V.金融システム改革の進展に伴う法制面の課題

                                                                              
 (1)  今後、自由化の進展に伴い、従来の業態、業法の枠を超えた金融商品・サービスの
    導入が一層進むことが予想される。一方、現行法制では、金融商品・サービスは、担
    い手に対する規制も含めて各関係業法において業態別に規定される法体系となってお
    り、規制の適用範囲が不十分であったり、類似の商品に対する規制内容が不整合であ
    る等の問題を生じている。この結果、投資者保護に支障を来すだけでなく、自由な商
    品設計が制約される等の問題が指摘されている。                              
                                                                              
 (2)  こうした中、金融商品・サービスの多様化・高度化に対応した法制のあり方として
    は、当面、現行法体系の下で、金融システム改革のための必要な措置を早急に講ずる
    ことが必要であるが、それに加えて、金融システム改革の今後の進展の中で、多様な
    金融商品の登場、金融機関のリスク管理の確立、自己責任原則の浸透等の状況を見極
    めながら、従来のいわゆる業法中心の縦割りの枠組みを見直し、利用者の視点に立っ
    て、規制に係る負担の軽減にも配慮しつつ、市場参加者に共通に適用される横断的な
    ルールを確立することが必要になってくると考えられる。                      
                                                                              
 (3)  この点に関し、主要国中には包括的な投資業に関する法制が採用されている国もあ
    る。例えば、英国においては金融サービス法が存在し、フランス、ドイツにおいても、
    EU投資サービス指令を踏まえた法制度の整備が進みつつある。                
      他方、米国においては、証券関連の各法による規制を通じて投資者保護を図ってい
    るが、近年、多数の判例を通じて証券概念が幅広く解釈されており、これにより規制
    を広く及ぼし、投資者保護を図っている。                                    
                                                                              
 (4)  本件についての今後の議論の進め方としては、直ちに検討を進めるべきであるとす
    る意見と、より中期的な課題として検討していくべきであるとする意見とが出された
    ところであるが、いずれにせよ、幅広い金融サービスに対して整合的な規制を行う新
    しい法的な枠組み(いわゆる金融サービス法)を検討すべきであるという基本的な方
    向性については、概ね意見の一致が見られたところであり、今後、先進各国の例も参
    考にしながら、現行法制等との関係も含め、幅広く検討を進めていく必要がある。  
                                                                              
  (参考)                                                                    
     英国においては、ビッグバンと同時期(86年) に金融サービス法が制定され、同法
   では、投資業、投資物件を包括的に定義するとともに、詐欺的もしくは誤解を招く説
   明・行為の禁止等一般的な規則を定めている。また、業者に対する監督については、
   民間団体である証券投資委員会が行為規制の原則声明、コア・ルールを定め、さらに、
   各種自主規制機関による自主規制を通じて行うこととされている。              
     なお、先般、英国大蔵大臣が金融機関監督体制の改革案を発表し、将来的には自主
   規制団体による監督を廃止し、銀行監督権限を含めて証券投資委員会による監督に一
   本化することとしている。                                                      
                                                                              
     また、欧州市場統合の中、EU投資サービス指令(88年) においては、投資業を行
   う者について域内単一免許等を定めるほか、投資業や投資物件を包括的に定義し、業
   者に対する共通の規制の国内法化に当たっての準則を設けている。これを受けて、フ
   ランスでは金融業務近代化法が成立 (96年) し、ドイツでは信用制度法第6次改正案
   が、現在国会において審議されている。                                          
                                                                              
     他方、米国においては、証券法及び証券取引所法においてディスクロージャーを定
   めるとともに、インサイダー取引等について厳格な罰則をもって禁止するなど、市場
   における一般的な行為規制を規定しているが、同時に判例で証券法における証券概念
   を幅広く解釈するなど、規制を広く及ぼし、投資者保護を図る方向にある。また、業
   者についての規制については、証券取引所法、投資顧問法、投資会社法等において規
   定されている。 

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