「退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書」の概要
                                                                              
                                                                              
                                                                              
1.会計基準整備の必要性                                                      
    我が国において多くの企業が企業年金を採用している状況にあって、近年、運用環
  境の変化等により、将来の年金給付に必要な資産の確保に懸念が生じているといわれ
  ている。企業年金に係る情報は、投資情報としても企業経営の観点からも重要性が高
  まっており、年金資産や年金負債の現状を明らかにするとともに、企業の負担する退
  職給付費用について適正な会計処理を行い、国際的にも通用する会計処理及びディス
  クロージャーを整備していくことが必要である。                                
                                                                              
2.基本的考え方                                                              
                                                                              
 (1)  企業会計原則における将来の退職給付費用の引き当ての考え方に立ち、企業間の
    比較可能性を確保する観点から、企業から直接給付される退職金と企業年金制度か
    ら給付される退職給付を合わせた包括的な会計基準を検討した。                
                                                                              
 (2)  基本的な会計処理の枠組みとして、支出の原因の発生時に費用を認識する「発生
    主義」の考え方を採用し、IAS(国際会計基準)との調和を図るとともに、具体
    的な計算方法においては我が国の実態を踏まえた処理方法を採用した。          
                                                                              
3.ポイント                                                                  
                                                                              
 (1)  発生給付評価方式の採用(将来の昇給等を見込んだ退職給付見込額をベースとし
    た割引現在価値により退職給付債務を計算する。)                            
                                                                              
 (2)  年金資産の時価評価                                                      
                                                                              
 (3)  企業年金制度を採用している企業の年金給付債務の計算における年金資産の控除
    (ただし、年金資産が年金給付債務を超過する額は控除できない。)            
                                                                              
 (4)  過去勤務債務等の認識の遅延認識(過去勤務債務及び数理計算上の差異は、残存
    勤務期間にわたって規則的に費用計上する。)                              
                                                                              
  (注)過去勤務債務とは給付水準の改定による過年度分の給付増加額。数理計算上の
      差異とは数理計算における予定計算と実績との差及び予定計算の数値変更により
      生じる計算差額等をいう。                                              
                                                                              
 (5)  貸借対照表上における表示科目の統一(原則として「退職給付引当金」)      
                                                                              
 (6)  注記事項の充実(企業の採用する退職給付制度、退職給付債務や年金資産、退職
    給付費用等の内訳、数理計算に用いた基礎数値等について注記する。)          
                                                                              
4.実施時期等                                                                
                                                                              
 (1)  本基準は、平成12年4月1日以後開始する事業年度から実施する。(ただし、数
    理計算を実施するための整備状況から直ちに適用することが困難である会社は、平
    成12年4月1日以後開始する事業年度においては注記を行い、平成13年4月1日以
    後開始する事業年度から会計処理を行うこととする。)                        
                                                                              
 (2)  今回の会計処理は、これまでの我が国の企業年金の会計慣行を大幅に変えるもの
    であり、一時に極めて多額の影響が生じることから、会計処理見直しによる影響額
    は15年以内で費用処理する経過措置を設ける。                            
    (注)米国でも、会計処理見直し時から15年の費用処理期間を設けている。    
                                                                            
                                                                              
(参考)我が国の会計基準の特徴                                                
                                                                              
  1.米国基準では、追加最小負債及び無形固定資産として貸借対照表に年金負債を両
    建て計上するが、我が国ではこのような処理は採用しない。                  
    (注)我が国において、このような無形固定資産の概念を導入することは困難であ
        り、IASもこのような処理は採用していない。                        
                                                                              
  2.退職給付費用の計算は、IAS及び米国基準と同じく期間比例計算(勤務期間

    応じ毎期均等に発生するという考え方)を原則とするが、我が国では、給与比例計
    算も採用する。                                                          
    (注)米国基準では支給倍率比例が認められている。                        
                                                                              
  3.過去勤務債務及び数理計算上の差異は、IAS及び米国基準では、遅延認識(残
    勤務期間以内で規則的に費用処理)の他、一定範囲の数理計算上の差異は認識しな
    いことも認められるが、我が国では、いずれも遅延認識とする。

[目次に戻る]