのかかわりといったようなこと、あるいは個別の記載事項について問題の提起もございましたけれども、監査報告書の問題。それから第3番目には、各委員の皆様方が触れられましたのは、監査役監査とのかかわりといったような三つのものが特に際立っていたかと思います。

 それから、そのほかには関連海外子会社、あるいは支社、子会社等に関する具体的な項目としてはその監査が挙がっていたかと思います。あとは会計士協会の出されております実務指針等についての御意見もございましたし、あと個々に監査報酬の開示とかございますけれども、まとめてみますと、そういった現状認識の問題、監査報告書の問題、そして監査役監査とのかかわりの問題、そして具体的な項目として子会社監査といったような海外子会社の監査とそれに関する問題点などが御指摘になったかと思いますが、一応御自由に御発言いただきたいと思いますけれども、現状認識のあたりから御発言ございませんでしょうか。

 どうぞ、御自由に御発言いただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

○中地委員 中地でございます。内藤委員が非常にスカラスチックで公平な精神に満ちておられるので、この近畿会の調査に関与されて、もう古いんですけれども、平成10年6月の現状の分析などをおやりになったのは非常に御苦労さまでございましてありがとうございました。ここでいろいろな、そのときの委員のメンバーの方々は、多分新聞・雑誌で公認会計士だらしがないと。適正と書いて会社はつぶれるじゃないかと。つぶれた会社は全部適正とか、債務超過もあるというようにぼんぼん書かれたから、そうするとその委員の方々は、自己批判をすることによって自分は利口であるという錯覚を起こされて、なぜそういうことになったかということに対する認識を、単に新聞に書いてある形と同じようなポイントを近畿会の公認会計士だけに限って、内藤先生これは何名でしたかね。

○内藤委員 2,016名に対して調査しまして、回答は381件でございます。

○中地委員 381件の答えをとられて見られたわけですけれども、大事なことは、そのときにそれぞれの方々に一体、自分が持っておられる監査に対して何時間投入して、それだけの時間を投入したら自分は責任を持った監査報告書が書けたと、そういうことがスタートになるんじゃないでしょうかね。その質問はないんじゃないですかね。ありますか。ない。ということは実態を見ていないんです。だから、本当なら100時間かかる監査を二、三時間やって判こを押してつぶれたと。私は返事しません。逃げますと。ほかのやつが猛烈にアタックするわけですよ。アタックした方々は、これはなぜ私はそう申し上げるかというと、東京にお見えになって会計士はけしからぬとおっしゃる。どこの話ですかといったら、近畿の方にいらして近畿の回りをごらんになって言っているわけですよ。だから、ここでサーベイされて、今年の2月に提言をなさるそうですけれども、内藤先生、だれに提言するんですか。提言された方はどういうふうな責任において何を改善するんですか。質問します。

○脇田部会長 内藤先生にお答えいただきますけれども、内藤先生はアドバイザーのお立場ですので。

○中地委員 それでは、そのかわり近畿会へ質問。と申しますのは、さっき非常にポライトにこの2年間で改善していることはわかりますと。改善しているということを知っていながら、その協会内部でやって、次の改善策をつくってから公表するならいいんですけれども、対外的にこれはどこに出していますか。数多くのところにすぐばらまいていますよ。それが公認会計士制度を、いわゆる内部批判という名のもとに改善する方向なのか、それとも破壊を導く方向なのかということを私は自分の仲間に質問したいと。しかも、これは近畿会だけなんですよ。それで発表するのが会計の雑誌であって全国的かもしれませんよ。内藤先生、それはいかがですか。

○内藤委員 先生の今の御批判、この調査に対する御批判だというふうに思うんですけれども、あくまでも……。

○中地委員 いやいや、私は調査に対する批判とは言っていません。そのときはすばらしかった。2年たってから、その間に審査会の方から我々は10の提言という言葉をいただきまして、必死になっていろいろなことを手を打ってきました。そして今も進行中です。今CPEとか、品質管理二重制度を軌道に乗せようと思って一生懸命やっているわけですよ。会員はもちろんのこと、監督官庁の皆さん方にもいろいろお力を借りまして、ジャーナリズムにもサポートいただいて一生懸命やろうとしているわけですよ。それをこういう形でおやりになる場合には、近畿会はもうそういうことが済んでいるが、さもなかったらば、どなたかに提言して近畿会で完璧になるというその確約をとって、同時にそれを世間に公表していただかない限り、我々は必死になって一生懸命改善しようとしている人間どもはみんな、それはやっている方もかわいそうだけれども、それに協力をいただいているいろいろな役所とか、それから民間とか、いろいろな方々に我々は謝って歩かなくちゃいけないということなんです。

○内藤委員 ただ先生、御理解いただきたいのは、これは何も日本公認会計士協会の本部の方々のそういう御努力を、足を引っ張るなんていう目的でやっているのではなくて、近畿会の方々がみずからの監査はどうだったかということを必死になって考えて、みんなもちろん手弁当でやっているわけですから、その提言を行う際に、じゃあみんながどう考えているかというその総意でやろうと。近畿会の総意としてやろうという趣旨でこういうまとめ方をしたわけでございますので、そういう……。

○中地委員 じゃあ近畿会の総意としておやりになりますね。

○内藤委員 私は近畿会の代表じゃないのでわかりませんが、私が参加させていただいている限りにおきましては、皆さんの必死な思いというのは感じております。

○中地委員 わかりました。内藤先生はそうおっしゃっていたということを私ははっきりとその近畿会の委員会のそのときの委員長、副委員長、その他にちゃんとはっきりと言いますから、ありがとうございました。

 以上です。

○脇田部会長 今、御発言いただきましたけれども、これは今日はあくまでも近畿会のCPAニュースからの抜粋としての参考資料でございますので、先ほど御紹介いたしましたように、これは公表資料としては扱いませんので、この点も御了承いただきたいと思います。

○中地委員 こっちは公表していませんけれども、これは企業会計の雑誌に分冊を連載しますからね。そのほかにもいろいろあちこちに彼らはばらまいているわけです。

○脇田部会長 その点につきましては、また協会の方で御検討いただきたいと思いますが。

 高田委員、どうぞ。

○高田委員 私も西側ですので一言発言させていただきたいんです。関西側では、今、内藤さんの言われるように、中立の立場から、どういう結果が出るかということを注目し、そして何か公認会計士監査の改善をしたいということで始めたんですが、強いて言えば、その結果、大数ではありません、2,000人余りの人々の結果を受けて、この東京に報告を持ってくる人の発言がひっかかっているんじゃないかというふうに思っております。

 それから、公表するについては慎重にすべきであると。これが全部でないということは考えないといけないと思いますが、そのフォローをもう一遍されて、その意見を公表するまで、全公認会計士に影響するということで、関西側の理事の、関西側から出られた役員の方々にアドバイザーとして内藤さんからお言いくださることは本当に必要じゃないかなと思っております。

 ただ、はっきり言いますと、この実態調査、これは量の問題が多くて、それを質に還元したいというところはありますが、東は人数が多いので、こういう調査をもっと早くからどうしてされなかったのか。実態に合わせた提言をしなければ意味がないんで、この行為自体は評価をしていただきたいというふうには考えております。

○脇田部会長 ありがとうございます。

○中地委員 せっかく高田委員がおっしゃいますので、もう一言。

 実は、公認会計士審査会の方の10の提言をもとに数多くの改善策に手が打たれているわけです。

 それからもう一つ、今、会計士監査に関するワーキンググループがありまして、その主要な論点について今検討を続けている企業会計審査会の数々の方々がいらっしゃるわけです。そういう方々がおやりになっていることを全然見ないでおやりになったんでしょうか。それを御存じでありながらこういうことを公表して、ことしの2月に提言すると。だれに提言するんですか。そういうことを私は近畿の優秀な方々に御質問したいと。しかも、すばらしいアドバイザーがいらっしゃるじゃないですか。よろしくお願いします。

○脇田部会長 ありがとうございました。これはあくまでもそのような、本日はたまたま審議の参考資料として提供されておりますので、そのようなお取扱いとさせていただきたいと思いますし、中地委員からの御指摘もいろいろと、公認会計士制度そのものについてのいろいろの思いを持っていらっしゃいますので、お立場もございますので、この点についてはこれから十分にお考えいただく、そしてまた会計士協会の方でもお取り上げいただきたいというふうに思います。

 審議の方は、現状認識について委員の方々からほかにいろいろと御発言がございましたけれども、特にございませんでしたら、監査報告書の……。

 失礼いたしました。どうぞ。

○加藤委員 加藤です。現状認識ということで、現在の監査制度とか監査のやり方に対する現状の認識ということだと思うんですが、トヨタ自動車の松野委員にお聞きしたいんですけれども、監査を受けられる側として、日米の監査に対してどういうふうにお感じになっているかということをお聞きしたいんですが、トヨタ自動車さんは昨年ニューヨーク証券取引所に上場されたということで、アメリカの会計基準による財務諸表をつくられて、アメリカの監査基準による監査を受けられたわけですが、そのときに日本式の監査とアメリカ式の監査というのは非常に大きく違うように感じられたのか。もし感じられたとしたら、大まかなところでよろしいんですが、どんなところが日本とアメリカの監査というのは違うように感じられたのか教えていただければ参考になると思うんですけれども。

○脇田部会長 では、松野委員、お願いいたします。

○松野委員 私どもUSの監査というのは1回しかまだ受けていないものですから、私どもの理解が正しいのかどうかよくわからないんですが、一つは、要するに経理以外の相当の人から、いろいろな今社内で起こっている新しい動きというものをヒアリングされるという、そういう部分が非常に多かったように私は感じております。ただそれは、こういう背景を御理解いただきたいんですが、いわゆる日本における監査というのはもうずっと何十年も続けておるということ。それとUSでの監査というのは初めてなものですから、これから毎年そういう形が続くのか、それはもう少し重点的なものになっていくのか、ちょっと私もそこら辺は経験不足でございますので、そういう感想が一番大きいポイントでございました。

○脇田部会長 林委員、どうぞ。

○林委員 林です。議論の前提の前提として松野委員にお聞きするんですけれども、お話の中で、現代は90年代のバブルの崩壊の残滓をまだ引きずって、経済状況自体がまだそんなに力強くは回復していないと。したがって、普遍的なそのルールを策定するに当たっては極めて慎重な対応が必要であろうというふうに述べられまして、まあ慎重な対応は私も必要だと思っているんですけれども、現在御承知のように、アメリカではニューエコノミー、IT革命だよと。これについては、新産業革命という部分については、理論的にあるいは統計的には何ら確認もされてないんですが、確実に新しいインターネットの時代に入っているんじゃないかと思うんですね。それは御社も考えていらっしゃいますけれども、結局生産者とユーザーの間を取り次ぐ人はどんどん中抜きしちゃうということに象徴的にあらわれてくると思うんですが、結果としてマクロ的に見れば、物すごいデフレ圧力がかかってくる経済というのは、今から私は新たな問題として発生していると思うんですね。そういった意味では、バブルの崩壊の残滓を引きずってまだ力強い体質にはなっていないんですが、それ以上に新たな経済状況に入っているとしますと、いつも何か大きく変動しているわけですから、そういう中で普遍的なルールを我々はつくっていかなきゃいかんということではないかと思うんですね。ですから、余りにも慎重がゆえに、結果として米欧の論理のからくりの中に取り込まれるようなことは、やっぱり避けた方がいいんじゃないかなと。まあ非常に難しいんですけれどもね。つまり、私が言いたいことは、普遍的なルールをつくるためには、経済が非常にしっかりした状況というのはあるんだろうかというふうに思っていまして、感想と若干何か松野さんのコメントをいただければと思います。

○脇田部会長 松野委員、いかがでございますか。

○松野委員 今、林委員のおっしゃることに何も異論はございません。すみません、私の説明が言葉足らずだったと思いますけれども、そのお話をさせていただく前の段階で少し述べましたけれども、いわゆるゴーイングコンサーンの問題と財務諸表の注記、偶発債務ですとか、こういう問題を少し分けて議論すべきではないかというのが根底にございまして、おっしゃるとおり、経済ですとか会社というのは、これはいつも変革しておりますので、いわゆる安定期というものはございません。従ってリスクが常にあると。こういうことでございます。ただし、そのリスクの種類の中に、いわゆる今まさにおっしゃったデフレ経済の中で資産が不良化していくと。ここの部分について相当の企業がまだ対応の途中であると。このことだけをとらえて、そこの部分にクローズアップをし過ぎるのはどうでしょうかという形でお話をしたつもりですので、言葉足らずであったのをおわびしたいと思います。

○脇田部会長 ありがとうございました。ただいまちょうどゴーイングコンサーンの問題に言及していただいておりますので、引き続きましてゴーイングコンサーン、あるいはリスクの問題につきまして、松野委員、もし補足なさることがありましたらどうぞ。いかがでございますか。よろしゅうございますか。

 それでは、皆様方の中から、また御報告いただいた委員を初め皆様方御意見があると思いますので。

 伊藤委員、お願いいたします。

○伊藤委員 私は企業経営に携わっている者なんで、前にも申し上げたと思いますけれども、企業という松野さんと全く一緒なんですけれども、経営というのは常にリスクをミニマイズして、そして利益をとっていくという、我々の社会的使命としても利益を確保していくということが我々の業務だと思っているわけですね。もちろんその場合には、いろいろ先ほど林先生もおっしゃいましたけれども、1980年代においてアメリカの企業が大変崩壊して、それでITビジネスをベースとしつつ、それから冷戦構造もあったわけですけれども、それで蘇ってきたと。1990年代はアメリカの一人勝ちになってきていると。それをバックグラウンドにして、国際的なきしみとか、あるいは企業会計においてもアメリカのリズムというか、ロジックというのがだあっと世界をコントロールしていることは事実だと思うんです。我々はそれを否定しているわけじゃなくて、このグローバリゼーションの中で、我々企業経営というのはそういう中でやっていかないといけないし、松野さんのところの会社はそれを見事にやっておられるというふうに私は思っているわけです。しかし、ベースとしては絶えずリスクを張って企業経営をやらなきゃいけないわけですね。

 ただ、じゃあ我々が企業監査、あるいは会計監査に対して期待するものは何かと。やはり基本的には企業会計原則というものを企業がきちっとやっているかどうかについての適切な要するに判断基準というのか、そういう意味では私はそれは適切であり、かつ公正なもので、つまり日本の企業会計原則というものに基づいて判断をしていただければ大変結構だと思うんですよ。したがって、粉飾があるかどうかとかないかとか、これは適切にやってもらったらいいんだけれども、リスクに関しては、経営のリスクというものと公認会計士さんとは若干違うかもしれないと思うんですけれども、それは違ってもいいんじゃないかと私は思うんです。そこで公認会計士はこれはリスクがあり過ぎるよということを言っていただくのは大いに結構だと思うんですね。この点はだから、適切なリスクの記載と松野さんは書いているんで、これでいいんじゃないかと私は思います。

 それで、我々が一番困るのは、それじゃあそういうようなことで内外への理解活動、レジェンド警句、レジェンドクローズ等が出ていますけれども、つまりそういうものが書かれていると。我々企業会計審議会で一生懸命苦労して、まあ中地先生もおっしゃったと思いますけれども、非常に苦労してみんな努力して、そして大蔵省さんの御意向も踏まえ、2001年には、少なくとも日本の会計基準というのを国際会計基準のニアリーイコール、ほとんど近いものにしていこうという段階の矢先の中で、アメリカで上場している会社のSEC基準はこれはしようがないと。しかしながら、日本市場で上場し、そしてやっていくものに関してもそういうレジェンドクローズをつけられていることに関して我々は問題があると。

 昨日もちょっと同じことを申し上げたんだけれども、企業というのはいろいろな形でチェックされている。例えば、単に公認会計士さんのクローズだけじゃなくて、我々格付も受けているというような状態で、いろいろな形でのチェックが行われていると。格付が、個人的で恐縮ですが、松野さんのところはトリプルAだと思いますけれども、我々もダブルAプラスで、ダブルAをどけてもレジェンドクローズはついてきていると。これは日本の企業会計原則に対する批判なのか。あるいはつまりそれはもう2001年になったら消えてしまうのか。あるいは我々が今やっているこれに対して彼らが理解してめちゃくちゃなことを言っているのか。つまりビッグファイブが勝手なことを言っているのか。彼らの訴訟の問題で言ってきているのか。あるいはSECと我々との間のコミュニケーションをもっとより強化すれば理解されるのかというようなところは、よくこれから我々として検討していかなきゃいけないんじゃないかということをこれに感じました。そういう問題があるということが一つです。

 それからさっき中地さんがいみじくもいろいろ御指摘されて、私も関西に企業を置いておるんで、恐らく近畿会の人は私どもの会社のことも評価したんだろうと思うんですが、これは私はやっぱり中地さんの言うことは一理あると思うんですね。つまり、みんなが非常に公認会計士協会として一生懸命努力している。それはやっぱりよく理解をして、現実的なところをもう少し現実としてよく調べて認識をしないといかんのではないかと。関西という一部の地域の中でやるのが全体の地域ではないと思うので、ここはまずはやっぱり公認会計士協会内部でその問題をよくディスカッションし、内部固めをして問題点を消化した上で世に問うべきではないかと。

 それから3点目に、私はちょっと部会長の言われていることと若干違うんですけれども、つまり総括的にいろいろな話を一緒にさせていただいて恐縮なんですけれども……。

○脇田部会長 結構でございますから、どうぞ。

○伊藤委員 やっぱりマスコミ対応をもっと力を入れなきゃいけないと。つまり、これは先ほど申し上げたレジェンド問題もそうなんだけれども、国内もしかり、海外にもしかりですね。いかにマスコミ対応というのをきちっとやらないと、我々のやっていることが、まあ中地さんも言われたけれども、大変誤解をされるとか、つまり我々の意図しているところと違う方向に流れるというようなことが、公認会計士協会でも私も若干タッチしているんですけれども、NHKの方が入ったりなんかしております。いろいろな形でNHKで報道されていくということで協力を仰いだわけです。やっぱりこれはマスコミをきちっと、何もマスコミにいいことを報告してもらう必要はないんだけれども、事実を事実として認識してもらうことは必要だと思うんですね。

 そういう点において、日本の経営者についてもいろいろ問題があると思いますよ。つまり、基本的ないろいろな不祥事の原因というのは経営者に私は大半あると思うけれども、しかし経営者が何と言おうと、やっぱり公認会計士さんとしては言うべきことは言ってもらった方がいいと。それが日本の公認会計士、関与社員と企業との関係が10年というのは長いとかいろいろあるかもしれませんけれども、それならそれを若干短くして、アメリカとか欧米並みに7年にするということでもいいと思うんですね。それはまた別の会議でいろいろ御検討いただいたらいいと思いますけれども、そういうようなことでも、我々は基本的に前向きに進めているということはよく認識してもらわないといけないというふうに私は思います。あと、いろいろ言いたいこともありますけれども。

 それからもう一つは、ちょっと長くなって恐縮なんですけれども、監査役との問題なんですね。これは日本の監査役制度そのものが少しいびつであると。つまり、日本の企業というのは、我々の会社は財閥会社ですから完全なるサラリーマン会社です。オーナー会社じゃありませんから。そういう会社というのは何の力も一見役員はないようなんですけれども、トップに対する役員の権限は物すごくあるんですよ。私はたまたま代表取締役副社長ですけれども、それじゃあ代表取締役副社長は権限を持っているかというとそうではないんですね。つまり、社長なのかだれかわからないけれども、「呪縛」という映画があったと思いますけれども、ある、要するに力のある人がやっぱりいるんですよ。その人の影響が、つまりだれかといったら人事権を本当に持っている人です。人事権を本当に持っている男がやっぱり力がある。どこでもそうですけれども。そうすると、要するに今の監査役というのは人事権があるのかというわけですよ。人事権はオーナーからオーナーに近い、サラリーマン会社でもオーナーに近い人から任命されていると。ここを改善しない限り内部監査の問題はできないと。従って、内なるコーポレートガバナンス、我々はそこをまず改善するということが一つ。それには、例えば社外取締役とか社外監査役というのをもっと充実させる。

 それともう一つは、外なるコーポレートガバナンス。それは何かというと、資本市場であり、それからもう一つは格付だとか、皆さん方の公認会計士さんとか、そういう外なるコーポレートガバナンスがもっと強烈に働くべきだと。従来の間接金融としての銀行の力はもうないと。ましてや、その他株主というのはどんどんはげていっていますから、そういう点ではない。ただ、大変興味があるのは、資本市場の力が非常に力を持ってきたということは言えると思いますので、何も今のITビジネスのあんなバブル化した価格がいいと私は思いませんけれども、しかしながら、80円とか何かになってきたら、本当に会社は、例えば省エネの問題じゃないけれども、TOBをかけられるということですね。我々でも子会社13社ありますけれども、いつかけられるかわからんよということを言っているわけです。住友グループだっていつかけられるかわからないよと。我々は防衛できないんだよと。そういう緊張感が会社をよくしていくんだと思います。

 以上です。

○脇田部会長 ありがとうございました。いろいろの点について御指摘をいただきましたが……。

 どうぞ、中地委員。

○中地委員 先ほどの私のしゃべり方、ちょっとトーンが高かったんであれですけれども、実は、この「“監査への批判”に対する公認会計士の意識」というのを、数日前に私の自宅にぽんと送られてきたんですよ。びっくりして、早速、その委員長をやっているのは私の親友ですから、「おい、お前何しているんだ」と言ったんですけれども、だから協会本部として、近畿会の問題でも、やっぱりみんなを集めまして、こういうときはどうするんだということをやるべきですけれども、それもまだやらないところへ一番親しい内藤さんがこういう報告をここでやられちゃったものだから、それで私も動揺しまして、皆さん方のところで、「内藤さん、何言っているんだ」という形でちょっとしゃべりましたので、余り親しい友人の話を皆さんの前でお話ししたことを恥ずかしく思いますのでおわびします。とにかく本部の方で一応対応しますけれども、今後もジャーナリズムともいろいろ適切な対応をしながら、そして周りの方々の御協力をいただいて、一歩一歩改善していきたいと思いますけれども、ちょっと内輪の足の乱れを皆さんの前であれしてちょっとおわびを申し上げたくてちょっと手を挙げました。どうもいろいろありがとうございます。よろしくお願いします。

○脇田部会長 ありがとうございました。私どももこれから慎重にいろいろ考えてまいりたいというふうに思っております。

 それでは、今、伊藤委員からは大体網羅していただきましたけれども、さらにどうぞ御自由に御発言いただきたいと思います。高田委員、どうぞ。

○高田委員 公認会計士協会内で、大いにけんかをしてからここへお持ちくださるようにひとつよろしくお願いをしたいと思います。現在やっておられて、改善案をどんどん検討しておられることを敬意を持って見ておりますので、中地会長、責任を持ってよろしくお願いしたいと思います。

 2番目に、やっぱり監査役、内部監査との関係はコーポレートガバナンスという概念を言う限り非常に大事だと思います。会計士監査の限界ということは、もう皆さんおわかりのとおりでありますので、とりあえず会社の内部で内部統制システムというものがうまくできているかどうかということはもう基本でありますし、コーポレートガバナンスを考える上にもこれはもう必須条件だと思います。その意味で、これにチェックを加えること、権限を持ってできるのは法文並びに規則の上では監査役さんなんですよね。監査役の監査というものについて、どの程度会計士と密接な関係をお持ちになってやっておられるかについては、私はちょっと疑問を感ぜざるを得ないような実態の話を雑音で聞いております。先ほども出ましたが、通常段階で定例会を持つとか、監査役に会計士さんも積極的に働きかけてほしいし、これを受け入れる会社側の態度こそ非常に大事じゃないかと思います。内部監査とどう接触するかもぜひ積極的にお進めいただけないと、これは会計士監査の方にも影響するということであります。これは会社側の方で御努力をいただくことがます肝心じゃないかと思います。藤田さんの御指摘がありましたその点は、ぜひひとつ会社側から始めていただきたいなというふうに考えております。

 それから、やはり同じような結論になるかと思いますが、いずれの監査についても限界がある。監査は会社の運営について大いに制約条件、あるいは大きなマイナスをもたらすということであってはならないわけですので、その意味では、限界つきの調査なんだというふうに考えていいと思います。この限界をまず公開をし、マスコミを通じて会計士監査はこうだと。内部のチェックシステムは、日本の実態も含めて、感想はちょっと差し控えるべきでしょうけれども、大いにこれをマスコミを通じて宣伝をし、監査の意味を一般に訴えてほしいと思うんですね。その意味で、ポイントは監査役、内部監査との関係及び公開し監査をしていただく努力は今なおも必要であるということですので、そういうことを考慮してここで審議を進めていただきたいなと。これは希望でございますが、よろしくお願いします。

○脇田部会長 ありがとうございました。高田先生から御発言がございましたけれども、ほかに。内藤先生、どうぞ。

○内藤委員 内藤ですが、企業の継続能力に関する情報のことにちょっと言及したいんですが、先ほど松野先生の中にも企業経営におけるリスク、企業による適切なリスクの記載ということがございましたが、企業の継続能力に関する情報、要するに、将来の企業、将来に企業が継続できるかどうかについて、今現在アン・サートゥンティ(uncertainty)があって、それがどうなるかによっては企業は継続できないかもしれない。そういった情報のことを言っているとしますと、ここに書かれた企業経営におけるリスクが、まさにそういうのも含まれてくると思うんですね。今日、冒頭、この第二部会でもゴーイングコンサーンに関する開示の基準の問題も話していいということがございましたので、だとしますと、じゃあやっぱり開示すべきリスクとは何かという分類をきっちりしないといけないのではないかと思うんですね。これは諸外国では、イギリスなんかは特にそうですけれども、基本的に重要なリスク、あるいは単に重要なリスクというような規定の仕方をして、いわゆるこれまで監査で扱われてきた未確定事項と、ゴーイングコンサーンに影響を及ぼすほどの未確定事項、この2つを区別して監査の対応も考えているというようなことがあると思うんですね。ですから、そこの部分もやはりリスクの定義が必要になってくるのではないかというふうに考えます。

 それで、今日は今の監査の現状がどうかという認識なのでお伺いしたいんですけれども、先ほど松野先生が企業経営全体に関するリスク、そしてその会計に関するリスク、この二つがあると。では、これまでの財務諸表監査では、財務計算に関する書類に対して公認会計士が監査及び証明を行うとなっているわけです。松野先生は、リスクに関して有価証券報告書の事業の概況等での記載も必要ではないかと。その方がむしろ好ましいのではないかという趣旨に私は伺ったんですが、もし、じゃあそうだとしますと、今現在公認会計士の方々の監査において、財務計算に関する情報以外の部分について適正意見を述べられるときに、じゃあそのほかの有価証券報告書の記載事項について、その意見の範疇にはもちろん入っていないわけですけれども、そのチェックをされているのかされていないのかというようなことをまずお伺いしたいことが一つと、もし事業の概況等で企業経営全般に関するリスクとしてアン・サートゥンティ(uncertainty)を開示することとなったときに、これは財務計算に関する書類の監査を越えることになるのかどうか。それについてどんなふうにお考えなのかということをお伺いしたいと思うんですが。

○脇田部会長 今の問題につきましては、友永委員からお答えいただいてよろしゅうございましょうか。もしよろしければ。

○友永委員 公認会計士協会常務理事の友永です。事業の概況の記載事項というのは、私どもの監査意見の対象外ではありますけれども、通常やはりすべての計算書類、あるいは有価証券報告書に開示される事項との整合性ということは、監査の業務の上で見ていると思います。ただ、見ていることについて、例えば財務諸表監査に含まれている部分と矛盾したことがそれ以外の場所にあった場合どうするのかといった場合に、今そういう指針はございません。会計士のSASなんかではありますけれども、そういったものはないと。ただし、そういうリスク情報があれば、当然にそれが企業の財務諸表にどういう影響を及ぼすのかといったことについてはプラクティスとしてはやっていると思います。

 以上でございます。

○脇田部会長 友永委員ありがとうございました。内藤委員、いかがでございましょうか。

○内藤委員 プラクティスでやっているということは、じゃあそれを拡大して解釈していいかどうかはまた別の問題としまして、ここでの継続企業の前提に対する監査の問題の中に、そういった意味でのリスク情報の開示の意味も議論の俎上にのせていただけるというふうに理解していいのでしょうか。

○脇田部会長 これからの審議の中でそれは取り上げていかなければならないと思っております。特にここの審議の核になる一つの問題がゴーイングコンサーンであり、そして監査報告書の問題というのがとりあえずのまず取り組まなければならない、そして早急に審議を明確にしていかなければならない状況にございますので、今、内藤委員が提起なさった問題、それを審議し、かつ先ほど若杉会長から御発言がございましたように、第一部会とのすり合わせなどもしながら進めてまいりたいというふうに思っておりますが、それでよろしゅうございますか。はい、どうぞ。

○松野委員 少しだけ。実務の中では、監査人の方は有価証券報告書、財務諸表以外も見られます。それでいろいろな指摘をいただきます。もちろんそれは監査の表明の対象外になっております。

 それともう一つ、事業の概況ですとか、営業の概況に書く方法もあるというふうに私は言いましたけれども、それがいい方法だというふうに、最終的に個人的に意見をまとめたわけではございませんので、欧米の例を見ると、そういうところで述べている例が散見されるということでございます。

○脇田部会長 ありがとうございました。そのほかに御発言。山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 山浦です。本日伺ったお話、それぞれ非常に参考になること多かったんですけれども、こちらの方で、審議会の第二部会の審議になじむ問題と、それからたまたま私が所属しております監査問題小委員会、あるいはワーキンググループですね。そちらの方でもっと制度枠の問題として対応しなくちゃならない問題、それぞれお話の中身が複雑に入り組んでおりまして、ちょっと前後するようでお伺いしたいんですけれども、まず一つは、高山委員が出されました資料1、この監査の実務の現状についての延べ日数と関与人数。それからもう一つ、調査研究部審理課の非常に貴重な資料をいただきまして感謝しているんですけれども、ここにあります監査報酬ですね。これらについて、例えば海外との比較等はなされたかどうかということ、これが一つです。もちろん海外といっても、単純に海外といいますと、例えば非常に人件費等が安いところからそうでないところがありますので、これは例えばアメリカとか、いわば世界のマーケットをリードしているような国と比較してということが一つです。

 それに関連しまして、ここでいろいろ指摘されております監査の事故を防ぐと。事故というのは、例えば、粉飾を発見できないとか、あるいは不正を発見できないとか、粉飾、不正とかかわり合いについてまたちょっと別の議論があるんですけれども、いずれにしても、そうした事故を防ぐためには時間と人をかければいいのか。あるいは監査の技術上の問題というんでしょうか。例えばビジネスリスクアプローチという新しい概念も出てきているようなんですけれども、そうした技術の問題で対応できるのか。あるいは、ここで議論することになると思うんですけれども、会計、あるいは監査基準のもう少しきっちりとしたもので対応すればこれが解決できるのか。あるいは、問題次第ですべてにかかわるものもあれば、特定なもので対応できると。恐らくそういうのがきっと結論なんでしょうけれども、そのあたりについて、せっかくリサーチセンターの研究員をされておるのでちょっとお伺いしたいんですけれども。

 以上です。

○脇田部会長 よろしくお願いいたします。ちょっと時間が来ておりますので、申し訳ないんですけれども。それから、国際比較はちょっとまだしていないところだと思いますから、その点を含めて御発言をお願いします。

○高山委員 手短にお話ししますが、まず、先ほどの報酬の件ですけれども、こちら方に出ております資料に関しましては、各監査法人、あるいは監査人の方から概要書、あるいは商法監査実施報告書という形でもって提出されたものから集計させていただいた関係がございまして、詳細に個々状況がどうなのかということに関しまして突き詰めて調査されたものではございませんので、他国、特に欧米各国との比較というところまでは残念ながら踏み込んだ形ではされておりませんので、今後そういった情報がとれれば、また何らかの形で検討はされるかとは思いますけれども、いかんせんやはり限られた情報の中で集計している関係で、ちょっとそこまでは今現状ではちょっと難しいのかなというふうに考えております。

 また、時間をかければ、じゃあ不正が発見されるのかということですけれども、私も実際実務で経験した限りにおきましては、私の私見ですけれども、時間をかけたからといってわかるものでは当然ございませんし、じゃあ人をかけたからといって発見できるものでも多分ないんだろうなというふうには思います。ただ、当然その監査というのは試査の範囲でやっておる関係がございますので、それぞれの限られた情報の中で全体の適正性を判断するという意味では、当然その監査におけるリスクというものも当然ながら存在しているのではないかなと。ただ、それをどれだけ効率よく作業することによってミニマイズするのかというところが、やはり各監査人におけるいわゆる能力ですとか、あるいは監査手法ですとか、そういった問題にかかわってくるのではないのかなというふうには思います。当然、各大手の法人におきましては、マニュアルの整備ですとか、あるいは監査実施に関しての事前審理ですとか、そういったことを行いながら、社内的に牽制をかけた上でそういったリスクをミニマイズして監査報告書が提出されておるというふうに私は理解しておりますので、そういった中で最終的に監査報告書が出ていると思いますので、まだまだ恐らくはその技法ですとか、やり方という問題におきましては、やはり先ほどのレジェンドという問題も当然あります関係上、まだまだ欧米から見られると、どうしてもレベル的に低いというふうに見られてしまっているのかもしれませんし、もう少し改良の余地、また改善する余地、努力する余地はあるんだろうなというふうに思いますので、これから基準の見直しですとか、そういった中でそういったものも具体的に盛り込めるのであれば、我々実際実務に携わる側としましてはやはり非常に歓迎するところでもありますし、どんどん御意見を発言していただいて、よい方向に持っていっていただければよろしいのではないかなというふうに考えております。

 以上です。

○脇田部会長 ありがとうございました。それでは、山浦先生、まだ御提言があると思いますが、また次の機会を活用させていただきまして、最後に若杉会長から御発言いただきたいと思います。

○若杉会長 本日は貴重な御報告とそれを巡るディスカッション、どうもありがとうございました。我々が非常に関心を持って見ております会計制度の重要な部分を握っております会計士協会で、今日アンケートの結果が報告され、それに対してまたいろいろ会長からも御意見が出たわけですけれども、我々まじめに協会のあり方とか、あるいは動きを見ております者からいたしますと、片方で新しいあり方を巡って探究しながら、同時に今持っている問題点を明らかにしようとしているその努力は、やはり協会の新しい一つの透明性を高めようとする努力のあらわれとしまして、私ども非常に高く評価いたしておりますので、できれば、協会全体でもってこういうようなアンケート調査をなさるのもよろしいことじゃないかと思います。決して、それは何か内部での分裂とか醜態を見せつけるというふうには我々とっておりませんので、ひとつ頑張ってやっていただきたいと思います。

 以上です。

○中地委員 せっかく会長から激励の言葉をいただきましたので、事のついでにどっちみち内輪だからというので、高山委員やそれから那須委員の報告を見ながらしまったなと思っていますけれども、彼らも優秀なリサーチセンターの人たちですけれども、何か資料1の頭は、皆さん既に御承知の監査論の入門の頭を写してきたような感じになったものだから申し訳ないなと思っておりますけれども。それから、責任問題もそのとおりで、だから要は監査の実務の現状についてという場合に、我々の中心が果して公認会計士意見書を出すときに責任をとれるかどうかという、投入時間やそれからこうやっています、ああやっていますという、高山さんも今言ったんですけれども、リスクアプローチもいろいろあるから、投入時間と結果の問題ですけれども、やっぱり焦点は、公認会計士が企業の財務諸表に対して責任をとれる意見をどう書けるかということでリサーチセンターでも、まあたまたま二人来ているわけですけれども、彼らもよく勉強していますから、今日の表現で入門編的なことを書いて皆様方に失礼になったかと思いますけれども、お許しください。彼らはよく勉強していますから。失礼いたしました。

○脇田部会長 ありがとうございました。では、伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員 これできょうはおしまいになるわけですね。それで大変ちょっとあれなんですけれども、事務局の方が大変な御努力をされて資料をおつくりになって、我々大変勉強もさせていただいているんですが、次回は一体何をやるのかを、まず一つは概略でも教えていただきたいというお願いと、もしできれば、こういう審議会の議論をもう少し彷彿とさせるために、素案の段階でいいんですけれども、パーフェクトの資料じゃなくていいんですが、五分ぐらいできた資料でも送っていただければ、皆さんに考えてきてもらって、もっと実質的な議論に入れると思うんですよね。これは大変勝手な言い方なんですけれども、もう多賀谷さん以下物すごくいろいろお忙しいというのはよくわかるんですが、そういうことを一遍ちょっと御検討いただくと大変ありがたいんですけれども。次回は私はちょっと欠席させていただくこともあって、あるいは自分の意見を事前に出させていただくとか……。

○脇田部会長 ただいま伊藤委員から御提言ございましたことはそのとおりでございまして、私どもも、私を含めてその点についてはまた事務局の方々にお助けいただいて努力させていただきます。

 そこで、そろそろ定刻になりましたので、この辺で議事は終了させていただきたいと思いますが、今御指摘のありましたように、今後の日程について事務局から御説明をさせていただきまして、その点若干触れさせていただきます。

○多賀谷課長補佐 それでは、手短に御説明させていただきます。

 最後に1枚紙で第二部会の今後の審議日程ということで、皆様方の御予定等もございますと思いますので、なるべく前広につくらせていただきました。それで、第5回までは一応このような日程で行いたいと思っております。第6回以降は、今のところ会議室が確定をしておりませんのでハテナということにさせていただいておりますので、変更される可能性もございます。

 それから次回ですが、次回は部会長と御相談したところではヒアリングということで、また企業を見られる方、あるいは金融機関の方、それから公認会計士協会の方からゴーイングコンサーンを含めて、今日に引き続きましてヒアリングを続けるということにさせていただきたいと思います。

 資料につきましては、今回ちょっとレジュメという形で特段の資料というのがそろわなかったんでございますが、なるべく早く事前に御送付申し上げるように注意いたしますのでよろしくお願いいたします。

○脇田部会長 どうもありがとうございました。ただいま御指摘いただいた点、そして皆様方からの御発言の中に恐らくは含まれていると思いますので、私を含めて今の点を十分に考慮いたしまして、これからの審議に生かさせていただきます。また、事務局の皆様方にもその点の御協力をお願いしたいと思います。

 8分でございますか、予定を経過して申し訳ございませんでしたけれども、本日の部会はこれにて終了させていただきます。皆様方には大変お忙しいところをありがとうございました。