第3章 電子マネー・電子決済に関する検討の視点

                                                                                    
1.電子マネー・電子決済の円滑な発展の確保                                          
                                                                                    
    電子マネー・電子決済の健全な発展は、情報化社会における効率的な支払・決済の方法を
  提供し、利用者利便の向上に貢献するものである。特に、今後、情報通信技術の進展を背景
  として、電子商取引の一層の拡大が期待される中にあって、電子マネー・電子決済が円滑に
  発展していくことは、円滑な電子商取引の普及・発展の基盤となるものであり、情報化時代
  の我が国経済の発展にとって重要な課題と言える。                                    
    また、電子マネー・電子決済の発展は、金融機関にとって、金融仲介機能と並んで重要な
  決済機能を情報通信技術の進展を取り入れて高度化させる動きであり、今後の金融産業の発
  展のためにも極めて重要な課題である。                                              
    21世紀に向けて我が国金融システムの改革を進めていく観点からは、我が国の金融部門
  がこうした動きに的確に対応し、我が国において電子マネー・電子決済が適切かつ健全な形
  で円滑に発展・普及していくような環境の整備を図るとの視点が重要である。            
                                                                                    
2.民間部門の技術開発や創意工夫の尊重                                              
                                                                                    
    電子マネー・電子決済の円滑な発展を図るためには、まず、民間部門の技術開発や創意工
  夫を尊重する視点が重要である。電子マネー・電子決済は決済という経済活動の根幹に係わ
  るものであり、決済秩序・信用秩序の維持に支障が生ずることのないよう十分な注意は必要
  であるが、そうした懸念がない限りにおいて、特に、電子マネー・電子決済が技術的にも商
  業的にも揺籃期にあり、世界的な規模で開発・普及に向けた民間部門の努力が行われている
  状況においては、民間部門が技術開発や創意工夫に基づき自由に電子マネーや電子決済サー
  ビスに関する開発を行い、その中から利用者がそのニーズに応じて適切な選択を行うことを
  通じて、よりよい電子マネー・電子決済の普及・発展を図ることが適当である。こうした観
  点からは、民間部門の自由な開発・設計を可能とするような法的・制度的な環境の整備が求
  められる。                                                                        
                                                                                    
3.消費者の利用しやすい環境の整備                                                  
                                                                                    
    最近の技術革新の進展により、従来の企業による大口決済を対象とした電子決済に加え、
  消費者による小口・小売の決済を対象とした電子マネー・電子決済も開発されるようになっ
  ている。しかし、その基礎となる高度な情報通信技術は一般の消費者が容易に理解できるも
  のではなく、消費者は必ずしも十分的確にそのリスクの把握ができないおそれがある。こう
  した状況において、消費者による決済も対象とした電子マネー・電子決済の普及を図るため
  には、これらに関し適切な消費者保護の措置を講じ、一般の消費者もこれを安心して利用で
  きるような環境の整備を図る視点が重要である。                                      
                                                                                    
4.国際的な整合性への配慮                                                          
                                                                                    
    経済活動の国際化の進展により、国境を越えた企業間の大口の資金決済は、今後ますます
  拡大していくことが見込まれる。また、インターネットによる世界的規模でのネットワーク
  化の進展は、小口・小売の分野においても国境を越えた資金決済が拡大していく可能性を示
  唆している。このような国際的な資金決済の拡大を展望すれば、電子決済の枠組みを検討す
  るに当たっても、その国境を越えた利用も念頭において、国際的な整合性に配慮するとの視
  点が重要である。                                                                  
    また、電子マネーの開発も含めた新たな電子決済サービスの開発は、世界各地で進行して
  おり、その事業展開も国際的な視野で進められている。こうした中にあって、電子マネー・
  電子決済に関する制度を整備するに際しては、我が国においてのみ事業展開ができないとい
  った事態が生じないよう配意するとともに、我が国の電子マネー・電子決済事業の国際競争
  力を阻害しないようにするとの観点も必要であり、こうした観点からも、国際的な整合性に
  留意することが重要である。なお、こうした国際的な整合性は、電子マネー・電子決済を巡
  る環境のあらゆる側面に求められるものであり、国際的な相互利用を可能とするような技術
  の開発や国際的にも遜色のない通信回線の容量の確保・利用料金の設定といった通信インフ
  ラの整備等を進めていくことが重要である。                                          
                                                                                    

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