第三 役員及び職員


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|1  役員構成                                                  |

|    日本銀行の役員は以下のとおりとする。                      |

|          総裁      1人                                      |

|          副総裁    2人                                      |

|          審議委員  6人                                      |

|          理事      6人以内                                  |

|          監事      3人以内                                  |

|          参与      若干人                                    |

|                                                              |

|2  役員の職務及び権限                                        |

|  (1)   総裁は、日本銀行を代表し、政策委員会の定めるところに従|

|    い、日本銀行の業務を総理する。                            |

|  (2) 副総裁は、日本銀行を代表し、総裁を補佐して日本銀行の業務|

|    を掌理し、総裁に事故がある場合等においてその職務の代理等を|

|    行う。                                                    |

|  (3)   理事は、総裁及び副総裁を補佐して日本銀行の業務を掌理す|

|    る。                                                      |

|  (4) 監事は、日本銀行の業務を監査し、監査の結果に基づき必要が|

|    あると認めるときは、大蔵大臣又は政策委員会に意見を提出する|

|    ことができる。                                            |

|  (5) 参与は、日本銀行の業務に関する重要事項について、政策委員|

|    会の諮問に応じ、又は必要と認めるときは、政策委員会に意見を|

|    述べることができる。                                      |

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  (説明)                                                        

                                                                  

      日本銀行の役員として、政策委員会の構成員たる総裁1名、副総

    裁2名、審議委員6名に加え、理事6名以内、監事3名以内及び参

    与若干名を置くこととする。                                  

      総裁は日本銀行を代表し、日本銀行の業務を総理することを職務

    とする。                                                    

      副総裁は日本銀行を代表し、総裁を補佐して業務を掌理し、総裁

    に事故がある等の場合にはその職務の代理等を行うものとする。副

    総裁は、現在、1名であるが、国際会議等への総裁・副総裁クラス

    の出席が求められる機会が増大していること等にかんがみ、副総裁

    は、2名に増員することが適当と考えられる。                  

      また、審議委員は日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会

    のメンバーとして日本銀行の意思決定に参画する。政策委員会が、

    日本銀行内部の機関として明確に位置づけられることに伴い、審議

    委員を日本銀行の役員と位置づけることが適当である。          

      理事は総裁及び副総裁を補佐して、日本銀行の業務を掌理するこ

    ととし、一定の分野の業務を分掌して執行することが考えられる。  

    なお、日本銀行の業務の状況、副総裁の増員等に対応し、現行の7

    名を減員し、6名を上限とすることが適当である。              

      監事については、現行法上、その位置づけ、職務内容が必ずしも

    明確でないため、大蔵大臣、または、政策委員会にその意見を述べ

    ることができる旨を法律上明確にすることが必要である。また、監

    督について業務運営の自主性に配意するとの観点から、従来の大蔵

      大臣による検査を廃止し、監事を活用することとしている。(後

    述)。                                                      

      監事の人数については他の政府関係法人における監事の数を勘案

    し、3名以内とすることとした。                              

                                                                

      参与については現行法では総裁の諮問に応じ総裁に意見を具申す

    ることとされているが、政策委員会が名実共に日本銀行の最高意思

    決定機関となることから、参与は政策委員会の諮問に応えるものと

    すべきである。                                              

                                                                  

                                                                  

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|3  役員の任命                                                |

|  (1) 総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する。  |

|  (2) 審議委員は、経済又は金融に関して高い識見を有する者その他|

|    の学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任|

|    命する。                                                  |

|  (3) 監事は、内閣が任命する。                                |

|  (4) 理事及び参与は、政策委員会の推薦に基づいて、大蔵大臣が任|

|    命する。                               | 

|                                                              |

|4  役員の任期                                                |

|    役員の任期は、以下のとおりとし、再任することができる。    |

|        総裁、副総裁及び審議委員  5年                        |

|        理事及び監事              4年                        |

|        参与                      2年                        |

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  (説明)                                                        

                                                                  

  1.(役員の任命)                                            

                                                                

      役員の任命については、憲法上の要請から政府に任命権を認める

    ことが適当である。                                            

      審議委員については、政策委員会の活性化の観点から従来の業界

    代表的な考えを改め、経済・金融に関して高い識見を有する者その

    他の学識経験のある者のうちから任命することが適当である。なお、

    現在、任命委員の任命に当たっては、国民の意見が反映されるよう、

    両議院の同意が必要とされているが、今般の改革に当たっても、引

    き続き両議院の同意を必要とすることが適当である。            

                                                                

      また、総裁・副総裁についても、審議委員と同様に、国民の意見

    が反映されるよう、両議院の同意を必要とすることが適当である。  

    ただし、総裁・副総裁が、執行部門の責任者であることを考慮すれ

    ば、国会の閉会中に任期が切れる場合等に、日本銀行の運営に支障

    のないよう、所要の措置を講じる必要がある。                  

                                                                

      理事については、政策委員会が業務執行の基本方針も決定するこ

    とにかんがみ、理事の任命の際、推薦を行う者を、現行の総裁から

    政策委員会に変更することが適当である。                      

                                                                

      さらに、監事については、その職務が従来にも増して重要となる

    ことから、現行の主務大臣による任命から内閣による任命へ変更す

    ることが適当である。監事の任命に当たっては、厳正な監査を確保

    するため、大企業の監査役について、少なくとも1名が社外の者で

    あることが求められていること等を踏まえ、選任を行うことが望ま

    しい。                                                      

                                                                

      参与については、総裁の諮問に応じるものから政策委員会の諮問

    に応じるものとなることから、政策委員会の推薦に基づき主務大臣

    が任命することとするべきである。                            

                                                                

                                                                

  2.(役員の任期)                                              

                                                                  

      中央銀行の役員については、任期が長い方が独立性に資するとの

    考え方から、欧州中央銀行制度への加盟国の中央銀行総裁の任期に

    つき、5年以上とすることが求められていること等を勘案し、政策

    委員会の構成員である総裁・副総裁の任期は現状の5年を維持し、

    審議委員の任期も同じ5年とすることが適当である。            

      また、理事・参与の任期については現行法どおりで妥当である。

    監事については、その職務が従来にも増して重要となることから、

    理事の任期と同じ4年とすることが適当である。                

                                                                  

                                                                  

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|5  役員の身分保障                                            |

|    日本銀行の役員は、次のいずれかの場合のほか、在任中、その意|

|  に反して解任されることがない。                              |

|    (1)  禁治産、準禁治産又は破産の宣告を受けたとき。          |

|    (2)  この法律に規定する罰則の適用を受けたとき。            |

|    (3)  禁錮以上の刑に処せられたとき。                        |

|    (4)  心身の故障のため職務を執行することができないと政策委員|

|      会において認めたとき。                                  |

|                                                              |

|  ※  政府と意見が異なることを理由とする解任は認めない。(理事|

|    については、政策委員会の求めによる解任もあり得る。)      |

+―――――――――――――――――――――――――――――――+



  (説明)                                                        

                                                                  

    日本銀行の独立性を担保するため、役員について政府と政策上意見

  が異なることを理由とする解任は認めるべきではない。したがって、

  現行日本銀行法第47条の役員の解任の規定は廃止することとし、政

  府による役員の解任事由を、上記の明確な場合に限定することが適当

  である。                                                      

    また、解任理由のうち、「心身の故障のため職務を執行することが

  できない場合」については、その認定において、裁量の余地があるた

  め、政策委員会が認めた場合に限ることとする。                  

    なお、理事については、政策委員会の定めた方針に従い、政策委員

  会の監督の下、業務執行を行うこととされており、政策委員会の定め

  た方針に従わない場合等に、政策委員会の求めにより解任することを

  認めることが適当である。                                      

                                                                

                                                                

+―――――――――――――――――――――――――――――――+

|6  役員の行為制限                                            |

|    日本銀行の役員は、在任中、次の行為をしてはならない。      |

|    (1)  国会又は地方公共団体の議会の議員その他公選による公職の|

|      候補者となること。                                      |

|    (2)  政党等の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動を|

|      すること。                                              |

|    (3)  報酬のある他の職務に従事すること。(政策委員会において|

|        職務の適切な執行に支障がないものとして認めた場合を除  |

|      く。)                                                  |

|    (4)  営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行|

|      うこと。                                                |

+―――――――――――――――――――――――――――――――+



  (説明)                                                        

                                                                  

    現行法において政策委員は政治活動の制限、兼業禁止、営利事業の

  制限を受けている一方、役員は、兼職禁止のみが義務付けられている。

  日本銀行の独立性が向上し、その公的性格が強まることに伴い、他の

  独立機関の例を参考にしつつ、日本銀行の役員一般(非常勤である参

  与を除く。)に、共通の規制を課することが適当である。          

    なお、兼業禁止については、政策委員会に人材を得る観点等から、

  職務の適切な執行に支障がないと政策委員会において認めた場合には、

  兼業を認めるといった配慮も必要と思われる。                    

                                                                

                                                                

+――――――――――――――――――――――――――――――――+

|7  役職員の秘密保持義務等                                      |

|  (1)  日本銀行の役職員は、その職務上知ることができた秘密を他に |

|    漏らし、又は盗用してはならない。                            |

|  (2)  日本銀行の役職員は、刑法その他の罰則の適用については、法 |

|    令により公務に従事する職員とみなす。                        |

+――――――――――――――――――――――――――――――――+



  (説明)                                                        

                                                                  

    日本銀行の業務は、金融市場調節、考査の実施など、これが漏洩す

  ると市場の混乱を招きかねない情報や私企業の秘密情報に触れるもの

  が多いことから日本銀行の役職員には守秘義務を課すことが適当であ

  る。                                                          

    また、現行法では日本銀行の役職員は、法令により公務に従事する

  ものとみなされているが、日本銀行の公的性格にかんがみ適当と考え

る。                                                            





+―――――――――――――――――――――――――――――――+

|8  給与等の支給の基準                                        |

|    日本銀行は、その役職員の報酬、給与等の支給の基準を社会一般|

|  の情勢に適合したものとなるよう定め、大蔵大臣に届け出るととも|

|  に、公表するものとする。                                    |

|                                                              |

|9  服務の準則                                                |

|    日本銀行は、役職員の職務に専念する義務、私企業からの隔離そ|

|  の他の服務に関する準則を定め、大蔵大臣に届け出るとともに、公|

|  表するものとする。                                          |

+―――――――――――――――――――――――――――――――+



  (説明)                                                      

                                                                

  1.(給与等の支給の水準)                                    

                                                                

      日本銀行の役職員の給与水準については、その公的性格にかんが

    み、国民の理解を得られるようなルールを定めることが適当と考え

    られる。また、作成したルールを公表することは、国民の理解を得

    るために資するものと思われる。                              

                                                                

      日本銀行の職員の給与水準は、昭和34年中央銀行制度特別委員

    会実態調査小委員会報告において、市中大銀行並みとされたことか

    ら、これを踏まえたものとされている。                        

      また、海外の中央銀行役員の給与水準は、公務員を参考としてい

    る例が多い。                                                

      いずれにせよ、日本銀行役職員の給与水準については、こうした

    点につき、総合的に判断した上、政策委員会が国民の理解を得られ

    るようなルールを定めることが望ましい。                      

                                                                

                                                                

  2.(服務の準則)                                            

                                                                

      日本銀行の業務は、金融市場調節、準備預金率の設定、特融の実

    施、考査の実施等、職務の公正性の確保が強く求められるものであ

    る。職務の公正性を担保するため、日本銀行が自主的に再就職制限

    等の服務に関するルールを作成し、これを公表することにより、国

    民の理解を得ていくことが適当と考えられる。                  

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