1.我が国における連結財務諸表制度は、昭和50年6月に当審議会が公表した 「連結財務諸表の制度化に関する意見書」に基づき、昭和52年4月以後開始 する事業年度から導入されており、当該意見書の公表後、すでに20年以上が 経過している。連結財務諸表の作成会社は年々増加してきており、平成7年度 においては、有価証券報告書を提出している内国会社のうち6割強に当たる約 2,300 社が連結財務諸表を作成している。 この間、連結財務諸表提出期限の特例(事業年度終了後4か月)の廃止、有 価証券報告書の添付書類であった連結財務諸表の有価証券報告書本体への組入 れ、セグメント情報の開示の導入及び監査対象化、「関連当事者との取引」や 連結ベースの研究開発活動等の開示項目の充実、連結子会社の範囲に関するい わゆる10%ルールの撤廃に伴う連結範囲の拡大といった、連結財務諸表制度 に係る数々の充実・見直しが図られてきている。 2.近年、子会社等を通じての経済活動の拡大及び海外における資金調達活動の 活発化など、我が国企業の多角化・国際化が急速に進展しており、また、我が 国証券市場への海外投資家の参加が増加するなど、我が国企業を取り巻く環境 は著しく変化している。 我が国では、これまで個別情報を中心とするディスクロージャーが行われて きているが、このような環境の変化に伴い、投資者が企業集団の抱えるリスク とリターンを的確に判断するため、連結情報に対するニーズが一段と高まって きている。また、企業の側においても、連結経営を重視する傾向が強まってき ている。 なお、米国、英国等の諸外国では、従来より連結情報を中心としたディスク ロージャーが行われているところである。 このため、我が国における連結情報に係るディスクロージャーの現状につい ては、多くの問題点が指摘されている。 3.当審議会では、このような状況に鑑みて、平成7年10月以降、「連結財務 諸表を巡る諸問題」について審議を重ねてきたが、この度、「連結財務諸表制 度の見直しに関する意見書」の草案を公表する運びとなった。 本意見書は、第一部「連結ベースのディスクロージャーの充実等について」 及び第二部「連結財務諸表原則の改訂について」から構成されている。その内 容は、以下のとおりである。 (1) 第一部では、従来の個別情報を中心としたディスクロージャーから、連結 情報を中心としたディスクロージャーへの転換を図り、連結ベースでのディ スクロージャーを一層充実すべく、以下の諸点を提案している。 ○ 連結情報の重視 ○ 連結キャッシュ・フロー計算書の導入 ○ 中間連結財務諸表の導入 ○ 連結ベースの臨時報告書の導入 ○ ディスクロージャーの効率化 ○ 連結情報に係る公認会計士等の監査の充実 (2) 第二部では、議決権の所有割合以外の要素も加味した支配力基準を導入し て連結の範囲を拡大するなど、連結情報充実の観点から連結財務諸表原則を 改訂するとともに、連結財務諸表の作成手続を整備することを提案している。 その具体的内容は、以下のとおりである。 ○ 連結の範囲等の見直し ○ 少数株主持分の表示方法の見直し ○ 税効果会計の適用 ○ 親子会社間の会計処理の統一ルールの明確化 ○ 資本連結の手続の明確化 ○ 資本連結以外の連結手続の明確化 ○ 連結財務諸表における表示区分の見直し 4.このような、「連結ベースのディスクロージャーの充実等」及び「連結財務 諸表の作成手続の整備」の両面について行われる連結財務諸表制度の改革は、 ○ 内外の広範な投資者の我が国への投資参加を促進し、 ○ 投資者が、自己責任に基づきより適切な投資判断を行い、また、企業自 身もその実態に即したより適切な経営判断を行うことを可能にし、 ○ 連結財務諸表を中心とした国際的にも遜色のないディスクロージャー制 度を構築しようとする ものであり、21世紀に向けての、活力あり、かつ、秩序ある証券市場の確立 に貢献しうると考えるものである。 第一部 連結ベースのディスクロージャーの充実等について
第二部 連結財務諸表原則の改訂について
実施時期等