企業会計審議会 第二部会 議事録

日時:平成12年3月31日(金)午後1時00分〜午後2時57分

場所:大蔵省第三特別会議室

 

○脇田部会長 定刻になりましたので、これより第5回第二部会を開催させていただきます。委員の皆様にはお忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 それでは、早速本日の予定に入らせていただきますが、これより議事といたしまして、本日は参考人からのヒアリングを行いたいと考えております。

 本日の参考人といたしましては、岡山大学助教授の児島 隆先生と公認会計士の頼広圭祐先生をお招きしております。お二人とも我が国の公認会計士でいらっしゃいますとともに、米国の公認会計士でもございますので、児島参考人には主に監査基準の観点から、頼広参考人には主に監査実務の観点から、我が国の監査と米国の監査につきまして、それを比較しながら御報告をしていただくことにしております。

 なお、本日は続けで御報告をいただきますと少し長くなると思いますので、児島参考人の御報告が終わりました後に質疑の時間を若干とりまして、そしてその後、頼広参考人に御報告をいただき、その後にさらに児島参考人の御報告、頼広参考人の御報告を受けた全般的な質疑及び意見交換をいたしたいと考えております。何とぞ本日も活発な御審議をお願いいたします。

 それでは、児島参考人から御報告をお願いいたします。

○児島参考人 岡山大学の児島でございます。私に御依頼がありましたのは、アメリカの監査基準SAS――エスエーエスと読むと思いますが、サスと読まさせていただきますが――を紹介しながら、我が国の監査基準等の改訂に参考とすべき諸点を報告していただきたいということでした。

 そこで、1991年に監査基準が改訂された後のアメリカ監査基準のSASの内容を簡単に御紹介しながら、その傾向から我が国の監査基準等の改訂に参考になることを申し上げたいと思います。そのほか、時間がありましたら、SAS全般と我が国の監査基準等の比較をして若干の私見を述べさせていただきたいと思います。お手元には資料1−1と1−2と参考1というのが配られております。

 それでは、資料1−1に従って進めてまいりたいと思います。先ほど申しましたように、きょうの報告では平成3年12月26日の監査基準、監査実施準則等の改訂後に公表されましたSASについて内容又は変更点を最初に御紹介したいと思います。

 SASは1992年以降、69号から、今日まで90号まで出ておりますが、その中には財務諸表監査に直接関係のないものも含まれておりますので、本日は財務諸表監査に関するものに限定いたしております。

 それでは1ページ目からまいりまして、第69号でありますが、「独立監査人の報告書における一般に認められた会計原則に準拠しているという文言の意味」についてであります。ここでは、まず適正に財務諸表が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローを適正に表示しているという意味につきまして、独立監査人の財務諸表の全体的な表示の適正性に関する判断はGAAP――これは以下、一般に認められた会計原則をGAAPと略させていただきます――の枠組みの中でなされなければならないとされております。すなわちGAAPに従っていれば財務諸表は適正に表示されているとされます。そしてGAAPの階層が示されております。一番上がAICPAの評議員会が任命した機関によって公表された会計原則、これはFASB基準書を指すわけですが、それによって廃止されていないARBやAPBも含まれております。まず、この1番に従うわけでありますが、一つの事象について複数の会計基準が示されている場合は、この1、2、3、4の順にそのスペシファイですね。明定されている点を探さなければならず、その中に会計上の取扱いについて答えが見つからない場合は、5の中で探すということになっております。

 なお、1999年11月には、連邦政府事業体の財務諸表に対する監査報告書における適正標準についての文言の意味を明らかにするための公開草案が69号について出ております。

 それでは2ページ目にまいりまして、73号「専門家の作業の利用」でありますが、ここでは一般に認められた監査基準に準拠して監査を実施する際に、専門家の仕事を利用する監査人に指針を提供しております。

 主な点を申し上げてまいりますと、専門家が必要な例として複雑な――これは「デリバティブ」は不要でしたので……。「複雑な金融商品、不動産の評価、従業員退職給付債務と開示の保険数理上の決定が追加」されております。

 それと、クライアントとの関係では、「クライアントとの関係によって専門家の客観性が損なわれていると監査人が信じるような場合」には、ここに書いてございますような追加手続を実施して、「専門家の発見事項が不合理でないと決定しなければならないか又は他の専門家と契約しなければならない」ことになっております。

 次に第77号にまいりまして、ここではSAS第22号「監査契約及び補助者の指導監督」、第59号「継続企業としての存続能力に関する監査人の検討」及び第62号「特殊な監査報告書」の改訂を行っております。

 改訂内容といたしまして、第22号につきましては省略しますが、第59号についてでありますが、説明パラグラフの例示に関して以下の注記が加わっております。すなわち、今問題になっておりますゴーイング・コンサーン問題ですね。ちょっと読ませていただきます。『継続企業に関する説明パラグラフでは、事業体が継続企業として存続する能力について重大な疑念の存在に関する結論の表明において、監査人は条件付きの表現を用いてはならない。説明パラグラフでの不適切な表現の例としては、「会社は、経常的な営業損失の計上を余儀なくされ債務超過が続くならば、継続企業として存続する能力に関する重大な疑念があるかもしれない。」又は「会社は与信契約の期限満了の延長について再交渉できなかった。会社は財務的支援を得られない限り、継続企業として存続する能力に関して重大な疑念がある。」』というような文が加わっております。

 第62号につきましては省略いたします。

 次の第78号でありますが、「財務諸表監査における内部統制の検討」、これはSAS第55号の改訂でありますが、これはトレッドウェイ委員会支援組織委員会が1992年に公表しました報告書の「内部統制−統合的枠組み」に述べられている内部統制の定義及び構成要素を反映するためにSAS第55号を改訂しております。

 まず、内部統制の定義が変わりまして、1、財務報告の信頼性、経営の有効性と効率性及び適用される法令の遵守という3つのカテゴリーの目標達成に関して合理的な保証を提供するために設けられた事業体の取締役会、マネジメント及びその他の職員によって果たされるプロセスである。すなわち新たに3つの目標が定められ、「方針及び手続」というのが「プロセス」に変わっております。構成要素については内容とその数が変わっております。

 そして、以前にも同様の表現があるわけでありますが、一般的には事業体の「財務報告の信頼性目標」に関する内部統制手続が監査に関係があるとされております。そして、監査人が構成要素を理解をしなければいけないその必要性及び内部統制リスクの評価のプロセスについては変更はございません。

 次、第79号にまいりまして、「SAS第58号の監査済財務諸表に対する報告書の改訂」。ここでは「ある規準を満たした場合に監査報告書に未確定事項に関する説明パラグラフを追加する要求を削除し、強調のためのパラグラフ、未確定事項及び意見差控えに関する指針を再編成」しております。

 まず、未確定事項に関する説明パラグラフでありますが、ある規準を満たした場合に監査報告書に未確定事項に関する説明パラグラフを追加する要求を削除しております。それと強調事項に関しましては、強調のためのパラグラフは専ら監査人の裁量によって追加してもよいのであり、決して要求されるものではないことが明記されております。

 それと未確定事項と監査範囲の制限でありますが、未確定事項の定義は変わっておりませんが、未確定事項と監査範囲の制限の関係について以下の記述が設けられております。ここは読ませていただきます。「未確定事項の結末に関する情報が存在しないことは、必ずしもマネジメントの言明を裏付ける監査証拠が十分でないとの結論に至るわけではない。むしろ、監査証拠の十分性についての監査人の判断は、入手可能、又は可能なはずである監査証拠に基づいている。現在の状況と入手可能な証拠の検討の後、監査人は、監査証拠が未確定事項を含む事項の性質に関するマネジメントの言明を裏付けていると結論する」。少し加えますと、未確定事項、すなわち未来の結末が分からないことはやむを得ないのであって、現在入手可能、あるいは可能なはずである監査証拠が入手できれば、それは監査範囲の制限とはしないということであると思われます。

 最後に飛びまして、参考のために記載しておきましたが、アンダーラインの引いたところでありますが、以前の「SAS第58号の公表においては、未確定事項の会計処理及び注記で適正にされているならば、監査報告書に記載する必要はないとの反対意見がありました。一方、今回の第79号の公表においては、やはり監査報告書において未確定事項の記載は有用であるとの反対意見がありました。未確定事項の記載の要求が廃止された理由は、監査人が重要でないと判断し、監査報告書に記載がない場合、財務諸表の読者が未確定事項の注記が重要であるにもかからわず無視してしまうからである」とされております。

 次に第80号でありますが、「SAS第31号の監査証拠の改訂」であります。これは情報技術の発達に対する改訂であります。内部統制の必要性というふうに書いてございますが、情報技術が発達している会社につきましては、「その実証性テストの実施のみでは発見リスクを許容できる水準に下げることは実践的又は可能でないと判断するかもしれない。これは言外に「内部統制リスクが高いままで」というのが入っているかと思われますが、その場合には、内部統制のテストを実施しなければならないとされました。

 それと2はちょっと省略しまして、3にまいりまして、会計記録の一貫性でありますが、「会計記録が内部的に一貫していると判断したならば、その一貫性は財務諸表の表示の適正性について内部的な証拠となる」という文章が加わっております。

 次に第81号「投資の監査」でありますが、これは「有価証券(負債証券、持分証券)及び持分法により会計処理される有価証券の監査について、監査人に指針を提供」しております。

 まず、FASB基準書No.115に従いまして、有価証券が償還期限まで保有、売買目的及び売却可能に分類され会計処理されているかどうかに関する手続が追加されました。

 時価の監査手続が整備されております。

 次に減損でありますが、ここでは「監査人は一時的でない減損の状況が存在しているかどうかマネジメントが適切な情報を考慮しているかどうか評価しなければならない」として、その状況の例を示しております。

 なお、1999年6月に改訂のための公開草案が公表されております。これはFASB基準書133号デリバティブ――これは実は「金融」をとらなければならないんですが――デリバティブ商品及びヘッジ活動の会計に対応しております。

 次は82号「財務諸表監査における不正の検討」でありますが、これは監査人が不正――不正はフロード(fraud)であります――を原因とする財務諸表の虚偽記載がないかどうか合理的確証を得る責任を果たす上での指針を提供しております。まず位置づけといたしましては、「監査人は、誤謬、不正のいずれを原因とするかを問わず、財務諸表に重要な虚偽記載がないかどうかについて合理的確証を得るために監査を計画、実施する責任がある。」のうち、不正の方に焦点を当て、財務諸表監査実施における重要な不正の検討について指針を提供しております。そして不正を原因とする二つのタイプの虚偽記載を、不正な財務報告を原因とする虚偽記載と資産の悪用――これは背任横領ですね――を原因とする虚偽記載に分けております。

 そして重要な虚偽記載のリスクの評価に関しましては、「監査人は、監査の立案において、特に不正を原因とする財務諸表の重要な虚偽記載のリスクを評価し、その評価を考慮しなければならない」と。そして(2) に書いてございますが、「監査人はマネジメントに不正のリスクに関する理解、不正のリスクをどのように理解しているか。それと不正が行われたことを知っているかどうかについて質問しなければならない」とされております。

 評価の結果に対する対応といたしましては、ここに書いてございますけれども、この中で(3) の不正な財務報告に対する特別な対応――この不正な財務報告を原因とする虚偽記載のリスクがある場合には、特にこの収益の認識等は棚卸資産の評価でありますけれども――とは、特に注意をして監査を進めるということとされております。

 そして監査結果の評価につきましては、監査委員会等に報告をしなければならないんですが、不正を原因とする財務諸表に重要な虚偽記載の結果、場合によって限定意見又は不適正意見となります。

 そして、最後に5行ほど加えておきましたが、第82号は「財務諸表監査実施における監査人による重要な不正の検討について詳細な実施に関する指針を提供するものである。しかし、監査人の責任は、重要性と合理的な確証というキーとなる概念の枠組みの中にあり、その責任は不正を原因とする重要な虚偽記載の発見に関連するが、不正な行為そのものの発見を指向するものではない」とされております。

 次に第83号「クライアントとの合意の確立」でありますが、ここでは監査人が提供する業務に関するクライアントとの合意について指針を提供しております。

 そして、合意の内容といたしましては、まず財務諸表監査の目的やマネジメントの責任が記載された後、きょうここでは省略しておりますが、監査人の責任と監査の性質がまず記載されまして、その後に監査は重要な虚偽記載を発見できないことがあると。重要でない誤謬や不正を発見するようには立案はされていない。立案されないと。監査を終了できなかったら意見差し控えとなることがある。それと次に、やはり省略しておりますが、まず内部統制の理解を、監査においては内部統制の理解を得なければならないわけでありますが、その内部統制の理解を得るのは、あくまでも財務諸表監査の目的であって、それで『監査は内部統制に保証を与えたり――報告すべき状況というのは、これは監査委員会に対するものでありますが――「報告すべき状況」を識別するようには立案はされない』ということが記載されております。

 次に、第84号「前任監査人と後任監査人とのコミュニケーション」でありますがここでは、前任監査人と後任監査人の定義が細かく変わったことと、ここで指摘しておきたいことは、2番の前任監査人に質問すべき事項の追加でありまして、「不正、違法行為及び内部統制に関する事項についての監査委員会又はそれと同等の権限と責任を持つ者に対する報告事項」が追加されております。

 次に、第85号「マネジメントの陳述書」でありますが、我が国では経営者の確認書と呼ばれているものに相当しますが、ここでは、「監査人がマネジメントから陳述書の入手を要求し、陳述書に関する指針を提供」しております。記載事項に関しまして、陳述書の記載事項として、「財務諸表がGAAP一般に認められた会計原則に準拠して適正に表示されていること」が追加されております。

 それと記載事項の前文に「記載事項は重要な事項に限られる」旨と「重要性」の定義を記載してもよいとされました。重要性はFASB諸概念基準書第2号「財務諸表の質的特徴」の定義を用いております。

 次のページ、その陳述書上の記載、重要性についての記載を少し読ませていただきますと、「ある事項が、周囲の状況を考慮して、その会計情報を信頼する合理的な人の判断が、その欠落又は虚偽記載によって変えられるか又は影響される可能性があるような会計情報の欠落又は虚偽記載を含んでいるならば、金額にかかわらず、その事項は重要とみなされる」ということであります。

 次に、提出が拒否された場合は、以前は意見差し控えになっておりましたけれども、その陳述書の性質や提出状況によっては、限定意見報告書でもよいことになっております。

 次に第89号「監査上の修正事項」であります。ここでは第83号、85号、61号を改訂しております。まず、83号の改訂では、クライアントとの合意事項に「マネジメントは、重要な虚偽記載を修正する責任と、陳述書上で監査人が集計した未修正の虚偽記載の影響は個別的でも合計でも財務諸表全体に対して重要性がないことを追認する責任がある」ことが追加されております。

 次に85号の改訂では、陳述書の記載事項に「私たち(マネジメント)は、監査人が集計した未修正の虚偽記載の影響は個別的でも合計でも財務諸表全体に対して重要性がないと信じていること」が追加されました。また、陳述書には、「未修正の虚偽記載の要約を含めるか添付すること」が要求されております。

 第61号の改訂に関しましては、監査人は監査委員会に個別的でも合計でも財務諸表全体に対して重要性がないとマネジメントが判断した監査人によって集計された未修正の虚偽記載について通知しなければならなくなっております。

 次に90号「監査委員会とのコミュニケーション」でありますが、これは『SECクライアント――これはSECに報告するという企業であるわけですが――の監査人に会社が採用する会計原則と財務諸表における基礎となる見積りの「容認できる程度」ではなく、質について監査委員会と討議することを要求』しております。

 ここでは、2の「事業体の会計原則の質についての判断」でありますが、2の討議対象のマル2を読ませていただきますと、その前に財務諸表の明瞭性とか完全性についても討議をするわけでありますが、『財務諸表に含まれる会計情報の表現の忠実性、検証可能性及び中立性――これはいずれもFASB諸概念基準書第2号「会計情報の質的特徴」の用語を用いておりますが――に重要な影響を与える事項』について監査委員会と討議をすることが要求されております。

 以上、1992年以降に出されましたSASの内容につきまして簡単に御紹介いたしました。

 資料1−2にまいりまして、SASの傾向、私なりにSASにどういう傾向があるかといいますと、まず会計基準との関係で適正表示、重要性の概念、財務諸表の質について会計基準との関係が諸概念基準書も含めて関係が明らかになっているということであります。重要性につきましては、1980年に既にSAS47号では使われております。

 次に、内部統制の重視が読み取れると思われます。ここで、SAS第78号に対する疑問としておきましたのは、なお、きょうお手元の資料を読みやすくするために、 私見の部分については影をつけております。先ほど触れましたSAS78号では、「経営の有効性と効率性」及び「法令の遵守」目標に関する内部統制手続は原則として監査に関係がないとしているが、監査上重視すべきではないかという疑問が起こります。これは一つにはSASは監査人の責任の限界を明らかにしているわけですが、監査事務所側でこの二つの目標に重視するというのは自由というふうになっているかと思われます。

 次に、SASの傾向としましては、監査人の責任がさらに明確になっているということが読み取れると思います。

 次には、被監査会社の責任の明確化でありますが、先ほど不正のリスクに関して、マネジメントに不正のリスクをどのように理解しているか、並びに不正が行われたことを知っているかどうか質問しなければならないわけですが、これに関しては、当然マネジメントは質問に答えなければなりませんが、これは非常に会社に対して大きな影響を与えるというのが雑誌等で見られます。

 次に未確定事項でありますが、未確定事項の性質についてより明らかになっております。以前は重要であれば、監査報告書に記載が要求されましたが、記載は任意になっております。

 改訂前の記載例、これはもう大部分は方は御存じかと思いますが、参考のために読ませていただきます。「財務諸表の注記Xに記載されているように、会社は、ある特許権侵害を申し立てられ、ロイヤルティと懲罰的損害賠償を請求される訴訟の被告となっている。会社は反対答弁書を提出し、双方の訴えに対する予備的な審理及び証拠開示手続が進められている。現在、その訴訟の最終的結果は決定することはできない。従って、この報告書に添付されている財務諸表上、その判決がもたらすかもしれないどのような負債に対する引当もされていない」というのが改訂前の注記例であります。

 ゴーイング・コンサーン問題につきましては、先ほど不適切な表現例を御紹介しましたが、参考としまして、これも読むまでもないかと思いますが、読ませていただきます。「継続企業として存続する能力に疑念ある場合の記載例」としまして、SAS第64号でありますが、「この報告書に添付されている財務諸表は、会社が継続企業として存続することを前提に作成されている。財務諸表の注記Xに記載されているように、会社は経常的な営業損失の計上を余儀なくされており債務超過となっている。その結果、継続企業として存続する能力に重大な疑念が生じている。これらに関するマネジメントの方策もまた注記Xに記載されている。財務諸表はこの未確定事項の結果から生じるかもしれないどのような修正も含んでいない」というふうに記載されます。

 次に、監査基準、準則と今御紹介しました1992年1月以降公表のSASとの比較でありますが、我が国の報告書――監査基準の報告基準の三には「財務諸表が適正に・・・を表示をしている」と出ているわけでありますが――に関してSASのように「適正表示」の概念をもし明確にするためには、我が国でも概念フレームワークを含めた会計基準の体系化が必要になると思われます。それと、重要性や財務諸表の質について、SASはFASB諸概念基準書の定義を用いて、会計基準と監査基準との間に一貫性を持たせております。

 次に、会計士の責任の明確化に関してでありますが、先ほど監査人は不正を原因とする財務諸表の虚偽記載には注意をすべきであるが、その不正行為そのものを指向しているものではないというのが先ほど出てまいりましたけれども、この監査実施準則の二の監査要点の中には「取引記録の信頼性」というのが入っておりますが、取引記録の信頼性を確かめるということの中には、取引自体の妥当性というものも当然含まれるという理解、これは解説書にあったわけですが、これは不正行為自体を指向しており、これは前文2の(2) ともかかわりますが、これはSASの考え方と異なっていると思われます。

 次に、未確定事項でありますが、我が国の報告基準は「・・・記載するものとする」となっておりますが、SASでは「ねばならない」のか「することができる」のかどちらか明確になっています。

 それとゴーイング・コンサーン問題では、「監査報告書への記載内容については、SASの不適切な表現の例に留意すべきである」と書いておきましたのは、もしこのような表現を想定して議論をするとなると、SASと異なっているかなということであります。我が国の、これは私は我が国の法体系上では監査報告書上の記載の前提として、財務諸表等規則に開示規定が必要かなというふうに考えております。

 もうお時間もありませんので、III 以下は要点だけ触れさせていただきたいと思います。1は省略しまして、2の実施基準についてですが、十分な監査証拠、もうこれは議論も尽くされているかと思いますが、SASでは「十分かつ適切な」となっております。現に日本基準を英訳する場合、sufficient appropriateする必要があります。これは実は監査基準委員会報告の英訳のお手伝いを少しさせていただいたときに、sufficient appropriateを加えることにいたしました。

 二では、「組織的に監査を実施しなければならない」とありますが、SASの傾向では監査責任者の機能向上と、ここでは記載を省略したのでありますが、その特定の監査という仕事に見合う能力を持っている人を監査に当てなければいけないというふうに、どちらかというと、組織的にというよりは個人の能力向上というものに焦点が移っているかなと思われます。

 それと三ですが、audit riskはリスクの、私はリスクの方がいいかなというふうに考えているのでこのような記載をいたしました。

 次のページにまいりまして監査要点でありますが、これはちょっと文章を読みますと複雑ですので簡単に触れますと、監査要点はSASのaudit objective 、あるいはobjective の翻訳であるとされておりますが、SASの中のaudit objective とは異なった使い方がされております。ですから、我が国では文章上当然監査要点を達成するというようには使われていないということであります。

 次に分析的手続でありますが、SASでは分析的手続は重視されております。マル2は飛ばしまして、マル3の「監査手続の適用は、原則として試査による」というふうに我が国の監査実施準則ではなっておりますが、SASではどちらかというと、そのテストベースによる監査を含むという表現になっております。

 次、3の報告準則については飛ばさせていただきまして、全般的には、今後我が国でもレビュー業務というのが議論の対象になってくるかと思いますが、監査は財務諸表により高い保証を付与することがどこかで述べられる必要があるのではないかと思います。それと、監査基準、準則も含めまして、設定では英訳して意味が通じるといいますか、どのような意味になるかということの検討が望まれます。例えば、先ほどの「十分な証拠」「・・・ものとする」とか「監査要点」につきましては、先ほど申しましたように、監査要点をもしaudit objective と訳しますと、audit objective の使い方が少しSASなんかと異なっているということであります。

 それと最後に、監査基準、準則、監査基準委員会報告との総合的な codification book―― codification bookは多分私の和製英語でありますが、このように一つの本にすることが望まれると思います。その際に多分準則がやはり体系の中に入ってくるわけでありますが、準則とは一体何なのか。例えば英訳した場合に、ルールとした場合に、これは一体何なのかということで、違和感を少し持たれる可能性もあるかなというふうに思われます。

 それでは、一応30分ということで報告をさせていただきました。

○脇田部会長 ありがとうございました。

○多賀谷課長補佐 ただいま途中で資料をお配りしましたけれども、これは事務局の方で、国際監査基準とアメリカの基準の体系を簡単に整理したものでございまして、黒い表紙の資料集に後ほど付けさせていただきます。本日ちょっと付けるのが間に合わなかったので、どうもすみません。後で付けておきますので、そのままにしていただければと思います。

○脇田部会長 それでは、今御紹介がありましたように、この黒い資料集につづり込んでくださるということでございますので、本日はこのまま御使用ください。

 それでは、ただいま児島参考人より御報告をいただきました。ここで大きく分けますと米国の基準についての動向、動きにつきまして御紹介いただき、そして特にその後段では、我が国の監査基準・準則との比較において御指摘をいただきました。後の方は特に時間をお考えいただきましてはしょってくださいましたので、どうぞ御質問の中でまた補っていただくということで、ただいまから児島参考人の御報告につきまして、御質問、御意見を伺いたいと思います。どうぞ御自由に御発言いただきたいと思います。

○那須委員 那須でございます。よろしくお願いいたします。

 児島先生に御質問なんですが、先生は説明の中で幾つか、最後のところでcodification bookの話をされていたんですが、資料1−1の最初のところ、第69号の2、GAAPの階層というところがあるんですが、日本でも基準なり準則なり、それで今我々会計士協会で実務指針を出して、委員会報告を出しておりますけれども、アメリカでこの1、2、3、4、5というのは、もちろんこれは69号の中で書いてあるので広くオーソライズされているということだと思うんですが、アメリカではこういう考え方というのは、どこかでこれ以外でこういうふうに理解すればいいよということが、別途当局なりからオーソライズされているとか、そういう実態というのはあるのでしょうか、それが1点です。

 それと83号のところで、1−1の7ページですけれども、クライアントとの合意の確立というのがあるんですが、これと85号の陳述書の関係、これというのは、合意というのはこの陳述書の中で合意文書を取り付けるものなのか、それとも別途口頭でやればいいのかとか、そういうところについて2点教えていただきたいなと思うんですが、いかがでしょうか。

○児島参考人 先に後の方の御質問ですが、83号と85号との関係で申しますと、クライアントとの合意の中でマネジメントは陳述書を提出するよと。するということが合意されるということで、83号と85号は結びついております。

 それと、最初の方の御質問がちょっと趣旨がよく理解できなかったんですが、もう一度ちょっとすみませんが。

○那須委員 日本で、先生ももちろん会計士をされていたんでよく御存じだと思いますが、現場で仕事をしていると、会計士協会が出す委員会報告とか実務指針とかあれは何なんだと。どういう位置づけなんだと。別にお前ら自分で勝手に決めているだけだから関係ないだろうということを面と向かって言われる方もいらっしゃるんですが、そのあたり、アメリカでは当然こういう体系がきちっと認識されていれば、このうちの5に従っていても、もちろんそれはルールだと言ってのけられると思うんですが、そのあたりというのは、アメリカではみんな広い認識がまずされているのか。それがどこか当局がこういうふうになっているよと。日本だと言っていただくのが一番スムーズだと思うんですが、アメリカではこの69号をもって言えばいいと、そういう位置づけなのかというところです。

○児島参考人 当局のことについては、むしろ頼広先生にお聞きしなければいけないかと思いますが、誤解のないように申しますと、これは1から5まで一つの本になっているわけではございません。それぞれ1から5まで別々に出ているものを監査基準の側でヒエラルキーをつけたということであります。ですから、あたかもばらばらで出ているものが会計士側の取扱いとして一つのブックのようになっていると。その順番、順位をつけたブックになっているというような理解かと思いますが。

○脇田部会長 那須委員、よろしいでしょうか。

○那須委員 ありがとうございます。

○脇田部会長 それでは、御自由にまた御質疑をお願いいたしたいと思いますが。

○山浦委員 山浦です。一つ大事なところがあって、先ほど那須委員からの質問で、若干私もこのあたり調べておりますので簡単に説明しますと、このSASにしてもFASBのいろいろな基準書にしても、これはSECが一応了解をするんですね。ですから、事実上これが基準として公表された段階ではSECが暗黙のうちにそれを権威づけているというふうに理解しても構わないという、これが一般的な向こうの了解事項じゃないかと思うんです。これは後ほど頼広参考人の方からお話があるんじゃないかと思います。

 それで、私、質問なんですけれども、現在アメリカのインディペンデント・オーディターズ・リポートですか。独立監査人の報告書というんですけれども、ここで範囲区分、いわゆるスコープセクションの段階で「財務諸表に重要な虚偽記載がないかどうかについての合理的な保証を得るために、私どもでは監査を計画し実施することを要求している」と、こういった文言が入っているんですね。先ほどの新しい基準で、この不正の検討、第82号――97年の「財務諸表監査における不正の検討」ですか。この報告書を境として現在の監査報告書に重要な虚偽記載云々についてのその文言が入ったという、こういう理解でよろしいんですか。それともこれはずっと前からあったんでしょうか。

○児島参考人 今、御質問のありました監査報告書の範囲区分における記載は、SAS第58号ですので、1989年、具体的には88年に出ております。それが82号によって、ここのマテリアル・ミステイトメントについての一つの解釈、それが、原因が誤謬であれ不正であれということで結びついております。

○山浦委員 ちょっと記憶があいまいだったんで確かめたところなんですけれども、その上で、この監査報告書に重要な虚偽記載がないかどうかについての一文を入れるということは、かなり大きな監査人にとって意味を持っていると思うんですね。日本の場合、単に会計基準に準拠していると。それで適正であるという型通りの文言のフレーズなんですけれども、この報告書の中に、重要な虚偽記載云々についての文言が入るという、この過程について何かアメリカでは事実の、どうしてこういった文言が入ることになったのか、それからこういった文言を入れることについて何か議論があったかどうか。このあたり何か御存じだったらお教えいただきたいんですけれども。

○児島参考人 あいにく、SAS58号の方の成立の過程については余り勉強しておりませんので、いわゆる期待ギャップの解消の一つの策であったんでないかと推測されます。それで一つ、これにつきましては何か、その後この監査の性質をずらずら書いたこのような監査報告書が一体どのような評判であるかどうかというのは、何かアンケートがされていたのを見ておりますけれども、それがジャーナル・アカウンタンシーでは、余り評判悪くはないという結果が出ているようであります。利用者側からしてですね。ある会計学者、トレーシーなんかは、今SAS第58号で定められております現在使われております監査報告書の、特にこれは範囲区分の監査とはどういうものか。監査とはどうやるものかというのを書いた部分を指しているかと思うんですが、ジャーゴンという言い方をされている、ごちゃごちゃ言い並べた言い方という言い方をトレーシーはしているので私はおもしろいと思いましたけれども、二つの見方があるかと思いますが、ちょっと成立のいきさつについてはすみません。

○脇田部会長 山浦委員、よろしゅうございますか。

 ほかに御発言ございませんでしょうか。渡辺委員、どうぞ。

○渡辺委員 最後の90号のところなんですが、採用された会計基準が容認できる程度であるということを認めるだけではなくて……。

○児島参考人 「認めることではなくて」ですね。

○渡辺委員 ああ、すみません。質についてマネジメントに対して討議するということを要求するというふうになったということなんですけれども、確かに最初に議論が出たときに、質について監査した人が見て、それを公表するかどうかという話と、それから一歩下がって討議したかどうかを公表するという説と、それからもう一つ下がって、討議したかどうかも公表しないで、例えばピュアレビューのような格好で外部に出ない形で討議したかどうかを検証すると。それでどのシステムでいくかのかという、何かそういう議論があったように思うんですが、現段階ではどういうふうになっているんでしょうか。

○児島参考人 現段階といいますと、この90号。

○渡辺委員 99年、去年ですか。12月。

○児島参考人 ああ、この90号のまたさらに検討ですか。

○渡辺委員 いいえ、この段階です。

○児島参考人 これは90号はこれは出たばかりの公表されたばかりですので、このようになっていると。

○渡辺委員 ということは、要求するというのは討議したかどうかを公表はしないし……。

○児島参考人 公表はここでは要求されておりません。

○渡辺委員 ああ、そうですか。それでピュアレビューの対象にするとか、そういうことはまだ決まっていないんですか。

○児島参考人 特にこの90号では触れられておりません。

○渡辺委員 ということは、やったかどうかを検証する手段は、とりあえず用意はされなかったということですか。

○児島参考人 そうでしょうね。ここからはそのように読めると思いますけれども。

○渡辺委員 ああ、そうですか。

○脇田部会長 よろしゅうございますか。ほかに御発言ございますでしょうか。

 それでは、御発言がございませんので、また頼広参考人に御報告をお願いいたしました後、また御質問、御意見の交換も設けますので、そろそろ次に移らせていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。

 それでは、頼広参考人から御報告をお願いいたします。

○頼広参考人 頼広と申します。よろしくお願い申し上げます。

 私は、昨年までニューヨークにて五大大手会計事務所の一事務所のパートナーといたしまして、金融機関の会計監査と米国の銀行監督当局による日本の銀行の在米拠点における立ち入り検査についての対応のサポートをするコンサルティングに従事しておりました。

 前置きをさせていただきますと、米国ではBCCI事件や、その他の外国銀行により起こされたスキャンダルにより、外国銀行といえども、米国の規則に準拠して子会社や支店の経営を営むことが義務づけられております。92年より連銀が中心となり、アメリカンスタンダードで日本の銀行の検査を始めたわけですけれども、そこで邦銀の在米拠点におかれましては、日米の銀行監督制度の違い、会計制度の違い、リスク管理体制の違い、内部監査・外部監査の制度の違い等によりさまざまな指摘を受けられ、時に非常に厳しい措置を受けられるということが起こりつつ今日に至っております。

 そうした中で、私がお客様と追求しておりましたのは、いかに日本の銀行その他の制度を日本の実情に詳しくないアメリカ人の検査官に分かってもらい、いかにお客様における各種管理体制の強化の取り組みを検査官に分かってもらうかということでした。そこで学びましたことは、結局、アメリカ人の検査官の視点を理解し、検査官からのさまざまな質問を想定し、かかる質問についていかにアメリカの用語で答えていくかということがポイントであるということでございます。そして、立ち入り検査は1年に1度ですが、立ち入り検査時のみならず、日ごろより米国当局と密接なコミュニケーションを保つということをしておれば、アメリカにおいて支店、あるいは子会社経営は規制リスク管理上はうまくいくということでございます。

 同様のことが、今の日本の企業会計制度、あるいは会計士監査制度の強化の取り組みについてもいえると思われます。例えば、アメリカに対して、我が国における現状の課題、あるいは各種の取り組みをよく理解してもらえば、我が国の制度の信頼の回復は早くなされるであろうと思います。本日はこういう視点におきまして、後ほど実務にも触れさせていただきますが、むしろ総論的な話をさせていただくことといたします。

 具体的には本日、日本における各種取り組みについて、例えばアメリカからどういう質問が飛び出すかといったことを想定いたしまして検討をさせていただきます。

 お手元に資料の2と参考の2というものを用意いたしました。参考の2の方は、去年の5月、公認会計士審査会の会合に出席させていただきましたときの資料でございまして、アメリカの監査制度の概要をまとめております。

 それでは、まずは資料2に沿ってまいりたいと思います。この資料の2と参考の2は、基本的には同じ構成で項目を入れております。

 まず、歴史の点から入らせていただきたいと思います。質問1ですが、まず背景を御説明いたします。米国では60年代の終わりごろから大型の粉飾、それに伴う倒産という事件が相次ぎ、70年代に入りまして企業会計制度、あるいは会計士監査制度の問題が政治問題化いたしました。幾つかの措置はとられましたけれども、それでいろいろな批判がおさまったのもつかの間、再び大型の粉飾倒産事件が続出することに伴い、80年代に入り、特に米国の会計士業界は絶体絶命の窮地に追い込まれたわけでございます。そこで組織されましたのがこの「不正な財務報告に関する全国委員会」――通称トレッドウェイ委員会と申しますけれども――でございます。ここで、とにかくもう二度と粉飾・大型の倒産により、世間からの不信感を受けるというようなことを繰り返さないという決意のもとで、さまざまな角度から議論がなされた次第でございます。当委員会は特に公開企業を中心としておりますけれども、企業会計制度、会計士監査制度にかかわるすべての当事者の問題に焦点を当てております。そして、公認会計士業界のみならず公開企業、行政機関、そして教育機関に対してまでさまざまな勧告をしたわけでございます。

 資料の2の最後のページを開いていただけますでしょうか。ここに主な勧告項目を載せております。まず、公開企業に対する勧告ですが、企業経営者による健全な企業風土の確立の必要性ということから始まっております。企業会計制度、あるいは会計士監査制度を強化するには、会計士だけの努力ではいたし方がない部分が多くあるという認識のもとに、企業経営者の方々にいろいろな管理の強化、あるいは企業会計の重要性を認識していただくこと、そしてそういったことを推進するために健全な企業風土をまず確立していただかなければいけないという勧告です。それから内部会計統制、内部監査機能の強化を初め、監査委員会の設置、それから経営陣による財務報告責任に関する報告書の作成開示、監査委員会に関する報告書の作成開示、オピニオン・ショッピングの抑制、四半期報告制度の強化、これらの勧告を公開企業にいたしております。

 同時に、公認会計士に関する勧告としましては、ここに挙げておりますような勧告をし、さらに証券取引委員会及びその他の行政機関に対する勧告といたしまして、証券取引委員会の権限の強化、公認会計士に対する規制の強化、それから委員会自体の体制の拡充の強化をはじめ、幾つかの勧告をしております。

 それから、教育についても、もっと経営と会計のカリキュラムの中で監査や会計といったプログラムの内容を充実するようにという勧告がなされております。こうして見てまいりますと、やはり公開企業に対する勧告と証券取引委員会初め行政機関に対する勧告が目立っております。

 もちろん会計士業界に対する勧告もあったわけですが、さてここで、アメリカの状況をより理解していただくために、参考の2の方の3ページ目をあけていただけますでしょうか。3ページ目には横向きに「会計士監査制度の主な関係当事者」ということで全体像をまとめておりますけれども、簡単に御説明いたします。まず被監査企業側から御説明いたしますと、米国の特に公開企業では、企業のオーナーたる投資家から信任を受けた取締役会が経営を監視します。具体的には、その中で社外取締役の代表により構成される監査委員会が、会計監査を担当する外部監査人と社内の業務監査を担当する内部監査人の作業を監督し、また、両者と連絡を密にとりつつ経営のチェックを行う仕組みを持っております。企業の財務報告は、経営陣が負うとされておりまして、米国の上場企業のアニュアル・レポートでは、最高責任者のCEOの方と財務関係の責任者のCFOの方が経営陣の財務報告に関する責任をみずからの署名とともに報告書の形式で表明されております。関連の資料がこの参考の2の後の方に載っております。投資家による監視に加え、投資家保護のために公開企業の果たすべき責任と公認会計士の役割の重要性を徹底的に強調する証券取引委員会SECが企業のディスクロージャーの妥当性を相当な時間をかけてチェックするという体制がとられております。

 さらに申し上げますと、その中で会計士監査の前提となる会計基準は民間のFASBが中心となり策定し、同じく監査基準は民間の米国公認会計士協会が策定しておりますけれども、これらの機関の基準設定のプロセスもSECにより厳重に監視されております。後ほどより詳しく説明いたしますが、米国のSECという存在は「財務関係の警察」といった意味合いを持つと思われます。

 さて、米国の企業会計制度ですけれども、今までの60年代から始まるさまざまな大型倒産の問題の教訓により、とにかく企業の経営実態をよりよく反映する会計処理、あるいはディスクロージャーをいかに浸透させるかということを追求しつつ今日に至っております。これが会計士以外のところのインフラでございまして、次に監査法人側にまいりますけれども、会計士監査を担当する監査法人では、日本も同じようにチームを構成するわけですけれども、特筆すべきところは各種スペシャリストが相当数チームの中に入るということでございます。これは税務の専門家からシステム監査の担当者、いろいろな金融商品のリスク管理問題の専門家、いろいろな担保の鑑定士、あるいは年金数理士等さまざまな専門家がチームに入ると。簡単に申し上げますと、例えば、米国の大手の企業の監査においては、こういったスペシャリストも入れた監査チームの総人員というのは百人を超えるということも決してまれではございません。そういう中で他の監査法人によるピュアレビューを数年に1度受けているということでございます。

 ちょっと前置き的なことが長くなりましたけれども、例えば、アメリカが我が国で今取り組まれております企業会計制度や会計士監査制度の強化について質問をしてくるとすれば、このような社会のシステムを前提に質問をしてくることになるわけです。ですから、我が国からもそのような質問が出たときに、総合的な見地より説明をしていくということが必要になると思われます。

 それではもとに戻りまして、会計士監査制度の前提と今御説明しましたインフラのところですけれども、1ページ目の最後の質問2にまいります。時間の関係で資料の2のすべての質問は取り上げませんけれども、質問の2は、「日本におけるコーポレート・ガバナンス強化の動きは会計士監査制度にどのような影響を及ぼしていますか」です。近年、経団連を初め、いろいろな取り組みをなされております。こういった動きも会計士監査制度の強化とは無縁ではございません。ですから、両者の動きがいかに密接に連携をとっているかということも一つのポイントかと思われます。

 次のページにまいりまして、質問3でございます。「日本企業における内部監査制度の強化についてはどのように取り組まれておりますか」と。ここで法律といいますか、制度の違いで、日本では、まずは監査役監査の制度があり、そして一般的には検査部、考査部というものがある一方、アメリカでは基本的には監査役という制度はなく、それにかえて社外の取締役からなる監査委員会というものがあるわけですけれども、この内部監査の日米の違いというのは重要な問題でございます。これが会計士監査制度の観点でも重要です。

 簡単に御説明申し上げますと、極めて状況の異なる点といたしまして、米国ではまず企業のトップの方々に極めて重い各種の責任が課せられておりまして、例えば不祥事や粉飾の問題が発生しますと、企業に対する制裁はもちろんのこと、トップ個人の方についても多額の賠償請求が来るということは比較的容易に起こり得ます。そういう状況が出発点でありまして、そうであるならば、企業のトップの方々は当然のことながら各種の管理体制の強化はより真剣に取り組まざるを得ない。その上で、内部監査も相当多額のコストをかけてやらなければなお心配だと。さらに言えば、それだけでも心配で、外部監査でも徹底的にいろいろなことを見てほしいという土壌が生まれる訳でございます。

 企業犯罪というのはどこの企業でも繰り返し起こります。アメリカ特有の問題ですが、その企業犯罪に関するインフラといたしまして、米国では数年前にこの企業犯罪の量刑ガイドラインを設定いたしまして、そこで企業犯罪が起こったときであってもいろいろな管理強化に日ごろから取り組んでいる企業においては、その量刑が低くなるという制度を導入しております。そういったいろいろな制度を背景にいたしまして、米国ではこの10年ないし15年の間に内部監査制度は飛躍的に発達しております。内部監査人は一つの専門職種として、公認内部監査士、サーティファイド・インターナル・オーディターという資格もあり、あるいは業種により、例えば銀行においてはチャータード・バンク・オーディターですとか、その業種に見合った内部監査人の資格ができておるということでございます。

 まず、会計士監査の前提として、充実した内部監査制度が存在するかどうかということは大きな問題です。内部監査において、いろいろな観点を徹底的に調べておれば、会計士としてはある程度そのシステムに依拠することができるということでございます。逆に、内部監査で実質的な検証が何もされていなければ、会計士監査は相当程度、特に内部統制の分野については相当程度見なければならないということになっていくわけです。ですから、そういう意味で、日本における内部監査制度というのはどうなっておりますかという質問についても、これから各種の取り組みをうまく説明していく必要があると思われます。

 既に触れておりますが、次の質問4にまいりまして、「日本企業の経営陣の方々は、財務報告に関する責任をどのように認識されていますか」と。これも非常に重要な点です。会計士監査制度の大前提として、監査を受ける企業側の経営陣の方々がみずからの財務報告に関する責任をしっかりと認識していらっしゃることがあげられます。かかる責任の認識は、先ほど申し上げましたように、アメリカの上場企業ではトップの方の署名入りで報告書の形で公表されておりますし、国際会計基準を適用しているヨーロッパの企業においてもそういった動きが広がりつつあります。書面でそういった責任の所在を表明するかどうかはともかく、我が国の企業会計制度の信頼回復に向けまして、まず企業側の経営者の方々の御認識はどうかという点をはっきりさせる必要もあろうかと思われます。

 例えば、一般的なお話ですが、日ごろお客様とお話をしておりまして、「新しい会計基準に基づく数字は会計士さんが計算してくれるんでしょう」というような言葉を頂戴することがございますけれども、こういった御発言というのは、欧米の感覚からすれば、財務報告に関する責任の放棄と受け取られかねないということでございます。どちらがいいか悪いかということではなく、外国の常識ということを踏まえて、日本の制度の特殊性なり課題なりを説明していくことが必要と思われます。

 それでは、次にまいりまして、企業会計制度です。会計士監査に行く前にいろいろなところに寄って申しわけありませんが、質問の1で、「日本のいわゆるトライアングル体制は、企業会計制度を強化していく上で支障になっていませんか」という質問は、ある程度日本のことをよく知っているアメリカ人の会計士なら聞きかねない質問でございます。もちろんこの問題につきましては、まず税効果会計の導入により税法と財務会計の調整は既になされておるわけですけれども、問題は、商法と財務会計の調整でございます。米国の会計基準、あるいは国際会計基準の実務で申し上げますと、会計の諸問題は常に連結を前提に検討をいたします。ところが、日本ではそこに連結を前提としない商法が財務会計に大きな影響を与えているということは、もちろんアメリカで会計士の人以外でも、政府系の方でも知っている方は知っていらっしゃるということでございます。この点が我が国における企業会計制度の強化の上で支障になっているのではないかという見方がございます。この点についていかに説明をしていただくかということも重要事項と思われます。現に私も12年ぶりに1月より日本の提携先の監査法人に出向してまいりまして、いろいろな会計問題の検討を聞いておりますと、常に商法の影響が議論の中に色濃く出ていることについて、アメリカぼけしているということなんですが、連結しか考えてこなかったベースでそれを見ておりまして、非常に違和感を感じることしばしばでございます。ですから、今後この部分の調整をどのように説明していただくかというのもまた重要な事項だと思われます。

 さて、次の会計実務の方に進んでまいりまして、質問の2を取り上げさせていただきます。日本においては、昨今次々と新しい会計基準が発表され、その影響により個別企業が多額の損失を計上するといったニュースが出ております。あるいは、突然債務免除を要請とか、そういったニュースはアメリカにも配信されております。そこで質問ですが、「このような傾向はいつまで続きますか」。このようなニュースがいろいろ出ますと、それを受けとめる外国の見方は、一体この手の事例は日本でどのぐらい存在しているのかということを考えてしまうわけです。ですから、このような傾向については、もちろん企業会計の強化を徹底的に今図られている時期であり、過渡期固有の状況ですけれども、今後、例えば3年でこういう傾向は落ちつくとか、そういうことをうまく説明していくことが外国の不信を払拭するということでも必要な事項と考えられます。

 さらに言えば、やはりこの質問3の「法形式や税務上の取扱いよりも取引の経済的実態を重視する方向に進んでいますか」。そして質問4、次のページですが、「日本のディスクロージャー制度は、今後利用者の判断を誤らしめないことを目標として改善されますか」ということについてどう答えていくかということも重要です。

 時々、ニューヨークでもアメリカ人と話をしていて、今までいろいろな会計の問題を放置してきたのは、日本の会計士が無力であるからではないかというふうなぶしつけな質問をされることは1度や2度ではございませんでしたけれども、いろいろな状況を知らない外国の方に、とにかく我が国の取り組みをうまく説明していただくということが必要でございます。

 さて、次の質問5にまいりまして、「内部統制の包括的なフレームワークを確立する構想はありますか。あるとすれば、参画者はだれですか」ということを入れております。これは先ほどの児島先生のお話の中にも出てきておりますけれども、米国では内部統制の包括的なフレームワークを監査基準が取り込んでおります。簡単に御説明いたしますと、冒頭で触れましたトレッドウェイ委員会の下部組織としまして、Committee of Sponsoring Organizationという組織が結成され、同委員会の手により内部統制の包括的なフレームワークが米国では90年代の初頭に確立されております。通称、このコミッティの頭文字をとってCOSOレポートと呼ばれておりますけれども、このフレームワーク自体は、例えば米国の銀行監督当局がBISの場に持ち込んだことでも知られております。そして、BISで採択されたほとんどCOSOの写しとも思われる指針が我が国にも波及し、その流れを踏まえ日本で作成されましたのが金融監督庁の検査マニュアルでございます。同検査マニュアルは欧米のフレームワークにも決して引けをとらない立派なフレームワークであり、このフレームワークにより現在我が国の銀行において内部統制の見直しが進められておるということでございます。この動きは金融機関だけにとどめておくのは不十分と考えます。私見ですが、一般事業会社にも適用できる日本版COSOレポートの構想を御検討されるということが必要ではないかと考えます。内部統制の整理なくしては、監査だけを強化していくということはシステム全体の効果効率性の観点からも望ましくないと考えます。

 それでは、次にまいりまして、いよいよ会計士監査制度の方に入ってまいりますけれども、質問1から質問4まで、すべて非常に重要な意味合いを持っていると思われます。質問1、「日本における監査時間は、米国に比し絶対的に少ないように感じられます。かかる状況は今後どのように推移していくのでしょうか」。質問2、「日本でも、今後公認会計士以外の各種専門家が監査に起用されますか」という問題です。

 日本における監査時間、もしくはより直接的に申し上げますと監査報酬ということにもなりますが、欧米に比べますと、絶対的に低い水準でございます。もちろんいろいろな訴訟の状況とか制度の違いはあるにせよ、それにしましても低いのではないかということでございまして、これを健康診断に例えてみますと、日本の監査のスケールというのはせいぜい半日か1日程度の健康診断というのに比し、欧米の会計監査は多分必要に応じて脳の専門家から内蔵の専門家から神経の専門家からそれぞれの専門家が入って相当の時間をかけて行う本格的な人間ドックというふうに例えることができると思います。もちろん今の時世で監査報酬を大幅に引き上げるなどというのはとんでもないという御意見は当然あると思いますけれども、監査のスケールの絶対的な不足というのは、やはり我が国の会計士監査制度の信頼を回復する上では非常に大きな支障になると危ぶまれます。より充実強化された監査が実施されれば、企業の資金調達もより有利に行っていただけるのではないかというのが一つの期待でございます。

 それから、次にまいりまして、「日本の監査人は、関与先の経営陣・営業担当者とどの程度のやりとりをされていますか」。質問4、「日本の監査人は、関与先の内部監査人とどの程度のやりとりをされていますか」と。これらの質問も言外に、アメリカでは相当やっていますよということを含んでおりまして、もちろんこれは絶対的な時間不足も影響するかもしれませんが、答えよういかんによってはさらに外国の不信感を抱かせるということになることも考えられます。

 全般的な話をさせていただきましたけれども、最後の項目にまいりまして、米国の企業会計・会計士監査制度に対する証券取引委員会の最近の動きを御説明させていただきます。

 先ほども申し上げましたように、米国ではSECが「財務の警察」として企業会計制度・会計士監査制度を徹底的に取り締まっております。その体制はと申しますと、大手会計事務所のパートナーと同様の経験者が相当数入っている中で、公認会計士が約200名、それ以外に各産業のアナリストですとか弁護士等がフルタイムで企業会計制度、あるいは会計士監査制度のモニタリングをやっております。なおかつ各種制度の継続的な改革強化を進めているということでございまして、特に98年の秋以降、SECの今のレビット委員長が9月にあるところで講演したのを皮切りに、もう事あるごとに委員長、あるいは上層部の方が財務報告の重要性ということを説いていらっしゃいます。それは、やはりアメリカがいかに企業会計制度が重要かと。これは株価の維持もしかりですし、経済の成長もしかりでありますが、その重要性を認めているからにほかならないわけでございます。結局、こういったアメリカに対して今後いろいろな取り組みをこちらから積極的に説明していっていただくということは、特に行政機関に期待されるところだと考えます。

 そういう意味でいきますと、冒頭の話になりますが、我が国の銀行監督につきましては、金融監督庁発足以来、あるいは金融再生委員会が発足して以来、さまざまな取り組みをされ、今ではアメリカにおいても高い評価を受け、ニュース等でもいろいろ取り上げられております。そういう意味では、この企業会計制度、あるいは会計士監査制度の各種取り組みについてもうまく説明し、信頼回復を早く成し遂げるということを願ってやまない次第でございます。

 監査実務の点につきましては、この後、質疑応答で何なりとおっしゃっていただければと存じます。以上をもちまして、私の御説明とさせていただきます。

○脇田部会長 ありがとうございました。具体的に質問という形で、それにお答えいただくという形で、非常にわかりやすく御説明をいただきました。

 それでは、先ほどの児島参考人の御報告も含めまして、これからしばらくの時間を質疑応答、あるいは御意見の陳述に使わせていただきたいと思います。どうぞまた御自由に御発言いただきたいと思います。

○内藤委員 内藤でございますが、頼広先生にお伺いしたいんですけれども、先生、最初に参考資料の3ページ目の方で、SECが被監査企業に対してディスクロージャーの妥当性を独自に時間をかけてチェックしていますよと。そのことに関して、同じ参考資料の5ページ目に、ちょうど二つ目の段落になるかと思うんですが、そこで上から4行目に「上場企業のディスクロージャーについては、SECにより厳重に監視されており、開示内容が不適切と認められた場合には、その訂正はもとより制裁金がが科される場合も少なくない」というふうにお書きでございます。そして、きょうの資料2の方の2ページの質問5の方でも同じ旨のことが書いてあるんですが、この点についてもう少し教えていただきたいんですけれども、「公開企業のディスクロージャーの妥当性を相当な労力をかけ別途チェックする」という意味は、公認会計士による財務諸表監査とはまた別に同じ財務諸表を含んだディスクロージャーの妥当性をSECの担当者がチェックをしているという意味なんでしょうか。それとも別の意味の別途という意味なんでしょうかというのが第1点と、それからディスクロージャーの妥当性という場合に、財務情報だけじゃなくて被財務情報の妥当性もチェックしているのかどうか。

 それから三つ目は、その妥当性を判断する指標としては何を用いているのか。

 それからこの最後の点ですけれども、こういうSECによるチェック機能の強化が財務報告の重要性を強調していることにつながるというお話でしたけれども、じゃあそうしますと公認会計士がやられている監査の役割とどういう位置づけに関連性があるのか。以上、教えていただきたいんですが。

○脇田部会長 お願いいたします。

○頼広参考人 かしこまりました。まずSECの監視体制でございますが、大体上場企業が今アメリカに1万数千社ございます。この上場企業につきましては必ず、今ですと二、三年に1度でしょうか、SECによる細かい開示のチェックを受けるということになっておりまして、SECによるチェックの仕方は各企業のアニュアル・レポートのさまざまなデータについてコメントレターという書面によりさまざまな質問を投げかけるということでございます。御質問の中でどういった指標でということにつきましては、もちろん会計基準に沿っているかどうかということでございますけれども、よりSECの視点は投資家の判断を誤らせるようなディスクロージャーの、例えば本来あるべき開示の省略がないかどうかということまで波及しております。

 例えば、実例で申し上げますと、比較的最近の話ですが、某電機メーカーがこの点で制裁金と申しますか、罰金を取られております。その理由は、同社が映画の会社を買収したときのその部分の情報を、実はそこの採算がよくないということなんですけれども、採算のいい事業部門にくっつけて開示をしていたということにより、その映画産業部門の収益力が妥当に開示されていなかったということが理由でございます。これは結局アニュアル・レポートを見ているだけではわかり得ない状況ですが、いろいろな雑誌・新聞等の分析も同時にしておりまして、どうも同社が買収したその会社の業績がよくないというふうなところからSECのチェックが入ったのではないかというふうにも言われております。

 これは一つの実例ですが、そのほかに今SECが相当注意力を注いでおりますのは、企業結合の会計とそれから収益認識の妥当性ということでございます。企業結合につきましては、昨今大型の合併買収が相当あり、そこで持分プーリング法というのが通常適用されているケースが多いわけですけれども、本当にそのプーリング法が適用できるのかどうかということを詳細に見ていくということで、これはSECより財務報告の責任者あてにコメントレターが来るわけですけれども、過去にさかのぼって、例えばどうしてプーリング法が妥当というふうに結論づけたかということまで詳細に聞いてくるということでございます。その結果、今起こっておりますのは、そのプーリング法が妥当ではなかったということにより、過去の財務諸表の訂正を命じるという事例がいくつも出てきております。そういったことが出ますと、通常は制裁金までいくということでございまして、先ほどの某電機メーカーのケースでもそういった制裁金が出ております。

 財務情報と非財務情報、両方もちろん見ております。非財務情報から見て、財務情報のいろいろな開示に何か整合しないことがないかどうかという観点で見ます。これは、やはりそういった分析をするのは、各産業のアナリストが入り、あるいは大手会計事務所のパートナーの職にあった経験豊かな方が中に入りやっているということでございます。ですから、結局、そういった制度があるがゆえに、会計士側もより必死で監査をせざるを得ないと。関与先のところでSECからそういう指導を受けるということになれば、いよいよ会計士は何をしていたのかということにもなりかねないわけで、そういう牽制機能としても働いているわけでございます。

 それで、SECと会計士の関係でございますけれども、当然まず監査の責任は会計士側にあるということでございますけれども、やはり会計士は幾ら社外取締役による監査委員会の監督を受けると申しましても、やはり民間の団体でございます。いろいろなプレッシャーがかかったときに妥協をしていないかどうかといったことも含めまして、SECがしっかりモニタリングをしているということでございます。

 こういう体制が出てまいりましたのは、このトレッドウェイ委員会の勧告にもよるわけですけれども、過去60年代から起こったいろいろな大きな事件というのは、結局その会計士側の弱い立場からいろいろなことに譲歩してしまったという事例も多々あったことがその背景になっております。

○脇田部会長 ありがとうございました。内藤委員、いかがですか。

○内藤委員 どうもありがとうございました。それで、確認なんですが、SECがチェックをしまして、過去の財務諸表に修正が行われ、そしてその制裁金が科されるような場合には、その当該財務諸表が適正であるとしていた会計士に対しても制裁があるということなんでしょうか。

○頼広参考人 それはケース・バイ・ケースでございます。英語でエンフォースメント・アクションと申しますけれども、これはSECの方で発表しておりますが、基本的には大部分は企業のトップの方、あるいは財務関係の方ということでございます。ただ、中には明らかに会計士側に落ち度があったということで制裁を科すということは出ておりまして、あるアメリカの大手企業の監査を担当していた担当のパートナー及びその監査を審理していた審理担当のパートナーに制裁が加わったという事例も最近出ております。

○脇田部会長 加藤委員、御発言どうぞ。

○加藤委員 頼広先生にお聞きしたいんですけれども、先ほど御報告の中に監査時間のお話があったんですが、この審議会でも監査時間のことはよく話題に出るんですが、余りにも先ほどの説明を聞くと大きな差があるという感じで、10%や20%ではなくて、何か2倍も3倍も5倍も日本の監査時間をふやさないとアメリカ並みにならないというような人間ドックの例でお話しされていましたけれども、これだけ差があると、監査基準以前の問題で、時間をふやせばそれでいいのかというような感じもするんですが、現実問題2倍、3倍、5倍に監査時間をふやすのはなかなか難しいと思うんですけれども、それと時間をふやしたからといって監査の品質とか、その問題発見能力がそれに比例してふえるものでもないと思うんですが、この辺、アメリカの方では本当にそういう見方をしているのか。日本はもともと監査時間が少ないからいろいろ問題が起きるんだというような突き放した見方をしているのかどうか、ちょっとその辺をお聞きしたいのと、これだけ差があるというのは何か客観的なデータがあるのかどうかお聞きしたいんですが、日本の場合には、会計士協会の方から法定監査について時間のデータが公表されているわけですが、アメリカの場合はAICPAとかどこかから、それに見合うようなものが公表されているのかどうかをお聞きしたいんですけれども。

○脇田部会長 では、お願いいたします。

○頼広参考人 現実問題といたしまして、監査費用では、先ほど健康診断の例えで申し上げましたけれども、実際の絶対額で比較しましても相当な開きはございます。例えば金融機関で、大手の金融機関を前提にいたしますと、少なくとも二、三倍の差はあろうかと思われます。事業会社についても、やはり相当の差があるのではないかというふうに見ておりまして、アメリカにおきましては、この監査報酬の額、あるいは監査時間というのは一切開示されておりませんが、プライベートのレベルで、例えばアメリカの法人と日本の法人で情報の交換をしてみますと、そこは明らかに出てくるということでございます。

 もちろん、おっしゃるように、徹底的に健康診断をしたからといって重大な問題が見つかるわけではなく、1日の、あるいは半日の健康診断でも十分問題が見つかるということもございます。ですから、要は説明のしようだと思いますが、確かに日本の監査費用が低過ぎるというのは、アメリカの私の属しております事務所でも認識しておることでございまして、そういう意味では、とにかくこの問題について明確な回答を用意しなければいけないのではないかと考えます。

 さらにつけ加えますと、その前提となる企業の管理体制の方を見た場合に、厳しい見方をすれば、日本ではまだ内部統制の包括的なフレームワークが確立されていない上に、内部監査制度の規模も圧倒的に日本とアメリカを比べると違いがあると。そういう中で、なお日本の監査時間、あるいは監査報酬がこれだけ低くても大丈夫だということを説明できなければ、結局は信頼回復にはつながらないということでございます。よろしいでしょうか。

○林委員 林です。大枠のお話を聞きたいんですが、1点は感想ですね。頼広先生のですね。2点目は質問したいんですけれども。

 頼広先生、アメリカの実情を踏まえられて、非常にわかりやすく総合的な見地から問題点を指摘されたと思うんですね。ごもっともだと思います。非常に私もよく分かりました。同時に、日本とアメリカ、文化論をする気は毛頭ないんですけれども、法律とかあるいは制度、そういったものは当然その国々の歴史、あるいは文化というものを相当色濃く反映するものなんでしょうけれども、また同時にその企業会計、あるいは監査制度というのは、これだけ日本の企業がグローバル展開しているという中では、当然頼広参考人がおっしゃったように、我々の企業会計というのはこういうふうに変わるんですよと。監査もこういうふうに変わりますということを十分説明できなければいけないと。そういう意味で、非常にわかりやすい御指摘をいただいて、ある意味では感謝しているということですね。

 2点目は頼広さんにぜひお伺いしたいんですが、ずっといまだに私自身の中でも回答が出ないんですけれども、企業の内部監査制度のところを御指摘になりまして、アメリカの企業の場合はトップが不祥事とか、あるいはいろいろなものに見舞われた場合、必ず損害賠償の対象になって、非常に個人的にも財産的にも厳しい対応を迫られると。日本の場合は、この辺の内部監査制度についてはかなり緩いものではないかなと。それから同時に、頼広さんが御指摘になりました日本の企業の経営トップの財務についての重要性の認識ですね。非常にやっぱり御指摘のように私は低いと思います。ですから、その辺の一番のイロハのところを改善、改革していかないと、幾ら会計監査をしっかりやらなければいけないといったところで、絵に書いたもちになるんではないかと。その辺でぜひ頼広参考人のちょっとアドバイスを。どういうふうにしたらいいのか、どういうふうにしたら企業トップ層の財務についての重要性の認識が強まってくるのか、その辺ちょっとアドバイスしていただきたいと思います。

○頼広参考人 一つの背景でございますが、アメリカには公認会計士が30万人以上おります。企業のトップの方々の中にも公認会計士の資格を持つ、あるいは大手会計事務所に席を置いていた、あるいはMBA等のコースで会計、あるいは監査の問題、あるいは不正がいかに行われたかといったケース・スタディー等を学んだ方はたくさんいらっしゃいます。まず、アメリカの企業経営者の方々の状況としまして、そういったことを通してこの認識を強化していただいているというのが一つだと思われます。

 そういう意味で、トレッドウェイ委員会が教育に関する勧告をしているというのは非常に注目すべき事項だと思われます。ですから、そういう意味では、やはり今後、例えば取締役会等の場で担当の監査法人からこの企業会計制度の重要性なり、いろいろな勉強会をするといったことなども一つのアイデアだと思われますが、またより重要なこととしまして、行政機関の方、あるいは政治家の方が企業会計をもっと重要視するようにということをおっしゃることも、また重要ではないかというふうに考えます。もちろん、一たび何かあったときに一個人に何十億円という賠償が起こるという制度が果していいのかどうかというのは甚だ疑問でございまして、日本ではそういうことはないので、明らかにアメリカのコピーにはならないんだとはっきり言える部分は多々あるかと思いますけれども、そういった意味で、内部監査のことについて申し上げますと、やはり日本の企業経営というのは非常に効率性を追求されているといいますか、あるいは性善説で成り立っていると申しますか、そこが例えばアメリカのやり方ですと、金融機関の例で申し上げますと、まずディーリングをしっかり監視できる機能が別途なければいけないということで、ミドルオフィスということをつくるわけですけれども、そのミドルオフィスには、ディーラーと同じぐらいいろいろな金融商品をことを知っている人を入れなければ、その機能は機能しないと。ここでディーラーと同じような給料を払わないとその機能は立ち上がらないわけです。さらに、リスクの多い商品を扱ってる金融機関については、そのミドルオフィスが果してしっかり監視できているかどうかということについて、また内部監査部門の方に同様の能力を持った人材を配置するか、あるいは外部に委託するかというふうなことまでやっております。これは大変なコストがかかることでございますけれども、それはそのコストに見合うだけのリスクをとって、収益を稼いでいるからということでございます。

 もとに戻りまして、内部監査につきましてもやはり、例えば我が国の銀行においていろいろな支店の検査は相当程度やられておりましても、いろいろな本部機能の検査となると余りされていなかったりとか、そういうことが日米の違いで起こると。またアメリカの例で申し上げますと、超一流企業によっては、限られたエリート候補は必ず内部監査部門のコースを通らなければいけないということになっております。それだけやはり内部監査部門に属することが、例えばその会社ではエリートの条件だというふうなこともございます。それはやはり企業のトップの方々の御認識ということで、結局最初の御質問に戻るわけでございますけれども、いずれにしましてもやはり、勉強会と申し上げましたが、その理論を企業の上の方の方がしっかり学ばれるという場はいずれにしても必要かと存じます。

○脇田部会長 ありがとうございました。林委員、よろしゅうございますか。

○林委員 きょう質問の形でずっとこれを出していただきまして、恐らくこういう質問に対して的確に日本側が、我々が海外の質問に対して答えられないと、なかなかしんどい部分が出てくるのかなという感想があります。頼広参考人が言われましたように、アメリカの機関投資家、あるいはファンドマネジャー、アナリストから見れば、随分日本の企業の財務については、あるいは監査については信用を失墜してしまったと。それを回復しなきゃいかんという状況にありますので、ぜひこの質問に対する回答をきちっとつくっていくことが重要ではないかと。これまでずっといろいろな形で議論しておりますので、完全コピーというのはあり得ないと思いますね。日本は日本のやり方があるんでしょうから。そういうことを説明責任を果たせる形で説明できるような回答というのは書くべきであろうなと。

 それからもう一点はそれをやらないと、やっぱり日本の企業は90年代、失われた10年なんて、うちの日本経済新聞も書いておりますけれども、物作りといいますか、貿易を見ますと非常に強いと。それはやはりいいものを作る能力が物すごい高いんですね。それで会計の方は相当劣っている。財務は劣っているんでしょうけれども、やっぱり物作りの強い日本、先端産業技術を駆使した日本が、恐らく今から、アメリカが先行しているというIT技術もどんどん経営の中に取り込んで、もう一回強くなると思うんですね。強くなるよというところをもっと後押しするには、この財務会計のところをしっかりしていなきゃ私はだめだという意味で、ぜひきょう頼広参考人の御提案の質問に対する回答というのをしっかり書いていく必要があろうかと思っています。

 以上です。

○脇田部会長 ありがとうございました。ただいまこれからの審議の中で生かさせていただきたいと思いますが。

 伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員 今、林先生からいろいろお話しいただいたんですが、私は経営者の一人として、ここに葛馬さんもいらっしゃいますけれども、きょうは経団連がちょっと出ていないんで、日本の企業経営に関する基本的な論議まで及んできているんですけれども、私は日本の企業経営というものが財務をおろそかにしたということはないと私は思います。それから日本の経営のトップには必ず経理担当が、アメリカではCFOだけれども、日本でも大体、私は副社長だけれども、社長が経理でなければ、副社長が必ず入っているし、大概ナンバーワンかナンバーツーにいるはずなんですね。つまり、それだけ企業会計、会社の中における会計システムというのが極めて重要であるということは、これは会社経営をやる上で当たり前の話であって、ここはちょっと誤解があるんじゃないかと思います。

 ただ、銀行におけるいろいろな問題が起こったと。あるいはゼネコンにおいていろいろな問題が起こったということは、これは単に会計の問題だけじゃなくて、日本の金融政策なり、あるいは規制の問題なり、いろいろな問題が絡んでそれが発生しているんであって、それを会計の問題で片づけるというのは、ちょっと私は一面的ではないかというふうに反論をしたいというのが1点目ですね。

 それからやはり、ここにいろいろお書きになっておられることなんだけれども、確かに監査費用は日本の場合低いと。それに比べてコンサルティング費用は非常に高いわけですね。従って、ビッグ・ファイブにしてもコンサルティング会社は物すごくもうかっていると。監査部門はみんな赤字とは言わないけれども、損益はとんとんだと。これはアメリカでも同じような現象を僕は聞いていますけれども。従って、確かに頼広先生非常にわかりやすく御紹介をいただき、大変いいまとめ方をされているけれども、私から言わせれば、これについては十分、やはり我々としてもきちんとしたそれなりの回答はできるはずだし、我々の企業会計審議会もこういうことを十分踏まえて今まで対応してきたわけですよね。むしろ私から言わせれば、日本の今の宮島先生がおられて――大変いつも、私は宮島先生と親しいものですから、ついつい名前を出させていただくんですが、やっぱりトライアングル体制というのは、要するに日本のベースの独特の体系であり、それからコーポレート・ガバナンスにしても、過去の間接金融から直接金融に変わりつつありますけれども、コーポレート・ガバナンスも独特であったと。それで今の内部監査制度についても、基本的には会計監査人とは別に監査役制度があるわけですね。これはドイツとかあるいはアメリカとは違うかもしれませんけれども、日本独特の監査役制度だと。これは確かにその監査役の設定のあり方について問題があります。ありますから、今商法でいろいろ改善はされつつありますが、それにかける人員と費用というのはかなりの大きな分野で、アメリカはそれはないわけで、もちろん監査役というのはある。それは社外取締役があってやっているわけで、その分の費用を加えると監査役に対する、監査に対する費用は企業はかなり負担してきているわけなんです。従って、公認会計士さんの費用そのものはわりかし少ないかもしれませんけれども、別の面において、だからその機能もあわせ考えて、公認会計士問題を考えていかないと、やっぱりちょっと僕は理解できないと。単に企業が、費用が、コストがかかるだけでは、日本の企業の存在意義はないと。コスト競争に負けてしまうということもお考えいただきたいというふうに思うので、御意見はいろいろあろうと思いますけれども、これはやっぱりいろいろな方の御意見を聞き、我々経団連サイドの、あるいは財界サイドの意見も聞いていただきたいと。これはそういう場がこの場だろうと私は思っているので、広く我々の意見をよく聞き、実際に最終的にファイナルなものにするのには一面的な見方ではまずいというふうに思うところをちょっと言いたいと。以上です。

○脇田部会長 御指摘いただきましたこと、ありがとうございました。いろいろな御意見を合わせてこの審議の中で生かさなければなりませんので、伊藤委員の御指摘そのとおりだと思います。

 それでは、特にその後に御発言がございませんようでしたら、ヒアリングはこれで終わらせていただきたいと思います。

 ここで、若杉会長に交代をさせていただきます。

○若杉会長 本日も活発な御審議をいただきまして、どうもありがとうございます。

 本日の議題とは直接関係はないんですが、公認会計士協会から公表されております金融商品の会計基準に係る実務指針におきまして、金融機関に特別の経過措置が設けられましたことに関して国会でも取り上げられたようでございます。当審議会といたしましても、実務指針の作成を公認会計士協会にお願いいたしているところでございますので、ここでこの経過措置につきまして会計士協会の方から御説明をいただければありがたいと、こう考えております。

 それでは、会計士協会の西川常務理事の御説明をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○西川常務理事 西川でございます。金融商品会計基準に関する実務指針におきまして、有価証券の減損に関する具体的な指針を入れております。それは、基準の方で「有価証券のうち市場価格のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、評価差額は当期の損失として処理しなければならない」という部分についての具体的な指針ということでまとめたわけですけれども、二つのポイントがありまして、「著しい下落」という部分とそれから「回復可能性」と、この二つについて順次テストをするというような指針をつくったわけですけれども、当初公開草案の段階では、50%程度又はそれ以下の下落は著しいとして、それを下回るものである場合については、一つ又は少数の銘柄の有価証券がそういう状態にあったときに金額的に重要性を有するという場合は時価が著しく下落したものと判断するというような書き方にしておりました。これは一般事業会社を想定したような書き方になっておりまして、現実、金融機関のような場合は非常に多数の株を持っておりますので、一つ又は少数の銘柄が重要性を有するというようなことはないんですけれども、それが幾つも固まりますと、重要性を有するということで、この公開草案の書き方ではまずいなということで、実務指針の段階で相当内容を変えたわけでございます。

 そこで、まず最初に考えたものが、50%以上の下落については著しい下落であり、かつ回復可能性も一般的にはないというような推定規定を置いてまず外すと。それから、30%までの下落については、これは一般的にボラティリティーが株価の場合ありますので、その会社自体の業績云々にかかわらず、それぐらいは上がったり下がったするだろうということで、これも見ないということにするということで、残るのは30から50%なんですけれども、これについて企業が合理的な基準を定めてそのものについて著しい下落、これは重要性の部分ですけれども、それと回復可能性を判断するというようなことを入れたわけです。この合理的な基準というのは、一般事業会社の場合ですと、偏った保有の仕方や何かをしているから、企業ごとにある程度特殊性があるだろうということで、要するに、事前に例えば30%のところを40%という設定をして、40から50についてテストを行っていくということなんですけれども、じゃあ30から40の部分はどういうことかというと、重要性のテストであるとか回復可能性のテストをしなくていいということを事前に企業が判断できるというようなことを想定してつくったものでございます。

 これについて、銀行などに関しましては非常に大量に保有しているということもあるんですけれども、各業種に偏りなく、満遍なく株式を持っていると。そうなりますと、余り一つ一つの銘柄に個性を持っていないような形の保有状態になっているんじゃないかということがありますので、企業ごとの合理的な基準というようなことよりも、一律的な基準の方がいいのではないかということがありまして、現実に実務が動いてるということもありましたので、検査マニュアルに当面の間従うというようなことを最終的に入れたわけでございます。ただ、これが検査マニュアルの方ですと一律なんですけれども、50%未満の下落についての具体的な記述がないということもありまして、いろいろ新聞等で書かれるようなことになったということでございます。

 現状どういう状況になっているかと申しますと、金融監督庁の方から3月の初めに会計士協会の会長あてに質問が来ておりまして、その質問に対する回答を作成中という状況にあります。質問の内容は、今申し上げました本文にあります企業の設定する合理的な基準というのはどういうふうに判断をするかという点が1点と、それから実務指針の209項に検査マニュアルによるということを入れた理由。それから3番目に、これは預金と受け入れ金融機関が対象になっておりますので、その他の金融機関とどういうふうに違うんだといったような質問が来ております。これについて回答するということですけれども、その回答によって、また協議の上、方向性を見出していきたいというふうに考えておりますけれども、現状のままの209項の内容、つまり今の検査マニュアルのままでいいということには恐らくならないと思いますので、削除という形になるのか、209項の文言を変えて何かしら本文を生かした形で使えるというのもあり得るし、あるいは新たに金融機関向けに監査上の扱いを考えるといったようなことも考えられるということで、現在、金融機関の持株の仕方が一般事業会社と違う、会計処理に関して違うことになるべきかどうかということを協会の内部で議論しているという最中でございます。

 大体、以上でございます。

○若杉会長 どうもありがとうございました。実務指針につきましては、当審議会から公認会計士協会に作成を依頼しているという経緯がございますので、この問題につきまして我々もいろいろ強い関心を持っているわけです。合理的な理由なくして、金融機関が特別な扱いを受けるということはないというふうに私ども考えたいと思っております。

 ただいまの御説明にもありましたが、金融機関だけ適用を緩和するような趣旨ではないと思いますので、公認会計士協会におかれましてもその趣旨を徹底されまして善処していただきたいと、こんなふうに考えております。

 いろいろ審議会から協会の方にお願いしておりますけれども、またいろいろなこういうような問題につきましては、いろいろ御報告をいただければ幸いに存じております。よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

○脇田部会長 以上でございます。そろそろ予定いたしました時刻も参りましたので、本日の部会は、これをもちまして終了させていただきたいと思います。

なお、次回の部会は、4月21日(金曜日)の午後2時から4時に開催し、これまでのヒアリング、あるいは御議論を踏まえました全体的な論点整理を山浦先生から御報告いただき、またそれにつきまして意見交換、審議をさせていただきたいと思います。

 本日は、皆様にはお忙しいところを御参集いただきましてありがとうございました。