企業会計審議会 第二部会 議事録

日時:平成12年5月12日(金)午前10時01分〜午前11時58分

場所:大蔵省第四特別会議室

 

○脇田部会長 おはようございます。定刻になりましたので、これより第7回第二部会を開催させていただきます。皆様にはお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

 なお、本日はこの部会が終了しました後、総会が予定されておりますので、できれば10分ほど早目に終わらせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、早速これより議事に入りたいと思います。本日は、前回御検討いただきました論点と考え方に基づきまして、論点整理の案を作成いたしましたので、これを御審議いただきたいと思います。

 まず、前回の部会で御発言いただきましたけれども、その後も御意見を頂戴いたしておりますので、これを事務局から紹介させていただきます。補足の御発言があれば御自由に御発言いただきたいと思います。

 それでは、事務局からまず御紹介をさせていただきます。お願いいたします。

○多賀谷課長補佐 それでは、前回の部会以降、こちらの方にお寄せいただきました御意見について御紹介申し上げます。

 御意見は梅山委員、加藤委員、中村委員、内藤委員、藤田委員、渡辺委員から頂戴をしております。少し分量が多い方もございますので、若干要約をしながら御説明をさせていただきたいと思いますので、必要であれば、私の要約は不十分だと思いますので、後ほど補足いただければと考えております。

 それでは、まず梅山委員からの御意見でございます。監査の目的につきましてということで、結論的には投資家保護でなく債権者保護の観点についても明示したらいかがかと考えるということでございます。前回のペーパーでは、投資家保護の観点という形で文章が作られておりました。ここでは、証取法監査に加えて商法監査があるということ。そして、投資家保護の観点のみに焦点を当てるだけでは不十分であり、債権者保護の観点を監査基準に盛り込む必要があると考えられる。とりわけ銀行の立場から見れば、預金者という多数の債権者がステークホルダーであることから、債権者保護の観点は投資家保護の観点と同様重要であり、この点を監査の目的に盛り込んでいただきたいという御意見でございます。

 次に、加藤委員からの御意見を御紹介いたします。

 まず一つは、電子化への対応ということでございます。若干要約をさせていただきますが、基本的に企業、監査人、いずれにしましてもそのとりまく環境は非常に電子化をしていると。コンピュータシステムの拡大、電子取引、EビジネスやEコマースの発展によりペーパーレス化は一層促進されていると。従って、いろいろな領収書等の監査証拠も非常に入手が困難になる場合があると。こういうような現状認識のもとで、証憑書類を重要な監査証拠と位置づけている伝統的な監査基準や準則が実態に十分対応しているかどうか検討する必要があるということ。それから、監査人を取り巻く環境の電子化ということで、監査手続自体も電子化をしていると。企業との間等においてもさまざまなコンピュータシステムを使った、あるいはパソコンを使った監査というのが実際に行われていると。こういう面からも伝統的な監査基準や準則が実態に合っているのかどうかということですね。少なくとも今の基準というのはこのような環境を想定していないという御指摘でございます。その上で環境の変化にどのように対応すべきかを論点に入れて検討する必要があるように思われますという御意見でございます。

 それからそのほかでございますが、総論のところの監査の目的ですが、これは梅山委員と同様に債権者保護という観点というものも当然あるのではないかと。こういうことから、投資家保護なり債権者保護なりと。これらを同一の基準の中でどのように調整するか検討する必要があるということ。

 それから、いわゆる実質優先の監査というところで実質優先主義。形式よりも実質を重んじて判断することと、いわゆるオーバーライディング、より適正な表示をするためには会計基準の離脱を認めること。この辺はどちらを主にするのかと。この辺の整理が要るのではないかという御意見。

 それから、保証水準の異なる証明業務、レビューのことでございますが、これは別途の規範によるということには賛成であると。しかし、当然といいましょうか、監査基準と整合性を保ったものを作るためには、この見直しと並行して規範づくりを進めた方がよいという御提案でございます。

 それから監査の役割に関しまして、不正を発見する機能をより重視すべきではないかとしておりますが、これはむしろエクスペクテーション・ギャップを大きくすることになると思われる。財務諸表の適正性を証明することというのが監査の本来の役割であるということを改めて強調すべきであると思われますということでございます。

 それから、監査が財務諸表の作成過程における経営者の判断についての評価を含めて意見表明しても、いわゆる二重責任に反することにはならないということでございます。

 それから一般基準でございますが、正当な注意、あるいは職業的懐疑心というのは非常に漠然とした主観的なものであって、なかなか客観的に定義するのは難しいということで、より積極的な責任を求めるということは慎重に検討する必要があると思われるということでございます。

 次にリスクアプローチにつきましては、5月中旬には米国SEC、オーディット・エフェクティブニスのパネルが報告書を公開すると理解しておりますと。この辺に何かリスク・アプローチに関する示唆が含まれるのではないか予想されますという御紹介でございます。従って、当審議会もこの報告書について研究する意義があるという御提案でございます。

 それから最後に組織的監査として、他の監査人ですが、他の監査人の定義ということで、ビッグ・ファイブのメンバーファームとなっている我が国の監査法人、このビッグファイブの事務所は他の監査人とはみなさないということも検討してみてはどうかということでございます。ビッグファイブの場合は、国際的に世界中に同じ監査手法を採用して、同一の品質管理及びリスクコントロールをしているというような点を考慮してはどうかという御提案でございます。

 次に、中村委員からの御意見でございます。監査基準の見直しは、我が国の監査水準を国際的に通用する水準とすることを目的としなければならないと。産業界として問題視しているレジェンド問題は、会計基準の問題のみならず、監査の問題であると指摘されており、今回の見直しが問題の解決に結びつかなければならない。我が国では、法定の監査役会による内部統制機構が存在するため、監査役と監査人の連携を強化することも検討すべきであると。今回の見直しが非効率な監査時間の増大やそれに伴う監査報酬の増大につながることは許されず、監査の効率性を重視すべきであると。市場における企業評価の信頼性向上につながらないまま監査報酬などの企業負担のみ増大することは不合理である。今後、海外子会社を含む連結ベースでの監査のあり方や、IT、Eコマースへの監査上の対応がより重要になっていくと考えられ、この点についても検討する必要があろうという御意見でございます。

 それから、内藤委員からの御意見でございます。少し分量が多いので要約をさせていただきますが、まず見直しの論点は、現行監査基準に関する論点をほぼ網羅していると。また検討の方向性についても妥当であると考えられるという前提で、幾つかの諸点の検討を加える必要があるということで、幾つかの論点を述べられております。

 一つは、監査基準のあり方ということで、監査規範全体の意義や体系を明らかにすべきという点は必要性が認められると。しかし、監査の基準枠を確定することということがこれの前提になるのではないかということでございまして、監査の基準枠といたしましては、一般に合意される前提条件ということで、監査公準というもの。それから監査行為に関する抽象的な規範としての監査原則。それから、次に具体的にこれらを改題した規範である監査基準。そして、監査基準の規定内容を敷衍し、解釈するための目安となるべきものとして監査指針。あるいは監査ガイドライン、このような枠組みというものを確定するということが必要ではないかという御意見でございます。

 このような枠組みのもとでは、準拠枠が明確になれば、その中でいろいろな位置づけができるということで、例えば監査人の能力については、これは監査主体の前提条件にかかわる内容であり、いわゆる監査行為にかかわる規範としての監査基準や準則には必要がないのではないかと。精神的独立性については監査原則、そして規定されるべきものではないかと。リスク・アプローチは財務諸表監査における監査実施の一つの方法であり、唯一絶対な方法ではないということで、監査実施の方法に関する原則を示した上で、そのための例示的な方法として、基準においてリスク・アプローチを規定するのが望ましいのではないかと。

 それから試査は、財務諸表監査の原則であるとすれば、基準での規定が求められると。逆に原則でないならば、準則ないしガイドラインのレベルの規定になるという御意見でございます。

 それから監査報告書の記載内容については、説明パラグラフの記載の有用性が強調されておりその必要性が認められると。しかし、なぜ必要であるかに関する説明が必要となるということでございます。

 それから、見直しの論点について不足しているとすれば次の論点が考えられるといたしまして、連結財務諸表に関する監査の留意点ということで、いわゆる監査要点として幾つか具体的に御提案をされております。連結範囲に関する監査要点、例えば連結の際の妥当性など。それから個別的連結手続。子会社の資産、負債の公正価値、評価の適正性。在外子会社の財務諸表の監査の適正性。あるいは全般的連結手続に関するものとして持分法の適用範囲。それから連結キャッシュ・フロー計算書に関する監査要点。セグメント情報に関する監査要点。公正価値評価や将来のリスク評価などを初めとする高度な会計上の見積もりの妥当性に関する監査要件。オフバランス情報。リスク情報。関連投資者との取り引きに関する監査要点などというものをお示しいただいております。

 それから、取引記録の信頼性の要否についても見直しの論点になるということでございます。

 もう一つ、大きな件としては、中間監査への影響ということでございます。中間監査基準において、中間監査に係る通常実施すべき監査手続というような表現がとられておりまして、通常実施すべき監査手続が一つのかぎ概念となって規定が構成されていると。従いまして、監査基準の改訂における通常実施すべき監査手続に関する見直しに際しては、これらの規定との関係に特に配意を行う必要があるという御指摘でございます。

 次に、藤田委員からの御意見を紹介します。

 監査役としてのお立場からの御意見ということでございまして、商法監査、証取法監査という監査二元論は被監査会社にとっては容認しがたいところであり、社会全体にとっても非効率な制度であると。監査役監査を財務諸表監査に積極活用することに公然と異議を唱えることができる人はいないはずである。ぜひ商法改正を先取りする気概を持って見直す姿勢を明らかにすべきであると御提案されております。

 それから会計監査人と監査役との関係につきましては、米国SASの90号をよく参考にしてもらいたいと。特にディスカッションを求めている点、このディスカッションは会計監査人からの単なる一方的な報告ではなくて、監査役として意見を交わすという意味でのディスカッションであって、質的な判断を巡る議論をオープン・アンド・フランクに展開し、監査責任を分かち合うことであるというふうに御意見を出しております。

 また、取締役から定型文言の経営者確認書を取りつけて安堵できるとは考えられないと。必ず主観が入り判断を伴うのであるから、より客観的に経営を見ているはずの監査役を有効に活用すべきであると。

 最後にドイツにおける最近の粉飾事件に関するその後の議論のフォローをしていると、重大な監査上のミスを犯した会計士に対する罰則強化論、すなわち1年間蟄居すれば再び監査業務に携われるようでは、多数の投資家、株主にかけた迷惑は償われていないというようなドイツの動きがあると。これは監査基準の見直しとは次元は異にするということであるが、監査に対する批判を真っ向から受けとめた見直しをしていただきたいということでございます。

 最後に渡辺委員からの御意見でございますが、第1点が独立性という点につきまして、日本の会計監査に対する信頼の回復のためには、会計監査人の独立性に関する信頼の確立が不可欠であると。監査人が独立性の確保を第一義とすると。これまでも、特に金融機関の監査においては、監査人を厳しくしようとすると、現行の監査基準が政府による介入や指導をもって監査人が個別企業の監査意見を変更する正当な理由としているとは思われないが、会計士の側からこのような弁明が公にされるところを見ると、このような取り扱いがされてきたような、そういうような風潮があるのではないかと。この外部監査人の独立性の意義を軽視したような実務慣行から脱することが非常に日本の会計監査に対する疑念を一掃するために重要であるということで、監査人の職業的専門家としての独立性堅持の責務を強く規定し、そのための具体的な規定を他国の例にも増して充実させることが必要であるというふうに御提案をされております。また、外部監査人制度の根幹である監査人の独立性を全面的に書きかえ、明瞭かつ十分に強調すべきであると。また、その監査人の独立性の維持を危うくする事態が生じた場合の対応として、その具体的な状況を文書で監査役会に報告する制度を設けるべきであるとのご意見であります。

 それから2点目として、守秘義務と監査人の説明責任ということでございまして、実施した監査手続の開示を可能にすべきであると。監査概要書を公開してはどうかという御提案でございます。守秘義務の多くは問題隠ぺいの口実とされると。監査への信頼の回復のために積極的な開示、説明を進めるべきであると。これが品質向上のインセンティブにもなるという御意見でございます。

 大変足早で失礼しました。以上でございます。

○脇田部会長 ありがとうございました。

 ただいまお寄せいただきました御意見、そしてまた前回の御討議の中での御意見等を反映いたしまして論点整理を打ち出しておりますけれども、またその点でも御発言いただく機会がございますけれども、今すぐ補足という御発言ございましたら、どうぞ。

 加藤委員からどうぞ。

○加藤委員 加藤です。今の私のコメントの中で一つ、私の趣旨とちょっと違うような感じの御説明がありましてちょっと補足したいんですが、監査の目的のところの、いわゆる実質優先主義とオーバーライディングのところなんですが、私が言いたかったのは、この両方を審議したらどうかということではなくて、前回いただいた論点整理の表現がどちらを指しているのかがどうもよく分からないというので、どちらを指されているんですかという趣旨の質問だったんですが、私が考えるには実質優先主義というのは、あくまでも会計基準の枠の中での実質的判断の問題であり、オーバーライディングというのは会計基準を外れて解釈をすると。全く別のことだと思うんですね。ところが、前回いただいた論点整理の中の表現を見ると、どちらを指しているのかはっきりしないのと、もしオーバーライディングということを検討するんであれば、そのことがどこにも書いていないような気がしたものですから、その辺明確にしていただきたいという趣旨です。

○脇田部会長 ありがとうございました。

 それでは、早速論点整理の説明に入らせていただきます。それに先立ちまして、私から論点整理の趣旨を述べさせていただきます。

 今般の監査基準等の見直しでは、非常に幅広い観点から御意見を頂戴しております。そこで、まず、種々の論点を明らかにし、その論点に対する考え方を整理いたしました。その整理の上で、基本的な方向を示すことができればと考えております。

 このような観点から、お寄せいただいた意見等を整理いたしまして、その作業に山浦委員、友永委員にもお手伝いをいただき、前回の部会で御検討いただいた論点にさらに肉づけをいたしました。その際、論点を分けた方がいい部分や議論の不足している部分などもございましたので、適宜追加や修正をさせていただきました。今後、この論点整理を公表いたしまして、各界からの御意見を頂戴いたしたいと思っております。その後、具体的な項目の改訂作業につきまして、さらに詰めていくことにしたいと考えております。従いまして、この論点整理案では、監査基準のどの項目を具体的にどのように改めるかという記述には至っておりません。

 総論的な部分は大体監査基準の前文などに相当いたします。また、実施基準と報告基準につきましては、基準になる部分、あるいは準則とすべき部分のようにあえて分けないで記述しております。このような考え方に立ちまして論点整理案を作成し、今後の方向を考えております。

 そこで、お手元にございます論点整理案の趣旨をこれから御説明させていただきたいと思います。

 事務局から一通りの御説明をお願いいたします。

○多賀谷課長補佐 それでは、御説明申し上げます。非常に大部でございますので、要点を絞りまして説明をさせていただきます。

 まず、1ページ目から2ページ目にかけましてですが、経緯という形で、この審議の背景、あるいはこの審議の経過等について記述をしております。この辺につきましては、御説明としては省略をさせていただきたいと思いますが、2ページ目の最後のパラグラフでございますけれども、ここに当審議会での、今のところは「第○回開催し」と、これは最終的に何回までいくか分かりませんので、ここは入っておりません。それで審議の経過を書いてございますが、御審議の中で、やっぱりしっかりしたものを作らなければいけないという観点からの御意見が林委員、その他の方からたくさん出されていたと思います。また、国際的にも通用するというような観点も出されていたと思いますので、ここでやはり審議に当たっての審議会の取り組み、姿勢というものを示すことも非常に重要というふうに考えまして、そのような御意見を反映しまして、ここでは「我が国の監査に対する信頼性をさらに向上させることが必要であるとの認識のもと、国際的にも通用する監査規範の確立を目指すことを基本的な姿勢として」ということで、審議会としての御意見といいますか、姿勢に関する御意見をここに反映をさせていただいております。

 それでは、3ページ目の内容、総論のところから内容を御説明をさせていただきます。

 まず、監査基準のあり方でございますが、(1) の監査基準等の啓蒙的役割についてどのように考えるかということでございます。ここで全般にわたりまして、基本的にこの論点を問いかけるような文章、それからその論点の内容、指摘、それからそれに対する整理なり当審議会の方向性というような形の大体はそのような記述になっております。

 ここは当然、御議論いただきました基本的な御指摘の部分でございます。監査の技術的な部分の啓蒙的役割は終えたということでございますが、一方、リスク・アプローチ等、新たな基本的考え方が導入されたものの説明が不十分ではないかというような御意見を反映して、特に下線部のところでございますが、監査の目的、役割についても十分理解されるようにするということを記述してございます。

 それから、(2) 現在の監査基準の構成でございますが、これについては、その中身は別としまして、構成全般は変えないと。ただし監査の規範全体の体系的な位置づけがあいまいだというところをどこかで書くべきだと。これは先ほどの内藤委員からの御提案とも同じですが、ただ、この段階では体系自体をまだ、個別具体的には議論をされておりませんので、その体系の中身につきましてまでは言及をしておりません。規範全体についての位置づけを明確することが必要であるという考え方を示しております。

 それから大変足早で申しわけございませんが、4ページ、監査の目的でございます。ここは今梅山委員等からも御指摘がございましたが、また、基本的な事柄の一つでございます。この下線部のところですが、投資家保護という表現を改めさせていただきまして、ここでは企業が発表する財務諸表ということで、非常に幅広い書き方に修正をさせていただいております。ここは投資家といっても必ずしも株式投資家に限らないわけですけれども、やはりこの証取法に限定されるというようなニュアンスがあるということで、そのほかにも前回にも意見が、例えば金融機関の、特に銀行による銀行法等における監査等も含まれるようにという御意見もございましたので、ここは特に投資家保護という言葉を使わないでおります。そのような表現に変えさせていただいております。下線部のところは、利用者の適切な判断ということで、そこでいろいろな利用者を想定するということでございます。

 次に(2) の財務諸表の適正性と虚偽記載との関係についてどのように考えるかということでございますが、これも監査に対する信頼性については当然期待ギャップの問題というのがあるわけでございますが、やはり虚偽記載の問題に後ろ向きであってはならないという観点からの御意見が多かったと思います。そこで、ここでは「財務諸表の適正性の意義には重要な虚偽記載がないことに関する合理的な保証が含まれる」ということ、これを挙げさせていただいております。ここであえて重要な虚偽記載がないことに関する合理的な保証というふうにかなり具体的に書いておりますのは、今までの御議論の中でも、やはり加藤先生も御指摘になりましたが、非常に幅広い意味での不正とかそういうもの自体を発見するという機能を余り強く出すということになると、これはやはり期待キャップとの差がますます広がると。やはりその本質的なところは、重要な虚偽記載というのが重要なポイントではないかと。従いまして、重要な虚偽記載ということに関しては、やはり監査でも利用者から期待されている部分ということでございますので、その点は明確にした方がよいのではないかということでございます。

 それから(3) は、会計基準への準拠性と財務諸表の適正性との関係をどのように考えるかということでございます。これはただいま加藤委員から御指摘があった点でございますけれども、ここでは会計基準への準拠性に関して、監査人は実質的な判断を行うべきであり、経済実態に応じた会計処理の適切な選択により財務諸表の適正性が確保されているかについても判断すべきであるということを言っておりますので、やはりこれは実質判断ということで、オーバーライディングというより実質判断という観点かと思います。この辺は安藤委員からも真実性の原則という会計原則の大枠というのも存在しているという御指摘もありましたので、やはりオーバーライディングというと少し、何でも逸脱していいというような感触が出過ぎるのではないかということで、実質原則ということにしております。ただ、もちろん準拠する会計基準がない場合、あるいは不備な場合、これは当然あり得ますので、その辺は5ページの第3パラグラフの方で、「これに加え」という書き方で一応その辺もフォローをしております。そういう場合はもちろん既存の会計基準とか、ほかの基本的な考え方に沿って、監査人が職業的専門家として判断していくと。これは当然求められる範囲ではないかということでございます。

 それから(4) 監査の実質的内容において、証券取引法に基づく監査と商法特例法に基づく監査の関係をどのように考えるか。この辺は先ほどの藤田委員から出されました御意見もございますが、基本的には、その制度というのは我が国独特の制度であると。しかしながら、監査をする行為ということについては、あえて両者を区別するというか、相違をさせる必要はないという御意見が多かったと思います。それを反映させていただきまして、この辺については仮に意見表明の形式が異なる監査制度があるとしても、監査人が達成すべき保証水準は同一であることを強調することが必要であるという形になっております。

 それから最後の「さらに」というところは、財務諸表の監査として保証すべき水準は他の法令に基づく監査、これはいろいろ御意見を出されたところで、例えば金融機関、あるいはそのほかにも法律によって監査が義務づけられている財務諸表というのがございますので、そういう場合の監査も含まれますと。それからさらに任意監査においても、監査という以上は同一の水準であるべきであるということで、監査という一つのカテゴリーについては同じレベルのものを求めていくという考え方を示しております。

 それから、(5) の監査とレビューとの関係についてですが、これは内藤委員から詳細な御報告をいただいておりますけれども、やはり我が国ではまだレビューというものが余り広範に行われておりませんので、監査とレビューというのがかなり混同され、あるいは誤解されている面があるということで、やはり明確に区分をしておくということがそのレビューをこれからやる上でも必要だという御意見がございましたので、これを反映させていただいております。

 なお、ここではレビューの方の、先ほど加藤委員からの御指摘の一緒に作っていくべきだということは、直接は書いてございません。それは今後公認会計士協会等の方でも御意見を踏まえてお考えいただければと考えております。

 それから、3、監査の役割でございます。ここは監査人の機能や責務と監査の限界についてどのように考えるかということでございまして、これは監査人の責務、ここは法律的責任という意味ではなく責務ということで、内藤委員の方から御報告があったところでございますが、これを明確にすることについての御意見を記述したところでございます。ただ、当然、監査にはおのずと限界があるということで、やっぱりどこまで責任を求めるのかというのは非常に難しい点があるというのは、須田委員初め御意見を頂戴したところでございますので、ここも当然そういう限界があるということも含めて記述をしております。ただ、その表現としては、やはり限界の方を強調するというのは、全体的な審議の御意見の全般からすると、やはり限界があるけれども、なるべく職業的専門家としては重要な虚偽記載は見逃さないようにしようという、そういう姿勢を求めるという御意見が多かったと思いますので、ここの表現としては、どちらかというとその責務の方を中心に記述をさせていただいております。

 (2) でございます。不正や違法行為の発見に関する監査の役割をどのように考えるか。ここは非常に難しいところでございまして、やはり不正、違法行為の発見に対する監査人への期待は大きい状況にあると。この姿勢を明らかにすべきであるという御趣旨の意見は、渡辺委員、あるいは林委員そのほかかなり出ていたと思われます。また、アメリカにおける対応につきましては、小島参考人からも詳細な御報告をいただいております。

 やはり重要な虚偽記載につながるという観点から、これらをとらえていくというのが御報告の趣旨であったように考えられます。もちろん一定の限界があるという御意見も多かったわけでございますし、特に違法行為の場合には、非常に違法というのは幅が広い概念でございますので、財務諸表の虚偽記載と直接かかわりがあるかないかということについては、これは一概には言えないということでございますので、この辺もやはり考慮していかなければならないということで、最後に「なお、違法行為に関しては」ということで一文を追加しておりまして、何でもかんでもということではなくて、やはりそこには、監査という観点では結果としての財務諸表にどう反映されるかという点からこの辺の結びつきを見ていくべきであるというアメリカ等での考え方について御報告の趣旨をここに反映をさせて記述をさせていただいております。

 それから7ページでございますが、(3) 監査における内部統制の役割についてどう考えるか。この辺に関しましては、小島参考人、あるいは頼広参考人から米国の状況、米国の基準、実務等について詳細な御報告をいただいたところでございまして、極めて内部統制についての関心がアメリカでは高いというような趣旨の御報告があったかと存じます。

 また、リスク・アプローチという考え方を導入したという観点からは、やはり内部統制の有効性というのが非常に重要なポイントになるのではないかということの御意見もありまして、やはり内部統制の役割というのは重要であるという観点から、ここでは記述をしてございます。ただ、当然、内部統制の確立については、非常に日本も重要だということですが、日本的な――日本的なというのは誤解があるかもしれませんが、日本の法律としての枠組み、あるいは監査役制度の問題、あるいは経営のやり方、こういうものについては日本には日本の、いいか悪いかという問題ではなくて、いろいろなそういう仕組みというのがありますという御指摘も伊藤委員、中村委員等からございました。そこでここでは、最後のところで、「内部統制の概念については、我が国の会社法制や企業経営の実態を踏まえ、一定の考え方を監査基準等において明確にする」ということでございます。それをつけ加えております。従いまして、この全体では監査における内部統制というのは非常に重要な位置づけにあると。ただ、内部統制というのは経営者自身が行うものでございますので、監査基準でこうしなさいというような性格のものではなくて、それは監査の面を通して評価をするということによってそれを経営者に伝え、企業自身がよりよい内部統制を構築していただくということにつなげていくべきというような文章になっております。

 それから(4) でございますが、財務諸表の作成責任は経営者にあることについてどのように考えるかということで、二重責任と言われるところにつきましてですが、この点につきましては、内藤委員からも御報告をいただいたところでございます。ただ、二重責任という言葉自体は、ここでは会話としては非常に分かりやすいんですが、文章としては特に出しておりません。そこは具体的に財務諸表の作成に関する責任は経営者が負い、監査人はその財務諸表は適正に表示されているか否かについて意見を述べることに責任を負うということで具体的に書かせていただいております。

 ここでのポイントは、やはりこういった考え方自体は明確にした方がいいということを、内藤委員のほかにも園委員等からも御意見が出ておりました。そこで監査人は、この下線部でございますが、「財務諸表の作成に当たっての経営者の判断に対する評価を踏まえて、自らの意見を表明することが求められるが、あくまでも経営者に財務諸表の作成に関する責任があることを監査基準等で明確にする必要があると考えられる」ということで、作成責任については当然のことながら経営者にあると。ただし、監査人としても財務諸表の作成に当たっての経営者の判断というところについても評価をする必要があるということで、これは後ほど報告基準の方でも関連をしてまいりますが、一応ここで、総論的な意味でもここにそれを加えております。

 それから8ページでございますが、ゴーイング・コンサーンの問題、これは大変に議論になったところでございます。大きな論点だと思います。これは、(5) (6) それぞれございますが、小島参考人等からもアメリカの状況、アメリカの基準について御報告がございました。その中で、やはり日本の現状の、例えば特記事項の記述というのは、必ずしも米国のゴーイング・コンサーンというものとは必ずしも一致していないといいますか、あるいは拡大し過ぎているような面もあるのではないかと。それぞれちょっと違いがあるというような御報告がございました。そこで、ここでは、そのゴーイング・コンサーンの具体的なところまでは踏み込んでおりません。この辺については友永委員から公認会計士協会での研究報告を御紹介いただいたわけですが、各国各様に定められているというところでございますので、具体的な内容についてはやはり今後の御検討、御審議をいただくことになろうかと思います。

 ここでは考え方として、まず諸外国においてはということでちょっと一くくりにしておりますが、例えば、債務超過、借り換えに懸念のある多額の借入金や重大な災害を受けた場合など、現時点で既に発生している事象を前提としてこういった事態に対する会社の今後の対応等も考慮してゴーイング・コンサーンについての判断を行うということで、やはり監査上判断を行う財務諸表の作成の前提であると。それはその判断をするときの時点の状況でどういう問題が起きているのか。それに対して将来も含めて経営者がどのような対応をするのかと。こういう一連の流れといいましょうか、一連の時間的な動きも含めて判断をするということでございまして、何でもかんでも将来の起こるかもしれない、あるいは未確定の事項を幅広く取り込むという意味でのゴーイング・コンサーンということではございません。その辺が少し誤解、あるいは十分に理解されていないのではないかという御指摘がございました。この辺はちょっと日本では特に広く解釈し過ぎだというような意見が結構出されていたと思いますので、少し具体的に踏み込んで書いてございます。

 そこで、方向性としましては、やはりこの問題に対しては、その具体的な指針がないというところが実務上の混乱を招いているということで、何らかの方向性を示すということで、何らかの基準なり規定を置くという方向性を示しております。ただ、その中身につきましては、今御説明申し上げましたように、今後の検討ということになろうかと思います。

 それから(6) でございますが、ゴーイング・コンサーン問題を監査上で取り扱う場合には、必要な制度的な手当てについてどのように考えるか。これはすなわち、監査だけの問題かどうかということでございまして、内藤委員初め、これも多くの方から御意見が出ていると思いますが、やはり財務諸表における注記など、何らかの開示に対して監査上の判断なり評価というものが行われるということではないかということでございますので、「財務諸表における注記事項等とする等の制度的手当ても併せて検討することが必要である」という記述をしてございます。

 それから、9ページの一般基準でございますが、下線部、1、監査人の能力でございます。ここはやはりいろいろな観点から言いましても、特に情報技術の進展、あるいは時価といいましょうか、そういう評価の問題、いろいろな環境が変わっているということで、監査環境の変化に適切に対応していく能力をいつも保持していく必要がありますよということを御意見を反映させたところでございます。

 ただ、なお書きのところで、これらの能力というのは、監査基準で能力を示すということはできませんので、CPA協会等でいろいろ取り組まれているというところにも期待するところであるということでございます。

 2の監査人の独立性でございますが、この辺は、ただいま渡辺委員からも非常に強く御指摘がございましたし、あるいは藤田委員、山浦委員ほか、基本的なこの精神的独立性というのは非常に重要であるという御指摘をいただいたところでございます。

 また、この辺につきましては、外形的独立性との関係ということで、外形的な独立性というのは、むしろ精神的独立性を確保するための最低条件といいましょうか、そういうものでございますので、これは別途法令なり公認会計士協会の倫理規則で明確にするということでございます。その辺をここでは記載してございます。

 それから、3、監査人の注意義務でございますが、注意義務というのは確かに漠然としているというのは加藤先生の御指摘のとおりでございます。この辺については、正当な注意を払うといってもどういうことなのかということで、正当な注意を払わなければならなということについて一歩踏み込んで指摘する必要があるのではないかということでございます。ただ、ここでは、監査人が適切に対応するというのは、職業的懐疑心をもって臨むと。これは正当な注意という考え方と別に職業的懐疑心があるということではなくて、ここでは、それは少なくとも職業的懐疑心をもって監査に臨むべきことが含まれるということで、別の責任概念を作るという意味ではなくて、少しかみ砕いて言えば、こういう姿勢を示すべきだというような記述になっております。

 それから、4の監査人の守秘義務でございます。ここはやはり守秘義務自体というのは当然法令等で定められておるわけでございますが、今後の監査基準の見直しの中で、例えば後任監査人への引き継ぎ、親子会社の監査人の連携といろいろな要請というのが出てこようかと思います。そのときにやはり現行の規定と守秘義務があるからそういうことができないということではなくて、そこのところを守秘義務のあり方についても検討をしていくということを記載してございます。これはつまり守秘義務が要らないということを申し上げているということではなくて、守秘義務違反になるからこういう監査手続ができないというような言い方はしないと。その場合には守秘義務のあり方も踏まえて、いろいろな監査手続を当然考えていくということを記述したところでございます。

 それから、11ページの実施準則・監査実施準則のところでございます。この辺は少し具体的なところになりますが、まず構成につきましては、これは監査計画に従った順番にすることがよいというのは、公認会計士の方等から御意見が多く出ていたかと思います。また、諸外国もそのようになっているということで、これは順番だけの問題ですが、理解をする上でもそのような形に改めてはどうかという御提案でございます。

 それから2の監査証拠と監査手続でございますが、概念的に今のこの実施基準は規定されているわけですが、少しでも具体化できれば、具体化をした方がいいと。「十分な監査証拠」の十分性、あるいは合理的という意味の合理性、この辺は概念としては分かるけれども、でき得る限り具体化、明らかにできるようなことであれば明らかにしていくべきであるということでございます。

 それから、(2) 「通常実施すべき監査手続」、これもいろいろと御意見がございまして、会長をはじめ、やはり平成3年の改訂の後、十分理解されていない点としてこの点があるのではないかとのご意見があり、特に一律定型の監査手続があるということで、むしろ本来通常実施すべき監査手続という言葉で包括的に定められた趣旨と異なる理解がされる面があるという点を指摘されております。

 そこでここでは、12ページ目でございますが、やはりこのような誤解を解くというのは非常に重要なことでございますので、こういうような表現も見直すということも含めて検討してはどうかと。本来の趣旨をもっと書くといいますか、「状況に応じて監査人が職業的専門家として判断を行使して適宜適切な監査手続を実施しなければならない」という趣旨を強調したような表現といいますか、監査基準のあり方という方向で見直してはどうかという記述でございます。

 それから、3、監査要点でございますが、現在監査要点は列挙されているんですが、この辺は少しメリハリをつけるべきではないかと。あるいは監査要点として過不足があるのではないかと。この辺は山浦委員、内藤委員、そのほかいろいろな観点から御意見を頂戴しております。ただ、ここではまだ個別具体的な監査要点については議論が深まっておりませんので、どれが監査要点として要るか要らないかというところまでは言及をしておりません。国際的な監査実務の観点等も踏まえて見直すことが必要ということで、いずれにしてもその中身を今後検討を詰めていくというような姿勢で記述をしてございます。

 特に先ほどからも御意見が出ておりますが、コンピュータ、IT、このような関係の点、あるいは企業が国際的に非常に幅広い活動をしているという点。それから新しい会計基準における評価等の問題、この辺が御指摘がされているところでございますが、監査要点というところに要約する場合の用語といいますか、ポイントについてはまだちょっと絞り込めておりませんので、このような表現にとどめております。

 それから4、リスク・アプローチでございます。ここも非常に大きな観点として御議論があったところでございます。(1) のリスク・アプローチの意義が十分理解されていないという点の御指摘については、基本的な考え方を明確にするということでございます。特に公認会計士協会の出されております実務指針では、このリスク・アプローチに基づく手続が具体化されているわけですが、もう少し監査基準とのつながりを明確にすべきではないかという御意見があったかと思います。

 そこで、そのような趣旨も踏まえまして、このリスク・アプローチというものの考え方は非常に重要であって、とりわけ内部統制の状況を把握することが必須であるということ等をここに記述をしまして、考え方を明らかにするとともに、現行の実務指針とのつながりを密にするというようなことになるのではないかと考えております。

 それから(2) リスク・アプローチを実施基準・監査実施準則にどのように反映させるべきかという点ですが、これもリスク・アプローチの手続、これを今実務指針レベルしかございませんので、少し監査基準の上でも明確化をして、そのつながりをはっきりさせるということが必要であるというような御意見があったかと思います。この辺の御意見とそれから個々の監査手続との関連性を持たせて書くべきであると。この辺のつまり監査の手順、あるいはそこで選択すべき監査の手続なり手法、あるいは監査全体の計画や流れ、こういうものを総合的に理解しやすいような書き方といいますか、反映のさせ方が必要であるということだと思います。

 それから、(3) のリスク・アプローチと監査手続との関係でございますが、ここも一つはリスク・アプローチの考え方というのを明確にした上で監査手続を明確にしていくという趣旨でございます。特に山浦委員、あるいは小島参考人からも御指摘がありましたのは、やはり分析的手続というのが米国といいましょうか、国際的には重視されているけれども、日本の場合にはまだ十分にそこら辺が理解されていないのではないかということでございますので、その点を強調するということで、見直しが必要であるというような文章になっております。

 それから、(2) の最後のパラグラフですが、ここでは先ほどのITのことを言っております。それから、(1) 最後のパラグラフのところですが、13ページの一番上のところの第2パラグラフですが、加藤委員からの御意見で御指摘がございまして、米国でも今検討をされているということで、過度にリスク・アプローチの考え方を適用するということについては弊害がある場合もあるという御指摘があったので入れてございます。ここの点につきましては、先ほども御紹介させていただきましたが、加藤先生からも米国の結果がもうすぐ出るかもしれないということでございますので、この論点整理、今後御審議をいただく中で、米国におけるその報告が出た場合には、適宜それを御紹介させていただいて、また盛り込んで、その時点で可能であれば盛り込んでいただければというふうに考えております。ちょっと前後いたしまして失礼いたしました。

 それから14ページでございますが、監査の質の向上と管理というところでございますが、(1) がその監査の質の向上と管理のための組織、まあ品質管理ということですが、品質管理という言葉をずばりと使っていいものかどうかというのは、ちょっと言葉に抵抗があるといいますか、そういう御意見もあったかと思いますので、ここでは監査の質というふうに言ってございます。それでこれは部会長からも御指摘がございましたように、現在の基準では二つの意味があるのではないかと。いわゆる組織によって監査をするということと、組織によってというか組織立った監査をするということと、組織を持っているということと二つの意味があるのではないかという点かございます。ここでは当然監査の質の向上というのは必要であるということでございますが、そのためにはやはり監査補助者の管理、他の専門家の利用、他の監査人の利用、それから審査組織、こういうものは必須であるということで御指摘がございましたので、下線部ではその辺を強調して書いてございます。

 ただ、この点については、監査基準だけではなくて、公認会計士業界内でも品質管理体制の確立というのに取り組んでいらっしゃるということでございますので、その点も言及をしてございます。

 (2) 監査のプロセスの文書化、これは監査の結果を残すということで、文章にして残すということですが、頼広参考人からの御指摘で、アメリカは大量にその文書が、非常に監査の実施した内容が詳細かつ大量に監査調書となっているということがございます。特に内容としては、その監査判断に至るプロセスについてもちゃんと記録なり記述をするということを指摘をしております。

 ただ、最後にコンピュータ処理化にも配慮すると。当然、紙でとっておくということだけではないということでございます。

 15ページ、(3) 新規の監査契約に伴う監査上の問題についてどのように考えるかですが、これは後でこの論点整理を作る段階で追加したところでございます。これはやはり全体的な流れ等からやはり監査契約、監査という手続に入ったときには非常にリスクを重視してやりなさいということを書いてあるんですが、そもそも監査に入るときにどうなのかというような問題があるのではないかということで加えております。

 派生した問題ということではございますが、やはり監査契約を結ぶときというのも、監査が実施可能かどうなのかということ、また契約を締結した場合には前任監査人との引き継ぎですね。ここがやはり必要であると、この辺を加えてございます。

 それから6、経営者の確認書でございます。ここも幾つか御意見が出ました。渡辺委員からは性格があいまいなのではないかということで、その辺につきましては部会長からも導入の経緯について御説明があったところでございます。また、内容につきましても、少し形式的ではないかという御指摘が藤田委員からございました。

 それから手続として、やはりディスカッションを重視すべきだという御意見もございました。このディスカッションにつきましては、次項の7番の方に区別して書いてございます。経営者確認書という点につきましては、やはり監査手続の一つとして位置づけるということで、性格があいまいであるという点は整理をする必要があると。それから内容につきましては、実務指針レベルでも見直しが行われておりますけれども、必要であれば当然その内容を見直し、かつその監査手続としても内容を検討するということが必要であるということを記述してございます。

 このような経営者確認書を監査手続とするということから派生して、7番の経営者とのディスカッションということがございます。これもアメリカのSASの90号につきましては、小島参考人からの御紹介、あるいは藤田委員からの御意見もございましたし、それから現に監査を受けているということでは松野委員から、やはり米国の監査ではいろいろなレベルでの対話、情報の把握が非常に多く行われているというような御報告がございました。また監査役との連携ということも御報告がございました。

 こういうことを踏まえまして経営者とのディスカッションというのを積極的に活用すべきではないかということをまず基本に置きまして、これに加えて、経営者に限らず、いろいろな企業内の関係者ともディスカッションを行っていただくのは非常に有効であるという考え方を示してございます。

 それから、財務諸表の開示の充実と監査人の対応でございますが、ここはちょっと趣旨がなかなか分かりにくい点もあろうかと思うんですが、後発事象や偶発事象など、いろいろな開示に対する監査人の監査というものがあるわけでございます。あるいは公正価値の評価なり開示と。このような近年の財務情報の開示の展開というものがございますので、やはり監査人としてはこういうものはやはり実質的判断というものを重要視していくべきであるということを記載してございます。ただ、これを監査基準にどのように具体的に書くかということにつきましては、今後御検討頂くことではないかということでこのような文章にとどめております。

 それから不正及び違法行為、これは先ほど総論のところでも御紹介をしたところでございますが、この対応方法、対処方法についてどう考えるかということでございます。これは商法では一定の規定が商法特例法であるわけでございますが、監査基準一般としても何らかの方向性を示す必要があると。ここでは先ほど申し上げたことと繰り返しになりますが、財務諸表の虚偽記載というものにつながるかどうかという観点から、例えば不正や違法行為を発見した場合にフォローをしていくということが必要であるという考え方を示しております。

 それから10、非監査情報との整合性でございます。この辺は現に財務諸表を作成されております松野委員やあるいは監査されています那須委員からも実務では当然やっていますよということでございました。ただ、米国ではかなり明確な規定が置かれているという御報告もいただいておりますので、この際、監査基準の方でも明らかにしていくということを記述をしております。

 それから、漢数字の五のところでございますが、17ページの一番下、報告基準・監査報告準則のところでございます。1としまして、監査報告書の構成でございます。これはいろいろ御意見がございまして、米国での現在の監査報告書の書き方、あるいはその考え方等について小島参考人やあるいは山浦委員からも御報告をいただいたところでございますが、やはり情報伝達機能というものを充実するような方向で全体的な構成を考えていくべきではないかと。ただ、ここで可能な範囲においてというふうに言っておりますのは、やはり何でもかんでも書けばいいということではなくて、やはり監査の報告書でございますから、財務諸表の適正性に対する監査人の保証という、そういう枠組みを提供するという書類ということを前提にしてということでございます。そこの当然の限度といいましょうか、整理というのは必要であるということでございます。

 ただ、今後どういう内容を盛り込むかということについては、まださらなる御検討が必要だということでございます。

 それから監査の概要の記載、これを監査報告書の中身の記載する部分なり、その要素の問題でございますが、下線にもございますけれども、日本の監査報告書と違う部分として国際的にはということで、やはりその経営者の責任で作成されていること。それから監査の手続に関して、経営者による会計処理の選択や見積もりに関する評価が含まれていること、こういうことがきちっと書いてあると。さらに重要な虚偽記載がないことの合理的保証、それから手続として試査に基づいて監査が実施されていること。そして意見表明のための合理的な基礎を得たこと、このようなことが書かれているので、このような米国の例といいましょうか、参考例がSASの参考例として小島参考人から御紹介があったかと思いますが、そういうものも参考にしながら、こういうものを我が国でも監査報告書の記載方法として少し具現化をする見直しを行ってはどうかということでございます。

 それから、3、監査意見の記載でございますが、これは総論でもありましたが、適正性に関する意見表明のあり方についてということで、御指摘があったところは、要は、特にここでは会計基準の準拠性、会計方針の継続性及び表示の準拠性と言っていますが、この3つのポイントだけが形式的に合っていればいいのかどうかというような御指摘があったところでございます。そこでこの点については、やはり基本的には財務諸表全体に対する適正性について意見を表明するんだと、こういうことを前提として見直す必要があるんだということを記述してございます。

 それから(2) 、これは会計方針の変更に関してでございますが、いわゆる2号限定ということで、これは例えば友永委員等からも御指摘がございましたが、やはりアメリカもこういうのは別に限定意見になっていないし、やはり考え方としても正当な理由によって変更しているのに、そこに何か限定意見であるという言い方をするのはかえって誤解を与えるのではないかということで、見直しをすべきであるということの提案している部分でございます。

 次に4、意見差控でございますが、これは先ほどのゴーイング・コンサーンの問題とも非常にかかわりがあるところでございますが、小島参考人等からも未確定事項ということで御紹介があったかと思うんですが、未確定な事項があるということで、安易に意見を差し控えると。意見を差し控えるということは、監査人としては責任を免れるわけですが、そこら辺が余りにも簡単にされてしまうのはよくないと。やはり意見をきちんと判断をして出すべきであるという御紹介、アメリカの考え方の御紹介がありました。そういう点も踏まえまして、ここでは未確定事項があっても、それはそのときに判断できるような証拠があればそれで判断をしていくということで、未確定事項がたくさんあるから意見差控でいいというふうな単純なものではないということをやはり明らかしておくべきであるという御意見でございます。

 それから5、特記事項でございますが、結局これはゴーイング・コンサーンの問題、あるいは後発事象等、現在記載すべきとされている事項と未確定事項との関係とかというものを整理をしないと今後いけないということだと思いますが、まあ、結局特記事項というのはそうなりますとどういう位置づけになるのかというのは、やはり当然見直していかなければならないと。非常にあいまいなところになっておりますので、補足的説明事項を監査報告書で入れてはどうかと。あるいは監査報告書の書き方を変えてはどうかという御意見がございましたので、今後の御審議の中で当然特記事項の性格が非常に不明確でありますので、その改廃も含めて、総合的に検討することが必要であるという記述でございます。

 それから最後が監査報告書の日付と署名の問題でございます。これは部会長等からも御指摘がございましたが、やはり日付というのは非常に重要な問題でございます。監査責任という意味では極めて重要な問題でございます。いつまで責任を負うかということの決定的なポイントになるわけですが、ちょっとその重要性の認識が薄いのではないかということでございます。ただ、我が国ではいろいろ法令上の手続と監査報告書を出すタイミングというような関係もございますので、そういうことも考慮しながら、今後さらに検討する必要があるということでございます。

 それから署名につきましては、監査報告書は監査人として監査法人が監査をしている場合には監査法人名で署名すべきであるという御意見と、それでは少し実際に監査をした方の責任意識が希薄になるのではないかという御意見と両方あったということでございますので、両論を併記した上で、我が国における適切な方法を検討していくことが必要であるという記述になってございます。

 以上でございます。

○脇田部会長 ありがとうございました。かなりの量がございますけれども、順次皆様方から御意見をお伺いいたしたいと思います。どうぞ御発言をいただきますように。

 伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員 大変、やっぱり事務局の方で、私は皆様方の御意見をよく入れられていただいておられるというふうに判断をいたします。私としては、基本的に大変結構じゃないかと思うんでございますが、実は経団連の方から、最初に中村さんの御意見という形で言っていただいた一番最初の項目なんですね。つまり、産業界として今問題にしているレジェンド問題というのは、これはいろいろな金融システムのアーキテクチャーの問題にも端を発しているんじゃないかと我々は思いますが、しかしそこでは会計基準の問題ともう一つは監査の問題とも言われておりまして、そのあたりのところは私どもはよく分からない。今現在資金調達面での格付とか、そういう問題とはちょっと私はそんなにリンクはしていないのではないかと現状思うんでございます。しかし、日本の金利が上がってきて、世界的にやはり調達手段を海外に求めざるを得ないということが起こってきた場合には、文字どおり企業経営にとってみれば、このレジェンド問題というのが、例えば金利水準のあるいは格付とかそういったところへ影響してくる可能性がなきにしもあらずであって、我々企業サイドの問題としては、先生方が非常に議論されて非常に詳細に御検討いただいたことは大変結構であるし、それは世界の国際的な問題の中での位置づけを絶えずチェックされてはいるんですけれども、同時に日本的な土壌も我々としても無視はできないという調和の中で今やって作っていただいたわけです。これでもって一応少なくとも監査に関する限り、レジェンド・クローズというのは除かれるというような方向づけを我々大体認識してよろしいですか。大変難しい言い方で、そういうことで考えていてよろしゅうございますかということを、後でも結構ですが、後ほどお伺いしたいと。あるいは事務局としてはちょっとまだ不十分じゃないかと思っておられるのか、そのあたりの本音のところを、後ほどで結構ですがお聞かせいただきたいと、こういうことであります。

 以上です。

○脇田部会長 大変重要な問題でございますけれども、今の御趣旨は十分酌み取った上で今後も審議を続けてまいりたいと思います。

 どうぞ、続けて御発言ございますでしょうか。須田委員、どうぞ。

○須田委員 全体的にはこれで大分勉強させていただいたという感じがします。ただ、一つよく分からないのは、ゴーイング・コンサーンに関して少し後ろ向き過ぎるような説明をされたというような感じがしまして、というのは、そもそも、私はここでリスク・アプローチというのもよく理解できていなくて、経済学者で考えているリスク・アプローチと多分ちょっと違うところがあるんだと思うんです。でも、いずれにしても、将来のことをどう評価するかというのがそもそもリスク・アプローチだと思うんですよね。リスクをどう評価するか。そうすると、もう先のことを考えているんですね。リスク・アプローチって。それをどう評価するかという立場をとりますよと言っておいて、何かゴーイング・コンサーンのところで、基本的にもう起こったことというふうに言われてしまうと、せっかくこれを組み込んでいこうと。リスク・アプローチをとっていきますよ。今までの過去よりももうちょっと将来のことを入れていきますよという姿勢が片一方で見られるのに、片一方でちょっと後ろ向き過ぎるというような印象を持ちました。分かるんですが、いろいろ何でもかんでもということができないということが当然分かるんですけれども、もうそれは入っていってしようがないんじゃないかという姿勢がもう少しあっていいような気がいたしました。

 以上です。

○脇田部会長 ただいまのリスク・アプローチのことにつきまして、突然で恐縮ですけれども、山浦委員、ちょっと今須田委員の御指摘の点について、この論点整理をお手伝いいただいたという立場からちょっと御発言いただきたいと思います。

○山浦委員 リスク・アプローチだけということよりも、むしろゴーイング・コンサーン問題に絡めて、今須田委員の御意見についてちょっと私なりの見解を述べさせていただきますと、基本的に公認会計士が行う監査というのは、財務諸表の監査なんですね。その財務諸表そのものは過去に起きた会計の事象を記録として残して、それを財務諸表という形に反映させるわけで、その枠組みの中で監査人は証拠を集めてその適正性を判断すると。もちろんそれは何のためにその財務諸表を公表するかというと、それは投資家はその財務諸表として、いわばその過去に起きた事象をもとにして将来の投資判断に役立てると。こういった枠組みで考えるわけですね。ただ、そこで得られる、得なくちゃならない監査人の判断というのは、もし足元が、右足、左足、過去と将来、どちらの方に重点を置いているかというと、やはり過去起きた事柄をいろいろな証拠を調べ合わせて検証していくというそこにあるわけで、そういった意味では、そういう将来について監査人が独自の予測等をしていくということまでは至らない。そこまでの機能は、やはり監査というよりはまた別の問題になるんじゃないかと思うんですね。

 もう少し明確にしますと、いわば過去に起きた情報が正しい情報か、信頼できる情報かどうかということを、それを判定するというのがやはり監査人の基本的な機能で、そうした情報を、じゃあどう将来評価に結びつけるかというのは、また情報の利用者サイドの問題じゃないかと思うんですね。そういうスタンスで監査をするものですから、そのリスク・アプローチについても同じようにリスクの評価が基本的にはそういう過去の情報を反映した財務諸表にどういった虚偽記載の可能性があるかと。その可能性のありかをいわばリスクという形で表現して、それを評価するということなんですね。そういった意味で、やはり一番最初の話とまた順繰り戻ってしまうんですけれども、スタンスは監査人が独自にそのリスクに関しても将来評価という形での結びつき方をするわけではないと。

 ただ、誤解がないように申し添えておきたいんですけれども、その際でも、やはりこれから先、その企業はどのように動こうとしているか。どのような展開を遂げようとしているかというところについて、例えば、会計の問題を判断するのにしても、例えば不良債権の有無等は、やはり先々貸し付けの相手先がどのように返済能力を果たしていくか。そういう判断にもかかわってくるわけです。ですから、完全に後ろ向きで過去の情報だけを集めておればいいという話では決してありません。ただ、そのスタンスは経済学で言うリスク・アプローチなりリスク管理、あるいはリスクを先取りして意思決定に結びつけるという、そういうニュアンスで使っているということではないということですね。これでよろしいかと思います。

○脇田部会長 ありがとうございました。須田委員、よろしゅうございましょうか。

○須田委員 リスクをどう評価する、例えば内部統制といったときに、例えばバリュー・アット・リスクとか、ああいう格好でやるようなことを私は思ってしまうんですけれども、そうだとしたら、やはりこれから起こることを確率なりでそれを評価して、何が起こると確定しているんじゃなくて、さまざまな可能性を確率でとらえていって将来のことを考えていくと。それを読み込んでいくという形の将来の見方なんですけれども、それがリスク・アプローチだと思ったんですけれども。

○山浦委員 おっしゃることはよく分かります。実はアメリカで大手の監査法人が、これはこちらの方にアメリカの大手の監査法人が提携されている事務所の社員の方々もいらっしゃいますので、私がこういう形で紹介することはもしかしたら誤解を招くかも分かりませんけれども、聞いているところ、あるいは調査したところによりますと、そういった須田委員がおっしゃるようなリスク評価を、例えばビジネス・リスクの評価であるとか、あるいは内部統制のコントロールリスクの評価と、そういったことにある程度シミュレーションリサーチ的な手法を取り入れて、過去の手法とはちょっと違った手法もかなり取り入れられているということは聞いております。ですから、恐らくそうしたことも当然監査基準の改訂等に当たっては、そういう実務畑にいらっしゃる経験等を踏まえまして検討しなくてはならないことだと思います。

○脇田部会長 ありがとうございました。よろしゅうございましょうか。

 それでは、どうぞ自由に。加藤委員、どうぞ。

○加藤委員 4点ほどあるんですが、まず最初に5ページなんですが、(5) 監査とレビューとの関係についてのところなんですが、ここの書き出しに「財務諸表に関する保証業務の一つであるレビューについて」というふうに書いてあるんですが、欧米ではレビューというのは保証業務とは見ていないんですね。ですから、保証というアシュアランスという言葉はあえて避けて使わないようにしています。というのは、この後の文章を見ましても、「限定的に保証する」とか「保証水準は監査とは明確に異なる」等、何か監査もレビューも保証は与えるんだけれども、その範囲が違うというような書き方になっているんですが、これ自体が私は誤解を招くんじゃないかと思うんですね。ですから、レビューには保証という言葉は使わない方がむしろよろしいんじゃないかと思います。

 それから、16ページですが、8番、財務諸表の開示の充実と監査人の対応というところなんですが、私個人の感覚として、これは何を論点とされているのかが、申し訳ないんですが、ちょっと分からないんですが、その財務諸表の開示が充実されて、具体的な例として後発事象とか偶発事象の監査、あるいは公正価値の監査とか、要するに監査の範囲がどんどん広がっていくということに対して、この下線を引っ張ってあるところは「監査基準等における具体的対応も含めて検討することが必要である」という、この監査基準の中に手続としてこういう後発事象とか偶発事象の監査の手続や公正価値の監査の手続、あるいは何か明確な指示を与えるということなのか。ただ、これはどうも読みますと、そういうようなことではなくて、実質的判断を確保するために必要と考えられる何かが、対応が必要だというような、ちょっと漠然としていて、私自身がちょっとよく理解できないんですが、何を論点としているのかということ。これが一つですね。

 それから、17ページの10番なんですが、非監査情報との整合性に関する監査上の注意ですが、ここの全体の書き方が、例えば一番最初に企業が開示する情報の中には監査人が監査した財務諸表に関連するものがあるというふうに書かれているんですが、この書き方ですと、企業が開示するあらゆる情報と監査報告、監査の対象になった財務諸表との整合性を見なさいと。注意しなさいというような表現になっているんですが、これは監査報告書が含まれているのと同じ書類に掲載されている情報というふうに限定しないと、もう新聞に出てくるもの、ありとあらゆるものについての整合性を見なきゃいけない。ですから、これは、例えば、有価証券報告書の中に限定するとか、目論見書に限定するとか、その監査報告書の対象になっている財務諸表と同じ書類の中に入っているものというふうに限定しないとまずいんじゃないかという気はします。

 それからもう一つなんですが、20ページの6、(1) 監査報告書の日付ですが、これは細かな話ですので今すぐどうのこうのということではないんですが、今後検討する場合の御参考ということですが、ここに「実際の監査終了の日を記す」というふうに書かれているんですが、この実際の監査終了の日そのものもいろいろと時系列的にありまして、現場で会社にお伺いして監査を終わった日なのか、事務所へ引き上げてきて、事務所の中で整理が全部終わった日なのか、あるいは法人によってはさらに審議とか審査とか意見形成のための法人内部の手続もあるんですね。その辺にはかなりタイムラグがありますので、具体的にどれを指すのかというようなことも今後具体的に検討されるときに考慮されたらよろしいかと思います。

 以上です。

○脇田部会長 ありがとうございました。ただいまの四つほどですか、御指摘いただきまして、今の例えば実際の監査終了の日につきましては、確かに幅が随分ありますので今後取り上げなければなりませんし、それから、先ほどの非監査情報との整合性についての範囲でも、確かに情報の範囲につきましては、監査人の監査の責任という点から明確にすべきということも今後検討されるべきだと思います。

 それから16ページの財務諸表の開示の充実と監査人の対応、8番でございますか。16ページのこの点につきましても論点の意味が必ずしも明確でないという御指摘ございまして、これは論点整理をいたします間でもかなり議論をしたところでございますので、これも今後明確にしていく方向でいたしたいと思います。

 ただ、御指摘いただきました1点につきまして、レビューとの問題につきましては、この論点整理にまたいろいろとお力添えいただきました山浦先生がこの面でいろいろと委員会等を主宰されておりますので、山浦委員からちょっと御発言いただきたいと思います。

○山浦委員 今、加藤委員の方で御意見がありましたレビューというのは、保証業務の一つと位置づけられていないという御指摘なんですけれども、これについては若干事実を、私なりで把握しているところを御紹介いたしますと、まずアメリカの場合、1997年にこの保証業務、アシュアランス・サービスという言葉を使います。アシュアランス・サービスに関する特別委員会がAICPAの方で、アメリカ公認会計士協会の方で設けられまして、そこでこのアシュアランス・サービスのいわば枠づけを行っております。実はその中には非常に世界で一番広い定義といいましょうか、概念把握によりますと、監査、レビュー、それからアグリード・アポン・プロセデュア、それからコンピレーション、調製という、そうしたものもやはり保証業務の一つであるという。ただし、その保証業務その概念では余りにも広過ぎるので、もう少し枠を狭めてアテステーションという、いわゆる日本でいえば証明という訳をするんですけれども、その保証業務の中をさらにアテステーションという基準でもってくくって、そのアテステーションとして監査とレビューを入れております。そうした枠組みは一つの例ですけれども、これは明らかに、さらにそのレビューは保証業務の一つであるというふうに位置づけられていると、そのように理解できます。

 その際のレビューは、いわゆる監査が積極的な意見形成をもって保証するという姿勢に対して、ネガティブ、つまり消極的な形で保証をする。これは一体どういう意味を持つかというと、実はまだ日本では定着していないので、皆様になじみがないところなんですけれども、これまで実施した手続では、例えば会計基準に準拠していないところは見当たらないとか、いわばネガティブな形で保証をすると。これがAICPA、アメリカの公認会計士協会でのその定義づけなんですね。

 それからこの保証業務については、カナダの公認会計士協会、向こうは勅許会計士協会、CICAというんですけれども、そこ、並びに国際会計士連盟、IFACですね。その2つでアシュアランス・サービスについての、その二つではアシュアランス・エンゲージメントという言葉を使うんですけれども、保証業務、これについて基準を設けておりまして、ここでもやはりアシュアランス・エンゲージメントというのは、オーディットとレビューという二つをアシュアランス・エンゲージメントとしております。そこでは明確に、やはりこの二つの業務ともアシュアランスを定義をすると。ただし、先ほどアメリカの場合と同じように監査の場合にはポジティブ、それからレビューの場合にはネガティブと、そういう位置づけをしているわけですね。ですから、ここでいう保証業務の一つであるレビューという、この理解については、特段国際的な理解に決して沿っていないということではないと。これは私のこれまでの調べた範囲での見解です。

○脇田部会長 ありがとうございました。加藤委員、御発言ございますでしょうか。

○加藤委員 まあ確かに今の山浦先生がおっしゃったとおりだと思うんですが、実際の私どもの現場では、それは事務所によって対応は違うと思うんですが、その報告書の表現の中に監査報告書とレビュー報告書は混同されないようにしなさいという指示がビッグファイブ等の場合は同じだと思うんですが来ておりまして、私どもが所属する事務所でもその事務所のマニュアルにはレビュー報告書の中の表現はとにかく気をつけなさいと。その保証、アシュアランスを与えるような表現をレビュー報告書の中では一切するなという指示が来ておりますので、その辺がいわゆる基準というものとそれに対応する各事務所のリスク・マネジメントとか、特に海外の場合は訴訟が頻繁に起きますので、下手にレビュー報告書を表現を間違えますと、それこそエクスペクテーション・ギャップとか、訴訟の種になりますので、十分気をつけているというような観点からちょっと先ほどの話をしましたので、基準という面では山浦先生おっしゃるとおりだと思います。

 ただ、そういう意味で、私どもも今後これをこういう基準の中に入れていくときに、その辺の向こうのプラクティスもある程度考慮した上で何か日本独自の誤解を与えないようなことを検討されたらよろしいんじゃないかと思います。

○脇田部会長 御指摘ありがとうございました。なお、本文の中にも保証水準が今加藤委員の御指摘のように監査とは明確に異なるということで、その辺を明確にしていくという方向で論点整理もしておりますので、その趣旨を生かさせていただきたいと思います。

 それから、今事務局の方から、先ほどの非監査情報との整合性に限りまして、ちょっと一言御説明させていただきます。

○多賀谷課長補佐 17ページの非監査情報との整合性のところの御指摘でございますが、これはある意味ではごもっともな御指摘でございまして、部会長はじめとして、この文章を作って検討していく段階でも議論があったところでございます。ただ、例えば、有価証券報告書とか、あるいは商法で法定の計算書類というふうに限定してしまいますと、ほかの情報は何もしないでもいいのかという、そのほか情報とのむしろ矛盾というのもあるのではないかと。ただ、それを監査をしろということはやはり言えないということなので、そこら辺を中間をとりましてというか、実態に応じまして、ここの文章では整合性についても相応の注意を払うべきであるというふうな文章になっております。つまり、全部を監査の対象なり一部として見なさいということではなくて注意を払いなさいという、相応のというのは当然入手し得る度合い、あるいは公表されているものの度合いによって違うという意味で使っておりますので、そこではあくまでも全部を監査するという趣旨ではないということでございます。ただ、今の御趣旨も含めまして、また今後最終的な詰めに向かっては御相談をさせていただきます。

○脇田部会長 ありがとうございました。どうぞ、林委員。

○林委員 論点整理ですね。全般非常によくできていると思うんですが、先ほど須田先生が御指摘になった問題につきましては、心情的には須田先生のおっしゃることが分かるなということなんですが、実務的には恐らく山浦委員がおっしゃったことに当座ならざるを得ないのかなと。ただ一つお願いは、ゴーイング・コンサーンにつきましては、やはり注記事項というような、ぜひその手当てをしていく必要があろうかということですね。

 もう一点は、リスク・アプローチのところですけれども、やはり須田先生がおっしゃいましたように、バリュー・アット・リスク、市場のそのリスク、あるいは金利リスクとか、そういったものを理論的にどう反映させていくかという問題と、もう一点は、これは加藤委員も若干指摘されているかと思っているんですが、ITですね。ITの部分をどうリスク・アプローチとの関係で取り入れていくかと。といいますのは、やっぱりいろいろな産業界の動向を見ておりまして、これはITの重要性の認識を経営のトップがお持ちかどうかによって、数年来であっという間に経営が危殆に瀕する。あるいはうまく対応されれば、非常に新しい価値を創造していくというような時期に入ってきていると思うんですね。そういったことにつきましては、やはり内部統制といいますか、監査人と経営者のディスカッションでしょうかね。こういったことを相当綿密、濃密にやっていく必要があろうかと。そういった意味では、監査人の方の新しいIT技術、あるいはITがその経営全体を変えていくというようなことについてのかなりの認識がないと、実務的にはなかなか反映させることが難しいにしましても、この経営全体を見る場合の非常に重要な要素になるんじゃないかなというふうに思っております。

 以上です。

○脇田部会長 ありがとうございました。その点を記録にとどめさせていただきまして、これから検討させていただきます。

 ほかに御発言。渡辺委員、どうぞ。

○渡辺委員 渡辺です。経緯のところで、1ページ目の最後のところに、「最近、経営が破綻した企業の中には、直前の決算において公認会計士の適正意見が付されていたにもかかわらず、破綻後には大幅な債務超過となっているとされているものや、破綻に至るまで経営者が不正を行っていたとされるものもある」と。「公認会計士監査は果して有効に機能していたのか等、厳しい指摘や批判が行われている」と。このような状況を背景として、今回の監査基準の見直しをしているわけですが、後ろの方がこれに対する答えだということになるんだと思うんですけれども、先ほど伊藤委員もおっしゃいましたように、確かに国際的な新たに起こっている問題、あるいは監査の中でレビューというような新しい分野、それをどうするかという点についても入っているのは当然なんですけれども、この経緯のところで述べている問題について、どういう回答をここで出しているのかと。こういうふうに、こういう観点から見ますと、例えば、職業的懐疑心の問題、それから守秘義務に余り立てこもらないようにすると。それから適宜適切な監査手続と。形式だけ合っていればいいんではないというような点。それからプロセスを文書化すると。それから非監査情報との整合性というような点で前進というか、こたえていると思います。ただ、いつも同じことを言って恐縮なんですが、監査人の独立性のところは、経緯の中でも述べましたが、要するにこの外部的独立性と精神的独立性の関係というのは、言ってみれば、条文を整序すると、整えるという観点からの指摘にとどまっていると思います。ですから、経緯のところで述べている問題の中の一つというのは、監査人の独立性、外部監査人制度というのは、要するに独立した人がちゃんと見て、その財務諸表が正しいかどうかということを見る制度ですので、その点についてここだけを見ますと、何だか独立性については後退しているような印象があります。少なくとも書いている内容は減ると。外形的な独立性はどこかほかのところでやりましょうというふうに書いてある。ですから、私はここのところは条文の、あるいは体系的な整理整頓という観点からではなくて、あえて条文の作り方の体系という意味では、ここに外部的独立性が書いてあることが変であっても、あえて書き込むと。さらに現在よりも強く書くという方が経緯のところで述べているような今回の監査基準の見直しに対する期待にこたえることになるんではないかというふうに思います。

○脇田部会長 その点につきましては、監査基準、一般基準の1で渡辺委員御指摘のように記載されているところにつきまして、今後また、この前いただきました御意見の中でもございましたので、それをさらに酌み取って、今後の論点整理でどう扱うか、また検討させていただきたいと思います。

 それから、その他の点につきましては、いろいろと御指摘いただいた点は、そういった前進を示した趣旨は含まれていたと思いますので。

 それでは、どうぞ、安藤委員。

○安藤委員 大体専門家の方が御発言になって、私は監査の専門ではありませんけれども、3点ばかりちょっと教えていただきたいんですけれども、18ページの上のところでは、情報伝達機能の充実という、一定の条件、枠組みの中でですけれども、こういうことを述べておられます。これを見ている限りは、情報伝達機能を充実させるのかなと思っていたら、20ページのところでは特記事項については、何か改廃を含めて検討すると。ということは、監査報告書は、どうも私は情報提供機能を充実させる方向で発展しつつあるのかなと思っていましたので、特記事項なんていうのはまさにそれじゃないかと思っていたんで、この辺一つ教えていただきたい。

 それから、あとは9ページに大変結構なことが書いてあるんですが、監査人の能力で、要するに、「水準を維持していくため、専門能力の向上や実務経験の蓄積あるいは監査体制の充実に努めるべきこと」、こういうことを監査基準でうたっている国というのはあるんでしょうかという……。例えば、大学の学則に、教員は研究教育の水準を維持するために努力せよという校則は見たことがないということ。

 それからもう一点13ページ、言葉ですが、下から2行目に「監査戦略」という言葉があるんですね。こういう言葉はよく使われるんでしょうか。

 以上です。

○脇田部会長 私からお答えできる範囲で申します。「監査戦略」という言葉は、私もまだ見たことがありませんで、ここで初めて登場したんだと思いますが、あとは委員の先生方からちょっと御指摘いただきたいと思います。

 それから特記事項の件ですが、先生御指摘のように、平成3年のころにこれによる情報、前の補足的説明事項を改めまして特記事項にしたと。なおさら明確に性格を位置づけようといたしましたけれども、それでもなお実務上でもいろいろな混乱が見られると。そしてまたゴーイング・コンサーン問題とのかかわりで議論が出てまいりましたので、そこで特記事項については見直して、情報提供機能はまたその監査報告書としては考えなきゃなりませんけれども、特記事項というものについて、果してこの実務が定着できるかどうかという問題がありますので、このような改廃を含めての検討ということを書きました。

 それから監査人の能力を書き込んだと申しますのは、ちょっと私もアメリカのあれを見ましても書いてないんですが、ただ、説明的に記載するという形は見たことがございます。

 ただ、「監査戦略」という言葉につきましては、ちょっと山浦委員にまた御発言いただきたいと思います。

○山浦委員 まず一つは、一番最初に情報伝達機能についてなんですけれども、これは、大体世界の今の監査基準の動向が監査人側に対して、いわばできる限り投資家のための役に立つ情報、つまり企業外部の人間にとって一番企業の情報に接しているのは監査人ですので、そういう情報を仕入れる立場の者が投資家のために役立つ情報を提供してくれるのは、それは当たり前というか、当然利用者としては要求するし、それからそれに対してできる限り監査人はこたえていくべきだと、こういうことなんですね。

 その話はそれで分かるんですけれども、実は同時に監査人については責任の問題もありまして、いわばやたらと無責任な情報を提供するということもできませんし、それから情報を提供するにしても、あくまでも監査人は意見を形成してそれを表明するという、その枠内でできる限りそういう利用者に対して役立つ情報を提供すると。そういう縛りがあると思うんですね。今、アメリカの、例えばアメリカの監査基準等の改正等を見ていましても、決して特記事項に相当するような情報を出すなと言っているんじゃないんです。ただ、例えば今まで特記事項で逃げていたようなことを、できる限り意見に反映しろということを言っているんですね。ですから、決してこれは情報提供機能の後退ではないんです。あくまでも意見という枠組みの中で、とことん詰めていけと。つまり情報の吟味をとことん監査人として詰めていきなさいと。そういうことを言っているわけで、これは特記事項、例えばまだ決めていませんけれども、廃止すると。これは決して、情報提供機能をこれを後退させるということと同じでは絶対ありません。それが一つです。

 それから、監査人の能力については、確かにアメリカの一般に認められた監査基準という形で一番最初に出てくる、日本でいいますとまさに一般基準に相当するところですね。ここでは確かにそういう能力を維持向上しろという、それは書き加えません。ただ、アメリカの場合には、ピースミル・スタンダードで、品質管理の問題というか、そういったところでさらに書き加えられておりまして、そこではこうした問題も当然扱っております。ですから、そういう経緯を一つ監査基準、あるいは準則等に反映できるんであればやってみたいと、これが趣旨なんですね。

 ただ、一つだけ、ここで御指摘申し上げますと、今の一般基準についても、これは論点整理をする段階で随分と議論になったんですけれども、やはり個人の会計士と監査との関係がどうもやっぱり濃厚に出ておりまして、今のような組織的な監査が、例えば監査法人等で大規模な監査を行うんですけれども、そうした関係が前提じゃない時代の産物なんですね。ですから、そういうことも踏まえて、もう一つ、こういう監査人の能力、つまり個人的なレベルでの能力の維持、それから組織的なレベルでの能力の維持、そうしたことも踏まえて基準の中に入れるような時期に来ているんじゃないかと。これが我々の認識です。

 それから「監査戦略」については、確かに基準として表面化されています。ただ、例えば、アカウンティング・レビューとか、アカウンティング・ホライズンとか、例えばアメリカで監査に関するいろいろな先端的な文献がありますけれども、そこでは「監査戦略」というのは当然の言葉というか、非常に一般に使われる言葉です。

 それから、もう一つ申し上げますと、監査法人等でのいわゆるマニュアルを作っておりますけれども、そこでは、ここでも私自身が言うことじゃないかも分かりませんけれども、この戦略性というのは、これは非常に重視して実際に使っております。それは監査基準の中に入れるかどうかは別にしまして、こうした戦略性を反映するというのはやっぱり今時宜にかなったことじゃないかと、そういうふうに理解しております。

 以上です。

○脇田部会長 ありがとうございました。私の申すべきところを全部補足していただきまして。それぞれの点につきましては、私どもが文章作成の中で議論したところで、ありがとうございました。

 まだ御発言がいろいろとおありと思いますが、この後、総会も予定されておりますので、このあたりで終了させていただきたいと思いますが……。

 どうぞ。

○新原東証監理官 レジェンド問題の話が最初に伊藤委員からありましたので、私どもがどういうふうなことで考えているかということを、一言だけ、申し訳ありません。

 やはり我が国の会計基準とか監査の実務が国際的に評価を受けるということが非常に大事でございますので、私どもといたしましては、できるだけ機会をとらえまして、国際的な、例えばIFADというようなIMFとか世銀とかと世界的な監査法人の集まりがあるので、そういう場へ出て説明をしたり、それから二国間の金融当局の集まりで説明をしたり、その他いろいろな場をとらえて、会計基準の見直しの状況、それからあとは、監査についてはむしろこの監査基準の問題よりも公認会計士審査会の方でいろいろな研修だとか試験だとか、レビューだとか、ピアレビューだとか、いろいろな見直しの努力をされていますので、そういった説明をいたしております。それについて、私の勝手な印象かもしれませんが、一番最初ここに来た7月ごろと半年ぐらいたって随分印象が変わっていることは確かでございまして、ただ、例えば本当に監査日数があれで大丈夫なのとか、そういうふうなことは言われることはありますけれども、大分、そんなに努力したならちょっと様子を見させてもらおうかという感じになっております。そういう意味では、こういう基準の見直し、充実の見直しをやっているということが非常に大きな動きにはなっていると思うんですが、ただ、あと、それから同じような努力は会計士協会でもしていただいておりますので、いろいろな場で会計士協会でも国際的な説明をいただいていると聞いておりますので、こういったようなことが徐々に浸透してきているのではないかと思います。

 あとミクロの問題として、これはビッグファイブと具体的な日本の監査法人との間の個別の交渉でこういうことが決まったことで、各個別企業ごとに恐らく問題は違っているんだろう思いますし、報道によると、ある社はこれは外してもらったというような話も今年はありますし、その辺の具体的にじゃあどういうところが入っていれば、どこの会社がどういうふうになるのかというところは、各それぞれの交渉の段階で、また一層の御努力はしていただく必要があるのではないかというふうに思います。

 以上でございます。

○伊藤委員 ありがとうございました。山浦先生からお話をいろいろ今個別に聞きましたけれども、つまりこういうことでやれば、日本のこの基準というのは、少なくとも国際的に遜色ないというふうに考えていいと、こういうことですね。

○新原東証監理官 それはむしろこの場の皆さんで御議論いただいて……。

○脇田部会長 それでは、今御発言いただきましたけれども、それから今の伊藤委員、あるいは監理官の御指摘のところは2ページのところにも、「この部会においては、我が国の監査に対する信頼性の回復と国際的にも通用する監査規範の確立を目指す」というふうに明記しておりますので、そういう方向で委員の皆様方のまた御協力をお願いしたいと思います。

 それでは、これで終了させていただきますけれども、私といたしましては、細かい表現は別といたしまして、次回の部会でこの論点整理を取りまとめさせていただきたいというふうに考えております。

 本日は、時間の関係もございまして十分に御発言いただけなかった委員の方々もいらっしゃると思いますので、それぞれの御意見を、まことにお手数でございますけれども、来週の末、19日(金曜日)までに事務局の方にお寄せいただきたくお願いをいたしたいと思います。皆様からの御意見を踏まえまして、本日の論点整理をさらに修正させていただきます。そして次回の部会に先立ちまして、皆様のお手元に送らせていただきますので、また御検討をいただきたいと思います。

 最後に今後の予定でございますけれども、次回の部会は6月2日(金曜日)午後2時から4時まで開催することにいたしております。詳細につきましては、後日事務局より御案内を送らせていただきます。

 本日の部会はこれにて終わらせていただきます。皆様には大変ありがとうございました。