第6章 電子マネー・電子決済の担い手

                                                                                    
1.電子マネー・電子決済の新たな担い手                                              
                                                                                    
    これまで資金決済の仲介は、基本的に金融機関により行われてきた。金融機関は、進展す
  る情報通信技術を活用しつつ、相互に信頼性の高い決済ネットワークを形成し、これを通じ
  て便利で安全な決済サービスを広く一般に提供している。このため、金融機関が提供する  
  「預金通貨」は、現金以上に一般的に利用される決済手段ともなっている。              
    他方、近年の情報通信技術の進展は、こうした金融機関が提供してきた機能の一部又は全
  部を代替するような新たなサービスを生み出している。例えば、オープン・ネットワークを
  通じた資金取引に関する認証業務は、これまで金融機関が対面により又は安全性の高いクロ
  ーズド・ネットワークの活用を通じて行ってきた本人確認や通信内容の真正性確保をオープ
  ン・ネットワーク上で実現するサービスである。また、暗号技術を駆使した電子マネーの発
  行は、既存の金融機関間の決済ネットワークに依存せずに隔地者間の資金移動を仲介する新
  たな決済サービスであると考えられる。                                              
    こうした新たなサービスは、言わば、金融機関がこれまで果たしてきた様々な機能の一部
  をアンバンドルするものであり、その担い手にも、そのサービスの機能に応じ、十分な適格
  性が求められる。以下では、近年、資金決済の電子化に関連した新たなサービスとして特に
  注目されている、電子決済に係る認証業務と電子マネーの発行業務を取り上げ、その担い手
  のあり方について検討する。                                                        
                                                                                    
2.電子決済に係る認証機関                                                          
                                                                                    
(1) ネットワークにおける認証機関の役割と適格性                                      
                                                                                    
イ.認証機関の役割と責任                                                            
                                                                                    
    前述した通り、第三者の不正な介入やデータの変質等の危険性が少なくないとされるオー
  プン・ネットワークを通じたデータ交換により決済や取引を行う場合には、認証による安全
  性の確保が重要であり、認証サービスを提供する認証機関が果たす役割は極めて大きなもの
  である。他方、そうした認証機関の責任範囲については様々な議論がある。すなわち、「認
  証」を行う以上、それを信じてデータ交換による取引を行った者が通信途上でのデータの改
  ざんや変質等により損害を受けた場合には、認証機関がその損害の賠償責任を負うべきであ
  るとの指摘がある一方、認証機関はその認証を受けて送信されるデータの内容を基本的に関
  知しないことから、認証機関に結果的に発生した損害の賠償を求めることは適当ではないと
  の指摘もなされている。なお、この問題は、世界各国で、また最近では、国連国際商取引法
  委員会(UNCITRAL:United Nations Commission on International Trade Law)等
  の国際的な場においても議論されるようになっている。国際的には、認証サービス事業の振
  興等の観点から、一定の範囲に認証機関の責任を限定するべきとの議論が強くなっており、
  例えば、米国各州で制定が進められている「電子署名法」では、免許を受けた認証機関の発
  行した「認証証」を伴う電子署名に実際の署名と同等の法的効果を認める等の規定とともに、
  認証機関の責任限度の設定を許容する規定が盛り込まれているものもある。              
                                                                                    
ロ.認証機関の適格性                                                                
                                                                                    
    今後の電子商取引の発展も展望すれば、適切な認証サービスが提供されることはますます
  重要なものとなり、これを提供する認証機関には十分な適格性が求められることとなる。認
  証機関の適格性に関しては、一般的に、適切な認証サービスの提供ができる技術的な能力の
  ほか、責任範囲に応じて損害の賠償ができ、かつ、相当期間にわたり事業を継続できる財務
  上の健全性や、円滑なサービスの提供、内部不正の防止、利用者の個人情報の厳正な管理等
  を的確に行う事務的・人的な能力等の要件が挙げられる。                              
    こうした適格性を確保するための方法には様々なものが考えられる。例えば、米国ユタ州
  の「電子署名法」では、所要の要件を充たし免許を受けた認証機関のみが特別な法的効果の
  認められた認証証の発行等を許されるとしているが、免許を受けない認証機関による認証サ
  ービスの提供を禁止している訳ではない。他方、ドイツの「電子署名法草案」では、免許を
  受けた認証機関のみに認証サービスの提供を認めるとの形で、認証機関の適格性の確保が図
  られている。このほか、認証機関の階層構造の中で、上位の認証機関が下位の認証機関の認
  証を行うに当たり一定の適格性の要件を課すことによって、認証機関の適格性を確保してい
  くとの方策も考案されている。                                                      
    このように、認証機関の責任範囲や適格性等に関する考え方は未だ確立された状況にはな
  い。こうした中にあって、我が国としても、早急に国内での議論を進めるとともに、その結
  果を国際的な場でも反映させていくことが望まれる。その際、認証機関が行う認証サービス
  にも、単に技術的な確認手段の提供で十分な場合や、認証を受けるメッセージの真正性等の
  保証が必要な場合等様々なものがあり、これを画一的に取り扱うことは必ずしも適当ではな
  いとも考えられることに留意が必要である。また、認証機関が認証サービスの提供のみなら
  ず、相手方の受取否認等の防止の観点から通信記録を保管するTTPとしての役割も担う場
  合や、秘密鍵の寄託を受けるような仕組みの場合には、この認証機関には特別に高度な適格
  性が求められると考えられる。なお、秘密鍵の寄託に関しては、秘密鍵の紛失等に備え秘密
  鍵を安全に保管してもらうという秘密鍵の所有者の必要性から議論されるほか、特に国際的
  な場においては、犯罪捜査等の公益上の理由から暗号文の解読が必要な場合に公的機関が秘
  密鍵にアクセスする手段を確保するという観点からの議論も多くなされている。          
                                                                                  
(2) 電子決済に係る認証機関の適格性                                                  
                                                                                    
    ネットワーク上でのデータの交換において、そのデータが決済情報である場合、安全対策
  としての認証サービスの重要性は通常の場合以上に高いものとなる。このため、その認証サ
  ービスを提供する認証機関には、特に高い適格性が求められると考えられる。            
    認証サービスの利用が不可欠であるインターネットのようなオープン・ネットワークを通
  じた電子決済において、認証サービスの選択の責任を誰が負うかは、基本的には、その電子
  決済に関する取引ルールの問題である。企業が大口の電子決済を行う場合には、その企業が
  自ら認証機関の適格性を判断し、自己責任に基づいてその電子決済に関する認証サービスを
  選択するとすることも考えられる。                                                  
    他方、一般の消費者も対象とした小口・小売の電子決済サービスに関しては、専門的な知
  識や損失負担能力に限界のある一般の消費者よりも適切な安全対策を講じやすい立場にある
  サービス提供者の側に適切な認証機関による認証サービスを選択する基本的な責任があると
  することが合理的かつ公正であると考えられる。こうした考え方は、これまでも金融機関等
  が一般の消費者も対象として電子決済サービスを提供する場合に、消費者よりも専門的な知
  識を有する金融機関等に十分なシステムの安全性確保の責任が求められてきたこととも整合
  的である。この場合、電子決済サービスの提供者は、自らが厳重な安全対策を講じて厳正に
  管理している利用者の情報を変更するデータの交換に関する認証サービスであることから、
  その認証機関に対しても、自らが講じている安全対策に劣らない高い技術的・事務的な適格
  性を求めることとなると考えられる。さらに、独立の認証機関のサービスに依存せず、自ら
  が認証機関となって、利用者に対して認証サービスを提供するとすることもありうる。    
    このように、電子決済サービスに係る認証機関については、高い適格性が求められるが、
  認証機関の選択は基本的に電子決済サービスの提供者やこれを利用する企業が行うものであ
  ることに鑑みれば、認証機関の適格性を確保するための消費者保護の措置は必ずしも必要と
  はならないことに留意が必要である。                                                
                                                                                    
(3) 金融機関による認証サービス                                                      
                                                                                    
    電子決済に係る認証サービスについては、上記の通り、その認証機関に特に高い適格性が
  求められることとなるが、そうした高い適格性を有する限り、例えば金融機関以外の主体が
  行うことが制度的に制限される必要はない。他方、電子決済の認証はその決済サービスの不
  可欠な一部であることや、電子決済サービスの提供者が認証機関を選択する場合には自らが
  講じている安全対策に劣らない高い技術的・事務的な適格性を求めることを考えれば、電子
  決済サービスの提供者となりうる金融機関が電子決済に関する認証サービスを提供する認証
  機関となることも合理的であると考えられる。                                        
    ただし、認証サービス自体は、ネットワークを通じたデータ交換の安全性を確保するもの
  であり、金融サービスそのものではないとも解されうることから、銀行法等で他業禁止が課
  された金融機関がこれを行えるかが問題となりうる。しかし、上記の通り、電子決済サービ
  スに関して金融機関が認証サービスを行うことは、むしろ合理的であり、これを制限する必
  要はないものと考えられる。また、金融機関が電子決済に関連して認証サービスを行う場合
  には、この認証サービスは高い安全性を有していると考えられるため、こうした金融機関に
  よる認証サービスを電子決済に関連したもの以外に活用することも考えられる。電子商取引
  の円滑な普及の観点から、金融機関の他業禁止の趣旨にも配慮しつつ、金融機関による一般
  的な認証サービスの提供についても検討していくことが適当である。                    
                                                                                    
3.電子マネーの発行体                                                              
                                                                                    
(1) 発行体に求められる適格性                                                        
                                                                                    
イ.財務上の健全性                                                                  
                                                                                    
    デジタル・データである電子マネーが決済手段として広く利用されるためには、そのデー
  タを提示すれば必ず発行体からそのデータの表す金額に相当する支払を受けることができる
  との信頼感を多くの利用者が持ち続けることが不可欠である。このため、電子マネーの発行
  体には、発行した電子マネーに対応した支払能力の維持が必要であり、高い財務上の健全性
  が求められる。また、発行体が多くの利用者の信頼感を維持するためには、常に利用者の要
  求に即応した支払をなしうることが重要であり、資産の健全性の維持のみならず、十分な流
  動性の確保も必要となる。                                                          
                                                                                    
ロ.技術的・事務的な能力                                                            
                                                                                    
    電子マネーが広く利用されるためには、電子マネーによる決済が多くの利用者にとって手
  軽で便利なものであるのみならず、決済が安全かつ円滑に行われるものであることも必要で
  ある。このため、電子マネーの発行体は、第三者の不正行為等が十分に防止された安全な決
  済のシステムを構築し、これを内部不正の防止も図りつつ円滑かつ確実に運営できるだけの
  十分な技術的・事務的な能力を有している必要がある。なお、こうした技術的・事務的な能
  力は電子マネーの発行体のみならず、利用者に応対してシステムを運営する主体や、さらに
  はシステムを開発する主体に対しても求められるものであり、これらの全てが揃って初めて、
  電子マネー・システムが適切に機能することに留意が必要である。                      
    また、利用者の個人情報が蓄積されるような仕組みの電子マネーの発行体又はシステムの
  運営主体には、蓄積された個人情報の的確な管理を行える技術的・事務的な能力も求められ
  る。                                                                              
                                                                                    
(2) 発行体に関する諸外国の動向                                                      
                                                                                    
    諸外国における電子マネーの発行体に関する考え方を見ると、まず、1994年5月に欧州通
  貨機構(EMI:European Monetary Institute )がEU決済システム作業部会の「プリペ
  イドカードに関する報告書」を公表している。ここでは、「経済的な意味において(多目的
  のプリペイドカードである)電子財布の発行者が受領する資金が銀行預金であることは明ら
  かである」とされ、「(原則として)金融機関のみが電子財布の発行を認められるべきであ
  る」との政策的な結論が導かれている。この勧告も踏まえ、欧州大陸諸国では一般的に、電
  子マネーの発行は金融機関の業務に含まれるべきものであり、その発行体は原則として金融
  機関に対する監督の対象とすべきとの考え方が採られている。このうち、ドイツにおいては、
  既に電子マネーの発行を明示的に銀行業務と位置付ける「信用制度法」の改正法案が議会に
  提出されている。ただし、この法案では、プリペイドカード型の電子マネーの発行業務のみ
  を行う者については、その利用と普及が限定的である場合に限り、監督当局が健全性の監督
  や免許等に関する規定の適用除外を定めうるとされている。                            
    他方、米国や英国においては、電子マネーの発行体に対する厳格な監督等の規制により、
  民間部門の技術開発や創意工夫が阻害されるおそれがあるとの観点から、現時点において電
  子マネーの発行を金融機関に限定すべきと結論付けることは時期尚早との考え方が強い。  
    なお、こうした電子マネーの発行体のあり方に関する考え方の相違は、決済サービスや金
  融仲介サービスを包括的に金融機関の業務とする制度が採られてきたかといった金融機関の
  業務等に関する既存の制度的な枠組みの違いが背景となっている面もあることには留意が必
  要である。                                                                        
                                                                                    
(3) 発行体の適格性確保のあり方                                                      
                                                                                    
イ.公的関与の必要性                                                                
                                                                                    
    上記の通り、電子マネーが一般的な決済手段として広く利用されるためには、その発行体
  に、利用者の要求に応じた支払を常に行いうるような財務上の健全性と、決済システムを確
  実かつ円滑に運用できるような技術的・事務的な能力が求められる。こうした発行体の適格
  性とその信頼性は、本来、その電子マネーを利用する利用者が各々の自己責任に基づいて判
  断すべきものとも考えられるが、専門的な知識に限界のある一般の消費者がそうした判断を
  継続的に行うことは容易なことではない。                                            
    特に、電子マネーの発行体は、通常、電子マネーの発行に伴い多くの利用者から資金を受
  け入れることとなることから、そこで詐欺的な資金集めが行われ、消費者が被害を受ける危
  険性もある。また、発行のための限界費用が僅少である電子マネーについては、発行に伴い
  受け入れた資金の運用による利益を求め、無秩序な発行を行う発行体が出てくる可能性も否
  定できず、その場合には社会的・経済的な混乱が生ずるおそれがあるとの指摘もある。    
    主として小口・小売決済での利用を念頭に置いた電子マネーの円滑な発展を図る観点から
  は、一般の消費者も安心して利用できる環境の整備が必要であり、このため、電子マネーの
  発行体については、一定の参入ルールの設定や適切な監督等の適格性確保の措置が講ぜられ
  ることが望ましい。                                                                
                                                                                    
ロ.現行の金融機関監督等との関係                                                    
                                                                                    
    電子マネーの発行体の適格性確保を考えるに当たっては、まず、これに関連した既存の制
  度との関係を整理することが適当である。以下では、電子マネーの発行に関連するものとし
  て、預金の受入れを行っている金融機関の制度とプリペイドカード制度を取り上げる。    
    第1に、利用者から資金を受け入れて現金に代わる決済手段を発行し、その決済手段の受
  領者から求めがあればこれに対し相当の支払を行うという電子マネーの発行体の業務は、現
  在、現金と同等の一般的な決済手段として利用されている「預金通貨」の提供を行う預金受
  入金融機関の業務と類似している。預金受入金融機関に対する監督等は、基本的に、預金受
  入金融機関がこうした業務に伴い不特定多数の利用者から資金を受け入れる点に着目したも
  のであり、これと同様の業務を行う電子マネーの発行体についても、同様の監督等が必要で
  あるとも考えられる。現行法制上も、特に一般的な換金性を保証して電子マネーの発行がな
  される場合には、その発行に伴い不特定多数の者から資金を受け入れる行為が、出資法又は
  銀行法等における「預金の受入れ」に該当すると見做される可能性が高く、この場合には、
  その電子マネーの発行体は、銀行法等の免許を受けて「預金の受入れ」を行うことができる
  主体となることが必要となる。                                                      
    しかし、現行の預金受入金融機関に対する監督等は、「預金の受入れ」に併せて「資金の
  貸付け」も行う金融機関の金融仲介機能に基づくものでもある。例えば、資産に関する検査
  は、主として、預金受入金融機関が貸付け等一般には評価が困難なリスク資産に運用してい
  ることから必要となるものと考えられる。このため、電子マネーの発行体がこうした機能を
  果たさない場合、例えば、その資産の運用を国債等の安全で流動性が高く、一般にも評価が
  容易な資産に限定する場合には、現行の預金受入金融機関に対する監督等をそのまま適用す
  ることは必ずしも必要ではないと考えられることには留意が必要である。                
    第2に、電子マネーは、利用者による資金の支払を受けて現金に代わる決済手段として発
  行され、利用者はこれを物品やサービスの購入の際に使用し、その受領者は発行体から相当
  の支払を受けるというプリペイドカードの機能と同様の機能も果たすものである。このため、
  電子マネーがICカード等の専用の記録媒体を伴う場合には、基本的に、プリペイドカード
  を規制する前払式証票の規制等に関する法律の適用対象となり、その発行体には、適格性確
  保の措置として、発行されたプリペイドカードの未使用残高の二分の一以上の発行保証金の
  供託義務等が課されることとなるとも考えられる。ただし、そもそも同法は一般的な換金性
  があり広範囲に利用されるような電子マネーを想定していないとの指摘や、同法の発行保証
  金の供託制度は電子マネーの発行体に求められる高い資産の健全性や流動性等の適格性を確
  保する措置として必ずしも十分なものとは言えないとの指摘もある。                    
    また、情報通信技術の進展を背景として、プリペイド式の決済サービスにおける「価値」
  の記録媒体も、従来の磁気カードのほか、ICカードやパーソナル・コンピュータが用いら
  れるようになるなど多様化・高度化してきており、こうした観点から、電子マネーに限らず
  プリペイド式決済サービスにおける法規制のあり方に関しても、検討を行う必要があると考
  えられる。                                                                        
                                                                                    
ハ.当面の措置のあり方                                                              
                                                                                    
    電子マネーの発行体の適格性確保に係る公的な関与は、利用者の保護を通じて電子マネー
  の普及に貢献するものであるが、多少なりとも民間部門の自由な競争を制約する効果を有す
  るものでもあり、民間部門の技術開発等の状況や諸外国の動向にも配意しつつ、電子マネー
  の健全な発展に向けた適時適切な措置を考えていく必要がある。                        
    特に現状では、電子マネーは未だ技術的にも商業的にも揺籃期にあり、民間部門において
  様々な技術開発や創意工夫の努力が行われている段階にある。また、電子マネーが対象とす
  る決済も主として小口のものとなっている。こうした状況に鑑みれば、当面は、多様な主体
  による市場での競争を通じた電子マネーの発展を促進することが重要であり、利用者保護の
  ための必要な適格性確保の措置は講じつつも、多様な主体が実用化に向けた実証実験等を行
  いやすい環境を整備する観点を重視することが適当である。                            
    こうした観点から当面の措置について考えれば、まず第1に、多様な主体が参入しやすい
  環境を整備するため、銀行法等による免許を受けた現行の預金受入金融機関以外の主体によ
  る電子マネーの発行に関する法的な枠組みの整備を行うことが適当である。この場合、利用
  者保護の観点から、発行体の資産運用を安全性・流動性が高い資産に限定することのほか、
  電子マネーの発行やそのシステムの運用とは関連のない業務の制限、技術者の確保、業務の
  的確な運営に対する監督等の適格性確保の措置を考えることは必要である。ただし、新規参
  入の過度の阻害となるような厳格な参入基準の設定は極力慎重に考える必要がある。      
    第2に、現在も一般的な決済手段として利用されている「預金通貨」を提供している金融
  機関が電子マネーの発行を行うことについては、基本的に現行の監督の枠組みを通じて必要
  な適格性の確保が可能であり、特段の問題はない。ただし、環境整備の観点からは、銀行法
  等に基づく適格性確保のための監督等が課される金融機関が電子マネーを発行する場合にお
  ける前払式証票の規制等に関する法律に基づく発行保証金の供託義務等の措置の適用の適否
  について、利用者保護の水準の確保にも配意しつつ、検討を行う必要があるとの指摘がある。
  また、電子マネーの発行に伴い受け入れられた資金を準備預金制度の対象とすべきか否かに
  ついても、電子マネーの健全な発展を図る観点を踏まえつつ、検討していく必要があるとの
  指摘もあることに留意が必要である。

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