電子マネー・電子決済は、情報通信技術の進展を金融サービスに取り入れ、情報社会にお ける利用者のニーズに対応して効率的な決済の方法を提供しようというものである。それが 我が国においても健全な発展を遂げるような環境の整備を図るため、諸外国の動向等にも配 意しつつ、立法措置も含め、速やかに所要の措置が講ぜられることが望まれる。 1.電子マネーに関する制度整備 - 多様な主体による市場での競争を通じた電子マネーの発展を図る観点から、現行法制上は 電子マネーの発行が困難とされる銀行法等による免許を受けた現行の預金受入金融機関以外 の主体が電子マネーを円滑に発行できるような制度的な枠組みの整備を行うことが適当であ る。 - 電子マネーの発行体については、一般の消費者も安心して利用できる環境を整備するとと もに、信用秩序・経済秩序の維持を図る観点から、適切な参入ルールや監督等の適格性確保 の措置が講ぜられることが望ましい。預金受入金融機関が電子マネーを発行する場合には基 本的に既存の規制の枠組みで適格性の確保は可能と考えられるが、それ以外の主体が発行す る場合については、適切な適格性確保の措置が必要となる。具体的には、資産運用の制限や 業務運営に対する監督等の措置について検討を行うことが適当である。また、電子マネーの 発行体に対する前払式証票の規制等に関する法律に基づく適格性確保の措置の適用のあり方 についても検討することが必要である。 - 消費者による小口・小売決済を念頭に置いた電子マネーについて、一般の消費者も安心し て利用できる環境を整備する観点から、消費者の立場に配慮した公正な取引ルールの形成を 図るとともに、電子マネーの発行体が破綻した場合の消費者等の利用者の権利の実体的な保 護やその実行手続の整備のあり方についても、検討を行うことが必要である。その際、現行 のプリペイドカードに係る利用者保護の措置のあり方についても併せて検討することが望ま れる。 2.電子決済に関する制度整備 - 金融機関等が技術革新の進展に即応し、技術開発や創意工夫に基づく自由な電子決済サー ビスの開発設計に取り組む環境を整備する観点から、法律関係の明確化や適正化等の法的環 境の整備について検討していくことが必要である。こうした観点からいわゆる機械化通達に ついては、廃止も含め見直しを行うことが適当である。 - 利用者が幅広い選択肢の中からそのニーズに応じて電子決済サービスを適切に選択するこ とができるような環境を整備する観点から、安全対策技術や取引ルール等について、比較可 能な形で情報開示がなされるよう、開示項目や開示方法のあり方等の検討を行うことが必要 である。その際、電子決済サービスの国際的な利用等も展望し、国際的な整合性にも配慮す ることが必要である。 - 消費者による小口・小売決済を念頭に置いた電子決済サービスについては、専門的な知識 に限界のある一般の消費者も安心して利用できる環境を整備する観点から、サービス提供者 によるサービス等の十分な説明、簡易な紛争解決手続の提供、個人情報の厳格な管理等の公 正な手続の確保や、事故等の場合の消費者の損失負担額の限定等の公正な取引ルールの形成 を図っていくことが必要である。特に、新たな電子決済サービスについては、その円滑かつ 健全な普及を図る観点から、公正な取引ルールの形成を促進するための公的な関与について も検討を行っていくことが適当である。 - オープン・ネットワークを通じたデータ交換の安全性確保に重要な役割を果たす認証機関 の責任範囲や適格性に関する議論を国内・国外で進めていくことが必要である。なお、金融 機関が認証サービスの提供を行うことも、金融機関の他業禁止の趣旨にも配慮しつつ、でき る限り許容していくことが適当である。 以上
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