「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」について〔意見書要約〕

 

                                                                        

1.審議の背景と経過                                                    

                                                                        

 (1)  我が国における連結財務諸表制度は、昭和50年6月に企業会計審議会が公

    表した「連結財務諸表の制度化に関する意見書」に基づき、昭和52年4月以

    後開始する事業年度から導入され、その後、有価証券報告書の添付書類であ

    った連結財務諸表の有価証券報告書本体への組入れ等、連結財務諸表制度に

    係る数々の充実・見直しが図られてきた。                              

                                                                        

 (2)  近年、我が国企業の多角化・国際化が急速に進展し、また、我が国証券市

    場への海外投資家の参入が増加するなど、我が国企業を取り巻く環境は著し

    く変化している。このような環境の変化に伴い、企業の側において連結経営

    を重視する傾向が強まるとともに、投資者の側においても、企業集団の抱え

    るリスクとリターンを的確に判断するため、連結情報に対するニーズが一段

    と高まってきている。                                                

                                                                        

 (3)  企業会計審議会(会長  森田哲彌  日本大学教授)では、このような状況

    に鑑み、平成7年10月以降、「連結財務諸表制度を巡る諸問題」について審

    議を行い、本年2月に「連結財務諸表の見直しに関する意見書案(公開草  

    案)」を公表し、広く各界から意見を求めた。                          

      同審議会は、公開草案に対して寄せられた意見を参考にしつつ更に審議を

    重ね、今般、「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」を取りまとめ、

    公表するものである。                                                  

                                                                        

2.意見書の概要                                                        

                                                                        

 (1)  連結ベースのディスクロージャーの充実等(個別情報を中心としたディス

    クロージャーから、連結情報を中心とするディスクロージャーへの転換)  

                                                                        

    ○  連結情報の充実(「営業の状況」や「設備の状況」等の連結ベースでの

      記載、企業集団の概況・業績等のセグメントごとの記載など)を行うとと

      もに、有価証券報告書等の記載順序を、従来の個別・連結の順序から、連

      結・個別の順序とする。                                            

        なお、連結情報を充実させることに伴い、有用性が乏しくなると考えら

      れる個別情報等については、可能な範囲で簡素化し、ディスクロージャー

      の効率化を図る。                                                  

    ○  企業のオフ・バランス情報、リスク情報等について、連結ベースでディ

      スクローズし、臨時報告書についても連結ベースの提出要件を追加する。  

    ○  連結ベースでのキャッシュ・フロー計算書及び中間連結財務諸表を導入

      し、公認会計士又は監査法人による監査の対象とする。                

    ○  持株会社の業績は特に傘下の子会社の業績に左右されることになるため、

      企業集団に係る情報及びセグメント別の情報が一段と重要となる。このた

      め、主要な子会社の損益情報等、開示事項について更に検討を加え、必要

      な措置を講ずる。                                                  

    ○  連結子会社がないため連結財務諸表を作成していない会社について、個

      別財務諸表上、関連会社に持分法を適用した場合の投資損益等を注記する。  

                                                                        

 (2)  連結財務諸表の作成手続等の整備(連結財務諸表原則の改訂)          

                                                                        

    ○  子会社・関連会社の範囲の見直し                                  

        子会社の判定基準として、他の会社に対する議決権の所有割合が過半数

      の場合に加えて、高い比率の議決権を有しており、かつ、取締役会の構成

      員の過半数を継続して占めている場合等、他の会社の意思決定機関を実質

      的に支配している場合には、当該会社は子会社に該当するものとする(支

      配力基準の導入)。                                                

        関連会社についても、その判定基準として、議決権の所有割合が百分の

      二十以上の場合に加えて、一定の議決権を有しており、かつ、財務及び営

      業の方針決定に重要な影響を継続的に与えることができる場合には、当該

      他の会社は、関連会社に該当するものとする(影響力基準の導入)。    

    ○  税効果会計の適用                                                

        会計上は費用として処理されるが税務上は損金として取扱われない事項

      等がある場合において、当期純利益が当期の業績をより適切に反映したも

      のとなるよう、法人税等を期間配分する税効果会計が国際的に広く採用さ

      れており、その適用を原則とする。                                  

    ○  親子会社間の会計処理の統一                                      

        同一環境下で行われた同一の性質の取引等については、「原則として」

      会計処理の統一を求める。                                          

    ○  国際的調和の観点を踏まえた連結手続の明確化・連結財務諸表における

      表示区分の見直し                                                  

                                                                        

 (3)  上記のような連結財務諸表制度の改革は、21世紀に向けての、活力ある

    証券市場の確立に貢献するものと考えられる。                          

      なお、実施時期については、見直しの対象が多岐にわたっており、今後、

    経理処理のためのコンピュータ・システムを新たに構築する等の企業側の受

    入準備が必要であり、これらを考慮すると、平成10年4月以後開始する事業

    年度から一部実施し、平成11年4月以後開始する事業年度から、本格的に実

    施されるよう措置する。                                              

                                                                        

3.今後の審議予定                                                      

                                                                        

    企業会計審議会は、引き続き、連結キャッシュ・フロー計算書及び中間連結

  財務諸表の作成基準等について審議する予定である。なお、開示書類の具体的

  な記載内容等については、今後、開示様式に係る関係省令の改正により手当て

  するとともに、日本公認会計士協会において、会計処理等に当たっての具体的

  な実務指針の作成が行われる。