企業会計審議会 第二部会 議事録

日時:平成12年3月3日(金)午後2時00分〜午後3時57分

場所:大蔵省第四特別会議室

 

○脇田部会長 定刻になりましたので、ただいまから第4回第二部会を開催させていただきます。

 委員の皆様には、お忙しいところをお集まりいただきました、誠にありがとうございました。

 なお、本日も林政務次官が御出席の予定でございますけれども、国会が開会中でございまして、もしお時間があきましたら、また御出席いただけるかと思います。そのことをお含みおきいただきたいと思います。

 それでは、早速、議事に入らせていただきますが、その前に一つ御確認いただく事項がございます。前回の部会におきまして、標準監査報酬の決め方につきまして若干の御発言がございました。この点を御確認いただくために、友永委員より一言御発言をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○友永委員 公認会計士の標準報酬規定につきまして御説明申し上げます。

 公認会計士法では、公認会計士協会は会則に、会員の受ける報酬に関する標準を示す規定というものを記載するようにということになっております。会則で、報酬に関する標準を報酬細則で定めるということにしております。会員の受けるべき報酬というものは、この標準に諸事情を勘案して個別に決定するということが会則上、明らかになっております。

 協会では、この標準報酬規定を改訂する場合には、プロジェクトチームを結成いたしまして、案を検討して決定するということにしておりますけれども、相手のあることでございますので、経団連には作成した案につきましてお知らせはしていると。それで、あくまでこれは標準でございまして、個別の事情に照らして、当事者間の協議によってそれぞれの報酬は決まるということになっております。

 以上でございます。

○脇田部会長 ありがとうございました。

 ただいま御発言いただきましたけれども、よろしゅうございましょうか。

ありがとうございました。

 では、早速、本日のヒアリングに入らせていただきます。

 これよりの議事におきましては、前回に引き続きまして、関係者からのヒアリングを行いたいと考えております。本日はお二人の委員の方にお願いしております。続けて御報告をいただきますと少し長くなりますので、本日は、それぞれの委員の御報告を受けまして、御質疑をいただくことにさせていただきます。まず、高山委員から、現在の我が国の監査基準及びこれを受けた日本公認会計士協会の監査基準委員会報告等につきまして総合的に御説明をいただきたいと思っております。そこで御質問をいただきまして、次に、内藤委員から、監査責任のあり方と保証の意味について御報告をいただき、その後にさらに質疑・意見交換を行いたいと考えております。どうぞ本日も活発なる御審議をいただきたいと思います。

 本日配付しております資料のほかに、公認会計士協会の監査基準委員会報告等を資料集に綴り込んでおりますので、どうぞ御活用くださいますようにお願いいたします。

 それでは、高山委員からよろしくお願いいたします。

○高山委員 日本公認会計士協会リサーチセンター研究員の高山です。私からは、現状の監査基準、監査実施準則及び監査報告準則並びに日本公認会計士協会から公表されております監査基準委員会報告等について御紹介させていただきたいと思います。

 皆様御承知のとおり、現在の監査基準、監査実施準則及び監査報告準則は、平成3年に、監査の環境の変化に適切に対応するとともに、公正な監査慣行を新たに明文化する等により、我が国監査制度の一層の充実とその有効かつ円滑な運営を図るために改訂を行ったものとされております。実施基準、報告基準並びに実施準則、報告準則がその際の改訂の対象で、特に実施準則は、その当時、通常の監査手続として個別の監査手続が詳細に規定されておりましたが、「通常実施すべき監査手続」という表現に基準として概括的に明示され、その全てが削除されました。その後若干の改訂が行われ、現在に至っているということであります。

 私からは、若干のお時間をいただき、この監査基準、実施準則及び報告準則について、その規定の趣旨を簡単に説明させていただくとともに、改訂の折に、「適切な運営と普及を図るために、日本公認会計士協会が自主規制機関として公正な監査慣行を踏まえ、会員に対して遵守すべき具体的な指針を示す役割を担うことが期待される」ということを受けて、日本公認会計士協会がその後に公表してまいりました監査基準委員会報告等を対比するような形で御紹介させていただきたいと思います。

 なお、基準等の趣旨につきましては、当時の審議会での議論等を踏まえて御紹介するのが筋だとは思いますが、当時の議論の詳細につきましては、私自身分かりかねますので、その後に出版されております諸先生方の書籍等を参考にさせていただきながら、私なりに書かせていただいたものでございます。従いまして、理解が不十分であるとか、本来の趣旨と違うのではないかという点がございましたら、その点は御容赦願えればと思います。

 また、黒表紙の綴りに、今部会長の方から御説明がございましたとおり監査基準委員会報告のコピーを入れていただいておりますので、適宜こちらの方から御紹介させていただきたいと思います。

 早速でありますが、お手元の資料1に沿いまして御紹介をさせていただきたいと思います。

 今回の対比に当たりましては、監査基準、実施準則及び報告準則は、平成11年12月現在のもので記載させていただきました。ただし、今回は、中間監査基準につきましては御紹介を省略させていただきたいと思います。また、日本公認会計士協会公表の委員会報告等につきましては、平成12年2月1日現在で公表されたもので検討させていただいております。これは、現在改訂作業が進められているところであるため、原案等は一部でき上がっているというふうに聞いておりますけれども、正式に承認・公表されているものではないため、現在公表されておるものについて検討させていただいたということであります。

 それでは、監査基準について説明させていただきます。

 監査基準は、御承知のとおり、一般基準、実施基準並びに報告基準の三つから構成されております。

 まず、一般基準では、監査人について、監査の職業的専門家としての基本となる事項について概括的に規定しております。

 一般基準一では、監査人の適格性について規定しており、具体的には、監査人としての専門的能力と実務経験を要求するとともに、被監査会社との間で経済的、身分的に独立していなければならないということを規定しております。この基準を具体的に規定したものとしては、例えば公認会計士法第24条並びに第34条の11、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律第4条第2項、証券取引法第193条の2第2項等がございます。これらは全て監査人の独立性について規定しており、例えば監査人である公認会計士又はその配偶者が役員であったり、あるいは使用人であった場合ですとか、被監査会社との間に利害関係がある場合ですとか、独立性に疑問のある会計士は、当該会社の監査に携わることができないということであります。監査は公正な第三者が実施して初めてその信頼性が確保されるのであり、独立性に疑問のある監査人が実施した監査は、その信頼性に欠けるということは御理解いただけるかと思います。このように、まず監査人としての適格性を一番に規定しているということでございます。

 次に、二は、監査人の精神的独立性について規定しております。監査人が精神的独立性を失い、被監査会社による干渉や圧迫、誘惑や義理人情におぼれてしまえば、監査人としての正当な判断が歪められ、監査の社会的信用を失わせることになるということでございます。従って、監査人は精神的にも被監査会社と独立する立場でなければならないということであります。この精神的独立性については、具体的に法律等で規定されているものはないんですけれども、日本公認会計士協会の紀律規則の前文には、「常に不羈独立の立場を堅持」という表現で精神的・経済的独立性について概括的に表現されているということであります。

 次に、三は、職業的専門家としての注意義務について規定しているところであります。ここで「正当な注意」とは、同じ専門家ならば誰もが当然に払っているはずの注意を意味するとされており、この場合の「専門家」とは公認会計士のことを指すことは言うまでもありません。この注意義務についても、具体的に規定されているものはありませんが、さきに述べました紀律規則の前文には、「正当な注意をもって業務を行わなければならない」旨、明文化されております。

 次に、四は、監査人の守秘義務について規定しております。職業的専門家一般に課せられた共通の職業的義務であり、共通の職業倫理と言うことができます。この守秘義務については、公認会計士法第27条において明確に規定されております。

 続きまして、2ページ目にいっていただけますでしょうか。「第二 実施基準」であります。実施基準は、監査人が監査実施においてその指針となるものであり、正当な注意を監査業務に当てはめて規定したものであります。実施基準を受けて、より詳細に補足規定したものが監査実施準則であります。詳細な文言等の定義は、準則のところで簡単に紹介させていただきたいと思います。

 まず、実施基準の一は、平成3年の改訂で新たに基準に追加された規定であり、十分な監査証拠を入手することによって監査意見表明のための合理的な基礎が形成されるということを包括的に規定したものであります。これを受けて、日本公認会計士協会においては、監査基準委員会報告書として、第7号「十分な監査証拠」、第13号「会計上の見積りの監査」、第14号「専門家の業務の利用」、第15号「内部監査の整備及び実施状況の把握とその利用」を監査の実務の指針として公表しております。

 次に、二は、組織的監査について規定しております。これも平成3年の基準改訂の際に改訂されたものであります。監査業務に当たっては、適切な監査計画を設定し、組織的に監査を実施することを規定しております。ここで「組織的監査の実施」とは、監査人が一定の監査方針の下に監査業務を掌握管理して統一的に監査を実施することを言います。第2回目の審議会の折に、私の方から監査計画について御紹介させていただいた中で、「監査チームの編成」というところがありましたが、まさにこの監査チームの編成ということが組織的監査につながるものと思われます。これを受けまして日本公認会計士協会からは、第6号「監査計画」、第12号「監査の品質管理」を監査の実務の指針として公表しております。

 次に、三は、監査計画設定に当たっての要件について規定しております。ここで、「内部統制」というのは、監査基準委員会報告書第4号には、「適正な財務諸表を作成し、法規の遵守を図り、会社の資産を保全し、会社の事業活動を効率的に遂行する」ために「経営者が自ら設定するもの」とされ、具体的には不正・誤謬の発生を未然に防ぐような手続や組織編成、承認関係などを言います。これを受けて、監査基準委員会報告書として、第4号「内部統制」、第5号「監査上の危険性と重要性」、第6号「監査計画」、第9号「試査」、第15号「内部監査の整備及び実施状況の把握とその利用」を監査の実務の指針として公表しております。このうち第4号「内部統制」、第5号「監査上の危険性と重要性」、第6号「監査計画」の三つは、現在の監査の実務に当たってのコア・スタンダードというべきもので、リスクアプローチに関する実務上の指針を扱った報告書というものであります。

 ここで、先に監査実施準則にいきたいと思います。申し訳ございませんが、4ページ目を御覧ください。先ほどお話ししましたとおり、監査実施準則は、平成3年の改訂において大幅に規定が変わったところでございます。

 まず、実施準則の一。監査人に対し、財務諸表監査の実施に当たっては、通常実施すべき監査手続を実施しなければならないことを規定し、通常実施すべき監査手続がどういうものかを概括的に規定したものであります。通常実施すべき監査手続は、監査人が十分な証拠を入手するために、正当な注意をもって必要と判断して実施する監査手続であるということで、具体的には、その枠組みが実施準則二以下に規定されているということです。

 ここで「通常」という言葉が用いられておりますが、「一般的に」という意味ではなく、被監査会社の状況を踏まえた上で、十分な証拠を入手するために監査人であれば誰もが適用するであろうという意味での「通常」と解されております。この準則を受けまして、公認会計士協会からは、第7号「十分な監査証拠」、第13号「会計上の見積りの監査」、第14号「専門家の業務の利用」、第15号「内部監査の整備及び実施状況の把握とその利用」が公表されております。

 次に、実施準則の二。実施基準一を受けまして、十分な監査証拠と監査要点について規定しております。ここで「十分な監査証拠」とは、監査基準委員会報告書によれば、「内部統制の有効性を明らかにする検証手続の実施過程又は取引記録及び財務諸表項目の監査手続の実施過程で入手する監査証拠が、監査要点との適合性及び量的十分性を満たしていると監査人が判断した場合の当該監査証拠をいう」とされております。公認会計士協会からは、同様の報告書が公表されております。

 ここで「選択適用」という文言がございますけれども、この場合、何でもいいということではなく、監査要点との関係で一番証拠力が強いと判断される監査証拠を入手するための監査手続を選択するということで解されております。

 次に、実施準則の三。十分な監査証拠を入手するに当たって適用すべき監査手続を示したものです。ここで列挙されておりますものは、全て監査人が監査証拠を入手するに当たって適用する監査手続であり、勘定科目の重要性や危険性、性格を考慮し、監査人が必要と認めて適用するものであります。この中で「分析的手続」というものがございますが、これは財務データ相互間又は財務以外のデータ間の矛盾、又は異常な変動の有無を検討し、財務報告の合理性を確かめる手続のことを言います。この準則を受けまして、公認会計士協会からは、第1号「分析的手続」、第9号「試査」を公表しております。

 なお、「試査」という言葉がございますけれども、監査業務の中では、しばしば試査による手続というものが行われております。具体的に申し上げますと、内部統制の検証を実施する際に、検証対象となる対象項目の抽出を行う際、また、取引記録の検証の手続の際、さらには財務諸表項目、つまり残高の検証手続の際に抽出をするですとか、あるいは確認状の発送等々で「試査」というものが適用されております。

 次に、実施準則の四。実施基準二の前段の規定を受けまして、監査計画の設定について規定したものであります。ここで「企業の実情に適した監査計画」とは、監査実施に当たり、監査人が当該被監査会社について監査上の危険性を慎重に評定して、合理的な基礎を形成するに至る十分な監査証拠を入手できるように予め設定した監査計画のことをいい、「監査計画」とは、財務諸表の重要な虚偽記載を看過することなく、監査を組織的、効果的かつ効率的に実施するために監査の基本的な方針を策定し、適用すべき監査手続、その実施時期及び試査の範囲を決定することとされております。

 続きまして、5ページ目にいっていただきまして、実施準則の五です。実施基準三において、監査計画策定に当たっての諸要件について規定されたものを受けまして、監査実施において「リスクアプローチ」の指針を示したものです。実施基準三のところでもお話ししたとおりであります。監査計画の設定及び監査実施において、危険性を十分に考慮することを監査人に要求しております。ここで「監査上の危険」とは、「財務諸表に重要な虚偽記載が含まれているにもかかわらず、監査人がこれを発見できずに不適切な意見を表明する可能性をいう」とされております。繰り返しになりますが、監査基準委員会報告書の4号から6号のコア・スタンダードと言われるものがここに該当しております。

 ここで若干、この4号から6号の報告の内容について御紹介させていただきたいと思います。

 申し訳ございませんが、お手元の黒表紙の後ろから二つ目の仕切りの中に比較的コピーが厚い部分がございます。この中に監査基準委員会報告書の1号から17号までが綴り込まれていますが、その中に手書きでページを右肩に打っております。そこの8ページ目からが第4号の「内部統制」になっております。それから、13ページ目からが第5号の「監査上の危険性と重要性」になっております。それから、17ページ目からが第6号「監査計画」になっておりますので、この辺を見ていただきながら御紹介させていただきたいと思います。

 まず、第4号「内部統制」は平成6年に、第5号「監査上の危険性と重要性」は平成7年に、そして第6号「監査計画」は平成8年にそれぞれ公表されております。内容的に前後しているのは公表のタイミングによるもので、現在の実務においての基本的な考え方になるものであります。

 御説明の都合上、若干前後いたしますが、まず、第6号の「監査計画」について簡単に紹介させていただきたいと思います。申し訳ございませんが、17ページ目から御覧ください。まず、この第6号の「監査計画」は、財務諸表監査において効果的かつ効率的に監査を実施するため、監査業務の基本的な内容を立案する監査計画について、その立案の内容、立案に当たって考慮すべき事項など、監査人が監査計画立案に当たって考慮すべき指針を提供しております。この中で、考慮すべき内容の中には、被監査会社の内部統制の整備状況や、監査業務に当たっての危険性、リスクの評価というものがあり、これらについての指針を提供しているのが第4号及び第5号ということができます。

 この中の18ページ目を御覧いただきたいと思います。18ページ目の左側の真ん中辺から「監査の基本的な方針の立案」というところがございます。この中に、今申し上げました(1)として「リスクの関係」、2番目もそうですが「リスクの内容」、それから「内部統制の有効性の予備評価」というところがございます。この辺に従いまして監査計画を立案するということでございます。

 次に、第4号の「内部統制」ですが、申し訳ございませんが8ページ目になります。内部統制は、監査人が実施する内部統制の状況の把握とその有効性の評価に当たって実務上の指針を提供するものとされており、内部統制の構成や内部統制を認識するに当たっての手続、実施した結果についての評価等を規定しております。この中で、8ページ目のところの真ん中辺に「内部統制の目的」と、先ほど読み上げましたけれども、そこの内容がこちらの方で書かれております。

 それから、第5号「監査上の危険性と重要性」につきましては13ページになります。こちらでは監査業務上の危険性、すなわちリスクにつきまして、その定義や内容、考慮すべき点、結果についての評価に当たって考慮すべき点など、監査実務に当たってのリスクについて監査人に指針を提供しております。この13ページ目の右側のところに「固有の危険」、それから14ページ目の「内部統制上の危険」、「監査手続上の危険」というところがありますが、これがいわゆる「監査上の危険性」というふうに言われるものであります。これらが中心的な指針となり、個々の監査業務内容につきまして、その他の報告書がカバーしているような体系になっているとお考えいただければよろしいのかなというふうに思っております。

 次に、基準の方に戻りまして、実施準則の六。実施基準二を受けまして、監査人に対して組織的監査の対応を求め、併せて監査の品質管理徹底のため審査機能についても言及した規定であります。監査基準委員会報告書の第12号がこの準則に対応して公表されております。

 次に、実施準則の七。他の監査人の監査結果の利用について規定したものであります。何らかの理由により、監査範囲の全てについて監査を実施できない場合、監査人は自己が表明する監査意見の中に、他の監査人が実施した監査の結果を利用するかを検討しなければならないことが明記されております。監査基準委員会報告書第8号が、この準則に対応して公表されておるということであります。

 6ページ目にいっていただきまして、実施準則の八。監査人は、監査実施過程で作成しました記録や入手した資料等を整理・編集した監査調書を作成しなければならないことを規定しております。これをもとに合理的な基礎を形成し、監査意見表明を行わなければならないということであります。ここで「監査調書」とは、監査契約の締結から監査報告書の作成に至る過程において、監査人が入手した監査証拠その他の資料を記録・編集したものをいい、監査人が財務諸表監査に当たり、一般に公正妥当と認められる監査基準に準拠して通常実施すべき監査手続を実施したこと及び十分な監査証拠に基づいて財務諸表に対する監査意見を形成したことを立証するための資料として作成するものであります。財務諸表等の監査証明に関する省令第6条、また、監査基準委員会報告書第16号「監査調書」が公表されております。

 次に、実施準則の九。経営者確認書の入手について規定しております。監査基準の前文には、「財務諸表監査制度は、財務諸表の作成者とその監査人が協力して、真実かつ公正な財務諸表を利害関係者に提供することを本来の目的としているものである。したがって、両者は、もともと対立関係にあるのではなく、財務諸表に関する責任を分担しながら、相互に協力し合う関係にあるといわなければならない。かかる協力関係を示し、もって監査制度に対する社会的信頼性を一層高めていくために経営者による確認書を入手しなければならない」と述べられております。公認会計士協会からは、第3号「経営者による確認書」が公表されております。

 以上が実施準則です。

 大変申し訳ございません。最後の9ページ目のところに、監査基準委員会報告書の第3号の「経営者確認書」の中に付いております付録の部分を抜粋して添付させていただいておりますので、御参考までに御覧いただければと思います。

 申し訳ございませんが、3ページ目に戻っていただきまして、監査報告基準です。監査人の実施した被監査会社の監査の結果につきまして監査報告書が作成されますが、この監査報告書について概括的に規定し、この基準を受けまして、より詳細に補足規定したのが監査報告準則になります。

 まず、報告基準一は、監査結果につきまして、監査人は監査報告書を作成し、その報告書には、実施した監査の概要と財務諸表に対する意見を記載しなければならないということを規定しております。ここで実施した監査の概要というものが「範囲区分」と言われ、財務諸表に対する意見を「意見区分」というふうに言われております。

 次に、二ですが、財務諸表に対する意見の内容について規定しておるものでございます。ここで「キャッシュ・フロー」というふうに規定されておりますが、これは平成10年の改訂で追加されたものでありまして、今期からは連結キャッシュ・フロー計算書が財務諸表に含められまして、監査意見の対象となることから、報告基準の中に意見内容として明記されたものであります。

 次に、三は、監査意見の差控えについて規定したものであります。これは平成3年の改訂において新たに規定されたものでありますが、実は改訂以前から、監査報告準則においては財務諸表に対する意見の差控えという規定が規定されておりました。しかし、報告基準と報告準則の関係を体系的に整理するとともに、十分な監査証拠が入手できず、結果として合理的な基礎が形成できないような場合など、監査環境の著しい変化に対応するため、報告基準の中に明確に意見の差控えについて規定したものだというふうにされております。

 最後に、四。これも平成3年の基準改訂の際に新たに規定されたもので、特記事項について規定したものです。監査報告書上、利害関係者の判断を誤らせないようにするため、特に指摘することが必要と監査人が判断して記載した重要な事項ということから特記事項とされ、これは前回の審議会の折、友永委員から「最近の特記事項の記載一例」として御紹介があったものであります。公認会計士協会からは、第2号「特記事項」として指針が公表されておりますことは前回にも御紹介があったとおりでございます。

 次に、申し訳ございませんが7ページ目にいっていただけますでしょうか。監査報告準則です。

 報告準則の一ですけれども、報告基準一を踏襲しまして、監査報告書の基本構造を示したものであります。ここで「作成日付」とありますが、実務上は、商法監査の監査報告書の場合には、株主総会開催日の4週間前までに監査報告書の提出が義務付けられておるため、この法定期限前の日付が記載され、また、有価証券報告書に含まれる監査報告書の場合には、株主総会の開催日の日付が記載されておるというのが一般的であろうかというふうに思われます。

 報告準則の二。監査意見を形成する前提といたしまして、監査人が実施した監査の概要、すなわちどのような監査を実施したのかというものの概要を簡潔明瞭に記載することを要求する規定であります。

 8ページ目にいっていただきまして、報告準則三。これは財務諸表に対する意見の表明について規定したもので、監査報告書に監査意見をどのように記載するか、監査意見の表明の方式を規定するものとされております。

 この中で(三)の2に、前年と同一基準による会計方針が採用されているかどうかについての意見表明という規定がございます。一つの会計事象について二つ以上の会計処理が認められている場合、会社が採用する会計方針は毎期継続的に適用されなければならない、いわゆる継続性の原則について、被監査会社がそれを守っているかどうかということを意見表明することを規定したものであります。例えば、被監査会社が採用する会計方針について、一般に認められる会計基準から他の一般に認められる会計基準へ変更が行われた場合には、その変更の理由が妥当なものであれば、2号限定付きの適正意見ということで実務上は対応されております。

 一方、昨年来から会計基準自体がかなり大きく変化してきておりまして、新たに会計基準が設定されたため従来のように選択の余地がなくなってしまった場合ですとか、あるいは従来の会計基準としては規定が明文化されておらず、専ら税務の基準で処理されていたようなものにつきまして新たに会計基準が設定された、あるいは、税法が改正されたような場合に、この会計処理基準ないし税務基準というものが実務上適用されるケースが多く、前期と異なる会計処理基準を採用するケースがございます。しかし、このようなものにつきましては、現状は影響額等を追加情報という形で注記するなどして対応されておりまして、監査上の扱いは会計方針の変更とはせず、監査報告書上の文言は「前期と同一の基準を採用」というような文言になっておるというところであります。このような会計方針の変更に関する一連の内容につきましては、アメリカなどのそれとちょっと取扱いが異なっておりまして、今後検討する余地があるのではないかなというふうに個人的には思っております。

 報告準則の四。報告基準三を受けまして、監査意見の表明の差控えについて規定しております。先ほどもお話ししましたとおり、報告基準にこの意見差控えの規定を明記したのであり、この準則は改訂前から規定されたものであります。

 最後に、報告準則の五。報告基準四を受けまして、特記事項の記載について規定しております。ここで「重要な偶発事象、後発事象等」とされておりますが、前回までの審議会の中でも御発言があったものと思われますが、この特記事項についての範囲、すなわち未確定事項の範囲につきまして、これをどう取り扱うかというところが今議論になっておりますゴーイング・コンサーンにも関わってくるのかなというところの内容でございます。

 なお、現状の実務の対応ということに関しましては、先ほど申し上げましたとおり、前回友永委員から御紹介があったとおりでございます。

 最後に、若干私の私見を述べさせていただきたいと思います。

 今回このような形で発表させていただいたわけですけれども、お聞きいただいて分かりますとおり、説明の都合上、順序が非常に前後しておるんですが、監査の実務と流れということから考えましても、監査実務の流れと必ずしもマッチしていないというところであります。特に実施基準のところで言いますと、二の監査計画の内容というのが本来、監査実務ではスタートに当たりまして、次に三が来まして、最後に合理的な基礎を形成するというような順番になるのが監査実務の流れではないかなというような気がいたします。アメリカのSASやISAなどは、監査の実務の流れに即するような形で体系的に整備されており、これを機会に見直していく必要もあるのではないかなというように個人的な気がいたしました。

 次に、語句の説明や趣旨というものにつきまして、私の方から勝手な解釈かもしれませんけれども御説明させていただきましたが、監査基準や準則の中には、必ずしもそのような語句の説明や趣旨というものは読んだだけでは理解できないというところがございます。監査というものを受ける被監査会社ですとか、あるいは一般の投資家に「監査とは何ぞや」ということを理解していただくということにつきましては、もう少しこの点を解決する必要があるのではないかなというように思います。ちなみに、ISAなどでは、基準に相当する部分と説明や趣旨などを一つの体系の中に織り込んでおりまして、基準の部分をゴシック表示等をしており、分かりやすくしておるということが実際上行われております。では、必ずしもそのブラックレタリングがいいかということではないんですけれども、特に一般の方に監査というものを理解していただくためには、やはりそのような基準というものを目指すべきではないのかなというように個人的には思っております。

 さらに、見てお分かりのように、私の説明の中には「ゴーイング・コンサーン」という言葉はどこにも出てこなかったと思われます。これについても、どういう形かは分かりませんけれども、やはり何らかの形で明文化していくという方向で検討が必要ではないのかなというように個人的には思っております。

 以上で、私からの発表を終わらせていただきます。

○脇田部会長 ありがとうございました。

 それでは、ここで一度区切りまして、ただいまの高山委員の御報告につきまして御質問などを頂戴してまいりたいと思います。どうぞ御発言を御自由にお願いいたしますが、いかがでございましょうか。

 山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 まず大きな枠の問題で、高山委員あるいは会計士協会の友永委員でもいいんですけれども、ちょっと実務家サイドから御意見を伺いたいんです。

 確かに監査基準と、それから準則という体系は、ある意味で大枠を決めて、細かいところまで決めていないんです。今、高山委員が最後の御意見ということでお話しになったところなんですけれども、実際の実務的な対応からしますと、基準はもちろんですけれども、準則のレベルでもやはり新しい監査上の問題に対して対応できない。あるいは監査の技術の流れにうまく乗っかっていかない。それから、これは今の平成3年の基準設定に当たって若干私も関わったこともありまして、反省材料かも分かりませんけれども、確かに定義らしいものがないものがあって、それが非常に実務家サイドからすると、協会の方での細かい指針等を作るときに幾つか議論が出てきたり、そうしますね。

 その問題を踏まえた上で御意見を伺いたいんですけれども、今の基準、準則という枠組みそのものが、これから先もいいのかどうかという、もしかしたら高山委員には御返事がなかなか難しいかもわかりませんけれども、実務家サイドから、あるいは協会で基準設定等、業務指針等を作る立場の方からでも結構なんですけれども、今の体系についてどのようにお考えか、そのことをお伺いしたいんですけれども。

○脇田部会長 大変大きな御指摘でございますけれども、まず高山委員から御発言いただき、そしてまた、今御指摘のように、協会において監査基準の問題について担当なさっている友永員にも御参加いただければありがたいと思います。

 では、まず高山委員からお願いいたします。

○高山委員 私の個人的な意見というところでお聞きいただければよろしいかと思うんですが、今回こういう形で発表させていただく中で、いろいろ調べたりとか、自分なりに考えたりとかということがあったんですが、やはり体系としては、監査の実務の流れに沿った形での体系というものが、実務サイドからすると分かりやすいのではないかなという気がいたします。それから、実際の実務というものは生きておるものですので、基準の改訂ですとか、あるいは中身の内容の見直しというものも実務に対応する形で、適宜に見直しというものが行われるような体制ということが望まれるのではないかなというように思います。

 今回検討させていただいたものも、ベースは平成3年ということで、実際の改訂からもう既に7年が経過しておるということからいたしましても、種々の問題等が発生しているのはそれ以降のことですし、実務ということからしますと、その辺の機動的な見直しができるようなものというのが望まれるのではないかなというように、私個人的には思います。

○脇田部会長 今、山浦委員からの御質問で、もう一つは、基準と準則という枠組みについても御質問があったんですが、その点についてはいかがでしょうか。

○高山委員 これに関しましては、私自身、どういうふうにするのがいいのかというのは、正直言いまして考えつかないところであります。やはりどういう形がいいのかというところになりますと、今の形でも分からないではないですけれども、かといって、ではどうすればもっと分かりやすくなるかとなると、代替的な案というのは、正直申し上げてちょっとこの場では発言できません。申し訳ありません。

○脇田部会長 どうもありがとうございました。

 山浦委員、御発言いただけますか。

○山浦委員 後段の方の質問につきましては、実は実務についていらっしゃる会計士の幾人かから、今の準則というのは、むしろないほうがいいのじゃないかと。もっと大枠の基準レベルでとどめておいて、あとは実務指針等を会計士協会等で設定して臨機応変に、まさにおっしゃった迅速性というのでしょうか、時代に合わせた見直しを適時やれるように、そういった体制の方がいいのではないかという御意見を伺っているものですから、その点がちょっと気になっていたものですから、それについていかがかなと思ってお伺いしたんです。

○脇田部会長 それでは、この点について友永委員、もし御発言いただければありがたいと思います。

○友永委員 今の監査基準がありまして、それから実施準則があって、実務指針があるという体系なんですが、SASやISAは、この実務指針も含めての監査、監査基準という考えだろうと思います。私も1年半、基準委員会を担当しておりますけれども、特にSASを巡る監査の実務慣行の動きといいますか、これはSECの非常に強い働きかけがあると聞きますけれども、改訂が非常にスピーディーであります。それとISAの方も歩調を合わせてきているというような感じがいたしますので、そこら辺で今回、「経営者による確認書」第3号の見直しを実はやっておりますけれども、これは先ほど山浦委員のおっしゃったように、では、どういうことで監査基準ができていたのか、その当時の実務指針がどういう状況で作られたのかということと、それから約7年たったこの間の監査慣行の変化といいますか、それは日本における監査慣行だけでなく、海外におけるいろいろな状況も加わってくると思うんですが、そういったものをどうやって取り入れてやっていくかということで、今回は私は、いろいろと御意見を伺った中で、監査基準の枠内にとどめた改訂をしているつもりでございますけれども、そういった面で多少の問題といいますか、それもございます。

 それから、監査基準に記載のない事項というのはかなりたくさん出てきておりまして、それは向こうの基準で言えば、監査基準の範囲でいろいろな実務指針が出てきておりますけれども、それをどこまで基準委員会報告として作っていけばいいのかといったところの問題もございまして、山浦委員のおっしゃるように、非常に大きな監査基準だけがあって、実務指針は一定の合意の下にということはございますけれども、協会が作成するというのも、スピーディーに実務指針を作っていくという上から言えば、非常にそういった方向も我々としてはありがたい方向かなというふうに思っております。

○脇田部会長 ありがとうございました。

 非常に大きな議論でございますけれども、山浦先生、御発言いただけますか。

○山浦委員 私だけ質問するようで、時間を取って申し訳ないんですけれども、平成3年に実施準則の改訂をするに当たりまして、それまで実は、手続のいわば羅列というか、かなり手続一覧表的な準則であったわけですね。事実上それが監査の技術的な趨勢に対してうまく適合していないということで、これを改めて今あるような平成3年の改訂に至ったわけですね。そのときの幾つかの議論の中で、この点だけちょっともう一度お伺いしたいんですけれども、この監査基準というのが、どうもやっぱり平成3年の改訂の段階では、監査に対して実務界・産業界で今みたいなシビアな議論がなされていない時期でありまして、どうもうまく理解されないと。そこで会計士側からしても、こういった基準あるいは準則で何らかの指針を出してほしいと。例えば経営者確認書なんかもその典型なんですけれども、そういう基準・準則というのは、ある意味では一種のリーダーシップ的な役割。水先案内というか、基準・準則を作ることによって、会計士と監査を受ける側との間の橋渡しをしてあげるという、ちょっと言い方が変かもわかりませんけれども、そういう役割も十分意識していたんです。

 これについて、もうそういった時代ではないというような、ちょっと極端な話かもわかりませんけれども、そういう御意見も伺っているんです。これについてちょっとどなたかお答えいただければと思うんですけれども。

○脇田部会長 では、どうぞ、若杉会長よろしくお願いします。

○若杉会長 平成3年の改訂のときは、いろいろな狙いがあったと思いますけれども、その一つに、それまでの監査基準というのは、今、山浦委員もおっしゃいましたように、非常に準則などで細かいことがたくさん書かれていて、監査論の教科書みたいだったんです。これは1945年の第二次大戦の終わった後、会計の近代化の一環として監査制度を組み立てていくという趣旨から、最初はとにかく監査になれておりませんでしたものですから、監査の教科書みたいな非常に詳しい基準・準則、特に準則の方が詳しいものが作られました。それでずっとやってきましたけれども、もう平成3年段階では一般にそういう知識も普及したことだし、監査も段階的にやってきて、その当時の平成3年なんかは、全ての項目についての監査が行われ、監査制度そのものがほぼ完成した状況にあるから、基準そのものはもう少し簡潔なものにして、あと細かい具体的な点は実務指針などに任せるといういき方になった方がいいのではないかというのが、平成3年における大きな改正の趣旨の一つなんですね。

 それに対して、その後いろいろな意見がありまして、監査が非常に今まで詳しく実施基準などいろいろな規定が設けられていたにもかかわらず、簡単にしてしまったということは、監査を骨抜きにしたのではないかという見方が出てまいりましたけれども、私など、そういうような意見とか批判を聞くたびに、そうではなくて、先ほどお話ししましたように、監査も大人になったからこのように簡潔なものになったんだというようなことを言っておりますけれども、世間では意外とそういう「監査を骨抜きにしたのじゃないか」という見方もありますね。これは特に商法サイドの方からそんな批判をよく聞いたことがあります。当時の状況、私も一メンバーでしたから、そんなことをよく覚えておりますので、参考に申し上げました。

 以上です。

○脇田部会長 ありがとうございました。

 それでは、まだこの後にも御質問の時間を取っておりますので、内藤委員の御報告を受けまして、併せてまた御質疑をお願いしたいと思います。

 内藤委員には、特に最近、保証業務と申しますか、公認会計士の業務の保証という観点から見直しが行われておりますし、実務への対応ということから、いろいろな保証水準というような言葉も使われております。これに絡みまして、監査人の責任との関わりで御報告をお願いいたすことにしております。どうぞよろしくお願いいたします。

○内藤委員 それでは、「監査責任のあり方と監査による保証の意味について」をテーマに約30分の間、御報告をさせていただきます。

 本日配付の資料2という資料と、それから、右肩に(参考)と付いております「FORM 10−Q」の資料、この二つを使って御説明をしたいと思います。

 まず初めに、報告の趣旨でございますが、監査基準に反映すべき論点を探求するという観点から、これから申し上げます三つの事柄について本日は報告をさせていただこうと思っております。

 まず第1に、監査責任のあり方に関しまして、いわゆる二重責任の原則を基準として明文化するのかどうか。あるいは、現行の証券取引法に基づく財務諸表監査では、財務諸表の適正性について意見表明をしていますけれども、この適正性の意味内容を基準として明文化するのかどうか。まず、この2点です。次に、現行制度のもとでは監査人の責任となっていませんゴーイング・コンサーン問題の開示に関する監査責任、及び経営者の不正ないし違法行為の発見責任。以上二つの責任を基準として取り込むのかどうかという論点。都合四つの論点を、まず一つ目の事柄として指摘したいと思います。

 第2に、中間監査が実施されようとしておりますし、また、公認会計士の業務としまして保証業務、国際会計士連盟の方では「アシュアランス・エンゲージメント」あるいは「アシュアランス・サービス・エンゲージメント」というふうに呼ばれておりますけれども、この新たな業務が実務に登場し、かつ、その急速な発展が見込まれますから、これらの業務によって担保される情報の信頼性と、伝統的な財務諸表監査によって担保される情報の信頼性との間に差異がないのかどうか。差異があるとすれば、その差別化をどのように監査基準に反映させるべきかという論点を指摘したいと思います。つまり、監査業務による情報の信頼性に対する保証水準と、監査以外の保証業務によるその水準とが、どのような要因によって異なるのか。そういう問題点について、二つ目の事柄として説明をさせていただきます。

 そして三つ目、最後になりますが、以上のような論点を踏まえました上で、監査基準の改訂に関連すると思われる事柄を整理して、私の報告の締めくくりにさせていただきます。

 それでは、まず第1番目の課題についてでございますが、報告資料の1ページ目の「1.監査責任のあり方」を御覧ください。「会計監査の目的と責任の意味」というところなんですが、会計監査の目的は、「組織体が公表する会計情報が信頼できることを検証し、保証すること」。これが証券取引法に基づく制度ですと、「財務諸表の適正性を検証し証明する」ということになりますし、商法に基づく会計監査の場合ですと、「計算書類の適合性を検証し報告する」というふうに読みかえることができると思います。そうしますと、いずれにしましても監査人の責任、ここでの意味は法的な責任ということではなくて、「責務」という意味で使っておりますが、監査対象と

なります会計情報の信頼性に関係している。これは間違いがないことだと思います。

 そうしますと、この会計情報の信頼性ということに関連して、その場合に、ディスクロージャーに対する二つの基本的な考え方があるのではないか。一つ目は、会計と監査とはそれぞれ別個独立した行為であるということを基本的な考え方とする立場と、会計と監査とはそれぞれ相互補完する行為であって、両者相まってディスクロージャーに寄与するんだと、そういうことを基本とする立場。この二つがあるのではないかと思います。

 マル1の立場に基づきますと、二重責任の原則が厳格に適用されなければならないことになります。ただし、その場合にあっても、監査の適用範囲やその内容に関する説明が会計情報にかかわるようなケースまで、二重責任の原則によって排除されるわけではないことだけはあるのではないでしょうか。逆に後者の立場によりますと、二重責任の原則は一つの前提条件であり、場合によっては適用しないことが認められることになるのではないか。それは、ディスクロージャーの究極目標は、組織体の実態を真実に描写する会計情報の提供でありますから、会計情報の作成とその信頼性の保証というのは車の両輪の役割を果たすわけですから、この場合に二重責任の原則を厳格に適用するということは必ずしも必要でなくなってくるということが言えると思います。以上のように考えますと、二重責任の原則に対する解釈次第によっては、監査責任の内容が変化する可能性があることが問題となってまいります。

 このことは、次のことをどのように考えるのかということによって、さらに新たな問題が出てまいります。つまり、経営者は財務諸表の作成責任を負う、監査人は当該財務諸表の監査責任を負うという場合に、監査責任には、財務諸表の作成上不可避な会計的判断に対する良否ないし適否の評価を行う責任も含まれているということです。この観点では、監査責任は作成責任と全く別次元のものであるという主張は根拠を持たないということが言えます。つまり、監査責任には、財務諸表作成の評価を行う責任が含まれているということになります。このように考えてまいりますと、二重責任の原則を監査基準として明文化したとしましても、実質的な意味において情報作成責任と監査責任とを明確に区別することが困難であるということになるのではないでしょうか。それは情報の利用者の立場に立って考えれば、そういうふうに言うことができるのではないかと読むものです。

 それよりもむしろ、監査人は財務諸表作成上の会計的判断に対する評価の責任を負うことを明文化すべきではないか。現行基準にはこのような規定がないわけです。そういう点がまずあるのではないかということなんです。

 そうしますと、さらにもう少し具体的に、では具体的な責任の範囲というのはどういうものか。それについて、報告資料の「2.責任の範囲と責任を負うべき者」のところにまとめてございますので、そちらを見ていただきたいんです。この表では、責任の範囲として五つの事柄を上げています。

 まず一つ目、会計情報が一般に公正妥当と認められる会計原則・基準に準拠していること。この責任を負うのは、組織体の代表者としての経営者でありますし、かつ、監査人としての公認会計士であります。二つ目の責任の範囲としまして、会計情報が組織体の経済実態を真実に描写していること。これに対して責任を負うのは経営者であり、監査人であります。三つ目の事柄、会計情報が信頼できること。これに対して責任を負うべき者は、経営者ではなくて監査人であります。この三つの責任の範囲につきましては、これは現行制度下での責任の範囲になろうかと思います。

 現行制度下にはまだ入っていない責任として、4番目に、会計情報が継続企業を前提に作成されていること。これは責任を負うべき者として経営者及び監査人になってくるであろう。そして最後に五つ目なんですが、組織体には重要な不正及び違法行為がないこと。これについて責任を負うべきなのは経営者でありますし、監査人は、会計に関する部分についてその責任が出てくるのではないか、というふうにまとめたわけです。

 このように監査人の実質的な責任の意味を考えてまいりますと、現行制度では、今申し上げました1番目と3番目の責任の範囲が前提になっていると思います。2番目の責任につきましては、監査人の判断を基準として明文化する必要が出てくるのではないでしょうか。そうすれば、先ほど指摘いたしました実質的な会計的判断の評価責任が、2の表現の中に包摂されてくることになるのではないかというふうに考えます。

 2の監査責任、これは広く考えていますけれども、私の知る限りでは、イギリス、ドイツの監査基準では、これは法律の規定を含めまして明文の規定が置かれていますし、また、国際監査基準あるいはアメリカの基準では、解釈によるのですが、この考え方が採用されているということができると思います。

 なお、4番目と5番目のこれから議論しなければならない責任の点については、理念的には責任の範囲に含められるべきであるということは、恐らく異議なく認められるのではないかと思うんですが、問題なのは、実務としていかにこのような責任に関する事柄を検証し、そして報告するのかという方法論の問題になろうかと思います。

 非常に簡潔なんですが、以上の監査責任のあり方について、それでは監査基準への反映の要否について、私の報告での結論を三つ申し上げたいと思います。

 まず一つ目は、二重責任の原則を監査基準として明文化することは、新たな期待ギャップを生じさせる可能性があるということ。そして、監査人の立場に立てば、専門家としての判断を硬直化させることにつながる可能性が認められるのではないか。その意味では、これを明文化する必要はないのではないかというふうに思います。しかし、二重責任の原則というのは、これはやはり原則でございますので、これを監査基準に明文化するとしますと、その責任の範囲を十分分かりやすく説明するということが基準の中に盛り込まれないと、期待ギャップにつながってしまうというふうに考えます。これがまず一つ目です。

 それから、二つ目に、二重責任の原則を明文化するよりも、むしろ監査人の実質的な専門的判断を要求する規定を監査基準として明文化するべきではないかということです。一般に認められた会計原則・基準に準拠しているかどうかだけではなくて、その組織体の経済実態が適正に表示されているかどうか、これに関する監査人の判断を求める規定が必要ではないか。それが二つ目の結論です。

 そして、三つ目の結論でございますが、ゴーイング・コンサーン問題の開示と、経営者不正の発見に関する監査人の責任について、実務的な対応可能性を前提条件として監査基準に取り込む可能性を検討すべきである。そういうふうに考えております。

 以上が、私の報告のまず一つ目の事柄でございます。

 それでは、続きまして、二つ目の論点に移りたいと思います。その論点は、財務諸表監査、中間監査、あるいは監査類似業務が実施される場合に、これらの業務による保証水準の差別化の必要性の有無とその具体化の問題であります。今申し上げました監査類似業務というのは、保証業務、証明業務、レビュー業務、調製業務、あるいは合意された手続業務など、主にアメリカで盛んに行われている様々な監査に類似した業務のことを言っています。本報告では、この監査類似業務の中で、その代表格にありますレビュー業務を取り上げまして、検討を進めてまいりたいと思います。

 資料の2ページ目を見ていただきたいんですが、まず、レビュー業務とは何かという定義に関してでございますが、その定義を見る場合に、アメリカのレビューに関する基準について、五つの基準を指摘することができるのではないかというふうに思うわけです。

 一つ目は、公開組織体の中間財務諸表に対するレビューに関して、SAS71号が定めております。これは中間財務情報に対するレビューに関して規定があるわけですが、ただし、中間財務情報、四半期財務情報に対してレビューが強制されているわけではありません。そのレビューを行う場合にこの基準が適用されます。なお、中間財務情報が単独で開示されるケースであっても、監査済みの財務諸表に補足財務諸表として添付される場合であっても、いずれもこのSAS71号が適用されます。

 そして、次の2番目から4番目までの基準でございますが、これは伝統的な財務諸表以外の情報に対してレビュー業務を行う場合に、アテステーション・スタンダーズと呼ばれる証明基準によってその業務が規定されます。これは、もともと伝統的な財務諸表監査以外に、何らかの情報の表示に対して積極的な意見表明を行うことについて職業会計士の要求がございまして、それに応えるために設定された基準がこのアテステーション・スタンダーズです。それには、その基本を定めています2番目の基準と、見積財務情報に対するレビューを決めています基準と、経営者による討議と分析に対するレビューに関する基準と、三つが対象になるかと思います。

 そして、5番目の基準なんですが、これは非公開組織体の未監査情報に対するレビューを定めておりまして、これはアカウンティング(会計)とレビュー・サービスの基準のための意見書という形で公表されているものです。

 以上五つの基準のうち、レビューの定義を規定していますのは、5番目の通常「SSARS」と略称しますが、ここに定義がございます。この定義に関しまして、他の四つの基準との間には矛盾はございませんので、この5番目のSSARSによる基準を掲げてきているのが、上から二つ目の丸印のところでございます。「財務諸表のレビューとは、当該財務諸表が一般に認められた会計原則あるいは適用可能であるならば他の包括的な会計基準に準拠するためにとられるべき、いかなる重要な修正もないという限定的な保証を表明するための合理的な基礎を会計士に提供する質問及び分析的手続を実施することである。」というふうに定義されております。この「限定的な保証を表明する」ということと、それから、「質問及び分析的手続」だけによってこれを行うというところがそのポイントかと思います。限定的な保証の対になる概念が積極的な保証。すなわち財務諸表監査による合理的な水準の保証。ただし、絶対的な保証ではありませんが、合理的な水準の保証という概念になります。

 次に、三つ目の丸印のところですが、レビューの目的というものにつきまして、よく比較される「調製」と呼ばれる業務と、それから財務諸表監査と、それぞれ異なりますということが述べられておりまして、特に財務諸表監査は、財務諸表全体に対する意見の表明のための合理的な基礎を提供しますが、レビューは、そのような意見表明のための基礎を提供しないものである。ここにその差別化がなされているわけです。

 それで、このレビューに関しまして、具体的にどのようなレビューの報告書があるのかということの実例を持ってまいりました。これはたまたま2月に私の研究室に届いた「FORM 10−Q」のレポート、御参考の方に付けているものの中に、その参考資料の中ほどちょうど6ページ目に、「独立監査人によるレビュー報告書」というものが添付されてございます。これを全訳してまいったのが、報告資料3ページの全訳の部分でございます。このレビュー報告書は四つのパラグラフからなっておりまして、一つ目のパラグラフは、レビューの対象となったものに関する記述がございます。なお、ここの最終行にございますように、「これらの要約連結財務諸表は、当該会社の経営者の責任によるものである」。これは二重責任の原則に当たると思いますが、これを明記されております。

 それから、二つ目のパラグラフは、レビューの手続としてどういう手続をとったのかに関する説明でございますが、それに加えて、下から2行目の後ろの方になりますけれども、「一般に認められた監査基準に従って行われる監査の範囲よりも、レビューの範囲は、実質的に狭い。したがって、我々はそのような意見を表明しない。」と、こういう注意書きが付けられております。

 そして、上から三つ目のパラグラフでございますが、ここは結果の表明区分になっておりまして、「我々のレビューにもとづけば、我々は、上記の要約連結財務諸表について、それらを一般に認められた会計原則に一致させるために行われるべき、どのような重要な修正にも気付かなかった。」こういう結論が述べられております。

 SASの71号では、この三つのパラグラフを標準形式のレビュー報告書として規定しているわけですが、このKPMGのレビュー報告書では、さらに4番目のパラグラフの最後に「我々の意見では、」というところがございますが、「添付の1999年3月31日付要約連結財務諸表に提示された情報は、すべての重要な点において、それが導き出された当該連結貸借対照表との関連において適正に表示されている。」という文言が付けられておりまして、この「FORM 10−Q」による情報内容全てについて問題がなかなかということを追加して説明している点でございます。

 それでは、次に4ページ目にまいりまして、この監査と今後拡大が予想されるレビュー業務と、なぜ保証の水準が異なってくるのか。それを見るために、五つの事項について要約整理してきたのが4ページ目の表なんでございますが、この表では、「目的/定義」、それから「手続」、「結果の報告」、「保証の表明の有無/内容」、そして「保証の程度の差を生じる原因分析」、この五つの事項について比較できるように作ってまいりました。

 手続のところを見ていただきますと、財務諸表監査では統制テスト、実証性テスト、分析的手続というように、通常実施される手続全てが必要になってくるわけですが、レビューでは、質問と分析的手続に限られています。大切なのは、これを基準上、二つに限定するということを明文化していることが重要ではないかというふうに思います。

 結果の報告は、財務諸表監査では監査報告書で意見表明がなされまして、これは積極的な保証をするんだと。つまりその積極的な保証というのは、財務諸表全体の信頼性について高水準の保証を与えている。そういう意味でございます。それに対してレビューの場合には、レビュー報告書において限定的な保証、これを「消極的保証」というふうに呼ぶ場合がありますが、情報に対して中程度の保証を行うんだということになっているわけです。

 積極的な保証なのか、消極的な保証なのか、これを区別するところはどこから生じているかといいますと、原因分析のところに記載してございますように、財務諸表監査の場合には、組織体の内部統制に対してそれを理解し、そしてその内部統制リスクを評価する。その上で、通常実施される監査手続により確証的証拠を入手するという手続が行われるのに対して、レビューではこのような手続がない。ただし、中間財務情報のレビューの場合には、内部統制に関する質問に限っては手続が追加されますが、しかし、監査とは内部統制に対する手続もかなりの相違がある。すなわち、監査では明らかとなるような重要な事項全てを会計士が知覚するという保証をレビューによる手続は提供していないから保証が中程度になると、こういう区別になっているわけでございます。

 さて、今回の報告に当たりまして、なぜアメリカでレビュー業務が盛んに行われているのか。日本ではこれからだということなんですが、なぜそうなっているのかということについて文献を少し当たってみたんですが、なかなかそれに関するぴったりする御説明がなかったわけです。ただ、今委員会報告書を見ますと、これは監査業務に関する説明でございますが、監査業務に対する需要が自由市場という基盤の上で生み出されて、それを連邦証券諸法が当時において最善と考えられていた監査実務に対して法的な指示を与えたということがございますので、レビュー業務も同じように、その業務に対する需要が広範にあって、それを基準としてまとめてきたというのがアメリカでの対応でなかったかというふうに思うわけです。これは余談になりますが。

 では、以上検討してきましたレビュー業務に関しまして、その財務情報の範囲や種類とその保証内容について考えてきたわけですが、結論的に、それでは、もしレビュー業務が我が国でも盛んに行われるようになったときに、その保証水準に関する規定を監査基準として設定する必要があるのか、ないのか。これは私は、ないのではないかという結論です。もし保証水準に関する規定を監査基準として盛り込むとしても、逆に監査の限界、こういうところに限界があるんですよということを明示しなければ、これが正しく理解されないのではないか。そんなふうに考えました。

 それから、監査類似業務に関して、様々基準の設定が必要になってくると思うんですが、保証水準に関する限り、財務諸表監査が提供する保証水準と比較して異なる保証水準が適用されているということを、監査類似業務に関する基準、すなわち、例えばレビュー業務の基準の中で明文化しておけば事が足りるのではないか、そんなふうに思うわけです。

 なぜこういう結論を申し上げるかと申しますと、監査業務と監査類似業務との差別化が今後我が国にも必要となってくるということは間違いがないと思うんです。この場合に、監査という大枠で括るということではなくて、伝統的な財務諸表に対する監査、財務諸表以外の財務情報に対する証明あるいはレビューという分類法が合理的で、情報利用者にとっても理解可能性が高いというふうに考えるからです。

 ただし、このように考えてくると、中間監査に関する保証水準に関して、中間監査報告基準において何らかの差別化に関する規定が必要になってくるのではないかというふうにも考えます。中間監査基準の設定の趣旨のところでは、中間財務諸表に係る投資者の判断を損なわない程度の信頼性の基礎に関する保証を行う旨が述べられているんですけれども、しかし、それは報告基準になりますと、有用性を検証するんだという表現に変わっておりまして、財務諸表監査による保証水準との差別化の表現としては抽象的ではないか。そこに問題があるように思います。

 そこで、それではちょっと保証水準と申し上げますと、ややこしいといいますか、複雑な要素がたくさんございますので、監査の保証水準を巡る議論の中でよく引用される図をレジュメの5ページ目に示してございますので、そちらを見ていただきたいと思います。監査業務及びレビュー業務による保証水準に関しまして、保証の段階として、「絶対的な保証」から「保証なし」の段階までに様々な業務がどこに位置づけられるのかという図になっているわけでございます。

 この図から、明示的ではないんですけれども、それでは、こういう「保証なし」から「絶対的な保証」までの範囲にそれぞれ各業務が位置づけられているわけでございますが、その差別化をしている、保証水準を決定する要因は何ということについて見てまいりますと、通常、実施する監査手続の種類と範囲が異なるので保証水準が異なってくるという説明が、アメリカの基準ではそうですし、国際監査基準でもそうなっているわけでございます。ただ、よく考えてみますと、実施する監査手続の種類と範囲というのは、何もそれを変えたからそうなったというわけではなくて、もともと監査の、あるいはレビューの対象となっている財務情報の属性がそうだから手続が異なってきているのではないか。属性が異なるから検証すべき命題の内容も変わってくる。従って、手続も変わり、そして保証水準に差別化が生じているのではないかというふうに私は考えております。

 そうしますと、報告資料5ページの下から二つ目の丸印のところに書いてございますように、マル1からマル3までの三つの要因が考慮されるべきではないか。この三つの要因と保証水準との関係を明らかにした上で、近い将来において財務諸表監査、中間監査、監査類似業務が実施される場合に、これらの業務による保証水準の差別化を監査基準あるいは該当する基準でしなければならないということになるのではないか、そんなふうに考えます。

 私に与えられた時間は非常に少のうなってございますが、監査基準の改訂論点になるのではと思われる諸点につきまして、資料の6ページ目の IV にまとめてございますので、そちらを参照いただくことにさせていただきたく思います。

 論点を五つの事項、すなわち「体系・フレームワークに関する論点」、「ゴーイング・コンサーン問題に関する論点」、「監査責任の範囲に関する論点」、「監査による保証に関する論点」、そして「監査結果の伝達に関する論点」、五つに整理しております。

 まず、1番目と2番目の問題につきましては、先ほど高山委員からも御指摘がありましたが、監査基準の体系・フレームワークに関する論点として、基準と準則においてどういうものを規定するのかという位置づけを、もう一度整理すべき事柄が残っているのではないか。それは先ほど山浦委員からの御指摘がありました問題とも関連していると思います。

 それから、基準自体の性格。これも先ほどお話が出たと思いますが、監査基準に、監査に関する知識を広めるという意味の啓蒙的な意味合いを含めるのか。あるいはそうではなくて、専門家の監査の実務において基準たるべきもののような高度な内容にするのか。この性格付けをどうするのかということは、やはり引き続き議論が必要だと思います。

 さらに、その性格にもよるんですけれども、理解可能性を高めるという点で、現在のは極めて簡潔で法律規定のような書き方になっているわけですが、これに対して、もっと説明を必要とする点があるのではないか。そういうような論点があろうかと思います。

 それから、二つ目のゴーイング・コンサーン問題に関する論点につきましては、企業の不確実性に関する情報、これを「リスク情報」と言いますと、その開示基準をどうするかということを前提としました上で、ゴーイング・コンサーン問題について、この開示をどうするか、そして、監査の対応をどうするかということが議論されなければなりませんでしょうし、監査意見への反映をしたとしても、それに加えて、監査人が独自にその判断結果を情報として出すのかどうか。この議論が必要になってくると思います。

 それから、3番目、4番目、5番目の問題は、本日御報告申し上げた内容に関わる点なので重複するんですけれども、二重責任の原則を明文化するかどうかの問題。それから、会計原則に準拠するというときの意味、あるいは適正性の意味内容をもう少しはっきりと書くべきではないか。そして、さらに実質的な判断。「会計上の見積りに対する判断」と書いてございますが、監査人の方々が財務諸表作成上の種々の会計的な判断に対する実質的な判断を行っている、この責任に関する基準が必要ではないかということでございます。

 それから、4番目の監査による保証に関する論点につきましては、今申し上げた点で足りるかと思います。

 それから、5番目の監査結果の伝達に関する論点については、3番目の問題とも関わってくるわけですが、会計原則準拠性の判断結果に加えて、総合的な適正性の判断結果を表明する。あるいは財務諸表と他の有価証券報告書情報の記載との整合性に関する意見表明、さらには有価証券報告書情報の有用性に対する意見表明、こういったような監査の結果についての意見の伝達の仕方について、さらに工夫するべき要因があるのではないか。

 それから、ゴーイング・コンサーン問題と特にこの特記事項とは関連していると思うんですけれども、この特記事項が、バスケット条項のように何でもかんでも入ってくるというのはまずいわけですし、ゴーイング・コンサーンの問題、この開示の問題を監査意見に反映されたとしますと、この特記事項のあり方というのは、ではどんなような内容を出すのか。こういうことも議論の対象になってくるのではないかというふうに考えております。

 様々な問題点を指摘したわけでございますが、これら全てをすぐに改訂すべきであるというふうに主張したいわけではなくて、この中で、緊急度に応じて改訂すべき点は改訂すべきではないか、そういうふうに考えているということを申し添えさせていただきます。

 以上で私の報告を終わらせていただきます。

○脇田部会長 ありがとうございました。

 ただいま内藤委員も御指摘のように、御指摘いただいた論点は、高山委員あるいは山浦委員が御指摘くださったところとも重なっておりますので、それらを含めまして、ただいまの御報告を受けて御討議をいただきたいと思います。どうぞよろしく御発言をお願いいたします。

 どうぞ。

○渡辺委員 渡辺です。先ほどの高山委員のところで御質問しようと手を挙げたのですが、ちょっと手の挙げ方が……。

○脇田部会長 失礼しました。こちら側に委員の方がいらっしゃることに私、気がつきませんで、申し訳ありませんでした。

○渡辺委員 いいえ。

 これは御質問と印象と、どうもまざっているように自分で思うんですけれども、監査基準のこの資料をいただいてちゃんと読みまして、公認会計士協会で作られた監査基準委員会報告ですか、これも全部一応拝見、勉強させていただいたんですが、どうも外部監査人による監査というのは、やはり独立性というのが一番大事だと思うんですけれども、読んでおりますと、独立性という感じがしないという感じがいたします。独立性の部分は、監査基準のところでは1ページですが、1号と2号のところに、見ようによっては分けて書いてあるんですけれども、では、これが具体的にどう担保されているのかというのは、ここに紹介された法律、それから報告のどこを見ても、同じ精神規定がずっと書いてあるだけではっきりしない。今日、我々のような素人から見ますと、監査人の方は企業と独立して、健全な緊張関係を持って監査をされているのかどうかというところが一番気になっているところだと思うんですけれども、どうも全体の構成を見て、古きよき時代の独立性のような感じがいたします。

 そう感じた一つの理由というと変ですけれども、6ページのところに「経営者による確認書」という平成3年に導入された手続について書いてございます。そこの趣旨のところで、平成3年の答申ですけれども、その前文を引用されておりまして、これを読みますと、これは随分文学的な表現で、経営者確認書というのをわざわざ出してもらうのは随分水臭いんだけれども、別にけんかしているわけではなくて一緒にやろうよと、そういうことであるというふうにここに書いてあるわけです。で、ここに書いてありませんが、もう1行ありまして、そして、これはどの国でもやっていることだからというふうに書いてあるんですが、どうもこういうところを見ますと、独立した外部監査人ということを全体として言おうとしているよりも、我々のようなユーザーから見ると、いろいろあるけれども仲よく協力してやっておられるという感じがいたしました。

 できれば、昔のことですが、前文のところに書いてありますこの文章が、どうしてこういう表現が入っているのかということを教えていただけたらというふうに思います。

○脇田部会長 それでは、当時、この前文等の記載に関わりましたので、私がちょっと御説明いたしますけれども、これは当時、若杉先生、山浦先生も御参加になっておられましたけれども、たまたま第三部会に私は属しておりましたので、これを作成する文言は、今御指摘になったとおりの御印象だと思いますが、もともと経営者確認書は国際監査基準等の実務としてございましたので、これを当時の状況におきまして、ぜひとも我が国の監査基準にも入れる必要があると。ただし、既にもう当時、外債等、外国資本市場に上場なさっている会社では、もちろん慣行としておありになったんですけれども、なかなか日本の企業におきまして、この陳述書、確認書の導入には非常に反発の声が強かったわけであります。従って、それは相対立するということについて非常に抵抗感が強かったものですから、当時の審議会の御意見の中で、こういった協調性、お互いに監査において協力し合っていく。それを確認し合っていくんだということで導入を促進したという、そういう事情が背景にございます。ですから、印象として渡辺委員がお持ちになったのは、ある意味では正しい関係だと思いますし、先ほど若杉会長がおっしゃいましたように、当時の状況と今日との緊張関係が少し違うという背景もあったかと思います。

○藤田委員 今、経営者確認書が水臭いという話が出まして、私も実はそう思っているんですが、確かに外債発行のときは、カットオフデートまでに3度ぐらい代表取締役を交えて、フェイス・ツー・フェイスで確認をし合うわけですね。やはりそういう書類で、しかも非常に内容も形式的に決まった内容で、文書でやりとりするというよりも、それもいいんですけれども、それと併せて必ずフェイス・ツー・フェイスのディスカッションが必要じゃないかなというふうに思います。

 それから、もう一点は、改めて監査基準・準則を読んで気がついたことは、この中に「監査役」という言葉は一つも出てこない。これがどうしてそうなっているのかが実はよく分からないんです。商法特例法の11条を見ますと、監査役も会計監査人とともに第三者に対して損害が発生した場合に連帯責任を負うというふうになっていますので、その点が何かすっぽり抜けているのじゃないかなというように思います。

 なぜそんなことを申し上げるかというと、もう一つ背景を申し上げますと、実は私、2月の始めにアメリカに出張する機会がございまして、アメリカの一民間企業ですから、どこまで一般的な話かは分かりませんが、聞くところによると、会計監査人は、そういうディスカッションを各企業のオーディット・コミッティと日本みたいな監査役というのはございませんから、ボードメンバーで組織するオーディット・コミッティ(監査委員会)と必ずディスカッションをしなさいと。ルールとしては、SAS61番というのが前はあったと思うんですが、そこで見ると、コミュニケートしなさいということになって、「コミュニケーション」という言葉を使っていたんですが、去年の12月に出た新しいSASの90番というのを見ますと、「オーディター・シュッド・ディスカス・ウィズ・オーディット・コミッティ」というような言葉になっていまして、その場合に、単に監査の結果が妥当かどうかというだけではなくて、そこの企業が適用している会計基準が妥当かどうかということをそこで議論しなさいと。もちろんオーディット・コミッティ(監査委員会)とだけディスカスするのではなくて、もちろん会計基準の採用については経営者が責任を負っているわけですから、そこには、要するに「ウッド・インクルード・マネージメント」というような言い方で、経営者も入れてもよろしいというような、むしろどちらかというと監査委員会がディスカスの対象で、そこにマネージメントが入ってもいいんだと、こういうような構成になっているかというように思います。

 そのときにも、もう一度繰り返しますと、フェイス・ツー・フェイスのディスカッションが一番大事で、書いたものはメモランダムでもいいんだという、そういうようなことを聞きまして、非常に形式ではなくて実質といいますか、しかも企業の置かれた状況によっていろいろ差があるので、一律にこういうような形式張った書類、確認書を取り交わすのはいかがなものかというのが私の意見です。

○脇田部会長 ありがとうございました。

 この点について御発言ございますか。

 どうぞ。

○大藤大臣官房参事官 その点ではないのでございますが、渡辺委員から独立性についてお話がございましたが、この資料の1の1ページの右の方にいろいろ法律がございますけれども、この法律及び政令等によりまして、「一定の利害関係を有する者は監査業務等を行うことができない」という形で独立性がある程度担保されるという仕組みになっております。

○脇田部会長 どうぞ、渡辺委員。

○渡辺委員 それは拝見しました。奥さんが勤めていてはいけないとか、それもそうなんでしょうが、必ずしも今の時代に合っているような独立性全般を法律で規定しているというふうには思いません。それから、全部が全部法律で規定すればいいものではないので、もっと実際的に独立監査人と企業の方が緊張関係にあると、そういう意味での独立性というものがもっと監査基準の中にあってもいいというふうに申し上げたつもりでした。

○大藤大臣官房参事官 私どもこの独立性で全てが足りるということではございませんで、制度の仕組みを御説明したわけで、その上で、さらに何かいろいろ監査基準等で措置する必要があるかどうかというのは、また別の御議論だろうと思っております。

○脇田部会長 ただいま独立性について御議論いただいておりますが、葛馬委員、どうぞ。

○葛馬委員 確かに今回のこの議論の背景が、監査報告に対する信頼性の低下ということに発していることを考えると、この独立性というのは非常に重要な問題であると思います。その独立性に関して今議論されているのは、ほとんどが被監査会社からの独立ということで議論されているんですけれども、前回のこの会議でも議論が出ましたけれども、もう一つ、例えば所管監督官庁からの独立。金融関係がそういう監督官庁の検査を受けた後、従来は会計士がちょっとその後をやる、そんな形だったというような話がありましたけれども、それは既に監査の独立性が侵されているということでありますので、その辺は既に修正されているというふうに聞いておりますけれども、要するにこの監査というのが社会的に非常に特異な機能であるということにかんがみまして、監査する方も独立性を維持しなければならないし、周りのいろいろな団体も監査の独立というのを侵すことは厳に抑制しなければならないという形で、もっと広範に規定すべきではないかな。もっと強化すべきではないかなという気は非常にいたします。

○脇田部会長 ありがとうございました。

 会計士協会のお立場ではいかがでございましょうか。

 それでは、友永委員。

○友永委員 この件に関しましては、今、公認会計士協会では倫理規則の改正を去年の夏ぐらいから公開草案を2回にわたって発表いたしまして、この夏の総会で決めるという段取りで、これは非常に独立性というような問題とか、そういったものを厳しく自己規制するといった方向でやっております。これについての特に関与会社からの独立性といったものと、いろいろと論点がございまして、会員の間で非常に議論にはなっておりますけれども、そういった準備をしているということを付け加えさせていただきたいと思います。一般原則のここら辺の独立性といったような問題は、そういった会計士としての業務上の規範というような問題ですので、協会としては、こういった倫理規則といった形でカバーしていくということでございます。

○脇田部会長 ありがとうございました。

 それでは、山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 先ほど渡辺委員の確認書の件なんですが、実はこれを入れたときの、こういった前文での説明の仕方の経緯については、先ほど部会長からお話があったとおりなんです。

 一つだけ追加的に御説明申し上げますと、実はこの確認書の入手というのは、アメリカでは質問手続の一種なんです。つまり監査手続として位置づけられておりまして、いわば相手の経営者側に対していろいろなところで確認をとる。確認をとったものを文書化して、そして残すと。当然、確認事項で不十分な答え等が返ってくれば、これは監査意見の方に反映させるという、ある意味では非常に対立的な関係でこの確認状をとっているんです。

 ですから、これは当時は第三部会ですけれども、第三部会でこの確認書の入手について、こういう形で明文化するときに、かなり議論があったところなんです。あったところなんですが、いかんせん初めての措置ですので、関係経済界と会計士協会等もなかなかこれをうまく踏み切れないと。で、何とか軟着陸させるという趣旨が一部あったと思います。ですから、そういった意味では、渡辺委員がお読みになったとおりの背景はあったかと思います。

 ただ、やはり今、時代的には、今申し上げましたように、そろそろ監査手続としての位置づけというか、そういう役割の方に変えていくべきではないかという気が私はしております。

○脇田部会長 ありがとうございました。

 それでは、続けて御質疑をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

 山浦先生、どうぞ。

○山浦委員 何度も申し訳ありません。

 実は内藤委員の御報告で、私は前々から言っているところを改めて内藤委員に裏付けてもらったような気がいたしているんですけれども、要するに、適正表示についての実質判断を担保するという、ここがこれまで日本の会計士の監査実務には非常に欠けていたところではないかと思っております。監査基準を読んでみますと、特に報告準則の三。お手元の、高山委員の方で出された資料によりますと8ページなんですけれども、「財務諸表に対する意見の表明」というところで、財務諸表が適正に表示しているかどうかという総合的な意見を出すというところは、いわば実質判断をした結果出す、あるいは出すべきと、そういうふうに読めないこともないんですが、実はこれまで日本の会計士の監査実務の中で、むしろ生きていたのは(三)なんです。つまり会計方針が会計基準に準拠しているかどうか。それから、継続的な適用がなされているどうか。それから、表示が法令等に反していないか。その3点が満たされれば自動的に適正に表示していると、こういった非常に形式的というと言い過ぎかも分かりませんけれども、かなり画一的な判断で、これさえ満たしておれば適正意見が出せるのではないかという意識の会計士の方々がいらっしゃったということは、私自身はそのように理解しております。

 ただ、やはり最近、会計士の方々の判断を見てみますと、かなりこれが実質的な判断にずっと移ってきているという気もします。協会の方で実務指針等で、会計上の見積りについての判断についての基準書等も出しておりますし、それから、そのほかのいろいろな実務指針書が、例えば建設業界の問題であるとか、あるいは金融業界についての指針書とか出ておりますので、そういうところで次第次第にサポートされてきております。ですから、そういう実質的な判断をいわば裏付けるような実務指針が次々に出ておりまして、実際それに従って会計士の方々も意識改革がずっと進んでいるという気はします。

 ただ、やはり適正表示についての実質判断を行えという旨の何らかのもう一つだめ押し的な基準が、監査基準ないし報告準則に必要ではないかという気は私はしております。これはアメリカ等では、事実上そういう判断をするんだということをSAS、監査基準書でうたっておりますし、それから、先ほど内藤委員から御報告あったように、イギリスとかドイツとか、EU各国では会社法ないし商法に明示されております。そういう意味では、やはりこの点、もし今回監査基準等の改正に着手するのであれば、一つの大きな論点になるのではないかという気はしております。

 以上です。

○脇田部会長 ありがとうございました。

 内藤委員、何か補足なさること今ございませんでしょうか。

 今、山浦委員から御発言ございましたけれども、引き続きましてこの点について御発言ございませんでしょうか。いかがでございましょうか。あるいはさらに別の論点について。

 どうぞ。

○新原東証監理官 ないようですので、一つ質問していいでしょうか。

○脇田部会長 はい、どうぞ。

○新原東証監理官 ちょっとレビューのことが気になったので質問するんですけれども、今度、東証のマザーズとか店頭市場で四半期報告書を義務付けて簡易な監査をするということなんですけれども、これはこのレビューに当たるのではないかという気がするんですが、そういったような四半期報告書の簡易な監査について、今のところ会計士協会なり何なりで何もないということなんでしょうか。どういう扱いにされているんでしょうか。

○脇田部会長 では、友永委員、どうぞ。

○友永委員 その件に関しましては、東証の方で規則をお作りになられまして、それに関する実務指針よりも若干弱いんですけれども、研究報告の形で、監査委員会からの報告という形で出しております。結局、現在の監査基準では、このレビュー手続というものを含まないということだろうということで、これは監査基準委員会、監査基準の体系の中にある実務指針としては現在作っておりません。

○脇田部会長 どうぞ。

○新原東証監理官 それで実際に、もしこれで間違いがあった場合にどうなるのか。粉飾があったりしたのを見抜けなかったというような場合、どういうふうに会計士は責任をとるのかというのが気になるんですけれども、現在、普通の監査であれば会計士法30条で、故意に、あるいは重大な過失で虚偽、錯誤あるいは脱漏のある書類を虚偽・錯誤、脱漏のないものとして証明した場合には、大蔵大臣が処分することになっているんですが、この場合に、例えば故意とか、本当に重大な過失があった場合に、処罰の対象になるとお考えですか、ならないとお考えですか、内藤先生。

○内藤委員 アメリカに関しまして、レビュートとかコンピレーションに関して訴訟がないかどうかというのを関西大学の松本さんが丹念に調べられた結果では、それに関する訴訟が起こっているんですね。ただ、その訴訟が判決まで至らなくて、大体和解で終わっているケースがほとんどなんですが、この基準上、限定的な保証をするという意味合いは、責任を負うということを意味するわけですね。保証を与えるものではないという意味においては、責任を負わないわけです。だからそういう意味では、レビューの場合には責任を負わなければいけないと思います。

○脇田部会長 山浦委員、どうぞ。

○山浦委員 実は私、学会の研究会で、今日お渡ししようと思ってきたんですけれども、「保証業務のフレームワークと会計士の責任」ということで研究部会を率いて研究していたんです。そこでアメリカの判例を見まして、実はレビュー業務が最初に導入された時点は、やはり裁判所の判事側も、それから陪審員も、このレビューの意味がよく分からなくて、会計士に対してかなり過大な責任を課そうとする方向で判例がいったんです。ところが70年代の後半ぐらいになって、レビューというのは、実は中小企業等が少し低廉な保証業務を欲しいと。例えば金融機関等に与信を頼むと、そのときに金融機関も、監査はとてもお金がかかる。では、少なくともレビューかコンピレーションぐらいは報告書を通じて出してくれないかと、そういう形で、会計士も、ではそのくらいだったらということで、いわば限定的な手続として保証をすると。それがやはり重大な不正等を見抜けなくて、そして結果的には金融機関とか、あるいは一般の投資家に損害を与える、そういった事例があったんです。その最初のころの判例は、そのように監査とレビューを余り区別できなかったんですね。

 ところが、AICPAの方で基準書を出し始めました。SSARSとか、あるいはSSAEとか、先ほど内藤先生の方から御紹介のあったいろいろな幾つかの基準書ですけれども、そうした基準書が出され始めますと、次第にこの種の訴訟が、やはり会計士の責任はそういう限定的なものであると。恐らく限定的という意味は、損害賠償の責任額が監査ほどには高くないという、そういった意味ではないかと思うんですけれども、ちょっとそのあたり、もう少し時間が足りませんでフォローしていません。ただ、そういうふうに今のアメリカの判例では、監査とレビュー業務では、監査人の責任の限度も違ってくるというのが通説ということです。

○脇田部会長 御発言どうぞ。よろしゅうございますか。

○新原東証監理官 私ども実際問題として、登録抹消しなきゃいけないのかどうかということが、責任が生じますので、ちょっとお伺いしたというだけです。どうもありがとうございました。

○脇田部会長 今御発言いただきましたように、非常に行政の上でも重要な問題でございまして、今日はそういう意味で、レビューという新しい話題にさせていただきまして、一つの糸口として、実務の上にどのような問題点があるかということの糸口という意味で内藤委員にも御報告いただき、御議論いただいておりますが、この点につきまして御意見はございませんでしょうか。

 それでは、特に御発言がございませんでしたら、今日は高山委員、内藤委員に御報告をいただきまして、御議論をさせていただきました。それぞれに大切な論点を議論していただきましてありがとうございました。また、委員の皆様方にも御参加いただきまして、これからの御審議の糸口とさせていただければありがたいと思います。

 それでは、本日の部会はこれをもちまして終了させていただきたいと思います。

 なお、次回の部会は、3月31日(金曜日)の午後1時から3時に開催させていただきます。主としてアメリカの監査基準あるいは監査実務を中心にヒアリングを行わせていただきたいと考えております。繰り返して申し上げますけれども、3月31日は午後1時からとなっておりますので、よろしくお願いいたします。

○伊藤委員 最後に申し訳ないんですが、ちょっと一言。

○脇田部会長 はい。

○伊藤委員 内藤先生に教えてほしいんですけど、私、経営者の端くれなものですから、ちょっと聞きたいんですが、「責任の範囲と責任を負うべき者」のところの3番目の「会計情報が信頼できること」というところは、経営者は棒線を引っ張ってあるのは、これはどういう意味ですか。ちょっと聞き逃したんだと思うので。

○脇田部会長 内藤先生お願いいたします。

○内藤委員 会計情報が信頼できることについて責任を負うべき者として、経営者は、その責任がないということです。なぜこういうふうに書いたかと申し上げますと、会計情報が信頼できることを担保できるのは、公認会計士である監査人でしかないわけです。その意味で、経営者のところは棒線にさせていただきました。

○伊藤委員 担保できることというのは、非常によく分からないんですが、どういうことですか。つまり経営者としては、その会計情報が信頼できるかどうかについては何の責任も持たなくていいということですか。どういうことですか。

○内藤委員 ここで言っています「信頼できること」というのは、会計情報が信頼性を有しているかどうか。それについて経営者は、一般に認められた会計原則に従って作成しているので、当然自分としても信頼できるものであるということは言われるんだろうと思います。ただ、その責任といいますか、信頼できること自体を経営者が自己証明したのでは利用者は分からないわけですから、そこで監査が必要とされているという意味において、その会計情報が信頼性を持つかどうか、これに関する責任は、公認会計士たる監査人が負うんです、そういう意味で書いてございます。

○伊藤委員 ああ、そういうことですか。もうひとつよく分からないが、また教えてください。

○脇田部会長 よろしゅうございましょうか。

 それでは、まだ御質疑があるかと思いますけれども、今申し上げましたように3月31日の金曜日、午後1時から開会させていただきます。

 本日は、大変お忙しいところを御参集いただきましてありがとうございました。

午後3時57分閉会